JP6243795B2 - 難燃性樹脂組成物を含む成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性樹脂組成物を含む成形体に関するものである。
ポリプロピレンは、成形加工性、耐水性、耐油性、耐酸性、耐アルカリ性などに優れた特性を有しているものの、耐熱性、剛性に劣る欠点を有している。当該欠点を改良する方法としては、ポリプロピレンとポリフェニレンエーテルを配合し、これらの特性が改良された樹脂組成物とすることが知られている。さらに、この樹脂組成物に難燃性を付与させるために、従来から一般にハロゲン系化合物及び三酸化アンチモンを添加する等の難燃化手法が用いられてきた。しかし、上記ハロゲン系化合物や三酸化アンチモン等の難燃剤は、環境衛生上好ましくないため、難燃化手法の改善が求められており、ハロゲン系化合物や三酸化アンチモンを含まない難燃剤を用いた難燃手法が検討されている。
上記の問題を解決しようとするものとして、例えば、特許文献1〜3ではポリプロピレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂にホスフィン酸金属塩、縮合リン酸エステル等のリン系難燃剤を配合することが提案されている。特に、特許文献2では、金属ジアルキルホスフィン酸塩とリン酸メラミンと液体リン酸トリアリールの混合物を配合することが提案されている。
特表2010−540716号公報 国際公開第2011/129129号パンフレット 特開2013−14691号公報
しかし、上記特許文献1〜3に記載の技術では、ポリプロピレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂からなる樹脂組成物に、クリープ特性等の長期的機械特性を保持したまま実用に十分な難燃性を付与させることは困難であり、長期的な機械特性と難燃性をともに高いレベルで要求される用途に用いることはできないのが現状である。さらに、複数の難燃剤を同時に使用する組成物にあっては、成形品の寸法精度が出しにくくなるという問題もある。
本発明は上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、難燃性及びクリープ特性のバランスに優れ、寸法精度にも優れる成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、少なくともポリフェニレンエーテル樹脂、ポリプロピレン樹脂及び金属ホスフィン酸塩を含有する樹脂組成物を含み、該ポリフェニレンエーテル樹脂の水酸基量と該金属ホスフィン酸塩の数平均粒子径とが特定の関係を満たす成形体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]ポリフェニレンエーテル樹脂(I)と、ポリプロピレン樹脂(II)と、下記一般式(1)で表される金属ホスフィン酸塩(III)と、を含有する樹脂組成物を含む成形体であって、
前記成形体中のポリフェニレンエーテル樹脂(I)の単量体100単位当たりの水酸基の個数をX個、金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径をYμmとしたとき、Y/Xの値が1.5以上15以下である、成形体。
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、マンガン、ナトリウム、カリウム及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、mは1〜3である。)
[2]前記Y/Xの値が2以上7以下である、[1]に記載の成形体。
[3]前記樹脂組成物が、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックPと、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が30〜90%である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックQと、を含むブロック共重合体の少なくとも一部が水素添加された水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)をさらに含む、[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]前記ポリフェニレンエーテル樹脂(I)とポリプロピレン樹脂(II)の質量比(I)/(II)が20/80〜80/20である、[1]〜[3]のいずれかに記載の成形体。
[5]前記金属ホスフィン酸塩(III)の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル樹脂(I)と前記ポリプロピレン樹脂(II)の合計100質量部に対して1〜30質量部である、[1]〜[4]のいずれかに記載の成形体。
[6]前記水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)の含有量が、(I)成分と(II)成分の合計100質量部に対して1〜30質量部である、[3]〜[5]のいずれかに記載の成形体。
[7]繊維状及び/又は板状の無機フィラー(V)をさらに含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の成形体。
本発明によれば、難燃性及びクリープ特性のバランスに優れ、寸法精度にも優れる成形体を得ることができる。
図1は、実施例で用いたクリープ特性測定用テストピースの簡略正面図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
本実施形態の成形体は、ポリフェニレンエーテル樹脂(I)と、ポリプロピレン樹脂(II)と、下記一般式(1)で表される金属ホスフィン酸塩(III)と、を含有する樹脂組成物を含む成形体であって、前記成形体中のポリフェニレンエーテル樹脂(I)の単量体100単位当たりの水酸基の個数をX個、金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径をYμmとしたとき、Y/Xの値が1.5以上15以下である。
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、マンガン、ナトリウム、カリウム及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、mは1〜3である。)
上記のように構成されているため、本実施形態の成形体は、難燃性及びクリープ特性のバランスに優れ、寸法精度にも優れるものとなる。
[1.樹脂組成物]
<ポリフェニレンエーテル樹脂(I)>
本実施形態における樹脂組成物に含有されるポリフェニレンエーテル樹脂(I)(以下「成分(I)」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、及び両者の混合物が挙げられる。成分(I)は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
成分(I)の還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液,30℃測定)は、0.25〜0.45の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.36の範囲である。
(ポリフェニレンエーテル)
ポリフェニレンエーテルとしては、以下に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造からなるホモ重合体又は下記一般式(2)で表される繰り返し単位構造を有する共重合体が挙げられる。
式(2)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜7の第1級又は第2級のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものである。
このようなポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。その具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等のホモ重合体;2,6−ジメチルフェノールと、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール等の他のフェノール類との共重合体が挙げられる。このなかでも、好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体であり、より好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
ポリフェニレンエーテルの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。その具体例としては、第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば、2,6−キシレノールを酸化重合することにより製造する方法が挙げられる(米国特許第3306874号明細書参照)。あるいは、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、特開昭63−152628号公報等に記載された方法を用いることができる。
(変性ポリフェニレンエーテル)
変性ポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、上記のポリフェニレンエーテルにスチレン系モノマー若しくはその誘導体がグラフト化又は付加したものが挙げられる。グラフト化又は付加の割合は、特に限定されないが、変性ポリフェニレンエーテルの総量に対し、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜7質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
変性ポリフェニレンエーテルの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下に、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃で、上記のポリフェニレンエーテルと、スチレン系モノマー又はその誘導体とを反応させる方法が挙げられる。
(ポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンエーテルとの混合物)
ポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンエーテルとの混合物を使用する場合には、上記のポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンエーテルの混合割合は限定されず、任意の割合で混合できる。
<ポリプロピレン樹脂(II)>
本実施形態における樹脂組成物に含有されるポリプロピレン樹脂(II)(以下「成分(II)」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、及び両者の混合物が挙げられる。成分(II)は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
(II)成分のメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)は、好ましくは0.1〜100g/10分であり、より好ましくは0.1〜80g/10分であり、さらに好ましくは0.5〜50g/10分である。MFRが上記範囲内である場合、寸法精度とクリープ特性により優れた成形体が得られる傾向にある。なお、MFRは、ISO1133に準拠し230℃、荷重2.16kgの条件で測定することができる。
(ポリプロピレン)
本実施形態で用いることができるポリプロピレンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレンを繰り返し単位構造とするホモ重合体又は共重合体が挙げられる。このなかでも、結晶性プロピレンホモポリマー、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体、又は結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物が好ましい。なお、ポリプロピレンは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、特に限定されないが、例えば、結晶性プロピレンホモポリマー部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを有するものが挙げられる。結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体のエチレン含有量は、0.1〜70質量%であることが好ましい。
ポリプロピレンの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。その具体例としては、三塩化チタン触媒、又は塩化マグネシウムなどの担体に担持したハロゲン化チタン触媒等と、アルキルアルミニウム化合物と、の存在下に、重合温度0〜100℃の範囲で、重合圧力3〜100気圧で、プロピレンを重合する方法が挙げられる。この際、重合体の分子量を調整するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。また重合方式としては、バッチ式、連続式いずれの方式を用いてもよい。重合方法としては、特に限定されず、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合等の方法も選択でき、さらには無溶媒下モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合方法などが適用できる。
また、上記した重合触媒の他に、得られるポリプロピレンのアイソタクティシティ及び重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を内部ドナー成分又は外部ドナー成分として用いることができる。これらの電子供与性化合物としては公知のものが使用でき、以下に限定されないが、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチルなどのエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのリン酸誘導体;アルコキシエステル化合物;芳香族モノカルボン酸エステル;芳香族アルキルアルコキシシラン;脂肪族炭化水素アルコキシシラン;各種エーテル化合物;各種アルコール類;各種フェノール類などが挙げられる。
上記の中でも、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、結晶性プロピレンホモポリマー部分を得る重合の第一工程と、エチレンと、必要に応じて他のα−オレフィンと、を共重合して、結晶性プロピレンホモポリマー部分と接続したプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を得る重合の第二工程と、を有する方法が挙げられる。ここで、他のα−オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等が挙げられる。
(変性ポリプロピレン)
変性ポリプロピレンとしては、特に限定されないが、例えば、上記したポリプロピレンをα,β−不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(酸無水物やエステルも含む)でグラフト又は付加したものが挙げられる。グラフト化又は付加の割合は、特に限定されないが、変性ポリプロピレンの総量に対し、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜7質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
変性ポリプロピレンの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤の存在下、非存在下、溶融状態、溶液状態、スラリー状態で30〜350℃の温度下で、上記したポリプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とを反応させる方法が挙げられる。
(ポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合物)
ポリプロピレンと変性ポリプロピレンとの混合物を使用する場合には、上記のポリプロピレンと変性ポリプロピレンの混合割合は限定されず、任意の割合で混合できる。
上記ポリフェニレンエーテル樹脂(I)と、ポリプロピレン樹脂(II)の質量比(I)/(II)は20/80〜80/20であることが好ましく、より好ましくは30/70〜80/20であり、さらにより好ましくは40/60〜80/20である。成分(II)の含有量が上記範囲内である場合、寸法精度、クリープ特性により優れた成形体が得られる傾向にある。
<金属ホスフィン酸塩(III)>
本実施形態で用いる金属ホスフィン酸塩(III)(以下、「成分(III)」ともいう。)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、マンガン、ナトリウム、カリウム及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、mは1〜3である。)
金属ホスフィン酸塩の具体例には、以下に限定されないが、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛などが含まれ、好ましくはジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム及びジエチルホスフィン酸亜鉛であり、さらに好ましくはジエチルホスフィン酸アルミニウムである。
金属ホスフィン酸塩(III)の含有量は、(I)成分と(II)成分の合計100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜20質量部である。成分(III)の含有量が1質量部以上である場合、難燃性により優れる傾向にある。また、成分(III)の含有量が30質量部以下である場合、クリープ特性、寸法精度により優れる傾向にある。
<水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)>
本実施形態の成形体を構成する樹脂組成物は、水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)(以下「成分(IV)」ともいう。)をさらに含むことが好ましい。成分(IV)は、成分(I)と成分(II)の混和剤又は耐衝撃性付与剤の少なくともいずれかとして作用する。成分(IV)としては、特に限定されないが、例えば、水素添加ブロック共重合体、変性水素添加ブロック共重合体、及び両者の混合物が挙げられる。成分(IV)は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
(水素添加ブロック共重合体)
水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックPと、1,2−ビニル結合量及び3,4−ビニル結合量の合計量が30〜90%である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックQと、を含むブロック共重合体の少なくとも一部を水素添加したものである。ここで、「1,2−ビニル結合量及び3,4−ビニル結合量の合計量」とは、1,2−ビニル結合量と、3,4−ビニル結合量と、1,4−共役結合量との総量に対する、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計量の割合をいう。
(重合体ブロックP)
重合体ブロックPとしては、特に限定されないが、例えば、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブロック、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックが挙げられる。重合体ブロックPにおいて「ビニル芳香族化合物を主体とする」とは、重合体ブロックP中にビニル芳香族化合物を50質量%を超えて含有することをいう。重合体ブロックP中のビニル芳香族化合物の含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。重合体ブロックP中のビニル芳香族化合物の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは100質量%である。
重合体ブロックPを構成するビニル芳香族化合物としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。このなかでも、スチレンが好ましい。重合体ブロックPを構成するビニル芳香族化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。重合体ブロックPの数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは15,000以上であり、より好ましくは20,000以上であり、さらに好ましくは25,000以上である。また、重合体ブロックPの数平均分子量の上限は、特に限定されないが、好ましくは100,000以下である。上記数平均分子量が上記好ましい範囲にある場合、本実施形態の成形体のクリープ特性がより向上する傾向にある。重合体ブロックPの数平均分子量の測定は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)によって行うことができる。
(重合体ブロックQ)
重合体ブロックQとしては、特に限定されないが、例えば、共役ジエン化合物のホモ重合体ブロック、又は共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックが挙げられる。重合体ブロックQにおいて「共役ジエン化合物を主体とする」とは、重合体ブロックQ中に共役ジエン化合物を50質量%を超えて含有することをいう。流動性の観点から、重合体ブロックQ中の共役ジエン化合物の含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。重合体ブロックQ中の共役ジエン化合物の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは100質量%である。
重合体ブロックQを構成する共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。このなかでも、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましく、ブタジエンがより好ましい。重合体ブロックQを構成する共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
重合体ブロックQのミクロ構造(共役ジエン化合物の結合形態)において、1,2−ビニル結合量及び3,4−ビニル結合量の合計量(以下、「全ビニル結合量」ともいう。)は、30〜90%であり、好ましくは45〜90%であり、より好ましくは65〜90%である。重合体ブロックQにおける共役ジエン化合物の全ビニル結合量が上記範囲である場合、成分(II)との相溶性がより優れる傾向にある。特に、重合体ブロックQがブタジエンを主体とする重合体である場合には、重合体ブロックQにおけるブタジエンの全ビニル結合量が65〜90%であることが好ましい。重合体ブロックQにおける共役ジエン化合物の全ビニル結合量を30%以上とする場合、得られる樹脂組成物に分散する成分(I)の分散性がより向上する傾向にある。また、重合体ブロックQにおける共役ジエン化合物の全ビニル結合量が90%以下であることにより、成分(I)の分散性がより向上する傾向にある上、経済性にもより優れた樹脂組成物ないし成形体が得られる傾向にある。
本実施形態において、全ビニル結合量は、赤外分光光度計によって測定することができる。なお、全ビニル結合量の算出はAnalytical Chemistry,Volume21,No.8,August 1949に記載の方法に準じて行うことができる。
(ブロック共重合体)
少なくとも重合体ブロックPと、少なくとも重合体ブロックQとを含むブロック共重合体の少なくとも一部を水素添加した水素添加ブロック共重合体を成分(IV)とすることが好ましい。
重合体ブロックPを「P」とし、重合体ブロックQを「Q」とすると、成分(IV)としては、特に限定されないが、例えば、P−Q、P−Q−P、Q−P−Q−P、(P−Q−)4M、P−Q−P−Q−P等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。(P−Q−)4Mは、四塩化ケイ素(M=Siの場合)、四塩化スズ(M=Snの場合)等といった多官能カップリング剤の反応残基、又は多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基等を含む構造を示す。
重合体ブロックPと重合体ブロックQとを含むブロック共重合体の分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、放射状又はこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
重合体ブロックP及び重合体ブロックQは、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中のビニル芳香族化合物又は共役ジエン化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組み合わせで成っていてもよい。そして、重合体ブロックP又は重合体ブロックQのいずれかが繰り返し単位中に2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
成分(IV)の水素添加前のブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物の含有量は、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜80質量%である。本実施形態において、ビニル芳香族化合物の含有量は、紫外線分光光度計によって測定することができる。
また、水素添加前のブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1000,000であり、より好ましくは10,000〜800,000であり、さらに好ましくは30,000〜500,000である。水素添加前のブロック共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)によって測定することができる。
水素添加前のブロック共重合体の分子量分布は、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは5以下である。水素添加前のブロック共重合体の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、溶媒:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)によって算出できる。
(水素添加ブロック共重合体)
成分(IV)中の共役ジエン化合物に対する水素添加率は、特に限定されないが、耐熱性の観点から、共役ジエン化合物に由来する二重結合の総量に対して、好ましくは50%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。共役ジエン化合物に対する水素添加率は、NMRによって測定できる。
成分(IV)の製造方法としては、特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。公知の製造方法としては、例えば、特開昭47−11486号公報、特開昭49−66743号公報、特開昭50−75651号公報、特開昭54−126255号公報、特開昭56−10542号公報、特開昭56−62847号公報、特開昭56−100840号公報、特開平2−300218号公報、英国特許第1130770号明細書、米国特許第3281383号明細書、米国特許第3639517号明細書、英国特許第1020720号明細書、米国特許第3333024号明細書及び米国特許第4501857号明細書に記載の方法を用いることができる。
(変性水素添加ブロック共重合体)
変性水素添加ブロック共重合体は、上記した水素添加ブロック共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(エステル化合物や酸無水物化合物)が、グラフト化又は付加したものをいう。変性水素添加ブロック共重合体は、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃で、上記した水素添加ブロック共重合体と、α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、を反応させることによって得られる。α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト化又は付加の割合は、特に限定されないが、水素添加ブロック共重合体の総量に対し、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.01〜7質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。成分(IV)は、上記の水素添加ブロック共重合体と該変性水素添加ブロック共重合体との任意の割合の混合物であってもよい。
また、本実施形態の成形体中の(IV)成分の含有量は、寸法精度、クリープ特性をより向上させる観点から、(I)成分と(II)成分の合計100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは2〜20質量部であり、さらにより好ましくは3〜15質量部である。
<フィラー(V)>
本実施形態の成形体を構成する樹脂組成物は、寸法精度、クリープ特性をより向上させる観点から、繊維状及び/又は板状のフィラー(V)(以下、「成分(V)」ともいう。)をさらに含むことが好ましい。成分(V)としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、金属繊維等の繊維状フィラー;タルク、雲母、クレー等の板状フィラーが挙げられる。成分(V)の含有量は、寸法精度、クリープ特性をより向上させる観点から成分(I)と成分(II)の合計量100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜100質量部である。
<リン酸エステル系化合物(VI)>
さらに、本実施形態の成形体を構成する樹脂組成物は、難燃性をより向上させる観点から、リン酸エステル系化合物(VI)(以下、「成分(VI)」ともいう。)さらに含むことができる。成分(VI)は難燃性向上に有効なリン酸エステル化合物全般を用いることができ、以下に限定されないが、例えば、トリフェニルフォスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5’−トリメチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン−ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン−ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート等が挙げられる。
成分(VI)は、特に、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で示される縮合リン酸エステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものがより好ましい。ここで、「主成分とする」とは、成分(VI)の総質量に対して50質量%以上を占めることをいうものとし、80質量%以上がより好ましい。
式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、いずれも置換基であり、各々独立して炭素数1から6のアルキル基を表す。R5、R6はいずれも置換基であり、メチル基を表す。R7、R8は各々独立して水素原子又はメチル基を表す。nは0以上の整数を有し、n1、n2は各々独立して0から2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は各々独立して0から3の整数を示す。
なお、上記式(3)及び(4)で示される縮合リン酸エステル化合物はそれぞれ複数の分子鎖よりなり、当該分子鎖の各々におけるnは好ましくは1〜3の整数であり、全体としてnは1以上の平均値を有することが好ましい。上述した芳香族系縮合リン酸エステル化合物は、一般にn=1〜3が90%以上の混合物であり、n=4以上の多量体やその他の副生成物を含む混合物として入手できる。
本実施形態において、(VI)リン酸エステル系化合物の配合量は、難燃性、寸法精度
及びクリープ特性のバランスの観点から5〜30質量部が好ましく、より好ましくは10〜25質量部である。
<その他の熱可塑性樹脂(VII)>
本実施形態の成形体に含まれる樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂(I)とポリプロピレン樹脂(II)以外の熱可塑性樹脂(VII)(以下、「成分(VII)ともいう。」)をさらに含むことが好ましい。成分(VII)としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレンが挙げられる。
成分(VII)の含有量は、上記した成分(I)100質量部に対して、好ましくは0〜400質量部であり、より好ましくは0〜300質量部であり、さらに好ましくは0〜200質量部である。成分(VII)の含有量が上記範囲内である場合、寸法精度、クリープ特性により優れる傾向にある。
<その他の添加剤>
本実施形態の成形体は、上述した成分(I)、成分(II)、成分(III)、成分(IV)、成分(V)、成分(VI)、及び成分(VII)の他、その他の添加剤を含んでもよい。
その他の添加剤としては、特に限定されず、例えば、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体、オレフィン系エラストマー、酸化防止剤、金属不活性化剤、熱安定剤、成分(III)、成分(VI)以外の難燃剤(ポリリン酸アンモニウム系化合物、ポリリン酸メラミン系化合物、水酸化マグネシウム、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ホウ酸亜鉛等)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、成分(V)以外の無機又は有機の充填材や強化材(カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
〔2.成形体〕
本実施形態の成形体の製造方法について説明する。本実施形態の成形体は、上述した成分(I)、成分(II)、及び成分(III)、並びに必要に応じて成分(IV)、成分(V)、成分(VI)、成分(VII)、及びその他の添加剤を含有した樹脂組成物を成形することにより製造することができる。このような樹脂組成物の製造方法としては特に限定されないが、種々の溶融混機及び混練押出機を用いて製造できる。具体的には、成分(I)、成分(II)、及び成分(III)と、を溶融混練するに際して、以下の工程を有する製造方法1又は製造方法2が好ましい。なお、混練された樹脂組成物は、ペレット化してもよい。
(樹脂組成物の製造方法1)
製造方法1は、成分(I)の全量と、成分(II)の一部又は全量とを溶融混練し、混練物を得る工程(1−1)と、該工程(1−1)で得られた混練物に対して、成分(III)の一部又は全量と、成分(II)の残部(但し、工程(1−1)で成分(II)を全量用いた場合を除く。)とを添加し、溶融混練し、混練物を得る工程(1−2)と、該工程(1−2)で得られた混練物に対して、成分(III)の残部(但し、工程(1−2)で(III)成分を全量用いた場合を除く)を添加し、溶融混練する工程(1−3)と、を有する。
(樹脂組成物の製造方法2)
製造方法2は、成分(I)の全量と、成分(II)の一部又は全量とを溶融混練し、混練物を得る工程(2−1)と、該工程(2−1)で得られた混練物に対して、成分(II)の残部(但し、工程(2−1)で成分(II)を全量用いた場合を除く。)を添加し、溶融混練し、混練物を得る工程(2−2)と、該工程(2−2)で得られた混練物に対して、成分(III)の全量を添加し、溶融混練する工程(2−3)と、を有する。
これらの製造方法1及び2のように、溶融混練時において、成分(III)を添加する工程を遅くすることで、成分(III)の分解を抑制できる。その結果、より難燃性に優れた成形体を実現可能な樹脂組成物が得られる傾向にある。成分(III)の添加のタイミングを遅くする方法としては、以下に限定されないが、例えば、複数の原料供給口を有する溶融混練機や混練押出機において、成分(III)を下流側の原料供給口から添加する方法等が挙げられる。
これらの方法を行う溶融混練機としては、特に限定されず、公知の溶融混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられる。それらの中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が好ましい。具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等を用いることができる。
また、押出機を用いる場合であれば、その種類や規格等は特に限定されず、適宜に公知の押出機を用いることができる。押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、好ましくは20以上75以下であり、より好ましくは30以上60以下である。
押出機の構成としては、特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2、第3原料供給口を設け、更にその下流に第2真空ベントを設けたもの等が好ましい。
また、第2、第3原料供給口への原料供給方法は、特に限定されず、押出機の第2、第3原料供給口の開放口から添加供給しても、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給してもよい。このなかでも押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方が安定性の観点から好ましい。
溶融混練温度及びスクリュー回転数は特に限定されるものではないが、通常、溶融混練温度200〜370℃、スクリュー回転数100〜1200rpmの中から適宜に選ぶことができる。また、液状原料を供給する際は、押出機シリンダー部分に、液添ポンプ等を用いて、直接液状の原料をシリンダー系中に送り込むことで混練することができる。この際、液状原料を送り込む方法としては、液添ポンプを用いる方法が好ましい。その液添ポンプとしては、特に限定されないが、例えば、ギアポンプやフランジ式ポンプ等を用いることができ、このなかでもギアポンプが好ましい。さらに、液状原料を送り込むのに、液添ポンプに使用する液状原料を貯めておくタンク、そのタンクとポンプ間の配管、ポンプと押出機シリンダー間の配管等液状原料の流路となる部分をヒーター等で加温、加熱し液状原料の粘度を少し小さくしてから使用すると、液添ポンプにかかる負荷が小さくなり、操作性などの面において好ましい。
(成形体の製造方法)
本実施形態の成形体は、上記樹脂組成物を従来公知の成形方法で成形することにより得ることができる。成形方法としては、特に限定されないが、例えばペレット化された樹脂組成物を、射出成形、押出成形、押出異形成形、中空成形、圧縮成形等で成形する方法が挙げられる。これらの中でも、本実施形態の効果をより効果的に発現させる観点から、射出成形が好ましい。
(成形体の特徴)
本実施形態の成形体において、該成形体中のポリフェニレンエーテル樹脂(I)の単量体100単位当たりの水酸基の個数をX個、金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径をYμmとしたとき、Y/Xの値は1.5以上15以下である。Y/Xがこの範囲にあることにより、本実施形態の成形体は、難燃性及びクリープ特性のバランスに優れ、寸法精度にも優れるものとなる。同様の観点から、好ましくは2以上10以下であり、さらに好ましくは2以上7以下である。
ポリフェニレンエーテル樹脂(I)の単量体100単位当たりの水酸基の個数Xは、Journal of Applied Polymer Science: Applied Polymer Symposium34,103−117(1978)に記載された方法で測定することができる。
ポリフェニレンエーテル樹脂(I)の水酸基濃度は、ポリフェニレンエーテル樹脂(I)に含まれるモノマー成分に対応するフェノール性化合物を重合する条件と重合停止後のキノン反応の条件によって変化する。重合の例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルについて特開2000−281776号公報、特開2000−281778号公報に記載されており、重合時に2,6−ジメチルフェノールを追添する量及び時間によって生成するキノン化合物量が変化する。一般に、重合時に追添する2,6−ジメチルフェノールの量が多いほど、追添時間が短いほど、キノン化合物の生成量が多くなる。重合停止後のキノン反応は、温度と時間によって末端水酸基濃度が変化し、温度が高いほど、時間が長いほど水酸基濃度が高くなる。以上のとおり、原料としてのポリフェニレンエーテル樹脂(I)の水酸基濃度は特に限定されず、成形体としたときのポリフェニレンエーテル樹脂(I)の水酸基濃度が本実施形態所定の関係を満たせばよい。
本実施形態で用いるポリフェニレンエーテル樹脂(I)のXを制御する方法としては、フェノール性化合物を重合する条件と重合停止後のキノン反応の条件を限定する方法で水酸基濃度を制御する方法以外に、一般に重合して得られたポリフェニレンエーテルにキノン化合物を添加してキノン反応させて水酸基濃度を高くする方法も使用することができる。
本実施形態の成形体中の金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径の測定方法としては、成形体をミクロトームで切削し、現れた切削面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した像を写真撮影し、この写真をもとに(III)成分の分散粒子100個以上の粒子径を画像解析装置を用いて実測する方法が挙げられる。
具体例としては、本実施形態における樹脂組成物を250〜300℃に設定したスクリューインライン型射出成形機(東芝機械(株)社製、「IS−100GN」)に供給し、金型温度70℃の条件においてUL−4で規定された寸法(厚み1.6mm)の試験片を射出成形する。試験片の中央部付近のコア相を流動方向に対して垂直方向にミクロトームで切削し、現れた切削面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク(株)製、S−3000N)を用いて、0.05mm2の面を800倍で写真撮影する。
写真は3箇所撮影し、各々の写真をもとに画像解析装置((株)ニレコ製、LUZEXSE)を用いて数平均粒子径を求める(測定対象は長径0.5μm以上のもの)。3点の数平均粒子径を求め、これを平均した値を、本明細書中における(成形体中の)ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径Yとする。
本実施形態で用いる金属ホスフィン酸塩(III)のYを制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、適切な数平均粒子径のものを購入し、樹脂組成物を製造する際の溶融混練条件(押出機のシリンダー温度設定、原料の供給位置、スクリュー回転数、単位時間当たりの押出量等)を調整する方法が挙げられる。適切な数平均粒子径の物がない場合は、以下に限定されないが、例えば、大きい数平均粒子径の物を入手して粉砕する方法が使用できる。なお、粉砕の方法は特に限定されない。以上のとおり、原料としての金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径は特に限定されず、成形体としたときの金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径が本実施形態所定の関係を満たせばよい。
(成形体の用途)
また、本実施形態の成形体の用途としては、特に限定されないが、例えば、自動車部品、電気機器の内外装部品が挙げられる。自動車部品としては、特に限定されないが、具体的には、バンパー、フェンダー、ドアーパネル、各種モール、エンブレム、エンジンフード、ホイールキャップ、ルーフ、スポイラー、各種エアロパーツ等の外装品;インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等の内装部品;自動車、電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に搭載される二次電池電槽部品;リチウムイオン二次電池部品等が挙げられる。また、電気機器の内外装部品としては、特に限定されないが、具体的には、各種コンピューター及びその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫、エアコン、液晶プロジェクターに用いられる部品が挙げられる。
さらに、本実施形態の成形体は、金属導体又は光ファイバーに被覆して得られる電線・ケーブル、固体メタノール電池用燃料ケース、燃料電池配水管、水冷用タンク、ボイラー外装ケース、インクジェットプリンターのインク周辺部品・部材、家具(椅子等)、シャーシ、水配管、継ぎ手などに利用できる。
以下、実施例及び比較例によって、本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、使用した原料は下記のとおりである。
ポリフェニレンエーテル樹脂(I)
(I−i)2,6−キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液)0.52、単量体100単位あたりの水酸基の数0.88のポリフェニレンエーテル
(I−ii)2,6−キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液)0.42、単量体100単位あたりの水酸基の数1.05のポリフェニレンエーテル
(I−iii)2,6−キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度(ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液)0.50、単量体100単位あたりの水酸基の数0.38のポリフェニレンエーテル
なお、還元粘度は、ηsp/c:0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、30℃で測定した。
ポリプロピレン樹脂(II)
(II−i)MFR=0.4g/10分のポリプロピレンホモポリマー
(II−ii)MFR=5.9g/10分のポリプロピレンホモポリマー
(II−iii)MFR=15g/10分のポリプロピレンホモポリマー
ポリプロピレン樹脂(II)のMFRは、230℃、荷重2.16kgの条件下で、ISO 1133に準拠して測定した。
金属ジアルキルホスフィン酸塩(III)
(III−i)クラリアント社製 Exolit OP1230
(III−ii)クラリアント社製 Exolit OP930
なお、上記(III−i)と(III−ii)はいずれもジアルキルホスフィン酸アルミニウムである。
水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)
水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンの構造(B−A−B−A)を有し、結合スチレン量44質量%、ポリマー全体の数平均分子量95,000、分子量分布1.06、ポリスチレン部(A)の数平均分子量20900、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量が75%、ポリブタジエン部の水素添加率が99.9%の水添ブロック共重合体を定法に従って合成した。
ポリブタジエン部分のビニル結合量は、赤外分光光度計によって測定し、算出方法はAnalytical Chemistry,Volume21,No.8,August 1949に記載の方法に準じて行った。また、結合スチレン量の測定は、紫外線分光光度計によって行った。さらに、ポリスチレン鎖の数平均分子量の測定は、GPC(移動層:クロロホルム、標準物質:ポリスチレン)によって行った。またさらに、ポリブタジエン部分の水素添加率はNMRによって測定した。
無機フィラー(V)
(V−i)ガラスチョップドストランドECS03T−249(日本電気硝子製)
(V−ii)タルク タルカンパウダー PK−C(林化成製)
リン酸エステル系化合物(VI)
ビスフェノール−A−ビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学工業製)
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造装置として、二軸押出機ZSK−25(コペリオン社製)を用いた。該二軸押出機において、原料の流れ方向に対し上流側に第1原料供給口、これより下流に第2、第3原料供給口、更に下流に液添ポンプを設け、第1原料供給口と第2原料供給口、第3原料供給口と液添ポンプの間に真空ベントを設けた。また、第2、第3供給口への原料供給方法は、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法とした。上記のように設定した二軸押出機に、(I)〜(VI)成分を表1に示した組成で供給し、押出温度とスクリュー回転数を表1に示した数値に設定し、吐出量15kg/時間の条件にて溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
<成形体の製造方法>
上記で得た実施例1〜18及び比較例1〜11の樹脂ペレットを、シリンダー温度240℃に設定した東芝機械製IS−100GN成形機に供給し、金型温度60℃、射出圧力60MPaの条件で成形し、UL−94垂直燃焼試験測定用テストピース(1.6mm厚み)を5本射出成形した。
<難燃性の測定方法>
これら5本の試験片を用いて、UL−94垂直燃焼試験に基づき難燃性を評価した。10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt1(秒)とし、再び10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt2(秒)とし、各5本について、t1とt2の平均燃焼時間を求めた。一方、t1とt2を合わせた10点の中のうち、最大のものを最大燃焼時間とした。また、UL−94規格に基づき、V−0、V−1、V−2、HBの判定を実施した。
<寸法精度(成形収縮率)の評価方法>
上記で得た樹脂ペレットを、シリンダー温度240℃に設定した住友重機械工業株式会社製SE−130成形機に供給し、金型温度60℃、射出圧力100MPaの条件で成形し、120mm×80mm×2mmの平板を得た。得られた平板を23℃、50RH%の条件下に24時間放置した後、平板の長辺と短辺の長さを測定し、実金型寸法から成形収縮率を算出した。成形収縮率が小さいものほど、寸法精度に優れる。
<クリープ特性の評価方法>
上記で得た樹脂ペレットを、シリンダー温度245℃に設定した東洋機械金属製Ti−50G2成形機に供給し、金型温度60℃、射出圧力65MPaの条件で成形し、クリープ測定用テストピースを得た。なお、クリープ測定用テストピースとしては、図1に示す形状のダンベル成形品(厚さ1mm)を用いた。テストピースの幅L1は65mm、幅L2は40mm、幅L3は22mm、高さHは10mmとした。
得られた試験片を、クリープ試験機(安田精機製作所社製、「145−B−PC型」)を用いて、チャック間距離を40mm、試験荷重を応力12.25MPa相当、試験温度を80℃、試験時間を165時間の条件でクリープ測定(耐熱クリープ性試験)を行った。耐熱クリープ性(クリープ特性)は、以下の式で求めた歪[%]により評価した。この歪の数値が小さいほど、クリープ特性に優れる。
歪[%]=(165時間後のテストピースの変位)/(チャック間距離)×100
<成形体中の(I)成分の水酸基量Xの定量>
ポリフェニレンエーテル樹脂(I)の単量体100単位当たりの水酸基の個数Xは、Journal of Applied Polymer Science: Applied Polymer Symposium34,103−117(1978)に記載された方法で測定することとした。すなわち、上記で得られたクリープ特性測定用のテストピースを用い、前記文献記載の方法にて(I)成分の水酸基量Xの定量を行った。
<成形体中の(III)成分の数平均粒子径Yの測定>
成形体中の(III)成分の数平均粒子径Yは、次のようにして測定した。まず、上記で得られたクリープ特性測定用のテストピースの中央付近をミクロトームで切削した。次いで、現れた切削面を走査型電子顕微鏡(SEM:日立ハイテク(株)製、S−3000N)を用いて観察した像を写真撮影した(0.05mm2の面を800倍で写真撮影)。この写真をもとに(III)成分の分散粒子100個以上の粒子径を画像解析装置を用いて実測することとした。写真は3箇所撮影し、各々の写真をもとに画像解析装置((株)ニレコ製、LUZEXSE)を用いて数平均粒子径を求めた(測定対象は長径0.5μm以上のもの)。3点の数平均粒子径を求め、これを平均した値を、各例の数平均粒子径Yとした。
表1の結果より、本実施形態の組成物と製造方法によれば、難燃性及びクリープ特性のバランスに優れ、寸法精度にも優れる成形体が得られることが分かった。また、本実施形態の範囲外である場合、得られる成形体は、難燃性及びクリープ特性のいずれかが十分でなく、さらにいずれも寸法精度が十分でないことが分かった。
本発明に係る成形体は、難燃性及びクリープ特性のバランスに優れ、寸法精度にも優れており、これらの特性が要求される種々の用途に好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリフェニレンエーテル樹脂(I)と、ポリプロピレン樹脂(II)と、下記一般式(1)で表される金属ホスフィン酸塩(III)と、を含有する樹脂組成物を含む成形体であって、
    前記成形体中のポリフェニレンエーテル樹脂(I)の単量体100単位当たりの水酸基の個数をX個、金属ホスフィン酸塩(III)の数平均粒子径をYμmとしたとき、Y/Xの値が1.5以上15以下である、成形体。
    (式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、マンガン、ナトリウム、カリウム及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上であり、mは1〜3である。)
  2. 前記Y/Xの値が2以上7以下である、請求項1に記載の成形体。
  3. 前記樹脂組成物が、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックPと、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量が30〜90%である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックQと、を含むブロック共重合体の少なくとも一部が水素添加された水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)をさらに含む、請求項1又は2に記載の成形体。
  4. 前記水素添加ブロック共重合体樹脂(IV)の含有量が、(I)成分と(II)成分の合計100質量部に対して1〜30質量部である、請求項3に記載の成形体。
  5. 前記ポリフェニレンエーテル樹脂(I)とポリプロピレン樹脂(II)の質量比(I)/(II)が20/80〜80/20である、請求項1〜のいずれか1項に記載の成形体。
  6. 前記金属ホスフィン酸塩(III)の含有量が、前記ポリフェニレンエーテル樹脂(I)と前記ポリプロピレン樹脂(II)の合計100質量部に対して1〜30質量部である、請求項1〜のいずれか1項に記載の成形体。
  7. 繊維状及び/又は板状の無機フィラー(V)をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形体。

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