[防水通音膜]
図1に、本発明の防水通音膜の一例を示す。図1に示す防水通音膜1は、高分子フィルム2と、高分子フィルム2の主面上に形成された撥液層3とを備える。高分子フィルム2は、当該フィルム2の一方の主面4aから他方の主面4bへと延びる貫通孔5を有する。貫通孔5は、当該貫通孔5の中心軸(軸線)6が直線状に延びるストレート孔であり、当該中心軸6が延びる方向に垂直な断面7の面積が高分子フィルム2の一方の主面4aから他方の主面4bに向けて増加する形状を有している。一方の主面における貫通孔5の開口8aの径(開口径)aは12μm以下である。撥液層3は、貫通孔5の表面(貫通孔5内のフィルム2の表面)にも形成されている。高分子フィルム2の主面上に形成された撥液層3は、当該フィルム2の貫通孔5に対応する位置(開口8a,8bに対応する位置)に開口を有する。防水通音膜1の他方の主面4bから一方の主面4aへの通気度は、JIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数で示して、2.0cm3/(cm2・秒)以上80cm3/(cm2・秒)以下である。高分子フィルム2は、例えば、その厚さ方向に通気可能である経路を貫通孔5以外に有さない非多孔質のフィルムであり、典型的には、当該貫通孔5を除いて無孔の(中実の)フィルムである。防水通音膜1において音声は、高分子フィルム2の通気経路である貫通孔5を経由して、また、防水通音膜1自身の振動により、伝達される。なお、図1では、貫通孔5の形状を分かり易くするために、その径が誇張して描かれている。以降の図においても同様である。
図1に示す防水通音膜1は、特許文献2(特開2012-195928号公報)に開示されている防水通音膜と比較して、少なくとも貫通孔の形状が異なっている。より具体的には、特許文献2の防水通音膜の貫通孔が、「一定の断面形状で樹脂フィルムを直線状に貫通するストレート孔」(段落0014)であるのに対して、図1の防水通音膜1の貫通孔5は、同じく中心軸が直線状に延びるストレート孔ではあるものの、その中心軸6が延びる方向に垂直な断面7の面積がフィルム2の一方の主面4aから他方の主面4bに向けて増加する形状を有している。防水通音膜1では、貫通孔5の当該形状に基づき、フィルム2の一方の主面4aにおける貫通孔5の開口径aと他方の主面4bにおける貫通孔5の開口径bとが等しくなく、例えば、開口径bに対して開口径aは80%以下の大きさである。
少なくともこのような貫通孔5の形状に基いて、防水通音膜1は、従来の防水通音膜よりも通音性および防水性の制御の自由度が高い。例えば、膜全体にわたって3次元的に分散し、互いに連続した状態にある細孔を通気経路とする特許文献1の延伸多孔質膜に対して、防水通音膜1を構成する高分子フィルム2は、その厚さ方向の通気経路をストレート孔である貫通孔以外に有さない非多孔質のフィルムであるとともに、通気経路となる当該貫通孔のサイズおよび形状の均一性がより高く、さらに後述の製造方法における製造条件により貫通孔5の形状、開口径および上記比a/bを変化させることができる。このため、特許文献1の延伸多孔質膜に比べて、防水通音膜1の通音性および防水性の制御の自由度は高く、例えば、通音性および防水性を高いレベルで両立させることができる。
一方、一定の断面形状で樹脂フィルムを貫通する貫通孔を有する特許文献2の防水通音膜に比べて、防水通音膜1では、貫通孔5の断面7の形状の変化と、高分子フィルム2の各主面4a,4bにおける開口8a,8bの径の相違とが、防水通音膜1の通音性および防水性の制御の自由度を向上させ、例えば、通音性および防水性を高いレベルで両立させることができる。より具体的かつ典型的な例として、開口径が相対的に小さい開口8aを有する主面4aからの水の浸入を防ぐ防水性の方が、開口径が相対的に大きい開口8bを有する主面4bからの水の浸入を防ぐ防水性よりも大きく、主面4bからの通音性の方が主面4aの通音性よりも良好である。すなわち、防水通音膜1は、その防水性および通音性について主面間(表裏間)に異方性を有する膜であり、このような異方性が防水通音膜としての通音性および防水性の制御の自由度の高さに寄与している。また、後述の製造方法における製造条件によってこのような貫通孔5の形状、開口径および上記比a/bを変化させることができることも、この自由度の高さを強める方向に働く。
図1に示すように、貫通孔5は、中心軸6が延びる方向(貫通孔5が延びる方向)に断面7の形状が変化する、防水通音膜1の膜厚方向に非対称な形状を有する貫通孔である。
貫通孔5の形状は、中心軸6が直線状に延びるストレート孔であり、中心軸6が延びる方向に垂直な断面7の面積が高分子フィルム2の一方の主面4aから他方の主面4bに向けて増加する限り、限定されない。断面7の面積は、主面4aから主面4bに向けて連続的に増加しても、段階的に増加しても(すなわち、断面7の面積が一定の領域が存在しても)よい。断面7の面積は、図1に示す例のように、主面4aから主面4bに向けて連続的に増加することが好ましく(貫通孔5は、断面7の面積が一方の主面4aから他方の主面4bまで連続的に増加する形状を有することが好ましく)、その増加率がほぼ一定または一定であることがより好ましい。後述の製造方法によれば、断面7の面積が主面4aから主面4bに向けて連続的に増加する貫通孔5を有する高分子フィルム2を備えた防水通音膜1、および、さらに当該面積の増加率がほぼ一定または一定である防水通音膜1を形成できる。
貫通孔5の断面7の形状は特に限定されず、例えば、円または楕円である。このとき、断面7の形状は厳密な円または楕円である必要はなく、例えば、後述の製造方法で実施する化学エッチングのムラに伴う多少の形状の乱れは許容しうる。貫通孔5は、断面7の面積が主面4aから主面4bまで連続的に、かつほぼ一定または一定の増加率で増加するとともに、円または楕円である断面7の形状を有していてもよく、このとき貫通孔5の形状は、中心軸6を中心線とする円錐もしくは楕円錐またはこれらの一部となる。後述の製造方法によれば、断面7の形状が円または楕円である貫通孔5を有する高分子フィルム2を備えた防水通音膜1を形成できる。
貫通孔5における開口8aの径(開口径a)と開口8bの径(開口径b)との比a/bは、例えば80%以下であり、通音性および防水性の制御の自由度をより高くできることから、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。比a/bの下限は特に限定されず、例えば10%である。
相対的に小さな開口である開口8aの径(開口径a)は12.0μm以下である。開口径aが12.0μmを超えると、防水通音膜としての十分な防水性が確保されない。通音性および防水性の制御の自由度をより高くできる、より具体的には、防水性および通音性をより高いレベルで両立できるとともに、防水通音膜1の有効面積を減少させた場合にも良好な通音性を確保できることから、貫通孔aは1.0μm以上であることが好ましく、すなわち開口径aは1.0μm以上12.0μm以下が好ましい。開口径aが過度に小さくなると、特に防水通音膜1の有効面積を減少させた場合に、十分な通音性が確保できない可能性が生じる。開口径aは、2.0μm以上10.0μm以下がより好ましく、3.0μm以上8.0μm以下がさらに好ましい。
一方、相対的に大きな開口である開口8bの径(開口径b)は、開口径aよりも大きい限り限定されない。開口径bは、4.0μm以上20.0μm以下が好ましく、5.0μm以上15.0μm以下がより好ましく、6.0μm以上13.0μm以下がより好ましい。開口径bがこれらの範囲にある場合、通音性および防水性の制御の自由度をより高くできる、より具体的には、防水性および通音性をより高いレベルで両立できるとともに、防水通音膜1の有効面積を減少させた場合にも良好な通音性を確保できる。
貫通孔5について、開口8a,8bの形状を円とみなしたときの当該円の直径、換言すれば、開口8a,8bの断面積(開口面積)と同一の面積を有する円の直径を、当該開口8a,8bの開口径とする。高分子フィルム2の各主面における貫通孔5の開口径は、当該主面に存在する全ての開口で一致している必要はないが、高分子フィルム2の有効部分(防水通音膜1として使用可能な部分)では実質的に同じ値とみなすことができる程度(例えば、標準偏差が平均値の10%以下)に一致していることが好ましい。後述の製造方法によれば、このような各主面での開口径が揃った防水通音膜1を形成できる。
なお、高分子フィルム2の主面4a,4bに垂直な方向から傾いた方向に延びる貫通孔5の開口形状は楕円となりうる。しかし、このような場合においても、フィルム2内における貫通孔5の断面7の形状は円とみなすことができ、この円の直径は、開口形状である楕円の最小径と等しくなる。このため、上記傾いた方向に伸びる貫通孔5であって開口の形状が楕円であるものについては、当該最小径を貫通孔の開口径とすることができる。
高分子フィルム2における貫通孔5の密度(孔密度)は特に限定されず、例えば、1×103個/cm2以上1×109個/cm2以下である。孔密度がこの範囲において、防水通音膜1として好ましい範囲で通音性および防水性の制御をすることが容易となる。孔密度は、1×105個/cm2以上1×108個/cm2以下がより好ましい。孔密度は、高分子フィルム2の全体にわたって一定である必要はないが、高分子フィルム2の有効部分では、最大の孔密度が最小の孔密度の1.5倍以下となる程度に一定であることが好ましい。
高分子フィルム2の主面4aにおける開口8aの開口率(主面の面積に対する開口面積の割合)は、50%以下が好ましく、10%以上45%以下が好ましく、20%以上40%以下がより好ましい。開口率がこれらの範囲において、防水通音膜1として好ましい範囲で通音性および防水性の制御をすることが容易となる。また、主面4aにおける開口8aの開口率および開口径aをこれら好ましい範囲にするとともに、防水通音膜1の通気度を上記範囲とすることにより、防水通音膜1の有効面積を減少させた場合にもより良好な通音性(防水通音膜を伝達する音の特性)を確保できる。なお、延伸により生じた無数の細孔の分散構造を有する延伸多孔質膜では、このような低い気孔率を有する防水通音膜とすることができない。
防水通音膜1は、JIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数(以下、単に「フラジール数」)で示して、2.0cm3/(cm2・秒)以上80cm3/(cm2・秒)以下の通気度を、その主面4bから主面4aへの厚さ方向の通気度として有する。撥液層3が当該通気度にほぼ影響を与えないことを考慮すると、高分子フィルム2の主面4bから4aへの通気度は、フラジール数で示して2.0cm3/(cm2・秒)以上80cm3/(cm2・秒)以下でありうる。通音性および防水性の制御の自由度が高い防水通音膜1とするためには、貫通孔5の開口径aが12.0μm以下であることに併せて、主面4bから4aへの通気度がこの範囲にあることが必要である。フラジール数で示した通気度が2.0cm3/(cm2・秒)未満になると、防水通音膜の防水性および通音性の制御の自由度が低下し、特に防水通音膜の有効面積を減少させた場合の通音性の確保が難しくなる。当該通気度が80cm3/(cm2・秒)を超えると、防水通音膜の開口率にもよるが、外部から水が浸入する危険性が増す。主面4bから4aへの通気度は、フラジール数で示して、5.0cm3/(cm2・秒)以上60cm3/(cm2・秒)以下が好ましく、10cm3/(cm2・秒)以上50cm3/(cm2・秒)以下がより好ましい。
図1に示す防水通音膜1において貫通孔5の中心軸6は高分子フィルム2の主面4a,4bに垂直な方向に延びているが、貫通孔5の中心軸6の延びる方向は、主面4a,4bに垂直な方向から傾いていてもよい。すなわち、防水通音膜1は、主面4a,4bに垂直な方向から傾いた方向に延びる貫通孔5を有する高分子フィルム2から構成されていてもよい。このような防水通音膜1の例を図2に示す。なお、図2では撥液層3の図示は省略する(図3,6も同様である)。
防水通音膜1では、中心軸6の延びる方向が異なる貫通孔5が混在していてもよい。より具体的には、例えば、高分子フィルム2において、主面4a,4bに垂直な方向に中心軸6が延びる貫通孔5と、当該方向から傾いた方向に中心軸6が延びる貫通孔5とが混在していてもよい。また例えば、高分子フィルム2が、当該フィルム2の主面4a,4bに垂直な方向から傾いた方向に中心軸6が伸びる貫通孔5を有し、当該傾いて延びる方向が異なる貫通孔5が高分子フィルム2に混在していてもよい。後者の例を図3に示す。
図3に示す防水通音膜1では、主面4a,4bに垂直な方向から中心軸6が傾いて延びる方向が異なる貫通孔5a〜5gが高分子フィルム2に混在している。換言すれば、図3の防水通音膜1における貫通孔5は、高分子フィルム2の主面4a,4bに垂直な方向に対して傾いた方向に延びており(高分子フィルム2を貫通しており)、延びる方向が互いに異なる貫通孔5の組み合わせがある。高分子フィルム2には、延びる方向が同一の貫通孔5の組み合わせがあってもよい。図3に示す例では、例えば、貫通孔5a,5bおよび5cの延びる方向は互いに異なっており、貫通孔5aおよび5eの延びる方向は同一である。以下、本明細書において「組み合わせ」を単に「組」ともいう。「組」は、1の貫通孔と1の貫通孔との関係(ペア(対))に限られず、1または2以上の貫通孔同士の関係を意味する。同じ特徴を有する貫通孔の組があるということは、当該特徴を有する貫通孔が複数存在することを意味する。
図3に示すような、傾いて延びる方向が異なる貫通孔5が混在する高分子フィルム2から構成される防水通音膜1では、その傾く程度、およびある方向に伸びる貫通孔5の割合を変化させることができるため、防水通音膜1としての通音性および防水性の制御の自由度がより高くなる。
図2,3に示す貫通孔5について、その傾いて延びる方向D1が高分子フィルム2の主面に垂直な方向D2に対して成す角度θ1は45°以下が好ましく、30°以下がより好ましい。角度θ1がこれらの範囲にあるときに、防水通音膜1としての通音性および防水性の両立できるレベルがより高くなる。角度θ1の下限は特に限定されないが、例えば、10°以上であり、20°以上が好ましい。角度θ1が過度に大きくなると、防水通音膜1の機械的強度が弱くなる傾向がある。図3に示す貫通孔5では、角度θ1が互いに異なる組が存在している。
図3に示すような、傾いて延びる方向が異なる貫通孔5が混在する高分子フィルム2から構成される防水通音膜1において、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに(貫通孔5が延びる方向を当該主面に投影したときに)、貫通孔5が延びる方向が互いに平行であってもよいが、当該延びる方向が互いに異なる組を高分子フィルム2が有する(当該延びる方向が互いに異なる貫通孔5が高分子フィルム2に存在する)ことが好ましい。後者の場合、防水通音膜1としての通音性および防水性を両立できるレベルがより高くなる。
図4に、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに、貫通孔5が延びる方向が互いに平行である例を示す。図4に示す例では、3つの貫通孔5(5h,5i,5j)が見えているが、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに各貫通孔5が延びる方向(紙面手前側の主面における貫通孔5の開口8aから、反対側の主面における貫通孔5の開口8bに向かう方向)D3,D4,D5は互いに平行である(後述のθ2が0°である)。ただし、各貫通孔5h,5i,5jの角度θ1は互いに異なり、貫通孔5jの角度θ1が最も小さく、貫通孔5hの角度θ1が最も大きい。このため、各貫通孔5h,5i,5jが延びる方向は立体的に異なっている。
図5に、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに、貫通孔5が延びる方向が互いに異なっている例を示す。図5に示す例では、3つの貫通孔5(5k,5l,5m)が見えているが、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに各貫通孔5が延びる方向D6,D7,D8は互いに異なる。ここで、貫通孔5kと5lとは、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに90°未満の角度θ2を成して、当該主面から互いに異なる方向に延びている。一方、貫通孔5kと5mとは、高分子フィルム2の主面に垂直な方向から見たときに90°以上の角度θ2を成して、当該主面から互いに異なる方向に延びている。高分子フィルム2は、後者のように、当該フィルムの主面に垂直な方向から見たときに90°以上の角度θ2を成して当該主面から互いに異なる方向に延びる貫通孔5の組を有することが好ましい。換言すれば、高分子フィルム2は、当該フィルムの主面に垂直な方向から見たときに、当該主面から一定の方向D6に延びる貫通孔5kと、当該一定の方向D6に対して90°以上の角度θ2を成す方向D8に当該主面から延びる貫通孔5mとの組を有することが好ましい。このとき、防水通音膜1としての通音性および防水性を両立できるレベルがさらに高くなる。角度θ2は90°以上180°以下が好ましく、すなわち180°であってもよい。
図3に示すような、傾いて延びる方向が異なる貫通孔5が混在する高分子フィルム2から構成される防水通音膜1において、2以上の貫通孔5が高分子フィルム2内で互いに交差していてもよい。すなわち、高分子フィルム2は、当該フィルム2内で互いに交差する貫通孔5の組を有していてもよい。このとき、防水通音膜1としての通音性および防水性を両立できるレベルがさらに高くなる。このような例を図6に示す。図6に示す例では、貫通孔5pと5qとが高分子フィルム2内で互いに交差している。
高分子フィルム2における(防水通音膜1における)貫通孔5の延びる方向(貫通孔5の中心軸6が延びる方向)は、例えば、当該フィルムの主面および断面に対して走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行うことで確認できる。
高分子フィルム2には、中心軸が延びる方向に垂直な断面の形状が当該フィルム2の厚さ方向に一定である、ストレート孔である貫通孔が存在していてもよい。
防水通音膜1は撥液処理されていてもよい。撥液処理されている防水通音膜1では、高分子フィルム2の少なくとも一部の表面に撥液層3が形成されている。図1に示す例では、撥液層3が高分子フィルム2の双方の主面4a,4b上と貫通孔3の表面とに形成されている。撥液層3は、高分子フィルム2の一方の主面上のみに形成されていてもよいし、一方の主面上と貫通孔3の表面とのみに形成されていてもよい。相対的に小さい径の開口8aを有する主面4aに撥液層3が形成されていることが好ましい。
撥液層3は、撥水性を有する層であり、撥油性を併せて有することが好ましい。また、撥液層3は、高分子フィルム2の貫通孔5と対応する位置に開口を有する。
撥液層3は、例えば、撥水剤または疎水性の撥油剤を希釈剤で希釈して調製した処理液を、高分子フィルム2上に薄く塗布して乾燥させることにより形成できる。撥水剤および疎水性の撥油剤は、例えば、パーフルオロアルキルアクリレート、パーフルオロアルキルメタクリレートのようなフッ素化合物である。撥液層3の厚さは、貫通孔5の径の1/2未満が好ましい。
高分子フィルム2上に処理液を薄く塗布して撥液層3を形成する場合、貫通孔5の径にもよるが、当該貫通孔の表面(内周面)も、当該フィルム2の主面上と連続して撥液層3により被覆することが可能である(図1に示す例では、このようになっている)。
高分子フィルム2の厚さは、例えば、5μm以上100μm以下であり、15μm以上50μm以下が好ましい。
高分子フィルム2を構成する材料は、例えば、後述の製造方法において、非多孔質の高分子フィルムである原フィルムに貫通孔5を形成できる材料である。高分子フィルム2は、例えば、アルカリ性溶液、酸性溶液、または酸化剤、有機溶剤および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を添加したアルカリ性溶液もしくは酸性溶液により分解する樹脂から構成される。この場合、後述の製造方法におけるイオンビーム照射および化学エッチングによる原フィルムへの貫通孔5の形成がより容易となる。なお、これらの溶液は、典型的なエッチング処理液である。別の側面から見ると、高分子フィルム2は、例えば、加水分解または酸化分解によるエッチング可能な樹脂から構成される。原フィルムには、市販のフィルムを使用することができる。
高分子フィルム2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成される。
防水通音膜1は、2層以上の高分子フィルム2を備えていてもよい。このような防水通音膜1は、例えば、2層以上の原フィルムを有する積層体にイオンビーム照射および化学エッチングして形成できる。
防水通音膜1は、例えば、電子機器の筐体の開口を塞ぐように配置されて、当該開口から筐体の内部に水が浸入することを防ぐとともに、筐体の外部と内部との間で音を伝達する。より具体的な例として、防水通音膜1は、電子機器がスピーカーなどの発音部および/またはマイクロフォンなどの受音部といった音響部を有しており、当該音響部に音を伝達できる開口(開口部)が筐体に設けられている場合に、当該開口(通音口)を塞ぐように配置されて、当該開口から電子機器の内部に水が浸入することを防ぐとともに、電子機器の外部と音響部との間で音を伝達する膜である。
防水通音膜1は、JIS L1092の耐水度試験B法(高水圧法)の規定に準拠して測定した耐水圧が3kPa以上であることが好ましく、5kPa以上であることがより好ましく、10kPa以上、さらには15kPa以上であることが好ましい。なお、上記耐水圧10kPaは水深1mにおける水圧に耐えられることを意味しており、この場合、JIS C0920に定められた「水に対する保護等級7(IPX7)」に相当する防水性が確保される。IPX7相当の電子機器は、誤って水中に落とされた場合にも、所定の水深および時間内であれば、機器内部への浸水を避けることができる。また、上記耐水圧が5kPa程度であると、JIS C0920に定められた「水に対する保護等級4(IPX4)」に相当する防水性が確保されることが経験的にわかっている。IPX4も、近年、電子機器において求められる防水性の1つである。防水通音膜1の上記耐水圧が5kPa以上または10kPa以上の場合、IPX4またはIPX7相当の防水性と、高い通音性とを両立させることができ、例えば、音響部の開口のスペースの制約が少なく、小型化および/または薄型化が可能など、デザインおよび設計の自由度が高い電子機器が得られる。
防水通音膜1は、当該膜1を構成する高分子フィルム2の双方の主面4a,4bにおける貫通孔5の開口8a,8bの径が異なるため、高分子フィルム2の一方の主面4a側から他方の主面4b側への防水性、例えば上記耐水圧、と、他方の主面4b側から一方の主面4a側への防水性とが異なっている。より具体的には、貫通孔5の開口径が相対的に小さな主面4a側からの防水性が、当該開口径が相対的に大きな主面4b側からの防水性に比べて大きい。貫通孔5の開口径が相対的に小さな主面4a側からの防水性が、上記好ましい耐水圧であることが好ましい。また、主面4a側からの防水通音膜1の上記耐水圧と、主面4b側からの防水通音膜1の上記耐水圧との差は、5kPa以上が好ましく、10kPa以上がより好ましい。このような、主面4a,4bによる防水通音膜1の防水性の差の程度は、高分子フィルム2が有する貫通孔5の形状、より具体的には貫通孔5の開口径、および上記比a/bにより制御できる。また、防水通音膜1が2以上の高分子フィルム2を有する場合、各高分子フィルム2の構成、および当該2以上の高分子フィルム2の積層の状態(積層状態にある各高分子フィルム2の主面4a,4bが防水通音膜1のいずれの主面側を向いているかを含む)により制御できる。このような制御が可能であることも、防水通音膜1の防水性の制御の自由度が高いことに寄与している。
通音性に関して防水通音膜1では、その制御の自由度の高さから、例えば、周波数100Hz以上3kHz以下の音域における最大音圧損失を5dB以下、3dB以下、さらには1dB以下とすることができる。100Hz以上3kHz以下の音域は、人間が通常の発声、会話に使用している音域であるとともに、音楽などの再生時にも、最も敏感に感じとることができる音域に相当する。この音域における音圧損失が小さいことは、防水通音膜1を備える電子機器の市場における訴求力を向上させる。なお、100Hz以上3kHz以下の音域における防水通音膜の最大音圧損失は、通常、2.5kHzから3kHzの高音域において測定される。また、例えば、人の音声域の中央値と考えられる周波数1kHzにおける音圧損失を5dB以下、3dB以下、さらには1dB以下とすることができる。
また、防水通音膜1では、例えば貫通孔5の選択によって、その有効面積を減少させた場合においても、通音性を確保しうる。例えば、防水通音膜1の有効面積は4.9mm2以下であってもよい。有効面積を小さくしうるという有利な特徴は、例えば、防水通音膜1を備える電子機器の小型化および/または薄型化などのデザインおよび設計の自由度の向上に寄与する。防水通音膜1の有効面積とは、筐体の開口を塞ぐように当該膜が配置された際に、実際に音が当該膜に入力し、当該膜を伝わって当該膜から音が出力される部分(有効部分)の面積であり、例えば、防水通音膜1を配置するために当該膜の周縁部に配置、形成された支持体や接着部などの面積分を含まない。有効面積は、典型的には、当該膜が配置された開口の面積、あるいは、防水通音膜の周縁部に支持体が配置された防水通音部材では、当該支持体の開口部の面積でありうる。
防水通音膜1では、例えば、有効面積が4.9mm2のとき(一例として、直径2.5mmの円形であるとき)に、100Hz以上3kHz以下の音域における最大音圧損失を5dB以下、3dB以下、さらには1dB以下とすることができる。
有効面積が小さくなればなるほど防水通音膜の通音性が低下し、例えば音圧損失が上昇する。防水通音膜1では、例えば、有効面積が0.8mm2(一例として、直径1mmの円形であるとき)またはそれ未満のときに、100Hz以上3kHz以下の音域における最大音圧損失を10dB以下、さらには5dB以下とすることができる。
もちろん、防水通音膜1の有効面積が小さい場合だけではなく大きい場合においても、より高いレベルでの通音性および防水性の両立を達成できるが、防水通音膜の有効面積が小さい場合、あるいは小さくせざるを得ない場合に、防水通音膜1は特に有利となる。
防水通音膜1は、当該膜1を構成する高分子フィルム2の双方の主面4a,4bにおける貫通孔5の開口8a,8bの径が異なるため、高分子フィルム2の一方の主面4a側から他方の主面4b側への通音性、例えば上記音圧損失の程度、と、他方の主面4b側から一方の主面4a側への通音性とが異なっている。より具体的には、貫通孔5の開口径が相対的に大きな他方の主面4b側からの通音性が、当該開口径が相対的に小さな一方の主面4a側からの通音性に比べて良好である。貫通孔5の開口径が相対的に大きな主面4b側からの通音性に関して、上記(最大)音圧損失の値が満たされることが好ましい。このような、主面4a,4bによる防水通音膜1の通音性の差の程度は、高分子フィルム2が有する貫通孔5の形状、より具体的には貫通孔5の開口径、および上記比a/bにより制御できる。このような制御が可能であることも、防水通音膜1の通音性の制御の自由度が高いことに寄与している。
防水通音膜1は、これらの好ましい音圧損失および耐水圧を同時に達成しうる。
防水通音膜1は、必要に応じて、高分子フィルム2および撥液層3以外の任意の部材および/または層を備えていてもよい。当該部材は、例えば、図7に示す通気性支持層9である。図7に示す防水通音膜1では、図1に示す防水通音膜1の高分子フィルム2における他方の主面4bに通気性支持層9が配置されている。通気性支持層9の配置により、防水通音膜1としての強度が向上し、また、取扱性も向上する。通気性支持層9は、高分子フィルム2の一方の主面4aに配置されていても、双方の主面4a,4bに配置されていてもよい。
通気性支持層9は、高分子フィルム2に比べて、厚さ方向の通気度が高い層である。通気性支持層9には、例えば、織布、不織布、ネット、メッシュを用いることができる。通気性支持層9を構成する材料は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、アラミド樹脂である。通気性支持層9が配置される高分子フィルム2の主面には、撥液層3が形成されていてもいなくてもよい。通気性支持層9の形状は、高分子フィルム2の形状と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、高分子フィルム2の周縁部のみに配置される形状を有する(具体的に、高分子フィルムが円形である場合には、その周縁部のみに配置されるリング状の)通気性支持層9でありうる。通気性支持層9は、例えば、高分子フィルム2との熱溶着、接着剤による接着などの手法により配置される。
防水通音膜1の面密度は、当該膜の強度、取扱性および通音性の観点から、5〜100g/m2が好ましく、10〜50g/m2がより好ましい。なお、特許文献1に開示されているような、延伸により生じた無数の細孔の分散構造を有する延伸多孔質膜では、通音性を確保する観点から、防水通音膜としての面密度をより小さくする必要がある。反面、面密度が小さい膜は、強度、ならびに生産歩留まりおよび取付精度を含む取扱性が低下するため、この点からも防水通音膜1は有利である。
防水通音膜1の厚さは、例えば、5〜100μmであり、15〜50μmが好ましい。
防水通音膜1には、着色処理が施されていてもよい。高分子フィルム2を構成する材料の種類によるが、着色処理を施していない防水通音膜1の色は、例えば、透明または白色である。このような防水通音膜1が筐体の開口を塞ぐように配置された場合、当該膜1が目立つことがある。目立つ膜はユーザーの好奇心を刺激し、針などによる突き刺しによって防水通音膜としての機能が損なわれることがある。防水通音膜1に着色処理が施されていると、例えば、筐体の色と同色または近似の色を有する膜1とすることにより、相対的にユーザーの注目を抑えることができる。また、電子機器などの筐体のデザイン上、着色された防水通音膜が求められることがあり、着色処理により、このようなデザインの要求に応えることができる。
着色処理は、例えば、高分子フィルム2を染色処理したり、高分子フィルム2に着色剤を含ませたりすることで実施できる。着色処理は、例えば、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光が吸収されるように実施してもよい。すなわち、防水通音膜1は、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する着色処理が施されていてもよい。そのためには、例えば、高分子フィルム2が、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する能力を有する着色剤を含む、あるいは波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する能力を有する染料によって染色されている。この場合、防水通音膜1を、青色、灰色、茶色、桃色、緑色、黄色などに着色できる。防水通音膜1は、黒色、灰色、茶色または桃色に着色処理されていてもよい。
防水通音膜1は様々な用途、例えば、防水通音部材、電子機器、電子機器用ケース、防水通音構造に使用できる。
貫通孔5を有する高分子フィルム2から構成される防水通音膜1の製造方法は特に限定されず、例えば、以下に説明する製造方法により製造できる。
[防水通音膜の製造方法]
以下の製造方法では、原フィルムに対するイオンビームの照射とその後の化学エッチングとにより、高分子フィルム2を形成する。イオンビーム照射および化学エッチングにより形成した高分子フィルム2は、そのまま防水通音膜1としてもよいし、撥液処理、着色処理あるいは通気性支持層9を積層する工程などのさらなる工程を経て防水通音膜1としてもよい。
イオンビーム照射およびその後の化学エッチングを用いる方法では、高分子フィルム2の貫通孔5の開口径を、それぞれの主面4aまたは4bにおいて、上述した好ましい程度にまで揃えることができる。
原フィルムは、イオンビーム照射および化学エッチング後に防水通音膜1として使用する領域において、その厚さ方向に通気可能である経路を有さない非多孔質の高分子フィルムである。原フィルムは、無孔のフィルムであってもよい。
原フィルムにイオンビームを照射すると、当該フィルムにおけるイオンが通過した部分において、高分子フィルムを構成するポリマー鎖にイオンとの衝突による損傷が生じる。損傷が生じたポリマー鎖は、イオンが衝突していない他の部分のポリマー鎖よりも化学エッチングされやすい。このため、イオンビームを照射した原フィルムを化学エッチングすることにより、イオンの衝突の軌跡に沿って延びる細孔(貫通孔)が形成された高分子フィルムが得られる。すなわち、貫通孔5の中心軸6の延びる方向は、イオンビーム照射時に原フィルムをイオンが通過した方向である。なお、原フィルムにおけるイオンが通過していない部分には、通常、細孔は形成されない。
このように本開示の製造方法において、原フィルムから高分子フィルム2を形成する方法は、イオンビームを原フィルムに照射する工程(I)と、イオンビーム照射後の原フィルムにおけるイオンが衝突した部分の少なくとも一部を化学エッチングして、イオンの衝突の軌跡(イオントラック)に沿って延びる貫通孔5を当該フィルムに形成する工程(II)と、を含む。そして工程(II)において、イオン照射後の原フィルムにおける一方の主面へのマスキング層の配置により、当該一方の主面からの上記部分のエッチングに比べて、イオン照射後の原フィルムにおける他方の主面からの上記部分のエッチングの程度が大きい化学エッチングを実施する。この化学エッチングでは、マスキング層が配置された上記一方の主面からのイオントラックのエッチングに比べて、上記他方の主面からのイオントラックのエッチングの程度が大きくなる。このような非対称なエッチング、より具体的には、イオン照射後の原フィルムにおける一方の主面からと他方の主面からとの間で進行速度が異なるエッチング、を実施することにより、中心軸6が延びる方向に垂直な断面7の面積が高分子フィルム2の一方の主面から他方の主面に向けて増加する形状を有する貫通孔5を形成できる。なお、特許文献2では、イオンビーム照射後の原フィルムに対して、当該原フィルムの双方の主面から均等なエッチングが結果として進行しているため、貫通孔の断面形状が膜厚方向に一定であるフィルムが形成される。
以下、工程(I)および(II)をより具体的に説明する。
[工程(I)]
工程(I)では、イオンビームを原フィルムに照射する。イオンビームは、加速されたイオンにより構成される。イオンビームの照射により、当該ビーム中のイオンが衝突した原フィルムが形成される。
イオンビームを原フィルムに照射すると、図8に示すように、ビーム中のイオン21が原フィルム22に衝突し、衝突したイオン21は当該フィルム22の内部に軌跡23(イオントラック)を残す。被照射物である原フィルム22のサイズスケールで見ると、通常、イオン21はほぼ直線状に原フィルム22と衝突するため、直線状に延びた軌跡23が当該フィルム22に形成される。イオン21は、通常、原フィルム22を貫通する。
原フィルム22にイオンビームを照射する方法は限定されない。例えば、原フィルム22をチャンバーに収容し、チャンバー内の圧力を低くした後(例えば、照射するイオン21のエネルギーの減衰を抑制するために高真空雰囲気とした後)、ビームラインからイオン21を原フィルム22に照射する。チャンバー内に特定の気体を加えてもよいし、原フィルム22をチャンバーに収容するが当該チャンバー内の圧力を減圧せず、例えば大気圧でイオンビームの照射を実施してもよい。
帯状の原フィルム22が巻回されたロールを準備し、当該ロールから原フィルム22を送り出しながら、連続的に原フィルム22にイオンビームを照射してもよい。これにより、高分子フィルム2を効率的に形成できる。上述したチャンバー内に上記ロール(送出ロール)と、イオンビーム照射後の原フィルム22を巻き取る巻取ロールとを配置し、減圧、高真空などの任意の雰囲気としたチャンバー内において送出ロールから帯状の原フィルム22を送り出しながら連続的に当該フィルムにイオンビームを照射し、ビーム照射後の原フィルム22を巻取ロールに巻き取ってもよい。
原フィルム22を構成する樹脂は、高分子フィルム2を構成する樹脂と同じであり、例えば、PET、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種である。これらの樹脂から構成される原フィルム22は、イオン21が衝突した部分の化学エッチングがスムーズに進行しながらも、その他の部分の化学エッチングが進行し難い特徴を有しており、原フィルム22における軌跡23に対応する部分の化学エッチングの制御が容易となる。このため、このような原フィルム22の使用により、例えば、高分子フィルム2の貫通孔5の形状の制御がより容易となる。
原フィルム22は2種以上の樹脂から構成されていてもよく、工程(I)および(II)を経て高分子フィルム2が形成される限り、樹脂以外の材料を含んでいてもよい。当該材料は、例えば、光安定剤、酸化防止剤などの添加剤、樹脂原料に由来するオリゴマー成分、金属酸化物(例えば白色顔料:アルミナ、酸化チタンなど)である。
原フィルム22の厚さは、例えば5〜100μmである。工程(I)でのイオンビーム照射の前後によって、通常、原フィルム22の厚さは変化しない。
イオンビームを照射する原フィルム1は、例えば、無孔のフィルムである。この場合、工程(I)および(II)以外に当該フィルムに孔を設けるさらなる工程を実施しない限り、工程(I)および(II)により形成された貫通孔5以外の部分が無孔である高分子フィルム2を形成できる。当該さらなる工程を実施した場合、工程(I)および(II)により形成された貫通孔5と、当該さらなる工程により形成された孔とを有する高分子フィルム2が形成される。
原フィルム22に照射、衝突させるイオン21の種類は限定されないが、原フィルム22を構成する樹脂との化学的な反応が抑制されることから、ネオンより質量数が大きいイオン、具体的にはアルゴンイオン、クリプトンイオンおよびキセノンイオンから選ばれる少なくとも1種のイオンが好ましい。
イオン21のエネルギー(加速エネルギー)は、典型的には100〜1000MeVである。厚さ5〜100μm程度のポリエステルフィルムを原フィルム22として使用する場合、イオン種がアルゴンイオンのときのイオン21のエネルギーは100〜600MeVが好ましい。原フィルム22に照射するイオン21のエネルギーは、イオン種および原フィルム22を構成する樹脂の種類に応じて調整しうる。
原フィルム22に照射するイオン21のイオン源は限定されない。イオン源から放出されたイオン21は、例えば、イオン加速器により加速された後にビームラインを経て原フィルム22に照射される。イオン加速器は、例えばサイクロトロン、より具体的な例はAVFサイクロトロンである。
イオン21の経路となるビームラインの圧力は、ビームラインにおけるイオン21のエネルギー減衰を抑制する観点から、10-5〜10-3Pa程度の高真空が好ましい。イオン21を照射する原フィルム22が収容されるチャンバーの圧力が高真空に達していない場合は、イオン21を透過する隔壁によって、ビームラインとチャンバーとの圧力差を保持してもよい。隔壁は、例えば、チタン膜あるいはアルミニウム膜から構成される。
イオン21は、例えば、原フィルム22の主面に垂直な方向から当該フィルムに照射される。図8に示す例では、このような照射が行われている。この場合、軌跡23が原フィルム22の主面に垂直に延びるため、後の化学エッチングにより、主面に垂直な方向に中心軸6が延びる貫通孔5が形成された、図1に示すような高分子フィルム2が得られる。イオン21は、原フィルム22の主面に対して斜めの方向から当該フィルムに照射してもよい。この場合、後の化学エッチングにより、主面に垂直な方向から傾いた方向に中心軸6が延びる貫通孔5が形成された、図2に示すような高分子フィルム2が得られる。原フィルム22に対してイオン21を照射する方向は、公知の手段により制御できる。図2の角度θ1は、例えば、原フィルム22に対するイオンビームの入射角により制御できる。
イオン21は、例えば、複数のイオン21の飛跡が互いに平行となるように原フィルム22に照射される。図8に示す例では、このような照射が行われている。この場合、後の化学エッチングにより、互いに平行に延びる複数の貫通孔5が形成された、図1,2に示すような高分子フィルム2が得られる。
イオン21は、複数のイオン21の飛跡が互いに非平行(例えば互いにランダム)となるように原フィルム22に照射してもよい。これにより、例えば、図3〜6に示すような高分子フィルム2が形成される。より具体的には、図3〜6に示すような高分子フィルム2を形成するために、例えば、イオンビームを原フィルム22の主面に垂直な方向から傾けて照射するとともに、連続的あるいは段階的に当該傾ける方向を変化させてもよい。なお、イオンビームは、複数のイオンが互いに平行に飛翔するビームであるため、同じ方向に延びる貫通孔5の組が高分子フィルム2には通常存在する(同じ方向に延びる複数の貫通孔5が高分子フィルム2には通常存在する)ことになる。
連続的または段階的に当該傾ける方向を変化させる方法の例を図9に示す。図9に示す例では、帯状の原フィルム22を送出ロール31から送り出して所定の曲率を有する照射ロール32を通過させ、当該ロール32を通過する間にイオンビーム33を照射し、照射後の原フィルム22を巻取ロール34に巻き取る。このとき、イオンビーム33中のイオン21は次々と互いに平行に飛翔してくるため、照射ロール32上を原フィルム22が移動するとともに原フィルム22の主面に対してイオンビームが衝突する角度(入射角θ1)が変化することになる。そして、イオンビーム33を連続的に照射すれば上記傾ける方向は連続的に変化し、イオンビーム33を断続的に照射すれば上記傾ける方向は段階的に変化する。これは、イオンビームの照射タイミングによる制御ともいえる。また、イオンビーム33の断面形状および原フィルム22の照射面に対するイオンビーム33のビームラインの断面積によっても、原フィルム22に形成される軌跡23の状態(例えば角度θ1)を制御できる。
高分子フィルム2の孔密度は、原フィルム22へのイオンビームの照射条件(イオン種、イオンのエネルギー、イオンの衝突密度(照射密度)など)により制御できる。
イオン21は、2以上のビームラインから原フィルム22に照射してもよい。
工程(I)は、原フィルム22の主面、例えば上記一方の主面、にマスキング層が配置された状態で実施してもよい。
[工程(II)]
工程(II)では、工程(I)においてイオンビームを照射した後の原フィルム22におけるイオン21が衝突した部分の少なくとも一部を化学エッチングして、イオン21の衝突の軌跡23に沿って延びる貫通孔5を当該フィルムに形成する。このようにして得た高分子フィルム2における貫通孔5以外の部分は、フィルムの状態を変化させる工程をさらに実施しない限り、基本的に、イオンビーム照射前の原フィルム22と同じである。
また、工程(II)では、イオンビーム照射後の原フィルム22の一方の主面にマスキング層を配置した状態で上記化学エッチングを実施する。この化学エッチングでは、原フィルム22におけるイオン21が衝突した部分のエッチングについて、マスキング層を配置した上記一方の主面からのエッチングに比べて、他方の主面からのエッチングの程度が大きくなる。すなわち、工程(II)では、原フィルム22におけるイオン21が衝突した部分のエッチングについて、当該フィルムの双方の主面からのエッチングが非対称的に進行する化学エッチング(非対称エッチング)を実施する。なお、「エッチングの程度が大きい」とは、より具体的には、例えば、上記部分について単位時間あたりのエッチング量が大きいこと、すなわち上記部分についてエッチング速度が大きいことを意味する。
工程(II)では、原フィルム22の一方の主面への、原フィルム22におけるイオン21が衝突した部分に比べて化学エッチングされ難いマスキング層の配置により、当該一方の主面からの上記部分のエッチングを抑止しながら、原フィルム22の他方の主面からの上記部分のエッチングを進行させる化学エッチングを実施してもよい。このようなエッチングは、例えば、マスキング層の種類および厚さの選択、マスキング層の配置、エッチング条件の選択などにより、実施できる。
マスキング層の種類は特に限定されないが、原フィルム22におけるイオン21が衝突した部分に比べて化学エッチングされ難い材料から構成される層であることが好ましい。「エッチングされ難い」とは、より具体的には、例えば、単位時間あたりにエッチングされる量が小さいこと、すなわち、被エッチング速度が小さいことを意味する。化学エッチングされ難いか否かは、工程(II)において実際に実施する非対称エッチングの条件(エッチング処理液の種類、エッチング温度、エッチング時間など)に基づいて判断できる。後述のように工程(II)において複数回の非対称エッチングを、マスキング層の種類および/または配置面を変えながら実施する場合、各エッチングの条件に基づいてそれぞれのエッチングについて判断すればよい。
マスキング層は、原フィルム22におけるイオン21が衝突していない部分との対比では、当該部分よりも化学エッチングされ易くても、され難くても、いずれでもよいが、され難いことが好ましい。され難い場合、例えば、非対称エッチングの実施に必要なマスキング層の厚さを薄くすることができる。
工程(I)において、マスキング層を配置した原フィルム22にイオンビームを照射した場合、当該マスキング層にもイオントラックが形成される。これを考慮すると、マスキング層を構成する材料は、イオンビームの照射によってもそのポリマー鎖が損傷を受け難い材料であることが好ましい。
マスキング層は、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールおよび金属箔から選ばれる少なくとも1種から構成される。これらの材料は、化学エッチングされ難いとともに、イオンビームの照射によっても損傷を受け難い。
マスキング層は、非対称エッチングを実施する領域に相当する、原フィルム22の一方の主面の少なくとも一部に配置すればよい。もちろん必要に応じて、原フィルム22の一方の主面の全体に配置できる。
原フィルム22の主面にマスキング層を配置する方法は、非対称エッチングを実施する間、マスキング層が当該主面から剥離しない限り限定されない。マスキング層は、例えば、粘着剤により原フィルム22の主面に配置される。すなわち工程(II)において、マスキング層が粘着剤によって上記一方の主面に貼り合わされた状態で、上記化学エッチングを(非対称エッチングを)実施してもよい。粘着剤によるマスキング層の配置は、比較的容易に行うことができる。また、粘着剤の種類を選択することにより、非対称エッチング後の原フィルム22からのマスキング層の剥離が容易となる。
工程(II)では、非対称エッチングを複数回実施してもよい。また、少なくとも一回の非対称エッチングを実施する限り、原フィルム22の双方の主面から均等に軌跡23のエッチングを進行させる対称エッチングを実施してもよい。例えば、エッチングの途中でマスキング層を高分子フィルム1から剥離することにより、非対称エッチングから対称エッチングの進行に切り替えてもよい。あるいは、対称エッチングを実施した後にマスキング層を配置して、非対称エッチングを実施してもよい。
非対称エッチングを複数回実施する場合、各回のエッチングにおいてエッチング条件を変化させてもよい。
図10に、工程(II)の例を示す。
図10に示す例では、イオンビーム照射後の原フィルム22の一方の主面にマスキング層41を配置し(図10(a))、この状態で化学エッチングを実施している。これにより、マスキング層が配置されていない他方の面から、イオンビームの照射により形成された軌跡23に沿ってエッチングが進行し、当該軌跡23に沿って延びる貫通孔5が形成される(図10(b))。図10(b)に示すように、マスキング層41が配置されている主面からはエッチングが進行せず、細孔が形成されない。形成された貫通孔5の断面は、円錐状の形状を有しており、貫通孔5の先端は、原フィルム22の上記一方の主面に開口している。そして、貫通孔5の上記一方の主面における開口径と、他方の主面における開口径とは互いに異なっており、エッチングの基点となった上記他方の主面における開口径の方が大きい。すなわち、図10に示す例では、円錐状の断面形状を有する貫通孔であって、その開口径がフィルムの双方の主面間で異なる貫通孔5が形成された高分子フィルム2を得ている(図10(c))。上記一方の主面における貫通孔5の開口径aと、上記他方の主面における貫通孔5の開口径bとの比a/bは、例えば80%以下であり、工程(II)で実施するエッチングの条件により、この比をさらに小さい値とすることもできる。
このように工程(II)において、フィルムの膜厚方向に孔径が変化している貫通孔5を形成できる。貫通孔5の中心軸6の延びる方向は、軌跡23の延びる方向である。
図10に示す例では既に一回の非対称エッチングを実施しているため、図10(c)に示すマスキング層41が剥離された状態からさらに化学エッチングを進行させてもよい。これにより、例えば、貫通孔5の開口径、あるいは高分子フィルム2の一方の主面における貫通孔5の開口径aと、他方の主面における貫通孔5の開口径bとの比a/bを制御できる。
貫通孔5の開口径は、例えば、エッチング温度、エッチング時間、エッチング処理液の組成などのエッチング条件によっても制御できる。
貫通孔5を有する高分子フィルム2は、従来の方法では形成できない。
化学エッチングに使用するエッチング処理液は特に限定されない。エッチング処理液は、例えば、アルカリ性溶液、酸性溶液、または酸化剤、有機溶剤および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を添加したアルカリ性溶液もしくは酸性溶液である。アルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような塩基を含む溶液(典型的には水溶液)である。酸性溶液は、例えば、硝酸、硫酸のような酸を含む溶液(典型的には水溶液)である。酸化剤は、例えば、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムである。有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、アミノアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドである。界面活性剤は、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩である。
マスキング層41を用いた非対称エッチングとすることを除き、具体的なエッチングの手法は公知の手法に従えばよい。例えば、エッチング処理液に、マスキング層41を配置したビーム照射後の原フィルム22を所定の温度かつ所定の時間、浸漬すればよい。
エッチングの温度は、例えば40〜150℃であり、エッチングの時間は、例えば10秒〜60分である。
工程(II)の後、マスキング層41は、必要に応じてその一部または全部を高分子フィルム2に残留させることができる。残留させたマスキング層41は、例えば、高分子フィルム2における上記一方の主面(マスキング層を配置した主面)と上記他方の主面とを区別する目印として用いることができる。
高分子フィルム2の製造方法は、工程(I)、(II)以外の任意の工程を含んでいてもよい。
[防水通音部材]
本発明の防水通音部材の一例を、図11に示す。図11に示す防水通音部材11は、膜の主面に垂直な方向から見た形状が円形である防水通音膜1と、当該膜1の周縁部に接合されたリング状のシートである支持体51とを備える。防水通音膜1に支持体51が接合された形態により、防水通音膜1が補強されるとともに、その取扱性が向上する。また、支持体51が、筐体の開口など、防水通音部材11が配置される部分への取り付けしろとなるため、防水通音膜1の取り付け作業が容易となる。
支持体51の形状は限定されない。例えば、図12に示すように、膜の主面に垂直な方向から見た形状が矩形である防水通音膜1の周縁部に接合された、額縁状のシートである支持体51であってもよい。図11,12に示すように、支持体51の形状を防水通音膜1の周縁部の形状とすることによって、支持体51の配置による防水通音膜1の通音性の低下が抑制される。また、シート状の支持体51が、防水通音部材11の取扱性および筐体への配置性、特に筐体内への配置性、が向上する観点から、好ましい。
支持体51を構成する材料は、例えば、樹脂、金属およびこれらの複合材料である。樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;PET、ポリカーボネートなどのポリエステル;ポリイミドあるいはこれらの複合材である。金属は、例えばステンレスやアルミニウムのような耐蝕性に優れる金属である。
支持体51の厚さは、例えば5〜500μmであり、25〜200μmが好ましい。また、取り付けしろとしての機能に着目すると、リング幅(額縁幅:外形と内径との差)は0.5〜2mm程度が適当である。支持体51には、上記樹脂からなる発泡体を使用してもよい。
防水通音膜1と支持体51との接合方法は特に限定されず、例えば、加熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着、両面テープによる接着などの方法を採用できる。
防水通音部材11における防水通音膜1の向き(防水通音膜1が備える高分子フィルム2の主面の向き)は限定されない。例えば、防水通音部材11が筐体の開口に固定されたときに、水が侵入する可能性がある当該筐体の外部側に高分子フィルム2の主面4a(貫通孔5の開口径が相対的に小さな主面4a)が向くように、防水通音膜1と支持体51とが接合されていてもよい。この場合、より高い筐体の防水性と、筐体の内部からのより高い通音性とを確保できる。
防水通音部材11は、2以上の防水通音膜1および/または2以上の支持体51を備えていてもよい。
防水通音部材11は、従来の防水通音部材と同様の用途に使用することができる。
[電子機器]
本発明の電子機器の一例を図13Aに示す。図13Aに示す電子機器は、携帯電話の一種であるスマートフォンである。スマートフォン65の筐体61は、発音部および受音部の一種であるトランスデューサ―に近接して設けられた開口62aと、受音部の一種であるマイクに近接して設けられた開口62bと、発音部の一種であるスピーカーに近接して設けられた開口62cとを有する。各開口62a〜62cを介して、スマートフォン65の外部と、筐体61内に収容された各音響部(トランスデューサ―、マイクおよびスピーカー)との間で音が伝達される。図13Bに示すように、スマートフォン65では、これらの開口62a〜62cを塞ぐように、防水通音膜1が内側から筐体61に取り付けられている。これにより、スマートフォン65の外部と音響部との間で音を伝達できるとともに、外部から開口を介して筐体61内に水が浸入することを防ぐことができる。また、通音性および防水性の制御の自由度が高い防水通音膜1により、スマートフォン65の小型化および/または薄型化など、設計およびデザインの自由度の向上を達成できる。
本発明の電子機器65において防水通音膜1を配置する場所および方法は、防水通音膜1によって当該機器65の筐体61に設けられた開口(開口部)が塞がれる限り、限定されない。図13Bに示す例では、防水通音膜1は、支持体51を介して(すなわち、防水通音部材として)筐体61に接合されている。電子機器65内への防水通音膜1の配置には、両面テープを用いた貼付、熱溶着、高周波溶着、超音波溶着などの手法を採用できる。
電子機器65における防水通音膜1の向き(防水通音膜1が備える高分子フィルム2の主面の向き)は限定されない。例えば、電子機器65の筐体61の外部側に高分子フィルム2の主面4a(貫通孔5の開口径が相対的に小さな主面4a)が向くように、防水通音膜1が配置されていてもよい。この場合、より高い防水性と、筐体81の内部からのより高い通音性とを確保できる。
筐体61は、樹脂、金属、ガラスおよびこれらの複合材料により構成される。スマートフォンおよびタブレットコンピューターのように、電子機器65の表示部が筐体61の一部を構成していてもよい。
本発明の電子機器は、スマートフォン65に限られない。音響部を備え、外部と音響部との間で音を伝達する開口が筐体に設けられ、当該開口を介した水の内部への浸入を防ぐことが必要であり、防水通音膜1を当該開口を塞ぐように配置できる全ての種類の電子機器がこれに該当する。本発明の電子機器は、例えば、フィーチャーフォンおよびスマートフォンなどの携帯電話、タブレットコンピューター、ウェアラブルコンピューター、PDA、ゲーム機器、ノート型コンピューターなどのモバイルコンピューター、電子手帳、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電子ブックリーダーである。
[電子機器用ケース]
本発明の電子機器用ケースの一例を図14Aに示す。図14Aに示すケース75には、当該ケース75に収容する電子機器の音響部と、ケース75の外部との間で音を伝達する開口71a〜71cが設けられている。図14Aに示すケース75は、図13Aに示すスマートフォン65とは異なるタイプのスマートフォンのケースであり、開口71aはスマートフォンの受話部に音を伝達するために、開口71bはスマートフォンの送話部に音を伝達するために、開口71cはスマートフォンのスピーカーから音を外部に伝達するために、それぞれ設けられている。図14Bに示すように、ケース75は、さらに、開口71a(71b、71c)を塞ぐように配置された防水通音膜1を備えている。この防水通音膜1により、ケース75の内部72に収容した電子機器の音響部と外部との間で音が伝達されるととともに、外部から開口71a(71b、71c)を介したケース75の内部72、ひいては電子機器内への水の浸入を防ぐことができる。また、通音性および防水性の制御の自由度が高い防水通音膜1により、小型化および/または薄型化などが達成された設計およびデザインの自由度が高い電子機器に対応した電子機器用ケース75とすることができる。また、開口71a(71b、71c)の面積が小さい電子機器用ケース75とすることもでき、ケース75自体の設計およびデザインの自由度の向上を達成できる。
本発明の電子機器用ケース75において防水通音膜1を配置する方法は、当該膜1によって開口(開口部)71a(71b、71c)が塞がれる限り、限定されない。図14Bに示す例では、防水通音膜1は、支持体51を介して(すなわち、防水通音部材として)ケース75に、その内部72から接合されている。ケース75への防水通音膜1の配置には、両面テープを用いた貼付、熱溶着、高周波溶着、超音波溶着などの手法を採用できる。ケース75の外部から防水通音膜1を配置することも可能である。
電子機器用ケース75における防水通音膜1の向き(防水通音膜1が備える高分子フィルム2の主面の向き)は限定されない。例えば、ケース75の外部側に高分子フィルム2の主面4a(貫通孔5の開口径が相対的に小さな主面4a)が向くように、防水通音膜1が配置されていてもよい。この場合、より高い防水性と、筐体81の内部からのより高い通音性とを確保できる。
電子機器用ケース75は、樹脂、金属、ガラスおよびこれらの複合材料により構成される。電子機器用ケース75は、本発明の効果が得られる限り、任意の構成を有することができる。例えば、図14Aに示すケース75は、スマートフォン用のケースであり、内部に収容するスマートフォンのタッチパネルを外部から操作できるフィルム73を備える。
[防水通音構造]
本発明の防水通音構造の一例を図15に示す。図15に示す防水通音構造12は、内部83と外部との間で音を伝達する開口82が設けられた筐体81と、開口(開口部)82を塞ぐように配置された防水通音膜1とを備える。この防水通音膜1により、筐体81の外部と内部83との間で音を伝達させながら、外部から開口82を介して筐体81内に水が浸入することを防ぐことができる。図15に示す例では、支持体51を介して防水通音膜1が筐体81に接合されている。換言すれば、防水通音膜1と支持体51とを備える防水通音部材11が筐体81に接合されている。また、図15に示す例では、筐体81の内部83から防水通音膜1が筐体81に接合されているが、筐体81の外部から接合されていてもよい。
筐体81は、樹脂、金属、ガラスおよびこれらの複合材料により構成される。
防水通音膜1の配置には、両面テープを用いた貼付、熱溶着、高周波溶着、超音波溶着などの手法を採用できる。支持体51が両面テープであってもよい。
防水通音構造12における防水通音膜1の向き(防水通音膜1が備える高分子フィルム2の主面の向き)は限定されない。例えば、防水通音構造12を有する筐体81の外部側に高分子フィルム2の主面4a(貫通孔5の開口径が相対的に小さな主面4a)が向くように、防水通音膜1が配置されていてもよい。この場合、より高い防水性と、筐体81の内部からのより高い通音性とを確保できる。
防水通音構造12を有する部品、装置、機器、製品などは限定されない。
防水通音構造12は、従来の防水通音構造と同様、様々な用途に適用可能である。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
最初に、実施例および比較例で作製した高分子フィルムおよび防水通音膜の評価方法を説明する。
[貫通孔の開口径]
高分子フィルムの双方の主面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、得られたSEM像から任意に選択した10の貫通孔の開口径を各々の主面について当該像から求め、その平均値を高分子フィルムにおける貫通孔の開口径とした。
[開口率]
高分子フィルムの各主面における開口率は、当該主面をSEMにより観察して得たSEM像を画像解析して求めた。開口率は、主面における評価対象部分の面積に対する、当該部分に存在する貫通孔の開口の面積の合計の比(%)である。
[通気度]
防水通音膜の厚さ方向の通気度は、JIS L1096の規定(通気性測定A法:フラジール形法)に準拠して求めた。
[耐水圧]
防水通音膜の耐水圧は、JIS L1092の耐水度試験B法(高水圧法)の規定に準拠して求めた。ただし、この規定に示された試験片の面積では膜が著しく変形するため、ステンレスメッシュ(開口径2mm)を膜の加圧面の反対側に設置し、当該膜の変形をある程度抑制した状態で測定した。
[孔密度]
高分子フィルムの孔密度は、当該フィルムの双方の主面をSEMにより観察し、得られたSEM像にある貫通孔の数を目視にて数え、これを単位面積あたりの値に変換して求めた。
[撥油性]
防水通音膜の撥油性は、以下のように評価した。防水通音膜とコピー用紙(普通紙)とを、防水通音膜が上、コピー用紙が下になるように重ねて置き、スポイトを用いて防水通音膜にひまし油を1滴垂らした後、1分間放置した。その後、防水通音膜を取り除いてコピー用紙の状態を確認し、コピー用紙がひまし油で濡れている場合を防水通音膜の撥油性なし、濡れていない場合を撥油性有りとした。
[音響特性]
作製した防水通音膜の通音性として、音響特性(音圧損失)を以下のように評価した。
最初に、図16Aに示すように、携帯電話の筐体を模した模擬筐体91(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)を準備した。模擬筐体91には、スピーカーから出力した音を筐体の外部へと伝える開口となるスピーカー取付穴92(径が2.5mmの円形)と、スピーカーケーブルの導通孔93とが各々1箇所設けられている以外は開口がない。次に、径が5mmの円形である通音孔が形成されたウレタンスポンジ製の充填材94にスピーカー95(スター精密製、SCG-16A)を埋め込んで、筐体91の内部に収容した。スピーカー95のスピーカーケーブル96は導通孔93から筐体91の外部に導き出し、その後、導通孔93はパテで塞いだ。
次に、ポリエチレン系の発泡体からなる両面テープ97(日東電工製、No.57120B、厚さ0.2mm)、PETフィルム98(厚さ0.1mm)およびPETからなる両面テープ99(日東電工製、No.5603、厚さ0.03mm)を準備し、それぞれ、内径2.5mmおよび外径5.8mmのリング状と、内径1.0mmおよび外径5.8mmのリング状との2種類のリングに打ち抜き加工した。これとは別に、各実施例および比較例で作製した防水通音膜100を直径5.8mmの円形に打ち抜いた。次に、内径2.5mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜100、内径2.5mmのリング状の両面テープ99、および内径2.5mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材A(防水通音膜の有効面積が4.9mm2)を作製した(図16Bを参照)。これとは別に、内径1.0mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜100、内径1.0mmのリング状の両面テープ99、および内径1.0mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材B(防水通音膜の有効面積が0.8mm2)を作製した。
次に、作製した防水通音部材を、当該部材が備えるポリエチレン系発泡体の両面テープ97を用いて、模擬筐体91の外側に、開口92を防水通音膜100が完全に覆うように取り付けた。その際、防水通音膜100と両面テープ97との間、および両面テープ97と模擬筐体91との間に隙間ができないようにした。
次に、スピーカケーブル96とマイク(Knowles Acoustic製、Spm0405Hd4H-W8)とを音響評価装置(B&K製、Multi-analyzer System 3560-B-030)に接続し、模擬筐体91の開口92から21mm離れた位置にマイクを配置した。次に、評価方式としてSSR分析(試験信号20Hz〜10kHz、sweep)を選択、実行し、防水通音膜100の音響特性(THD、音圧損失)を評価した。音圧損失は、音響評価装置からスピーカー95に入力した信号と、マイクロフォンを介して検出された信号とから、自動的に求められる。これとは別に、防水通音膜を配置しない状態で、同様にしてブランクの音圧損失を求めておき、防水通音膜を配置した際の音圧損失からブランクの音圧損失を引いたものを、当該防水通音膜の特性である音圧損失(挿入損失)とした。挿入損失が小さいほど、防水通音膜を伝達される音の特性が確保されていると判断できる。これを、実施例および比較例で作製した防水通音膜について、当該膜の有効面積が異なる防水通音部材A,Bのそれぞれについて実施した。
(実施例1)
厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の市販のPETフィルム(it4ip製、Track etched membrane、厚さ50μm)を準備した。このフィルムは、無孔のPETフィルムにイオンビームを照射し、照射後のフィルムを化学エッチングして製造されたフィルムである。このフィルムの表面および断面をSEMにより観察したところ、(1)貫通孔が、0.25μmの径を有するとともに、その中心軸の延びる方向に垂直な断面の面積がフィルムの厚さ方向に変化しない(一定である)ストレート孔であること、(2)貫通孔が、フィルムの主面に対して垂直な方向に延びていること、(3)孔密度が2.0×106個/cm2であること、が確認された。
次に、準備したPETフィルムの一方の主面に、マスキング層としてポリエチレンフィルム(厚さ55μm)をアクリル系粘着剤により貼付した。これを80℃に保持したエッチング処理液(水酸化カリウム濃度20質量%の水溶液)に23分浸漬した。エッチング終了後、処理液からフィルムを取出し、RO水(逆浸透膜濾過水)に浸漬して洗浄した後、50℃の乾燥オーブンにて乾燥した。その後、マスキング層を剥離し、貫通孔5が形成された高分子フィルム2を得た。
実施例1で得られた高分子フィルムは、中心軸が延びる方向に垂直な断面の面積が一方の主面(マスキング面)から他方の主面(エッチング面)に向けて増加する形状を有する貫通孔を有するフィルムであることが確認された。また、各主面における貫通孔の開口径は、マスキング面について4.5μm、エッチング面について6.4μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルム2の双方の主面を含む全面に撥液処理液を塗布した後、常温で30分間放置して乾燥させ、当該フィルム2の表面および貫通孔5の内周面に撥液層3を形成して、防水通音膜1を得た。撥液処理液は、撥液剤(信越化学製、X−70−029C)を濃度0.7重量%となるように希釈剤(信越化学製、FSシンナー)で希釈して調製した。
このようにして得た防水通音膜1のフラジール通気度は15cm3/(cm2・秒)、耐水圧はマスキング面側が20kPa、エッチング面側が15kPa、撥油性は「有り」、開口率はマスキング面側が31.8%、エッチング面側が64.3%であった。これらの特性の評価結果(耐水圧を除く)を、他の実施例および比較例において作製した防水通音膜における評価結果とともに、以下の表1にまとめる。なお、表1の実施例1〜3の欄において、「/」の左側にはマスキング面側の評価結果を、「/」の右側にはエッチング面側の評価結果を、それぞれ示す。
また、このようにして得た防水通音膜1について、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。なお、表2の実施例1〜3の欄において、「/」の左側には、模擬筐体の外側に高分子フィルム2のマスキング面(貫通孔の開口径が相対的に小さい主面)を向けたときの(最大)音圧損失および耐水圧(すなわち、マスキング面側の耐水圧)を、「/」の右側には、模擬筐体の外側に高分子フィルム2のエッチング面(貫通孔の開口径が相対的に大きい主面)を向けたときの(最大)音圧損失および耐水圧(すなわち、エッチング面側の耐水圧)を、それぞれ示す。
(比較例1)
マスキング層を配置しなかったこと、および化学エッチングの実施時間を15分としたこと以外は実施例1と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルムを得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、いずれの主面についても4.5μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は8cm3/(cm2・秒)、耐水圧はいずれの主面についても20kPa、撥油性は「有り」、開口率はいずれの主面についても31.8%であった。
また、このようにして得た防水通音膜における、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(比較例2)
マスキング層を配置しなかったこと、および化学エッチングの実施時間を20分としたこと以外は実施例1と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルムを得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、いずれの主面についても6.0μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は18cm3/(cm2・秒)、耐水圧はいずれの主面についても15kPa、撥油性は「有り」、開口率はいずれの主面についても56.5%であった。
また、このようにして得た防水通音膜における、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(実施例2)
最初に準備した市販のPETフィルムの孔密度が4.0×105個/cm2であったこと、および化学エッチングの実施時間を35分としたこと以外は実施例1と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルム2を得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、マスキング面について10.0μm、エッチング面について12.5μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は65cm3/(cm2・秒)、耐水圧はマスキング面側が7kPa、エッチング面側が5kPa、撥油性は「有り」、開口率はマスキング面側が31.4%、エッチング面側が49.1%であった。
また、このようにして得た防水通音膜1について、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(比較例3)
マスキング層を配置しなかったこと、および化学エッチングの実施時間を25分としたこと以外は実施例2と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルムを得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、いずれの主面についても10.0μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は50cm3/(cm2・秒)、耐水圧はいずれの主面についても7kPa、撥油性は「有り」、開口率はいずれの主面についても31.0%であった。
また、このようにして得た防水通音膜における、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(比較例4)
マスキング層を配置しなかったこと、および化学エッチングの実施時間を33分としたこと以外は実施例2と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルムを得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、いずれの主面についても12.5μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は75cm3/(cm2・秒)、耐水圧はいずれの主面についても5kPa、撥油性は「有り」、開口率はいずれの主面についても48.8%であった。
また、このようにして得た防水通音膜における、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(実施例3)
化学エッチングの実施時間を16分としたこと以外は実施例1と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルム2を得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、マスキング面について3.0μm、エッチング面について4.0μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は4.5cm3/(cm2・秒)、耐水圧はマスキング面側が35kPa、エッチング面側が21kPa、撥油性は「有り」、開口率はマスキング面側が14.1%、エッチング面側が25.1%であった。
また、このようにして得た防水通音膜1について、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(比較例5)
マスキング層を配置しなかったこと、および化学エッチングの実施時間を12分としたこと以外は実施例3と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルムを得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、いずれの主面についても3.0μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は2.5cm3/(cm2・秒)、耐水圧はいずれの主面についても35kPa、撥油性は「有り」、開口率はいずれの主面についても14.0%であった。
また、このようにして得た防水通音膜における、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
(比較例6)
マスキング層を配置しなかったこと、および化学エッチングの実施時間を14分としたこと以外は実施例3と同様に化学エッチングを実施して、高分子フィルムを得た。このようにして得た高分子フィルムの各主面における貫通孔の開口径は、いずれの主面についても4.0μmであった。なお、厚さは45μmであった。
次に、作製した高分子フィルムに対して、実施例1と同様に撥液処理を実施した。このようにして得た防水通音膜のフラジール通気度は5cm3/(cm2・秒)、耐水圧はいずれの主面についても21kPa、撥油性は「有り」、開口率はいずれの主面についても26.5%であった。
また、このようにして得た防水通音膜における、音の周波数が1kHzおよび3kHzのときの音圧損失、ならびに100Hzから3kHzの間の音域における最大音圧損失を、耐水圧の結果と併せて以下の表2に示す。
表1に示すように、比較例1に比べて実施例1の防水通音膜では、模擬筐体の外側に高分子フィルム2のマスキング面を向けたときに、筐体外部からの水の侵入に対して同等の耐水圧が確保されながらも、より低い音圧損失が実現した。特に、防水通音膜の有効面積が小さいとき(有効面積0.8mm2のとき)に、音圧損失が低下する効果が大きかった。また、比較例2に比べて実施例1の防水通音膜では、模擬筐体の外側に高分子フィルム2のマスキング面を向けたときに、同等の音圧損失の低さが確保されながらも、筐体外部からの水の浸入に対してより高い耐水圧が実現した。また、実施例2と比較例3,4との間、および実施例3と比較例5,6との間においても、同様の関係が確認された。