JP6432860B2 - ハイブリッドゲルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリッドゲル、及びハイブリッドゲルの製造方法に関する。
ポリビニルアルコール(PVA)溶液を繰り返し凍結及び解凍することにより、PVAが物理架橋したPVAゲル(FTゲル)を製造する方法が従来知られている(非特許文献1)。また、PVA溶液を支持体上にキャストして乾燥させることにより、PVAが物理架橋したPVAゲル(CDゲル)を製造する方法が従来知られている(非特許文献2)。
K. Tamura, O. Ike, S. Hitomi, J. Isobe, Y. Shimizu, M. Nambu, A New Hydrogel and Its Medical Application, ASAIO Trans. 32 (1986) 605-609. E. Otsuka and A. Suzuki, A Simple Method to Obtain a Swollen PVA Gel Crosslinked by Hydrogen Bonds, Journal of Applied Polymer Science, 114(2009) 10-16.
従来の繰り返し凍結解凍法で得られるPVAゲルは、医療用途において生体機能を代替する材料として使用する程には、摩擦特性、摩耗特性、膨潤特性、剛性、引張り強度等の物性が十分ではない。このため、より優れた物性を有するPVAゲルが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来のPVAゲルよりも動摩擦係数μが低い表面を有するハイブリッドゲル及びその製造方法の提供を課題とする。
本発明は、下記[9]〜[21]の態様を有する。下記[1]〜[8]は本発明に関連する発明である。
[1]第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することにより得られた凍結解凍ゲルの表面に、第二のPVA水溶液をキャストして乾燥した後、水で膨潤することによって、前記凍結解凍ゲルの表面にキャストドライゲルが積層されてなることを特徴とするハイブリッドゲル。
[2]前記キャストドライゲルの一部が、前記凍結解凍ゲルの表層に浸透した境界層を形成していることを特徴とする前記[1]に記載のハイブリッドゲル。
[3]前記凍結解凍ゲルが、前記凍結及び解凍を複数回繰り返して形成されたものであることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のハイブリッドゲル。
[4]水に対して平衡膨潤状態にある前記ハイブリッドゲルの重量(W)と、乾燥状態にある前記ハイブリッドゲルの重量(W)との重量膨潤比(W/W)が、3〜7
であることを特徴とする前記[1]〜[3]の何れか一項に記載のハイブリッドゲル。
[5]水に対して平衡膨潤状態にある前記ハイブリッドゲルのキャストドライゲルの厚みが0.5mm以上であることを特徴とする前記[1]〜[4]の何れか一項に記載のハイブリッドゲル。
[6]前記凍結解凍ゲルが、前記凍結及び解凍を2〜6回繰り返して形成されたものであることを特徴とする前記[1]〜[5]の何れか一項に記載のハイブリッドゲル。
[7]水に対して平衡膨潤状態にある前記ハイブリッドゲルにおいて、前記凍結解凍ゲルの水透過率が、前記キャストドライゲルの水透過率よりも10倍以上大きいことを特徴とする前記[1]〜[6]の何れか一項に記載のハイブリッドゲル。
[8]前記凍結解凍ゲルが、前記第一のPVA水溶液を凍結及び解凍した後で、乾燥し、さらに水で膨潤することによって得られたゲルであることを特徴とする前記[1]〜[7]の何れか一項に記載のハイブリッドゲル。
[9]第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することにより得られた凍結解凍ゲルの表面に、第二のPVA水溶液をキャストして乾燥した後、水で膨潤することによって、前記凍結解凍ゲルの表面にキャストドライゲルが積層されてなるハイブリッドゲルを得ることを特徴とするハイブリッドゲルの製造方法。
[10]前記第一のPVA水溶液の凍結及び解凍を複数回繰り返して凍結解凍ゲルを形成することを特徴とする前記[9]に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[11]前記キャストした第二のPVA水溶液を、前記凍結解凍ゲルの表面から表層部分に浸透させる処理を行うことを特徴とする前記[9]又は[10]に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[12]前記凍結解凍ゲルとして、前記第一のPVA水溶液を凍結及び解凍した後で、乾燥し、さらに水で膨潤することによって得られたゲルを用いることを特徴とする前記[9]〜[11]の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[13]前記凍結解凍ゲルを水中に浸漬して、前記凍結解凍ゲルから未架橋のPVAポリマーを溶出させる処理を行うことを特徴とする前記[9]〜[12]の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[14]前記第二のPVA水溶液をキャストした後に行う乾燥の温度が、4〜12℃であることを特徴とする前記[9]〜[13]の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[15]前記凍結解凍ゲルを支持体上に拘束した状態で、前記キャストした第二のPVA水溶液の乾燥を行うことを特徴とする前記[9]〜[14]の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[16]前記支持体として少なくとも表面が多孔質である支持体を使用し、前記表面に第三のPVA水溶液を塗布した後、その塗布面に前記凍結解凍ゲルを接触させて、前記第三のPVA水溶液を乾燥することによって、前記支持体の表面に前記凍結解凍ゲルを接着することを特徴とする前記[15]に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[17]前記支持体が、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス、及びカルシウム含有材からなる群から選ばれる一つ以上の材料を含むことを特徴とする前記[15]又は[16]に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[18]前記多孔質の平均空孔径が0.1μm〜600μmであることを特徴とする前記[16]又は[17]に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[19]前記第二のPVA水溶液の乾燥と、前記第三のPVA水溶液の乾燥とを同時に行うことを特徴とする前記[16]〜[18]の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[20]前記キャストした第二のPVA水溶液を、相対湿度30〜90%rhの雰囲気において、乾燥することを特徴とする前記[9]〜[19]の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
[21]前記乾燥の期間中、前記雰囲気の相対湿度を段階的に変化させることを特徴とする前記[20]に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
本発明のハイブリッドゲルは、凍結解凍ゲル(FTゲル)の上にキャストドライゲル(CDゲル)が積層された構造を有する。ハイブリッドゲルの表面を構成するCDゲルは、単独のCDゲルと比べて、より低い動摩擦係数μを有する。このため、本発明のハイブリッドゲルは、医療分野における人工関節の軟骨の代替材料として有望な材料となり得る。
また、本発明のハイブリッドゲルにおいて、FTゲル及びCDゲルに任意の機能性物質を含有させることができる。例えば、ヒトの関節に多く存在するコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸を含有させたハイブリッドゲルが、上記代替材料として有望な材料となり得る。
本発明のハイブリッドゲルの製造方法によれば、従来のCDゲルと比べて、より低い動摩擦係数μを有するハイブリッドゲルを容易に製造することができる。また、第一のPVA水溶液及び第二のPVA水溶液の容量を調整することにより、最表面を構成するCDゲルの動摩擦係数μの高低を容易に調整することができる。さらに第一のPVA水溶液及び第二のPVA水溶液をゲル化させる際の容器の形状を調整することにより、所望の形状のハイブリッドゲルを容易に得ることができる。
従来のCDゲル(CD)と、本発明の一例のハイブリッドゲル(Hybrid)と、従来のFTゲル(FT)と、乾燥処理を施したFTゲル(FTDゲル)(FTD)とについて、3種の垂直荷重(0.98N、2.94N、5.88N)を印加して測定した動摩擦係数μを比較する棒グラフである。 図1の垂直荷重5.88Nの場合の各ゲルの摩擦曲線を示す図である。 図1と同じ4種のゲルについて、同じ垂直荷重を印加して測定した摩耗率eを比較する棒グラフである。 図3AにおけるCDゲル(CD)、ハイブリッドゲル(Hybrid)、FTDゲル(FTD)の結果をプロットした図である。 図3A及び図3Bの結果を得る際の摩耗試験において、各ゲルを浸漬させた水へ溶出したPVAの溶出濃度(単位:g/L)を示すプロット図である。 各ゲルの膨潤時における重量Wと乾燥時における重量Wから求まる重量膨潤比(W/W)、及び各ゲルの30%圧縮応力を表す棒グラフである。 各ゲルの膨潤時における重量Wと乾燥時における重量Wから求まる重量膨潤比(W/W)、及び各ゲルの50%圧縮応力を表す棒グラフである。 室温乾燥(25℃)で得たハイブリッドゲル(Q1)及び、低温乾燥(8℃)で得たハイブリッドゲル(Q2)について、ステンレス製の球状プローブを用いて測定した摩擦曲線を示す図である。 室温乾燥(25℃)で得たハイブリッドゲル(Q1)及び、低温乾燥(8℃)で得たハイブリッドゲル(Q2)について、セラミック製の球状プローブを用いて測定した摩擦曲線を示す図である。 ハイブリッドゲル(S4)を構成するFT4ゲルとCDゲルの断面全体を映した写真である。 図8のハイブリッドゲル(S4)のFT4ゲルとCDゲルとの境界部分を拡大した写真である。 ハイブリッドゲル(S1)のFT4ゲルとCDゲルとの境界部分を拡大した写真である。 浸透処理の時間を変えて作製したハイブリッドゲル(S1)〜(S5)の乾燥時の厚み(t)と、膨潤時の厚み(t)を示すプロット図である。 浸透処理の時間を変えて作製したハイブリッドゲル(S1)〜(S5)について、膨潤時における重量Wと乾燥時における重量Wから求まる重量膨潤比(W/W)と、膨潤時における厚みtと乾燥時における厚みtから求まる厚さ膨潤比(t/t)と、を示すプロット図である。 CDゲル、FTゲル、ハイブリッドゲルの種類に関わらず、動摩擦係数μが小さいゲルは、その摩耗率eも小さいことを示すプロットである。 ハイブリッドゲルを構成するFTゲルの凍結解凍サイクルの回数を変化させた場合の動摩擦係数μの変化を示すプロット図である。 ハイブリッドゲルを構成するFTゲルの凍結解凍サイクルの回数を変化させた場合の摩耗率eの変化を示すプロット図である。 FTゲルの凍結解凍サイクルの回数を変えて製造したハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)について、膨潤時における重量Wと乾燥時における重量Wから求まる重量膨潤比(W/W)を示すプロット図である。 FT4ゲルとCDゲルの相対的な重量を変化させて作製したハイブリッドゲル(P0)〜(P6)の破断応力を示すプロット図である。 FT4ゲルとCDゲルの相対的な重量を変化させて作製したハイブリッドゲル(P0)〜(P6)の破断歪みを示すプロット図である。 FT4ゲルとCDゲルの相対的な重量を変化させて作製したハイブリッドゲル(P0)〜(P6)の弾性係数を示すプロット図である。 一定量のFT4ゲルの上に積層するCDゲルの量を段階的に増加させて作製したハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)の摩擦曲線を示すグラフである。 図20の垂直荷重600gf(5.88N)の場合の各摩擦曲線を重ねて示すグラフである。 図20の摩擦曲線を解析して得られた、3種の垂直荷重を印加した場合のハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)の各動摩擦係数μを示す棒グラフである。 図22の垂直荷重600gf(5.88N)の場合の各動摩擦係数μを白丸(○)でプロットし、図24の垂直荷重600gf(5.88N)の場合の各摩耗率eを黒丸(●)でプロットした図である。 一定重量のFT4ゲルの上に積層するCDゲルの重量を段階的に増加させて作製したハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)の摩耗率eを示す棒グラフである。 JIS−6251−8規格に準拠したダンベルカッターの型の形状を示す模式図である。 本発明にかかるハイブリッドゲル(Q2)と(W1)の動摩擦係数μを比較したグラフである。図中、ハイブリッドゲル(Q2)の結果には「固着なし」のラベルを付し、ハイブリッドゲル(W1)の結果には「固着あり」のラベルを付した。 本発明にかかるハイブリッドゲル(Z1)〜(Z3)の動摩擦係数μを比較したグラフである。図中、ハイブリッドゲル(Z1)、(Z2)、(Z3)の結果にはそれぞれ「AL60-Hyb-8℃80%」、「AL100-Hyb-8℃80%」、「AL180-Hyb-8℃(冷蔵庫乾燥)」のラベルを付した。 本発明にかかるハイブリッドゲル(Z4)〜(Z6)を支持体であるアルミナ板から剥離したときの剥離力を比較したグラフである。図中、ハイブリッドゲル(Z4)、(Z1)、(Z2)の結果にはそれぞれ「20μm」、「60μm」、「100μm」のラベルを付した。 本発明にかかるハイブリッドゲル(J1)〜(J3)の動摩擦係数μ(Friction coefficient)を比較したグラフである。図中、ハイブリッドゲル(J1)、(J2)、(J3)の結果にはそれぞれ「Hybrid FT4-CD8℃50%rh」、「Hybrid FT4-CD8℃60%rh」、「Hybrid FT4-CD8℃80%rh」のラベルを付した。 本発明にかかるハイブリッドゲル(K1)〜(K4)の動摩擦係数μ(Friction coefficient)を比較したグラフである。図中、ハイブリッドゲル(K1)、(K2)、(K3)、(K4)の結果にはそれぞれ「Hybrid (K1)」、「Hybrid (K2)」、「Hybrid (K3)」、「Hybrid (K4)」のラベルを付した。 本発明にかかるハイブリッドゲル(K1)のゲル表面状態について、摩擦試験前(a)と摩擦試験後(b)を比較した写真である。 本発明にかかるハイブリッドゲル(K3)のゲル表面状態について、摩擦試験前(a)と摩擦試験後(b)を比較した写真である。 本発明にかかるハイブリッドゲル(K4)のゲル表面状態について、摩擦試験前(a)と摩擦試験後(b)を比較した写真である。 摩擦試験の方法(2)における装置構成の断面模式図である。
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
≪ハイブリッドゲル、及びその製造方法≫
本発明の第一態様のハイブリッドゲルは、第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することにより得られた凍結解凍ゲルの表面に、第二のPVA水溶液をキャストして乾燥した後、水で膨潤することによって、前記凍結解凍ゲルの表面にキャストドライゲルが積層されてなる積層ゲルである。
本発明の第二態様の、ハイブリッドゲルの製造方法は、第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することにより得られた凍結解凍ゲルの表面に、第二のPVA水溶液をキャストして乾燥した後、水で膨潤することによって、前記凍結解凍ゲルの表面にキャストドライゲルが積層されてなるハイブリッドゲルを得る方法である。
前記ハイブリッドゲルを構成する凍結解凍ゲルは、第一のPVA水溶液を凍結(Freeze)及び解凍(Thaw)することによって形成される。本明細書において、前記凍結解凍ゲルを「FTゲル」と呼ぶことがある。
前記ハイブリッドゲルを構成するキャストドライゲルは、第二のPVA水溶液を前記凍結解凍ゲルの表面にキャストして(Cast)乾燥する(Dry)した後、水で膨潤することによって形成される。本明細書において、前記キャストドライゲルを「CDゲル」と呼ぶことがある。
<PVA水溶液>
前記第一のPVA水溶液及び第二のPVA水溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)を溶解した水溶液である。第一のPVA水溶液と第二のPVA水溶液は、同一の溶液であってもよいし、異なる溶液であってもよい。つまり、第一のPVA水溶液に溶解されたPVAの種類及び濃度は、第二のPVA水溶液に溶解されたPVAの種類及び濃度と同一であってもよいし、異なっていてもよい。以下では、単に「PVA水溶液」と呼ぶ場合は、第一と第二の区別をせず、両方のPVA水溶液を指す。
前記PVA水溶液の材料であるPVA(ポリビニルアルコール)は、ケン化度が95%以上、且つ、重合度が1000以上であることが好ましい。
PVAのケン化度の上限値は100%であるが、PVAの溶解度を高める観点から、そのケン化度は100%未満であることが好ましい。
PVAの重合度が1000以上であることにより、高い構造的強度のハイブリッドゲルが得られる。その重合度の上限値は特に制限されないが、溶解度を高める観点から、3000以下が好ましい。通常、使用するPVAの重合度が高い程、得られるハイブリッドゲルの構造的強度が高くなる傾向がある。ここで例示した物性をもつPVAは市販品として購入可能である。
前記PVA水溶液の濃度としては、特に制限されないが、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは15〜20質量%である。
上記範囲内のPVA水溶液濃度とすることにより、形成される物理架橋の密度が十分に高まり、ハイブリッドゲルに十分な構造的強度を付与することができる。また、PVA水溶液の粘度が増して、容器内に注入し難くなること、低温での保存中にPVA水溶液のゲル化が進行してしまうことを防ぐことができる。
前記PVA水溶液には、それがPVAの物理架橋を妨げる物質でなければ、種々の薬剤や機能性物質を含有してもよい。例えば、PVA水溶液に、予め機能性物質を混合、分散、又は溶解させておくことにより、形成するハイブリッドゲル中に機能性物質を担持させることができる。
前記機能性物質としては、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のヒトの関節に存在する生体物質、二酸化チタン等の無機微粒子や、多糖類及びタンパク質等の有機分子、N−イソプロピルアクリルアミド等の熱応答性高分子が例示できる。
前記機能性物質は、天然由来の物質であっても、化学合成されたものであってもよい。
また、前記有機分子は、低分子化合物であっても、高分子ポリマーであってもよい。
前記機能性物質の前記PVA水溶液中の濃度としては、使用する機能性物質の大きさや物性にも依るが、例えば10〜20容量%程度にすることができる。
<凍結解凍ゲル(FTゲル)の作製>
前記ハイブリッドゲルを構成するFTゲルは、第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することにより得られる。例えば、第一のPVA水溶液をシャーレ等の容器に注ぎ、密閉した状態で、凍結及び解凍を行うことによって得られる。
前記容器の形状は特に制限されず、例えば、板状、筒状、棒状、箱状、回転楕円体状などの形状の容器が挙げられる。ここで、容器の形状はPVA水溶液を満たす空間の形状を意味する。従って、前記容器に入れたPVA水溶液及び作製するハイブリッドゲルの形状は、その容器の形状に従う。
前記凍結の温度は、PVA水溶液を凍結させることが可能な温度であれば特に制限されないが、−80℃以上凝固点Tf(15質量%PVA水溶液の凝固点Tは約−15.5
℃)未満が好ましく、−60℃以上凝固点Tf未満がより好ましく、−30℃以上凝固点
未満が更に好ましい。
前記凍結の温度における凍結処理の時間は特に制限されない。例えば、15質量%のPVA水溶液を1〜5mm程度の厚さで容器に注いだ場合、通常、8〜24時間程度で凍結させることができる。
前記解凍の温度は、凍結したPVA水溶液を解凍させることが可能であり、物理架橋したPVAを再溶解させない温度であれば特に制限されない。例えば、0℃〜50℃が好ましく、4〜30℃がより好ましく、4〜15℃が更に好ましい。
上記範囲のうち、なるべく低い温度で解凍することによって、結晶化度が大きく、膨潤比が小さく、構造的強度の強いFTゲルを得ることができる。
このような高強度のFTゲルを用いることにより、当該FTゲルの上に積層されるCDゲルの表面(ハイブリッドゲルの表面)の動摩擦係数μ及び摩耗率eがより低い、摩擦特性及び摩耗特性に優れたハイブリッドゲルを得ることができる。
前記解凍の温度における解凍処理の時間は特に制限されない。例えば、15質量%のPVA水溶液を1〜5mm程度の厚さで容器に注いで凍結させた場合、通常、8〜24時間程度で解凍させて、湿潤状態のFTゲルを得ることができる。
形成するFTゲルの構造的強度を高める観点から、前記凍結及び解凍の処理は、複数回繰り返して行うこと好ましい。すなわち、1回目の凍結及び解凍を行って得られた湿潤状態のFTゲル(FT1ゲル)を、再び凍結させて、これを解凍する操作を複数回行うことが好ましい。
本明細書においては、前記凍結及び解凍のサイクルを1回行って得られたFTゲルをFT1ゲルと呼び、前記サイクルを2回行って得られたFTゲルをFT2ゲルと呼び、3回以降のサイクルで得られたFTゲルも同様である。つまり、前記サイクルをn回行って得られたFTゲルをFTnゲルと呼ぶ。
前記ハイブリッドゲルを構成するFTnゲルは、nが2〜10のFT2ゲル〜FT10ゲルが好ましく、nが2〜9のFT2ゲル〜FT8ゲルがより好ましく、nが2〜6のFT2ゲル〜FT6ゲルがさらに好ましい。
前記凍結及び解凍のサイクル回数nは特に制限されないが、上記範囲であることにより、構造的強度の高いFTゲルが得られる。このような高強度のFTゲルの上にCDゲルを積層することにより、前記ハイブリッドゲルの最表面を構成するCDゲルの動摩擦係数μ及び摩耗率eがより低い、摩擦特性及び摩耗特性に優れたハイブリッドゲルを得ることができる。
前記ハイブリッドゲルを構成するFTゲルの厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、0.5mm〜10mmの厚みのシート状のFTゲルを用いることにより、シート状のハイブリッドゲルを得ることができる。
シート状のFTゲルの厚みが薄過ぎる(例えば0.1mm未満)であると、ハイブリッドゲルの構造的強度が弱まる恐れがあり、さらに、ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面の動摩擦係数μ及び摩耗率eを充分に低下させることが困難になる場合がある。
<凍結解凍乾燥ゲル(FTDゲル)の作製>
前記ハイブリッドゲルを構成するFTゲルは、前記第一のPVA水溶液を凍結及び解凍した後で、乾燥し、さらに水で膨潤することによって得られたゲルであってもよい。この乾燥及び膨潤の処理を追加することによって得られたゲルを凍結解凍乾燥ゲル(FTDゲル)と呼ぶ。
通常、FTDゲルの構造的強度はFTゲルの構造的強度よりも高い傾向があるため、ハイブリッドゲルを構成するFTゲルをFTDゲルに代えることによって、前記摩擦特性及び摩耗特性が一層優れたハイブリッドゲルが得られる場合がある。
FTDゲルを作製するためには、まず、前述したように前記第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することによって、湿潤状態のFTゲルを作製する。続いて、このFTゲルを乾燥した乾燥体を得て、この乾燥体を水で膨潤することによって、膨潤状態のFTDゲルを得ることができる。
乾燥させるFTゲルは、前記凍結及び解凍のサイクルを1回行って得たFT1ゲルであってもよいし、前記サイクルをn回繰り返して得たFTnゲルであってもよい。
FTゲルを乾燥させる温度及び方法は特に制限されず、例えば、4〜40℃程度の空気雰囲気下で質量が一定になるまで自然に乾燥させる(風乾させる)方法が挙げられる。
FTDゲルがハイブリッドゲルを構成する場合、そのFTDゲルの厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、0.5mm〜10mmの厚みのシート状のFTDゲルを用いることにより、シート状のハイブリッドゲルを得ることができる。
シート状のFTDゲルの厚みが薄過ぎる(例えば0.1mm未満)であると、ハイブリッドゲルの構造的強度が弱まる恐れがあり、さらに、ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面の動摩擦係数μ及び摩耗率eを充分に低下させることが困難になる場合がある。
<FTゲル及びFTDゲルの水中浸漬処理>
前記ハイブリッドゲルを構成するFTゲル又はFTDゲルの表面にCDゲルを積層する前に、FTゲル又はFTDゲルを水中に浸漬することによって、FTゲル又はFTDゲルから未架橋のPVAポリマーを溶出させることが好ましい。
この水中浸漬処理を行うことによって、第二のPVA溶液がFTゲル又はFTDゲルの表面に浸透する効率を高めることができる。この結果、CDゲルの一部が、FTゲル又はFTDゲルの表層に浸透した境界層を形成することが比較的容易になる。
前記水中浸漬処理の具体的方法としては、例えば、20〜30℃程度の超純水中にFTゲル又はFTDゲルを浸漬して、必要に応じて緩やかに撹拌しながら、1時間〜5日間程度浸漬する方法が挙げられる。
浸漬時間はゲルの大きさに応じて適宜設定すればよい。未架橋ゲルを充分に溶出させる観点から、通常、FTゲル又はFTDゲルを水に対して平衡膨潤させるために必要な時間よりも長い時間で浸漬することが好ましい。
<CDゲルの積層>
FTゲル又はFTDゲルの表面に第二のPVA水溶液をキャストして、乾燥した後、水で膨潤することによって、FTゲル又はFTDゲルの表面にCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲルが得られる。
第二のPVA水溶液をFTゲル又はFTDゲルの表面にキャストした後、所定時間待つことによって、第二のPVA水溶液をFTゲル又はFTDゲルの表面から表層部分に浸透させる処理を行うことが好ましい。この浸透処理を行うことによって、CDゲルの一部が、FTゲル又はFTDゲルの表層に浸透した境界層を形成しつつ、CDゲルをFTゲル又はFTDゲルの上に積層することができる。
前記浸透処理の時間は、8℃で行う場合、6時間〜14日間程度が好ましく、24時間〜10日間程度がより好ましく、48時間〜7日間程度がさらに好ましい。
通常、室温で1時間静置する程度では、実質的な浸透を行うことは困難である。浸透時間を長くする程、浸透が進むため、形成される境界層が厚くなる傾向がある。しかし、14日間を超えて浸透処理を継続しても、浸透が停滞して、形成される境界層の厚みの増加は頭打ちになる傾向がある。
前記浸透処理の温度を室温よりも高い温度、例えば40〜60℃で行った場合、浸透処理に要する時間を短縮できることがある。
前記浸透処理の方法は、FTゲル又はFTDゲルの上に第二のPVA水溶液をキャストした後、静置すればよい。なお、前述の通り、比較的長期間の浸透処理を行うため、浸透処理は密封状態で行い、キャストしたCDゲルが意図せずに乾燥することを防ぐことが好ましい。
FTゲル又はFTDゲルの上に第二のPVA水溶液をキャストした後、直ぐに乾燥させてもよいし、前記浸透処理を経てから乾燥させてもよいが、前記浸透処理を経てから乾燥させることが好ましい。
前記浸透処理を行い、ハイブリッドゲルを構成するFTゲル又はFTDゲルとCDゲルとの間に前記境界層を形成すると、ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面の動摩擦係数μ及び摩耗率eがより低くなり、摩擦特性及び摩耗特性が一層向上する。
このメカニズムは明らかではないが、境界層のPVAの密度が高くなっていること、境界層におけるPVAの微結晶の量が増大していること、境界層の強度が高くなっていること等が、前記摩擦特性及び摩耗特性の向上(即ち、μ及びeの低下)に寄与していると考えられる。
前記キャストの後又は前記浸透処理の後に、第二のPVA水溶液のキャスト時に湿潤状態若しくは平衡膨潤状態であったFTゲル又はFTDゲルと、その上にキャストされた第二のPVA水溶液とを乾燥させることによって、乾燥体を得る。この際、質量一定になるまで自然に乾燥させることが好ましい。生乾きの状態で乾燥処理を止めると、CDゲルの物理架橋が不十分になることがある。
FTゲル又はFTDゲルの上にキャストした第二のPVA水溶液を乾燥させる方法は特に制限されず、例えば、大気中又は減圧雰囲気において、0〜30℃程度で乾燥させることができる。この乾燥温度は、2〜20℃が好ましく、3〜16℃がより好ましく、4〜12℃がさらに好ましい。このように比較的低い温度で乾燥させることによって、積層するCDゲルがより柔軟になり、その表面の前記摩擦特性及び摩耗特性を向上させる(即ち、μ及びeを低下させる)ことができる。
前記キャストした第二のPVA水溶液の乾燥によるCDゲルの形成に伴って、FTゲル又はFTDゲルが前記乾燥によって収縮することがある。収縮によって平板性が失われることを防止し、一層優れた摩擦特性を備えたハイブリッドゲルを形成するために、前記キャストの前に予めFTゲル又はFTDゲルを支持体に拘束若しくは固定(固着)しておくことが好ましい。
具体的な拘束方法として、例えば、支持体の表面に市販の接着剤若しくは第三のPVA水溶液を塗布することにより、FTゲル又はFTDゲルの周縁部を前記支持体の表面に接着する方法が挙げられる。周縁部を拘束しておくことにより、前記乾燥に伴ってFTゲル又はFTDゲルがゲル中心部に向かって収縮する力が働く一方、当該ゲルの周縁部が拘束されているため、収縮とは反対の方向に引張り力が働き、支持体の表面形状に沿ったハイブリッドゲルを形成することができる。支持体に対するより強力な拘束又は固定が必要な場合は、FTゲル又はFTDゲルの全面に前記接着剤若しくは第三のPVA水溶液を塗布して接着しても良い。医療用途を考慮すると、市販の接着剤からの化学物質の溶出を避けるために、第三のPVA水溶液を使用して接着する方が好ましい。第三のPVA水溶液のPVA濃度は特に制限されず、例えば、第二のPVA水溶液と同じPVA濃度にすることができる。
FTゲル又はFTDゲルを支持体に接着する接着剤若しくは第三のPVA水溶液の乾燥は、当該FTゲル又はFTDゲルの上に第二のPVA水溶液をキャストする前に予め行われていてもよいし、前記キャストされた第二のPVA水溶液の乾燥と同時に行っても良い。同時に乾燥処理を進めることにより、ハイブリッドゲルの製造効率を向上させることができる。なお、同時に乾燥処理を進めた場合にも、CDゲルの形成よりも接着の方が速く進行するように、接着に使用する接着剤若しくは第三のPVA水溶液は少量で薄く塗布することが好ましい。CDゲルの形成よりも接着の方が速く進行すれば、上記の乾燥処理時にFTゲル又はFTDゲルを支持体に充分に拘束又は固定することができる。
前記支持体は、平板状であることが好ましく、ハイブリッドゲルを拘束する表面が多孔質であることがより好ましい。平板状の支持体を使用することにより、平板状で使い勝手の良い、優れた摩擦特性を有するハイブリッドゲルが得られる。また、多孔質表面の支持体を使用することにより、FTゲル又はFTDゲルを当該表面に容易に拘束し、乾燥に伴うゲルの収縮をより一層抑制することができるため、優れた摩擦特性を有するハイブリッドゲルが得られる。
前記多孔質の平均空孔径は特に制限されないが、例えば、0.1μm〜600μmが好ましく、60μm〜580μmがより好ましく、100μm〜300μmが更に好ましい。
上記範囲の下限値以上であることにより、前記支持体にFTゲル又はFTDゲルを接着する場合の前記接着剤若しくは第三のPVA水溶液が短時間で多孔質内の表面に浸透するため、前記支持体にFTゲル又はFTDゲルをより強力に拘束又は固定することができる。
上記範囲の上限値以下であることにより、多孔質表面の空孔の影響によって、ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの優れた摩擦特性が低減する可能性が少なくなる。多孔質表面の空孔が上記摩擦特性に影響するメカニズムは明らかになっていないが、多孔質表面の空孔にFTゲル又はFTDゲルの一部が落ち込み、ゲル表面に微細な凹凸パターンが形成される可能性が一因として考えられる。
前記支持体の材料は特に制限されず、例えば、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス、及びカルシウム含有材からなる群から選ばれる一つ以上の材料を含む支持体が好適である。前記金属は特に制限されず、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス、金などが挙げられる。前記金属酸化物は特に制限されず、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)などが挙げられる。前記カルシウム含有材として、例えばハイドロキシアパタイトが好適な材料として挙げられる。ハイドロキシアパタイトは医療用途にも適した材料である。
FTゲル又はFTDゲルの上にキャストした第二のPVA水溶液を乾燥させる際、温度及び相対湿度を制御することが好ましい。具体的には、4〜25℃で乾燥させる場合、相対湿度は30〜90%rhであることが好ましく、4〜15℃で乾燥させる場合、相対湿度は30〜80%rhであることが好ましく、相対湿度は30〜70%rhであることがより好ましく、相対湿度は30〜60%rhであることが更に好ましい。
前記キャストした第二のPVA水溶液を乾燥させる際の温度及び相対湿度は、乾燥開始からゲルの質量が一定になるまでの乾燥終了時まで、一律(一定)であっても良いし、漸次又は段階的に変化させても良い。例えば、温度を一定にして、相対湿度を段階的に低くする乾燥方法を採用することによって、前記摩擦特性及び摩耗特性を向上させることができる。また、温度を段階的に上昇させると共に、相対湿度を段階的に低くする乾燥方法を採用することによって、前記摩擦特性及び摩耗特性を向上させることができる。また、乾燥工程の初期において乾燥が緩やかに進行し、乾燥工程の後期において乾燥が速やかに進行する(初期よりも速く乾燥が進行する)ように温度及び湿度を制御することによって、前記摩擦特性及び摩耗特性を向上させることができる。乾燥工程における温度及び湿度の制御によってこれらの特性が向上するメカニズムは明らかになっていないが、ハイブリッドゲルを構成するCDゲル内に形成される微小な結晶構造が、上記の特性向上に寄与することが一因として考えられる。
FTゲル又はFTDゲルの上にキャストした第二のPVA水溶液の乾燥処理は、製造ロット毎のゲルの物性を均一にする観点から、ゲル全体の質量が一定になるまで乾燥させることが好ましい。乾燥処理によって形成された乾燥状態のハイブリッドゲルの含水率は、乾燥時の雰囲気の温度及び相対湿度によって変化する。上記乾燥処理後のハイブリッドゲルの含水率は、ハイブリッドゲルの全質量に対して5〜20質量%であることが好ましい。この範囲の含水率となるように乾燥処理を行うことによって、CDゲル内の微結晶構造が前記摩擦特性及び摩耗特性の向上に有利な構造になり得る。なお、上記含水率はシャーレ内に流し込んだPVA水溶液の重量Wa、重量が一定になるまで乾燥させたときのフィルム重量Wbをそれぞれ測定し、含水率=(Wb−Wa×0.15)÷(Wa×0.15)×100(%)の式で算出する。この算出式において「0.15」は第一のPVA水溶液に含まれるPVAの質量の割合である。
<ハイブリッドゲルを構成する各ゲルの重量及び厚み>
FTゲル又はFTDゲルの上にキャストする第二のPVA水溶液の重量(W)は、FTゲル又はFTDゲルの作製に用いた第一のPVA水溶液の重量(W)との相対比(W/W)を考慮して設定することができる。ここで、FTゲル又はFTDゲルの面積と、積層するCDゲルの面積とは基本的に同じであるため、両相の膨潤比が一定であれば、前記重量の相対比は、FTゲル又はFTDゲルの厚みと、積層するCDゲルの厚みとの相対比と同等である。
以下、ハイブリッドゲルを作製する際に使用するPVA水溶液のうち、FTゲル又はFTDゲルを作製する際のPVA水溶液の厚みをTと呼び、CDゲルを積層する際の前記FTゲル上にキャストするPVA水溶液の厚みをTと呼び、FTゲルの表層部に浸透するPVA水溶液の厚みをTと呼ぶ。
前記重量の相対比(W/W)および前記厚みの相対比(T/T)は、特に制限されないが、例えば、0.1〜10の範囲で調整することが好ましい。
前記重量Wと前記重量Wの和が一定である場合、又は、前記厚みTと前記厚みTの和が一定である場合において、前記重量及び厚みの相対比は、1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。また、前記重量及び厚みの相対比の下限値は特に制限されないが、通常、0.1以上に設定することが好ましい。
前記相対比を1.0以下とすることによって、ハイブリッドゲルの破断応力、破断歪み及び弾性係数を向上させ、ハイブリッドゲルの構造的強度を高めることができる。
ハイブリッドゲルを構成するFTゲル又はFTDゲルに対応する、前記厚みTの絶対値は、ハイブリッドゲルの用途に応じて適宜設定することができる。例えば、医療用途や農業用途においては、前記厚みTは0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。前記厚みTの上限値は特に制限されず、その上限値として、例えば50mm程度が想定され得る。
上記範囲で適宜検討することにより、医療用途や農業用途に適した構造的強度を有するハイブリッドゲルを得ることができる。
ハイブリッドゲルを構成するCDゲルに対応する、前記厚みTの絶対値は、ハイブリッドゲルの用途に応じて適宜設定することができる。例えば、医療用途や農業用途においては、前記厚みTは0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。前記厚みTの上限値は特に制限されず、その上限値として、例えば50mm程度が想定され得る。
上記範囲で適宜検討することにより、医療用途や農業用途に適した表面特性、特に動摩擦係数μ及び/又は摩耗率eが低い特性、を有するハイブリッドゲルを得ることができる。
前記構造的強度及び前記表面特性を向上させる観点から、例えば、FTゲル又はFTDゲルに対応する、前記厚みTを、1.0mm〜20mm、1.0mm〜10mm、又は1.0mm〜5.0mm程度に設定し、且つ、そのFTゲル又はFTDゲル上に積層するCDゲルに対応する、前記厚みTを、1.0mm〜30mm、1.5mm〜20mm、又は2.0mm〜10mm程度に設定することができる。なお、ここで示した組み合わせは一例であり、本発明に係るハイブリッドゲルの厚みはこれに限定されない。
ハイブリッドゲルの用途に適した構造的強度を確保し得るようにFTゲル又はFTDゲルの前記重量W又は前記厚みTを設定した後で、その重量W又は厚みTを一定に固定し、積層するCDゲルの前記重量W又は前記厚みTを設定する際、重量W≧重量W1、又は、厚みT≧厚みTの関係を満たすことが好ましい。
上記関係を満たすことにより、ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面の動摩擦係数μ及び/又は摩耗率eをより低くすることができる。このような表面特性は、特に医療用途に好適な場合がある。
ハイブリッドゲルを構成するFTゲル又はFTDゲルの表層部分にCDゲルが浸透した状態で形成される境界層の厚みに対応する、前記厚みTは特に制限されない。前述の浸透処理によれば、通常、1μm〜1000μmの範囲、好適には10μm〜500μmの範囲で前記境界層の厚みに対応する前記厚みTを調整することができる。
ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面の動摩擦係数μ及び/又は摩耗率eを低くする観点から、境界層の厚みに対応する前記厚みTは上記好適な範囲において、なるべく厚い方が好ましい。なお、前述したCDゲルの厚みに対応する前記厚みTは、境界層の厚みに対応する前記厚みTを含まない厚みである。
作製したハイブリッドゲルを構成するFTゲル又はFTDゲルの厚みは、水に対して平衡膨潤状態にあるとき、前記厚みTよりも厚くなる傾向があり、例えば前記厚みTの1.05倍〜1.20倍程度に厚くなることがある。
作製したハイブリッドゲルを構成するCDゲルの厚みは、水に対して平衡膨潤状態にあるとき、前記厚みTよりも薄くなる傾向があり、例えば前記厚みTの0.90倍〜0.95倍程度に薄くなることがある。
また、作製後のハイブリッドゲルを構成するFTゲル、CDゲル及び境界層の各厚みは、ハイブリッドゲルの断面を位相差顕微鏡で観察することによって測定することができる。
<ハイブリッドゲルの重量膨潤比>
水に対して平衡膨潤状態にある前記ハイブリッドゲルの重量(W)と、乾燥状態にある前記ハイブリッドゲルの重量(W)との重量膨潤比(W/W)は、2〜10が好ましく、3〜7がより好ましく、4〜6がさらに好ましい。上記範囲であることにより、高い構造的強度を有するハイブリッドゲルが得られる。
<ハイブリッドゲルの水透過率>
以上で説明したハイブリッドゲルが水に対して平衡膨潤状態にあるとき、当該ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの水透過率(透水率)を、当該ハイブリッドゲルを構成するFTゲル又はFTDゲルの水透過率よりも100分の1程度に小さくすることができる。
すなわち、前述した作製方法によって得られる、水に対して平衡膨潤状態にあるハイブリッドゲルにおいて、前記FTゲル又はFTDゲルの水透過率を、前記CDゲルの水透過率よりも10倍以上、更には100倍以上、大きくすることができる。前述した作製方法によれば、例えば、(前記FTゲル又はFTDゲルの水透過率)/(前記CDゲルの水透過率)の比を10〜100程度にすることができる。
例えば、前記ハイブリッドゲルを構成する、厚み0.5mmのFTゲルの表面と、厚み0.5mmのCDゲルの表面とに、それぞれ水圧6kPaをかけて、当該ハイブリッドゲルを透過する水量の時間変化を測定し、ハーゲン・ポアズイユの式から水透過率を計算した。その結果、前記ハイブリッドゲルを構成する、CDゲルの水透過率は約1×10−15〜9×10−15(単位:m/Ns)であり、FTゲルの水透過率は約1×10−13〜9×10−13(単位:m/Ns)であった。
このように、FTゲルの方がCDゲルよりも格段に高い水透過率(CDゲルの方がFTゲルよりも格段に低い水透過率)を有するハイブリッドゲルは、医療用途や農業用途において有用である。
<ハイブリッドゲルの利用>
本発明に係るハイブリッドゲルを医療用途における人工軟骨の代替材料として用いる方法の一例を次に説明する。
人工軟骨の構成として、例えば、リン酸カルシウム、公知のセラミックス等からなる支持部材の表面を前記ハイブリッドゲルが覆う構成が挙げられる。この際、前記ハイブリッドゲルのFTゲル又はFTDゲルが支持部材に面するように配置し、当該ハイブリッドゲルのCDゲルが表面に露出するように配置することが好ましい。このように表面に露出されたCDゲルの表面は、人工軟骨の表面として機能し得る。この表面は、従来のPVAゲルよりも低い動摩擦係数μ及び摩耗率eを有するため、関節部で擦られる用途において、特に優れた摩擦特性及び摩耗特性を発揮し得る。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<PVA水溶液の調製>
平均重合度1700、ケン化度98.00〜99.00%のPVA粉末(クラレ株式会社製、型番:PVA117)と、イオン交換水を蒸留した後さらにMilli−Qフィルターでイオン交換した超純水とを材料として使用した。
このPVA粉末と超純水をネジ口瓶に入れ、PVA濃度15.0質量%となるように調製し、90℃以上の温水中で十分に(約2時間)撹拌しながら湯煎した後、室温に戻すことにより、PVA粉末が完全に溶解したPVA水溶液を得た。
このPVA水溶液を用いて以下の方法で試料を作製した。
<比較用の凍結解凍ゲル(FTゲル)の作製>
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに30gのPVA水溶液を流し込み、密閉した。
(2)シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で8時間凍結し、4℃で16時間解凍するサイクルを1〜8回繰り返してゲル化させた、湿潤状態のFTゲル(厚み:約2mm)を得た。
ここで、FTゲル作製時の凍結及び解凍を繰り返した前記サイクル回数に応じて、サイクル1回で得たゲルをFT1ゲルと呼び、同様に、サイクル2〜8回で得たゲルをそれぞれFT2ゲル〜FT8ゲルと呼ぶ。
(3)物性を評価する以下の比較試験においては、(2)で得られたFTゲルを超純水中に3日間浸漬し、FTゲル中の未架橋のPVAポリマーを水中に溶出させるとともに、平衡膨潤させたFTゲル(厚み:約2.5mm)を使用した。
<比較用の、乾燥処理を加えたFTゲル(FTDゲル)の作製>
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに30gのPVA水溶液を流し込み、密閉した。
(2)シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で8時間凍結し、4℃で16時間解凍するサイクルを4回繰り返した。
(3)(2)で得た湿潤状態のFT4ゲルの質量が一定になるまで、8℃でゆっくり乾燥して、乾燥フィルムを得た。乾燥フィルムを超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲル(厚み:約2.5mm)を得た。この製法により得たPVAからなるゲルを以下でFTDゲルと呼ぶ。このFTDゲルの物性をFT4ゲルの物性と比べたところ、強度が増し、結晶化度が上がり、膨潤比が減少していた。
(4)なお、(2)で得た湿潤状態のFT4ゲルの外郭部(外周部)を接着剤により、シャーレの平面に固定し、ゲルの質量が一定になるまで8℃でゆっくり乾燥して、乾燥フィルムを得る方法により、より面積が大きく平らなゲルを作製することができる。
<比較用のキャストドライゲル(CDゲル)の作製>
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに30gのPVA水溶液を流し込んだ。
(2)8℃で質量一定となるまでゆっくり乾燥し、PVAからなるキャストフィルムを得た。
(3)(2)で作製したキャストフィルムを超純水中に24時間浸漬し、平衡膨潤させたゲル(厚み:1.2mm)を得た。この製法により得たCDゲルを比較試験に用いた。
<<ハイブリッドゲル、CDゲル、FTDゲル、FTゲルの摩擦特性および摩耗特性の比較>>
<ハイブリッドゲルの作製(1)>
FT4ゲルの上に1層のキャストドライゲルを積層したハイブリッドゲル(Q1)を以下の様に作製した。なお、以下では、キャストドライゲルをCDゲルと呼ぶ。
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの表面の上に前記PVA水溶液15gをキャストし、室温(約20〜30℃)で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(Q1)(厚み:2.3〜2.7mm)を得た。なお、ハイブリッドゲル(Q1)を作製するために使用した前記PVA水溶液は合計30gである。
<ハイブリッドゲルの作製(2)>
FT4ゲルの上に1層のキャストドライゲルを積層したハイブリッドゲル(Q2)を以下の様に作製した。なお、以下では、キャストドライゲルをCDゲルと呼ぶことがある。
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの表面の上に前記PVA水溶液15gをキャストし、8℃で質量一定になるまで自然にゆっくり乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(Q2)(厚み:2.3〜2.7mm)を得た。なお、ハイブリッドゲル(Q2)を作製するために使用した前記PVA水溶液は合計30gである。
《摩擦特性の比較》
上記で得た、CDゲル、ハイブリッドゲル(Q1、Q2)、FTDゲル、及びFT4ゲルを超純水で平衡膨潤させて、超純水中における摩擦特性を評価した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(1)により、各試料の表面に球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重100gf(0.98N)、300gf(2.94N)、又は600gf(5.88N)、を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の動摩擦係数μを測定した。なお、ハイブリッドゲル(Q1、Q2)については、ハイブリッドゲル(Q1、Q2)を構成する最表面のCDゲルに前記プローブを当てて試験した。
その結果、図1に示すように、「Hybrid」のラベルで示したハイブリッドゲル(Q2)の動摩擦係数μが、何れの垂直荷重においても最も低かった。
ここで、図1に示した結果を得る際の摩擦試験において、垂直荷重が600gf(5.88N)である場合の各ゲルの摩擦曲線を図2に示す。図2において、横軸はプローブの往復回数(Reciprocating number)を示し、縦軸は動摩擦係数μを示す。
以上の結果から、従来のCDゲル、FTDゲル、及びFTゲルに比べて、本発明にかかるハイブリッドゲルは摩擦に強く、擦り減りが少ないことが理解される。
また、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、動摩擦係数が低い材料が求められる用途に、本発明にかかるハイブリッドゲルが好適であるといえる。
《摩耗特性の比較》
上記で得た、CDゲル、ハイブリッドゲル(Q1、Q2)、FTDゲル、及びFT4ゲルを超純水で平衡膨潤させて、その摩耗特性を評価した。具体的には、後述する方法により、各試料の表面に球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重100gf(0.98N)、300gf(2.94N)、又は600gf(5.88N)、を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の摩擦率eを測定した。なお、ハイブリッドゲル(Q1、Q2)については、ハイブリッドゲル(Q1、Q2)を構成する最表面のCDゲルに前記プローブを当てて試験した。
その結果、図3Aに示すように、「Hybrid」のラベルで示したハイブリッドゲル(Q2)の摩擦率eが、何れの垂直荷重においても最も低かった。
この結果から、従来のCDゲル、FTDゲル、及びFTゲルに比べて、本発明にかかるハイブリッドゲルは摩擦に強く、擦り減りが少ないことが明らかである。
また、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、摩耗率が低い材料が求められる用途に、本発明にかかるハイブリッドゲルが好適であるといえる。
ここで、図3Aに示した結果をプロット図に変更して、図3Bに示す。図3Bにおいて、横軸は垂直荷重(WN (N))を示し、縦軸は摩耗率e(Wear ratio[%])を示す。
また、図3A及び図3Bの結果を得る際の摩耗試験において、各ゲルを浸漬させた水へ溶出したPVAの溶出量(単位:g/L)を、図4に示す。図4において、横軸は垂直荷重(Normal load[gf])を示し、縦軸は溶出量(Concentration[g/L])を示す。
<<ハイブリッドゲル、CDゲル、FTDゲル、FTゲルの膨潤比および圧縮応力の比較>>
《重量膨潤比の測定》
上記のCDゲル、ハイブリッドゲル(Q2)、FT4ゲル、FTDゲルをそれぞれ超純水で平衡膨潤させて、各ゲルから10mm四方の試験片を切り出した。各試験片の重量Wを電子天秤で測定した。また、各試験片を乾燥させた乾燥体(乾燥フィルム)を得た。
各乾燥体の重量Wを電子天秤で測定した。
重量を測定した各試験片について、重量Wを重量Wで割った重量膨潤比(W/W)を求めた。この結果を図5および図6において、黒塗りの棒グラフで示す。
《30%圧縮応力の測定》
上記で得た、CDゲル、ハイブリッドゲル(Q2)、FT4ゲル、FTDゲルを超純水で平衡膨潤させて、後述する方法により、繰り返し圧縮試験を行い、各ゲルの30%圧縮応力σ30(単位:MPa)を測定した。この結果を図5において、白抜きの棒グラフで示す。
なお、圧縮応力σ30が大きい程、当該ゲルを厚み方向に押し潰すために要する力が大きいことを示す。
《50%圧縮応力の測定》
上記で得た、CDゲル、ハイブリッドゲル(Q2)、FT4ゲルを超純水で平衡膨潤させて、後述する方法により、繰り返し圧縮試験を行い、各ゲルの50%圧縮応力σ50(単位:MPa)を測定した。この結果を図6において、白抜きの棒グラフで示す。
なお、圧縮応力σ50が大きい程、当該ゲルを厚み方向に押し潰すために要する力が大きいことを示す。
《重量膨潤比および圧縮応力の比較》
図5及び図6の結果から、「Hybrid」のラベルで示したハイブリッドゲル(Q2)の重量膨潤比(W/W)が、従来のCDゲル及びFTゲルの重量膨潤比よりも低かった。
また、30%圧縮応力σ30及び50%圧縮応力σ50については、ハイブリッドゲル(Q2)の方が、従来のCDゲル及びFTゲルよりも高かった。
以上の測定結果から、従来のCDゲルおよびFTゲルよりも、本発明にかかるハイブリッドゲル(Q2)の方が、物理的な圧縮を受けた場合の形状保持力(剛性)が強いことが理解される。また、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、剛性が高い材料が求められる用途に、本発明にかかるハイブリッドゲルが好適であるといえる。
《FTDゲルの物性について》
図5の結果から、FTDゲルは高い剛性を有することが理解される。しかし、図2において「FTD」のラベルが付されているFTDゲルの動摩擦係数μは、「Hybrid」のラベ
ルが付されているハイブリッドゲル(Q2)よりも大幅に高くなっている。よって、本発明にかかるハイブリッドゲルは、高い剛性と低い動摩擦係数μを併せ持つため、FTDよりも、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、高い剛性及び低い動摩擦係数が求められる用途において、より好適であるといえる。
《ハイブリッドゲル(Q1)とハイブリッドゲル(Q2)の比較》
上記で得た、ハイブリッドゲル(Q1)と(Q2)を超純水で平衡膨潤させて、その摩擦特性を比較した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(1)により、各ハイブリッドゲルを構成する最表面のCDゲルに2種類の球状のプローブ(ステンレス球、φ=10mm;セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重600gf(5.88N)、を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の動摩擦係数μを測定した。その測定で得られた摩擦曲線を図7A(ステンレス球を使用した結果)、図7B(セラミック骨頭を使用した結果)に示す。図7A、図7Bにおいて、横軸はプローブの往復回数(Reciprocating number)を示し、縦軸は動摩擦係数μを示す。
図7A、図7Bの結果から、球状のプローブの種類によらず、室温で乾燥する処理を行ったハイブリッドゲル(Q1)よりも、8℃でゆっくり乾燥する処理を行ったハイブリッドゲル(Q2)の方が、低い動摩擦係数μを有していることが明らかである。
したがって、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、動摩擦係数が低い材料が求められる用途には、本発明にかかるハイブリッドゲル(Q2)がより好適であるといえる。
<<ハイブリッドゲル作製時の浸透処理の評価>>
<ハイブリッドゲルの作製(3)>
FT4ゲルの上に1層のキャストドライゲルを積層したハイブリッドゲル(S1)及び(S4)を以下の様に作製した。なお、以下では、キャストドライゲルをCDゲルと呼ぶことがある。
ハイブリッドゲル(S1)を作製する場合は、前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの表面の上に前記PVA水溶液15gをキャストし、8℃で質量一定になるまで自然にゆっくり乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(S1)を得た。
ハイブリッドゲル(S4)を作製する場合は、前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの表面の上に前記PVA水溶液15gをキャストし、密閉して乾燥を防いだ状態で約5日間(120時間)静置した。この静置処理(浸透処理)により、PVA水溶液の一部をFT4ゲルの表層に浸透させた。次に、密閉状態を解除して、8℃で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(S4)を得た。
《ハイブリッドゲル(S1)及び(S4)の断面構造》
ハイブリッドゲル(S1)及び(S4)の断面において、FT4ゲルとCDゲルとの境界部分を位相差顕微鏡で観察した。
図8に、ハイブリッドゲル(S4)を構成するFT4ゲルとCDゲルの断面全体を映した写真を示す。中央付近がFT4ゲルとCDゲルとの境界部分を示す。
図9に、ハイブリッドゲル(S4)の境界部分を拡大した写真を示す。写真中のt=120hは、上記静置処理の時間が120時間であることを示す。
図10に、ハイブリッドゲル(S1)の境界部分を拡大した写真を示す。写真中のt=0hは、上記静置処理の時間が0時間であることを示す。
上記の断面写真から、ハイブリッドゲル(S4)の境界部分において、CDゲルの一部がFT4ゲルの表層に浸透した境界層を形成していることが確認できた。
<ハイブリッドゲルの作製(4)>
ハイブリッドゲル作製時における上記の静置処理(浸透処理)の時間を変化させた場合の、ハイブリッドゲルの厚み、重量膨潤比、厚さ膨潤比を調べる目的で、FT4ゲルの上に1層のCDゲルを積層したハイブリッドゲル(S1)〜(S5)を以下の様に作製した。
ハイブリッドゲル(S1)及び(S4)の作製においては、上述した通りに、浸透処理をそれぞれ0日(0時間)又は5日(120時間)行った。
ハイブリッドゲル(S2)を作製する方法は、浸透処理の時間を1日(24時間)に変更した以外は、ハイブリッドゲル(S4)を作製する方法と同じである。
ハイブリッドゲル(S3)を作製する方法は、浸透処理の時間を3日(72時間)に変更した以外は、ハイブリッドゲル(S4)を作製する方法と同じである。
ハイブリッドゲル(S5)を作製する方法は、浸透処理の時間を15日(360時間)に変更した以外は、ハイブリッドゲル(S4)を作製する方法と同じである。
上記で得たハイブリッドゲル(S1)〜(S5)を用いて、ハイブリッドゲル作製時における上記の浸透処理を変化させた場合の、ハイブリッドゲルの厚み、重量膨潤比、厚さ膨潤比を以下の様に調べた。
《ハイブリッドゲル(S1)〜(S5)の厚み》
上記浸透処理後、8℃で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルム(s1)〜(s5)を得た。これらの各乾燥フィルムの厚みtをノギスで測定した。この結果を図11で白丸(○)のプロットで示す。
その後、超純水で各乾燥フィルムを平衡膨潤させて得られたハイブリッドゲル(S1)〜(S5)の厚みtをノギスで測定した。この結果を図11で黒丸(●)のプロットで示す。
なお、図11において、横軸は上記の浸透処理の日数t(day)を示し、縦軸は厚み(単位:mm)を示す。
図11の結果において、1日間〜5日間の浸透処理を行ったハイブリッドゲルの膨潤時の厚みは、5日間を超える長期間の浸透処理を行ったハイブリッドゲルの厚みよりも厚い。この結果は、1日間〜5日間の浸透処理の間に、徐々にPVA水溶液がFT4ゲルの表面から内部に浸透していることを示していると考えられる。従って、1日間〜5日間の浸透処理を行うことにより、PVA水溶液をFT4ゲルの表層部に浸透させて、CDゲルの一部がFT4ゲルの表層に浸透した境界層を形成できることが明らかである。
一方、5日間を超えた浸透処理を行っても、ハイブリッドゲルの厚みが変化していないことから、この試験例においては、FT4ゲル上にキャストされたPVA水溶液の浸透は、約5日間で頭打ちになっていると考えられる。
《ハイブリッドゲル(S1)〜(S5)の重量膨潤比と厚さ膨潤比》
上記と同様の方法によって、乾燥した積層フィルム(s1)〜(s5)を得た。これらの各乾燥フィルムの厚みtをノギスで測定した。その後、超純水で平衡膨潤させたハイブリッドゲル(S1)〜(S5)から、10mm四方の試験片を切り出した。各試験片の厚みtをノギスで測定し、各試験片の重量Wを電子天秤で測定した。
また、各試験片を60℃で3日間乾燥させた乾燥体(乾燥フィルム)を得た。各乾燥体の重量Wを電子天秤で測定した。
測定した各ハイブリッドゲルについて、重量Wを重量Wで割った重量膨潤比(W/W)を求めた。この結果を図12において白丸(○)のプロットで示す。
測定した各ハイブリッドゲルについて、厚みtを厚みtで割った重量膨潤比(t/t)を求めた。この結果を図12において黒丸(●)のプロットで示す。
なお、図12において、横軸は上記の浸透処理の日数t(day)を示し、縦軸は重量膨潤比又は厚さ膨潤比を示す。
図12の結果から、浸透処理の時間の増加とともに、前記PVA水溶液のFT4ゲル内への浸透量が増加し、CDゲルとFT4ゲルの境界層で網目密度及び結晶化度が増加するため、ハイブリッドゲルの厚さが減少し、さらにハイブリッドゲルの強度が増加していると考えられる。
《CDゲル、FTゲル、ハイブリッドゲルにおける動摩擦係数と摩耗率との関係》
前記比較用のCDゲルと、前記比較用のFT4ゲルと、前記ハイブリッドゲル(Q1)及び(Q2)並びにハイブリッドゲル(S1)〜(S4)について、前述の方法によって動摩擦係数μ及び摩耗率eを測定した。この測定結果を図13に示す。図13において、横軸は動摩擦係数μを示し、縦軸は摩耗率eを示す。
各ゲルについて、前記ステンレス製の球状プローブを用いた場合の測定値を、図13において白丸(○)のプロットで示す。また、前記セラミック製の球状プローブを用いた場合の測定値を、図13において黒丸(●)のプロットで示す。
図13において、個々のプロットとゲルの種類との対応関係は敢えて示していない。また、同じ種類のゲルについて複数回測定して得られた結果も含むため、プロットの数と測定したゲルの種類の数は一致していない。
図13から理解されることは、CDゲル、FTゲル及びハイブリッドゲルは、ゲルの種類に関わらず、動摩擦係数μが小さいゲルは、その摩耗率eも小さい、ということである。
<<ハイブリッドゲルを構成するFTゲルの凍結解凍サイクルの回数と物性の関係>>
<ハイブリッドゲルの作製(5)>
FT1ゲル〜FT8ゲルの上に1層のキャストドライゲル(CDゲル)を積層したハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)を以下の様に作製した。
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT1ゲルを準備した。このFT1ゲルの表面の上に前記PVA水溶液15gをキャストし、8℃で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT1ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(1FT)を得た。
ハイブリッドゲル(2FT)を作製する場合は、FT1ゲルの代わりにFT2ゲルを用いること以外は、ハイブリッドゲル(1FT)を作製する方法と同じ方法によって、FT2ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(2FT)を得た。
同様の方法で、FT1ゲルの代わりにFT3〜FT8ゲルを用いることによって、FT3〜FT8の表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(3FT)〜ハイブリッドゲル(8FT)をそれぞれ得た。
作製した各ハイブリッドゲル(1FT)〜ハイブリッドゲル(8FT)において、FTゲルを構成するPVAの重量及びCDゲルを構成するPVAの重量は、各ハイブリッドゲル間でほぼ同じになるように作製した。
《ハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)の摩擦特性》
上記の様に作製したハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)を超純水で平衡膨潤させて、その摩擦特性を評価した。具体的には、後述する方法により、各ハイブリッドゲルの最表面を構成するCDゲルに球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重300gf(2.94N)又は600gf(5.88N)を印加しながら繰り返し擦ることにより、動摩擦係数μを測定して、各ハイブリッドゲルを構成するFTゲルの凍結及び解凍サイクルの回数(NFT)に対する依存性を調べた。その結果を図14に示す。
図14において、「0FT」は、前記比較用のCDゲルの作製と同じ方法によって得た、8℃の乾燥処理後に超純水で平衡膨潤して得た比較用のCDゲルである。また、図14において、白丸(○)のプロットは垂直荷重300gf(2.94N)の結果を示し、黒丸(●)のプロットは垂直荷重600gf(5.88N)の結果を示す。
図14に示すように、前記回数が1〜4回までは、回数が増えるとともに動摩擦係数μは低下し、前記回数が4〜8回の場合はほぼ同等の動摩擦係数μであった。この結果から、摩擦特性は、ハイブリッドゲル(4FT)〜(8FT)の方が、ハイブリッドゲル(1FT)〜(3FT)よりも優れていることが分かった。
上記結果から、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、動摩擦係数が低い材料が求められる用途には、ハイブリッドゲル(2FT)〜(8FT)が好適であり、ハイブリッドゲル(3FT)〜(8FT)がより好適であり、ハイブリッドゲル(4FT)〜(8FT)がさらに好適であるといえる。
《ハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)の摩耗特性》
上記の様に作製したハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)を超純水で平衡膨潤させて、その摩耗特性を評価した。具体的には、後述する方法により、各ハイブリッドゲルの最表面を構成するCDゲルに球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重300gf(2.94N)又は600gf(5.88N)を掛けながら繰り返し擦ることにより、摩擦率eを測定して、各ハイブリッドゲルを構成するFTゲルの凍結及び解凍サイクルの回数(NFT)に対する依存性を調べた。その結果を図15に示す。
図15において、「0FT」は、前記比較用のCDゲルの作製と同じ方法によって得た、8℃の乾燥処理後に超純水で平衡膨潤して得た比較用のCDゲルである。また、図15において、白丸(○)のプロットは垂直荷重300gf(2.94N)の結果を示し、黒丸(●)のプロットは垂直荷重600gf(5.88N)の結果を示す。
図15に示すように、前記回数が1〜4回までは、回数が増えるとともに摩擦率eは低下し、前記回数が4〜8回の場合はほぼ同等の摩擦率eであった。これらの結果から、摩耗特性は、ハイブリッドゲル(4FT)〜(8FT)の方が、ハイブリッドゲル(1FT)〜(3FT)よりも優れていることが分かった。
上記結果から、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、摩耗率が低い材料が求められる用途には、ハイブリッドゲル(2FT)〜(8FT)が好適であり、ハイブリッドゲル(3FT)〜(8FT)がより好適であり、ハイブリッドゲル(4FT)〜(8FT)がさらに好適であるといえる。
《ハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)の重量膨潤比》
各ハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)の膨潤特性を調べるため、重量膨潤比を測定した。超純水で平衡膨潤させた各ハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)から、10mm四方の試験片を切り出した。この試験片の表面に付着した水分をペーパータオルで拭き取り、平衡膨潤重量Wを測定した。次に、各ハイブリッドゲル(1FT)〜(8FT)を60℃で3日間乾燥させた乾燥体を得て、その重量(乾燥重量)Wを測定した。
測定した平衡膨潤重量Wを乾燥重量Wで割り、重量膨潤比(W/W)を算出した。
その結果、図16に示すように、前記回数が1〜4回までは、回数が増えるとともに重量膨潤比は低下し、前記回数が4〜8回の場合はほぼ同等の重量膨潤比であった。
図16において、「0FT」は、前記比較用のCDゲルの作製と同じ方法によって得た、8℃の乾燥処理後に超純水で平衡膨潤して得た比較用のCDゲルである。
<<ハイブリッドゲルを構成する「FTゲルとCDゲルの厚み比」と物性の関係(1)>>
<ハイブリッドゲルの作製(6)>
FT4ゲルの上に1層のキャストドライゲル(CDゲル)を積層したハイブリッドゲル(P0)〜(P6)を以下の様に作製した。
各ハイブリッドゲル(P0)〜(P6)の相違点は、FT4ゲルを作製する際の前記PVA水溶液の重量と、CDゲルを作製する際の前記PVA水溶液の重量との割合と、が異なる点である。よって、ハイブリッドゲル(P0)から(P6)の順に、FT4ゲルの厚みは増加し、CDゲルの厚みは減少する。
下記表に、各ハイブリッドゲル(P0)〜(P6)のFT4ゲル及びCDゲルを作製する際の前記PVA水溶液の重量を示す。
上記表から理解されるように、ハイブリッドゲル(P0)はFT4ゲルを有さない、CDゲルである。また、ハイブリッドゲル(P6)はCDゲルを有さない、FT4ゲルである。ここでは便宜のために、CDゲルをハイブリッドゲル(P0)と呼び、FT4ゲルをハイブリッドゲル(P6)と呼ぶ。
ハイブリッドゲル(P0)、すなわちCDゲル、を作製する場合は、内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに30gのPVA水溶液を流し込み、室温(約20〜30℃)で質量一定となるまで乾燥し、PVAからなるキャストフィルムを得た。このキャストフィルムを超純水中に24時間浸漬し、平衡膨潤させたCDゲル(厚み:約1.2mm)を、ハイブリッドゲル(P0)として得た。
ハイブリッドゲル(P1)〜(P5)を作製する場合は、まず、以下の方法で各FTゲルを得た。
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに前記表に記載の重量のPVA水溶液を流し込み、密閉した。
(2)シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で8時間凍結し、4℃で16時間解凍するサイクルを4回繰り返した。
(3)(2)で得た湿潤状態のFT4ゲルの表面の上に、前記表に記載の重量の前記PVA水溶液をキャストし、室温(約20〜30℃)で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、平衡膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(P1)〜(P5)を得た。
ハイブリッドゲル(P6)、すなわちFT4ゲル、を作製する場合は、内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに30gのPVA水溶液を流し込み、密閉し、シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で8時間凍結し、4℃で16時間解凍するサイクルを4回繰り返した。その後、得られた湿潤状態のFT4ゲルを超純水中に浸漬して、平衡膨潤させたFT4ゲル(厚み:約2mm)を、ハイブリッドゲル(P6)として得た。
《ハイブリッドゲル(P0)〜(P5)の引張り強度》
上記の様に作製したハイブリッドゲル(P0)〜(P5)を超純水で平衡膨潤させて、その引張り強度を評価した。具体的には、後述する方法により、破断応力(Breaking Stress)(単位:MPa)と破断歪み(Breaking Strain)を測定して、各ハイブリッドゲルを構成するFT4ゲル作製時に使用した前記PVA水溶液の重量Wに対する依存性を調べた。
その結果、図17に示すように、重量Wが0〜10gの範囲においては、重量Wが増加する程(FT4ゲル/CDゲルの重量比が増加する程)、破断応力が減少した。重量Wが10〜25gの範囲においては、重量Wが増加しても、破断応力はほぼ一定であった。一方、図18に示すように、重量Wが増加する程(FT4ゲル/CDゲルの重量比が増加する程)、破断歪みが低下した。重量Wが15gを超えると、破断歪みの低下が顕著となった。
《ハイブリッドゲル(P0)〜(P5)の弾性係数》
上記の様に作製したハイブリッドゲル(P0)〜(P5)を超純水で平衡膨潤させて、その弾性係数を評価した。弾性係数は、上記の通り測定した破断応力を横軸に、破断歪みを縦軸に取って得られる応力−歪み曲線の低歪みの部分の傾き(直線部分)の勾配として求められる。この弾性係数に基づいて、各ハイブリッドゲルを構成するFT4ゲル作製時に使用した前記PVA水溶液の重量Wに対する依存性を調べた。
その結果、図19に示すように、重量Wが増加するにつれて(FT4ゲル/CDゲルの重量比が増加するにつれて)、弾性係数(単位:MPa)が減少した。
<<ハイブリッドゲルを構成する「FTゲルとCDゲルの厚み比」と物性の関係(2)>>
<ハイブリッドゲルの作製(7)>
FT4ゲルの上に1層のキャストドライゲル(CDゲル)を積層したハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)を以下の様に作製した。
各ハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)の相違点は、一定量(一定の厚み)のFT4ゲルの上に積層する、CDゲルを作製する際の前記PVA水溶液の重量が異なる点である。
よって、ハイブリッドゲル(Y1)から(Y4)の順に、CDゲルの厚み及びハイブリッドゲルの厚みが増加する。
下記表に、各ハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)のFT4ゲル及びCDゲルを作製する際の前記PVA水溶液の重量を示す。
ハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)を作製する場合は、まず、以下の方法で各FTゲルを得た。
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに前記表に記載の重量(15g)のPVA水溶液を流し込み、密閉した。
(2)シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で8時間凍結し、4℃で16時間解凍するサイクルを4回繰り返した。
(3)(2)で得た湿潤状態のFT4ゲルの表面の上に、前記表に記載の重量の前記PVA水溶液をキャストし、室温(約20〜30℃)で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、平衡膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)を得た。
《ハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)の摩擦特性》
上記の様に作製したハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)を超純水で平衡膨潤させて、その摩擦特性を評価した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(1)により、各ハイブリッドゲルの最表面を構成するCDゲルに球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重100gf(0.98N)、300gf(2.94N)、又は600gf(5.88N)、を掛けながら繰り返し擦ることにより、動摩擦係数μを測定して、各ハイブリッドゲルを構成するCDゲル作製時に使用した前記PVA水溶液の重量W(即ち、FT4ゲルの上にキャストした前記PVA水溶液の重量W)に対する依存性を調べた。
まず、測定した動摩擦係数μとプローブの往復回数(Reciprocating number)の関係を示す摩擦曲線を図20と図21に示す。
図20及び図21において、「5g」のラベルを付した摩擦曲線は、ハイブリッドゲル(Y1)の摩擦曲線であり、「10g」、「15g」、「30g」のラベルを付した摩擦曲線は、それぞれハイブリッドゲル(Y2)、(Y3)、(Y4)の摩擦曲線である。
図20においては、各ハイブリッドゲルについて、異なる垂直荷重(100gf(0.98N)、300gf(2.94N)、600gf(5.88N))を掛けた場合の摩擦曲線を重ねて示してある。
図21においては、垂直荷重600gf(5.88N)を掛けた場合の各ハイブリッドゲルの摩擦曲線を重ねて示してある。
つぎに、上記の摩擦曲線を解析した結果、図22に示すように、重量Wが5〜15gの範囲においては、重量Wが増加してFT4ゲルに対するCDゲルの重量比が増加する程、動摩擦係数μは低くなる傾向があった。一方、重量Wが15〜30gの範囲においては、重量Wが増加してFT4ゲルに対するCDゲルの重量比が増加しても、動摩擦係数μはほぼ同等であった。
これらの結果を、垂直荷重600gf(5.88N)の場合について、図23に白丸(○)のプロットで示す。
以上の結果から、摩擦特性は、ハイブリッドゲル(Y2)、(Y3)、(Y4)の方が、(Y1)よりも優れていることが分かった。
さらに、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、動摩擦係数が低い材料が求められる用途には、ハイブリッドゲル(Y2)〜(Y4)が好適であり、ハイブリッドゲル(Y3)〜(Y4)がより好適であるといえる。
《ハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)の摩耗特性》
上記の様に作製したハイブリッドゲル(Y1)〜(Y4)を超純水で平衡膨潤させて、その摩耗特性を評価した。具体的には、後述する方法により、各ハイブリッドゲルの最表面を構成するCDゲルに球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を当てて、垂直荷重100gf(0.98N)、300gf(2.94N)、又は600gf(5.88N)、を掛けながら繰り返し擦ることにより、摩擦率eを測定して、各ハイブリッドゲルを構成するCDゲル作製時に使用した前記PVA水溶液の重量W(即ち、FT4ゲルの上にキャストした前記PVA水溶液の重量W)に対する依存性を調べた。
その結果、図24に示すように、重量Wが5〜15gの範囲においては、重量Wが増加してFT4ゲルに対するCDゲルの重量比が増加する程、摩擦率eは低くなる傾向があった。一方、重量Wが15〜30gの範囲においては、重量Wが増加してFT4ゲルに対するCDゲルの重量比が増加しても、摩擦率eはほぼ同等であった。
これらの結果を、垂直荷重600gfの場合について、図23に黒丸(●)のプロットで示す。
以上の結果から、摩耗特性は、ハイブリッドゲル(Y2)、(Y3)、(Y4)の方が、(Y1)よりも優れていることが分かった。
さらに、人工関節の軟骨の代替材料の用途など、動摩擦係数が低い材料が求められる用途には、ハイブリッドゲル(Y2)〜(Y4)が好適であり、ハイブリッドゲル(Y3)〜(Y4)がより好適であるといえる。
<<ハイブリッドゲル作製時の、FTゲルを支持体上に拘束した状態におけるCDゲルの形成>>
<ハイブリッドゲルの作製(8)>
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレの表面に15wt%PVA水溶液を塗布し、FT4ゲルとシャーレ面を接着した。この接着によって、後で行う乾燥工程においてFT4ゲルが面内方向で収縮することを抑制した。
次に、シャーレ上に接着固定した上記FT4ゲルの上に、前記PVA水溶液15gをキャストし、8℃で質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(W1)(厚み:約2.3〜2.7mm)を形成した。得られたハイブリッドゲル(W1)を固定に用いたシャーレから取り外し、以下の評価に使用した。
なお、ハイブリッドゲル(W1)を作製するために使用した前記PVA水溶液は合計30gである。
《摩擦特性の比較》
上記で得たハイブリッドゲル(W1)とハイブリッドゲル(Q2)をそれぞれ超純水で平衡膨潤させて、超純水中における摩擦特性を比較した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(1)により、各ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面に球状のプローブを当てて、600gf(5.88N)の垂直荷重を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の動摩擦係数μを測定した。なお、本試験においてはアルミナ骨頭、φ=26mmを使用した。
その結果、図26に示すように、「固着なし」のラベルで示したハイブリッドゲル(Q2)よりも、「固着あり」のラベルで示したハイブリッドゲル(W1)の動摩擦係数μの方が低く且つ安定していた。
図26において、下の横軸はプローブの往復回数(Reciprocating number)を示し、上の横軸はすべり距離(Sliding Distance(m))を示し、縦軸は動摩擦係数μを示す。
以上の結果から、FT4ゲル上にキャストしたPVA水溶液を乾燥してCDゲルを形成する際に、FT4ゲルを支持体上に拘束した状態で上記乾燥を行うことによって、動摩擦係数が更に低くなったハイブリッドゲルが得られることが理解される。
<<ハイブリッドゲル作製時のCDゲルを形成する乾燥工程における湿度制御>>
<ハイブリッドゲルの作製(9)>
内寸59.5mm×28.5mmのスチロールケースにPVA水溶液を流し込んだこと、前記PVA水溶液の使用量を5gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
平均孔径60μmの多孔質のアルミナ板の表面に、前記PVA水溶液3gを塗布し、減圧下で2分間静置することにより、前記PVA水溶液の一部をアルミナ板の表面の多孔質内に浸透させた。
次に、その塗布面に上記FT4ゲルを置いて、更に当該FT4ゲルの上に、前記PVA水溶液3gをキャストし、湿度制御機能付きの恒温室内に静置して、8℃、相対湿度80%rhの雰囲気下において質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、アルミナ板の表面に固着した、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、このアルミナ板を超純水中に浸漬して、表面に固着した積層フィルムを膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(Z1)(厚み:約1.7〜2.3mm)を形成した。得られたハイブリッドゲル(Z1)はアルミナ板の表面に固定された状態を保った。
平均孔径100μmの多孔質のアルミナ板を使用した以外は、上述のハイブリッドゲル(Z1)の作製方法と同様の方法で、アルミナ板の表面に固定されたFT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(Z2)(厚み:約1.7〜2.3mm)を作製した。
下記(a)及び(b)以外は、上述のハイブリッドゲル(Z1)の作製方法と同様の方法で、アルミナ板の表面に固定された、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(Z3)(厚み:約1.7〜2.3mm)を作製した。
(a)平均孔径180μmの多孔質のアルミナ板を使用した。
(b)FT4ゲルの上にキャストしたPVA水溶液の乾燥を、湿度管理がなされていない8℃の冷蔵庫内において質量一定になるまで自然に乾燥させた。
《摩擦特性の比較》
上記で得た、アルミナ板に支持されたハイブリッドゲル(Z1)、(Z2)及び(Z3)をそれぞれ超純水で平衡膨潤させて、超純水中における摩擦特性を比較した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(1)により、各ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面に球状のプローブを当てて、600gf(5.88N)の垂直荷重を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の動摩擦係数μを測定した。なお、本試験においてはアルミナ骨頭、φ=26mmを使用した。
その結果、図27に示すように、「AL180-Hyb-8℃(冷蔵庫乾燥)」のラベルで示したハイブリッドゲル(Z3)よりも、「AL60-Hyb-8℃80%」のラベルで示したハイブリッドゲル(Z1)及び「AL100-Hyb-8℃80%」のラベルで示したハイブリッドゲル(Z2)の動摩擦係数μの方が低く且つ安定していた。
図27において、横軸はプローブの往復回数(Reciprocating number)を示し、縦軸は動摩擦係数μを示す。
以上の結果から、FT4ゲル上にキャストしたPVA水溶液を乾燥してCDゲルを形成する際に、温度及び相対湿度を制御した雰囲気下で上記乾燥を行うことによって、動摩擦係数が更に低くなったハイブリッドゲルが得られることが理解される。
<ハイブリッドゲルの作製(10)>
平均孔径20μmの多孔質アルミナ板を使用して、上述のハイブリッドゲル(Z1)の作製方法と同様の方法で、アルミナ板の表面に固定されたFT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなる、ハイブリッドゲル(Z4)(厚み:約1.7〜2.3mm)を作製した。
《支持体に対する結合力の評価》
上記のハイブリッドゲル(Z1)、(Z2)及び(Z4)について、各ハイブリッドゲルを支持体のアルミナ板から剥離したときの剥離力を測定することにより、各ハイブリッドゲルのアルミナ板に対する結合力を評価した。
剥離力の測定(剥離試験)は、万能試験機(Instron5965、Instron製)を用い、速度1.0mm/秒、剥離角90°で行った。
その結果、図28に示すように、「20μm」、「60μm」、「100μm」の各ラベルで示したハイブリッドゲル(Z4)、(Z1)、(Z2)の順に、剥離力、すなわちアルミナ板に対する結合力が大きくなっていた。また、結果は図示しないが、上記の各ハイブリッドゲルについて摩擦特性を測定したところ、アルミナ板の平均孔径が大きく、アルミナ板に対するハイブリッドゲルの結合力が大きい程、動摩擦係数が小さい、という傾向が観察された。
図28において、横軸は剥離距離(Peel Distance(mm))を示し、縦軸は剥離力(Peel Force(N/m))を示す。
<ハイブリッドゲルの作製(11)>
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの上に前記PVA水溶液15gをキャストし、湿度制御機能付きの恒温室内に静置して、8℃、相対湿度50%rhの雰囲気下において質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(J1)(厚み:約2mm)を得た。
<ハイブリッドゲルの作製(12)>
FT4ゲルの上にキャストした前記PVA水溶液の乾燥条件を、8℃、相対湿度60%rhの雰囲気下に変更した以外は、ハイブリッドゲル(J1)と同様の方法により、ハイブリッドゲル(J2)(厚み:約2mm)を得た。
<ハイブリッドゲルの作製(13)>
FT4ゲルの上にキャストした前記PVA水溶液の乾燥条件を、8℃、相対湿度80%rhの雰囲気下に変更した以外は、ハイブリッドゲル(J1)と同様の方法により、ハイブリッドゲル(J3)(厚み:約2mm)を得た。
《摩擦特性の比較》
上記で得た、支持体を有さないハイブリッドゲル(J1)、(J2)及び(J3)をそれぞれ超純水で平衡膨潤させて、生理食塩水中における摩擦特性を比較した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(2)により、各ハイブリッドゲルを楕円状のプローブに設置して、生理食塩水中で平板状のガラス板に当てて、300gf(2.94N)の垂直荷重を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の動摩擦係数μを測定した。
その結果、図29に示すように、「Hybrid FT4-CD8℃50%rh」、「Hybrid FT4-CD8℃60%rh」、「Hybrid FT4-CD8℃80%rh」の各ラベルで示した、ハイブリッドゲル(J1)、(J2)、(J3)の順で、動摩擦係数が低く且つ安定していた。
図29において、横軸はプローブのすべり距離(Sliding distance[m])を示し、縦軸は動摩擦係数μ(friction coefficient)を示す。
以上の結果から、FT4ゲル上にキャストしたPVA水溶液を乾燥してCDゲルを形成する際に、温度及び相対湿度を制御した雰囲気下で上記乾燥を行うことによって、動摩擦係数が更に低くなったハイブリッドゲルが得られることが理解される。
<ハイブリッドゲルの作製(14)>
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの上に前記PVA水溶液15gをキャストし、湿度制御機能付きの恒温室内に静置して、乾燥工程の初期条件を15℃、相対湿度80%rhの雰囲気に設定し、その初期条件で3日間乾燥した後、乾燥を継続しながら1日毎に相対湿度を10%rh低下させて、5日間をかけて、乾燥工程の後期条件として15℃、相対湿度30%rhの雰囲気に到達させて、上記後期条件において質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(K1)(厚み:約2mm)を得た。
<ハイブリッドゲルの作製(15)>
FT4ゲルの上にキャストした前記PVA水溶液の乾燥条件を、15℃、相対湿度30%rhの雰囲気下(上記後期条件)の一定条件で乾燥処理を行った以外は、ハイブリッドゲル(K1)と同様の方法により、ハイブリッドゲル(K2)(厚み:約2mm)を得た。
<ハイブリッドゲルの作製(16)>
前記PVA水溶液の使用量を15gに代えて用いたこと以外は、上述したFTゲル作製方法と同じ方法によって、湿潤状態のFT4ゲルを準備した。
このFT4ゲルの上に前記PVA水溶液15gをキャストし、湿度制御機能付きの恒温室内に静置して、乾燥工程の初期条件を8℃、相対湿度50%rhの雰囲気に設定し、その初期条件で7日間乾燥した後、乾燥工程の後期条件として20℃、相対湿度40%rhの雰囲気に切り換えて、上記後期条件において質量一定になるまで自然に乾燥させることによって、乾燥した積層フィルムを得た。続いて、この積層フィルムを超純水中に浸漬して、膨潤させることにより、FT4ゲルの表面に1層のCDゲルが積層されてなるハイブリッドゲル(K3)(厚み:約2mm)を得た。
<ハイブリッドゲルの作製(17)>
FT4ゲルの上にキャストした前記PVA水溶液の乾燥条件を、8℃、相対湿度50%rhの雰囲気下(上記初期条件)の一律条件において質量一定になるまで乾燥処理を行った以外は、ハイブリッドゲル(K3)と同様の方法により、ハイブリッドゲル(K4)(厚み:約2mm)を得た。
《摩擦特性の比較》
上記で得た、支持体を有さないハイブリッドゲル(K1)、(K2)、(K3)及び(K4)をそれぞれ超純水で平衡膨潤させて、生理食塩水中における摩擦特性を比較した。具体的には、後述する摩擦試験の方法(2)により、各ハイブリッドゲルを楕円状のプローブに設置して、生理食塩水中で平板状のガラス板に当てて、300gf(2.94N)の垂直荷重を掛けながら繰り返し擦ることにより、各試料の動摩擦係数μを測定した。
その結果、図30に示すように、ハイブリッドゲル(K1)と(K2)を比較すると、ハイブリッドゲル(K1)の方が、動摩擦係数が低く且つ安定していた。また、ハイブリッドゲル(K3)と(K4)を比較すると、ハイブリッドゲル(K3)の方が、動摩擦係数が低く且つ安定していた。
図30において、横軸はプローブのすべり距離(Sliding distance[m])を示し、縦軸は動摩擦係数μ(friction coefficient)を示す。
以上の結果から、FT4ゲル上にキャストしたPVA水溶液を乾燥してCDゲルを形成する際に、温度及び相対湿度を制御した雰囲気下で、乾燥工程の初期においては、比較的乾燥速度が緩やかな雰囲気で乾燥し、乾燥工程の後期においては、比較的乾燥速度が促進される雰囲気で乾燥を行うことによって、動摩擦係数が更に低くなったハイブリッドゲルが得られることが理解される。
《摩耗特性の比較》
上記の摩擦特性の試験を行った後のハイブリッドゲル(K1)、(K3)及び(K4)の摩擦部位について光学顕微鏡で検査し、表面の摩耗状態を評価した。
その結果、図31(a),(b)に示すように、ハイブリッドゲル(K1)の摩擦部位の表面には、軽微な切削痕が観察された程度であり、表面のゲル構造は殆ど損傷していなかった。また、図32(a),(b)に示すように、ハイブリッドゲル(K3)の摩擦部位の表面には、摩擦試験前に存在していた皺の様な表面構造が摩擦試験後においても維持されており、表面のゲル構造は殆ど損傷していなかった。一方、図33(a),(b)に示すように、ハイブリッドゲル(K4)の表面には、摩擦試験前に存在していた皺の様な表面構造が摩擦試験後においては失われており、表面のゲル構造の一部が擦り減ったことが確認された。
以上の結果から、FT4ゲル上にキャストしたPVA水溶液を乾燥してCDゲルを形成する際に、温度及び相対湿度を制御した雰囲気下で、乾燥工程の初期においては、比較的乾燥速度が緩やかな雰囲気で乾燥し、乾燥工程の後期においては、比較的乾燥速度が促進される雰囲気で乾燥を行うことによって、CDゲル表面の耐摩耗性が一層優れたハイブリッドゲルが得られることが理解される。
<<各試験方法の詳細>>
《摩擦試験の方法(1)》
球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を用いて、ボールオンプレート(Ball-on-Plate)の繰り返し摩擦試験を行った。試験機はTRIBOGEAR TYPE38特(HEIDON社製)を使用し、以下の手順で行った。
(1)試験対象のゲルから、縦10mm、横45mm、所定の厚みの短冊状(板状)の試験片をそれぞれ切り出した。
(2)PE製プラスチックケース内の底面に、アロンアルファ(登録商標)を用いて試験片を接着した後、超純水をケース内に注いだ。この際、超純水の重量はゲル重量の50倍とした。
(3)PEプラスチックケースをステージに固定し、試験片にプローブを接触させた状態で、所定の垂直荷重をかけながら往復運動させることにより試験した。
(4)プローブの往復回数と動摩擦係数μとの関係を摩擦曲線として求めた。
具体的な試験条件は、次の通りである。
・すべり速度:20mm/秒
・往復動ストローク:25mm
・往復回数:2000回(すべり距離:100m)
・垂直荷重:0.98N(100gf)、2.94N(300gf)、5.88N(600gf)
・潤滑液:超純水
なお、ここで球状のプローブをストローク25mmで往復動させるので、2000回の往復動(Reciprocating Number of Cycle)は、プローブのすべり距離(Sliding Distance)の100mに相当する。従って、図2、図7A、図7B、図20、図21、図27の上側の横軸に、往復動回数に相当するすべり距離を記載した。
《摩擦試験の方法(2)》
試験対象のハイブリッドゲルから所定形状の試験片を切り出して、市販の接着剤を介して、断面が長径/短径=45mm/25mmの楕円状プローブの曲面に沿って固定した。この際、前記試験片のFTゲル側を接着し、CDゲル側を露出させた状態にした(図34参照)。
上記楕円状のプローブに固定されたハイブリッドゲルを生理食塩水に浸漬し、当該ハイブリッドゲルを構成するCDゲルの表面を、生理食塩水中に水平配置したガラス板上に接触させた状態で、所定の垂直荷重をかけながら往復運動させることによって、ボールオンプレート(Ball-on-Plate)の繰り返し摩擦試験を行った。この試験により、プローブの摩擦距離(Sliding distance(m))と 摩擦係数(friction coefficient)との関係を摩擦曲線として求めた。
具体的な試験条件は、次の通りである。
・すべり速度:20mm/秒
・往復動ストローク:35mm
・すべり距離:140m
・垂直荷重:2.94N(300gf)
・潤滑液:生理食塩水
《摩耗試験の方法》
摩耗試験は、前述の摩擦試験と同時並行で行った。
まず、試験対象のゲルを室温で質量一定になるまで自然に乾燥した時の重量(W)を求めた。その後、超純水で平衡膨潤させた試験対象のゲルを用いて、上述の摩擦試験を行った。所定の往復回数を経て摩擦試験を終えた後、前記プラスチックケース内の超純水中に溶出したPVAポリマーの重量(W)を前記重量(W)で割り算して、摩耗率e=W/W×100(%)を算出した。
ただし、摩擦(摩耗)によって溶出したPVAポリマーの重量(W)は、前記摩擦試験を行わずに、同じ浸漬条件で試験対象のゲルを超純水に浸漬しただけの状態で溶出したPVAポリマーの重量をリファレンス(参照値)として差し引いた重量である。これにより、重量(W)を正確に求めることができる。
前記超純水中に溶出したPVAポリマーの重量(W)は、全有機体炭素分析装置(島津製作所製、型番:TOC−VCSN)を用いて測定した。
《圧縮試験の方法》
圧縮試験機TA.XT plus(Stable Micro Systems Ltd.製)を用いて、以下の手順で繰り返し圧縮試験を行った。
(1)超純水で平衡膨潤させた各ゲルから四角形の試験片を切り出し、ノギスでその両辺の長さを測った後、繰り返し圧縮試験を行った。
(2a)試験片よりも面積が広い平板状プローブを押し当て、室温大気中にて、圧縮速度0.01mm/秒で、歪ε=30%まで試験片を圧縮した。この際、歪ε=30%まで試験片を圧縮し、同じ速度でリリースして、ゼロに戻ったらまた同じように歪ε=30%まで試験片を圧縮するという操作を繰り返した。この結果から、30%圧縮応力σ30(単位:MPa)を得た。
(2b)試験片よりも面積が広い平板状プローブを押し当て、室温大気中にて、圧縮速度0.01mm/秒で、歪ε=50%まで試験片を圧縮した。この際、歪ε=50%まで試験片を圧縮し、同じ速度でリリースして、ゼロに戻ったらまた同じように歪ε=50%まで試験片を圧縮するという操作を繰り返した。この結果から、50%圧縮応力σ50(単位:MPa)を得た。
《引張り試験の方法》
下記の手順により、作製したハイブリッドゲルの各試料の引張強度を測定した。
(1)JIS−6251−8規格に準拠したダンベルカッター(図25参照)を用いて、超純水で平衡膨潤させた各試料から切り出した試験片を準備した。
(2)食紅を使用して試験片に標点を2つ付け、ノギスでその標点間距離を測定した。
(3)マイクロメータを使用して、試験片の幅と厚みを測定した。
(4)引張試験機に試験片をセットして、室温の超純水中に試験片を浸した平衡膨潤状態において、画像データを取得しながら試験した。使用した引張試験機は、リン青銅製板ばね(長さ145mm、幅20mm、厚さ2mm)、ステッピングモーター(オリエンタルモーター社製、型番:EZ−300)、歪ゲージ(共和電業社製、型番:KFG−2−120−C116L1M2R)を備えている。
(5)画像データに基づいて、標点間距離の変化を測定した。
(6)得られたデータから、破断応力(Breaking Stress)及び破断歪み(Breaking Strain)を求めた。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。

Claims (13)

  1. 第一のPVA水溶液を凍結及び解凍することにより得られた凍結解凍ゲルの表面に、第二のPVA水溶液をキャストして乾燥した後、水で膨潤することによって、
    前記凍結解凍ゲルの表面にキャストドライゲルが積層されてなるハイブリッドゲルを得ることを特徴とするハイブリッドゲルの製造方法。
  2. 前記第一のPVA水溶液の凍結及び解凍を複数回繰り返して凍結解凍ゲルを形成することを特徴とする請求項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  3. 前記キャストした第二のPVA水溶液を、前記凍結解凍ゲルの表面から表層部分に浸透させる処理を行うことを特徴とする請求項又はに記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  4. 前記凍結解凍ゲルとして、前記第一のPVA水溶液を凍結及び解凍した後で、乾燥し、さらに水で膨潤することによって得られたゲルを用いることを特徴とする請求項の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  5. 前記凍結解凍ゲルを水中に浸漬して、前記凍結解凍ゲルから未架橋のPVAポリマーを溶出させる処理を行うことを特徴とする請求項の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  6. 前記第二のPVA水溶液をキャストした後に行う乾燥の温度が、4〜12℃であることを特徴とする請求項の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  7. 前記凍結解凍ゲルを支持体上に拘束した状態で、前記キャストした第二のPVA水溶液の乾燥を行うことを特徴とする請求項の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  8. 前記支持体として少なくとも表面が多孔質である支持体を使用し、前記表面に第三のPVA水溶液を塗布した後、その塗布面に前記凍結解凍ゲルを接触させて、前記第三のPVA水溶液を乾燥することによって、前記支持体の表面に前記凍結解凍ゲルを接着することを特徴とする請求項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  9. 前記支持体が、金属、金属酸化物、ガラス、セラミックス、及びカルシウム含有材からなる群から選ばれる一つ以上の材料を含むことを特徴とする請求項又はに記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  10. 前記多孔質の平均空孔径が0.1μm〜600μmであることを特徴とする請求項又はに記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  11. 前記第二のPVA水溶液の乾燥と、前記第三のPVA水溶液の乾燥とを同時に行うことを特徴とする請求項10の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  12. 前記キャストした第二のPVA水溶液を、相対湿度30〜90%rhの雰囲気において、乾燥することを特徴とする請求項11の何れか一項に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
  13. 前記乾燥の期間中、前記雰囲気の相対湿度を段階的に変化させることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッドゲルの製造方法。
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