JP6281973B2 - 混合物試料の特性を表現する方法、混合物試料の特性を評価する方法、混合物試料の属性を識別する方法、及び混合物試料に由来する電磁波信号を処理する方法 - Google Patents
混合物試料の特性を表現する方法、混合物試料の特性を評価する方法、混合物試料の属性を識別する方法、及び混合物試料に由来する電磁波信号を処理する方法 Download PDFInfo
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Description
「単純な混合物」とは、同定可能な比較的少数の物質が組み合わされたものをいう。
「複雑・不均質な混合物」とは、(1)数多くの物質が多様な濃度で混在し、(2)未知の成分を含み、(3)物質間相互作用を示す、ものをいう。
以下、混合物試料の分析において一般的に実施される<前処理>/<含有物質の同定・定量>について説明する。
(1)混合物の分析のための前処理としては、濾過、抽出、分離などがある。
(2)前処理は、元来、特定の物質あるいは物質群を選択的に精製するために開発された技術である。そのため、「複雑・不均質な混合物」に対して前処理を行うと、「複雑・不均質な混合物」に含まれるいくつかの物質が除去されることとなる。当然、前処理の過程で除去された物質の同定・定量は不可能となり、また、「複雑・不均質な混合物」全体の特性も失われる。よって、「複雑・不均質な混合物」の分析のために前処理を実施することは妥当でない。
(1)濾過、抽出、分離などの前処理なしで同定・定量を行える分光分析法の種類は、NMRスペクトル法などに限られる。前処理なしにNMRスペクトル法を用いた同定・定量を行う場合、基本的に、既知の化合物単体のNMRスペクトルや「単純な混合物」中の既知の化合物のNMRスペクトルに関する先見知識に基づく解析が行われる。NMRスペクトル法では、観測核(例えばプロトン)の測定環境下における磁場環境の変化による観測核の共鳴周波数のずれ(ケミカルシフト値)を根拠に物質の分子構造を決定する。
(2)「複雑・不均質な混合物」では、各化合物が物質間相互作用(分子間相互作用)により不均質に集合・複合化しており、測定環境下の磁場は「複雑・不均質な混合物」固有の分布を示す。そのため、上述のような先見知識のみで「複雑・不均質な混合物」中の各化合物を正確に同定・定量することは困難である。
(3)「複雑・不均質な混合物」中における分子間相互作用の結果として発生する電磁波信号は、当該「複雑・不均質な混合物」固有の特性を示すNMRスペクトル情報となり得るものであるが、このようなNMRスペクトル情報に着目した分析は行われていない。
NMRスペクトル法は、上述のように、前処理なしで混合物中の成分の同定・定量を行う場合にも利用されてはいるが、下記(a)〜(c)に示すような問題がある。
(a)定量NMR(qNMR)では、「複雑・不均質な混合物」はその適用外である。
(b)DOSY法は、その適用範囲が同種かつ数種類の化合物からなる混合物に限られており、定量性が乏しい。
(c)CPMG法は、運動性の高いプロトン由来のピークに関して定量性があり、メタボロミクスにおける低分子代謝物の分析に広く適用されている。しかし、「複雑・不均質な混合物」中では物質間相互作用等により磁場環境が不均質に変化しているため、化合物単体から得られた化合物ピークのケミカルシフト値を根拠にして物質を同定・定量した結果の信頼性は低い。
(4)「複雑・不均質な混合物」中の未知の成分に関する情報は得られない。例えば、特許文献1に記載の技術は、「複雑・不均質な混合物」である血清などのNMRスペクトル解析に関するものであり、複雑なピークパターンを示すグルコース及び高分子化合物(リポタンパク)に由来するピークの解析には適していると言える。しかし、特定の物質のみに注目した同定・定量分析であり、未知の成分に関する情報は得られないし、「複雑・不均一な混合物」全体の持つ情報は利用されない。
そこで、本発明は、従来の混合物の分析技術における上述のような課題の少なくとも一つを解決することを目的とする。
ここで、算出されたスペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値をさらに算出し、算出された各周波数成分の減衰特性値に基づいて前記混合物試料の特性を評価してもよい。
また、前記混合物試料の特性を評価する方法によると、混合物試料(特に、複雑・不均質な混合物)について、従来とは全く異なる方式で、高精度・非破壊的・簡便・迅速にその特性を評価することが可能となる。
さらに、前記混合物試料の特性を識別する方法によると、属性が不明な混合物試料(特に、複雑・不均質な混合物)について、従来とは全く異なる方式で、高精度・非破壊的・簡便・迅速にその属性を識別することが可能となる。
さらにまた、前記混合物試料に由来する電磁波信号を処理する方法によると、前記混合物試料に由来する電磁波信号を、解析や比較が比較的容易なデータとして出力することが可能となる。
本発明の重要な特徴は、混合物を個々の物質の集合体ではなく、混合物全体をひとつの構造単位(統合体)として見做す点にある。本発明では、混合物試料から当該混合物試料に由来する電磁波信号を取得し、この取得した電磁波信号を、ひとつの構造単位(統合体)を表現する固有の電磁波信号として扱う。すなわち、本発明では、混合物試料に由来する電磁波信号を、当該混合物試料を構成する各成分の合成信号(すなわち、各成分の電磁波信号の集合体)としてではなく、当該混合物試料に固有の一つの電磁波信号(一つのデータ)として取り扱う。このような取り扱いによって、混合物試料中の未知の成分に関する情報や質間相互作用の影響に関する情報をも解析データに含めることができる。
なお、以下の説明においては、混合物試料に由来する電磁波信号が、主にNMR信号(NMRのFID信号)である場合、すなわち、混合物試料をNMR分析装置にかけることによって得られる電磁波信号である場合について説明するが、上述のように、これに限るものではないことはもちろんである。
既述したように、従来の混合物の分析は、化学的専門知識を必要としており、また、混合物試料に由来する電磁波信号に含まれる「複雑・不均質な混合物」の構造・機能に関する情報の一部が利用されていない。
前記可聴域データは、基本的には、取得された前記電磁波信号を可聴域(ヒト可聴域)に周波数変換(例えば周波数シフト)することによって生成される。したがって、ここでは、取得された前記電磁波信号を可聴域に周波数変換して可聴域データを生成する場合について説明する。但し、これに限るものではなく、取得された電磁波信号によっては、当該電磁波信号そのものを前記可聴域データとすることもできる(この場合も混合物試料に由来する電磁波信号から可聴域データを生成することに含まれる)。
(1)第1の工程(混合物試料に由来する電磁波信号の取得)
混合物試料に由来する電磁波信号(観測信号)を取得し、そのままの形(すなわち、RAW形式)で保存する。例えば、混合物試料を所定の分析装置などにかけることにより、当該混合物試料に由来する電磁波信号(例えば、NMRやテラヘルツ波のFID信号)を取得する。取得された電磁波信号は、何ら処理が加えられることなくそのままの形で保存されており、前記電磁波信号に含まれる前記混合物試料の情報は失われない。なお、図1には、混合物試料に由来する電磁波信号の一例(NMR信号)が示されている。
第1の工程で取得(保存)した電磁波信号を可聴域(20Hz〜20kHz程度)に周波数変換して可聴域データを生成し、生成された可聴域データを音に変換して出力する。但し、上述したように、第1の工程で取得した電磁波信号をそのまま可聴域データとする場合もある。
図2は、信号処理装置1Aの概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、信号処理装置1Aは、処理部2Aと、出力部3Aとを有する。
処理部2Aは、前記混合物試料に由来する電磁波信号を入力し、入力された電磁波信号を可聴域に周波数変換して可聴域データを生成する。生成された可聴域データは、非圧縮オーディオフォーマット(例えば、非圧縮WAVフォーマット)で保存(記録)されて出力部2Aに出力される。
出力部2Aは、処理部2Aから出力される可聴域データを音に変換して出力する。
図3において、ステップS1では、入力された前記電磁波信号を、例えば所定の可聴域変換用係数ベクトルを用いて可聴域に周波数変換して可聴域データを生成する。
ステップS2では、ステップS1で生成された可聴域データを非圧縮オーディオフォーマット(例えば、非圧縮WAVフォーマット)で保存(記録)する。
ステップS3では、前記可聴域データを例えばDA変換して音として出力する。
信号処理装置1Aから出力される音は、前記混合物試料に関する情報をほとんど失っておらず、前記混合物試料の特性を精度よく示す情報となり得る。したがって、出力される音によって前記混合物試料の特性を評価することが可能である。前記混合物試料の特性評価は、基本的には、ヒトの聴覚を用いて行われる。もちろん、音に変換する前の前記可聴域データを音響工学技術によって処理したり、解析したりすることによって前記混合物試料の特性を評価してもよい。
属性が不明な混合物試料(以下「被検混合物試料」という)の属性の識別は、当該被検混合物試料と同種で属性が決定されている混合物試料(以下「既知混合物試料」という)を用いて行う。具体的には、前記被検混合物試料についての可聴域データに基づく音と、前記既知混合物試料について基づいて生成された属性識別用音データに基づく音とを比較することによって、前記被検混合物試料の属性を識別することができる。
図4において、ステップS11は、前記被検混合物試料及び少なくとも一つの前記既知混合物試料のそれぞれに由来する電磁波信号を取得する。この電磁波信号の取得は、前記第1の工程と同様にして行われる。ここで、前記被検混合物試料に対応する混合物について一つ又は複数の属性が決定済みである場合には、決定済みの各属性に該当する(属する)前記既知混合物試料に由来する電磁波信号を取得するのが好ましい。すなわち、決定されている属性の数と同数又はそれ以上の前記既知混合物試料に由来する電磁波信号を取得することが好ましい。
第2実施形態では、混合物試料から当該混合物試料に由来する電磁波信号を取得し、取得された電磁波信号を可視域(ヒト可視域)に周波数変換して可視域データとし、当該可視域データを色に変換して出力し、この出力された色によって前記混合物試料の特性を表現する。
(1)第1の工程(混合物試料に由来する電磁波信号の取得)
前記第1実施形態における第1の工程と同様である。
第1の工程で取得(保存)した電磁波信号(RAW形式)を可視域(4.0×1014Hz〜7.5×1014Hz程度)に周波数変換(周波数シフトを含む)して可視域データとし、当該可視域データを音に変換して出力する。
図5は、信号処理装置1Bの概略構成を示すブロック図である。
図5に示すように、信号処理装置1Bは、処理部2Bと、出力部3Bとを有する。
処理部2Bは、前記混合物試料に由来する電磁波信号(RAW形式)を入力し、入力された電磁波信号を可視域に周波数変換して可視域データを生成する。生成された可視域データは、出力部2Bに出力される。
出力部2Bは、処理部2Bから出力された可視域データを色に変換して出力する。
図6において、ステップS21では、入力された前記電磁波信号(RAW形式)を、例えば所定の可視域変換用係数ベクトルを用いて可視域に周波数変換して可視域データを生成して記録する。
ステップS23では、前記可視域データを色として出力する。
信号処理装置1Bから出力される色は、前記第1実施形態における音と同様、前記混合物試料の特性を精度よく示す情報となり得る。したがって、出力される色によって前記混合物試料の特性を評価することが可能である。すなわち、信号処理装置1Bから出力される色は、例えば、混合物試料同士の類似性や相違性などを評価する指標として用いることができ、混合物の属性区分を設定(又は再設定)することを可能とし、属性が不明な混合物試料の属性を識別するために利用され得る。
もちろん、色に変換する前の前記可視域データを処理したり、解析したりすることによって前記混合物試料の特性を評価してもよい。
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様、属性が不明な被検混合物試料の属性の識別は、当該被検混合物試料と同種で属性が決定されている既知混合物試料を用いて行う。具体的には、前記被検混合物試料についての可視域データに基づく色と、前記既知混合物試料について基づいて生成された属性識別用色データに基づく色とを比較することによって、前記被検混合物試料の属性を識別することができる。
図7において、ステップS31は、図4のステップS11と同様である。すなわち、前記被検混合物試料及び少なくとも一つの前記既知混合物試料のそれぞれに由来する電磁波信号(RAW形式)を取得する。
例えば、従来のNMRスペクトル法では、混合物試料に由来する電磁波信号に相当するNMR信号(FID信号)をフーリエ変換した後、周波数スペクトル上での各周波数成分における信号強度分布に着目した解析が行われている。このため、周波数分解能を向上させる目的で時間分解能を犠牲にする(すなわち、時間の情報が失われている)。また、信号強度が低い周波数成分についてはほとんど考慮されない。
(1)第1の工程(混合物試料に由来する電磁波信号の取得)
前記第1、第2実施形態における第1の工程と同様である。
第1の工程で取得(保存)された電磁波信号を短時間周波数解析して当該電磁波信号のスペクトログラム(時間周波数表現)を算出する。
短時間周波数解析は、主に「音」や「音声」の解析に用いられている方法であり、信号全体について、その周波数成分の時間変化を知ることができる。
スペクトログラムとは、短時間周波数解析によって、すなわち、時間周波数信号などの複合信号を窓関数に通して、周波数スペクトルを計算した結果を指すものであり、スペクトログラム画像や数値列データとして出力することが可能である。前記スペクトログラム画像は、例えば2次元グラフ(時間/周波数)上に、明るさ又は色で信号成分の強度(振幅)を表示したものとすることができ、前記数値列データは、例えば2次元配列のデータとすることもできる。
図8は、信号処理装置1Cの概略構成を示すブロック図である。
図8に示すように、信号処理装置1Cは、処理部2Cと、出力部3Cとを有する。
処理部2Cは、前記混合物試料に由来する電磁波信号を入力し、入力された電磁波信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記電磁波信号のスペクトログラム(すなわち、前記混合物試料についてのスペクトログラム)を算出する。前記短時間周波数解析としては、例えば短時間フーリエ変換が該当する。但し、これに限るものではなく、ウェーブレット変換などを用いてもよい。
図10に示すように、信号処理装置1Cは、前記電磁波信号を入力すると、窓関数による対象区間の切り出しを行ってその波形のフーリエ変換からパワースペクトルを算出する処理を、前記窓関数を時間軸に沿ってシフトしながら繰り返すことによって、前記電磁波信号全体を処理する。そして、信号処理装置1Cは、算出されたスペクトログラムの数値列データ及びスペクトログラム画像の少なくとも一方を出力する。
これにより、前記電磁波信号のスペクトログラム(すなわち、前記混合物試料についてのスペクトログラム)が算出され、各「τs/Td」におけるパワースペクトルが前記2次元配列に格納される。
信号処理装置1Cから出力される前記スペクトログラムの数値列データや前記スペクトログラム画像は、前記混合物試料に関する情報をほとんど失っておらず、前記混合物試料の特性を精度よく示す情報となり得る。例えば、周波数軸では、混合物試料中に含まれる物質の種類や物質間の相互作用などに関する情報が得られ、時間軸では、混合物試料全体の物性に加えて、物質間の相互作用に関する情報が得られる。また、前記スペクトログラム画像では、各ポイントの信号強度の相違を「色相」で表示することにより、各時間における周波数の信号強度の相違も容易に把握することができる。
また、同様に、その属性区分が所定の分類基準によって設定されている所定の種類の混合物については、新たな属性区分を設定(再設定)することができる。
さらに、前記電磁波信号のスペクトログラム(数値列データやスペクトログラム画像)は、属性が不明な混合物試料の属性を識別するために利用することもできる。このような混合物試料の属性識別について、第4の工程として以下に説明する。
本実施形態においても、前記第1、第2実施形態と同様、属性が不明な被検混合物試料の属性の識別は、当該被検混合物試料と同種で属性が決定されている既知混合物試料を用いて行う。具体的には、前記被検混合物試料についてのスペクトログラムと、前記既知混合物試料についてのスペクトログラム又はこれに基づく指標とを比較することによって、前記被検混合物試料の属性を識別する。以下、前記スペクトログラム画像を用いる場合と、前記スペクトログラムの数値列データを用いる場合とに分けて説明する。
図11は、前記スペクトログラム画像を用いて前記被検混合物試料の属性を識別する処理を示すフローチャートである。
図11において、ステップS51は、図4のステップS11と同様である。すなわち、前記被検混合物試料及び少なくとも一つの前記既知混合物試料のそれぞれに由来する電磁波信号を取得する。
一方、所定の装置によって行われる場合には、以下のような構成を有する混合物試料の属性を識別する装置(以下「属性識別装置」という)を製造し、当該属性識別装置が図11のステップS52、S53の処理を実施する。
図12に示すように、属性識別装置10Aは、信号処理部11Aと、属性識別部12Aと、識別結果出力部13Aとを有する。
図13は、前記スペクトログラムの数値列データを用いて前記被検混合物試料の属性を識別する処理を示すフローチャートである。
図13において、ステップS61では、前記被検混合物試料及び複数の前記既知混合物試料のそれぞれに由来する電磁波信号を取得する。この電磁波信号の取得は、前記第1の工程と同様にして行われる。
ここで、前記属性識別用指標は、数値であってもよいし、図や表で示されたものであってもよい。
図14に示すように、属性識別装置10Bは、信号処理部11Bと、指標設定部20Bと、属性識別部12Bと、識別結果出力部13Bとを有する。
第4実施形態では、混合物試料から当該混合物試料に由来する電磁波信号を取得し、取得された電磁波信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムからその各周波数成分についてその減衰特性を示す時定数をさらに算出し、算出された各周波数成分の時定数に基づいて前記混合物試料の特性を評価する。
これにより、第4実施形態においても、前記第3実施形態と同様に、混合物試料に由来する電磁波信号に含まれる、「複雑・不均質な混合物」の構造・機能に関する情報を網羅的に解析することができる。また、「複雑・不均質な混合物」の特性評価(特性解析)において著しい精度向上が期待できる。
(1)第1の工程(混合物試料に由来する電磁波信号の取得)
前記第1〜第3実施形態における第1の工程と同様である。
第1の工程で取得(保存)した電磁波信号(RAW信号)の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによってスペクトログラム(時間周波数表現)を算出する。この点は、前記第3実施形態の第2の工程と同様である。但し、第4実施形態では、算出されたスペクトログラムから各周波数成分についてその減衰特性を示す時定数τをさらに算出する。時定数τは、各周波数成分の信号強度(振幅)の減少の度合いを表すものであり、周波数成分/時定数グラフ(例えば、ヒストグラム)や数値列データ(例えば、1次元配列)として出力することができる。
図15は、信号処理装置1Dの概略構成を示すブロック図である。
図15に示すように、信号処理装置1Dは、処理部2Dと、出力部3Dとを有する。
処理部2Dは、前記混合物試料に由来する電磁波信号を入力し、入力された電磁波信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことにより前記電磁波信号のスペクトログラム(前記混合物試料についてのスペクトログラム)を算出する。さらに、処理部2Dは、算出された前記スペクトログラムから各周波数成分についてその減衰特性を示す時定数を算出する。
出力部3Dは、算出された時定数の数値列データ及び算出された時定数から作成された周波数成分/時定数グラフの少なくとも一方を出力する。
信号処理部1Dは、図13のステップS61〜S66の処理と同様にして、入力された各電磁波信号のスペクトログラムを算出した後、算出された各スペクトログラムの各周波数成分に対して図16に示す処理を実施する。
f(t)=αe−t/τ・・・(1)
両辺の対数をとると、次式(2)が得られる。
logf(t)=−(1/τ)t+logα・・・(2)
そこで、信号処理部1Dは、前記スペクトログラムの各周波数成分を式(2)の右辺のとおり対数に変換し(ステップS71)、最小二乗法によってその時系列サンプルを最も近似する回帰直線を推定し(ステップS72)、その回帰直線の傾きから時定数τを算出して、保存用の一次元配列に格納する(ステップS73)。
一方、信号処理装置1Dは、算出された各周波数成分の時定数τを画像として出力する場合には、周波数成分/時定数グラフ(例えば、ヒストグラム)を作成する(ステップS75)。
信号処理装置1Dから出力される前記スペクトログラムの各周波数成分の時定数τの数値列データや周波数成分/時定数グラフは、前記第3実施形態における前記スペクトログラムの数値列データやスペクトログラム画像と同様、前記混合物試料の特性を精度よく示す情報となり得る。したがって、前記各周波数成分の数値列データや前記周波数成分/時定数グラフを解析することによって、前記第3実施形態と同様、前記混合物試料の特性を評価することが可能である。
本実施形態においても、前記第1〜第3実施形態と同様、属性が不明な被検混合物試料の属性を、当該被検混合物試料と同種で属性が決定されている既知混合物試料を用いて識別することができる。具体的には、前記被検混合物試料についてのスペクトログラムから算出される各周波数成分の時定数と、前記既知混合物試料についてのスペクトログラムから算出される各周波数成分の時定数とを比較することによって、前記被検混合物試料の属性を識別することができる。以下、前記周波数成分/時定数グラフを用いる場合と、前記各周波数成分の時定数の数値列データを用いる場合とに分けて説明する。
図17は、前記周波数成分/時定数グラフを用いて前記被検混合物試料の属性を識別する処理を示すフローチャートである。
図17において、ステップS81は、図4のステップS11の処理と同様である。
ステップS82では、ステップS81で取得された各電磁波信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって各電磁波信号のスペクトログラム(時間周波数表現)を算出する。
一方、所定の装置によって行われる場合には、以下のような構成を有する属性識別装置を製造し、当該属性識別装置が図17のステップS82〜S84の処理を実施する。
図18に示すように、属性識別装置10Cは、信号処理部11Cと、属性識別部12Cと、識別結果出力部13Cとを有する。
図19は、前記各周波数成分の時定数の数値列データを用いて前記被検混合物試料の属性を識別する処理を示すフローチャートである。
図19において、ステップS91、S92は、図13のステップS61、S62の処理と同様である。すなわち、前記被検混合物試料及び複数の前記既知混合物試料のそれぞれに由来する電磁波信号を取得し、取得された各電磁波信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって当該各電磁波信号のスペクトログラム(時間周波数表現)を算出する。
これにより、前記被検混合物試料についての前記各周波数成分の時定数の数値列データ、及び、複数の前記既知混合物試料のそれぞれについての前記各周波数成分の時定数の数値列データを得ることができる。
図20に示すように、属性識別装置10Dは、信号処理部11Dと、指標設定部20Dと、属性識別部12Dと、識別結果出力部13Dとを有する。
(A)NMR信号を用いた実施例
発明者らは、コンピュータ上で稼働して混合物試料に由来するNMR信号を処理するプログラム及びソフトウエア(以下「NMR信号処理ソフトウエア」という)を作成した。このNMR信号処理ソフトウエアは、混合物試料に由来するNMR信号を読み込み、(a)読み込んだNMR信号を音として出力すること、(b)読み込んだNMR信号について短時間周波数解析を行ってスペクトログラムを算出し、スペクトログラム画像及び数値列データとして出力すること、及び、(c)算出されたスペクトログラムから各周波数成分の減衰特性値(時定数τ及び/又は初期振幅α)を算出し、周波数/減衰特性値グラフ(画像)及び数値列データとして出力することが可能である。つまり、前記NMR信号処理ソフトウエアは、NMR信号を入力し、処理して、音、画像、数値列データとして保存及び出力することができる。データの保存(出力)方式には、音フォーマット(RAW形式、WAV形式など)、画像フォーマット(JPEG形式、TIFF形式、PNG形式など)、及び数値列フォーマット(CSV形式など)がある。音フォーマットのデータは、汎用の再生用ソフトウエアで再生して音として聴くことができ、また、汎用の音解析ソフトウエアを用いて音響工学的な解析を行うことができる。画像フォーマットのデータは、NMR信号の短時間周波数解析の結果を視覚(色覚)によって比較することを可能とする。
以下、混合物試料の具体例として、「実施例1 ラット血漿」及び「実施例2 マウスの細胞抽出物」の実験方法と解析結果を記載する。
[対象と方法]
・動物実験(ラット出血性ショックモデルの作製)
体重350〜400gの雄性Sprague-Dawleyラットを使用した。麻酔には、ketamine hydrochloride(65mg/kg)と、xylazine(0.7mg/kg)(2-[2,6-dimethylphenylamino]-4H-5,6-dihydrothiazine hydrochloride)との腹腔内投与を行った。体温は、直腸温度計にて測定し、加温ランプを用いて37.5〜38.5℃に維持した。大腿動静脈には、ヘパリン加生理食塩水(10単位/mL)を満たしたポリエチレンチューブ(外径0.96mm、内径0.58mm)を留置した。動脈に挿入したポリエチレンチューブはトランスデューサーと動脈圧モニターに接続し、持続的に血圧を測定した。その後、ラットをBollman-type resting cageに固定した。ラットの平均動脈圧が100〜110mmHgに安定した時点で、平均血圧が40mmHgに達するまで、1mL/minの速度で脱血し、出血性ショック状態を作製した。その後、必要に応じて脱血と返血を繰り返し、血圧レベルが40mmHgで30分間維持されるように、微調整を行った。
30分間の出血性ショック状態のラットから採取した動脈血を4℃で遠心分離し、上清を−80℃で保存した(「shock血漿」)。
正常ラットに上記の麻酔を行って動脈血を採取し、遠心分離して得られた血漿を、コントロール血漿(「control血漿」)とした。
血漿50−100μLに、既知量のsodium (3-trimethylsilyl) tetradeuteriopropionate-2,2,3,3-d4 (TMSP)を含む重水500−550μLを加え、5mm径のガラス製NMR試料管に移し、NMR測定試料とした。重水は磁場不均一補正のための重水素ロックシグナル取得の目的で、また、TMSPは信号確認の指標として添加した。
プロトンNMR信号の取得は、ECX NMR装置(プロトン共鳴周波数300MHzの超電導マグネット、TH5プローブ、16本オートサンプルチェンジャー、DeltaTM NMR processing and control software (version 4.3.2)を装備)にて行った。プロトンNMRシグナルの取得には、DeltaTMシステムに組み込まれた自動測定用のマクロプログラムを用いた。プローブ内温度は23℃とした。NMR信号の観測範囲は4500Hzとした。測定シークエンスとしては、一次元NMR信号取得用のシングルパルスモードを使用し、軽水の信号はホモゲート法とDANTE法により抑制した。データ解析に十分なSN比が得られるように、400回の積算を行った。取得した各サンプルのNMR信号データは、そのままの形(ここでは、JDF(ECX標準)フォーマット)で保存した。
(1)NMR信号の音出力
JDFフォーマットで保存した各ラット血漿のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各JDFフォーマットのファイルごとに音として出力(再生)した。その結果、control血漿とshock血漿とは、明らかに異なる音として出力されること、すなわち、ヒトの聴覚によってcontrol血漿とshock血漿とを識別できることが確認された。次に、これらのデータを非圧縮WAVフォーマットで保存し、保存されたファイルが、汎用の再生用ソフトウエアで再生できること及び汎用の音解析ソフトウエアを用いて解析できることも確認された。
JDFフォーマットで保存した各ラット血漿のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについて、信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返し行ってスペクトラムを算出した。算出結果は、前記コンピュータのディスプレイ上にスペクトログラム画像として表示した。なお、各スペクトログラム画像はPNGフォーマットで保存した。
図21は、control血漿のスペクトログラム画像の一例と、shock血漿のスペクトラム画像の一例とを示している。図21に示すように、control血漿のスペクトログラム画像とshock血漿のスペクトラム画像とは明らかに相違しており、スペクトログラム画像の比較によって両者を識別できることが確認された。
JDFフォーマットで保存した各ラット血漿のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについてスペクトラムを算出し、算出したスペクトログラムから各周波数成分の減衰特性値(時定数τ)を算出した。算出結果は、前記コンピュータのディスプレイ上に周波数成分/時定数グラフとして表示した。なお、各周波数成分/時定数グラフは、PNGフォーマットで保存した。
図22は、control血漿の周波数成分/時定数グラフの一例と、shock血漿の周波数成分/時定数グラフの一例を示している。図22に示すように、control血漿の周波数成分/時定数グラフと、shock血漿の周波数成分/時定数グラフとは明らかに相違しており、周波数成分/時定数グラフの比較によって両者を識別できることが確認された。
JDFフォーマットで保存した各ラット血漿のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについてスペクトラムを算出した。その算出結果である数値列データを出力してCSVフォーマットで保存した。保存した数値列データを汎用の多変量解析ソフトウエアに入力して主成分分析(PCA)を行った。その結果を図23に示す。図23に示すように、各データから算出した主成分スコアは、スコアプロット上で、主成分1(Pc1)が、異なる領域に、control群とshock群とにクラスター化して分布した。引き続きPLS−DA法によるクラス分類を行ったところ、図24に示すように、control群とshock群とを精度よく識別できることが確認された。
JDFフォーマットで保存した各ラット血漿のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについてスペクトラムを算出し、算出したスペクトログラムから各周波数成分の減衰特性値(時定数τ)を算出した。その算出結果である数値列データ(τ値)を出力してCSVフォーマットで保存した。保存した数値列データを汎用の多変量解析ソフトウエアに入力して主成分分析(PCA)を行った。その結果を図25に示す。図25に示すように、各データから算出した主成分スコアは、スコアプロット上で、主成分1(Pc1)が異なる領域に、control群とshock群にクラスター化して分布することが確認された。引き続きPLS−DA法によるクラス分類を行ったところ、図26に示すように、control群とshock群を精度よく識別できることが確認された。
[対象と方法]
・細胞の採取
(1)脂肪組織由来幹細胞(ASCs)
5週齡オスのマウス(C57BL/6)を用いた。麻酔瓶の中でエーテルを用いて安楽死させたのち、マウスを背臥位で固定し、腹部を横切開し、鼡径部から背部に至る脂肪塊を採取した。脂肪塊をPBS(Phosphate buffered saline、リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、付着した血管等は切除した。脂肪塊を細断後、PBSと共に50mLの遠心チューブに移し、さらにコラゲナーゼを加えて、0.15%のコラゲナーゼ溶液とした。この遠心チューブを温浴槽に入れ、37℃で30分インキュベートした。遠心チューブ中の脂肪塊が肉眼的に消失した後、FBS(Fetal bovine serum、ウシ胎児血清)を加えてコラゲナーゼ活性を停止させ、遠心分離を行った。遠心後の上清を吸引除去した後、10mLのcontrol medium(培養液)を同チューブにいれ、細胞ペレットを十分に攪拌し、100mLディッシュ10枚の各々に1000μLずつピペッティングした。各ディッシュを良く振盪し、細胞が均等に広がるのを肉眼で確認後、37℃でのインキュベートを開始した。1週間に2−3回培地の交換を行った。
約4日から1週間で100%コンフルエントとなった後、control mediumをすべて吸引し、PBSで洗浄した。その後、100mLディッシュ1枚に対してTrypsin-EDTAを1mLずつ入れ、37℃で10分間インキュベートした。培地が肉眼的に黄色に変化した後、顕微鏡で細胞の剥離を確認し、control mediumを2mL入れて中和した。そして、同溶液0.5−1mLずつを、あらかじめ5mLのcontrol mediumを入れた新しい100mLディッシュに分注し、37℃でのインキュベートを開始した。このようにして第二継代培養した細胞を採取し、液体窒素にて急速冷凍後、−80℃に保存した。
5週齡オスのマウス(C57BL/6)を用いた。麻酔瓶の中でエーテルを用いて安楽死させたのち、大腿骨と脛骨を採取した後、23ゲージ針をつけた20mL PBS入りシリンジを用いて骨髄を洗い出し、50mLチューブ内に回収した。他の50mLチューブにセルストレイナーをセッティングし、ここに先ほど回収した骨髄液を移し入れ、遠心分離を行った。細胞のペレットを吸わないように上清を吸引した。マウス3匹分の骨髄に対して1mLのcontrol mediumをチューブに加えて振盪後、細胞を懸濁させた。そして、同溶液1mLずつを、あらかじめ5mLのcontrol mediumを入れた新しい100mLディッシュに分注し、37℃でのインキュベートを開始した。このようにして第二継代培養した細胞を採取し、液体窒素にて急速冷凍後、−80℃に保存した。
(1)細胞の破砕・分離抽出
NMR測定用のマウス細胞抽出物を調整するために、吉岡らのプロトコールに従ってneutral extractionを遂行した。本抽出法は基本的にはFolchの方法と同じである。Folchは、動物の組織から脂質成分を抽出するために本法をデザインしたが、吉岡は、本法が、生体から摘出した組織や細胞に特別な処理を加えることなく、また含有物質に化学変化を起こすことなく多数の化学物質を抽出できることに着目して、改良を加えた。特に、極性有機化合物を非極性有機化合物から分離できる点でも有用である。
まず、凍結保存した細胞を、冷却したクロロホルム・メタノール(2:1)混合液1.5mL中で十分に撹拌し、細胞を破砕して内容物を振盪抽出後、遠心分離を行った。次に、濾過により不溶成分を除去した抽出液に0.5mLの蒸留水を加え、上記と同じ条件で再度振盪抽出を行った。抽出液を十分に撹拌後、24時間、4℃で放置し、遠心分離を行って2層の溶液層と不溶残渣として分取した。本実験では、上層の溶液について真空エバポレーターを用いて溶媒を完全に留去し、留去の残渣をNMR測定試料とした。
上記残渣に重水(D2O)を180μL加えて再溶解し、3mmNMR試料管に入れた。別に用意した5mmNMR試料管に、25 μM sodium (3-trimethylsilyl) tetradeuteriopropionate-2,2,3,3-d4 (TMSP)を含む300μLの重水を入れ、測定試料の入った前記3mmNMR試料管を前記5mmNMR試料管中に入れて固定して、NMR測定試料とした。重水は磁場不均一補正のための重水素ロックシグナル取得の目的で、また、TMSPは信号確認の内部指標として用いた。
プロトンNMR信号の取得は、ECX NMR装置(プロトン共鳴周波数300MHzの超電導マグネット、TH5プローブ、16本オートサンプルチェンジャー、DeltaTM NMR processing and control software (version 4.3.2)を装備)にて行った。プロトンNMRシグナルの取得には、DeltaTMシステムに組み込まれた自動測定用のマクロプログラムを用いた。プローブ内温度は23℃とした。NMR信号の観測範囲は4500Hzとした。測定シークエンスとしては、一次元NMR信号取得用のシングルパルスモードを使用し、軽水の信号はホモゲート法とDANTE法により抑制した。データ解析に十分なSN比が得られるように、8000回の積算を行った。取得した各サンプルのNMR信号データは、そのままの形(ここでは、JDFフォーマット(ECX標準フォーマット))で保存した。
(1)NMR信号の音出力
JDFフォーマットで保存した各マウス細胞抽出物のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各JDFフォーマットのファイルごとに音として出力(再生)した。ASCs抽出物とBSCs抽出物は、明らかに異なる音として出力されることが確認された。次に、これらのデータをWAVフォーマットで保存し、保存されたファイルが、汎用の再生用ソフトウエアで再生できること及び汎用の音解析ソフトウエアを用いて解析できることも確認された。
JDFフォーマットで保存した各マウス細胞抽出物のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについて、信号全体にわたって短時間周波数解析を繰り返し行ってスペクトラムを算出した。算出結果は、前記コンピュータのディスプレイ上にスペクトログラム画像として表示した。なお、各スペクトログラム画像はPNGフォーマットで保存した。
図27は、ASCs抽出物のスペクトログラム画像の一例と、BSCs抽出物のスペクトラム画像の一例とを示している(実際にはカラーである)。図27に示すように、ASCs抽出物のスペクトログラム画像とBSCs抽出物のスペクトラム画像とは明らかに相違しており、スペクトログラム画像の比較によって両者を識別できることが確認された。
JDFフォーマットで保存した各マウス細胞抽出物のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについてスペクトラムを算出し、算出したスペクトログラムから各周波数成分の減衰特性値(時定数τ)を算出した。算出結果は、前記コンピュータのディスプレイ上に周波数成分/時定数グラフとして表示した。なお、各周波数成分/時定数グラフは、PNGフォーマットで保存した。
図28は、ASCs抽出物の周波数成分/時定数グラフの一例と、BSCs抽出物の周波数成分/時定数グラフの一例を示している。図28に示すように、ASCs抽出物の周波数成分/時定数グラフと、BSCs抽出物の周波数成分/時定数グラフとは明らかに相違しており、周波数成分/時定数グラフの比較によって両者を識別できることが確認された。
JDFフォーマットで保存した各マウス細胞抽出物のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについてスペクトラムを算出した。算出結果である数値列データを出力してCSVフォーマットで保存した。保存した数値列データを汎用の多変量解析ソフトウエアに入力して主成分分析(PCA)を行った。その結果を図29に示す。図29に示すように、各データから算出した主成分スコアは、スコアプロット上で、主成分1(Pc1)が、異なる領域に、ASCs抽出物群とBSCs抽出物群とにクラスター化して分布した。引き続きPLS−DA法によるクラス分類を行ったところ、図30に示すように、ASCs抽出物群とBSCs抽出物群とを精度よく識別できることが確認された。
JDFフォーマットで保存した各マウス細胞抽出物のNMR信号データを前記NMR信号処理ソフトウエアに入力し、各NMR信号データについてスペクトラムを算出し、算出したスペクトログラムから各周波数成分の減衰特性値(時定数τ)を算出した。その算出結果である数値列データ(τ値)を出力してCSVフォーマットで保存した。保存した数値列データ(τ値)を汎用の多変量解析ソフトウエアに入力して主成分分析(PCA)を行った。その結果を図31に示す。図31に示すように、各データから算出した主成分スコアは、スコアプロット上で、主成分1(Pc1)が、異なる領域に、ASCs抽出物群とBSCs抽出物群とにクラスター化して分布した。引き続きPLS−DA法によるクラス分類を行ったところ、図32に示すように、ASCs抽出物群とBSCs抽出物群とを精度よく識別できることが確認された。
発明者らは、コンピュータ上で稼働して混合物試料に由来する電磁波信号(例えば、NIR信号)を処理するプログラム及びソフトウエア(以下「電磁波信号処理ソフトウエア」という)を作成した。この電磁波信号処理ソフトウエアは、混合物試料に由来する電磁波信号を読み込み、読み込んだ電磁波信号を色(色画像)として出力(表示)することが可能である。つまり、前記電磁波信号処理ソフトウエアは、電磁波信号を処理し、色画像として出力することができる。また、前記電磁波信号処理ソフトウエアは、処理後のデータを画像フォーマット(PNG形式等)及び数値列フォーマット(CSV形式など)で保存し、出力することができる。
以下、混合物試料の具体例として、「ラット血漿」の実験方法と解析結果を記載する。
[対象と方法]
・動物実験(敗血症モデルの作製)
体重280〜330gの雄性Sprague-Dawleyラットに、2mg/kg又は10mg/kgのlipopolysaccharide(LPS、Escherichia coli 0111:B4)を腹腔内投与し、敗血症を惹起させる。投与6時間後に3〜5%イソフルラン麻酔下で採取した静脈血を遠心分離し、その上清を−80℃で保存した(LPS血漿1(2mg/kg)、LPS血漿2(10mg/kg))。
LPSの代わりに生理食塩水を投与したラットから同様の処置を行って得られた血漿を、コントロール血漿(control血漿)とした。
血漿試料をガラス製試料管に入れたものをNIR測定試料とした。
・NIR信号の取得
近赤外線センサーを用いた。
測定条件は、以下のとおりである。
波長:900−1700nm、蓄積時間モード:自動、蓄積時間上限:1024ms、ゲイン:GAIN_LOW、スキャン回数:10回、計測モード:回数指定計測モード、保存データ:カウント値、吸光度、スペクトル(規格化吸光度)。
NIR測定試料を近赤外線センサープローブの測定口に配置し、各試料についてそれぞれ10回の計測を行った。各測定データはCSV形式で出力し保存した。
前記電磁波信号処理ソフトウエアを用いて以下の処理及び出力を行った。
(1)NIR信号の色表示
取得したNIR信号の波長のダイナミックレンジ(例:近赤外領域の場合は900〜1700nm)を、可視領域(400〜800nm)へ線形写像して、可視領域の信号として読み替えた(変換した)。次に、RGB感度曲線から決定される、RGB三原色の主要な帯域(例:赤は690〜710nm、緑は536〜556nm、青は425〜445nm)のそれぞれにおける強度(平均値)を計算した。
(2)色表示された各混合物のNIRデータの視覚(色覚)評価による識別
ラット血漿試料ごとのNIR信号について算出されたRGB値を用いて、前記コンピュータのディスプレイ上で色表示すると共に、色画像データ(PNGフォーマット)として保存した。図33は、control血漿、LPS血漿1、及びLPS血漿2のそれぞれの色(色画像)の一例を示している(実際にはカラーである)。図33に示すように、control血漿の色、LPS血漿1の色、及びLPS血漿2の色は、それぞれ相違しており、表示された色の比較によって三者を識別できることが確認された。
(3)RGBデータ(数値列データ)のSVMによる識別(図34参照)
複数のcontrol血漿、複数のLPS血漿1および複数のLPS血漿2のRGBデータを出力し、CSVフォーマットで保存した。本データを汎用の多変量解析ソフトウエアに読み込み、control血漿(75データ)、LPS血漿1(77データ)、LPS血漿2(73データ)をトレーニングデータ、残りのcontrol血漿(36データ)、LPS血漿1(36データ)、LPS血漿2(36データ)をテストデータとしてSVMによる識別を行った。トレーニングデータを用いてSVMの学習を行い、セグメントサイズ9のクロスバリデーションによるトレーニングデータについての識別器の性能評価を行なったところ、高い識別率を得た。次にテストデータについて本識別器によるクラス識別を試みたところ、100%の識別率となり、本識別器が未知のデータにも高い精度で識別能を持つことが確認できた。
Claims (23)
- 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の特性を表現する方法であって、
前記複雑・不均質な混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによってFID信号を取得すること、及び、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムによって前記複雑・不均質な混合物試料の特性を表現すること、
を含む、方法。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の特性を評価する方法であって、
前記複雑・不均質な混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによってFID信号を取得すること、及び、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムに基づいて前記複雑・不均質な混合物試料の特性を評価すること、
を含む、方法。 - 前記スペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出し、算出された各周波数成分の減衰特性値に基づいて前記複雑・不均質な混合物試料の特性を評価する、請求項2に記載の方法。
- 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する方法であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによってFID信号を取得すること、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出すること、
前記スペクトログラムから前記被検混合物試料についてのスペクトログラム画像を作成すること、及び、
前記被検混合物試料についてのスペクトログラム画像と、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている少なくとも一つの既知混合物試料に基づいて作成された属性識別用画像とを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別すること、
を含む、方法。 - 前記属性識別用画像は、前記被検混合物試料についてのスペクトログラム画像と同様にして作成された前記少なくとも一つの既知混合物試料についてのスペクトログラム画像を含む、請求項4に記載の方法。
- 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する方法であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによってFID信号を取得すること、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出すること、
前記スペクトログラムの数値列データを用いて前記被検混合物試料についての特徴量を算出すること、及び、
前記被検混合物試料についての特徴量と、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている複数の既知混合物試料に基づいて設定された属性識別用指標とを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別すること、
を含む、方法 - 前記属性識別用指標は、前記被検混合物試料についての特徴量と同様にして算出された前記複数の既知混合物試料についての特徴量のうち属性毎にグループ化された前記既知混合物試料の特徴量に基づいて属性毎に設定されたものである、請求項6に記載の方法。
- 前記特徴量は、前記被検混合物試料についてスペクトログラムと同様にして算出された前記複数の既知混合物試料についてのスペクトログラムの数値列データに対する多変量解析に基づく特徴量である、請求項6又は7に記載の方法。
- 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する方法であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによってFID信号を取得すること、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出すること、
前記スペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出すること、
前記各周波数成分の減衰特性値から前記被検混合物試料についての周波数成分/減衰特性値グラフを作成すること、及び、
前記被検混合物試料についての周波数成分/減衰特性値グラフと、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている少なくとも一つの既知混合物試料に基づいて作成された属性識別用グラフとを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別すること、
を含む、方法。 - 前記属性識別用グラフは、前記被検混合物試料についての周波数成分/減衰特性値グラフと同様にして作成された前記少なくとも一つの既知混合物試料についての周波数成分/減衰特性値グラフを含む、請求項9に記載の方法。
- 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する方法であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによってFID信号を取得すること、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出すること、
前記スペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出すること、
前記各周波数成分の減衰特性値を用いて前記被検混合物試料についての特徴量を算出すること、及び、
前記被検混合物試料についての特徴量と、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている複数の既知混合物試料に基づいて設定された属性識別用指標とを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別すること、
を含む、方法。 - 前記属性識別用指標は、前記被検混合物試料についての特徴量と同様にして算出された前記複数の既知混合物試料についての特徴量のうち属性毎にグループ化された前記既知混合物試料の特徴量に基づいて属性毎に設定されたものである、請求項11に記載の方法。
- 前記特徴量は、前記被検混合物試料についての各周波数成分の減衰特性値と同様にして算出された前記複数の既知混合物試料についての各周波数成分の減衰特性値の数値列データに対する多変量解析に基づく特徴量である、請求項11又は12に記載の方法。
- 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を処理する方法であって、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出すること、及び、
前記スペクトログラムの数値列データ、及び前記スペクトログラムから作成されたスペクトログラム画像の少なくとも一方を、前記複雑・不均質な混合物試料の特性を示す情報として出力すること、
を含む、方法。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を処理する方法であって、
前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出すること、
前記スペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出すること、及び、
前記各周波数成分の減衰特性値の数値列データ、及び前記各周波数成分の減衰特性値から作成された周波数成分/減衰特性値グラフの少なくも一方を、前記複雑・不均質な混合物試料の特性を示す情報として出力すること、
を含む、方法。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する装置であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を入力し、入力されたFID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムから前記被検混合物試料についてのスペクトログラム画像を作成して出力する信号処理部と、
前記被検混合物試料についてのスペクトログラム画像と、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている少なくとも一つの既知混合物試料に基づいて作成された属性識別用画像とを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別する属性識別部と、
を有する、装置。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する装置であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を入力し、入力されたFID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムの数値列データを用いて前記被検混合物試料についての特徴量を算出して出力する信号処理部と、
前記被検混合物試料について特徴量と、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている複数の既知混合物試料に基づいて設定された属性識別用指標とを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別する属性識別部と、
を有する、装置。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する装置であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を入力し、入力されたFID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出し、算出された各周波数成分の減衰特性値から前記被検混合物試料についての周波数成分/減衰特性値グラフを作成して出力する信号処理部と、
前記被検混合物試料についての周波数成分/減衰特性値グラフと、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている少なくとも一つの既知混合物試料に基づいて作成された属性識別用グラフとを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別する属性識別部と、
を有する、装置。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料の属性を識別する装置であって、
前記複雑・不均質な混合物試料であって属性が不明な被検混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を入力し、入力されたFID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出し、算出された各周波数成分の減衰特性値を用いて前記被検混合物試料についての特徴量を算出して出力する信号処理部と、
前記被検混合物試料について特徴量と、前記被検混合物試料と同種で属性が決定されている複数の既知混合物試料に基づいて設定された属性識別用指標とを比較して、前記被検混合物試料の属性を識別する属性識別部と、
を有する、装置。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を処理する装置であって、
入力された前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出する処理部と、
前記処理部で算出されたスペクトログラムの数値列データ、及び前記処理部で算出されたスペクトログラムから作成されたスペクトログラム画像の少なくとも一方を、前記複雑・不均質な混合物試料の特性を示す情報として出力する出力部と、
を有する、装置。 - 生物から採取された生物サンプルを含む複雑・不均質な混合物試料を核磁気共鳴(NMR)分析装置にかけることによって取得されたFID信号を処理する装置であって、
入力された前記FID信号の全体にわたって短時間周波数解析を繰り返すことによって前記FID信号のスペクトログラムを算出し、算出されたスペクトログラムの各周波数成分の減衰特性値を算出する処理部と、
前記処理部で算出された各周波数成分の減衰特性値の数値列データ、及び前記処理部で算出された各周波数成分の減衰特性値から作成された周波数成分/減衰特性値グラフの少なくとも一方を、前記複雑・不均質な混合物試料の特性を示す情報として出力する出力部と、
を有する、装置。 - 請求項14又は15に記載の方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
- 請求項22に記載のコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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