JP6438281B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
近年、リチウムイオン(lithium ion)伝導性を有する固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池が注目されている。このような全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質としては、例えば、高いリチウムイオン伝導性を有する硫化物系固体電解質が提案されている。
しかし、硫化物系固体電解質は、充電の際に正極活物質と反応してしまい、正極活物質との界面に抵抗成分を生成することがあった。このような場合、正極活物質と固体電解質との界面の抵抗が増大し、リチウムイオンの伝導性が低下するため、全固体リチウムイオン二次電池の出力が低下していた。
例えば、特許文献1には、正極活物質と固体電解質との界面で生じる反応を抑制するために、正極活物質の表面をLiTi(POからなる被覆材で被覆する技術が開示されている。また、特許文献2および3には、正極層と固体電解質層との間に、両層の界面におけるリチウムイオンの偏りを緩和することで反応を抑制する緩衝層や、両層間の正極活物質および固体電解質の相互拡散を抑制する中間層を設ける技術が開示されている。
特許4982866号 特開2010−40439号公報 特開2011−44368号公報
しかし、特許文献1〜3に開示された技術では、正極活物質と固体電解質との界面での反応を抑制するには、不十分であるという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、正極活物質と固体電解質との界面での反応をさらに抑制することにより、放電容量および負荷特性を向上させることが可能な、新規かつ改良されたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、正極活物質粒子と、前記正極活物質粒子の表面を被覆し、炭素材にて形成された第1被覆層と、前記第1被覆層を被覆し、リチウム含有化合物にて形成された第2被覆層とを有する正極粒子と、LiSおよびPを少なくとも含み、前記正極粒子と接触する硫化物系固体電解質と、を含む、リチウムイオン二次電池が提供される。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性を改善することができる。
前記炭素材は、炭素またはC4n+64n+12(ただし、nは0以上の整数)で表される炭化水素を含む非晶質炭素であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記炭素材は、ダイヤモンドライクカーボンであってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記ダイヤモンドライクカーボンは、水素原子を1原子%以上50原子%以下で含んでもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記ダイヤモンドライクカーボンは、sp混成結合を有する炭素原子と、sp混成結合を有する炭素原子とを含み、前記ダイヤモンドライクカーボンに含まれる炭素原子のうち、前記sp混成結合を有する炭素原子の割合は、10%以上100%以下であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記第1被覆層の厚みは、1nm以上50nm以下であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記リチウム含有化合物は、リチウム含有酸化物またはリチウム含有リン酸化物であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記リチウム含有酸化物は、aLiO−ZrO(ただし、0.1≦a≦2.0)であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記第1被覆層および前記第2被覆層の合計厚みは、1nm以上500nm以下であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をさらに改善することができる。
前記正極活物質粒子は、層状岩塩型構造を有する遷移酸化物のリチウム塩を含んでもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の電池特性を向上させることができる。
前記層状岩塩型構造を有する遷移酸化物のリチウム塩は、LiNiCo(ただし、Mは、AlまたはMnであり、0<x<1,0<y<1,x+y+z=1)であってもよい。
この観点によれば、リチウムイオン二次電池の電池特性をさらに向上させることができる。
以上説明したように本発明によれば、リチウムイオン二次電池の放電容量および負荷特性をより向上させることが可能である。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の層構成を模式的に示す断面図である。 同実施形態に係る正極粒子の構成を模式的に示した断面図である。 正極粒子の被覆層について測定したTEM−EELSスペクトルの一例、およびフィッティング結果の一例を示すグラフ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.リチウムイオン二次電池の概要>
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、電解質として固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池である。
ここで、固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池は、正極活物質および電解質が固体であるため、有機溶媒を電解質に用いたリチウムイオン二次電池と比較して、正極活物質の内部へ電解質が浸透しにくい。そのため、全固体リチウムイオン二次電池では、正極活物質と電解質との界面の面積が小さくなりやすく、正極活物質と固体電解質との間でリチウムイオンおよび電子の移動経路を十分に確保する必要があった。
そのため、例えば、正極層を正極活物質と固体電解質との混合層として形成することで、正極活物質と固体電解質との界面の面積を増大させる技術が提案されている。
しかしながら、硫化物系の固体電解質を用いた場合、充電の際に正極活物質と固体電解質との界面で反応が発生して抵抗成分が生成されることで、正極活物質と固体電解質との界面抵抗が増大することがあった。なお、このような正極活物質と固体電解質との界面での反応は、特に、全固体リチウムイオン二次電池に対する負荷が大きい場合(例えば、全固体リチウムイオン二次電池をより高い電圧まで充電する場合、または全固体リチウムイオン二次電池を大電流で放電する場合など)に高抵抗となる傾向がある。
そこで、硫化物系の固体電解質を用いる全固体リチウムイオン二次電池では、正極活物質と固体電解質との界面の抵抗成分の生成を抑制することが求められていた。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、正極活物質粒子101の表面を炭素材にて形成された第1被覆層102で被覆し、かつ第1被覆層102をリチウム含有化合物で形成された第2被覆層103で被覆するものである。この構成によれば、第1被覆層102および第2被覆層103により、正極活物質粒子101と固体電解質300との直接接触が抑制されるため、正極活物質粒子101と固体電解質300との界面における抵抗成分の生成を抑制することができる。
炭素材にて形成された第1被覆層102は、正極活物質粒子101の構造変化を抑制し、また、リチウム含有化合物で形成された第2被覆層103は、正極活物質粒子101と固体電解質300との反応を抑制しつつ、リチウムイオン伝導性を有する。そのため、第1被覆層102および第2被覆層103は、正極活物質粒子101と固体電解質300との間におけるリチウムイオンの移動経路を確保することができ、リチウムイオン二次電池1の電池特性を向上させることができる。
特に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、正極活物質粒子101の表面を被覆する第1被覆層102を熱的および化学的安定性の高い炭素材(より具体的には、非晶質炭素)にて形成することにより、効果的に充放電による正極活物質粒子101の構造変化を抑制することができる。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、正極粒子100の最表面を被覆する第2被覆層103をリチウム含有化合物で形成することにより、正極粒子100と固体電解質300との界面の高抵抗層の発生を抑制し、リチウムイオン伝導性を向上させることができる。これらの構成により、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、放電容量および負荷特性を向上させることが可能になる。
なお、後述する実施例にて実証されるように、正極活物質粒子101の表面を被覆する第1被覆層102をリチウム含有化合物で形成し、第1被覆層102を被覆する第2被覆層103を炭素材で形成した場合には、上記の効果は発揮されず、電池特性が低下するため、好ましくない。
<2.リチウムイオン二次電池の構成>
次に、図1および図2を参照して、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1の層構成を模式的に示す断面図である。また、図2は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1の正極粒子100の構成を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、正極層10と、負極層20と、正極層10および負極層20の間に位置する固体電解質層30とが積層された構造を備える。
[正極層]
正極層10は、正極粒子100と、固体電解質300とを含む。また、正極層10は、電子伝導性を補うために、導電助剤をさらに含んでもよい。なお、固体電解質300については、固体電解質層30において後述する。
ここで、図2に示すように、正極粒子100は、正極活物質粒子101と、正極活物質粒子101の表面を被覆する第1被覆層102と、第1被覆層102をさらに被覆する第2被覆層103とを備える。
(正極活物質粒子)
正極活物質粒子101は、後述する負極粒子200に含まれる負極活物質と比較して充放電電位が高く、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することが可能な正極活物質で形成される。
例えば、正極活物質粒子101は、コバルト酸リチウム(以下、LCOと称する)、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(以下、NCAと称する)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(以下、NCMと称する)、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム等のリチウム塩、硫化ニッケル、硫化銅、硫黄、酸化鉄、または酸化バナジウム等を用いて形成することができる。これらの正極活物質は、それぞれ単独で用いられてもよく、また2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
また、正極活物質粒子101は、上述したリチウム塩のうち、層状岩塩型構造を有する遷移酸化物のリチウム塩を含んで形成されることが好ましい。ここで、「層状」とは、薄いシート状の形状を表す。また、「岩塩型構造」とは、結晶構造の1種である塩化ナトリウム型構造のことを表し、具体的には、陽イオンおよび陰イオンの各々が形成する面心立方格子が互いに単位格子の稜の1/2だけずれて配置された構造を表す。
このような層状岩塩型構造を有する遷移酸化物のリチウム塩としては、例えば、LiNiCoAl(NCA)、またはLiNiCoMn(NCM)(ただし、0<x<1、0<y<1、0<z<1、かつx+y+z=1)などの三元系遷移酸化物のリチウム塩が挙げられる。
正極活物質粒子101が、上記の層状岩塩型構造を有する三元系遷移酸化物のリチウム塩を含む場合、リチウムイオン二次電池1のエネルギー(energy)密度および熱安定性を向上させることができる。
ここで、本実施形態に係る正極粒子100は、第1被覆層102および第2被覆層103によって、正極活物質粒子101の構造変化、および正極活物質粒子101と固体電解質300との界面での反応が抑制されるため、リチウムイオン二次電池1の電池特性をより向上させることができる。
また、正極活物質粒子101が、NCAまたはNCMなどの三元系遷移酸化物のリチウム塩にて形成されており、正極活物質としてニッケル(Ni)を含む場合、リチウムイオン二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態での正極活物質からの金属溶出を少なくすることができる。これにより、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、充電状態での長期信頼性およびサイクル(cycle)特性を向上させることができる。
ここで、正極活物質粒子101の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状を挙げることができる。また、正極活物質粒子101の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、「平均粒子径」とは、散乱法等によって求められた粒子の粒度分布における個数平均径を表し、粒度分布計等により測定することができる。
なお、正極層10における正極活物質粒子101の含有量は、例えば、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
(第1被覆層)
第1被覆層102は、正極活物質粒子101の表面を被覆し、炭素材にて形成される。炭素材は、熱的および化学的安定性が高いため、正極活物質粒子101の構造変化を抑制することができる。
特に、本実施形態では、後述する第2被覆層103ではなく、正極活物質粒子101の表面を被覆する第1被覆層102を熱的および化学的安定性の高い炭素材にて形成することで、正極活物質粒子101の構造変化を効果的に抑制することができる。
このような炭素材としては、化学的に安定な炭素材料であれば、どのようなものでも使用可能であるが、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon:DLC)などの非晶質炭素を使用することができる。
具体的には、第1被覆層102は、非晶質炭素にて形成された膜であることが好ましい。ここで、非晶質炭素とは、炭素を主成分とし、ダイヤモンド(diamond)構造に対応するsp混成軌道による結合を有する炭素と、グラファイト(graphite)構造に対応するsp混成軌道による結合を有する炭素とが不規則に混在したアモルファス(amorphous)構造を有する材料である。なお、以下の説明において、sp混成軌道による結合を単にsp混成結合と表現し、sp混成軌道による結合を単にsp混成結合と表現する。
例えば、第1被覆層102は、C4n+64n+12(ただし、nは0以上の整数)で表される炭化水素およびDLCなどの非晶質炭素にて形成されてもよい。ここで、C4n+64n+12(ただし、nは0以上の整数)で表される炭化水素としては、例えば、アダマンタン(adamantane)、ジアマンタン(diamantane)、トリアマンタン(triamantane)、テトラマンタン(tetramantane)、ペンタマンタン(pentamantane)等が挙げられる。なお、第1被覆層102を形成する非晶質炭素は、炭素を主成分としていれば(例えば、炭素が50原子%以上であれば)、水素(H)やケイ素(Si)などの炭素以外の原子を含んでいてもよい。
また、第1被覆層102は、DLCにて形成された膜であることがより好ましい。DLC膜は、炭素および水素または炭素のみからなり、ダイヤモンド構造とグラファイト構造とが混在した非晶質の硬質膜である。このような第1被覆層102によれば、正極活物質粒子101の構造変化をさらに抑制することができる。
本実施形態において、第1被覆層102を形成するDLCは、水素原子を含んでいることが好ましい。また、DLCに含まれる水素原子の含有量は、1原子%以上50原子以下であることが好ましく、10原子%以上30原子%以下であることがより好ましい。なお、第1被覆層102に含まれる水素原子の含有量が過度に高い場合、第1被覆層102の安定性が低下する可能性があるため、好ましくない。
なお、上述した第1被覆層102を形成するDLCに含まれる水素原子の含有量は、例えば、IPC(Inductively Coupled Plasma)分析法(例えば、ICP発光分光分析法、またはICP質量分析法)により測定することができる。
第1被覆層102の厚みは、1nm以上50nm以下であることが好ましい。第1被覆層102の厚みが上述の範囲に含まれる場合、リチウムイオンの伝導性を低下させることなく、正極活物質粒子101の構造変化を抑制することができる。一方、第1被覆層102の厚みが1nm未満である場合、構造変化の抑制効果が十分でなくなるため、好ましくない。また、第1被覆層102の厚みが50nmを超える場合、正極活物質粒子101と固体電解質300との間のリチウムイオン伝導性が低下するため、好ましくない。
なお、上述した第1被覆層102の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面画像等を用いて測定することができる。
本実施形態において、第1被覆層102を形成するDLCは、上述したように、sp混成結合を有する炭素原子と、sp混成結合を有する炭素原子を含む。ここで、第1被覆層102を形成するDLCに含まれる炭素原子のうち、sp混成結合を有する炭素原子の割合は、10%以上100%以下であることが好ましく、30%以上100%以下であることがより好ましく、40%以上100%以下であることがさらに好ましい。
DLCにおけるsp混成結合を有する炭素原子の割合が上述の範囲である場合、正極活物質粒子101の構造変化を効果的に抑制することができる。よって、この構成によれば、リチウムイオン二次電池1の放電容量および負荷特性をさらに向上させることができる。
なお、上述したDLCにおけるsp混成結合を有する炭素原子とsp混成結合を有する炭素原子との割合は、例えば、TEMを用いた電子エネルギー損失分光法(Electron Energy−Loss Spectroscopy:EELS)により求めることができる。
以下、DLCにおけるsp混成結合を有する炭素原子とsp混成結合を有する炭素原子との割合を求める方法について、図3を参照して具体的に説明する。図3は、正極粒子100の第1被覆層102に対するTEM−EELS測定結果の一例およびそのフィッティング(fitting)結果の一例を示したグラフ(graph)図である。
なお、図3では、炭素のK損失端近傍のEELSスペクトル(spectrum)のうち電子エネルギーが0.280keV〜0.295keVの範囲を示す。また、図3において、横軸は損失エネルギー(keV)を示し、縦軸はスペクトル強度を示す。
図3において、実線は、第1被覆層102に対して測定したEELSスペクトルを示す。図3に示すように、DLCのEELSスペクトルは、0.284keV〜0.286keV付近に第1ピーク(peak)を有し、0.292keV〜0.295keV付近に第2ピークを有する。ここで、第1ピークは炭素原子のπ結合に対応するピークであり、第2ピークは炭素原子のσ結合に対応するピークである。
まず、図3において、測定したEELSスペクトル(実線)から第1ピークおよび第2ピークを分離する。具体的には、計算によって、第1ピークのみのスペクトル(一点鎖線)と、第2ピークのみのスペクトル(二点鎖線)とを算出し、両スペクトルを足し合わせたスペクトルをEELSスペクトル(実線)にフィッティングさせる。続いて、フィッティングが完了したスペクトル(破線)における第1ピーク(一点鎖線)と、第2ピーク(二点鎖線)とのピーク面積比(第1ピークの面積/第2ピークの面積)を算出する。
さらに、ダイヤモンドおよびグラファイトについても、それぞれ上記のピーク面積比の算出を行う(図示せず)。ここで、ダイヤモンドに含まれる炭素原子は、sp混成結合のみで結合しており、グラファイトに含まれる炭素原子は、sp混成結合のみで結合しているとみなすことができる。そのため、ダイヤモンドにおけるピーク面積比を0、グラファイトにおけるピーク面積比を100としてDLCにおけるピーク面積比の相対値を求めることで、sp混成結合を有する炭素原子と、sp混成結合を有する炭素原子との比を算出することができる。
なお、第1被覆層102を形成するDLCにおけるsp混成結合を有する炭素原子とsp混成結合を有する炭素原子との割合を求める方法は、上述したTEM−EELSを用いた方法に限定されない。例えば、DLCにおけるsp混成結合を有する炭素原子とsp混成結合を有する炭素原子との割合は、X線光電子分光法、またはラマン(Raman)分光法等を用いる方法により求めてもよい。
(第2被覆層)
第2被覆層103は、第1被覆層102を被覆し、リチウム含有化合物にて形成される。第2被覆層103により正極活物質粒子101をさらに被覆することによって、正極活物質粒子101と固体電解質300との反応をさらに抑制することができる。
特に、本実施形態では、第1被覆層102ではなく、正極粒子100の最表面を被覆する第2被覆層103をリチウムイオン伝導性の高いリチウム含有化合物にて形成することで、正極活物質粒子101と固体電解質300との反応を抑制し、リチウムイオン伝導性を維持することができる。
このようなリチウム含有化合物としては、具体的には、リチウム含有酸化物、またはリチウム含有リン酸化物が好ましい。リチウム含有酸化物としては、例えば、リチウムジルコニウム酸化物(Li−Zr−O)、リチウムニオブ酸化物(Li−Nb−O)、リチウムチタン酸化物(Li−Ti−O)、リチウムアルミニウム酸化物(Li−Al−O)などが挙げられる。また、リチウム含有リン酸化物としては、例えば、リチウムチタンリン酸化物(Li−Ti−PO)、リチウムジルコニウムリン酸化物(Li−Zr−PO)などが挙げられる。このような第2被覆層103によれば、正極粒子100と固体電解質300との界面での高抵抗層の形成を抑制することができるため、正極活物質粒子101と固体電解質300との間のリチウムイオン伝導性をより向上させることができる。
より具体的には、第2被覆層103は、aLiO−ZrO(ただし、0.1≦a≦2.0)にて形成されていてもよい。aLiO−ZrO(以下、LZOとも称する)は、化学的に安定であるため、このようなaLiO−ZrOにて第2被覆層103を形成することにより、正極活物質粒子101と固体電解質300との間の反応をさらに抑制することができる。
ここで、aLiO−ZrOは、LiOとZrOとの複合酸化物であり、aの範囲は、0.1≦a≦2.0であることが好ましい。aを上述の範囲とすることにより、リチウムイオン二次電池1の電池特性をより向上させることが可能である。
また、第2被覆層103は、正極活物質粒子101に対するaLiO−ZrOの割合が0.1mol%以上2.0mol%以下となるように、正極活物質粒子101を被覆することが好ましい。第2被覆層103の被覆量が上述の範囲である場合、放電容量および負荷特性をさらに向上させることができる。一方、第2被覆層103の被覆量が0.1mol%未満の場合、正極活物質粒子101と固体電解質300との反応抑制の効果が十分ではなくなるため、好ましくない。また、第2被覆層103の被覆量が2.0mol%を超える場合、正極活物質粒子101と固体電解質300との間のリチウムイオン伝導性が低下するため、好ましくない。
また、第1被覆層102および第2被覆層103の合計厚みは、1nm以上500nm以下であることが好ましい。第1被覆層102および第2被覆層103の合計厚みが上述の範囲に含まれる場合、リチウムイオンの伝導性を低下させることなく、正極活物質粒子101と固体電解質300との反応をさらに抑制することができる。一方、第1被覆層102および第2被覆層103の合計厚みが1nm未満である場合、正極活物質粒子101と固体電解質300との反応抑制の効果が十分ではなくなるため、好ましくない。また、第1被覆層102および第2被覆層103の合計厚みが500nmを超える場合、正極活物質粒子101と固体電解質300との間のリチウムイオン伝導性が低下するため、好ましくない。
なお、上記において、第1被覆層102および第2被覆層103は、正極活物質粒子101の少なくとも一部を被覆していればよい。すなわち、正極活物質粒子101の表面全体が、第1被覆層102および第2被覆層103で被覆されていてもよく、正極活物質粒子101の表面の一部が、第1被覆層102および第2被覆層103で被覆されていてもよい。
また、正極層10には、上述した正極粒子100および固体電解質300に加えて、例えば、導電剤、結着材、フィラー(filler)、分散剤、イオン導電剤等の添加物が適宜配合されていてもよい。
正極層10に配合可能な導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉等を挙げることができる。また、正極層10に配合可能な結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)等を挙げることができる。さらに、正極層10に配合可能なフィラー、分散剤、イオン導電剤等としては、一般にリチウムイオン二次電池の電極に用いられる公知の材料を用いることができる。
[負極層]
図1に示すように、負極層20は、負極粒子200と、固体電解質300とを含む。なお、固体電解質300については、固体電解質層30において後述する。
負極粒子200は、正極活物質粒子101に含まれる正極活物質と比較して充放電電位が低く、リチウムとの合金化、またはリチウムの可逆的な吸蔵および放出が可能な負極活物質材料にて構成される。
例えば、負極活物質として、金属活物質またはカーボン(carbon)活物質等を挙げることができる。金属活物質としては、例えば、リチウム(Li)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、ケイ素(Si)等の金属やこれらの合金等を挙げることができる。また、カーボン活物質としては、例えば、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス(coke)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂焼成炭素、ポリアセン(polyacene)、ピッチ(pitch)系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等を挙げることができる。これらの負極活物質は、単独で用いられてもよく、また2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
また、負極層20には、上述した負極粒子200および固体電解質300に加えて、例えば、導電剤、結着材、フィラー、分散剤、イオン導電剤等の添加物が適宜配合されていてもよい。
なお、負極層20に配合する添加剤としては、上述した正極層10に配合される添加剤と同様のものを用いることができる。
[固体電解質層]
固体電解質層30は、正極層10および負極層20の間に形成され、固体電解質300を含む。
固体電解質300は、硫化物固体電解質材料にて形成される。硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiX(Xはハロゲン元素)、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、Li2−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(m、nは正の数、ZはGe、ZnまたはGaのいずれか)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(p、qは正の数、MはP、Si、Ge、B、Al、GaまたはInのいずれか)等を挙げることができる。
また、固体電解質300では、上記の硫化物固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として硫黄(S)、リン(P)およびリチウム(Li)を含むものを用いることが好ましく、少なくともLiS−Pを含むものを用いることがより好ましい。
ここで、固体電解質300を形成する硫化物固体電解質材料としてLiS−Pを含むものを用いる場合、LiSとPとの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50〜90:10の範囲で選択される。
また、固体電解質300の形状としては、例えば、真球状、楕円球状等の粒子形状を挙げることができる。また、固体電解質300の粒子径は、特に限定されないが、固体電解質300の平均粒子径は、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.1μm以上20μm以下であることがより好ましい。なお、平均粒子径とは、上述したように、散乱法等によって求められた粒子の粒度分布における個数平均径のことを表す。
以上、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1の構成について詳細に説明した。
<2.リチウムイオン二次電池の製造方法>
続いて、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1の製造方法について説明する。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、正極層10、負極層20、および固体電解質層30をそれぞれ製造した後、上記の各層を積層することにより製造することができる。
[正極層の作製]
まず、正極活物質粒子101の表面に対して、第1被覆層102および第2被覆層103を順に形成することにより、正極粒子100を作製する。
正極活物質粒子101は、公知の方法で作製することができる。例えば、正極活物質粒子101としてNCAを用いる場合、まず、生成するNCAと組成比が等しくなるように、Ni(OH)粉末、Co(OH)粉末、Al・HO粉末およびLiOH・HO粉末を混合し、ボールミル(ball mill)等により粉砕する。次に、混合および粉砕した原料粉末を所定の分散剤、バインダ(binder)等と混合し、粘度等を調整した後、シート(sheet)上に成形する。さらに、シート状の成形体を所定の温度で焼成し、焼成後の成形体をふるい等で粉砕することで、正極活物質粒子101を作製することができる。ここで、成形体の粉砕に用いるふるいの細かさを変更することで、正極活物質粒子101の粒子径を調整することができる。
続いて、上記で作製した正極活物質粒子101の表面に対して、第1被覆層102を形成する。第1被覆層102は、例えば、プラズマ化学蒸着法、イオンプレーティング(ion plateing)法、スパッタ(sputtering)法、熱CVD法やプラズマCVD法などの化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、パルスレーザデポジション(PLD)法や電子ビーム蒸着法などの物理気相蒸着(Physical Vapor Deposition)法等により形成することができる。
例えば、プラズマCVD法により第1被覆層102を形成する場合、まず、正極活物質粒子101を真空容器内に配置し、炭化水素ガスおよびキャリアガス(carrier gas)を真空容器内に導入する。次に、放電により真空容器内にプラズマ(plasma)を生成し、プラズマによりイオン化された炭化水素ガスを正極活物質粒子101の表面に付着させることで、正極活物質粒子101の表面に炭素材からなる第1被覆層102を形成することができる。
ここで、炭化水素ガスとしては、例えば、メタン(CH)、エタン(C)、エチレン(C)、アセチレン(C)、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、ナフタレン(naphthalene)、シクロヘキサン(cyclohexane)等を用いることができる。炭化水素ガスの種類、流量を変更することで、第1被覆層102を構成する炭素材における水素原子の含有量、sp混成結合を有する炭素原子とsp混成結合を有する炭素原子との割合等を調整することができる。なお、炭化水素ガスは、上記ガスのいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
キャリアガスとしては、例えば、水素(H)ガス、または不活性ガス(例えば、アルゴン(Ar)ガス等)を用いることができる。また、キャリアガスの種類および流量比を変更することで、第1被覆層102における水素原子の含有量等を調整することが可能である。例えば、キャリアガスとして水素ガスを用いる場合、炭化水素ガスに対する水素ガスの流量比を変更することで、第1被覆層102における水素原子の含有量を調整することが可能である。
なお、第1被覆層102を形成する際の真空容器内の圧力は、例えば、0.01Pa〜1Pa程度であってもよく、温度は、例えば、100℃〜500℃程度であってもよい。また、正極活物質粒子101の表面を清浄化および活性化させるために、第1被覆層102を形成する前に正極活物質粒子101に対してイオンボンバードメント(ion bombardment)処理を施してもよい。
また、上述したように、第1被覆層102は、PVD法によって形成することも可能である。PVD法により第1被覆層102を形成する場合、炭素源として、グラファイト、グラッシーカーボン(glassy carbon)、またはダイヤモンドライクカーボン等の固体材料を用いることができる。また、水素原子が含まれていない固体材料を炭素源に用いる場合、例えば、雰囲気中に水素ガス等を供給することにより、第1被覆層102に水素原子を含有させることができる。
続いて、上記で第1被覆層102を形成した正極活物質粒子101に対して、さらに第2被覆層103を形成する。第2被覆層103は、例えば、以下の方法により形成することができる。
具体的には、まず、リチウムアルコキシド(lithium alkoxide)とジルコニウムアルコキシド(zirconium alkoxide)とをアルコール等の有機溶媒と水とからなる溶媒中で撹拌混合し、第2被覆層103の塗布液を調整する。続いて、調整した塗布液に、第1被覆層102を形成した正極活物質粒子101を添加して撹拌混合する。その後、混合溶液に超音波を照射しつつ、加熱または減圧により溶媒を留去する。溶媒留去後の正極活物質粒子101を所定の焼成温度で、所定時間焼成することにより、第1被覆層102上にリチウム含有化合物からなる第2被覆層103を形成することができる。
なお、溶媒留去後の正極活物質粒子101の焼成温度は、例えば、750℃以下であってもよく、焼成時間は、0.5時間〜3時間程度であってもよい。
以上の方法により、第1被覆層102および第2被覆層103で順次被覆された正極粒子100を作製することができる。
続いて、作製した正極粒子100と、後述する方法で作製した固体電解質300と、各種添加材とを混合し、水や有機溶媒などの溶媒に添加してスラリー(slurry)またはペースト(paste)を形成する。さらに、得られたスラリーまたはペーストを集電体に塗布し、乾燥した後に、圧延することで、正極層10を得ることができる。
[負極層の作製]
負極層20は、正極層と同様の方法で作製することができる。具体的には、負極粒子200と、後述する方法で作製した固体電解質300と、各種添加剤とを混合し、水や有機溶媒などの溶媒に添加してスラリーまたはペーストを形成する。さらに、得られたスラリーまたはペーストを集電体に塗布し、乾燥した後に、圧延することで、負極層20を得ることができる。なお、負極粒子200は、負極活物質を用いて公知の方法により作製することができる。
ここで、正極層10および負極層20にて用いた集電体としては、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金からなる板状体または箔状体を用いることができる。なお、集電材を用いずに、正極粒子100または負極粒子200と、各種添加剤との混合物をペレット(pellet)状に圧密化成形することで正極層10または負極層20を形成してもよい。
[固体電解質層の作製]
固体電解質層30は、硫化物系固体電解質材料にて形成された固体電解質300により作製することができる。
まず、溶融急冷法やメカニカルミリング(mechanical milling)法により硫化物系固体電解質材料を作製する。
例えば、溶融急冷法を用いる場合、LiSとPとを所定量混合し、ペレット状にしたものを真空中で所定の反応温度で反応させた後、急冷することによって硫化物系固体電解質材料を作製することができる。なお、LiSおよびPの混合物の反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃であり、より好ましくは800℃〜900℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間であり、より好ましくは1時間〜12時間である。さらに、反応物の急冷温度は、通常10℃以下であり、好ましくは0℃以下であり、急冷速度は、通常1℃/sec〜10000℃/sec程度であり、好ましくは1℃/sec〜1000℃/sec程度である。
また、メカニカルミリング法を用いる場合、LiSとPとを所定量混合し、ボールミルなどを用いて撹拌させて反応させることで、硫化物系固体電解質材料を作製することができる。なお、メカニカルミリング法における撹拌速度および撹拌時間は特に限定されないが、撹拌速度が速いほど硫化物系固体電解質材料の生成速度を速くすることができ、撹拌時間が長いほど硫化物系固体電解質材料への原料の転化率を高くすることができる。
その後、溶融急冷法またはメカニカルミリング法により得られた硫化物系固体電解質材料を所定温度で熱処理した後、粉砕することにより粒子状の固体電解質300を作製することができる。
続いて、上記の方法で得られた固体電解質300を、例えば、ブラスト(blast)法、エアロゾルデポジション(aerosol deposition)法、コールドスプレー(cold spray)法、スパッタ法、CVD法、溶射法等の公知の成膜法を用いて成膜することにより、固体電解質層30を作製することができる。なお、固体電解質層30は、固体電解質300単体を加圧することにより作製されてもよい。また、固体電解質層30は、固体電解質300と、溶媒、バインダまたは支持体とを混合し、加圧することにより固体電解質層30を作製してもよい。ここで、バインダまたは支持体は、固体電解質層30の強度を補強したり、固体電解質300の短絡を防止したりする目的で添加されるものである。
[リチウムイオン二次電池の製造]
さらに、上記の方法で作製した正極層10、負極層20、および固体電解質層30を、正極層10と負極層20とで固体電解質層30を挟持するように積層し、加圧することにより、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1を製造することができる。
<3.実施例>
以下では、実施例および比較例を参照しながら、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池が下記の例に限定されるものではない。
(実施例1)
正極活物質粒子101としてLiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA:日本化学社製)を用い、該正極活物質粒子101の表面にプラズマCVD法によってDLCからなる第1被覆層102を形成した。具体的には、PIG式プラズマCVD装置を用いて、3分間のイオンボンバードメント処理を行った後、ガス圧0.06Pa、ガスフローC/Ar(流量150sccm/10sccm)、成膜温度200℃にて、正極活物質の表面にDLCからなる第1被覆層102を形成した。
なお、正極活物質粒子101の表面に形成した第1被覆層102におけるsp混成結合を有する炭素と、sp混成結合を有する炭素との割合を、上述した方法で測定したところ、sp混成結合を有する炭素の割合は、おおよそ50〜55%であった。また、正極活物質粒子101の表面に形成した第1被覆層102における水素原子の含有量をIPC分析法(例えば、ICP発光分光分析法、またはICP質量分析法)により測定したところ、おおよそ20原子%〜30原子%であった。さらに、第1被覆層102の厚みを測定したところ、おおよそ5nmであった。
次に、リチウムメトキシド(lithium methoxide)およびジルコニウムプロポキシド(zirconium propoxide)をエタノール(ethanol)溶液中で10分間混合した。ここで、LiO−ZrO(LZO)の割合が、NCAに対して0.5mol%となるように、上記で第1被覆層102を形成した正極活物質粒子101を混合溶液に添加し、撹拌しながら15分間混合した。さらに、混合溶液に超音波を照射しながらロータリーエバポレータ(rotary evaporator)にて溶媒を留去した。溶媒留去後の正極活物質粒子101を大気雰囲気下で350℃にて1時間焼成し、第1被覆層上にLZOからなる第2被覆層103を形成した。以上の方法により正極粒子100を作製した。
次に、LiSとPとをモル比80:20にて混合し、メカニカルミリング処理により固体電解質300を作製した。
続いて、グラファイトと、上記固体電解質300と、カーボンナノファイバ(導電材)とを60:35:5の質量比で混合したものをセル容器に15mg積層し、成形機で表面を整え、負極層20とした。また、上記固体電解質300を負極層20上に70mg積層し、成形機で表面を整え、固体電解質層30とした。次に、上記で作製した正極粒子100と、上記固体電解質300と、カーボンナノファイバ(導電材)とを60:35:5の質量比で混合したものを固体電解質層30上に15mg積層し、成形機で表面を整え、正極層10とした。
さらに、セル容器内に積層した負極層20、固体電解質層30、正極層10を3t/cmの圧力で加圧してペレットを作製し、実施例1に係る試験用セル(cell)を作製した。
(比較例1)
第1被覆層102および第2被覆層103が形成されていない正極活物質粒子101を正極粒子100として用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る試験用セルを作製した。
(比較例2)
第1被覆層102を形成せずに第2被覆層103のみを形成した正極活物質粒子101を正極粒子100として用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る試験用セルを作製した。
(比較例3)
第1被覆層102と第2被覆層103の積層順を逆にした正極活物質粒子101を正極粒子100として用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る試験用セルを作製した。すなわち、正極活物質粒子101の表面にLiO−ZrOからなる第2被覆層103を形成し、第2被覆層103上にDLCからなる第1被覆層102を形成した正極粒子100を用いて、比較例3に係る試験用セルを作製した。
(比較例4)
第2被覆層103を形成せずに第1被覆層102のみを形成した正極活物質粒子101を正極粒子100として用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4に係る試験用セルを作製した。
(評価)
まず、実施例1、比較例1〜3に係る試験用セルを、25℃において、0.05Cの定電流で上限電圧4.0Vまで充電した後、0.05Cの定電流で下限電圧2.5Vまで放電して初期放電容量を評価した。また、実施例1、比較例1および2に係る試験用セルは、0.05C、0.5C、1.0Cの定電流でそれぞれ充放電して放電容量を測定し、負荷特性を評価した。さらに、実施例1、比較例1、2、4に係る試験用セルは、上限電圧4.0V、4.1V、4.2Vまで充電した状態でそれぞれインピーダンス(impedance)測定を行い、内部抵抗を評価した。
以下の表1〜3の「被覆材料」の列において、「DLC」は、正極活物質粒子101の表面にDLCを形成したことを表し、「LZO」は、正極活物質粒子101の表面にLZOを形成したことを表す。また、「DLC/LZO」は、正極活物質粒子101の表面にDLCを形成し、DLC上にLZOを形成したことを表す。なお、「−」は、正極活物質粒子101の表面に被覆層を形成していないことを表す。
初期放電容量の評価結果を以下の表1に示す。
Figure 0006438281
表1の結果を参照すると、実施例1は、比較例1〜3に対して、初期放電容量が増加していることがわかった。具体的には、正極活物質粒子101の表面をDLCからなる第1被覆層102と、LZOからなる第2被覆層103とで被覆した実施例1は、これら2層で被覆していない比較例1および2に対して、初期放電容量が増加していることがわかった。また、実施例1は、第1被覆層102と第2被覆層103の積層順を逆にした比較例3に対しても、初期放電容量が増加していることがわかった。
次に、負荷特性の評価結果を以下の表2に示す。なお、「負荷特性(0.5C/0.05C)」は、0.5Cの放電容量を0.05Cの放電容量で除算した値であり、「負荷特性(1.0C/0.05C)」は、1.0Cの放電容量を0.05Cの放電容量で除算した値である。
Figure 0006438281
表2の結果を参照すると、実施例1は、比較例1および2に対して、負荷特性が改善していることがわかった。具体的には、実施例1は、比較例1および2に対して、大電流で放電した際の放電容量の減少が抑制されており、リチウムイオン二次電池に対する負荷が大きい(放電電流が大きい)場合でも良好な電池特性を有していることがわかった。
続いて、内部抵抗の評価結果を以下の表3に示す。
Figure 0006438281
表3の結果を参照すると、実施例1は、比較例1、2および4に対して、内部抵抗が低くなっていることがわかった。すなわち、実施例1では、比較例1、2および4に対して、正極活物質粒子101と固体電解質300との界面での反応が抑制されており、抵抗成分の生成が抑制されていることがわかった。具体的には、正極活物質粒子101の表面をDLCからなる第1被覆層102と、LZOからなる第2被覆層103とで被覆した実施例1は、これら2層で被覆していない比較例1、2および4に対して、内部抵抗が低くなっていることがわかった。
特に、実施例1は、より高い上限電圧まで充電した場合でも、比較例1、2および4に対して、比較例内部抵抗が低く抑えられており、リチウムイオン二次電池に対する負荷が大きい(充電時の電圧が高い)場合でも良好な電池特性を有していることがわかった。
以上の評価結果からわかるように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、第1被覆層102および第2被覆層103で順に正極活物質粒子101を被覆することにより、正極活物質粒子101と固体電解質300との界面における抵抗成分の生成を抑制することができる。また、リチウムイオン二次電池1は、第1被覆層102および第2被覆層103により、正極活物質粒子101と固体電解質300との間の良好なリチウムイオン伝導性を確保することができる。したがって、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池1は、放電容量および負荷特性を改善することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 リチウムイオン二次電池
10 正極層
20 負極層
30 固体電解質層
100 正極粒子
101 正極活物質粒子
102 第1被覆層
103 第2被覆層
200 負極粒子
300 固体電解質

Claims (10)

  1. 正極活物質粒子と、前記正極活物質粒子の表面を被覆し、炭素材にて形成された第1被覆層と、前記第1被覆層を被覆し、リチウムジルコニウム酸化物、リチウムニオブ酸化物、リチウムチタン酸化物、リチウムアルミニウム酸化物、リチウムチタンリン酸化物又はリチウムジルコニウムリン酸化物から選ばれる1種以上のリチウム含有化合物にて形成された第2被覆層とを有する正極粒子と、
    LiSおよびPを少なくとも含み、前記正極粒子と接触する硫化物系固体電解質と、
    を含む、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記炭素材は、炭素またはC4n+64n+12(ただし、nは0以上の整数)で表される炭化水素を含む非晶質炭素である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記炭素材は、ダイヤモンドライクカーボンである、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記ダイヤモンドライクカーボンは、水素原子を1原子%以上50原子%以下で含む、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記ダイヤモンドライクカーボンは、sp混成結合を有する炭素原子と、sp混成結合を有する炭素原子とを含み、
    前記ダイヤモンドライクカーボンに含まれる炭素原子のうち、前記sp混成結合を有する炭素原子の割合は、10%以上100%以下である、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記第1被覆層の厚みは、1nm以上50nm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記リチウムジルコニウム酸化物は、aLiO−ZrO(ただし、0.1≦a≦2.0)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記第1被覆層および前記第2被覆層の合計厚みは、1nm以上500nm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記正極活物質粒子は、層状岩塩型構造を有する遷移酸化物のリチウム塩を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記層状岩塩型構造を有する遷移酸化物のリチウム塩は、LiNixCoyMzO(ただし、Mは、AlまたはMnであり、0<x<1,0<y<1,x+y+z=1)である、請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
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