JP6183364B2 - ヒドロホルミル化触媒損失防止法 - Google Patents
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Description
通常、化学装置に用いられる汎用型のミストセパレーターは、サイクロン、デミスター、フィルターなど個々に単独で使われるケースが多いが、この方法ではヒドロホルミル化反応プロセスで要求される性能確保には対応困難であるため、ロジウム触媒を含むミストの分離は次に示すそれぞれの分離機能に特徴を持った装置を3段階に配し、ほぼ完全に除去できるように工夫してある。
第一段:サイクロンセパレーター、第二段:デミスター、および第三段:キャンドルフィルターであり、特に第三段のキャンドルフィルターの構造は、ほぼ完全に除去するために重要である。
従来のキャンドルフィルターは、脆弱で、かつ内部に取り付けるグラスファイバーなども接着剤で接着されていた。その結果、長期連続運転の前半期にキャンドルフィルターの一部に破損をきたし、ロジウム触媒の損失を生じていた。
従来使用していたキャンドルフィルターの問題点を明確にし、これを解決するために強固な構造のキャンドルフィルターとする。
ヒドロホルミル化反応プロセスの連続運転において、反応器からストリッピングされる蒸気に含まれるミストの量が多いとロジウム触媒の損失を生ずる。
このミストの量をできる限りゼロに近づけることができるキャンドルフィルターを発明することによりこの問題を解決できることを見出した。
本発明は、ロジウム触媒の損失に関するものである。
即ち、オレフィンを一酸化炭素および水素でロジウム−リン化合物錯体の存在においてヒドロホルミル化して、アルデヒド類を製造するプロセスにおいて、反応器から蒸発除去される気体中のアルデヒドのミストを除去するため、ミストセパレーターのキャンドルフィルターを改良し、反応器からのロジウム触媒の損失を防止する方法に関する。
従来法のキャンドルフィルターを用いた際は、運転開始後の生成アルデヒド中のロジウム濃度は、5重量ppb以下であった。しかし、運転開始後6ヶ月で、5重量ppbを超え、その後は50〜60重量ppbに上昇し、12月後には100重量ppbに達した。
運転停止後、キャンドルフィルターの状況をチェックしたところ、グラスファイバーがずり落ちていることがわかった。
アルデヒドのミスト除去のためのキャンドルフィルターは、図1に示す反応系のミストセパレーター4に取り付けられる。ミストは、セパレーターのサイクロンセパレーター部で大部分のミストが除去される。大部分のミストを分離されたアルデヒド類の蒸気を含む気体はデミスターで更にミストを除かれ、残存する極少量のミストはキャンドルフィルターでほぼ完全に除去されるが、運転時間の経過と共にミストによる自重の増加に加えて、接着剤で接合していたグラスファイバーが劣化し、ずり落ちが発生することが判明した。このずれ落ちを防止し、更に強固な構造にして、ロジウム触媒損失防止対策を実施した。
本発明の反応系における機器設置のフローシートを図1に示す。オレフィンとしてプロピレンを用いる場合を例示した。
原料のプロピレンおよび合成ガスは、精製塔1および2で、それぞれ触媒毒を除去される。精製されたプロピレンは、反応系の反応器3にフィードされる。反応生成物のブチルアルデヒドは、未反応ガスと一緒に反応器から蒸発し、ミストセパレーター4で蒸発物中に含まれる極微量のロジウム触媒を分離して、反応系の反応器に戻される。蒸発したブチルアルデヒド、未反応プロピレン、合成ガスの混合物は、凝縮器5で冷却される。更に、気液分離器6で液体ブチルアルデヒドと気体の未反応プロピレンと合成ガスに分離される。気体のプロピレン、合成ガスは、循環ブロアー7を経て反応系に循環される。凝縮したブチルアルデヒドは、向流塔8の塔頂部にフィードし、反応系に供給される精製合成ガスの所定量を向流塔8の下部から供給し、ブチルアルデヒドに溶解しているプロピレンを除去する。向流塔8の下部から粗ブチルアルデヒドが抜き出される。
本発明のミストセパレーターにおける機器の配列とガスの流れを図2に示す。
反応器3で生成した反応生成ガスは、反応器3の上部から管路12によりミストセパレータ4の第1段分離器(サイクロンセパレータ9)に導入される。サイクロンセパレータ9で反応生成ガスに含まれる大部分のミストは除去され、ミストは管路13より管路14を経由して反応器3へ戻る。大部分のミストを除かれた反応生成ガスは、第2段分離器(デミスター10)により更にミストを分離する。ミストは管路16より管路14を経由して反応器3に戻る。
デミスター10を通過した反応生成ガスは第3段分離器(キャンドルフィルター11)に導入され更に極微量の残存ミストを除去する。ミストは管路15より管路14を経由して反応器3へ戻る。
ミストを除去した反応生成ガスは、同時にロジウム触媒もほぼ完全に分離され、ミストセパレータ4の上部ガス出口より、次工程に導入される。
従来のキャンドルフィルター部材の材質と配列構成を図3に示す。
ロジウム触媒損失が生じたキャンドルフィルター部材の配列と構成は、ミストを含む蒸気が通過する側から、金網(40〜60メッシュ)25、グラスファイバー(φ0.8μm)24、グラスファイバー(φ3μm)23、金網帯(40〜60メッシュ)22、グラスファイバー(φ1.3μm)21、グラスファイバー(φ0.8μm)20、コットン帯(100〜150メッシュ)19、金網(40〜60メッシュ)18、パンチングプレート17の9種類の部材を取り付けた構造である。
グラスファイバー(φ0.8μm)24、グラスファイバー(φ3μm)23、グラスファイバー(φμm1.3)21、グラスファイバー(φ0.8μm)20は、円周方向および長手方向に接合部を有し、接合には接着剤を用いていたために、反応生成物により劣化し、ずり落ち脱落への原因となっていた。更にグラスファイバー同士の配列で、締め付けバンドによる締め付け力不足を生じさせ、ずり落ちの要因を増長していた。
本発明のキャンドルフィルター部材の材質と配列構成を図4に示す。
触媒損失防止のための好適なキャンドルフィルター部材の配列と構成は、ミストを含む蒸気に接する側から金網(40〜60メッシュ)25、金網帯(40〜60メッシュ)29、グラスファイバー(φ0.8μm)24、金網帯(40〜60メッシュ)28、グラスファイバー(φ3μm)27、金網帯(40〜60メッシュ)26、グラスファイバー(φ3μm)23、金網帯(40〜60メッシュ)22、グラスファイバー(φ1.3μm)21、グラスファイバー(φ0.8μm)20、コットン帯(100〜150メッシュ)19、金網(40〜60メッシュ)18、パンチングプレート17の13個の部材を取り付けた構造で、これを用いることでロジウム−リン錯体の損失を防止する。
従来のキャンドルフィルター部材のグラスファイバー接着部を図5に示す。
キャンドルフィルターに用いたグラスファイバー23は、それぞれ円周方向と長手方向の接合部を接着剤で張り合わせ一体ものとして巻きつけ使用していた。
本発明のキャンドルフィルターの設置状況を図6に示す。
ミストセパレーター4の第2段目分離器(デミスター10)を通過したミストを含むガスは、第3段目分離器(キャンドルフィルター11)の外側から内側へと流れ、この間にミストを除かれ、ミストはシールパイプ30、シールパン31を経由してミスト出口へ導かれる。ミストを除かれたガスは、ミストセパレータ4の上部より次工程へ移送される。これら4本のキャンドルフィルター11はシールパイプ30、シールポット31によりシールされ、逆流の防止と差圧増加時の安全対策も兼ね備えている。
本発明のキャンドルフィルター11のグラスファイバー27の取り付け方を図7に示す。
本発明のグラスファイバー27の接合は、オーバーラップ部を重ならない様にするために、一巻き目と二巻き目は接合部を90度ずらし、順次オーバーラップ部の位置を90〜180度の範囲でずらしてガスのショートパスを防止する。
従来のグラスファイバー23は、接着剤を用いて接合したために、接着剤の劣化により接合部が剥がれ、ずり落ちを誘発した。
本発明のキャンドルフィルター11のグラスファイバー27の巻き付け方は図8に示したオーバーラップと図4に示した針金により強固に緊縛する。
尚、上述のオーバーラップは全てのグラスファイバーに適用する。
本発明のグラスファイバー27の巻き付け方は、オーバラップ部を、一巻毎に90度ずらす様に巻きつけ、ガスのショートパス防止に改良を加えた。本図は一層目と二層目のオーバーラップ部を示した。ずり落ち防止には図4に示す針金で強固に緊縛する。
本発明のキャンドルフィルター11のズリ落ち防止用金網の巻き方を図9に示す金網の巻き方と図4に示した針金及び締め付けバンドにて強固に取り付ける。
尚、上述の巻き方は全ての金網帯に適用する。
本発明のズリ落ち防止用の金網帯28はオーバーラップさせながらスパイラル状に巻き付ける。これに加え図4に示した針金による緊縛と締め付けバンドによって強固に取り付け、ズリ落ちを防止する。
従来のキャンドルフィルターの構造を図3に示す。その構造は、ミストを含む蒸気が通過する側から金網(40〜60メッシュ)25、グラスファイバー(φ0.8μm)24、グラスファイバー(φ3μm)23、金網帯(40〜60メッシュ)22、グラスファイバー(φ1.3μm)21、グラスファイバー(φ0.8μm)20、コットン帯(100〜150メッシュ)19、金網(40〜60メッシュ)18の8種類の部材をパンチングプレート17に巻きつけた構成となっている。図5および7に示すようにグラスファイバー(φ0.8μm)24、グラスファイバー(φ3μm)23、グラスファイバー(φ1.3μm)21、グラスファイバー(φ0.8μm)20は、円周方向および長手方向に接合部を有し、接合には接着剤を用いている。
従来のキャンドルフィルターを設置した設備で通常運転を開始した。運転中は一定期間毎に反応器内の液を抜き出し、反応液中のロジウム濃度および生成アルデヒド中のロジウム濃度を分析した。それらの分析結果を表1に示す。60日毎に所定量のロジウムを追加しているため、反応液中のロジウム濃度は初期250重量ppmから徐々に増加し、1年後には約430重量ppmに達する。従来のキャンドルフィルターを使用した場合、生成アルデヒド中のロジウム濃度は初期2重量ppbしか検出されなかったものが、1年後には95重量ppbとなっていた。
表2は反応器に投入されたロジウムの1年間の累積量と、生成アルデヒド中のロジウム分析結果より算出したロス量の1年分の積算量とから、ロジウムの1年当たりのロス率を求めたものである。その結果、1年で反応器内のロジウムロス率は4%までに達することが分かった。
また、運転から1年(360日)経過後、運転を停止してキャンドルフィルターを確認したところ、グラスファイバーがずり落ちていた。グラスファイバー同士の接合に用いた接着剤が反応生成物の浸食により劣化し、また配列が悪いために、締め付けバンドによる締め付けが不十分となり、回収ミストの自重により脱落したものと推測された。
分析方法;原子吸光分析法を基本とする。
試料をグラファイト製の電気炉で加熱して原子化(ガス化)し、ロジウム固有の波長の光の吸収量から試料中のロジウム含有量を求める方法である。(ファーネス法)
測定装置は、原子吸光分析装置(サーモエレクトロン社製 SOLAAR M6 mkII)を使用した。検出限界は1重量ppbである。
必要であればサンプル液を反応溶媒ブチルアルデヒドで適切な倍率に希釈し、測定装置に掛けて測定する。
本発明のキャンドルフィルターの構造を図4に示す。その構造は、ミストを含む蒸気が通過する側から金網(40〜60メッシュ)25、金網帯(40〜60メッシュ)29、グラスファイバー(φ0.8μm)24、金網帯(40〜60メッシュ)28、グラスファイバー(φ3μm)27、金網帯(40〜60メッシュ)26、グラスファイバー(φ3μm)23、金網帯(40〜60メッシュ)22、グラスファイバー(φ1.3μm)21、グラスファイバー(φ0.8μm)20、コットン帯(100〜150メッシュ)19、金網(40〜60メッシュ)18の12種類の部材をパンチングプレート17に巻きつけた構成となっている。グラスファイバーは接着剤による接合をせず、図7から9に示した方法、配列で取り付けている。グラスファイバー層は図7および8に示すようにオーバラップして巻き、接着剤による接合部を設けていない。さらに図4および9に示すようにグラスファイバー層に金網帯を付け、金網帯はスパイラル状に巻き、ずり落ち防止を図っている。
表3は反応器に投入されたロジウムの1年間の累積量と、生成アルデヒド中のロジウム分析結果より算出したロス量の1年分の積算量とから、ロジウムの1年当たりのロス率を求めたものである。その結果、1年目の反応器内のロジウムロス率は0.64%であり、2年目のロス率も0.56%とロジウムの損失をほぼ完全に抑えることができた。2年間のロス率は1.08%であり、従来型のミストセパレーターを使用した場合に比べ、大幅に改善された。
また、運転から2年(730日)経過しても、グラスファイバーのずり落ちは確認できず、キャンドルフィルターの改造がもたらす効果が非常に大きいことがわかった。
1年目は従来のミストセパレーターを使用し、2年目に本発明の改良ミストセパレーターに交換して運転を継続した以外は、実施例1と同様に通常の連続運転を2年間行った。
その結果を表4に示した。
製品名 用途
アクリル酸ブチル ポリマー原料
アクリル酸2−エチルヘキシル ポリマー原料
酢酸ノルマルブチル 溶剤
エチレングリコールモノブチルエーテル 溶剤
ノルマルブタノール 溶剤
ジ(2−エチルヘキシル)フタレート 可塑剤
製品名 用途
イソブタノール 溶剤
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート 造膜助剤
これらの製品は、工業的に重要な製品である。これら製品の原料となるブチルアルデヒドの製造に本発明は利用される。
2 精製塔
3 反応器
4 ミストセパレーター
5 凝縮器
6 気液分離器
7 循環ブロワー
8 向流塔
9 サイクロンセパレーター
10 デミスター
11 キャンドルフィルター
12 管路
13 管路
14 管路
15 管路
16 管路
17 パンチングプレート
18 金網(40〜60メッシュ)
19 コットン帯(100〜150メッシュ)
20 グラスファイバー(φ0.8μm)
21 グラスファイバー(φ1.3μm)
22 金網帯(40〜60メッシュ)
23 グラスファイバー(φ3.0μm)
24 グラスファイバー(φ0.8μm)
25 金網(40〜60メッシュ)
26 金網帯(40〜60メッシュ)
27 グラスファイバー(φ3μm)
28 金網帯(40〜60メッシュ)
29 金網帯(40〜60メッシュ)
30 シールパイプ
31 シールポット
Claims (4)
- アルデヒド類を製造するヒドロホルミル化反応プロセスにおいて、反応器出口に設けたミスト除去のための部材取り付けに接着剤を用いず、部材同士をオーバーラップさせ、金網帯で束ね、二年間以上の連続運転に耐えうる構造のキャンドルフィルターを取り付けることによってロジウム触媒の損失を防止する方法であって、該キャンドルフィルターが、その部材のうちグラスファイバーを2箇所でオーバーラップさせたものであり、且つ、該2箇所のオーバーラップ部がキャンドルフィルターにおいて対面に位置し、これを金網束で束ねた構造を有する、ロジウム触媒の損失を防止する方法。
- キャンドルフィルターが、ミストを含む蒸気が通過する側から、金網、金網帯とグラスファイバーとの組み合わせを3組から7組、コットン帯、金網、パンチングプレートの順であり、合計で12個から24個からなる部材を取り付けた構造である請求項1に記載のロジウム触媒の損失を防止する方法。
- キャンドルフィルターの部材の接合に、金網帯とグラスファイバーとの組み合わせで本体に取り付けて、通過する蒸気の力に耐えうる強度を保持し、グラスファイバーのずり落ちを防止する請求項1または2に記載のロジウム触媒の損失を防止する方法。
- ミストセパレーターにおいて、アルデヒド中のロジウムの濃度を5重量ppb以下にすることができるキャンドルフィルターを用いる請求項1から3のいずれか1項に記載のロジウム触媒の損失を防止する方法。
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