JP6300302B2 - カイコのセリシン1変異系統 - Google Patents
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(2)Ser1変異遺伝子が第2エクソンの3’末端領域に1〜15個の塩基の欠失、付加及び/又は置換の変異をさらに含む、(1)に記載のSer1変異系統。
(3)第2イントロンのドナー領域に含まれるドナー部位における1塩基の欠失、及び第2エクソンの3’末端を含む連続する3塩基の欠失を含む、(2)に記載のSer1変異系統。
(4)前記ドナー部位の1塩基の欠失がドナー部位を含む連続する3塩基の欠失及び当該欠失箇所への2塩基の付加に基づく、(3)に記載のSer1変異系統。
(5)配列番号5に示す塩基配列を有する第2エクソン及び配列番号6に示す塩基配列を有する第2イントロンを含むSer1変異遺伝子を有する、(4)に記載のSer1変異系統。
(6)第2イントロンのドナー部位2塩基の欠失、並びに第2エクソンの3’末端を含む6塩基の欠失を含む、(2)に記載のSer1変異系統。
(7)前記第2エクソンにおける6塩基の欠失が第2エクソンの3’末端を含む連続する12塩基の欠失及び当該欠失箇所への6塩基の付加に基づく、(6)に記載のSer1変異系統。
(8)配列番号7に示す塩基配列を有する第2エクソン及び配列番号8に示す塩基配列を有する第2イントロンを含むSer1変異遺伝子を有する、(7)に記載のSer1変異系統。
(9)Ser1変異遺伝子がホモ接合型である、(1)〜(8)のいずれかに記載のSer1変異系統。
(10)(9)に記載のカイコのSer1変異系統から得られる絹糸。
(11)(10)に記載の絹糸からセリシンを除いて得られる絹繊維。
1−1.概要
本発明の第1の態様は、カイコのSer1変異系統である。本発明のSer1変異系統は、野生型Ser1遺伝子の特定の部位に変異を有するカイコ変異系統で、Ser1の量が欠失、又は著しく減少した絹糸を吐糸することができる。それ故に、営繭可能であり、裸蛹や不吐糸蚕とならずに変異系統として継代することができる。
「Ser1変異系統」とは、カイコの野生型Ser1遺伝子の特定の部位に変異を含むSer1変異遺伝子をゲノム上に有するカイコの変異系統をいう。
(1)Ser1遺伝子への変異導入
カイコの野生型Ser1遺伝子における第2イントロンのドナー領域や第2エクソンの3’末端領域への変異の導入は、当該分野で公知の遺伝子変異導入技術を用いることができる。
(1)でSer1変異遺伝子を導入したカイコでは、Ser1変異遺伝子がヘテロ接合型となっていることから、必要に応じて、Ser1変異遺伝子のホモ接合型個体を得てもよい。ホモ接合型個体は、同系交配又は兄妹交配を行い、指標となる形質に基づいて目的のホモ接合型個体を選抜すればよい。なお、本明細書において「同系交配」(sib mating)とは、対象とする変異遺伝子(ここではSer1変異遺伝子)が同一である個体間の交配をいう。また、「兄妹交配」とは、同腹の雌雄どうしで行う同系交配をいう。
本発明のカイコのSer1変異系統によれば、Ser1が欠失又はその量が著しく減少した絹糸を吐糸できる。それ故に、営繭が可能であり、また継代によって系統維持が可能なカイコ変異系統を提供することができる。
2−1.概要
本発明の第2の態様は、絹糸である。本発明の絹糸は、前記第1態様に記載のカイコのSer1変異系統におけるホモ接合型個体に由来する絹糸である。
本発明の絹糸は、前記カイコのSer1変異系統のホモ接合型個体が吐糸する絹糸である。
本明細書において「絹糸」とは、カイコが吐糸する繊維状のタンパク質複合体をいう。野生型の絹糸は、繊維成分であるフィブロインとそのフィブロインを被覆する水溶性の糊状成分であるセリシンから構成される。フィブロインは、フィブロインH鎖(Fib H)、フィブロインL鎖(Fib L)及びp25/FHX(p25)の3つのタンパク質がFib H:Fib L:p25=6:6:1の比率で複合体(silk fibroin elementary unit; SFEU複合体)を形成して構成される。セリシンは、現在Ser1、Ser2又はSer3の3種類が知られており、繭糸にはSer1及びSer3が、幼虫期の足場糸にはSer2が含まれる。
本発明の絹糸は、野生型カイコ系統の絹糸と比較して糊状成分であるセリシン1が欠失しているか、又はその量が著しく減少していることから、セリシンの溶解性が向上しており、煮繭条件を従来の条件よりも緩和することが可能となる。それによって、加熱に要するコストを低減し、また製糸作業の手間を軽減することができる。
3−1.概要
本発明の第3の態様は、絹繊維である。本発明の絹繊維は、前記第2態様における絹糸からセリシンを除いて得られる。
本発明の絹繊維は、第2態様の絹糸を処理して得られる絹繊維をいう。
本明細書において「絹繊維」とは、前記絹糸に対して精練処理等を行い、セリシンを除去した残りの成分をいう。この残りの成分の多くは、絹糸の繊維成分であるフィブロインである。本発明の絹繊維において、セリシンは完全に除去されていてもよいし、一部が残っていてもよい。
本発明の絹繊維によれば、遺伝子組み換え技術により付加的な機能を付与された機能性絹繊維を、その機能を失うことなく提供することができる。
(目的)
カイコゲノム上のSer1遺伝子における第2エクソンの3’末端領域及び第2イントロンのドナー領域にTALENを用いて変異導入し、本発明のカイコのSer1変異系統を作出する。
(1)カイコ系統及び飼育
カイコ系統には、茨城県農業生物資源研究所(日本)の遺伝子組換えカイコ研究開発ユニットで保存されている白眼非休眠系統(w1-pnd)を用いた。カイコの飼育には人工飼料
として、桑葉含有率の低いシルクメイトL4M(日本農産工業)又は桑葉含有率の高い原蚕種1〜3齢用(日本農産工業)、あるいは桑葉を用いた。
Ser1遺伝子(図2A)は9個のエクソンを有し、選択的スプライシングによって少なくとも5種類のスプライスバリアントを生じる(図2B)。Ser1の全てのスプライスバリアントに対して変異を生じさせ、かつ機能的な領域を除去するために、全てのスプライスバリアントに共通する第2エクソンの3’末端領域及び第2イントロンのドナー領域をTALENの標的部位とした(図3)。第2エクソンの3’末端領域認識側(図3のI)を認識するTALENのDNA塩基配列認識部位の塩基配列を配列番号9に、また第2イントロンのドナー領域認識側(図3のII)を認識するTALENのDNA塩基配列認識部位の塩基配列を配列番号10に示す。なお、標的部位周辺に位置する制限酵素AleIの認識配列(図3下線部)を変異導入の有無の判定に用いた。
得られた直鎖状TALEN発現用プラスミド1μgを鋳型DNAとして、mMESSAGE mMACHINE kit(life technologies)を用いてTALENのmRNAを調製した。mRNAの精製は、キットに添付の説明書に従って、LiCl沈殿法により行った。
得られたTALENのmRNAを0.5μg/μLとなるようインジェクションバッファー(5 M KCl, 0.5 mM リン酸緩衝液pH7.0)に溶解した後、産下後5〜8時間のカイコ受精卵にTamura et al.(上述)の方法に従って3-5 nLをインジェクションした。その後、25℃でインキュベートして孵化させた。幼虫は、人工飼料シルクメイト原蚕種1〜3齢用(日本農産工業)を用いて飼育した。
Ser1遺伝子のノックアウト効率の高い蛾区のみを選抜するために、以下の方法でサンプリングアッセイを実施した。まず、上記インジェクション後に飼育して得られたTALEN処理カイコG0(Generation 0)成虫どうしを交配させて、比較的産卵数の多い12蛾区を選択した。それぞれの蛾区から得られた孵化直前のG1卵(Generation 1)を採取し、そのうち50卵を用いてDNAzol(Life technologies)又はBlood and tissue genomic DNA extractionminiprep system(Viogene)を用いてゲノムDNAを抽出した。具体的な抽出方法については、それぞれに添付の説明書に従った。抽出したゲノムDNA 25ngを鋳型DNAとして、配列番号14及び配列番号15に示すプライマーセット及びKOD FX Neo(Toyobo)を用いて、Ser1における標的部位を含む435塩基の領域をPCRにより増幅した。得られた増幅産物を制限酵素AleIで処理した後、アガロースゲル(0.8% SeaKem GTG, 2.4% NuSieve GTG)電気泳動によりDNA断片を分析した。蛾区ごとのPCR増幅産物のAleIによる切断に基づいて、TALENによるSer1遺伝子への変異導入効率を検証した。
飼育したG1カイコに営繭させ、その繭形状を分類すると共に、繭を構成する絹糸に含まれるSre1量をSDS-PAGEで検証した。なお、G1段階では、各蛾区に複数の種類のSer1変異遺伝子および正常型遺伝子が混在している可能性があり、これらの遺伝子型についてホモ接合型個体及びヘテロ接合型個体が混在している。
12蛾区のうち2蛾区(52-2及び52-4)を選択し、各蛾区で15頭のG1個体における営繭状態を確認した。営繭状態は、野生型カイコの繭と外見上の差異がほとんど見られない正常繭、野生型カイコの繭と比較して明らかに薄い薄皮繭、営繭せずに蛹化する裸蛹、及び吐糸できずに終齢幼虫のまま死亡する不吐糸蚕の4種に分類した。
前記繭形状による分類で正常繭又は薄皮繭を形成したカイコが実際にSer1を欠失又はその量を減少した絹糸を吐糸しているか否かを確認するために、SDS-PAGEを行った。まず、繭内の蛹を取り出して保管し、得られた繭の繭層切片約30 mgを80℃に熱した1% 2-メルカプトエタノール含有8 M尿素水溶液に浸漬した。2〜3分間撹拌しながらセリシンを絹糸から抽出する処理を行った。得られた抽出液を20,000×gで2分間遠心分離し、25μLの上清に25μLのサンプルバッファー(0.1 M Tris HCl pH6.8, 1% SDS, 0.05% BPB, 1% 2-メルカプトエタノール)を混合して99℃で5分間加熱して、SDS-PAGE用試料とした。対照用として野生型カイコから得られた繭層切片を用いて、上記と同じ処理を行った。SDS-PAGEは、Green, MR and Sambrook, J, (2012) Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法を参照した。泳動には5%の均一ゲルを用い、分子量マーカーとしてプレシジョン Plus プロテイン未着色スタンダード(Bio Rad)を使用した。泳動後のゲルをクマシーブリリアントブルーで染色した。
上記(6)で分離したSer1変異体個体の蛹を羽化させて、得られたG1カイコ成虫におけるSer1変異遺伝子のTALENの標的部位における塩基配列を決定した。
上記(7)で得られた52-2蛾区由来のSer1変異遺伝子を有するG1カイコ成虫を野生型と交配し、Ser1変異遺伝子のヘテロ接合型G2カイコを得た。続いて、G2カイコどうしを交配して、G3カイコを得た。このG3カイコ集団には、52-2蛾区由来のSer1変異ホモ接合型個体が理論上25%含まれる。営繭したG3カイコから蛹を取り出して繭を保存し、羽化した複数のG3カイコ成虫から脚を1本採取して、(7)と同様の方法でゲノムDNAを抽出した後、Ser1変異遺伝子のTALENの標的部位における塩基配列をダイレクトシークエンスを行って確認した。Ser1変異遺伝子をホモ接合で有する個体を選抜し、実施例1と同様の方法で、繭を構成する絹糸中のSer1量をSDS-PAGEで分析した。
Claims (10)
- カイコの野生型セリシン1遺伝子の第2イントロンのドナー部位における少なくとも1塩基、及び第2エクソンの3’末端に欠失、付加及び/又は置換の変異を含むセリシン1変異遺伝子を有するカイコのセリシン1変異系統。
- セリシン1変異遺伝子が第2エクソンの3’末端領域に1〜15個の塩基の欠失、付加及び/又は置換の変異をさらに含む、請求項1に記載のセリシン1変異系統。
- 前記ドナー部位における1塩基の欠失、及び第2エクソンの3’末端を含む連続する3塩基の欠失を含む、請求項2に記載のセリシン1変異系統。
- 前記ドナー部位の1塩基の欠失がドナー部位を含む連続する3塩基の欠失及び当該欠失箇所への2塩基の付加に基づく、請求項3に記載のセリシン1変異系統。
- 配列番号5に示す塩基配列を有する第2エクソン及び配列番号6に示す塩基配列を有する第2イントロンを含むセリシン1変異遺伝子を有する、請求項4に記載のセリシン1変異系統。
- 第2イントロンのドナー部位2塩基の欠失、並びに第2エクソンの3’末端を含む6塩基の欠失を含む、請求項2に記載のセリシン1変異系統。
- 前記第2エクソンにおける6塩基の欠失が第2エクソンの3’末端を含む連続する12塩基の欠失及び当該欠失箇所への6塩基の付加に基づく、請求項6に記載のセリシン1変異系統。
- 配列番号7に示す塩基配列を有する第2エクソン及び配列番号8に示す塩基配列を有する第2イントロンを含むセリシン1変異遺伝子を有する、請求項7に記載のセリシン1変異系統。
- セリシン1変異遺伝子がホモ接合型である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセリシン1変異系統。
- 請求項9に記載のカイコのセリシン1変異系統から得られる絹糸。
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