JP6295665B2 - 浸炭軸受用鋼 - Google Patents
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〔0.7≦Ca/O≦2.0〕
を満たせば、粗大な酸化物の形成を抑制することができる。
C:0.1%以上0.4%未満、Si:0.02〜1.3%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.010%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.01〜0.10%、Ca:0.0003〜0.0030%、O:0.0030%以下およびN:0.002〜0.030%と、
残部:Feおよび不純物とからなり、
下記の[1]式および[2]式を満足する、浸炭軸受用鋼。
0.7≦Ca/O≦2.0・・・[1]
Ca/O≧1250S−5.8・・・[2]
ただし、式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
Cは、本発明の鋼材の強度を左右する重要な元素である。浸炭焼入れしたときの部品の芯部強度(部品の生地の強度)を確保するためには、0.1%以上のCを含有させる必要がある。一方、0.4%以上のCを含有させると靱性および被削性が低下する。したがって、Cの含有量を0.1%以上0.4%未満とした。Cの含有量は0.12%以上とすることが好ましく、0.15%以上とすれば一層好ましい。また、Cの含有量は0.35%以下とすることが好ましく、0.30%以下とすれば一層好ましい。
Siは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、また、転動疲労強度の向上にも効果を有する元素である。しかしながら、Siの含有量が0.02%未満では前記の効果が不十分である。一方、Siの含有量が1.3%を超えると、転動疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、靱性および被削性の低下が顕著になる。したがって、Siの含有量を0.02〜1.3%とした。Siの含有量は0.10%以上とすることが好ましく、0.15%以上とすれば一層好ましい。また、Siの含有量は0.70%以下とすることが好ましく、0.35%以下とすれば一層好ましい。
Mnは、鋼に固溶して鋼の転動疲労強度を高め、鋼の焼入れ性を高める元素である。Mnはさらに、鋼中のSと結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。これらの効果を得るためには、0.2%以上のMnを含有させる必要がある。しかし、Mnの含有量が過剰になると焼入れ後の表面硬さが高くなりすぎて、靱性および被削性が低下する。このため、上限を設け、Mnの含有量を0.2〜2.0%とした。焼入れ性および強度を向上させたい場合、Mnの含有量は0.6%以上とすることが好ましい。なお、Mnの含有量は0.9%以下とすることが好ましい。
Pは、不純物として鋼中に含まれ、結晶粒界に偏析して転動疲労寿命を低下させる。特に、その含有量が0.05%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.05%以下とした。Pの含有量は、極力低くすることがよく、好ましくは0.02%以下である。
Sは、不純物として鋼中に含まれる。Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.010%以上になると、粗大な硫化物が残存するため転動疲労寿命を低下させる。したがって、Sの含有量を0.010%未満とした。なお、転動疲労寿命の向上という観点からは、Sの含有量は、極力低くすることがよく、好ましくは0.006%以下、より好ましくは0.002%以下である。なお、Sの含有量は後述の[2]式も満たす必要がある。
Crは、鋼の焼入れ性、焼入れ焼戻し後の強度および靱性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果を得るためには、0.50%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crを2.00%を超えて含有させると、かえって靱性が低下し、さらには被削性も低下する。したがって、Crの含有量を0.50〜2.00%とした。Crの含有量は0.60%以上とすることが好ましく、また1.50%以下とすることが好ましい。
Alは、精錬工程で脱酸を行うために使用する元素であり、また、AlNを形成して結晶粒を微細化する効果を有する元素である。しかし、Alの含有量が0.01%未満では上記効果が不十分である。一方、0.10%を超えてAlを含有させた場合、粗大な酸化物として残存しやすくなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Alの含有量を0.01〜0.10%とした。Alの含有量は、0.02%以上とすることが好ましく、また0.04%以下とすることが好ましい。
Caは、酸化物として、適量の(Al、Ca)Oを形成するとともに、硫化物中に固溶し(Mn、Ca)SとCaSを形成する。(Al、Ca)Oを形成することによって、界面エネルギーが低下し、酸化物の凝集力が低下することで、酸化物の粗大化が抑制される。この効果によって、転動疲労寿命の低下を抑制できる。また硫化物に対しては(Mn、Ca)SとCaSを形成することで延伸・粗大化を抑制する効果がある。さらに晶出形態が変化するため、硫化物系介在物が均一分散する。これらの効果によって、転動疲労寿命の低下を抑制できる。上述したCaの各効果は、Caの含有量が0.0003%以上で発揮される。しかしながら、Caの含有量が0.0030%を超えると、前記の効果が飽和するだけではなく、特に、酸化物の粗大化を招き、結果として転動疲労寿命の低下を招く場合がある。したがって、Caの含有量を0.0003〜0.0030%とした。Caの含有量は0.0005%以上とすることが好ましく、また0.0025%以下とすることが好ましい。なお、Caの含有量は後述の[1]式および[2]式も満たす必要がある。
Oは、不純物として鋼中に含まれ、酸化物を生成する元素であるため、極力その含有量を低下させる必要がある。Oの含有量が多くなって、特に0.0030%を上回ると、粗大な酸化物として残存しやすくなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0030%以下とした。好ましいOの含有量は0.0025%以下であり、さらに好ましくは0.0020%以下である。なお、Oの含有量はできる限り少なくすることが好ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、その下限は0.0005%程度となる。なお、Oの含有量は後述の[1]式および[2]式も満たす必要がある。
Nは、Alと結合してAlNを生成し、結晶粒を微細化する働きをする。しかし、Nの含有量が0.002%未満では上記効果が不十分である。一方、0.030%を超えてNを含有させた場合、かえって鋼の強度を低下させる。したがって、Nの含有量を0.002〜0.030%とした。なお、焼入れ性向上効果を得るため、後述するように、BおよびTiを含有する場合には、BとNの結合を極力抑制する必要がある。そのため、BおよびTiを含有する場合には、N含有量の上限は0.030%よりもさらに低くすることが望ましい。この場合、より望ましい上限は0.004%である。
本発明の浸炭軸受用鋼は、Ca/Oが下記の[1]式を満足する化学組成でなければならない。
0.7≦Ca/O≦2.0・・・[1]
ただし、式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
Ca/O≧1250S−5.8・・・[2]
ただし、式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
Cuは、転動疲労強度を高める効果を有する。Cuには、焼入れ性を向上させる効果もある。このため、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が1.0%を超えても上記効果は飽和するので、鋼の製造コストが嵩むばかりである。したがって、含有させる場合のCuの量に上限を設け、1.0%以下とした。含有させる場合のCuの量は、0.5%以下であることが好ましい。
Niは、転動疲労強度を高める効果を有する。Niには、焼入れ性および靱性を向上させる効果もある。このため、Niを含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が3.5%を超えても上記効果は飽和するので、鋼の製造コストが嵩むばかりである。したがって、含有させる場合のNiの量に上限を設け、3.5%以下とした。含有させる場合のNiの量は、2.0%以下であることが好ましい。
Moは、鋼の焼入れ性を高めて、転動疲労強度を高める効果を有する。また、Moには、浸炭後の焼入れ処理において、不完全焼入れ層を抑制する効果もある。このため、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が過剰になると、鋼の被削性が低下し、さらに、鋼の製造コストも高くなる。したがって、含有させる場合のMoの量に上限を設け、1.5%以下とした。含有させる場合のMoの量は、0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であればさらに好ましい。
Vは、Nと結合して窒化物を形成し、結晶粒の粗大化を抑制する作用がある。さらに、Vには、Cと結合することで母材の強度を上昇させる作用もある。したがって、Vを含有させてもよい。ただし、0.10%を超えてVを含有させても結晶粒粗大化を抑制する効果が飽和し、さらに母材の強度が高くなりすぎて被削性が低下してしまう場合がある。そのため、Vを含有させる場合には、その含有量を0.10%以下とした。
Nbは、Nと結合して窒化物を形成し、結晶粒粗大化を抑制する作用がある。さらに、Nbには、Cと結合することで母材の強度を上昇させる作用もある。したがって、Nbを含有させてもよい。ただし、0.03%を超えてNbを含有させても結晶粒粗大化を抑制する効果が飽和し、さらに、粗大な化合物が生成し、転動疲労強度が低下してしまう場合がある。そのため、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.03%以下とした。十分な転動疲労強度を確保するためのNb含有量の上限は、好ましくは0.025%である。
上記のVおよびNbは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。なお、これらの元素を複合して含有させる場合の合計量の上限は、0.13%である。
Bは、微量の含有で鋼の焼入れ性を大きく向上させて、転動部に必要な硬化層深さを一層大きくすることができる元素である。したがって、Bを含有させてもよい。しかしながら、Bの含有量が0.0030%を超えてもその効果は飽和してしまう。そのため、Bを含有させる場合には、その含有量を0.0030%以下とした。B含有量の上限は、好ましくは0.0020%である。
Bを含有することによって焼入れ性が向上するのは、Bが化合物ではなく、固溶状態で存在する場合である。そのため、BがNと結合してBNを形成した場合には、Bによる焼入れ性向上効果は期待できない。したがって、上記の量のBを含有させる際、BよりもNとの親和力が大きく窒化物形成能が強いTiを複合して含有させる。しかしながら、0.01%以上の量のTiを含有させても、Nを固定する効果が飽和するばかりか、粗大なTiNが多量に生成してしまうため、転動疲労特性が低下する場合がある。そのため、Bと複合して含有させる場合のTiの含有量を0.01%未満とした。
Claims (4)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.1%以上0.4%未満、Si:0.02〜0.70%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.010%未満、Cr:0.50〜2.00%、Al:0.01〜0.10%、Ca:0.0003〜0.0030%、O:0.0030%以下およびN:0.002〜0.030%と、
残部:Feおよび不純物とからなり、
下記の[1]式および[2]式を満足する、浸炭軸受用鋼。
0.7≦Ca/O≦2.0・・・[1]
Ca/O≧1250S−5.8・・・[2]
ただし、式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:3.5%以下およびMo:1.5%以下のうちの1種以上を含有する、請求項1に記載の浸炭軸受用鋼。
- Feの一部に代えて、質量%で、V:0.10%以下およびNb:0.03%以下のうちの1種以上を含有する、請求項1または2に記載の浸炭軸受用鋼。
- Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下およびTi:0.01%未満を含有する、請求項1から3までのいずれかに記載の浸炭軸受用鋼。
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