<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置1の構成を示す断面図である。本実施の形態では、半導体装置1として、窒化物半導体を用いたヘテロ接合電界効果型トランジスタ(以下、単に「トランジスタ」という場合がある)を説明する。
半導体装置1は、図1に示すように、基板11、バッファ層12、チャネル層13、バリア層14、高濃度n型不純物領域15、ソース電極16、ドレイン電極17、絶縁膜18、素子分離領域19およびゲート電極20を備えて構成される。
基板11は、炭化珪素(SiC)から成る。基板11の材料は、SiCに限定されるものではなく、基板11上に窒化物半導体層を形成できる材料であればよい。より詳細には、基板11の材料は、基板11上に窒化物半導体層をエピタキシャル成長によって形成できる材料であればよい。具体的には、基板11の材料は、シリコン(Si)、サファイア、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)などであってもよい。
基板11の厚み方向一方側の表面上には、バッファ層12が設けられている。バッファ層12の厚み方向一方側の表面上には、チャネル層13が設けられている。チャネル層13は、本実施の形態では、ノンドープの単結晶の窒化ガリウム(GaN)から成る。チャネル層13の厚み方向一方側の表面上には、バリア層14が設けられている。バリア層14は、チャネル層13とヘテロ接合を形成する。
本実施の形態では、バリア層14は、ノンドープのアモルファスの窒化アルミニウム(AlN)から成り、その厚さは、たとえば5〜50nmとする。バリア層14が薄くなりすぎると、後述する電流コラプスおよびゲートリーク電流増加の原因となる。バリア層14が厚くなりすぎると、ゲート電極20に印加されるゲート電圧によるオン電流特性の制御性(相互コンダクタンス)が悪くなってしまう。これらを考慮すると、バリア層14の厚さは、好ましくは10〜30nmの範囲である。
高濃度n型不純物領域15は、高濃度のn型不純物を含んだ領域であり、本実施の形態では、チャネル層13とバリア層14とに高濃度のシリコン(Si)を添加することで形成されている。絶縁膜18は、絶縁材料から成り、本実施の形態では、酸化アルミニウム(AlOa)から成る。
本実施の形態では、前述のように、バリア層14を構成する窒化物半導体は、単結晶ではなく、アモルファスである。これによって、バリア層14に自発分極およびピエゾ分極が発生することを防ぐことができる。
バリア層が、結晶方位が揃っている単結晶から成る場合、バリア層に自発分極およびピエゾ分極が発生する。そのため、バリア層を単結晶から構成していた従来の半導体装置は、ゲート電極に電圧を印加しない状態で自発分極とピエゾ分極とによる2次元電子ガスがヘテロ界面に発生し、ノーマリオフ特性が得られにくいという問題があった。
これに対し、本実施の形態では、アモルファスの窒化物半導体から成るバリア層14を用いているので、バリア層14に自発分極およびピエゾ分極が発生しない。したがって、ゲート電極20に電圧を印加しない状態でヘテロ界面に2次元電子ガスが発生することを抑制できる。
単結晶から成るバリア層を用いた従来の半導体装置において、ノーマリ特性を得るためにバリア層の厚さを薄くすることが提案されていた。バリア層を薄くすると、ピエゾ分極および自発分極の効果を弱めることができるので、ノーマリオフ特性が得られやすくなる。
しかしながら、バリア層の表面には意図せずに表面準位が形成される。ここで、ソース電極からドレイン電極に向けて、2次元電子ガスが発生する領域であるヘテロ界面のチャネル領域を、キャリアである電子が通過する際、当該表面準位に電子が捕獲されるので、表面準位は、電流コラプスが発生する原因となる。特に、窒化物半導体を用いたヘテロ接合電界効果型トランジスタでは、表面準位が高濃度に形成されてしまうことが知られており、電流コラプスを低減することが要望されている。
表面準位が2次元電子ガスに近いほど、チャネル領域を通過する電子が当該表面準位に捕獲されやすいので、バリア層を薄くした場合、電流コラプスが大きくなってしまうという問題があった。
本実施の形態の半導体装置1を用いれば、バリア層14を薄くすることなく、ピエゾ分極および自発分極を抑制できる。したがって、本実施の形態に係る半導体装置によれば、電流コラプスを抑制しながらノーマリオフ特性を実現できるという効果が得られる。
さらに、バリア層14の表面における表面準位は、ゲートリーク電流の起源となる。すなわち、表面準位を介してゲートリーク電流が流れやすくなるので、表面準位が多いほどゲートリーク電流が増加する。
ここで、バリア層14は、ゲート電極20とヘテロ界面との間のエネルギー障壁となる。バリア層14の厚さを薄くすると、ゲート電極20とヘテロ界面との間の障壁が薄くなり、当該障壁を通過するトンネル電流が増加するので、表面準位を介したゲートリーク電流がより大きくなってしまう。
本実施の形態による半導体装置1を用いれば、ノーマリオフ特性を得るためにバリア層の厚さを薄くする必要が無いので、ゲートリーク電流の増加も抑制できる。
以上に述べたように、本実施の形態に係る半導体装置1によれば、バリア層14とチャネル層13とのヘテロ界面に、ゲート電極20に電圧を印加しない状態で、高濃度の2次元電子ガスが発生することを抑制できる。具体的には、ゲート電極20の下側で、かつ高濃度n型不純物領域15に挟まれた領域のヘテロ界面において、ゲート電極20に電圧を印加しない状態で、2次元電子ガスが発生することを抑制できる。
これによって、電流コラプスによるドレイン電流の減少、およびゲートリーク電流の増加を抑制しながら、トランジスタ10のノーマリオフ型の動作を実現することができる半導体装置1を得ることができる。
また、本実施の形態に係る半導体装置1においては、絶縁膜18は、高濃度n型不純物領域15に挟まれた、ドーピングされていない領域のバリア層14を覆うように形成される。また、絶縁膜18の上に形成されるゲート電極20も、絶縁膜18と同様に、ドーピングされていない領域のバリア層14を覆うように形成される。
すなわち、本実施の形態では、バリア層14のうち、ソース電極16の下方、およびドレイン電極17の下方には、ソース電極16およびドレイン電極17と窒化物半導体との間のオーミック抵抗を低減するために、バリア層14よりもn型不純物の濃度が高い高濃度n型不純物領域15が形成される。ここで、ソース電極16の下方の高濃度n型不純物領域15を第1の不純物領域とし、ドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15を第2の不純物領域とする。
そして、バリア層14上に絶縁膜18を介してゲート電極20が形成される。ゲート電極20は、バリア層14のうち高濃度n型不純物領域15に挟まれたチャネル領域に加えて、ソース電極16の下方の高濃度n型不純物領域15の端部と、ドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15の端部とに、絶縁膜18を介して対向していることが望ましい。すなわち、バリア層14において第1の不純物領域と第2の不純物領域とに挟まれた領域をチャネル領域とすると、ゲート電極20は、第1の不純物領域の端部と、第2の不純物領域の端部と、チャネル領域とに、絶縁膜18を介して対向する。
また、ゲート電極20は、高濃度n型不純物領域15、ソース電極16およびドレイン電極17と絶縁膜18によって電気的に絶縁される。
トランジスタである半導体装置1がON動作をするとき、キャリアとなる電子はソース電極16からソース電極16の下方の高濃度n型不純物領域15、ゲート電極20の下方のバリア層14とチャネル層13のヘテロ界面(チャネル領域)、ドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15を通ってドレイン電極17まで流れる。
半導体装置1がトランジスタのON動作をするとき、ゲート電極20に電圧が印加されることによって、ゲート電極20の下方のバリア層14とチャネル層13のヘテロ界面(チャネル領域)には2次元電子ガスが発生するので、当該領域を電子が通過できる。
ゲート電極20が、ソース電極16の下方の高濃度n型不純物領域15(第1の不純物領域)の端部と、ドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15(第2の不純物領域)の端部とに、絶縁膜18を介して対向していない場合、すなわち、ゲート電極20の直下には絶縁膜18を挟んでn型不純物がドーピングされていないバリア層14(チャネル領域)しか形成されていない場合、高濃度n型不純物領域15とゲート電極20直下のヘテロ界面までの間に寄生抵抗が発生する。
ゲート電極20に電圧を印加したとき、ゲート電極20の直下のヘテロ界面には十分に高濃度である2次元電子ガスが発生する。しかしながら、ヘテロ界面がゲート電極20の直下から離れるにつれて、印加される電界が弱まるため、十分な濃度の2次元電子ガスが発生しない。つまり、チャネル領域のソース電極16側の端部とドレイン電極17側の端部には、十分な濃度の2次元電子ガスが発生せず、寄生抵抗となる。
本実施の形態に係る半導体装置1によれば、ゲート電極20が、ソース電極16の下方の高濃度n型不純物領域15の端部と、チャネル領域と、ドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15の端部とに、絶縁膜18を介して対向する。したがって、断面視において、高濃度n型不純物領域15に挟まれたヘテロ界面の上には、ソース電極16側からドレイン電極17側まで全領域にゲート電極20が設けられている。これによって、ON動作するときには、高濃度n型不純物領域15に挟まれたヘテロ界面に十分な濃度の2次元電子ガスが発生し、キャリアが通過する経路の抵抗を十分に低減することができる。
また本実施の形態では、チャネル層13は、単結晶のGaNから成る。これによって、チャネル層13が他の窒化物半導体から成る場合に比べて、ヘテロ界面での合金散乱およびラフネス散乱が抑制され、ゲート電極20に正の電圧を印加したときに界面に生じるキャリア(2次元電子ガス)の移動度が向上する。したがって、トランジスタである半導体装置1のオン抵抗を低減することができる。
また本実施の形態では、バリア層14は、アモルファスのAlNから成る。AlNは、他の窒化物半導体に比べてバンドギャップが大きいので、バリア層14がAlNから成ることによって、バリア層14が他の窒化物半導体から成る場合に比べて、ゲート電極20からヘテロ界面までのエネルギー障壁が高くなる。したがって、トランジスタである半導体装置1のゲートリーク電流を低減することができる。
本実施の形態の半導体装置1は、窒化物半導体を用いたヘテロ接合電界効果型トランジスタであり、バンドギャップが異なる窒化物半導体から成るチャネル層13とバリア層14とのヘテロ界面をチャネルとして動作する。すなわち、半導体装置1は、バリア層14を構成する窒化物半導体の方が、チャネル層13を構成する窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい場合は、トランジスタとして動作する。
したがって、必ずしも本実施の形態のようにチャネル層13がGaNで構成され、バリア層14がAlNで構成される必要はない。チャネル層13およびバリア層14は、他の材料で構成されてもよい。たとえば、チャネル層13を構成する窒化物半導体は、窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)でもよい。同様に、バリア層14を構成する窒化物半導体は、窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)でもよいし、窒化アルミニウム(AlN)でもよい。
このように本実施の形態では、チャネル層13を構成する窒化物半導体は、AlxGa1−xNで表され、バリア層14を構成する窒化物半導体は、AlyGa1−yNで表される。ここで、符号「x」および「y」は、それぞれアルミニウムの組成比を示し、x<1、かつ0≦x<y≦1を満たす必要がある。
また、チャネル層13およびバリア層14は、バリア層14を構成する窒化物半導体の方が、チャネル層13を構成する窒化物半導体よりもバンドギャップが大きいという条件を満たす範囲内で、インジウム(In)を含んでもよい。この場合、チャネル層13を構成する窒化物半導体、およびバリア層14を構成する窒化物半導体は、InzAl1−zNで構成されてもよいし、InzAlxGa1−x−zNで構成されてもよい。ここで、符号「z」は、インジウムの組成比を示し、0≦z≦1である。
また、本実施の形態のように、基板11の材料として、チャネル層13と異なる材料のSiCまたはSiを用いる場合には、バッファ層12を設けることが望ましい。基板11として、チャネル層13と同一材料のGaN、AlGaN、またはInAlGaNを用いる場合には、バッファ層12は必ずしも必要ではない。
また、半導体装置1は、基板11上に前述のように組成の異なるチャネル層13とバリア層14の少なくとも2層が形成されている場合は、トランジスタとして動作する。図1では、トランジスタとして動作する最小限の半導体層しか記載していないが、トランジスタとして動作する条件を満足する範囲内であれば、前述の2層に加えて、1つまたは複数の他の半導体層が形成されてもよい。たとえば、チャネル層13の下側またはバリア層14の上側の最表面に、チャネル層13またはバリア層14とは組成が異なる窒化物半導体層が形成されてもよい。
本実施の形態では、バリア層14がアモルファスの窒化物半導体から成る形態を説明したが、バリア層14がアモルファスの窒化物半導体を含んでいれば、本実施の形態の効果の一部が得られる。たとえば、バリア層14がアモルファスAlNと単結晶AlNとから構成されている場合、バリア層14の全てが単結晶AlNから構成されている場合に比べて、単結晶AlNが減少した分、バリア層14内に発生する自発分極およびピエゾ分極を低減できる。したがって、ゲート電極20に電圧が印加されていない状態においてヘテロ界面に発生する2次元電子ガスの濃度が低減され、ノーマリオフが得られやすくなる。
チャネル層13およびバリア層14を含むこれらの窒化物半導体層は、必ずしもノンドープである必要はなく、トランジスタの動作に支障がない量である場合は、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、炭素(C)といった不純物を含んでもよい。
高濃度n型不純物領域15に含まれるn型不純物は、必ずしもSiである必要はなく、酸素原子(O)、または窒素空孔などの窒化物半導体においてn型のドーパントとして振舞う不純物であればよい。
絶縁膜18の材料は、必ずしもAlOaである必要はなく、バリア層14を構成する窒化物半導体に対して絶縁膜18として振舞える程度にバンドギャップが大きい材料であればよい。具体的には、絶縁膜18の材料は、AlGaaOb、SiNc、SiOd、HfOe、TiOfなどであってもよい。
図1では、トランジスタ10として動作する必要最小限の要素しか記載していないが、半導体装置1は、最終的には、保護膜、フィールドプレート電極、配線、エアブリッジ、バイアホールなどが形成された構造においてデバイスとして用いられる。
図2〜図7は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置1の製造工程の各段階が終了した状態を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置1は、以下のようにして製造される。
図2は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法において、基板11上へのバッファ層12、チャネル層13およびバリア層14の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。基板11上に、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;略称:MOCVD)法、または分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy;略称:MBE)法などのエピタキシャル成長法を適用することによって、バッファ層12、チャネル層13、バリア層14を、この順に成長する。これによって、バッファ層12、チャネル層13、バリア層14が形成される。
チャネル層13を成長する工程は、チャネル層成長工程に相当し、バリア層14を成長する工程はバリア層成長工程に相当する。本実施の形態では、前述のようにチャネル層成長工程とバリア層成長工程とは、同一の反応炉内で連続的に行われる。
図3は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法において、高濃度n型不純物領域15の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして形成されたチャネル層13およびバリア層14の予め定める領域に、レジストパターンなどをマスクとして用いて、イオン注入法などによって、Siなどの窒化物半導体においてn型となるイオンを打ち込む。イオン注入法を用いる場合の注入条件は、たとえば、注入ドーズ量が1×1013〜1×1016cm−2であり、注入エネルギーが10〜1000keVである。
前述のようにしてイオンを打ち込んだ後、急速熱アニール(Rapid Thermal Annealing;略称:RTA)法などを用いて、たとえば800〜1500℃の温度で熱処理を行い、ドーピングしたイオンを活性化させて、高濃度n型不純物領域15を形成する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法において、ソース電極16およびドレイン電極17の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして高濃度n型不純物領域15を形成した後、蒸着法またはスパッタ法を用いて導電材料を堆積することによって、ソース電極16およびドレイン電極17となる導電膜を形成する。導電膜は、たとえば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ストロンチウム(Sr)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、金(Au)、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)などの金属から成る単層膜であってもよいし、これらが積層された多層膜であってもよい。形成された導電膜を、リフトオフ法などによってパターニングし、ソース電極16およびドレイン電極17を形成する。
図5は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法において、絶縁膜18の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてソース電極16およびドレイン電極17を形成した後、たとえば、触媒化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積用、原子層堆積法またはスパッタ法を用いて絶縁材料を堆積することによって、絶縁膜18を形成する。絶縁膜18を構成する絶縁材料としては、たとえば、AlOa、AlGaaOb、SiNc、SiOd、HfOe、TiOfなどが挙げられる。
図6は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法において、素子分離領域19の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして絶縁膜18を形成した後、トランジスタ10Aを形成する領域以外のチャネル層13およびバリア層14に、たとえばイオン注入法またはエッチングなどによって、素子分離領域19を形成する。図6では、イオン注入法によって素子分離領域19を形成する場合を示す。
図7は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法において、ゲート電極20の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして素子分離領域19を形成した後、蒸着法またはスパッタ法などを用いて導電材料を堆積することによって、ゲート電極20となる導電膜を形成する。導電膜は、たとえば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)などの金属、イリジウムシリサイド(IrSi)、白金シリサイド(PtSi)、ニッケルシリサイド(NiSi2)などのシリサイド、もしくは窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)などの窒化物金属などから成る単層膜であってもよいし、これらが積層された多層膜であってもよい。形成された導電膜を、リフトオフ法などによってパターニングし、ゲート電極20を形成する。
以上の方法によって、図1に示す本実施の形態に係るトランジスタ10を備える半導体装置1を製造することができる。図2〜図7では、トランジスタ10として動作する必要最小限の要素しか記載していないが、半導体装置1は、最終的には保護膜、フィールドプレート電極、配線、エアブリッジ、バイアホールなどの形成プロセスを経てデバイスとして用いられる。
図2に示すバッファ層12、チャネル層13およびバリア層14を成長する工程では、InzAlxGa1−x−zN(0<x≦1、0<z≦1)の原料ガスとなるトリメチルインジウム、トリメチルアンモニウム、トリメチルガリウム、アンモニアなどの流量、圧力および温度などの成長条件を調整することによって、バッファ層12、チャネル層13およびバリア層14を所望の組成とすることができる。
また、バリア層14に含まれるアモルファスの窒化物半導体は、同一組成の単結晶の窒化物半導体を成長する場合よりも成長時の温度を低温にすることによって、成長することができる。これに限定されず、アモルファスの窒化物半導体は、単結晶窒化物半導体に、高いドーズ量でイオン注入を行うことによって形成されてもよい。すなわち、アモルファスの窒化物半導体は、単結晶窒化物半導体の単結晶構造をイオン注入でアモルファス化することによって形成されてもよい。
前述のように本実施の形態では、バッファ層12、チャネル層13およびバリア層14は、成長炉から出すことなく連続的に成長されるので、各層の間に意図せずに形成される界面準位を抑制することが可能となる。したがって、界面準位による電流コラプスおよびゲートリーク電流を抑制することができる。
以上のプロセスは、必ずしも前述の順に行う必要はなく、順番を入れ替えてもよい。たとえば、前述の図10に示す素子分離領域19を形成する工程は、前述の図5に示す絶縁膜18を形成する工程の前に行われてもよい。
本実施の形態に係る半導体装置1は、主に高周波パワーデバイスの用途で用いられるが、その他の用途で用いられてもよい。
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置2の構成を示す断面図である。本実施の形態では、窒化物半導体を用いたヘテロ接合電界効果型トランジスタの他の例として、半導体装置2を説明する。本実施の形態の半導体装置2は、前述の実施の形態1の半導体装置1と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。
本実施の形態のトランジスタ10Aは、単結晶の窒化物半導体から成るチャネル層13と、アモルファスの窒化物半導体から成るバリア層14との間に、単結晶の窒化物半導体から成るスペーサ層21が挿入された構造となっている。チャネル層13とスペーサ層21とは組成の異なる窒化物半導体から形成される。
この構造の場合、トランジスタ10Aが動作するときに電子が走行するチャネル領域は、チャネル層13とスペーサ層21とのヘテロ界面に形成される。スペーサ層21の厚さは、ゲート電極20に電圧を印加しない状態でチャネル層13とスペーサ層21との界面に2次元電子ガスが発生しない程度に十分に薄くする。スペーサ層21に自発分極とピエゾ分極が発生しても厚さが薄いため、ノーマリオフ特性が得られやすい。また、スペーサ層21上にはアモルファスのバリア層14が形成されているため、実施の形態1と同様に電流コラプスやゲートリーク電流を低減する効果が得られる。
スペーサ層21の厚さは、たとえば0.5〜5nmであればよい。スペーサ層21を厚くしすぎると、スペーサ層21内に発生する自発分極およびピエゾ分極の効果が大きくなり、ノーマリオフ特性が得られにくくなる。それだけでなく、チャネル領域を通過する電子の移動度が低下したり、スペーサ層21にクラックが発生したりするなどの問題が生じる。
本実施の形態では、半導体装置2がトランジスタとして動作するときに電子が走行するチャネル領域が、単結晶から成る窒化物半導体間のヘテロ界面に形成されるので、散乱を抑制することができる。ヘテロ界面がアモルファス結晶から形成されている場合、アモルファス結晶構造に起因した散乱がヘテロ界面を通過する電子に影響し、当該電子の移動度が低下する。本実施の形態を用いれば、2次元電子ガスの電子が高速で動作、すなわちチャネル領域の電子移動度を向上することができる。したがって、オン抵抗を低減することが可能となる。
スペーサ層21は、本実施の形態では、単結晶のAlNから成る。AlNは他の窒化物半導体に比べてバンドギャップが大きいので、スペーサ層21が単結晶のAlNから成ることによって、スペーサ層21が他の窒化物半導体から成る場合に比べて、ゲート電極20からヘテロ界面までのエネルギー障壁が高くなる。したがって、ゲートリーク電流を低減することができる。
また、本実施の形態では、チャネル層13は、単結晶のGaNから成る。すなわち、本実施の形態では、チャネル層13は、単結晶のGaNから成り、スペーサ層21は、単結晶のAlNから成る。この場合には、チャネル層13およびスペーサ層21が、他の窒化物半導体、たとえばAlGaNまたはInAlGaNから成る場合に比べて、電子の散乱をさらに抑制することができる。したがって、電子がチャネル領域をより高速で移動でき、オン抵抗をさらに低減することができる。
また、本実施の形態では、スペーサ層21とバリア層14とは、同一の組成の窒化物半導体から成る。たとえば、スペーサ層21とバリア層14とが異なる組成の窒化物半導体から成る場合には、スペーサ層21とバリア層14との間にも電子が走行する領域が形成され、伝達特性が非線形になる。これに対し、前述のようにスペーサ層21とバリア層14とが同一の組成の窒化物半導体から成る場合には、スペーサ層21とバリア層14との間に電子が走行する領域が形成されることを防ぐことができるので、伝達特性を線形にすることができる。
本実施の形態では、前述のようにチャネル層13は、単結晶のGaNから成り、スペーサ層21は、単結晶のAlNから成る。また前述のように、スペーサ層21とバリア層14とは、同一の組成の窒化物半導体から成る。バリア層14は、実施の形態1におけるバリア層14と同様に、アモルファスの窒化物半導体から成り、具体的には、スペーサ層21と同一の組成のアモルファスのAlNから成る。
このように、チャネル層13が単結晶のGaNから成り、スペーサ層21が単結晶のAlNから成り、バリア層14がアモルファスのAlNから成ることによって、ノーマリオフ特性を容易に実現しながらオン抵抗を低減することができ、かつ、伝達特性を線形にすることができる。
本実施の形態の半導体装置2の製造方法は、前述の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法と類似しているので、同様の工程については説明を省略する。
図9は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法において、基板11へのバッファ層12、チャネル層13、スペーサ層21およびバリア層14の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。本実施の形態では、前述の図2に示す工程と同様にして、基板11上にバッファ層12およびチャネル層13を順に形成した後、バリア層14を形成する前に、スペーサ層21を形成する。スペーサ層21は、バッファ層12、チャネル層13およびバリア層14と同様に、MOCVD法またはMBE法などのエピタキシャル成長法を適用して成長される。
すなわち、本実施の形態では、基板11上に、MOCVD法またはMBE法などのエピタキシャル成長法を適用することによって、バッファ層12、チャネル層13、スペーサ層21およびバリア層14が、この順に成長される。これによって、図9に示すように、バッファ層12、チャネル層13、スペーサ層21およびバリア層14が形成される。
その後、前述の実施の形態1と同様にして、図3〜図7に示す工程を順次行うことによって、本実施の形態に係るトランジスタ10Aを備える半導体装置2を製造することができる。
本実施の形態では、チャネル層13、スペーサ層21およびバリア層14の各半導体層を、成長炉から出すことなく、成長炉内で連続的にエピタキシャル成長することによって形成する。これによって、各半導体層間の界面に意図せずに形成される界面準位を低減することができる。その結果、電流コラプスおよびゲートリーク電流を抑制することができる。
また本実施の形態では、バリア層14を成長する温度は、スペーサ層21を成長する温度よりも低い。これによって、スペーサ層21上に、アモルファスの窒化物半導体を含むバリア層14を形成することができる。
<実施の形態3>
図10は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置3の構成を示す断面図である。本実施の形態では、窒化物半導体を用いたヘテロ接合電界効果型トランジスタの他の例として、半導体装置3を説明する。本実施の形態の半導体装置3は、前述の実施の形態1の半導体装置1と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。
本実施の形態のトランジスタ10Bは、ドレイン電極17の下側の高濃度n型不純物領域15と、ゲート電極20の下側の領域のチャネル層13およびバリア層14との間に、高濃度n型不純物領域15よりもn型不純物の濃度が低い、低濃度n型不純物領域22が形成された構造となっている。すなわち、実施の形態1ではゲート電極20がドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15の端部に絶縁膜18を介して対向していたが、本実施の形態では、ゲート電極20は、ドレイン電極17の下方の高濃度n型不純物領域15の端部とは対向せず、高濃度n型不純物領域15に隣接して形成された低濃度不純物領域22(第3の不純物領域)の端部と対向する。
本実施の形態に係る半導体装置3によれば、ドレイン電極17に高電圧を印加したときに、ゲート電極20とドレイン電極17の下側の高濃度n型不純物領域15との間に発生する電界を低濃度n型不純物領域22によって緩和することができる。これによって、ドレイン電極17によって高い電圧を印加することができるようになる。したがって、トランジスタである半導体装置2がオフ動作するときの耐圧を向上することができる。
本実施の形態の半導体装置3の製造方法は、前述の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法と類似しているので、同様の工程については説明を省略する。
図11は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法において、高濃度n型不純物領域15および低濃度n型不純物領域22の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。本実施の形態では、実施の形態1の図3に示す工程で高濃度n型不純物領域15を形成した後、または形成する前に、高濃度n型不純物領域15を形成する場合と同様にして、低濃度n型不純物領域22を形成する。本実施の形態では、高濃度n型不純物領域15および低濃度n型不純物領域22は、イオン注入法を用いて形成される。
高濃度n型不純物領域15と低濃度n型不純物領域22とは、ドーピング濃度が異なるので、高濃度n型不純物領域15を形成するためのイオン注入と、低濃度n型不純物領域22を形成するためのイオン注入とは、個別に分けて行う必要がある。イオン注入後に行う活性化のための熱処理は、各イオン注入を行った後に個別に行ってもよいし、両方のイオン注入を行った後に、同時に行ってもよい。
その後、前述の実施の形態1と同様にして、図4〜図7に示す工程を順次行うことによって、本実施の形態に係る半導体装置3を製造することができる。
本実施の形態では、前述のように、高濃度n型不純物領域15および低濃度n型不純物領域22を、イオン注入法を用いて形成するので、所望の領域に選択的にn型不純物領域を形成することができる。これによって、前述のように優れた効果を有する本実施の形態の半導体装置3を、容易に製造することができる。
<実施の形態4>
図12は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置4の構成を示す断面図である。本実施の形態では、窒化物半導体を用いたヘテロ接合電界効果型トランジスタの他の例として、半導体装置4を説明する。本実施の形態の半導体装置4は、前述の実施の形態1〜3の半導体装置1〜3と構成が類似しているので、同一の構成については同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。
本実施の形態に係る半導体装置4は、実施の形態2に係る半導体装置2と同様に、単結晶の窒化物半導体から成るチャネル層13と、アモルファスの窒化物半導体から成るバリア層14との間に、単結晶の窒化物半導体から成るスペーサ層21が挿入された構造となっている。
これによって、電子の散乱を抑制することができるので、電子が高速で動作できるようになる。したがって、オン抵抗を低減することが可能となる。
また、チャネル層13がGaNによって構成され、スペーサ層21がAlNによって構成される場合には、チャネル層13およびスペーサ層21がAlGaNまたはInAlGaNによって構成される場合に比べて、散乱をさらに抑制することができる。これによって、電子がさらに高速で移動できるようになる。したがって、オン抵抗をさらに低減することが可能となる。
本実施の形態においても、スペーサ層21は、バリア層14と同一の組成であることが好ましい。
また、本実施の形態に係るトランジスタ10Cは、ドレイン電極17の下側の高濃度n型不純物領域15と、ゲート電極20の下側の領域のチャネル層13、スペーサ層21およびバリア層14との間に、実施の形態3に係るトランジスタ10Bと同様に、高濃度n型不純物領域15よりもn型不純物の濃度が低い、低濃度n型不純物領域22が形成された構造となっている。
このような構造にすることによって、実施の形態3に係る半導体装置3と同様に、ドレイン電極17に高電圧を印加したときに、ゲート電極20とドレイン電極17の下側の高濃度n型不純物領域15との間に発生する電界を緩和することができる。したがって、ドレイン電極17によって高い電圧を印加することができるようになる。
本実施の形態の半導体装置4の製造方法は、前述の実施の形態1〜3に係る半導体装置の製造方法と類似しているので、同様の工程については説明を省略する。
図13は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法において、高濃度n型不純物領域15および低濃度n型不純物領域22の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。本実施の形態では、前述の実施の形態2における図9に示す工程と同様にして、基板11上に、バッファ層12、チャネル層13、スペーサ層21およびバリア層14を、この順に形成する。
その後、前述の実施の形態3における図11に示す工程と同様にして、高濃度n型不純物領域15を形成した後、または形成する前に、高濃度n型不純物領域15を形成する場合と同様にして、たとえばイオン注入などによって、低濃度n型不純物領域22を形成する。
その後、前述の実施の形態1と同様にして、図4〜図7に示す工程を順次行うことによって、本実施の形態に係る半導体装置4を製造することができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせることが可能である。また、各実施の形態の任意の構成要素を適宜、変更または省略することが可能である。