JP6260321B2 - Ag合金膜形成用スパッタリングターゲット - Google Patents

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本発明は、ディスプレイや照明に使用される発光素子及び光記録用ディスク等の光反射層、タッチパネル等の配線等に使用されるAg合金膜を形成するためのAg合金膜形成用スパッタリングターゲットに関するものである。
一般に、有機ELや反射型液晶等のディスプレイや、LED等の発光素子、あるいは光記録用ディスク等には、光取り出し効率を向上させる目的で光反射層が形成されている。ここで、Ag及びAg合金からなるAg膜及びAg合金膜は、反射率が高いことから、上述の光反射層として広く使用されている。例えば、特許文献1には、半導体発光素子の電極の構成材料として、高効率で光を反射するAgまたはAg合金を用いることが開示されている。また、特許文献2には、有機EL素子の反射電極の構成材料としてAg合金を用いることが開示されている。特許文献3には、光記録媒体の反射層の構成材料として、AgまたはAg合金を用いることが開示されている。また、Ag膜及びAg合金膜は、上述の用途のみでなく、光学機器用反射ミラー、太陽電池用反射膜、照明装置のリフレクタ等にも利用されている。
一方、上述のAg膜及びAg合金膜は、比抵抗値が低く導電性に優れていることから、例えば特許文献4に開示されているように、タッチパネルの引き出し配線としても使用されている。
特開2006−245230号公報 特開2012−059576号公報 特開2004−322556号公報 特開2009−031705号公報
ところで、最近では、有機EL素子、タッチパネル用配線等を製造する際のガラス基板の大型化に伴い、膜形成に使用されるスパッタリングターゲットも大型化している。ここで、大型のスパッタリングターゲットに対して高い電力を投入してスパッタリングを実施する際には、ターゲットの異常放電によって「スプラッシュ」と呼ばれる現象が発生するおそれがあった。このスプラッシュ現象が発生した場合には、溶融した微粒子が基板に付着して配線や電極間を短絡させ、歩留りが大幅に低下するといった問題が生じる。このため、大型のスパッタリングターゲットを使用した場合であっても異常放電を抑制することが求められている。
また、上述の発光素子やディスプレイにおいては、その製造過程で高温の熱処理が行われることがあるため、熱処理後にAg膜またはAg合金膜の反射率が劣化し、十分な特性を発揮できなくなるおそれがあった。このため、できるだけ純Ag膜に近い高反射率及び低い比抵抗値を維持しつつ、熱処理後においても反射率が劣化しないAg合金膜が求められている。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、反射率等の光学特性に優れるとともに低い比抵抗値を有し、かつ、耐熱性に優れ、熱処理後においても反射率等の光学特性が大きく劣化しないAg合金膜を形成することができるとともに、大型のスパッタリングターゲットを用いて成膜した際でも異常放電の発生を抑制することが可能なAg合金膜形成用スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットは、Sbを0.01原子%以上3.00原子%以下、Caを0.01原子%以上0.15原子%以下含有し、残部がAgと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴としている。
このような構成とされた本発明のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットにおいては、Sbの含有量が0.01原子%以上とされているので、後述するCaとの相乗効果によって加工性が向上することにより、ターゲット表面加工の加工跡が細かくなり、ターゲット表面の表面粗さが小さくなることから、成膜時の異常放電の発生を抑制することができる。また、成膜されたAg合金膜の耐熱性を向上させることができる。また、Sbの含有量が3.00原子%以下とされているので、成膜されたAg合金膜の反射率を高く、かつ比抵抗値を低くすることができる。
さらに、Caの含有量が0.01原子%以上とされているので、加工性が向上しターゲットの表面加工後の表面粗さが小さくなり、成膜時の異常放電の発生を抑制することができる。また、Caの含有量が0.15原子%以下とされているので、スパッタリングターゲット製造時の割れの発生を抑制することができる。
ここで、本発明のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットにおいては、含有されるSbとCaの原子比がSb/Ca≧1.0であることが好ましい。
この構成のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットによれば、スパッタ面の表面粗さをより小さくすることができる。
また、本発明のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面の算術平均粗さが1.0μm以下、十点平均粗さが6.0μm以下であることが好ましい。
この構成のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットによれば、スパッタ面の算術平均粗さが1.0μm以下、十点平均粗さが6.0μm以下とされているので、成膜時の異常放電の発生を確実に抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、反射率等の光学特性に優れるとともに低い比抵抗値を有し、かつ、耐熱性に優れ、熱処理後においても反射率等の光学特性及び比抵抗値が大きく変化しないAg合金膜を形成することができるとともに、大型のスパッタリングターゲットを用いて成膜した際でも異常放電の発生を抑制することが可能なAg合金膜形成用スパッタリングターゲットを提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態であるAg合金膜形成用スパッタリングターゲット、および、Ag合金膜について説明する。
本実施形態であるAg合金膜形成用スパッタリングターゲットは、Ag合金膜を形成する際に用いられるものである。ここで、本実施形態であるAg合金膜は、例えばディスプレイ、発光素子等の光反射層を構成するAg合金反射膜、タッチパネルのパネル面周縁部に形成される配線を構成するAg合金導電膜として使用される。
<Ag合金膜形成用スパッタリングターゲット>
本実施形態であるAg合金膜形成用スパッタリングターゲットは、Sbを0.01原子%以上3.00原子%以下、Caを0.01原子%以上0.15原子%以下含有し、残部がAgと不可避不純物とからなる組成を有するAg合金で構成されている。
以下に、本実施形態であるAg合金膜形成用スパッタリングターゲットの組成を上述のように規定した理由について説明する。
(Sb:0.01原子%以上3.00原子%以下)
Sbは、Agに固溶することでAgの粒成長を抑制し、後述するCaとの相乗効果によって、スパッタリングターゲットを構成するAg合金の加工性を向上させる作用効果を有する元素である。これにより表面加工時の加工跡が細かくなってターゲット表面の表面粗さが小さくなり、スパッタリングターゲットを大型化した場合であっても、成膜時の異常放電の発生を抑制することが可能となる。また、成膜したAg合金膜の耐熱性を向上させる作用効果も有する。
ここで、スパッタリングターゲットにおけるSbの含有量が0.01原子%未満の場合には、上述の作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、スパッタリングターゲットにおけるSbの含有量が3.00原子%未満を超える場合には、成膜したAg合金膜の反射率が低く、かつ、比抵抗値が高くなるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、スパッタリングターゲットにおけるSbの含有量を0.01原子%以上3.00原子%以下の範囲内に設定している。なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、スパッタリングターゲットにおけるSbの含有量を、0.01原子%以上2.00原子%以下の範囲内とすることが好ましい。
(Ca:0.01原子%以上0.15原子%以下)
Caは、添加することでスパッタリングターゲットを構成するAg合金の加工性を向上させる作用効果を有する元素である。
ここで、スパッタリングターゲットにおけるCaの含有量が0.01原子%未満の場合には、上述の作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、スパッタリングターゲットにおけるCaの含有量が0.15原子%を超える場合には、スパッタリングターゲットを構成するAg合金が著しく硬化し、スパッタリングターゲットの製造時に割れ等が発生してしまうおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、スパッタリングターゲットにおけるCaの含有量を、0.01原子%以上0.15原子%以下の範囲内に設定している。
また、Caの含有量は、Sbに対して原子比でSb/Ca≧1.0とすることで、スパッタ面の表面粗さをより小さくすることができる。
<Ag合金膜>
本実施形態であるAg合金膜は、上述のように、ディスプレイ、発光素子等の光反射層として使用される。これらの用途においては、特定の波長の光に対する反射率が高いこと、あるいは、広い波長域の光に対する反射率が高いことが要求される。また、ディスプレイや発光素子の製造過程においては、光反射層を形成した後に、例えば250℃以上の熱処理が施されることがあるため、熱処理後においても高い反射率を確保する必要がある。
さらに、本実施形態であるAg合金膜は、上述のように、タッチパネルのパネル面周縁部に形成される配線を構成するAg合金導電膜として使用される。これらの用途においては、比抵抗値が低いことが求められている。
ここで、本実施形態であるAg合金膜は、上述のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットを用いて成膜されたものである。
以上のような構成とされた本実施形態であるAg合金膜形成用スパッタリングターゲットによれば、Sbを0.01原子%以上3.00原子%以下、Caを0.01原子%以上0.15原子%以下含有し、残部がAgと不可避不純物とからなる組成のAg合金で構成されているので、スパッタリングターゲットを構成するAg合金の加工性が向上することになる。これにより、表面加工時の加工跡が細かくなってターゲット表面の表面粗さが小さくなり、スパッタリングターゲットを大型化した場合であっても異常放電の発生を抑制することができ、成膜を安定して実施することができる。また、反射率等の光学特性に優れ、かつ、低い比抵抗値を有するとともに、耐熱性に優れたAg合金膜を成膜することができる。
また、Caの含有量が0.15原子%以下とされているので、スパッタリングターゲットを構成するAg合金が著しく硬化してスパッタリングターゲットの製造時に割れ等が発生してしまうことを抑制できる。よって。Ag合金膜形成用スパッタリングターゲットを安定して製造することができる。
また、本実施形態であるAg合金膜は、上述のAg合金膜形成用スパッタリングターゲットによって成膜されており、反射率等の光学特性に優れるとともに低い比抵抗値を有し、かつ耐熱性に優れているので、ディスプレイや発光素子の製造過程において250℃以上といった比較的高温で熱処理された場合であっても反射率等の光学特性が大きく劣化しない。このため、ディスプレイ、発光素子等の光反射層を構成するAg合金反射膜、タッチパネルのパネル面周縁部に形成される配線を構成するAg合金導電膜として、特に適している。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ディスプレイ、発光素子等の光反射層を構成するAg合金反射膜、タッチパネルのパネル面周縁部に形成される配線を構成するAg合金導電膜として使用されるものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば透明導電膜や赤外線反射膜に用いられる半透明膜等、その他の用途に適用してもよい。
以下に、本発明に係るAg合金膜形成用スパッタリングターゲット及びAg合金膜の作用効果について評価した評価試験の結果について説明する。
<Ag合金膜形成用スパッタリングターゲット>
溶解原料として、純度99.9質量%以上のAgと、純度99.9質量%以上のSb,Caと、を準備し、表1に示す所定の組成となるように秤量した。
次に、溶解炉を用いて、Agを高真空または不活性ガス雰囲気中で溶解し、得られたAg溶湯に、Sb,Caを添加し、真空または不活性ガス雰囲気中で溶解した。その後、鋳型へと注湯して、表1に示す組成の鋳塊を製造した。より具体的には、Agの溶解時には、雰囲気を一度真空(5×10−2Pa以下)にしたあとArガスで置換した雰囲気で行った。また、Sb,Caの添加は、Arガス雰囲気中で実施した。なお、Caは、予め作製したAgCa合金の形で添加すると、合金の均一性とCaの微量添加制御の観点から好ましい。
次いで、得られた鋳塊に対して、圧下率70%で冷間圧延を行って板材を得た後、大気中で600℃、2時間保持の熱処理を実施した。そして、機械加工を実施することにより、直径152.4mm、厚さ6mm寸法を有する本発明例1〜9の組成のスパッタリングターゲット、及び、比較例1〜4の組成のスパッタリングターゲットを作製した。
また、従来例として、純Ag(純度99.9質量%以上)からなる上記と同一寸法のスパッタリングターゲットを準備した。
上述のスパッタリングターゲットの表面粗さを、表面粗さ計(Mitsutoyo社製)を用いて、ターゲットの加工筋と測定方向が垂直になるように測定長さ10mmで測定した。
測定結果を表1に示す。
<Ag合金膜>
上述した本発明例1〜9、比較例1〜4のスパッタリングターゲットを用いて、以下の条件でAg合金膜を成膜した。
上述した本発明例1〜9、比較例1〜4のスパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートにインジウム半田を用いて半田付けしてターゲット複合体を構成し、これをスパッタ装置に装着し、ガラス基板(コーニング社製イーグルXG)との距離:70mm、電力:直流250W、到達真空度:5×10−5Pa、Arガス圧:0.67Paの条件でスパッタリングを実施し、ガラス基板の表面に、厚さ:100nmを有するAg合金膜を形成した。
なお、上述した従来例のスパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートにインジウム半田を用いて半田付けしてターゲット複合体を構成し、これをスパッタ装置に装着し、上記と同様の条件でガラス基板上に厚さ:100nmのAg膜を形成した。
<異常放電回数>
通常のマグネトロンスパッタ装置に、上述の無酸素銅製のバッキングプレートにインジウム半田を用いて半田付けしたターゲット複合体を取り付け、1×10−4Paまで排気した後、Arガス圧:0.5Pa、投入電力:直流1000W、ターゲット基板間距離:60mmの条件でスパッタを実施した。スパッタ時の異常放電回数は、MKSインスツルメント社製DC電源(RPDG−50A)のアークカウント機能により、放電開始から30分間の異常放電回数として計測した。測定結果を表1に示す。
<反射率の測定>
上述のようにして得られた成膜後のAg合金膜およびAg膜の反射率を、分光光度計を用いて、波長800nmから400nmの範囲の光を用いて測定した。波長405nm、450nm、550nmの光の反射率を表2に示す。
<比抵抗値の測定>
上述のようにして得られた成膜後のAg合金膜およびAg膜のシート抵抗値を四探針法によって測定し、比抵抗値を算出した。得られた成膜後の比抵抗値を表2に示す。
<耐熱試験>
上述の試料を、大気中で温度250℃、保持時間1時間の熱処理を行った。
この熱処理後のAg合金膜およびAg膜の反射率および比抵抗値を上述と同様の方法で測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0006260321
Figure 0006260321
Sbの含有量が本発明の範囲よりも少ない比較例1は、成膜されたAg合金膜において、波長405nm,450nm,550nmのいずれも、熱処理後の反射率が大きく低下した。
Sbの含有量が本発明の範囲よりも多い比較例2は、成膜されたAg合金膜において、成膜後の比抵抗値が高かった。また、波長405nm,450nm,550nmのいずれも成膜後の反射率が低かった。
Caの含有量が本発明の範囲よりも少ない比較例3は、ターゲット表面の算術平均粗さが2.56μm、十点平均粗さが16.64μmと比較的大きかった。このため、異常放電回数が23回と多くなり、Ag合金膜の成膜を安定して実施できなかった。
Caの含有量が本発明の範囲よりも多い比較例4は、スパッタリングターゲット製造時に圧延割れが生じた。
純Agからなる従来例は、ターゲット表面の算術平均粗さが5.71μm、十点平均粗さが36.72μmと大きかった。このため、異常放電回数が36回と多く、Ag膜の成膜を安定して実施できなかった。また、成膜されたAg膜において、波長405nm,450nm,550nmのいずれも、熱処理後の反射率が低くかった。
これに対して、Sb,Caの含有量が本発明の範囲内とされた本発明例1〜6においては、ターゲット表面の算術平均粗さが1.04μm以下、十点平均粗さが6.31μm以下と小さかった。このため、異常放電回数も少なく、Ag合金膜の成膜を安定して実施することができた。また、成膜されたAg合金膜においては、成膜後の比抵抗値が低く、かつ、波長405nm,450nm,550nmのいずれも成膜後の反射率が高くなった。さらに、熱処理後においても、反射率が大きく劣化しなかった。
以上のことから、本発明例によれば、異常放電の発生回数が少なく安定して成膜することができるとともに、成膜後の比抵抗値が低く、かつ、反射率が高く、熱処理後においても反射率が大きく劣化しないAg合金膜を成膜することが可能なAg合金膜形成用スパッタリングターゲットを提供可能であることが確認された。

Claims (3)

  1. Sbを0.01原子%以上3.00原子%以下、Caを0.01原子%以上0.15原子%以下含有し、残部がAgと不可避不純物とからなる組成を有することを特徴とするAg合金膜形成用スパッタリングターゲット。
  2. 含有されるSbとCaの原子比がSb/Ca≧1.0であることを特徴とする請求項1記載のAg合金膜形成用スパッタリングターゲット。
  3. スパッタ面の算術平均粗さが1.0μm以下、十点平均粗さが6.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のAg合金膜形成用スパッタリングターゲット。
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