(第1実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置を車載主機として回転機を備える車両(例えば、電気自動車やハイブリッド車)に適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、モータ制御システムは、モータジェネレータ10、「電力変換回路」としてのインバータ20、及びモータジェネレータ10を制御対象とする制御装置30を備えている。本実施形態において、モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に連結されている。本実施形態では、モータジェネレータ10として、突極機であるIPMSMを用いている。
モータジェネレータ10は、インバータ20を介して、直流電源としてのバッテリ22に接続されている。バッテリ22の出力電圧は、例えば百V以上である。なお、バッテリ22及びインバータ20の間には、インバータ20の入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ24が設けられている。
インバータ20は、上アーム側のスイッチング素子SUp,SVp,SWpと下アーム側のスイッチング素子SUn,SVp,SWnとの直列接続体を備えている。詳しくは、インバータ20は、上アーム側のスイッチング素子と下アーム側のスイッチング素子との直列接続体を3組備えている。上アーム側のスイッチング素子SUp,SVp,SWpと下アーム側のスイッチング素子SUn,SVn,SWnとの接続点は、モータジェネレータ10のU,V,W相に接続されている。ちなみに、本実施形態では、上記スイッチング素子SUp〜SWnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用い、より具体的には、IGBTを用いている。そして、スイッチング素子SUp〜SWnには、フリーホイールダイオードDUp〜DWnが逆並列に接続されている。
モータ制御システムは、さらに、モータジェネレータ10のV相に流れる電流を検出するV相電流センサ42V、W相に流れる電流を検出するW相電流センサ42W、インバータ20の入力電圧(バッテリ22から出力される直流電圧)を検出する電圧センサ44、及びモータジェネレータ10の回転角(電気角θ)を検出する回転角センサ46(例えばレゾルバ)を備えている。
制御装置30は、マイコンを主体として構成され、モータジェネレータ10のトルクに関する制御量(本実施形態ではトルク)をその目標値(以下、目標トルクTrq*)にフィードバック制御すべく、インバータ20を操作する。詳しくは、制御装置30は、インバータ20を構成するスイッチング素子SUp〜SWnをオンオフ操作すべく、上記各種センサの検出値に基づき、操作信号gUp〜gWnを生成し、生成された操作信号gUp〜gWnを駆動回路DrUp〜DrWn(ゲート駆動回路)に対して出力する。ここで、上アーム側の操作信号gUp,gVp,gWnと、対応する下アーム側の操作信号gUn,gVn,gWnとは、互いに相補的な信号となっている。すなわち、上アーム側のスイッチング素子SUp,SVp,SWpと、対応する下アーム側のスイッチング素子SUn,SVn,SWnとは、交互にオン状態とされる。なお、目標トルクTrq*は、例えば、制御装置30の外部に設けられた制御装置であって、制御装置30よりも上位の制御装置から出力される。
続いて、図2を用いて、制御装置30によって実行されるモータジェネレータ10のトルク制御について説明する。この制御は、位相制御と、振幅制御とを含むものである。
まず、位相制御について説明する。2相変換部30aは、V相電流センサ42Vによって検出されたV相電流IV、W相電流センサ42Wによって検出されたW相電流IW、及び回転角センサ46によって検出された電気角θに基づき、3相固定座標系におけるU相電流IU,V相電流IV,W相電流IWを2相回転座標系(dq座標系)におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。なお、U相電流IUは、キルヒホッフの法則に基づき、V相電流IV及びW相電流IWから算出すればよい。
トルク推定器30bは、2相変換部30aから出力されたd,q軸電流Idr,Iqrに基づき、モータジェネレータ10の推定トルクTeを算出する。ここで、推定トルクTeは、d軸電流Idr及びq軸電流Iqrと推定トルクTeとが関係付けられたマップを用いて算出してもよいし、モデル式を用いて算出してもよい。なお、本実施形態において、トルク推定器30bが「トルク推定手段」に相当する。
フィルタ30cは、トルク推定器30bによって算出された推定トルクTeから高周波成分を除去する。本実施形態において、フィルタ30cは、ローパスフィルタとして構成されている。トルク偏差算出部30dは、目標トルクTrq*から、高周波成分が除去された推定トルクTeを減算することでトルク偏差ΔTを算出する。
位相設定部30e(「位相設定手段」に相当)は、トルク偏差算出部30dによって算出されたトルク偏差ΔTに基づき、推定トルクTeを目標トルクTrq*にフィードバック制御するための操作量として、位相操作量としての電圧位相φを算出する。詳しくは、トルク偏差ΔTを入力とする比例積分制御によって電圧位相φを算出する。より具体的には、トルク偏差ΔTを入力とした比例制御器の出力値「Kpφ×ΔT」と、トルク偏差ΔTを入力とした積分制御器の出力値「Kiφ×∫(ΔT×dt)」との加算値として電圧位相φを算出する。ここで、「Kpφ」は位相制御における比例ゲインを示し、「Kiφ」は位相制御における積分ゲインを示す。本実施形態において、電圧位相φは、d軸の正方向を基準とし、この基準から反時計回りの方向(d軸の正方向からq軸の正方向へと回転する方向)が正方向として定義されている。このため、目標トルクTrq*に対して推定トルクTeが不足する場合には、図3に示すように電圧位相φを増大(進角)させ、目標トルクTrq*に対して推定トルクTeが過剰となる場合には、電圧位相φを減少(遅角)させるようにする。なお、図3には、トルクがモータジェネレータ10の回転速度(電気角速度)にも依存することを併せて示した。
続いて、振幅制御について説明する。図2に示すように、指令電圧設定部30fは、目標トルクTrq*を入力として、規格化電圧振幅「Vn/ω」を算出する。ここで、規格化電圧振幅「Vn/ω」とは、2相回転座標系におけるインバータ20の出力電圧ベクトルの振幅指令値(以下、電圧振幅Vn)を電気角速度ωで除算した値のことである。なお、電圧振幅Vnは、上記出力電圧ベクトルのd軸成分Vdの2乗値及びq軸成分Vqの2乗値の和の平方根として定義される。本実施形態において、規格化電圧振幅は、目標トルクTrq*及び規格化電圧振幅が関係付けられたマップを用いて算出される。
速度算出部30gは、回転角センサ46によって検出された電気角θに基づき、モータジェネレータ10の電気角速度ωを算出する。速度乗算部30hは、規格化電圧振幅「Vn/ω」に電気角速度ωを乗算することで、電圧振幅Vnを算出する。電圧振幅Vnは、モータジェネレータ10のトルクを目標トルクTrq*にフィードフォワード制御するための操作量となる。
補正部30iは、速度乗算部30hから出力された電圧振幅Vnに、補正量算出部32によって算出された振幅補正量ΔVを加算することで、電圧振幅Vnを補正する。なお、補正量算出部32については、後に詳述する。
操作信号生成部30j(「操作手段」に相当)は、補正部30iから出力された電圧振幅「Vn+ΔV」、位相設定部30eから出力された電圧位相φ、及び電圧センサ44によって検出された入力電圧VINVに基づき、操作信号gUp〜gWnを生成して駆動回路DrUp〜DrWnに出力する。本実施形態では、操作信号を以下のように生成する。
操作信号生成部30jは、まず、位相が電気角で互いに120度ずつずれた正弦波の3相指令電圧を算出する。そして、算出した3相指令電圧とキャリア信号(例えば三角波信号)との大小比較に基づく三角波比較PWM制御によって操作信号gUp〜gWnを生成する。
ちなみに、本実施形態では、変調率Mrが第1の規定値M1(例えば1.15)を超える過変調領域の場合、上述したトルク制御(過変調制御)が行われる。本実施形態において、変調率Mrとは、入力電圧VINVで電圧振幅Vnを規格化した値のことである。より具体的には、変調率Mrとは、入力電圧VINVの「1/2」で電圧振幅Vnを除算した値を、「√(1.5)」で除算した値のことである。過変調領域においてインバータ20出力電圧(具体的には、線間電圧)に含まれる基本波成分の振幅又は実効値は、インバータ20の出力電圧を正弦波とする場合にインバータ20の出力電圧に含まれる基本波成分の振幅又は実効値よりも大きくなる。特に、変調率Mrが第1の規定値M1よりも高い第2の規定値M2(例えば1.27であり、「上限値」に相当)となる場合、矩形波制御(1パルス制御)が行われる。矩形波制御が行われる場合、パルスパターンとして、電気角θの1周期において上アーム側のスイッチング素子をオン状態とする期間と下アーム側のスイッチング素子をオン状態する期間とが1回ずつとされるパルスパターン(1パルス波形)が選択される。変調率Mrが第2の規定値M2よりも大きくなる場合にも矩形波制御が行われる。一方、変調率Mrが第1の規定値M1以下となる場合、インバータ20の出力電圧を電気角速度ωの正弦波とする正弦波PWM制御が行われる。
続いて、図4〜図6を用いて、補正量算出部32の設計手法について説明する。
永久磁石同期機の電圧方程式は、下式(eq1)で表される。
上式(eq1)において、「p」は微分演算子を示し、「R」は電機子巻線抵抗を示し、「Ld」,「Lq」はd,q軸インダクタンスを示し、「ψ」は永久磁石の電機子鎖交磁束の実効値を示す。上式(eq1)において、モータジェネレータ10の回転速度が一定となる定常状態を想定し、過渡現象を無視するとの条件を課すと、「p=0」となる。また、上式(eq1)に、モータジェネレータ10の回転速度が十分高く、「R<<ω・Ld」,「R<<ω・Lq」の関係が成立するとの条件を課す。以上から、上式(eq1)は下式(eq2)のように表される。
d,q軸電圧Vd,Vqと、電圧位相φ及び電圧振幅Vnとの関係は、下式(eq3)で表される。
ここで、電圧位相φが微小量Δφだけ変化した場合における電圧方程式は、上式(eq2),(eq3)を用いると、下式(eq4)で表される。
上式(eq4)から上式(eq2)を減算すると、下式(eq5)が導かれる。
上式(eq5)において、右辺の「Idφ−Id」がd軸電流変化量ΔIdφであり、「Iqφ−Iq」がq軸電流変化量ΔIqφである。上式(eq5)を各電流変化量ΔIdφ,ΔIqφについて解くと、下式(eq6)が導かれる。
図4に、dq座標系における電圧ベクトルVnvt及び電流ベクトルInvtを示す。ここで、電流ベクトルは、d軸電流の2乗値及びq軸電流の2乗値の和の平方根として定義される。図4には、電圧位相φが微小量Δφだけ変化した場合の電流ベクトルInvtの変化分を「ΔIφ」にて示した。また、電圧振幅が微小量ΔVnだけ変化した場合の電流ベクトルInvtの変化分を「ΔIvn」にて示した。この電流ベクトルInvtの変化分を拡大した図を図5として示す。上式(eq6)より、電圧位相φが微小変化した場合において、d軸に対する電流ベクトルInvtの変化方向αは、下式(eq7)で表される。
上式(eq7)のアークタンジェント演算により、例えば、変化方向αを「−π〜+π」の間で算出することができる。特に本実施形態では、上式(eq7)の右辺において、括弧内の分母が0となってかつ分子が正の値となる場合、変化方向αを「π/2」として算出する。一方、上式(eq7)の右辺において、括弧内の分母が0となってかつ分子が負の値となる場合、変化方向αを「−π/2」として算出する。ここで、図6には、電流ベクトルInvtの変化方向と直交する方向に延びる座標軸をλ軸として示している。電圧振幅Vnが微小量ΔVnだけ変化した場合の電流ベクトルの変化分ΔIvnのうち、λ軸成分(すなわち、上記変化分ΔIvnをλ軸に写像した成分)は、電圧位相φの変化の影響を受けない電流である。本実施形態では、この電流をλ軸電流Iλとして振幅補正量ΔVの算出に用いる。λ軸電流Iλを用いることにより、振幅制御と位相制御との干渉を抑制することができる。ここで、λ軸を設定するために必要なパラメータであるd軸とλ軸とのなす角度λは、下式(eq8)で表される。
以上を踏まえ、先の図2に戻り、補正量算出部32について説明する。
λ軸設定部32aは、d,q軸インダクタンスLd,Lqと、位相設定部30eから出力された電圧位相φとに基づき、上式(eq8)を元に、d軸とλ軸とのなす角度λを算出する。λ軸設定部32aは、dq座標系において、電圧位相φの変化に対する電流ベクトルInvtの変化が非干渉化された非干渉化座標軸(λ軸)を設定する非干渉化軸設定手段に相当する。λ軸設定部32aにおいて設定されるλ軸は、モータジェネレータ10の駆動状態の変化に伴って都度変化する。
指令電流設定部32bは、目標トルクTrq*に基づき、d,q軸指令電流Id*,Iq*を設定する。各指令電流Id*,Iq*は、目標トルクTrq*を実現可能な値に設定されている。本実施形態では、最小電流最大トルク制御を実現するための電流をd,q軸指令電流Id*,Iq*として設定する。なお、最小電流最大トルク制御については、例えば「埋込磁石同期モータの設計と制御:武田洋次ら、外3名、オーム社、平成18年4月20日、第1版」の23ページに記載されている。
λ軸指令電流算出部32cは、指令電流設定部32bから出力された各指令電流Id*,Iq*と、λ軸設定部32aから出力された角度λとに基づき、下式(eq9)を元に、λ軸指令電流Iλ*を算出する(図7参照)。
ここで、図7には、現在の指令電流ベクトルを「In*」にて示し、現在の電流ベクトルを「Invt」にて示した。
λ軸実電流算出部32d(「非干渉化電流算出手段」に相当)は、2相変換部30aから出力されたd,q軸電流Idr,Iqrと、λ軸設定部32aから出力された角度λとに基づき、下式(eq10)を元に、λ軸電流Iλrを算出する(図7参照)。
λ軸がモータジェネレータ10の駆動状態の変化に伴って変化するため、λ軸電流Iλr及びλ軸指令電流Iλ*もモータジェネレータ10の駆動状態の変化に伴って都度変化することとなる。
フィルタ32eは、λ軸実電流算出部32dによって算出されたλ軸電流Iλrから高周波成分を除去する。本実施形態において、フィルタ32eは、ローパスフィルタとして構成されている。
電流偏差算出部32fは、高周波成分が除去されたλ軸電流Iλrをλ軸指令電流Iλ*から減算することで電流偏差ΔIλを算出する。振幅補正量算出部32g(「振幅設定手段」に相当)は、電流偏差ΔIλに基づき、λ軸電流Iλrをλ軸指令電流Iλ*にフィードバック制御するための操作量(換言すれば、推定トルクTeを目標トルクTrq*にフィードバック制御するための操作量)として、振幅操作量としての振幅補正量ΔVを算出する。詳しくは、電流偏差ΔIλを入力とする比例積分制御によって振幅補正量ΔVを算出する。より具体的には、下式(eq11)に示すように、電流偏差ΔIλを入力とした比例制御器の出力値と、電流偏差ΔIλを入力とした積分制御器の出力値との加算値として振幅補正量ΔVを算出する。
上式(eq11)において、「Kpλ」は振幅制御における比例ゲインを示し、「Kiλ」は振幅制御における積分ゲインを示す。
以上説明したように、本実施形態によれば、振幅補正量算出部32g及び位相設定部30eにおける比例ゲインKpλ及び積分ゲインKiλを増大できる。このため、振幅制御によるフィードバック制御の応答性を位相制御によるフィードバック制御の応答性と同等レベルまで向上させることができる。これにより、外乱が発生したり、過渡状態となったりする場合であっても、高いトルク制御性と高い電流制御性との双方を維持することができる。また、本実施形態によれば、指令電圧設定部30fにおけるマップの精度が低い場合等、振幅制御におけるフィードフォワード制御が不適切な場合であっても、高いトルク制御性と高い電流制御性との双方を維持することができる。
続いて、図8を用いて、振幅制御及び位相制御におけるフィードバックゲインの可変手法について説明する。
本実施形態では、図8に示すように、補正量算出部32は、振幅ゲイン設定部34a(「振幅ゲイン設定手段」に相当)と、位相ゲイン設定部34b(「位相ゲイン設定手段」に相当)と、応答性設定部34c(「振幅応答低下手段」に相当)とをさらに備えている。振幅ゲイン設定部34aにより、振幅補正量算出部32gで用いる比例ゲインKpλ及び積分ゲインKiλを可変設定する。また、位相ゲイン設定部34bにより、位相設定部30eで用いる比例ゲインKpφ及び積分ゲインKiφを可変設定する。こうした設定は、モータジェネレータ10の駆動状態が変化する場合であっても、振幅制御及び位相制御のそれぞれにおけるフィードバック制御の応答性を高く維持するためになされる。以下、ゲインの設定手法について説明する。
まず、振幅補正量算出部32gで用いるゲインについて説明する。
電圧振幅Vnが微小量ΔVnだけ変化した場合における電圧方程式は、上式(eq2),(eq3)を用いると、下式(eq12)で表される。
上式(eq12)から上式(eq2)を減算すると、下式(eq13)が導かれる。
上式(eq13)において、「Idv−Id」がd軸電流変化量ΔIdvであり、「Iqv−Iq」がq軸電流変化量ΔIqvである。上式(eq13)を各電流変化量ΔIdv,ΔIqvについて解くと、下式(eq14)が導かれる。
dq座標系をその原点0を中心に時計周りにλだけ回転させた座標系をλo座標系とする。この座標系における各電流変化量ΔIλ,ΔIoは、上式(eq14)に元にすると、下式(eq15)で表すことができる。
上式(eq15)の「λ」は上式(eq8)で表される。このため、比例ゲインKpλは、図9のように、電圧位相φと回転速度(電気角速度ω)と応じて変化する。ゲイン特性が変化するにもかかわらず、比例ゲインや積分ゲインを一定にしてフィードバック制御を行うと、モータジェネレータ10の駆動状態によって応答性が異なる。このため、応答性が相対的に低下する駆動状態が発生し得る。したがって、モータジェネレータ10の全ての駆動領域において振幅制御の応答性を向上させるためには、駆動状態に合わせて、フィードバック制御で用いるゲインを可変設定することが要求される。本実施形態では、駆動状態にかかわらず振幅制御におけるフィードバック制御の応答性を一定に維持すべく、振幅ゲイン設定部34aは、電圧位相φ及び電気角速度ωに基づき、比例ゲインKpλ及び積分ゲインKiλを可変設定する。具体的には、電気角速度ωが高かったり、電圧位相φが進角側であったりするほど、各ゲインKpλ,Kiλを大きく設定する。
なお、振幅制御において上記応答性を一定に維持するとは、例えば、先の図2の構成から指令電圧設定部30f及び速度乗算部30hを除去した状態で、λ軸指令電流Iλ*をステップ状に変化させた場合におけるλ軸電流Iλrについての時定数を目標時間に維持することをいう。また、上記各ゲインKpλ,Kiλは、例えば、以下のように算出すればよい。詳しくは、比例ゲインを例にして説明すると、図9に示したゲインの逆数を修正ゲインとしてマップ化しておく。そして、別途設定された基本ゲインに修正ゲインを乗算することで、比例ゲインを設定する。
続いて、位相設定部30eで用いるゲインについて説明する。
定常状態を想定し、また電機子巻線抵抗Rの影響を無視した上式(eq2)をd,q軸電流Id,Iqについて解くと、下式(eq16)が導かれる。
一方、モータジェネレータ10のトルクτは、極対数を「Pn」とすると、下式(eq17)で表される。
上式(eq16),(eq17),(eq3)から、電圧位相φとトルクτとの関係式が下式(eq18)として導かれる。
上式(eq18)によれば、図10に示すように、トルクτは、電圧振幅Vn、電圧位相φ及び電気角速度ωに応じて変化する。したがって、モータジェネレータ10の全ての駆動領域において位相制御の応答性を向上させるためには、駆動状態に合わせて、フィードバック制御で用いるゲインを可変設定することが要求される。本実施形態では、駆動状態にかかわらず位相制御の応答性を一定に維持すべく、位相ゲイン設定部34bは、電圧位相φ、電気角速度ω及び電圧振幅「Vn+ΔV」に基づき、比例ゲインKpφ及び積分ゲインKiφを可変設定する。具体的には、電気角速度ωが高かったり、電圧位相φが遅角側であったり、電圧振幅「Vn+ΔV」が小さかったりするほど、各ゲインKpφ,Kiφを大きく設定する。
なお、位相制御において上記応答性を一定に維持するとは、例えば、目標トルクTrq*をステップ状に変化させた場合における推定トルクTeについての時定数を目標時間に維持することをいう。また、上記各ゲインKpφ,Kiφは、例えば、以下のように算出すればよい。詳しくは、図10に示したモータジェネレータ10の各駆動条件における電圧位相φに対するトルクτの傾きを修正ゲインとしてマップ化しておく。そして、別途設定された基本ゲインに修正ゲインを乗算することで各ゲインKpφ,Kiφを設定する。
フィードバック制御で用いるゲインを可変設定する上記構成によれば、モータジェネレータ10の駆動状態にかかわらず、振幅制御及び位相制御のそれぞれの応答性を高く維持することができる。ただし、振幅制御の応答性を高くできるがゆえに、変調率Mrが第2の規定値M2に到達するいわゆる電圧飽和が生じる時のトルク変動(トルクショック)が増大する。こうした問題に対処すべく、本実施形態では、応答性設定部34cが備えられている。以下、図8及び図11を用いて、応答性設定部34cの処理について説明する。
応答性設定部34cは、電圧振幅「Vn+ΔV」及び入力電圧VINVに基づき、変調率Mrを算出する。そして、算出した変調率Mrに基づき、乗算係数Ktを可変設定する。ここで、乗算係数Ktは、振幅制御及び位相制御のうち、振幅制御のみのフィードバックゲインに乗算する係数である。本実施形態では、下式(eq19)を用いて乗算係数Ktを算出する。
上式(eq19)において、「Mb」は、基準変調率を示す。本実施形態において、基準変調率Mbは、第1の規定値M1よりも高くてかつ第2の規定値M2未満の値(1.2)に設定されている。また、本実施形態において、第1所定値Rs1は1に設定され、第2所定値Rs2は1未満の値(0.3)に設定されている。なお、本実施形態において、「0≦Mr<Mb」が第1範囲に相当し、「Mr≧Mb」が第2範囲に相当する。
上式(eq19)によれば、「Mb≦Mr≦M2」において乗算係数Ktが単調減少する。また、「Mr>M2」において乗算係数Ktが0よりも高い値に設定されている。これは、変調率Mrが過度に大きな値に設定された場合における制御安定性を確保するための設定である。
応答性設定部34cによって設定された乗算係数Ktは、振幅ゲイン設定部34aから出力される各ゲインKpλ,Kiλに乗算される。そして、乗算係数Ktが乗算された各ゲインKpλ,Kiλを用いて、振幅補正量算出部32gによって振幅補正量ΔVが算出される。これにより、振幅制御の応答性を「0≦Mr<Mb」よりも「Mr≧Mb」において低下させることができる。ちなみに、位相制御におけるフィードバックゲインKpφ,Kiφには乗算係数Ktが乗算されない。このため、上記構成によれば、「Mb≦Mr≦M2」において、変調率Mrが高いほど、位相制御の応答性に対して、振幅制御の応答性を低下させることとなる。
続いて、図12及び図13を用いて、応答性設定部34cを具備した効果について説明する。まず、図12に、本実施形態と関連技術とのそれぞれについて、トルクステップ応答におけるトルク等の推移を示す。ここで関連技術とは、本実施形態から応答性設定部34cを除去した構成のことである。なお、図12において、本実施形態及び関連技術のそれぞれにおいて、縦軸スケールは互いに同一であり、横軸スケールも互いに同一である。
本実施形態では、目標トルクTrq*の急変後、変調率Mrが基準変調率Mb(1.2)を超えることによって振幅制御の応答性が低下させられる。このため、変調率Mrが第2の規定値M2に漸近するに伴って、変調率Mr(電圧振幅「Vn+ΔV」)の増大速度が低下する。これにより、電圧振幅「Vn+ΔV」の増大速度が低い状態で電圧飽和させることができ、トルクショックを小さくすることができる。これに対し、関連技術では、振幅ゲイン設定部34aを備えることから、駆動状態にかかわらず振幅制御の応答性が一定とされる。このため、変調率Mrが第2の規定値M2に漸近する場合であっても、電圧振幅「Vn+ΔV」の増大速度が低下しない。これにより、電圧飽和が生じる時のトルクショックが増大する。
図13に、本実施形態と関連技術とのそれぞれについて、トルクステップ応答におけるd,q軸電流等の推移を示す。なお、図13において、本実施形態及び関連技術のそれぞれにおいて、縦軸スケールは互いに同一であり、横軸スケールも互いに同一である。
本実施形態では、変調率Mrが基準変調率Mbを超えることによって振幅制御の応答性を低下させるため、電圧飽和が生じた時のd,q軸電流の変動(電流ショック)を好適に抑制できる。これに対し、関連技術では、大きな電流ショックが発生することとなる。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)「Mr>Mb」における乗算係数Kt(<1)を「0≦Mr≦Mb」における乗算係数Ktよりも低下させた。このため、変調率Mrが第2の規定値M2に対して余裕がある状況においてトルク制御性及び電流制御性を高く維持できるとともに、電圧飽和が生じる時におけるトルク制御性及び電流制御性の低下を好適に抑制することができる。特に本実施形態では、「Mr>Mb」において変調率Mrが高くなるほど乗算係数Ktを低下させたことが、トルク制御性等を高く維持すること、及び電圧飽和時においてトルク制御性等の低下を抑制することの両立に大きく寄与している。
(2)λ軸電流Iλrを用いた振幅制御を行った。この場合、振幅制御の応答性を高くできることから、電圧飽和が生じる時におけるトルクショックが大きくなりやすい。このため、トルクショックが大きくなりやすい本実施形態では、応答性設定部34cを備えるメリットが大きい。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、振幅制御の応答性の低下手法を変更する。
図14に、本実施形態にかかるトルク制御のブロック図を示す。なお、図14において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
本実施形態において、制御装置30は、振幅ゲイン設定部34a及び位相ゲイン設定部34bに加えて、ローパスフィルタ36aと、応答性設定部36bとを備えている。ローパスフィルタ36aには、補正部30iから出力された電圧振幅「Vn+ΔV」が入力される。ローパスフィルタ36aにおいてローパスフィルタ処理が施された電圧振幅「Vn+ΔV」は、操作信号生成部30jに入力される。
本実施形態において、応答性設定部36bは、上記第1実施形態の応答性設定部34cと同じ手法で乗算係数Ktを可変設定する。詳しくは、応答性設定部36bは、ローパスフィルタ処理が施された電圧振幅「Vn+ΔV」と、入力電圧VINVとに基づき、変調率Mrを算出する。そして、算出した変調率Mrに基づき、先の図11に示したように乗算係数Ktを設定する。
応答性設定部36bによって設定された乗算係数Ktは、ローパスフィルタ36aのカットオフ周波数fcに乗算される。このため、「0≦Mr<Mb」においてカットオフ周波数は「Rs1×fc=fc」に設定される。また、「Mb≦Mr≦M2」において、変調率Mrが高いほどカットオフ周波数が低く設定される。すなわち、「Mb≦Mr≦M2」において、変調率Mrが高いほどカットオフ周波数が単調減少する。さらに、「Mr>M2」においてカットオフ周波数が「Rs2×fc=0.3fc」に設定される。カットオフ周波数は、ローパスフィルタ36aの時定数の逆数と正の相関を有することから、カットオフ周波数の低下によって時定数が大きくなる。これにより、振幅制御の応答性を「0≦Mr≦Mb」よりも「Mr>Mb」において低下させることができる。
続いて、図15及び図16を用いて、ローパスフィルタ36a及び応答性設定部36bを具備した効果について説明する。まず、図15に、本実施形態と関連技術とのそれぞれについて、トルクステップ応答におけるトルク等の推移を示す。なお、図15は、先の図12に対応している。図示されるように、本実施形態によれば、関連技術と比較してトルクショックを小さくできる。
図16に、本実施形態と関連技術とのそれぞれについて、トルクステップ応答におけるd,q軸電流等の推移を示す。なお、図16は、先の図13に対応している。図示されるように本実施形態によれば、関連技術と比較して電流ショックを小さくできる。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図17に示すように、応答性設定部34cにおける乗算係数Ktの設定手法を変更する。詳しくは、変調率Mrが基準変調率Mbを超える範囲において、乗算係数Ktを一律に第2所定値Rs2に設定する。
図18に、本実施形態と関連技術とのそれぞれについて、トルクステップ応答におけるトルク等の推移を示す。なお、図18は、先の図12に対応している。図示されるように本実施形態によれば、関連技術と比較してトルクショックを小さくできる。なお、目標トルクTrq*の急変後の時刻t1において変調率Mrの増大速度が大きく低下しているのは、乗算係数Ktが1から0.3に大きく変更させられるためである。
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることはできる。
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、補正量算出部の設計手法を変更する。詳しくは、極座標系ではなく、2軸直交座標系においてλ軸を導出する。
上式(eq1)において過渡現象を無視するとの条件を課すと、下式(eq20)が導かれる。
上式(eq20)において、d,q軸電圧Vd,VqがΔVd,ΔVqだけ微小変化した場合におけるd,q軸電流Id,Iqの微小変化量ΔId,ΔIqの関係から、下式(eq21)が導かれる。
ここで、図19に示すように、電圧ベクトルVnvtと平行な方向に原点0から延びるl軸と、電圧ベクトルVnvtと直交する方向に原点0から延びるp軸とからなる座標系をpl座標系とする。pl座標系も、λ軸と同様に、モータジェネレータ10の駆動状態の変化に伴って都度変化する。ここで、dq座標系からpl座標系に変換した電圧ベクトルVnvtと、pl座標系とは異なる上記λo座標系にdq座標系から変換した電流ベクトルInvtとの関係を導く。pl座標系は、原点0を中心にdq座標系を反時計回りに角度η(=φ―π/2)だけ回転させた座標系である。また、λo座標系は、原点0を中心にdq座標系を反時計回りに角度λだけ回転させた座標系である。このため、ΔVd,ΔVqに対応するp,l軸におけるp,l軸電圧の微小変化量をΔVp,ΔVlとすると、上式(eq21)から下式(eq22)が導かれる。
上式(eq22)を電流について解くと、下式(eq23)が導かれる。
ここで、ΔVlを増減させることは、電圧ベクトルVnvtの振幅を増減させることに等しい。また、ΔVpを増減させることは、電圧ベクトルVnvtの位相を増減させることに等しい。このため、先の第1実施形態と同様に、トルクを制御するためにVpを制御し、電流を制御するためにVlを制御するにあたり、Vpの変化の影響を受けずにl軸電圧Vlだけ制御するには、上式(eq23)の右辺において、「Rc−ω・Loλ=0」となるような角度λを設定した上で、λ軸電流Iλを利用してl軸電圧Vlを制御すればよい。または、Vpの変化の影響を受けずにl軸電圧Vlだけ制御するには、上式(eq23)の右辺において、「Rs−ω・Lλ=0」となるような角度λを設定した上で、o軸電流Ioを利用してl軸電圧Vlを制御すればよい。
ここで、電気角速度ωが十分高いとすると、「Rc<<ω・Loλ」,「Rs<<ω・Lλ」が成立する。λ軸電流Iλを利用してl軸電圧Vlを制御するには、「−ω・Loλ=0」、すなわち「Loλ=0」であればよい。このため、下式(eq24)が導かれる。
一方、o軸電流Ioを利用してl軸電圧Vlを制御するには、「−ω・Lλ=0」、すなわち「Lλ=0」であればよい。このため、下式(eq25)が導かれる。
上式(eq25)は、上式(eq24)を「−π/2」だけ回転させたものであり、上式(eq24)におけるλ軸は、上式(eq25)におけるo軸と一致する。このため、l軸電圧Vlを制御するために、λ軸電流Iλを用いる場合と、o軸電流Ioを用いる場合とで、効果は同様である。こうした導かれた角度λは、振幅制御と位相制御との干渉を抑制できる上式(eq8)で表される角度と一致する。
図20に、本実施形態にかかるトルク制御のブロック図を示す。なお、図20において、先の図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
位相設定部30kは、トルク偏差ΔTに基づき、推定トルクTeを目標トルクTrq*にフィードバック制御するための操作量として、p軸電圧Vpを算出する。詳しくは、トルク偏差ΔTを入力とする比例積分制御によってp軸電圧Vpを算出する。p軸電圧Vpは、電圧ベクトルVnvtのp軸成分である位相操作量に相当し、電圧位相φに準じた電圧成分である。
指令電圧設定部30lは、目標トルクTrq*を入力として、規格化電圧振幅「Vl/ω」を算出する。本実施形態において、規格化電圧振幅「Vl/ω」とは、l軸電圧Vlを電気角速度ωで除算した値のことである。なお、規格化電圧振幅は、目標トルクTrq*及び規格化電圧振幅が関係付けられたマップを用いて算出すればよい。
速度乗算部30hは、規格化電圧振幅「Vl/ω」に電気角速度ωを乗算することで、l軸電圧Vlを算出する。l軸電圧Vlは、モータジェネレータ10のトルクを目標トルクTrq*にフィードフォワード制御するための操作量となる。
補正量算出部32を構成する振幅補正量算出部32iは、電流偏差ΔIλに基づき、λ軸電流Iλrをλ軸指令電流Iλ*にフィードバック制御するための操作量として、l軸電圧Vlの補正量ΔVlを算出する。詳しくは、電流偏差ΔIλを入力とする比例積分制御によって補正量ΔVlを算出する。補正量ΔVlは、電圧ベクトルVnvtのl軸成分である振幅操作量に相当し、電圧振幅Vnに準じた電圧成分である。ここで、振幅補正量算出部32iにおいて、フィードバック制御で用いられる比例,積分ゲインは、上記第1実施形態と同様に、振幅,位相ゲイン設定部34a,34bによって設定される。この際、応答性設定部34cにより、上記第1実施形態と同様に、比例,積分ゲインに乗算係数Ktが乗算される。
補正部30iは、速度乗算部30hから出力されたl軸電圧Vlに、補正量算出部32によって算出された補正量ΔVlを加算することで、l軸電圧Vlを補正する。
操作信号生成部30mは、補正部30iから出力されたl軸電圧「Vl+ΔVl」と、位相設定部30kから出力されたp軸電圧Vpと、入力電圧VINVとに基づき、操作信号gUp〜gWnを生成して駆動回路DrUp〜DrWnに出力する。本実施形態では、操作信号を以下のように生成する。
操作信号生成部30mは、補正部30iから出力されたl軸電圧「Vl+ΔVl」を電圧ベクトルの振幅Vnとして設定する。また、操作信号生成部30mは、「φ=η+π/2」の関係に基づき、電圧位相φを設定する。ここで、本実施形態では、d軸とp軸とのなす角度ηの算出値のノイズ成分を除去すべく、上記角度ηにローパスフィルタ処理を施している。このため、電圧位相φを下式(eq26)によって設定する。
上式(eq26)において、右辺第1項は、前回の処理周期から今回の処理周期までの期間におけるd軸とp軸とのなす角度ηの変化分に対応する。上式(eq26)の右辺第2項の角度ηは、次回の処理周期における電圧位相φの算出のために、処理周期毎に、現在の処理周期で算出された電圧位相φから「π/2」減算した値に更新される。すなわち、上式(eq26)の右辺第2項の角度ηとして、前回更新された角度ηが用いられる。操作信号生成部30mは、設定された電圧振幅Vn及び電圧位相φに基づき、3相指令電圧を算出し、算出した3相指令電圧とキャリア信号との大小比較に基づく正弦波PWM制御によって操作信号g¥#を生成する。
ちなみに、本実施形態において、補正量算出部32を構成するλ軸設定部32hは、位相設定部30kから出力されたp軸電圧Vpと、補正部30iから出力されたl軸電圧「Vl+ΔVl」とに基づき、d軸とλ軸とのなす角度λを算出する。詳しくは、まず、p,l軸電圧を入力として、上式(eq26)に基づき電圧位相φを算出する。そして、算出された電圧位相φを入力として、上式(eq24)に基づき上記角度λを算出する。
以上説明したトルク制御は、操作量としての電圧がpl座標系で操作されるものであり、また、制御量として、推定トルクTeとλ軸電流Iλrとを有するものである。以上説明した本実施形態によっても、上記第1実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記第1実施形態において、電気角速度ω又は電圧位相φのいずれか一方に基づき、振幅補正量算出部32gで用いる各フィードバックゲインKpλ,Kiλを可変設定してもよい。また、上記第2実施形態において、モータジェネレータ10に流れる電流やトルクに基づき、各フィードバックゲインKpλ,Kiλを可変設定してもよい。以下、これについて説明する。
定常状態を想定し、電機子巻線抵抗Rの影響を無視すると、d,q軸電圧Vd,Vqは下式(eq27)で表される。
この場合、電圧位相φは下式(eq28)で表される。
最小電流最大トルク制御を行う場合、目標トルクTrq*が定まると、上式(eq17)から各電流Id,Iqが一意に定まる。このため、目標トルクTrq*が定まると、上式(eq28)から電圧位相φも定まる。したがって、電圧位相φに代えて目標トルクTrq*を用いるとともに、電気角速度ωを用いることで、各フィードバックゲインKpλ,Kiλを設定することができる。ここでは、目標トルクTrq*が小さいほど、各フィードバックゲインKpλ,Kiλを大きく設定すればよい。
なお、例えば、モータジェネレータ10として非突極機であるSPMSMを用いる場合、「Ld=Lq」となる。このため、上式(eq17),(eq28)によれば、q軸電流Iqと電気角速度ωとに基づき、各フィードバックゲインを設定することができる。
・上記第1実施形態において、電気角速度ω、電圧位相φ及び電圧振幅Vnのいずれか1つ又は2つに基づき、位相設定部30eで用いる各フィードバックゲインKpφ,Kiφを可変設定してもよい。また、上記第2実施形態において、モータジェネレータ10に流れる電流やトルクに基づき、各フィードバックゲインKpφ,Kiφを可変設定してもよい。具体的には、電流が小さかったり、トルクが小さかったりするほど、各フィードバックゲインKpφ,Kiφを大きく設定すればよい。なお、電流やトルクに基づく設定手法については、特開2012−85485号公報を参照されたい。
・λ軸の導出手法としては、上記第1実施形態に例示したものに限らない。例えば、以下に説明するものであってもよい。
上式(eq6)を元に、dq座標系をλだけ回転させたλo座標系における各電流変化量ΔIλ,ΔIoは、下式(eq29)で表される。
上式(eq29)において、λ軸電流変化量ΔIλと微小変化量Δφとを関係付ける項が0であれば、λ軸電流Iλは電圧位相変化の影響を受けない。このことから、下式(eq30)が導かれる。
上式(eq30)をλについて解くと、下式(eq31)が導かれる。
上式(eq31)は、現在の電圧位相φが微小変化した場合における電流ベクトルの変化分が0となる方向の座標軸をλ軸として設定できることを表している。なお、上式(eq31)からλ軸を設定する場合、例えば、振幅補正量算出部32gの各ゲインKpλ,Kiλの符号を、上記第1実施形態における各ゲインKpλ,Kiλの符号から反転させたものとすればよい。
・上記各実施形態において、位相設定部及び振幅補正量算出部のうち少なくとも一方におけるフィードバック制御を、例えば積分制御のみによって行ってもよい。また例えば、フィードバック制御としては、比例制御や積分制御に限らず、微分制御であってもよい。
・上記各実施形態において、指令電圧設定部30f及び速度乗算部30hを制御装置30から除去してもよい。この場合であっても、λ軸電流Iλrを用いることにより、振幅補正量算出部における各ゲインKpλ,Kiλを大きく設定できる。このため、高いトルク制御性を維持することはできる。
・上記各実施形態において、電圧位相φが微小変化した場合の電流ベクトルInvtの変化方向と直交する方向からややずれた方向に延びる座標軸を非干渉化座標軸(λ軸)として設定してもよい。この場合であっても、上記各実施形態の効果に準じた効果を得ることはできる。
・非干渉化座標軸(λ軸)の設定手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、「R<<ω・Ld」,「R<<ω・Lq」の関係が成立しないモータジェネレータ10の低回転条件では、λ軸の計算に電機子巻線抵抗Rを考慮してもよい。この場合、上式(eq6)は下式(eq32)のように表され、上式(eq7)は下式(eq33)のように表される。このため、下式(eq32),(eq33)から算出された電流ベクトルInvtの変化方向αを上式(eq8)に代入することで、角度λを算出することができる。
また、例えば、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差が小さい場合には、「Ld/Lq」が1に近い値となる。このため、電圧位相φのみに基づきλ軸を設定することができる。また、モータジェネレータ10がSPMSMの場合、「Ld/Lq」が1となることから、電圧位相φのみに基づきλ軸を設定することができる。
・操作信号生成部としては、三角波比較PWM制御によって操作信号を生成するものに限らず、例えば以下に説明するものであってもよい。電圧振幅Vnを実現するための線間電圧パターンが予め格納された記憶手段(例えば、ROM等のメモリ)を例えば制御装置30に備える。こうした構成において、記憶手段に記憶された線間電圧パターンを各スイッチング素子のゲートに対するパルスパターンに変換し、変換されたパルスパターンの出力タイミングを電圧位相φに基づき設定することで、操作信号を生成する。なお、線間電圧パターンからゲートに対するパルスパターンへの変換手法については、例えば「高調波変調型省パルス駆動による高効率モータ制御:古川公久ら、外7名、平成22年電気学会産業応用部門大会、1−134、pp.I−627〜I−632」を参照されたい。
また、操作信号生成部としては、電圧振幅と位相とに基づき、位相が電気角で互いに120度ずつずれた正弦波の3相指令電圧を算出するものに限らない。例えば、正弦波に第3次の整数倍の高周波を重畳する方法であってもよい。なお、このことについては、例えば「ACサーボシステムの理論と設計の実際:杉本英彦、総合電子出版社」に記載されている。
・位相制御に用いられるトルク値は、推定値に限らない。例えば、制御システムにモータジェネレータ10のトルクを検出するトルク検出手段(例えばトルク計測器)を備え、検出されたトルクを位相制御に用いてもよい。
・位相制御に用いられるモータ出力としては、トルクに関するものに限らない。例えば、λ軸の直交方向であるo軸の電流であってもよい。この場合、o軸電流がその指令電流に追従するように位相制御を行えばよい。また例えば、トルク制御の上位制御系として、モータジェネレータ10の回転速度制御が存在する場合、速度制御の出力である目標トルクを入力として推定トルクを制御する構成を省略する。こうした構成において、制御量としての実際の回転速度と指令回転速度との誤差に基づき位相制御を直接行ってもよい。この際、振幅制御をλ軸電流Iλrによって行うとともに、推定トルクを基準としたマップを用いてλ軸指令電流Iλ*を設定する。こうした構成によっても、上記第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
・振幅制御に用いられるλ軸電流を、例えば上式(eq10)のように、d,q軸電流を介して算出することなく、相電流から直接算出してもよい。具体的には例えば、相電流、電気角θ及び角度λを用いてλ軸電流を直接算出してもよい。また、λ軸指令電流Iλ*は、d,q軸指令電流Id*,Iq*と関係付けられたマップを用いて算出してもよいし、目標トルクTrq*と関係付けられたマップを用いて算出してもよい。
・上記第1,第2実施形態において、「Mb≦Mr<M2」で変調率Mrが高いほど、連続的に乗算係数Ktを低く設定するものに限らず、段階的に低く設定するものであってもよい。
・上記第4実施形態に、上記第2実施形態のローパスフィルタを用いた構成を適用したり、上記第3実施形態の乗算係数Ktの設定手法を適用したりしてもよい。
・上記第1〜第3実施形態で示したように、第1,第2所定値Rs1,Rs2を用いて応答性を2段階で変化させる構成に限らず、3段階以上で変化させる構成であってもよい。具体的には例えば、第1〜第3所定値Rs1〜Rs3(Rs1>Rs2>Rs3)を用いることで、応答性を3段階で変化させることができる。
・上記第1実施形態の図8及び図11で説明した振幅応答低下手段(ゲイン低下手段)と、上記第2実施形態の図14で説明した振幅応答低下手段(フィルタカットオフ周波数低下手段)とを併用してもよい。具体的には例えば、上記第1実施形態の図2の構成において、速度乗算部30hから出力された電圧振幅Vnにフィルタ処理(ローパスフィルタ処理)を施す処理部をさらに備え、処理部におけるカットオフ周波数を上記第2実施形態で説明したように、変調率Mrに応じて可変設定すればよい。なお、上記処理部の出力値は、補正部30iに入力される。
・上記各実施形態では、応答性を変化させる領域を第1範囲と第2範囲とで規定したがこれに限らない。例えば、上記第1実施形態における乗算係数Ktを、図21に示すように、全変調率Mrにおいて連続関数にて変化させてもよい。この場合、応答性を変化させる領域を第1範囲と第2範囲とで規定する必要がない。ここで、図21では、下式(eq34)にて示す関数にて応答性を表現している。なお、下式(eq34)を用いる場合、0と第2の規定値M2との間の変調率Mrにおける乗算係数Ktが若干増加傾向にあるものの、その増加量が微小であるため問題はない。
図22に、上式(eq34)を用いた場合において、本実施形態と関連技術とのそれぞれのトルク等の推移を示す。なお、図22は、先の図12に対応している。図示されるように、上式(eq34)を用いた構成によっても、上記第1実施形態で得られる効果と同様の効果を得ることができる。
・「Mr≧Mb」において振幅制御の応答性を低下させる構成は、λ軸電流を用いた振幅制御が前提となるものではない。例えば、目標トルクTrq*が低い場合、先の図3に示したように電圧位相φが「π/2」付近に設定される。このため、λ軸設定部から出力される角度λが0に近くなる。こうした状況下においては、振幅制御にλ軸電流が実質的に用いられなくなることから、λ軸電流を用いた振幅制御を前提とする必要がなくなる。すなわち、非干渉電流ではなく、角度λ=0の条件であるd軸電流を用いた振幅制御を行うこととなる。
・「回転機」として、IPMSMに限らず、SPMSMや巻線界磁型同期機であってもよい。ここで、例えば上記第1実施形態においてSPMSMを採用する場合、回転機のトルクがq軸電流によって定まることから、トルクに関する制御量を、トルクに代えてq軸電流としてもよい。また、「回転機」としては、車載主機として用いられるものに限らず、電動パワーステアリング装置や空調用電動コンプレッサを構成する電動機等、車載補機として用いられるものであってもよい。加えて、「回転機」としては、車載式のものに限らない。