JP6280910B2 - 分光システムの性能を測定するための方法 - Google Patents

分光システムの性能を測定するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、分光システムの性能を測定するための方法に関する。本発明は、マルチプレックスアッセイにおいてなど、可能な成分の既知のセットから試料内に存在する1または複数の成分を識別および定量化するために使用されるラマン分光システムの性能を測定することに対する特定の、しかしそれだけには限らない応用例を有する。
ラマン分光法を使用し、試料内に存在する成分を識別することが知られている。ラマン信号を増強するために、表面増強共鳴ラマン散乱(SERRS)が使用される。SERRSは、識別するべき成分の分子が、増強基質上でプラズモンを励起するために使用されるレーザ波長(好ましくは150nm内)に近い周波数で電子遷移を有する発色団を含む活性表面上で吸着されるという原理を使用する。
生物学的試料については、識別するべき分子の各タイプについて十分に区別できる発色団を提供するために、識別するべき分子の各タイプ(たとえば、異なるタイプのオリゴヌクレオチド)に異なる色素を結合させるように試料が処理される。そのような技法の例が、特許文献1および特許文献2に記載されており、これらを参照により本明細書に組み込む。
一形態では、病原体に特有であることが知られている標的ヌクレオチド配列(標的配列)を補うように構築されたオリゴヌクレオチドに色素を結合させることによって、疾病状態を検出するためにアッセイが構築される。次いでそれが、DNA断片を含む資料に導入される。標的配列が試料内に存在する場合、色素標識オリゴヌクレオチドがそこにハイブリダイズする。やはり標的配列を認識するビオチンをオリゴヌクレオチドに加えることにより、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用を介して複合体に結合するストレプトアビジン被覆磁性ビーズを使用して標的配列および色素を含むDNA複合体を分離することが可能である。次いで、色素配列は、銀または金ナノ粒子上に解放および吸着され、これらのナノ粒子は、好ましくは凝集したとき、色素のためのSERRS基質として働き、水性環境から非常に強い信号をもたらす。このスペクトルは、ほとんど常に排他的に色素からのラインの鋭いセットからなることがSERRSの特徴である。これは、色素に対するラマン散乱表面増強係数が、オリゴヌクレオチドの残りの部分からの増強係数に比べて非常に高く、その結果、他の信号が比較において非常に弱いからである。これらの鋭いラインは、インサイチュ(in situ:原位置)識別をもたらす色素の特徴であり、ラインの鋭い性質は、色素の混合物を分離することなしに識別することができることを意味する。これは、1つの試料内で複数の標識の検出を可能にする。
そのようなマルチプレックスアッセイ(multiplex assay)から予想することができる性能のレベルを測定することが望ましい。しかし、マルチプレックスアッセイの複雑さ、および試料の未知の性質は、試料内の検体を正しく識別または定量化する可能性に影響を及ぼす可能性がある広範な要因があることを意味する。マルチプレックスアッセイの性能の測定値は、性能のその測定値がユーザによって達成される可能性が高い性能を正当に反映するように、この広範な要因を考慮することが望ましい。
システムの性能を測定することができる1つの手法は、変化する可能性がある要因が故意に変動され、結果からシステムの性能について決定される複数の実験を実施することである。
国際公開第09/022125号パンフレット 米国特許出願公開第2006246460号明細書 EP11250530.0
しかし、変動する可能性がある要因の数が大きい場合、それらの要因を制御することが困難である場合、または要因の1または複数が大きな範囲にわたって変動する可能性がある場合、おおよそでさえ発生しうる可能な状況すべてに及ぶ実験を行い、性能の代表的な測定値を得ることは、仮に実際に可能であるにしても、かなりの難題である。
本発明の第1の態様によれば、分光システムの性能を測定する方法であって、
a)システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを得るステップであって、成分スペクトルが成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られる、該ステップと、
b)試料スペクトルをシミュレーションするステップであって、各試料スペクトルが、少なくとも1つの異なる成分スペクトルおよび/または他の試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるものに対して異なる量の成分スペクトルの少なくとも1つを使用して、対応する潜在的な試料についてシミュレーションされる、該ステップと、
c)各試料スペクトルについて、対応する潜在的な試料の特徴の測定された量および/または質を得るために試料スペクトルを解析するステップと、
d)測定された量または質に基づいて性能の測定値を生成するステップとを含む方法が提供される。
このようにして、性能のその測定値を、発生する可能な変動を考慮する適度な時間フレーム内で決定することができる。具体的には、発生するスペクトル変動性を表すシステムを使用して識別可能な各単一の成分について、複数の成分スペクトルを収集することが可能である。次いで、これらの単一のスペクトルを使用し、スペクトルが得られなかったシナリオ、たとえば成分の複数が試料内に存在するとき異なる濃度および/または成分ならびにシステムの性能と共に発生する性能の変動をシミュレーションすることができる。この手法は、単一の成分からのスペクトル応答が濃度と共に線形であり、他の成分からのスペクトル貢献の存在下で加法的である、すなわち、ランベルト・ベールの法則にシステムが従うと仮定する。
任意の1つの潜在的な試料について、その潜在的な試料に関する性能の統計的に有意な測定値を得るために、多数の試料スペクトルがシミュレーションされる。
したがって、試料スペクトルと潜在的な試料との間に多対一対応がある。しかし、性能の測定値が、特定の潜在的な試料に特有のものではなくシステム全体に関するものである場合など、任意の1つの潜在的な試料について複数の試料スペクトルをシミュレーションすることは必要でない。
解析は、試料スペクトルに基づいて成分が存在するおよび/または存在しないと認定する(qualify)ステップを含む。そのような実施形態では、試料スペクトルは、成分の異なる相対濃度についてシミュレーションされるが、解析は、成分を識別することができるか否かに関係するにすぎない。しかし、解析は、試料スペクトルから成分の濃度を定量化することを含んでもよい。
性能の測定値は、成分の1または複数を識別および/または定量化する際のシステムの感度および/または特異性の測定値を含む。性能の測定値は、試料内の成分の1または複数を識別および/または定量化するために最小レベルの感度が達成されるその1または複数の成分の濃度の限界を含む。
各試料スペクトルは、対応する潜在的な試料の特性の指定された量および/または質についてシミュレーションされ、性能の測定値を生成するステップは、測定された量および/または質の、指定された量および/または質との比較を含む。たとえば、試料スペクトルは、潜在的な試料内の指定された成分および/またはその成分の濃度についてシミュレーションされ、解析ステップは、試料スペクトルから成分および/または成分の濃度を識別し、解析ステップで識別された成分および/または成分の濃度が、指定された成分および/または濃度に比較され、性能の測定値を決定する。代替として、または追加として、解析ステップは、特性ピーク間の距離など、試料スペクトルをシミュレーションする前に指定されなかった/知られていなかった質および/または量の測定値を得る。
各成分についての複数の成分スペクトルは、成分のスペクトル応答に影響を及ぼすものとして識別された要因が可能性の範囲を通じて変動されるフラクショナルファクトリアルデザインまたはフルファクトリアルデザインなど実験的デザインに従って実験を実施することによって得られる。これらの要因は、オペレータ、試料の調製と測定の間の時間、スペクトルが得られる計器、(1または複数の)成分のバッチ、ならびに/または色素および/もしくはコロイドなど試薬のバッチを含む。要因が変動する範囲は、システム仕様によって制限され、たとえば、システム仕様は、他の型の計器からスペクトルを得る必要がないように、試料のスペクトルが特定の型など特定のタイプの計器で得られることを必要とし、および/または、システム仕様は、他のソースから得られる成分についてのスペクトルを得る必要がないように、成分のバッチが特定のソースから得られることを必要とする。
各成分から得られる複数の成分スペクトルは、成分が同じ濃度にある状態で得られ、その濃度は、所定の基準濃度である。しかし、これらの濃度は、システム仕様に応じて成分間で変動する。
解析は、特性の測定された量および/または質を得るために、各成分についての基準スペクトルを使用して、各試料を解析するステップを含む。この方法は、成分のセットの各成分について基準スペクトルを選択するステップを含み、各基準スペクトルは、その基準スペクトルを使用して解析される試料スペクトルをシミュレーションするために使用される成分スペクトルとは異なる、その成分についての複数の成分スペクトルから選択される。異なる試料スペクトルを解析するために、異なる基準スペクトルが選択される。このようにして、性能の測定値は、基準スペクトルの変動、ならびに試料スペクトルの変動を考慮する。異なる基準スペクトルを使用し試料スペクトルを解析することにより、異なる結果が生成される。基準スペクトルが選択される成分スペクトルのプールは、システム要件によって制限される。たとえば、未知の試料を解析するとき、未知の試料からスペクトルを得るために使用されるものと同じ分光装置を使用して基準スペクトルが得られることが要件である場合、性能を測定する方法は、試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるその/それらの成分スペクトルと同じ装置を使用して収集された成分スペクトルから基準スペクトルを選択するだけでよい。基準スペクトルに対する同様の制約が、温度、測定間の時間など、複数の成分スペクトルが変動のより大きな範囲を捕らえるにもかかわらず、それらの変動が基準スペクトルと試料スペクトルの間で制限される他の要因にあてはまる。
試料スペクトルは、潜在的な試料内のその成分または各成分の異なる濃度についてシミュレーションされる。
各試料スペクトルをシミュレーションするために使用される成分スペクトル、および任意選択で、各シミュレーションされた試料スペクトルを解析するために使用される基準スペクトルは、スペクトルの適切なセットからランダムに選択される。そのような手順は、成分スペクトルと基準スペクトルの可能な組合せの数がより体系的な手法を実現可能でないものにするほど大きいとき適切である。成分スペクトルの適切なセットは、成分についての成分スペクトルのすべてであっても、これらの成分スペクトルのサブセットであってもよい。
潜在的な試料内のその成分もしくは各成分および/または潜在的な試料内のその成分もしくは各成分の濃度は、少なくとも1つの確率分布に基づいてランダムに選択される。そのような確率分布は、試料内の成分、成分の組合せ、および/または成分の濃度を見つける可能性を表す。確率分布は、試料が特定の成分、様々な濃度にある特定の成分、または特定の成分の組合せを含む可能性であってもよい。あるいは、確率分布は、特定の成分に特有でなくてもよく、試料が様々な濃度にあるセットの非特定の成分を、またはいくつかの非特定の成分を組合せで含む一般的な可能性であってもよい。この代替は、確率分布が異なる成分/組合せについて同様であり、その結果、異なる成分/組合せについて別々の分布を使用することにほとんど利点がないとき、または成分に特有の確率分布について情報が不十分であるとき適切である。確率分布を使用していくつかの組合せに向かってランダム選択を偏らせることは、現実に発生する可能性が低いシナリオによって性能の測定値が偏らされないことを確実にする。
解析は、古典的直接最小二乗(DCLS)解析に基づく方法など、多変量解析技法である。
この方法は、上述のように、SERRSマルチプレックスアッセイなど、表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)を使用してシステムの性能を測定するためのものである。成分は、マルチプレックスアッセイ内で使用するべき色素である。
この方法は、システムの仕様を選択する方法の一部を形成する。システムの仕様は、性能の測定値に基づいて選択および/または修正される。仕様のそのような選択および/または修正は、システムによって測定することができる成分スペクトルおよび/または潜在的な試料のセットを変える。たとえば、試料スペクトルの最初のセットの性能の測定に応答して、成分のスペクトル応答に影響を及ぼす要因に対して、より厳しい要件、たとえば試料の調製と測定の間で許される最大時間を修正すること、これらの新しい仕様外になる条件下で得られた成分スペクトルを使用して、および/または成分のサブセットについてのみ、試料スペクトルをシミュレーションする必要をなくすることが課される。
最初に、1つの成分だけを含む潜在的な試料について性能が測定され、仕様の最初の選択および/または修正がこれらの測定値に基づいてなされ、その後、性能の測定が複数の成分を含む潜在的な試料に基づいてなされる。このようにして、スペクトルおよび/または成分が、多成分試料を解析する前に省かれ、可能な多成分試料の数、したがって必要とされる処理を削減する。
また、本発明は、マルチプレックスアッセイなど、上記の方法に従って設計されたシステムに関する。
本発明の他の態様によれば、命令を有するデータキャリアであって、命令は、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに、
a)分光システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを取り出させ、成分スペクトルが、成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られ、
b)試料スペクトルをシミュレーションさせ、各試料スペクトルが、少なくとも1つの異なる成分スペクトルおよび/または他の試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるものに対して異なる量の成分スペクトルの少なくとも1つを使用して、対応する潜在的な試料についてシミュレーションされ、
c)各試料スペクトルについて、対応する潜在的な試料の特徴の測定された量および/または質を得るために試料スペクトルを解析させ、
d)測定された量および/または質に基づいて性能の測定値を生成させる、データキャリアが提供される。
本発明の他の態様によれば、分光システムの性能を測定するための装置であって、
プロセッサを備え、プロセッサは、
a)分光システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを取り出し、成分スペクトルが、成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られ、
b)試料スペクトルをシミュレーションし、各試料スペクトルが、対応する潜在的な試料について、少なくとも1つの異なる成分スペクトル、および/または他の試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるものに対して異なる量の成分スペクトルの少なくとも1つを使用してシミュレーションされ、
c)各試料スペクトルについて、対応する潜在的な試料の特徴の測定された量および/または質を得るために試料スペクトルを解析し、
d)測定された量および/または質に基づいて性能の測定値を生成するように構成される、装置が提供される。
この装置は、複数の成分スペクトルのライブラリを記憶しているメモリを備え、プロセッサは、必要とされるときそのメモリからスペクトルを取り出すように構成される。複数のスペクトルをメモリから取り出すステップは、ステップb)の前またはステップb)中に実施されてもよいことを理解されたい。たとえば、関連のスペクトルは、基準スペクトルとして使用するために、または試料スペクトルをシミュレーションするために選択された後だけ、取り出されてもよい。
本発明の他の態様によれば、検体を識別するために分光法を使用するマルチプレックスアッセイを設計する方法であって、マルチプレックスアッセイのための仕様を選択するステップと、仕様内で要因の可能な変動を表すスペクトルをシミュレーションするステップと、シミュレーションされたスペクトルに基づいて性能の測定値を計算するステップと、性能の測定値に基づいて仕様を修正するステップとを含む方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、分光システムの性能を測定する方法であって、
a)システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを得るステップであって、成分スペクトルが、成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られる、ステップと、
b)成分スペクトルを使用して潜在的な試料について試料スペクトルをシミュレーションするステップと、
c)複数の成分スペクトルから選択された基準スペクトルの異なるセットを使用して、試料スペクトルを複数回解析し、基準スペクトルの各セットで潜在的な試料の特徴の測定された量および/または質を得るステップと、
d)測定された量および/または質に基づいて性能の測定値を生成するステップとを含む方法が提供される。
本発明の一実施形態による性能の測定値を決定する方法におけるステップを示す図である。 本発明の一実施形態による試料スペクトルのシミュレーションを示す図である。 本発明の一実施形態による性能の測定値を示す表である。 本発明の他の実施形態による性能の別の測定値を示す表である。 本発明の他の実施形態による性能の測定値を示す表である。 図3および図4に示されている性能の測定値の概略的なグラフである。 分光スペクトルを解析する方法を示す流れ図である。
図1を参照すると、分光システムの性能を測定する方法における第1のステップが、システムによって測定されたスペクトルに貢献する各成分についてスペクトルを得るステップを含み、スペクトルは、その成分について信号変動性を表す。スペクトルの代表的なセットを達成するために、フラクショナルファクトリアル実験的デザインを使用して、異なる条件下でスペクトルが得られる。そのような実験的デザインは、オペレータ、試料の調製と測定の間の時間、スペクトルが得られる計器、成分のバッチ、ならびに/またはSERRSの場合、色素および/もしくはコロイドなど試薬のバッチなど、成分からの信号に影響を及ぼすいくつかの要因をカバーすることになる。実験データが得られる範囲は、分光システムのために定義された仕様によって決まる。たとえば、医療診断に使用されるマルチプレックスアッセイの場合、患者からの試料にコロイドを追加するのと測定との間で最大時間が指定され、フラクショナルファクトリアル実験的デザインは、試料からスペクトルを得ることを指定し、コロイドを追加するのと試料の測定との間の時間は、最大時間より低い値の範囲にわたって変動する。
この実施形態では、各スペクトルは、成分を基準濃度で含むテスト試料から得られる。基準濃度は、解析するべき未知の試料内の成分の標的濃度または予想される濃度になるように選択される。たとえば、患者試料内の検体の予想される濃度、またはPCRなど検体の増幅によって達成するべき標的濃度である。
スペクトルの数に対して下限または上限はないが、各セットは、分光信号の変動に影響を及ぼす要因を包含するべきである。この実施形態では、スペクトルをろ波し、分光信号が平均より著しく弱いまたは強いスペクトルを除去する。これは、予想される変動を表さない範囲外のスペクトルを除去しようとするものである。
図1は、異なる条件F1ないしF4に関して各成分C1、C2、C3について得られた複数のスペクトルを概略的に表す。これらのスペクトルは、メモリ内に記憶され、将来の処理のためにスペクトルのライブラリを形成する。
また、「ブランク」スペクトル(図示せず)のセットが、注目の成分を含まない試料について得られる。たとえば、支持基質だけを含む資料からスペクトルが得られる。
第2のステップでは、解析技法を使用し、複数の潜在的な試料についてのシミュレーションされたスペクトルから正しい成分を識別することができるかどうか決定する。この実施形態では、この解析技法は、図7を参照して下記で述べる、基準スペクトルの、試料スペクトルに対する古典的直接最小二乗(DCLS)フィッティングに基づく方法である。
統計的に有意なデータセットを得るために、
i)各成分について、その成分について複数のスペクトルから基準スペクトルをランダムに選択し、
ii)潜在的な試料内に存在するものとして指定されるその成分または各成分について、1または複数のスペクトルをランダムに選択し、選択されたそれらの/そのスペクトルを使用して、潜在的な試料について試料スペクトルをシミュレーションし、
iii)図7を参照して下記で述べるアルゴリズム、および基準スペクトルを使用して試料スペクトルを解析し、1または複数の成分を識別することによって、試料スペクトルが、潜在的な試料について繰り返しシミュレーションおよび解析される。
これらのステップは、いくつかの異なる潜在的な試料について実施される。図1の表は、これらのステップを概略的に示し、表の各行は、左から右に、試料を構成する成分、基準スペクトルとして使用するために選択されたスペクトル、試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるスペクトル、および基準スペクトルを使用して試料スペクトルの解析を通じて検出された成分を示す。
図2を参照すると、この実施形態では、複数の成分を含む潜在的な試料についてステップii)において試料スペクトル201をシミュレーションするために、それらの成分について選択された成分スペクトル202、203を組み合わせることが必要である。これは、おそらくは成分がそれらの基準濃度より高い、または低い濃度にある試料をシミュレーションするようにスケーリングされたスペクトル202、203を足し合わせることによって達成される。しかし、各成分スペクトル202、203は、テスト試料が保持されていた基質からの貢献202a、203a(いわゆる「ブランク貢献(blank contribution)」)を含む。複数の成分スペクトルを足し合わせることにより、ブランク貢献204aが、ブランクから通常発生するはずのブランク貢献より大きい、または小さい組み合わされたスペクトル204になる。たとえば、2つの成分の場合、両成分スペクトルがそれらの基準濃度の50%超で加算される場合、各成分スペクトルからのブランク貢献は、典型的なブランク貢献の100%超に増えることになる。したがって、代表的な試料スペクトルを得るために、ブランク貢献を組み合わされた成分スペクトルから除去する、または加算する必要がある。これは、ブランクスペクトルのセットからブランクスペクトルをランダムに選択し、
にしたがって決定されるブランク貢献Bを加算することによって達成され、上式で、Cは、潜在的な試料内の各成分kについてのその基準濃度に対する濃度であり、Bは、選択されたブランクスペクトルである。このようにして、得られる試料スペクトル201は、典型的な試料からの信号内に見出されるはずのブランク貢献を表すブランク貢献201aを含む。
第3のステップでは、性能の1または複数の測定値が、データセットから計算される。図3を参照すると、一実施形態では、性能の測定値は、各成分についての偽陽性(特異性)の推定割合(すなわち、指定された試料について成分が存在するものとして間違って識別される回数)である。図3では、1つの成分だけを含む潜在的な試料についてだけ偽陽性が決定されている。偽陽性は複数の成分を含む試料について計算することができるが、これは、図5を参照してより詳細に述べるように、試料内の成分の相対濃度の変化と共に発生する成分の検出率の変化によって複雑になる。
代替として、または追加として、性能の測定値は、各指定された試料についての真陽性(感度)の推定数であってもよい。
図4は、複数の成分を含む試料について決定される性能の測定値を示す。この測定値のためには、試料についてデータがシミュレーションされ、その基準濃度に対する多量成分およびその基準濃度に対する少量成分の比率が変動され、真陽性(感度)の数が事前定義のレベルより高い少量成分の濃度の限界が決定される。濃度の下限は、1または複数の他の成分の存在下にあるとき、より大きな範囲の濃度にわたって成分が検出可能であることを示す。そのような性能の測定値は、検体を定義された確信レベルで識別することができる濃度のウィンドウを定義する助けとなる点で、マルチプレックスアッセイなどシステムを設計する際に有用である。
図5は、複数の成分を含む試料についての推定偽陽性率に基づく性能の測定値を示す。そのような測定値は、偽陽性が多量成分および少量成分の各組合せに関連する点で、図4に示されているものと異なる。偽陽性率は、ある範囲の少量(またおそらくは多量)成分の濃度について決定するべきである。なぜなら、少量成分の濃度が低減されるにつれて率が通常低下することになる真陽性と異なり、偽陽性の率は、少量(または多量)成分の濃度と共に線形に変動しないからである。
性能の測定値を使用し、システムのための仕様を選択/修正する。たとえば、その感度、濃度の限界、および/または特異性が事前定義のレベルより高いか否かに基づいて、マルチプレックスアッセイで使用するために、成分が選択される。図6は、そのような判断がどのようになされるかを示す。図6では、点線は、その中で試料の性能が特異性および濃度の限界に関して許容されると考えられる切り捨て点を表す。グラフからわかるように、この図では、成分C1、C3を含むある試料と、成分C2、C3を含む別の試料とが、許容されないレベルの性能を有する。これは、図4および図5における丸で囲まれた数字によっても示されている。成分の可能なリストから成分C3を除去することによって、許容されない試料が省かれる。これは、成分C2からなる試料内の成分C3についての比較的高い偽陽性率をも解消する。
性能の他の測定値が、システムの他の仕様を選択/修正するために使用される。たとえば、試料にコロイドを追加するのと測定するのとの間の異なる期間について、性能の測定値が決定されてもよい。次いで、コロイドを追加するのと測定するのとの間の遅延により感度、特異性、濃度の限界、または性能の他の統計的測定値が許容されるレベル未満に減少する切り捨て点を決定することができる。そのような解析は、成分/試薬のソース、試薬の相対濃度、および/またはスペクトルが収集される分光装置のタイプなど、分光信号に影響を及ぼす他の要因について実施されてもよい。
他の実施形態では、シミュレーションされる試料スペクトルは、成分を選択するために使用される確率分布、およびそれらの成分についての濃度に基づく。試料スペクトルをシミュレーションするために、第1に、確率分布に基づいて、セットの各成分が存在するか否かに対してランダム選択がなされる。そのような選択の単純な形態は、1つ、2つ、3つなどの成分が試料内に存在する確率に関するデータを使用し、成分がいくつ存在するかランダムに選択し、次いで、各成分についての等しい確率に基づいて、その数の成分を成分のセットからランダムに選択することを含む。第2に、その基準濃度に対して試料内の各成分の濃度のランダム選択がなされる。この場合も、そのような選択の単純な形態は、成分の濃度について単一の確率分布を使用し、存在するものとして選択されている成分すべての濃度をランダムに選択することである。次いで、存在するものとして選択された各成分についてのランダムに選択されたスペクトルを、選択された濃度に対してスケーリングしたものを使用して、試料スペクトルがシミュレーションされる。
試料スペクトルをシミュレーションするために使用される成分スペクトルおよび濃度をランダムに選択するためのそのような単純な形態が使用されるのは、個々の成分についての確率に関する情報がないからであり、または、成分が試料内に存在する可能性および/もしくは成分がその基準濃度に対して特定の濃度を有する可能性がセットの成分すべてについておよび成分のすべての組合せについて同じまたは同様であるからである。成分間に著しい変動がある場合、各成分について個々の確率データが使用されてもよい。そのようなデータは、各成分がそれ自体で見出される可能性、ならびにその成分が他の成分の存在下で見出される可能性についてのデータを含む。たとえば、1つの成分がマルチプレックスアッセイにおける対照として使用され、したがって非常に高い存在する可能性を有するか、または2つの成分は、自然に相互に排他的である場合、共に見出されるゼロもしくは非常に低い可能性を有する。成分の濃度についての異なる確率分布もまた使用される。
選択を偏らせるための確率分布の使用もまた、特定の成分についての成分スペクトルの選択に拡張することができる。たとえば、成分スペクトルのランダム選択は、2つの極値間の中央時間に当たる時間における、試料にコロイドを追加するのと測定との間の時間など、成分スペクトルが収集された特定の要因の変動についての確率分布に基づいてなされる。成分スペクトルの選択は、要因のより可能性が高い値について得られた成分スペクトルを選択することの方へ偏らされてもよい。
試料スペクトルを形成するそのような方法は、実験を通じて/使用時に得られたはずの試料スペクトルをより以上に表す試料スペクトルのセットを提供する。そのセットから計算される性能の測定値は、改善可能な潜在的な試料について決定される試料スペクトルを平均以上に多く表す試料スペクトルによって過度に歪まされないので、予想される測定値のより代表的なものになる。
本発明は、SERRSを使用し成分を識別するマルチプレックスアッセイの性能を測定するために特に応用される。しかし、本発明の方法は、基準スペクトルを使用し、未知の成分をその未知の成分のスペクトルから識別する他の分光システム、特に他のラマンベースのシステムの性能を測定するために使用することができる。
図7を参照すると、シミュレーションされたスペクトルを解析するための古典的直接最小二乗技法が、シミュレーションされたスペクトルデータXを、それぞれがI個のデータ点を有するK個の既知の成分基準スペクトルのセットSで表してモデル化する。各成分基準スペクトルについての成分濃度Cが、再構築されたモデルからのスペクトルデータの二乗偏差の和を最小化することによって決定され、
上式で、iは、スペクトル周波数インデックスを表す。これは、成分濃度Cについてのマトリクス反転によって直接解くことができる一連の1次方程式をもたらす。
選択された基準スペクトルを使用して式(1)が各候補成分について解かれる反復プロセスが実施される(ステップ103ないしステップ108)。
ステップ103では、各候補成分について、以前の反復ですでに選択された成分基準スペクトルと共に成分の基準スペクトルに関して、式(1)が最小化される。適合度の測定値が、シミュレーションされたスペクトルに対して解かれた成分について計算される。
適合度の測定値は、下式によって与えられる不適合度(LoF)の測定値とすることができる。
不適合度のこの測定値が、候補成分基準スペクトルを加算する前の選択された成分基準スペクトルについて計算されたLoFの以前の測定値に比較され、加算に起因するLoFの測定値に対する改善を決定する。
LoFの改善、LIprは、LoFの比例改善として計算される。すなわち、
上式で、Loldは、候補成分基準スペクトルを含める前に選択された成分基準スペクトルについて計算されたLoF値であり、Lnewは、候補成分基準スペクトルを含む選択された成分基準スペクトルについて計算されたLoF値である。
ステップ104では、負の濃度を有するものとして解かれた候補成分基準スペクトルが、その反復(後続の反復ではない)においてそれ以上考慮することから除去される。
ステップ105では、残りの候補成分基準スペクトルについてのLoFの改善、LIprが比較され、LoFにおける最大の改善に関連する候補成分基準スペクトルが、モデルの最終形態に含めるための先頭候補成分基準スペクトルになる。
先頭候補成分基準スペクトルの追加に起因するLoFの改善が事前設定の限界より高いかどうか判定するために検査106が行われる。先頭候補成分基準スペクトルについてのLoFの改善、LIprが事前設定の限界より高い場合、それがモデルの最終形態に存在する成分基準スペクトルとして選択される(107)。次いで、プロセス103ないしプロセス107が残りの未選択の成分基準スペクトルについて繰り返される。
先頭成分基準スペクトルについてのLoFの改善、LIprが事前設定の限界より低い場合には、この方法は終了され、その時点までに選択された成分基準スペクトルについて解かれたモデルを含むモデルの最終形態が出力される。モデルの最終形態は、一般に、所定の成分基準スペクトルのセットのサブセットを含むことになり、これらのスペクトルは、不適合度によって測定して最も有意なものである。
成分に対応する基準スペクトルがモデルの最終形態に含まれるかどうかに基づいて、試料内に存在する成分を決定することができる。
上記の方法に関する、またこの方法を行うための好ましい装置に関するさらなる詳細は、2011年5月16日に出願された英国特許「Spectroscopic apparatus and methods for determining components present in a sample」(特許文献3参照)に見出すことができる。

Claims (14)

  1. 分光システムの性能を測定する方法であって、
    a)前記システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを得るステップであって、前記成分スペクトルが、前記成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られる、該ステップと、
    b)試料スペクトルをシミュレーションするステップであって、各試料スペクトルが、少なくとも1つの異なる成分スペクトルおよび/または他の試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるものに対して異なる量の前記成分スペクトルの少なくとも1つを使用して、対応する潜在的な試料についてシミュレーションされる、該ステップと、
    c)各試料スペクトルについて、前記対応する潜在的な試料の特徴について測定された量および/または質を得るために前記試料スペクトルを解析するステップと、
    d)前記測定された量および/または質に基づいて性能の測定値を生成するステップと
    を備えたことを特徴とする方法。
  2. 前記解析は、成分が存在する、および/または存在しないと認定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 性能の前記測定値は、試料内の前記成分の1または複数を識別および/もしくは定量化する際の前記システムの感度および/もしくは特異性の測定値、ならびに/または、試料内の前記成分の1または複数を識別および/もしくは定量化するために最小レベルの感度が達成される前記成分の濃度の限界を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 各試料スペクトルは、対応する潜在的な試料の特性の指定された量および/または質についてシミュレーションされ、性能の測定値を生成するステップは、前記測定された量および/または質を、各試料スペクトルについての前記指定された量または質と比較することを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 前記解析は、前記特性の前記測定された量および/または質を得るために、各成分についての基準スペクトルを使用して、各試料スペクトルを解析するステップを含み、任意選択で、成分の前記セットの各成分について基準スペクトルを選択するステップであって、
    各基準スペクトルは、前記成分についての前記複数の成分スペクトルから選択され、前記基準スペクトルを使用して解析される前記試料スペクトルをシミュレーションするために使用される前記成分スペクトルとは異なる、該ステップと、さらに任意選択で、異なる試料スペクトルの前記解析のために異なる基準スペクトルを選択するステップとを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
  6. 各成分についての前記複数の成分スペクトルは、前記成分のスペクトル応答に影響を及ぼすものとして識別された要因が可能性の範囲を通じて変動される実験的デザインに従って実験を実施することによって得られ、任意選択で、前記要因は、オペレータ、試料の調製と測定との間の時間、スペクトルが得られる計器、成分のバッチ、および試薬のバッチのうちの1または複数を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 各成分についてステップa)で得られる前記複数のスペクトルは、前記成分が同じ基準濃度にある状態で得られることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
  8. 前記試料スペクトルは、対応する潜在的な試料内の前記成分または各成分の異なる濃度についてシミュレーションされることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記試料スペクトルをシミュレーションするために使用される前記基準スペクトルおよび/または前記成分スペクトルは、前記成分スペクトルの適切なセットからランダムに選択されることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1つに記載の方法。
  10. 対応する潜在的な試料内の前記成分もしくは各成分、および/または対応する潜在的な試料内の前記成分もしくは各成分の濃度は、少なくとも1つの確率分布に基づいてランダムに選択されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の方法。
  11. 分光システムを設計する方法であって、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法を使用して分光法の性能を測定するステップと、性能の前記測定に基づいて前記システムの仕様を選択および/または修正するステップとを備えたことを特徴とする方法。
  12. 命令を有するデータキャリアであって、前記命令は、プロセッサによって実行されたとき、前記プロセッサに、
    a)分光システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを取り出させ、ここで、前記成分スペクトルが、前記成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られたものであって
    b)試料スペクトルをシミュレーションさせ、ここで、各試料スペクトルが、少なくとも1つの異なる成分スペクトル、および/または他の試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるものに対して異なる量の前記成分スペクトルの少なくとも1つを使用して、対応する潜在的な試料についてシミュレーションされたものであって
    c)各試料スペクトルについて、前記対応する潜在的な試料についての特徴の測定された量および/または質を得るために前記試料スペクトルを解析させ、
    d)前記測定された量および/または質に基づいて、性能の測定値を生成させることを特徴とするデータキャリア。
  13. 分光システムの性能を測定するための装置であって、
    プロセッサを備え、前記プロセッサは、
    a)分光システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを取り出し、ここで、前記成分スペクトルが前記成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られたものであって
    b)試料スペクトルをシミュレーションし、ここで、各試料スペクトルが、少なくとも1つの異なる成分スペクトルおよび/または他の試料スペクトルをシミュレーションするために使用されるものに対して異なる量の前記成分スペクトルの少なくとも1つを使用して、対応する潜在的な試料についてシミュレーションされたものであって
    c)各試料スペクトルについて、前記対応する潜在的な試料についての特徴の測定された量および/または質を得るために前記試料スペクトルを解析し、
    d)前記測定された量および/または質に基づいて性能の測定値を生成するように構成されたことを特徴とする装置。
  14. 分光システムの性能を測定する方法であって、
    a)前記システムによって識別しようとする成分のセットの各成分について複数の成分スペクトルを得るステップであって、前記成分スペクトルが、前記成分スペクトルに影響を及ぼす少なくとも1つの要因の変動について得られる、該ステップと、
    b)前記成分スペクトルを使用して潜在的な試料について試料スペクトルをシミュレーションするステップと、
    c)前記複数の成分スペクトルから選択された基準スペクトルの異なるセットを使用して、前記試料スペクトルを複数回解析し、基準スペクトルの各セットで前記潜在的な試料の特徴の測定された量および/または質を得るステップと、
    d)前記測定された量および/または質に基づいて、性能の測定値を生成するステップと
    を備えたことを特徴とする方法。
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