JP6212855B2 - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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本発明は、車輪用軸受装置に関する。
自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置として、車体側に固定される外輪(外方部材)と、車輪が取り付けられる内方部材と、外輪及び内方部材の間に配置された複列の転動体と、複列の転動体を回転自在に保持する保持器とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
外輪は、内周面に複列の外側軌道面が形成された円筒状の本体部と、本体部の外周面から外方に突出するフランジとを一体に有している。内方部材は、車輪が取り付けられるハブ輪と、ハブ輪に加締め固定された内輪とを有し、外周面に複列の内側軌道面が形成されている。複列の転動体は、環状の保持器によって円周方向に等間隔に保持され、外輪の本体部に形成された外側軌道面と内方部材に形成された内側軌道面との間を転動する。外輪のフランジには、複数のボルト挿通孔が形成されている。外輪は、これらのボルト挿通孔を挿通するボルトによって、車体に懸架装置を介して連結されたナックルに固定される。
特開2011−201450号公報
外輪のフランジにおけるボルト挿通孔の開口端面に接触するナックルの接触面は、内方部材の回転軸線に対して直交する一つの平面上にあることが望ましい。しかし、ナックルの加工精度によっては、内方部材の回転軸線方向におけるフランジとの接触面の位置が均一ではなく、ずれが発生している場合がある。この場合、複数のボルトによってフランジをナックルに固定すると、本体部に歪(ひずみ)が生じ、外側軌道面が例えば楕円状に変形してしまう。
そこで、本発明は、内方部材の回転軸線方向におけるナックルのフランジとの接触面の位置が均一でない場合でも、外側軌道面の変形を抑えることができる車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、円周方向に複数の転動体を配置してなる第1及び第2の転動体列と、車輪が取り付けられるハブ輪を含み、前記第1及び第2の転動体列の前記複数の転動体をそれぞれ転動させる第1及び第2の内側軌道輪を有する内方部材と、車体に連結されたナックルに固定される軸受用外輪と、前記第1及び第2の転動体列の前記複数の転動体を保持する第1及び第2の保持器とを備え、前記軸受用外輪は、前記第1の転動体列の前記複数の転動体を転動させる第1の外側軌道面、及び前記第2の転動体列の前記複数の転動体を転動させる第2の外側軌道面を内周面に有する円筒状の本体部と、前記本体部の外周面から径方向外方に突出して設けられ、前記ナックルへの固定のためのボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔を有するフランジと、前記本体部の前記内周面における前記第1の外側軌道面と前記第2の外側軌道面との間に径方向内方に突出して設けられ、前記本体部の剛性を高める環状突起と、を一体に有し、前記本体部の前記第1の外側軌道面の前記第2の外側軌道面側には、前記第1の外側軌道面に隣接して第1の肩部が形成され、前記本体部の前記第2の外側軌道面の前記第1の外側軌道面側には、前記第2の外側軌道面に隣接して第2の肩部が形成され、前記第1の肩部の周面は前記第1の保持器と径方向に対向し、かつ前記第2の肩部の周面は前記第2の保持器と径方向に対向し、前記環状突起は、前記フランジよりも前記車輪側であって前記第1の肩部と前記第2の肩部との間に設けられ、前記第1の保持器と前記第2の保持器との間から径方向内方に突出し、その内径は、前記第1の転動体列のピッチ円直径、及び前記第2の転動体列のピッチ円直径よりも小さい、車輪用軸受装置を提供する。
本発明によれば、外輪における本体部の内周に環状突起を設けることによって本体部の剛性が高まるので、内方部材の回転軸線方向におけるナックルのフランジとの接触面の位置が均一でない場合でも、外側軌道面の変形を抑えることができる。
第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置を示し、(a)は車輪用軸受装置の全体をナックルと共に示す断面図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(a)のB部拡大図。 第1の実施の形態に係る外方部材を拡大して示す断面図。 (a)は、剛性を高めるための対策案の適用対象となる車両用軸受装置を示す断面図。(b)は、車両用軸受装置の外方部材の正面図。 (a)〜(e)は、比較例1〜5に係る外方部材を示す説明図。 第2の実施の形態に係る外方部材を拡大して示す断面図。
[第1の実施の形態]
(車輪用軸受装置の全体構成)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置1を示し、(a)は車輪用軸受装置1の全体をナックル9と共に示す断面図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(a)のB部拡大図である。
この車輪用軸受装置1は、軸受用外輪としての外方部材2と、円周方向に複数の第1の転動体31を配置してなる第1の転動体列310と、円周方向に複数の第2の転動体32を配置してなる第2の転動体列320と、複数の第1の転動体31を転動可能に保持する第1の保持器41と、複数の第2の転動体32を転動可能に保持する第2の保持器42と、車輪が取り付けられるハブ輪6を含む内方部材5とを備えている。
外方部材2は、円筒状の本体部20と、本体部20の外周面20aから径方向外方に突出して設けられたフランジ21と、本体部20の内周に設けられた環状突起22とを一体に有している。本体部20は、複数の第1の転動体31を転動させる第1の外側軌道面201、及び複数の第2の転動体32を転動させる第2の外側軌道面202を内周面に有している。外方部材2は、例えば中炭素鋼からなる。
フランジ21は、複数(4つ)のボルト挿通孔210を有している。ボルト挿通孔210は、フランジ21の第1の側面21a(車輪側の側面)と第2の側面21b(ナックル9側の側面)との間をフランジ21の厚さ方向(内方部材5の回転軸線Oに平行な方向)に貫通している。
フランジ21は、ボルト挿通孔210を挿通するボルト80によって車体に連結されたナックル9に固定される。ナックル9には、ボルト挿通孔210に連通する螺子孔90が形成されている。ボルト80には、螺子孔90に螺合する螺子部80aが形成されている。フランジ21の第2の側面21bは、ナックル9の接触面9aに接触する。
フランジ21は、第1の外側軌道面201よりも第2の外側軌道面202に近い部位に設けられている。本実施の形態では、フランジ21が第2の外側軌道面202の外周側に設けられている。
環状突起22は、本体部20の内周における第1の外側軌道面201及び第2の外側軌道面202の間に径方向内方に突出して設けられている。環状突起22の詳細については後述する。
本体部20の車輪側の端部と内方部材5との間には、シール部材81が配置されている。本体部20のナックル9側の端部には、本体部20の開口を覆うキャップ82が圧入によって固定されている。
内方部材5は、回転軸線Oを中心として外方部材2に対して回転可能に配置されている。内方部材5は、第1の内側軌道面501及び第2の内側軌道面502を外周面に有している。第1の内側軌道面501は、外方部材2の第1の外側軌道面201に対向する。第2の内側軌道面502は、外方部材2の第2の外側軌道面202に対向する。
内方部材5は、ハブ輪6及び環状の内輪部材7からなる。ハブ輪6は、外方部材2の本体部20に収容される胴部60と、図略の車輪が取り付けられる車輪取付フランジ61と、胴部60と車輪取付フランジ61とを連結する連結部62とを一体に有している。ハブ輪6は、例えば中炭素鋼からなる。内輪部材7は、例えば冷間圧延鋼板からなる。
胴部60は、連結部62側における大径部601と、連結部62とは反対側の端部における小径部602とを有している。大径部601の外周面には、第1の内側軌道面501が形成されている。車輪取付フランジ61には、車輪取付用のセレーション付きボルト83を圧入して挿通させる複数のボルト挿通孔61aが形成されている。
内輪部材7は、胴部60の小径部602に嵌着されている。内輪部材7は、小径部602の一部を塑性変形させた加締め部602aによって小径部602の外周に固定されている。内輪部材7の外周面には、第2の内側軌道面502が形成されている。
複数の第1の転動体31は、外方部材2の第1の外側軌道面201と内方部材5の第1の内側軌道面501との間に配置され、第1の外側軌道面201及び第1の内側軌道面501を転動する。複数の第2の転動体32は、外方部材2の第2の外側軌道面202と内方部材5の第2の内側軌道面502との間に配置され、第2の外側軌道面202及び第2の内側軌道面502を転動する。本実施の形態では、第1の転動体31及び第2の転動体32が球体であるが、第1の転動体31及び第2の転動体32は円錐ころであってもよい。
図1(b),(c)に示すように、第1の転動体31の直径D1は、第2の転動体32の直径D2よりも小さく設定されている。第1の転動体列310のピッチ円直径P1は、第2の転動体列320のピッチ円直径P2よりも大きく設定されている。ここで、ピッチ円直径P1は、回転軸線Oから第1の転動体31の中心までの距離の2倍の寸法である。ピッチ円直径P2は、回転軸線Oから第2の転動体32の中心までの距離の2倍の寸法である。第1の転動体列310における第1の転動体31の個数n1は、第2の転動体列320における第2の転動体32の個数n2よりも多い。個数n1は例えば10であり、個数n2は例えば8である。
第1の転動体列310及び第2の転動体列320がこのように構成されていることにより、外方部材2がそれぞれの第1の転動体31から受ける荷重が分散されて小さくなり、第1の外側軌道面201における外方部材2の本体部20の肉厚(第1の外側軌道面201の最深部と外周面20aとの間の径方向の距離)を薄くすることが可能となる。
図2は、外方部材2を拡大して示す断面図である。外方部材2は、回転軸線Oに対して対称な形状に形成されているので、図2では、回転軸線Oの径方向一側の範囲を示している。
本体部20の内周面20bにおける第1の外側軌道面201の車体側(第2の外側軌道面202側)には、第1の外側軌道面201に隣接して第1の肩部203が形成されている。本体部20の内周面20bにおける第2の外側軌道面202の車輪側(第1の外側軌道面201側)には、第2の外側軌道面202に隣接して第2の肩部204が形成されている。第1の肩部203の周面203aは、第1の外側軌道面201の端部から回転軸線Oに平行に形成されている。第2の肩部204の周面204aは、第2の外側軌道面202の端部から回転軸線Oに平行に形成されている。周面203aは、第1の保持器41(図1に示す)に回転軸線Oの径方向に対向する。周面204aは、第2の保持器42(図1に示す)に回転軸線Oの径方向に対向する。
環状突起22は、第1の肩部203と第2の肩部204の間の領域の全体に亘って形成されている。換言すれば、環状突起22は、第1の保持器41及び第2の保持器42との干渉を避けて回転軸線Oに向かって突出している。
本実施の形態では、環状突起22の内周面22aは回転軸線Oに平行に形成されている。環状突起22は、第1の肩部203の周面203aと第2の肩部204の周面204aの端部同士を結ぶ円筒状の仮想面Vよりも径方向内方に突出して形成されている。この仮想面Vから環状突起22の内周面22aまでの径方向距離L(環状突起22の厚さ)は、例えば1mm以上、望ましくは2mm以上である。環状突起22の内径d1は、第1の転動体列310のピッチ円直径P1よりも小さく、第2の転動体列320のピッチ円直径P2よりも小さい。
環状突起22の内周面22aと第1の肩部203の周面203aとの間は、回転軸線Oの径方向に対して傾斜したテーパ面22bによって接続されている。環状突起22の内周面22aと第2の肩部204の周面204aとの間は、回転軸線Oの径方向に対して傾斜したテーパ面22cによって接続されている。テーパ面22bとテーパ面22cとの回転軸線Oに平行な方向の間隔は、内周面22aに近づくにつれて狭くなる。環状突起22は、内周面22a、テーパ面22b,22c、及び仮想面Vによって画定される断面台形状に形成されている。これにより、第1の外側軌道面201及び第2の外側軌道面202にグリスが流れやすくなる。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
ナックル9におけるフランジ21との接触面9aは、必ずしも回転軸線Oに直交する一つの平面上にはなく、ずれが発生している場合がある。この場合、複数のボルト80によってフランジ21をナックル9に固定すると、外方部材2に歪が生じ、第1の外側軌道面201を例えば楕円状に変形させる応力が発生する。本実施の形態では、環状突起22によって本体部20の剛性を高めることにより、第1の外側軌道面201の形状の変化を緩和する。
例えば、図2に示す断面において、フランジ21に対して本体部20における車輪側の端部を矢印C方向に変形させる応力が発生した場合、本体部20の内周面20bが外方に湾曲するように変形する。この変形に伴って、環状突起22には回転軸線Oに沿った幅方向に引き伸ばされる伸長力が作用するが、環状突起22がこの伸長力に抗することにより、本体部20の変形が抑制される。すなわち、環状突起22によって本体部20の剛性が高まる。
これとは逆に、フランジ21に対して本体部20における車輪側の端部を矢印D方向に変形させる応力が発生した場合、本体部20の内周面20bが内方に湾曲するように変形する。この変形に伴って、環状突起22には回転軸線Oに沿った幅方向に圧縮される圧縮力が作用するが、環状突起22がこの圧縮力に抗することにより、本体部20の変形が抑制される。すなわち、環状突起22によって本体部20の剛性が高まる。
本実施の形態では、環状突起22の内径d1が第1の転動体列310のピッチ円直径P1及び第2の転動体列320のピッチ円直径P2よりも小さい。すなわち、第1の転動体列310の転動体31及び第2の転動体列320の転動体32の中心よりも内側で本体部20の剛性を高めるので、環状突起22の内径d1が第1の転動体列310のピッチ円直径P1及び第2の転動体列320のピッチ円直径P2よりも大きい場合に比較して、本体部20の変形を抑制して転動体31,32を円滑に転動させる効果がより大きくなる。
また、本実施の形態のように、第1の転動体列310のピッチ円直径P1が第2の転動体列320のピッチ円直径P2よりも大きく設定されている場合には、本体部20の厚みが第1の転動体列310の外周部で薄くなり、本体部20が変形しやすくなるが、このような場合でも、環状突起22によって本体部20の剛性を確保することが可能となる。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る外方部材2の効果の有効性を検証するため、本発明者らが検討した外方部材の剛性を高めるための他の対策案に係る外方部材を比較例1〜5として挙げ、これらの比較例に係る外方部材と第1の実施の形態に係る外方部材2とを、フランジ21との接触面の位置をずらした試験用のナックルに取り付けた場合の実験結果について説明する。
図3(a)は、それぞれの対策案の適用対象となる従来の車輪用軸受装置100を示す断面図である。この車輪用軸受装置100は、外方部材200が第1の実施の形態に係る環状突起22に相当する部分を有していない他は、図1に示した車輪用軸受装置1と同様に構成されているので、第1の実施の形態について説明したものと機能及び構成が共通する部材等については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図3(b)は、図3(a)に示す外方部材200を車輪側から見た正面図である。外方部材200のフランジ21には、第1乃至第4の第1乃至第4の突部211〜214に第1乃至第4のボルト挿通孔211a〜214aが形成されている。第1及び第2の突部211,212は、第3及び第4の突部213,214よりも鉛直方向上側に設けられている。
第1のボルト挿通孔211aと第2のボルト挿通孔212aとの中心間の間隔L1、及び第3のボルト挿通孔213aと第4のボルト挿通孔214aとの間隔L2は、第1のボルト挿通孔211aと第3のボルト挿通孔213aとの中心間の間隔L3、及び第2のボルト挿通孔212aと第4のボルト挿通孔214aとの中心間の間隔L4よりも大きく設定されている。間隔L1は間隔L2よりも大きく、間隔L3と間隔L4は同寸法である。
第1乃至第4のボルト挿通孔211a〜214aに図略のボルトを挿通させてフランジ21をナックルに取り付けた場合、ナックルにおける第1乃至第4の突部211〜214との接触面の位置が回転軸線Oに平行な方向に相互にずれていると、外方部材200に歪みが発生する。例えば、フランジ200のナックルへの取り付けによって第2の突部212及び第3の突部213が第1の突部211及び第4の突部214に対して車体側に変位すると、本体部20の車輪側の開口端部が図3(b)に示す矢印A1,A2方向に延び、この開口端部における本体部20の外周面200aが二点鎖線で示すように楕円形状となる。これにより、第1の外側軌道面501の真円度が悪化し、車両用軸受装置100の寿命が短くなる等の問題が発生するおそれがある。
図4(a)〜(e)は、図3に示す車輪用軸受装置100の外方部材200に対して剛性を高めるための対策を施した比較例1〜5に係る外方部材200A〜200Eを示す説明図である。
図4(a)に示す比較例1に係る外方部材200Aは、対策前の外方部材200におけるフランジ21よりも車輪側の外周面200aを全周にわたって肉盛りし、本体部20の厚みを増したものである。図4(a)では、外方部材200Aの本体部20の外周面200Aaを実線で示し、対策前の本体部200の外周面200aを比較のために二点鎖線で示している。
図4(b)に示す比較例2に係る外方部材200Bは、対策前の外方部材200におけるフランジ21よりも車体側の外周面200cを全周にわたって肉盛りし、本体部20の厚みを増したものである。図4(b)では、外方部材200Bの本体部20のフランジ21よりも車体側の外周面200Bcを実線で示し、対策前の本体部200におけるフランジ21よりも車体側の外周面200cを比較のために二点鎖線で示している。
図4(c)に示す比較例3に係る外方部材200Cは、フランジ21の肉厚を厚くしたものである。図4(c)では、外方部材200Cのフランジ21の両側面200Ca,200Cbを実線で示し、対策前の外方部材200における21の両側面21a,21bを比較のために二点鎖線で示している。
図4(d)に示す比較例4に係る外方部材200Dは、対策前の外方部材200の第1乃至第4の突部211〜214の間の凹部を肉盛りしたものである。図4(d)は、外方部材200Dの正面図であり、対策前の外方部材200のフランジ21の輪郭を二点鎖線で示している。外方部材200Dのフランジ21Dは、四隅に第1乃至第4のボルト挿通孔211Da,212Da,213Da,214Daが形成された略四角形状である。
図4(e)に示す比較例5に係る外方部材200Eは、外方部材200の第1乃至第4の突部211〜214の位置を変更したものである。図4(e)は、外方部材200Eの正面図であり、対策前の外方部材200のフランジ21の輪郭を二点鎖線で示している。外方部材200Eの第1及び第2の突部211E,212Eは、対策前の外方部材200の第1及び第2の突部211,212よりも鉛直方向上方に位置している。外方部材200Eの第3及び第4の突部213E,214Eは、外方部材200の第3及び第4の突部213,214よりも鉛直方向下方に位置している。第1の突部211Eに形成されたボルト挿通孔211Eaと第2の突部212Eに形成されたボルト挿通孔212Eaとの中心間の間隔L1´、及び第3の突部213Eに形成されたボルト挿通孔213Eaと第4の突部214Eに形成されたボルト挿通孔214Eaとの中心間の間隔L2´は、第1のボルト挿通孔211Eaと第3のボルト挿通孔213Eaとの中心間の間隔L3´、及び第2のボルト挿通孔212Eaと第4のボルト挿通孔214Eaとの中心間の間隔L4´よりも小さく設定されている。
ここで、第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置1の外方部材2、及び比較例1〜5に係る外方部材200A〜200Eの剛性を高める効果の有効性を評価するための指標値として、対策前後の第1の外側軌道面201の最深部における真円度の差(μm)を対策前後の質量増加量(g)で除して定数(−100)を乗じた値(質量寄与率(%))を用いることとする。
真円度の差は、対策前の外方部材200を試験用のナックル(第2の突部212及び第3の突部213との接触面の位置が、第1の突部211及び第4の突部214との接触面の位置よりも車体側に回転軸線O方向に沿って0.2mm変位したナックル)に固定した場合の第1の外側軌道面201の最深部における真円度を基準真円度とし、外方部材2,及び外方部材200A〜200Eを上記試験用のナックルに固定した場合の外側軌道面201の最深部における真円度から基準真円度を減算した値である。ここで真円度とは、評価対象の円を2つの同心円で挟んだとき、これらの同心円の間隔が最小となる場合の2つの同心円の半径の差である。よって、真円度の差が−(マイナス)でかつ絶対値が大きいほど、対策の効果が現れていることとなる。質量増加量は、対策前の外方部材200の質量に対する外方部材2,及び外方部材200A〜200Eの質量の増加量を示すものである。すなわち、質量寄与率が高いほど、少ない質量の増加で剛性が大きく向上していることとなる。
比較例1に係る外方部材200Aでは、質量が17g増加し、真円度変化の差は−9μmであった。比較例2に係る外方部材200Bでは、質量が14g増加し、真円度の差は−2μmであった。比較例3に係る外方部材200Cでは、質量が47g増加し、真円度の差は−3μmであった。比較例4に係る外方部材200Dでは、質量が53g増加し、真円度の差は−0.2μmであった。比較例5に係る外方部材200Eでは、質量の増加はなく、真円度の差は+3.1μmであった。
したがって、比較例1に係る外方部材200Aの質量寄与率は53%、比較例2に係る外方部材200Bの質量寄与率は14%、比較例3に係る外方部材200Cの質量寄与率は6%、比較例4に係る外方部材200Dの質量寄与率は0.4%である。比較例5に係る外方部材200Eでは、質量増加量が0(ゼロ)であるため、質量寄与率による効果の有効性の評価を行うことができないが、真円度の差が+3.1μmであるため、対策の効果がないことが明らかである。
一方、本実施の形態に係る外方部材2では、対策前の外方部材200に比較して、質量が11g増加し、真円度の差は−17μmであった。したがって、本実施の形態に係る外方部材2における質量寄与率は155%である。以上の実験結果を表1に示す。
Figure 0006212855
表1に示すように、本実施の形態に係る外方部材2の質量寄与率は、比較例1〜5の中で最も質量寄与率が高い比較例1の質量寄与率(53%)よりもさらに大幅に高い。したがって、本実施の形態に係る外方部材2は、環状突起22を設けることにより、少ない質量の増加で真円度の悪化を効果的に抑制できているといえる。
また、比較例1に係る外方部材200Aのように、本体部20の外周面200aに肉盛りした場合には、本体部20の外径が対策前よりも大きくなり、本体部20の外周側に配置されたブレーキドラム等の他の部材との干渉が発生しやすくなる。しかし、本実施の形態に係る外方部材2によれば、本体部20の外径を大きくすることなく剛性を高めることができるので、本体部20の外周側にブレーキドラム等が接近して配置されていても、剛性を高めることが可能である。換言すれば、本実施の形態に係る外方部材2によれば、本体部200の外径を増大させることなく、剛性を高めることが可能である。
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る外方部材2Aを示す断面図である。この外方部材2Aは、本体部20の外周面20aに環状凹部205が形成された構成が異なる他は、第1の実施の形態に係る外方部材2と同様に形成されている。図5において、第1の実施の形態について説明したものと機能及び構成が共通する部材等については同一の符号を付してその説明を省略する。
環状凹部205は、本体部20の外周面20aの全周に亘って形成されている。環状凹部205は、環状突起22の外側にあたる部位に形成されている。より具体的には、環状凹部205の底面205aは、環状突起22の内周面22aの径方向外方にあたる範囲内に形成されている。本実施の形態では、環状凹部205の底面205aが回転軸線Oに平行に形成されている。
環状凹部205の深さd2(第1の外側軌道面201の最深部の径方向外方にあたる外周面20aから底面205aまでの回転軸線Oに対する径方向の距離)は、環状突起22の厚さ(仮想面Vから環状突起22の内周面22aまでの径方向距離L)と同等、もしくは環状突起22の厚さよりも浅い。
本実施の形態によれば、環状突起22によって本体部20の変形を抑制しながら、環状凹部205を形成することにより、外方部材2Aを軽量化することが可能となる。また、環状凹部205は、環状突起22の外側にあたる部位に形成されているので、環状凹部205の底面205aの幅方向(回転軸線Oに平行な方向)の端部に応力が集中してしまうことが環状突起22の剛性によって抑制される。
[他の実施の形態]
本発明は、上記説明した第1及び第2の実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
例えば、上記第1及び第2の実施の形態では、環状突起22の内周面22aが回転軸線Oに平行に形成されている場合について説明したが、環状突起22の内周面22aは、例えば径方向内方に突出するテーパ面又は円弧状の曲面を含んで形成されていてもよい。この場合、内周面22aの最小内径が第1及び第2の転動体列310,320のピッチ円直径P1,P2よりも小さいことが望ましい。
上記第1及び第2の実施の形態では、環状突起22の内径d1が第1及び第2の転動体列310,320のピッチ円直径P1,P2よりも小さい場合について説明したが、内径d1がピッチ円直径P1,P2よりも大きくてもよい。この場合でも、環状突起22が形成されていない場合に比較して、本体部20の変形を抑制する効果がある。
上記第2の実施の形態では、環状凹部205の底面205aが回転軸線Oに平行に形成されている場合について説明したが、環状凹部205の底面205aは、例えば径方向内方に窪むテーパ面又は円弧状の曲面を含んで形成されていてもよい。
上記第2の実施の形態では、第1の転動体列310のピッチ円直径P1が第2の転動体列320のピッチ円直径P2よりも大きく設定され、第1の転動体31の直径D1が第2の転動体32の直径D2よりも小さく設定されている場合について説明したが、これらのピッチ円直径P1,P2、及び直径D1,D2はそれぞれ同じであってもよい。この場合、第1の転動体列310における第1の転動体31の個数n1と第2の転動体列320における第2の転動体32の個数n2は同じとなる。
上記第1及び第2の実施の形態では、車両用軸受装置1を車両の従動輪(エンジン等の駆動源の駆動力が伝達されない車輪)を支持するために用いる場合について説明したが、駆動輪(駆動源の駆動力が伝達される車輪)を支持する車両用軸受装置に本発明を適用することも可能である。この場合、ハブ輪6の胴部60に回転軸線Oに平行なスプライン嵌合部を有する貫通孔が形成され、このスプライン嵌合部に相対回転不能に連結されるシャフトから駆動源の駆動力が伝達される。
1…車輪用軸受装置、2,2A…外方部材、5…内方部材、6…ハブ輪、7…内輪部材、9…ナックル、9a…接触面、20…本体部、20a…外周面、20b…内周面、21,21D…フランジ、21a…第1の側面、21b…第2の側面、22…環状突起、22a…内周面、22b,22c…テーパ面、31,32…転動体、41…第1の保持器、42…第2の保持器、60…胴部、61…車輪取付フランジ、61a…ボルト挿通孔、62…連結部、80…ボルト、80a…螺子部、81…シール部材、82…キャップ、83…ボルト、90…螺子孔、100…車輪用軸受装置、200,200A〜200E…外方部材、200Aa…外周面、200Bc…外周面、200Ca,200Cb…側面、200a…外周面、200c…外周面、201…第1の外側軌道面、202…第2の外側軌道面、203…第1の肩部、203a…周面、204…第2の肩部、204a…周面、205…環状凹部、205a…底面、211〜214…第1乃至第4の突部、210…ボルト挿通孔、211a〜214a,211Da,212Da,213Da,214Da…第1乃至第4のボルト挿通孔、211E…突部、211E,212E,213E,214E…第1乃至第4の突部、211Ea,212Ea,213Ea,214Ea…ボルト挿通孔、310…第1の転動体列、320…第2の転動体列、501…第1の内側軌道面、502…第2の内側軌道面、601…大径部、602…小径部、602a…加締め部、d1…内径、d2…深さ、L…径方向距離、L1〜L4,L1´〜L4´…間隔、O…回転軸線、P1,P2…ピッチ円直径、V…仮想面

Claims (3)

  1. 円周方向に複数の転動体を配置してなる第1及び第2の転動体列と、
    車輪が取り付けられるハブ輪を含み、前記第1及び第2の転動体列の前記複数の転動体をそれぞれ転動させる第1及び第2の内側軌道輪を有する内方部材と、
    車体に連結されたナックルに固定される軸受用外輪と、
    前記第1及び第2の転動体列の前記複数の転動体を保持する第1及び第2の保持器とを備え、
    前記軸受用外輪は、
    前記第1の転動体列の前記複数の転動体を転動させる第1の外側軌道面、及び前記第2の転動体列の前記複数の転動体を転動させる第2の外側軌道面を内周面に有する円筒状の本体部と、
    前記本体部の外周面から径方向外方に突出して設けられ、前記ナックルへの固定のためのボルトを挿通させる複数のボルト挿通孔を有するフランジと、
    前記本体部の前記内周面における前記第1の外側軌道面と前記第2の外側軌道面との間に径方向内方に突出して設けられ、前記本体部の剛性を高める環状突起と、を一体に有し、
    前記本体部の前記第1の外側軌道面の前記第2の外側軌道面側には、前記第1の外側軌道面に隣接して第1の肩部が形成され、
    前記本体部の前記第2の外側軌道面の前記第1の外側軌道面側には、前記第2の外側軌道面に隣接して第2の肩部が形成され、
    前記第1の肩部の周面は前記第1の保持器と径方向に対向し、かつ前記第2の肩部の周面は前記第2の保持器と径方向に対向し、
    前記環状突起は、前記フランジよりも前記車輪側であって前記第1の肩部と前記第2の肩部との間に設けられ、前記第1の保持器と前記第2の保持器との間から径方向内方に突出し、その内径は、前記第1の転動体列のピッチ円直径、及び前記第2の転動体列のピッチ円直径よりも小さい、
    車輪用軸受装置。
  2. 前記フランジは、前記第1の外側軌道面よりも前記第2の外側軌道面に近い部位に設けられ、
    前記第1の転動体列のピッチ円直径は、前記第2の転動体列のピッチ円直径よりも大きく、
    前記第1の転動体列の前記複数の転動体の直径は、前記第2の転動体列の前記複数の転動体の直径よりも小さく、
    前記第1の転動体列の前記複数の転動体の個数は、前記第2の転動体列における前記複数の転動体の個数よりも多い、
    請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記本体部の外周面における前記環状突起の外側にあたる部位に環状凹部が形成されている、
    請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置。
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