JP6319940B2 - 触媒層付電解質膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子形燃料電池に用いられる触媒層付電解質膜及びその製造方法に関する。
燃料電池は水素などの燃料と空気などの酸化剤を電気化学的に反応させることにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出す発電方式である。この発電方式は、発電効率が高く、静粛性に優れ、大気汚染の原因となるNOx、SOx、また地球温暖化の原因となるCOの排出量が少無い等の利点から、新エネルギーとして期待されている。この燃料電池が適用されている例は、携帯電気機器の長時間電力供給、コジェネレーション用定置型発電温水供給機、燃料電池自動車等があり、用途も規模も多様である。
燃料電池の種類は使用する電解質によって、固体高分子形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、アルカリ形等に分類され、それぞれ運転温度が大きく異なり、それに伴い発電規模や利用分野も異なる。
上述した各種の燃料電池の中で、長所の多い固体高分子形燃料電池が知られている。この固体高分子形燃料電池は、陽イオン交換膜を電解質として用いたものである。その長所として、1)燃料電池の中でも比較的低温での動作、すなわち室温付近で使用可能である点、2)電解質膜の薄膜化により内部抵抗を低減できるため高出力化及びコンパクト化が可能である点に着目されている。そのため、固体高分子形燃料電池は、車載用電源や家庭用据置電源等への用途が有望視されており、近年、様々な研究開発が行われている。
固体高分子形燃料電池は、高分子電解質の両面に一対の電極触媒層が形成された膜に、一対のガス拡散層が配置されるとともに、中心部材としての膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly :MEA)が構成されている。また、電極触媒層の周縁部にはガスケットが配置されている。そして、中心部材である膜電極接合体を、一対のセパレータ板で挟持することによって電池が構成されている。この固体高分子形燃料電池において、一方の電極に水素を含有する燃料ガスを供給し、他方の電極に酸素を含む酸化剤ガスを供給するために、それぞれのガス流路が形成されている。なお、高分子電解質の両面に一対の電極触媒層が形成された膜は、触媒層付電解質膜(Catalyst Coated Membrane;CCM)とも呼ばれている。そして、一対のセパレータ板で挟持された電池を単電池セルと呼ぶ。
固体高分子形燃料電池は、出力密度の増大と燃料電池全体のコンパクト化を目的として、複数の単電池セルを積層(スタック)して用いられる。スタックする枚数は、必要な電力により異なり、一般的な携帯電気機器のポータブル電源では数枚から10枚程度、コジェネレーション用定置型電気および温水供給機では60〜90枚程度、自動車用途では250〜400枚程度である。高出力化をするためにはスタック枚数を増やすことが必要となり、単電池セルのコストが燃料電池全体のコストに大きく影響する。プロセスコストの観点から、安価で簡便な触媒層付電解質膜や膜電極接合体の製造方法が望まれている。
触媒層付電解質膜の製造方法として、様々な手法が検討されており、例えば、以下の4つの方法が知られている。1)触媒を含む塗工液をイオン交換膜上に塗布することにより、触媒層を形成して電極とし、電極とイオン交換膜をホットプレス等の熱処理により接合して触媒層付電解質膜を製造する方法。2)イオン交換膜の他に別途用意した基材フィルム上に触媒層を形成し、その後、触媒層上にイオン交換膜を積層してホットプレスすることにより触媒層をイオン交換膜上に転写する方法。3)ガス拡散層上に触媒層が形成された電極シートを製造し、該電極シートをイオン交換膜と接合する方法。4)触媒層をイオン交換膜上に形成したもの(ハーフセル)2組を製造し、それぞれのイオン交換膜側の面を対向させ圧着して触媒層付電解質膜を製造する方法。
しかしながら、これらの方法で製造される触媒層付電解質膜は、イオン交換膜と電極触媒層を接合する際に、ホットプレス等の熱圧着により製造されるため、その工程がボトルネックとなってしまい、タクト時間が長くなり、結果として生産効率を低下させてしまうという問題があった。
この課題を解決する方法として、基材上に第1の電極触媒層を製造し、次に高分子電解質層8を製造し、最後に第2の電極触媒層を製造する逐次積層による方法が提案されている。この逐次積層による方法は、タクト時間が短く、生産効率が高くなるため、製造コストが低くなる。(特許文献1、特許文献2)
また、高分子電解質層の上に所望の形状の電極触媒層を形成する方法として、被覆部材を、電解質層の非触媒層形成部位に配置し、被覆部材が配置された電解質層に電極触媒インクを塗布し、乾燥させて触媒層を形成する手法が提案されている。被覆部材の形状をコントロールすることにより、所望の形状の触媒層が得られると共に、電極触媒インクを電解質層に直接塗布することから、製造コストが低くなる。(特許文献3)
特許第4696462号公報 特許第5011867号公報 特開2007−294183号公報
しかしながら、特許文献1、特許文献2に開示された膜電極接合体の製造方法では、製造コストは低くなるが、共に触媒層の形状が塗布する手法に依存し、所望の形状の触媒層を得ることができないという問題があった。
また、特許文献3では、被覆部材上に形成された触媒層がロスとなる。触媒層中には、白金に代表される貴金属が触媒として存在していることから、触媒層のロスは、コスト増に繋がるという問題があった。
さらに、高分子電解質膜に触媒インク70を塗布し、触媒層を形成した場合、膜と触媒層の界面のみが接合しており、触媒層がむき出しとなる断面から乾燥しやすいため、将来的に求められている発生水のみのような低加湿条件下で、発電性能が下がるという問題があった。
本発明は、上記問題を考慮して成し遂げられたものであり、1)低加湿条件下で発電性能が高く、2)イオン抵抗が小さく、3)触媒インクのロスが少なく、4)所望の形状に高精度で触媒層を形成できて、5)タクト時間が短く生産効率が高い触媒層付電解質膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成の触媒層付電解質膜の製造方法を採用した。
請求項は、触媒担持粒子と高分子電解質と溶媒とを含む触媒インク(70)に親和性のある親和性エリア(5)と前記触媒インク(70)に親和性が無い非親和性エリア(6)とを、剥離基材(1)上にパターン形成するパターン形成工程(S100)と、前記親和性エリア(5)に前記触媒インク(70)を塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜中の溶媒を除去し、カソード触媒層(71)を形成するカソード触媒層形成工程(S25)と、前記カソード触媒層(71)上に、高分子電解質と溶媒とを含む電解質インクを塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜中の溶媒を除去し、高分子電解質膜(8)を形成する高分子電解質膜形成工程(S40)と、前記高分子電解質膜(8)上に、前記触媒インク(70)を塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜中の溶媒を除去し、アノード触媒層(72)を形成するアノード触媒層形成工程(S50)と、を有し、前記高分子電解質膜形成工程(S40)では、前記カソード触媒層(71)を形成した後に、前記非親和性エリア(6)を前記親和性エリア(5)に改質し、前記改質した前記親和性エリア(5)上に前記高分子電解質膜(8)を、前記カソード触媒層(71)の前記剥離基材(1)側の表面と前記高分子電解質膜(8)の前記剥離基材(1)側の表面とが同一平面上に位置するように形成し、前記アノード触媒層形成工程(S50)では、前記アノード触媒層(72)の単位面積当たりの白金担持量が前記カソード触媒層(71)の単位面積当たりの白金担持量よりも少なくなるように、前記アノード触媒層(72)を形成することを特徴とする触媒層付電解質膜の製造方法である。
また、前記パターン形成工程(S100)は、前記剥離基材(1)上の全エリアにシランカップリング剤(2)を形成するシランカップリング剤形成工程(S10)と、前記親和性エリア(5)上に形成されたシランカップリング剤(2)のみを除去するシランカップリング剤限定除去工程(S20)と、前記カソード触媒層形成工程(S25)によりカソード触媒層(71)を形成した後に、前記非親和性エリア(6)の残存シランカップリング剤(2)を除去する残存シランカップリング剤除去工程(S30)とを有することを特徴とする。
また、前記シランカップリング剤限定除去工程(S20)では、フォトマスク(4)を介して前記親和性エリア(5)上にのみ真空紫外光(3)を照射することにより除去することを特徴とする。
また、前記パターン形成工程(S100)において、前記親和性エリア(5)では親水性を活用し、前記非親和性エリア(6)では撥水性を活用してパターン形成することを特徴とする。
また、前記親和性エリア(5)の水接触角が15度以下であり、前記非親和性エリア(6)の水接触角が100度以上であることを特徴とする。
本発明によれば、1)低加湿条件下で発電性能が高く、2)イオン抵抗が小さく、3)触媒インクのロスが少なく、4)所望の形状に高精度で触媒層を形成できて、5)タクト時間が短くて生産効率が高いという効果を奏する触媒層付電解質膜及びその製造方法を提供することができる。
1)特に、低加湿条件下で発電性能を高くできる理由は、カソード触媒層は、断面を含めた四方を高分子電解質層で覆われているため、低加湿条件下でも触媒層が保湿され、高いプロトン伝導性を有する膜電極接合体(MEA)を形成できるからである。
2)イオン抵抗を小さくできる理由は、高分子電解質層と電極触媒層の接触が向上するからである。そのため、ホットプレスで製造した触媒層付電解質膜と比較して、より良好な結果が得られる。
3)触媒インクのロスをより少くできる理由は、カソード触媒層を形成する際に、触媒インクと親和性がある親和性エリアにのみ、触媒層を形成するからである。その結果、製造コストの低減を図ることができる。
4)高精度で所望の形状に触媒層を形成できる理由は、シランカップリング剤を除去する工程において用いるフォトマスクの精度が、カソード触媒層の形状に反映されるからである。したがって、所望の精度・形状のフォトマスクを用いることにより、高精度で所望の形状の触媒層を形成することができる。
5)タクト時間を短縮して生産効率を高められる理由は、イオン交換膜と電極触媒層を接合する際に、ボトルネックとなるホットプレス等の熱圧着の工程が無いからである。また、カソード触媒層、高分子電解質層、アノード触媒層が順次積層されるため、製造効率を非常に高くすることができる。
このように、本発明によれば、製造効率が高く、かつカソード触媒層は、断面を含めた四方を高分子電解質層で覆われているため、低加湿条件下でも触媒層が保湿され、高いプロトン伝導性を有する膜電極接合体となり、特に低加湿条件下で発電性能が高いという効果を奏する触媒層付電解質膜及びその製造方法を提供することができる。
さらに、ホットプレスにより製造した触媒層付電解質膜と比較して、高分子電解質層と電極触媒層の接触が向上し、イオン抵抗が減少するという効果を奏する膜電極接合体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、カソード触媒層を形成する際に、触媒インクと親和性があるエリアにのみ、触媒層が形成されることから触媒インクのロスがなくなり、製造コストの低減を図ることができる。
加えて、カソード触媒層の形状が、シランカップリング剤を除去する際に介するフォトマスクの精度に依存するため、所定の形状のフォトマスクを用いることにより、所望の形状の触媒層を形成することができる。
本発明による触媒層付電解質膜の製造方法の一実施の形態を工程順に説明するための模式図である。 本発明の実施形態に係る触媒層付電解質膜の理想的な構成を示す断面図である。 本発明の理想とは異なる触媒層付電解質膜の構成を示す断面図である。 本発明に係る触媒層付電解質膜の製造方法の実施形態を工程順に説明するためのフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明による触媒層付電解質膜の製造方法の一実施の形態を工程順に説明するための模式図である。
本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法の概略は以下のとおりである。まず、剥離基材1上に、触媒インク70と親和性のある親和性エリア5と触媒インク70と親和性が無い非親和性エリア6とをパターン形成する工程(図1(b))を実行する。次に、剥離基材1上の触媒インク70と親和性のある親和性エリア5に触媒インク70を塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜中の溶媒を除去し、前記カソード触媒層71を形成する工程(図1(c))を実行する。次に、カソード触媒層71上に、少なくとも高分子電解質と溶媒を含む電解質インクを塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜中の溶媒を除去し、高分子電解質層8を形成する工程(図1(e))を実行する。次に、高分子電解質膜上に、触媒インク70を塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜中の溶媒を除去し、アノード触媒層72を形成する工程(図1(f))を実行するという工程から成る。
より詳しくは、本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法において、まず、剥離基材1上に触媒インク70と親和性のある親和性エリア5と親和性が無い非親和性エリア6がパターン形成される。パターン形成の第一工程(シランカップリング剤形成工程)として、シランカップリング剤2が剥離基材1上に形成される(図1(a))。そして、シランカップリング剤2が形成された剥離基材1上がシランカップリング剤2の低表面エネルギーの官能基により撥水化処理される。シランカップリング剤2の種類としては、触媒インク70と親和性が無いものであり、且つ真空紫外光3で除去できるものであれば、特に限定されるものでは無いが、低表面エネルギーの官能基を有し、結合が真空紫外光3で分解され易いフルオロアルキルシランが望ましい。また、シランカップリング剤2の形成法は、スプレーコーティング、スピンコーティング、化学蒸着法、浸漬法等が挙げられ、特に限定されるものでは無い。
次に、パターン形成の第二工程(シランカップリング剤限定除去工程)として、第一工程で形成されたシランカップリング剤2の触媒層形成エリアにのみ限定して、所定の形状のフォトマスク4を介して真空紫外光3が照射される(図2(b))。そして、真空紫外光3が照射されたエリアのシランカップリング剤2が分解され、真空紫外光3が照射されたエリアの剥離基材1上のみが親水化処理される。真空紫外光3の波長は、シランカップリング剤2のSi−Cの結合が切断できる波長であれば、特に限定されるものでは無いが、Si−Cの結合が切断され易いことから172nmであることが望ましい。
次に、剥離基材1上にカソード触媒層71を形成する工程として、触媒担持粒子と高分子電解質と溶媒とを含む第2の触媒インク70が用意され、パターン形成された剥離基材1上の親和性エリア5に触媒インク70が滴下され、カソード触媒層71が形成される(図1(c))。なお、本実施形態で用いる触媒インク70には、白金または白金と他の金属(例えばRu、 Rh、 Mo、 Cr、 Co、 Fe等)との合金の微粒子(平均粒径は10nm以下が望ましい)が表面に担持されたカーボンブラックなどの導電性炭素微粒子(平均粒径:20〜100nm程度)と、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液などの高分子溶液とがシランカップリング剤2と親和性が無い溶剤(水など)の中で均一に混合されたインクを用いて製造されるものが使用できる。
なお、本実施形態に係る触媒層付電解質膜において、カソード触媒層71の白金担持量は、アノード触媒層72の白金担持量以上である。
次に、パターン形成の第三工程(残存シランカップリング剤除去工程)として、真空紫外光3をカソード触媒層71が形成された剥離基材1の上に照射し、触媒インク70と親和性が無いシランカップリング剤2により形成されたエリア6のシランカップリング剤2が分解・除去される(図1(d))。
次に、高分子電解質と溶媒とを含む電解質溶液が用意され、カソード触媒層71上に電解質溶液が塗布され、高分子電解質層8が形成される(図1(e))。
次に、高分子電解質層8上に触媒インク70が塗布され、アノード触媒層72が形成される(図1(f))。
最後に、カソード触媒層71と、高分子電解質層8と、アノード触媒層72からなる触媒層付電解質膜が、剥離基材1から剥離されることによって、本実施形態の触媒層付電解質膜は製造される。
図2は、本発明の実施形態に係る触媒層付電解質膜の理想的な構成を示す断面図である。このように、本実施形態に係る製造方法により製造された触媒層付電解質膜において、カソード触媒層71と、高分子電解質層8の表面とは剥離基材1上の同一平面上に形成される。つまり、触媒層付電解質膜は、高分子電解質膜8と、高分子電解質膜8の一方の面に設けたアノード触媒層72と、高分子電解質膜8の他方の面に設けたカソード触媒層71とを備える触媒層付電解質膜であって、カソード触媒層71の表面と、カソード触媒層71を設けた高分子電解質膜8の表面とが略同一平面上にある。
図3は、本発明の理想とは異なる触媒層付電解質膜の構成を示す断面図である。図3(a)は、カソード触媒層71が凸になっている構成を示し、図3(b)は、カソード触媒層71が高分子電解質層8に完全に囲まれて外部に露出し無い構成を示している。
カソード触媒層71が凸になっている構成の場合、そのカソード触媒層71の断面が高分子電解質層8に覆われてい無いことからカソード触媒層71の保湿性が低下する(図3(a))。一方で高分子電解質層8がカソード触媒層71と剥離基材1間の界面に入る構成、すなわち、カソード触媒層71が高分子電解質層8に完全に囲まれて外部に露出しない構成の場合、導電性が低下するとともに、カソード触媒層71のガス拡散性が低下する(図3(b))。カソード触媒層71の断面が完全に高分子電解質層8に覆われて、かつ、カソード触媒層71の表面と高分子電解質層8の表面が完全に一致している構成がより望ましい。
本実施形態に係る触媒層付電解質膜は、低加湿条件下で発電性能を高くできる。その理由は、カソード触媒層71は、断面を含めた四方を高分子電解質層8で覆われているため、低加湿条件下でも触媒層が保湿され、高いプロトン伝導性を有する膜電極接合体(MEA)を形成できるからである。
触媒層付電解質膜の触媒層の白金担持量は、カソード触媒層71の白金担持量がアノード触媒層72の白金担持量以上である。すなわち、カソード触媒層71の白金担持量は、0.20〜0.40mg/cm、アノード触媒層72の白金担持量は0.05〜0.10mg/cmが望ましい。また、剥離基材1上に形成される触媒層は、触媒インク70のロスをなくすことができることから、白金担持量が多いカソード触媒層71であることが望ましい。
本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法によれば、触媒インク70のロスをより少くできる。その理由は、カソード触媒層71を形成する際に、触媒インク70と親和性がある親和性エリア5にのみ、触媒層を形成するからである。その結果、製造コストの低減を図ることができる。
本実施形態の触媒層付電解質膜の構成は、カソード触媒層71と高分子電解質層8の表面が略同一面上にあり、触媒層の断面も高分子電解質で覆われている。そのため、特に低加湿条件下において、電極触媒層の保湿性が高まり、高いプロトン伝導性を有するため、発電性能を向上させることができる。
本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法によれば、カソード触媒層71、高分子電解質層8、アノード触媒層72が順次積層され、製造効率を非常に高くすることができる。
また、本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法によれば、白金使用量が多いカソード触媒層71の形成において、触媒インク70との親和性が有るエリアと無いエリアにパターン形成された剥離基材1上に触媒インク70を塗布することから、触媒インク70のロスが無く、安価に製造することができる。
また、本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法によれば、ホットプレスによって高分子電解質層8の両面に電極触媒層を転写する膜電極接合体の製造方法と比較して、ホットプレス工程を省略することができる。ホットプレス工程を省略した場合には、ホットプレス時の加熱や圧力で高分子電解質層8がダメージを受けることによる膜強度の低下やイオン交換能の低下を防ぐこともできる。
本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法によれば、タクト時間を短縮して生産効率を高められる。その理由は、イオン交換膜と電極触媒層を接合する際に、ボトルネックとなるホットプレス等の熱圧着の工程が無いからである。また、カソード触媒層71、高分子電解質層8、アノード触媒層72が順次積層されるため、製造効率を非常に高くすることができる。
さらに、ホットプレスにより製造した触媒層付電解質膜と比較して、高分子電解質層8と電極触媒層の接触が向上し、イオン抵抗が減少するという効果を奏する膜電極接合体の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る触媒層付電解質膜が、イオン抵抗を小さくできる理由は、高分子電解質層8と電極触媒層の接触が向上するからである。そのため、ホットプレスで製造した触媒層付電解質膜と比較して、より良好な結果が得られる。
以上、説明したように、本実施形態に係る触媒層付電解質膜及びその製造方法によれば、生産効率が高く、安価で十分な発電性能を備える触媒層付電解質膜による膜電極接合体を提供することができる。
以下、具体的な実施例により、本発明に係る触媒層付電解質膜の製造方法を図4も交えて説明する。なお、後述する実施例は本発明の一実施例であり、本発明はこの実施例のみに限定されるものでは無い。また、本実施例に係る触媒層付電解質膜は、固体高分子形燃料電池に用いられる。
図4は、本発明に係る触媒層付電解質膜の製造方法の実施形態を工程順に説明するためのフローチャートである。図4(a)に示すように、触媒層付電解質膜の製造方法には、シランカップリング剤形成工程(S10)と、シランカップリング剤限定除去工程(S20)と、カソード触媒層形成工程(S25)と、残存シランカップリング剤除去工程(S30)と、高分子電解質膜形成工程(S40)と、アノード触媒層形成工程(S50)と、を有する。
(S10)のシランカップリング剤形成工程では、シランカップリング剤2を、剥離基材1上の全エリアに形成する。
(S20)のシランカップリング剤限定除去工程では、フォトマスク4を介して親和性のある親和性エリア5上にのみ真空紫外光3を照射することにより、触媒インク70と親和性エリア5上に形成されたシランカップリング剤2のみを除去する。
(S25)のカソード触媒層形成工程では、剥離基材1上の親和性エリア5に触媒インク70を塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜中の溶媒を除去し、カソード触媒層71を形成する。
(S30)の残存シランカップリング剤除去工程では、カソード触媒層71形成後に触媒インク70と親和性の無い非親和性エリア6の残存シランカップリング剤2を除去する。
(S40)の高分子電解質膜形成工程では、カソード触媒層71上に、少なくとも高分子電解質8と溶媒を含む電解質インクを塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜中の溶媒を除去し、高分子電解質膜8を形成する。
(S50)のアノード触媒層形成工程では、高分子電解質膜8上に、触媒インク70を塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜中の溶媒を除去し、アノード触媒層72を形成する。
図4(b)に示すように、本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法におけるパターン形成工程(S100)のみに着目すると、第一工程としてのシランカップリング剤形成工程(S10)と、第二工程としてのシランカップリング剤限定除去工程(S20)と、第三工程としての残存シランカップリング剤除去工程(S30)との三段階を有している。すなわち、パターン形成工程(S100)は、剥離基材1上の全エリアにシランカップリング剤2を形成するシランカップリング剤形成工程(S10)と、親和性エリア5上に形成されたシランカップリング剤2のみを限定して除去するシランカップリング剤限定除去工程(S20)と、カソード触媒層形成工程(S25)によりカソード触媒層71を形成された後に、非親和性エリア6の残存シランカップリング剤2を除去する残存シランカップリング剤除去工程(S30)とを有する。
また、シランカップリング剤限定除去工程(S20)では、フォトマスク4を介して親和性エリア5上にのみ真空紫外光3を照射することにより除去する。
上述したパターン形成工程(S100)において、親和性エリア5では親水性を活用し、非親和性エリア6では撥水性を活用してパターン形成する。
(パターン形成工程(S100)におけるシランカップリング剤形成工程(S10))
図1(a)に示すように、剥離基材1としてガラス基板(以下、ガラス基板1という)を用いている。このガラス基板1の上に波長172nmの真空紫外光3を照射し、ガラス基板1の表面にヒドロキシル基を形成した。続いて、ガラス基板1上のヒドロキシル基と加水分解されたシランカップリング剤2とを反応させるようにする。ここで、フルオロアルキル系のシランカップリング剤2であるフルオロメトキシシラン(商品名:KBM―7103、信越化学工業製)と、上述したヒドロキシル基が形成されたガラス基板1とを160℃に加温する。それから、化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)によりガラス基板1上にシランカップリング剤2を形成した。
(パターン形成工程(S100)におけるシランカップリング剤限定除去工程(S20))
図1(b)に示すように、50mm四方の開口部を有するフォトマスク4を介して、波長172nmの真空紫外光3をシランカップリング剤2が形成されたガラス基板上に照射する。そして、シランカップリング剤2が分解された触媒インク70と親和性がある親和性エリア5とシランカップリング剤2が残存している触媒インク70と親和性が無い非親和性エリア6をパターン形成した。
なお、本実施形態に係る触媒層付電解質膜の製造方法によれば、触媒層を高精度で所望の形状に形成できる。その理由は、シランカップリング剤限定除去工程(S20)において用いるフォトマスク4の精度が、カソード触媒層71の形状に反映されるからである。したがって、所望の精度・形状のフォトマスク4を用いることにより、高精度で所望の形状の触媒層を形成することができる。
(カソード触媒層の形成工程(S25))
図1(c)に示すように、5白金担持量が50%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液であるNafion(登録商標、デュポン社製)を、溶媒である水と混合した。続いて、遊星ボールミルで分散処理を行い、触媒インク70を調整した。そして、パターン形成したガラス基板1上に、触媒インク70と親和性がある親和性エリア5に、調整した触媒インク70を、白金担持量が0.30mg/cm2となるように滴下した。このように滴下された触媒インク70によって形成された塗膜を乾燥させて、カソード触媒層71を形成した。
(パターン形成工程(S100)における残存シランカップリング剤除去工程(S30))
図1(d)に示すように、カソード触媒層71が形成されたガラス基板上に波長が172nmの真空紫外光3を照射し、カソード触媒層71周縁部の触媒インク70と親和性が無い非親和性エリア6のシランカップリング剤2を分解・除去した。
(高分子電解質層形成工程(S40))
図1(e)に示すように、20質量%高分子電解質溶液であるNafion(登録商標、デュポン社製)を、カソード触媒層71上に膜厚が20μmとなるように、ドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥させて、高分子電解質層8を形成した。
(アノード触媒層形成工程(S50))
図1(f)に示すように、50mm四方の開口部を有するマスクを貼合した高分子電解質層8上に、アノード触媒層72を形成する。すなわち、高分子電解質層8上に、白金担持量が0.10mg/cmとなるように、触媒インク70を、ドクターブレード法により塗布する。塗布した後、塗膜を乾燥させ、マスクを剥離し、アノード触媒層72が形成される。
最後に、カソード触媒層71、高分子電解質層8、アノード触媒層72の積層体をガラス基板1から剥離し、触媒層付電解質膜とした。
[比較例]
(カソード触媒層形成工程(S25参照))
白金担持量が50%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液であるNafion(登録商標、デュポン社製)を、溶媒である水と混合した。続いて、遊星ボールミルで分散処理を行い、触媒インク70を調整した。そして、PTFEフィルム上に50mmの開口部を有するマスク材が貼合された転写基材上に、調整した触媒インク70を塗布した。この触媒インク70は、白金担持量が0.30mg/cmとなるようにドクターブレード法により塗布される。塗布された後に、塗膜を乾燥させ、カソード触媒層71が形成される。
(アノード触媒層形成工程(S50参照))
PTFEフィルム上に50mmの開口部を有するマスク材が貼合された転写基材上に、触媒インク70を、白金担持量が0.10mg/cmとなるように、ドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥させ、アノード触媒層72を形成した。
(高分子電解質層形成工程(S40参照))
20質量%高分子電解質溶液であるNafion(登録商標、デュポン社製)を、ガラス基板1上に、膜厚が20μmとなるようドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥させ、高分子電解質層8を形成した。
(ホットプレス工程)
PTFEシート上に製造された両電極触媒層を、高分子電解質溶液から製造した高分子電解質層8の両面に正対するように配置し、130℃、6.0×10Paの条件でホットプレスを行い、触媒層付電解質膜を製造した。
実施例と比較例とそれぞれの製造方法により製造した触媒層付電解質膜について、それぞれ低加湿での発電特性を調べた結果、実施例の方が、発電性能が高いことを確認した。
また、実施例と比較例とそれぞれの製造方法において使用した触媒インク70の体積を調べた結果、実施例の製造方法によれば、触媒インク70の使用量を40%削減できていることを確認した。
本発明によれば、発電性能と生産効率が高く、イオン抵抗と触媒インクのロスが少なく、所望の形状に触媒層を形成することが可能な触媒層付電解質膜及びその製造方法を提供できる。したがって、固体高分子形燃料電池、特に燃料電池自動車や家庭用燃料電池などにおける、固体高分子形燃料電池に用いられる単セルやスタックに好適に活用することができる。
1…剥離基材
2…シランカップリング剤
3…真空紫外光
4…フォトマスク
5…触媒インクと親和性の有るエリア(親和性エリア)
6…触媒インクと親和性が無いエリア(非親和性エリア)
8…高分子電解質層
70…触媒インク
71…カソード触媒層
72…アノード触媒層

Claims (5)

  1. 触媒担持粒子と高分子電解質と溶媒とを含む触媒インクに親和性のある親和性エリアと前記触媒インクに親和性が無い非親和性エリアとを、剥離基材上にパターン形成するパターン形成工程と、
    前記親和性エリアに前記触媒インクを塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜中の前記溶媒を除去し、カソード触媒層を形成するカソード触媒層形成工程と、
    前記カソード触媒層上に、高分子電解質と溶媒とを含む電解質インクを塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜中の溶媒を除去し、高分子電解質膜を形成する高分子電解質膜形成工程と、
    前記高分子電解質膜上に、前記触媒インクを塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜中の前記溶媒を除去し、アノード触媒層を形成するアノード触媒層形成工程と、を有し、
    前記高分子電解質膜形成工程では、前記カソード触媒層を形成した後に、前記非親和性エリアを前記親和性があるエリアに改質し、前記改質したエリア上に前記高分子電解質膜を、前記カソード触媒層の前記剥離基材側の表面と前記高分子電解質膜の前記剥離基材側の表面とが同一平面上に位置するように形成し、
    前記アノード触媒層形成工程では、前記アノード触媒層の単位面積当たりの白金担持量が前記カソード触媒層の単位面積当たりの白金担持量よりも少なくなるように、前記アノード触媒層を形成することを特徴とする触媒層付電解質膜の製造方法。
  2. 前記パターン形成工程は、前記剥離基材上の全エリアにシランカップリング剤を形成するシランカップリング剤形成工程と、前記親和性エリア上に形成されたシランカップリング剤のみを除去するシランカップリング剤限定除去工程と、前記カソード触媒層形成工程により前記カソード触媒層を形成した後に、前記非親和性エリアの残存シランカップリング剤を除去する残存シランカップリング剤除去工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の触媒層付電解質膜の製造方法。
  3. 前記シランカップリング剤限定除去工程では、フォトマスクを介して前記親和性エリア上にのみ真空紫外光を照射することにより除去することを特徴とする請求項2に記載の触媒層付電解質膜の製造方法。
  4. 前記パターン形成工程において、前記親和性エリアでは親水性を活用し、前記非親和性エリアでは撥水性を活用してパターン形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の触媒層付電解質膜の製造方法。
  5. 前記親和性エリアの水接触角が15度以下であり、前記非親和性エリアの水接触角が100度以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の触媒層付電解質膜の製造方法。
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