JP6459977B2 - リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、リチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
また、本発明は、優れた電池容量およびサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができるリチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
更に、本発明は、電池容量が高く、且つ、サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
ここで、本発明において、「ポリアクリル酸の水溶液の粘度」とは、B型粘度計を使用し、JIS K7117−1に準拠して、温度25℃、pH8、ローターM4、回転数60rpmの条件下で測定したポリアクリル酸水溶液の粘度を指す。
また、本発明によれば、優れた電池容量およびサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができるリチウムイオン二次電池用負極を提供することができる。
更に、本発明によれば、電池容量が高く、且つ、サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池の負極の形成に用いられる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を用いて製造することができる。更に、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いたことを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質と、ポリアクリル酸と、水とを含む水系のスラリー組成物である。そして、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の負極活物質は、シリコン系負極活物質を5質量%以上40質量%以下の割合で含有する。また、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物のポリアクリル酸は、0.5質量%水溶液の粘度に対する1質量%水溶液の粘度の比(1質量%水溶液の粘度/0.5質量%水溶液の粘度)が2.0以上である。なお、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質およびポリアクリル酸以外に、カルボキシメチルセルロース塩や粒子状結着材などのその他の成分を含有していてもよい。
以下、上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に含まれる各成分について説明する。
負極活物質は、リチウムイオン二次電池の負極において電子の受け渡しをする物質である。そして、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。
なお、リチウムイオン二次電池の高容量化とサイクル特性の低下抑制とを更に高い次元で両立する観点からは、負極活物質中のシリコン系負極活物質の含有割合は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。
ここで、シリコン系負極活物質とは、ケイ素を含む活物質である。そして、シリコン系負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiOx、Si含有材料を導電性カーボンで被覆または複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。なお、これらのシリコン系負極活物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類上を組み合わせて用いてもよい。
また、ケイ素を含む合金としては、例えば、ケイ素と、アルミニウムと、鉄などの遷移金属とを含み、さらにスズおよびイットリウム等の希土類元素を含む合金組成物も挙げられる。具体的には、ケイ素を含む合金としては、
(A)シリコンを含む非晶相と、
(B)スズ、インジウム、並びに、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、または、これらの組み合わせを含むナノ結晶相と、
の混合物が挙げられる。より具体的には、ケイ素を含む合金としては、下記一般式:
SiaAlbTcSndIneMfLig
[式中、Tは、遷移金属であり、Mは、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、または、これらの組み合わせであり、a+b+c+d+e+fの合計が1に等しく、0.35≦a≦0.70、0.01≦b≦0.45、0.05≦c≦0.25、0.01≦d≦0.15、e≦0.15、0.02≦f≦0.15、0<g≦{4.4×(a+d+e)+b}である]
で表される合金組成物が挙げられる。このような合金は、例えば特開2013−65569号公報に記載の方法、具体的には溶融紡糸法(meltspun method)により調製することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物において上記シリコン系負極活物質と併用する負極活物質としては、炭素系負極活物質および金属系負極活物質などが挙げられる。
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいい、炭素系負極活物質としては、例えば炭素質材料と黒鉛質材料とが挙げられる。
そして、炭素質材料としては、例えば、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
そして、黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。金属系負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得るSi以外の単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびその合金、並びに、それらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、燐化物などが用いられる。
ポリアクリル酸は、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した負極合材層において、負極合材層中の各成分同士または各成分と集電体とを結着させると共に、充放電に伴う負極活物質の膨張および収縮を抑制する。即ち、ポリアクリル酸は、負極合材層において、結着材として機能すると共に、充放電に伴うシリコン系負極活物質の大きな膨張および収縮に起因した導電パスの破壊(シリコン系負極活物質の構造破壊による微細化、及び/又は、極板構造の破壊)を防止してリチウムイオン二次電池のサイクル特性の低下を抑制する。
なお、粘度比は、3.0以上であることが好ましく、また、6.0以下であることが好ましく、4.5以下であることが更に好ましい。
なお、ポリアクリル酸の0.5質量%水溶液の粘度は、0.3Pa・s以上10.0Pa・s以下であることが好ましい。0.5質量%水溶液の粘度が大き過ぎると、スラリー組成物の塗工性が低下する虞があるからである。また、0.5質量%水溶液の粘度が小さ過ぎると、負極活物質の膨張および収縮を十分に抑制できない虞があるからである。
また、ポリアクリル酸の1.0質量%水溶液の粘度は、0.6Pa・s以上15.0Pa・s以下であることが好ましい。1.0質量%水溶液の粘度が大き過ぎると、スラリー組成物の塗工性が低下する虞があるからである。また、1.0質量%水溶液の粘度が小さ過ぎると、負極活物質の膨張および収縮を十分に抑制できない虞があるからである。
上述した粘度性状を有するポリアクリル酸としては、特に限定されることなく、アクリル酸またはその塩と、架橋性単量体と、任意に他の重合性単量体とを共重合して得られる架橋型ポリアクリル酸が挙げられる。なお、架橋型ポリアクリル酸は、共重合体の製造に用いられる単量体全体の70質量%以上が、アクリル酸またはその塩であることが好ましい。また、架橋型ポリアクリル酸の製造に用いられる架橋性単量体の量は、架橋性単量体以外の単量体の合計量100質量部に対して2.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることが更に好ましい。
ここで、アクリル酸またはその塩としては、アクリル酸、並びに、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、架橋性単量体としては、ポリアルケニルポリエーテル単量体、多価ビニル単量体などが挙げられる。具体的には、テトラアリルオキシエタン、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、アリルサッカロース、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートおよびポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、架橋性単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、テトラアリルオキシエタンおよびペンタエリスリトールトリアリルエーテルが好ましい。
その他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アクリルアミド類およびメタアクリルアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
さらに、その他の重合性単量体としては、末端メタクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリメチルメタクリレート、末端メタクリレートポリスチレン、末端メタクリレートポリエチレングリコール、末端メタクリレートアクリロニトリルスチレン共重合体などのマクロモノマー類なども使用可能である。
同様に、その他の重合性単量体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのエステル類なども使用でき、また、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなども挙げられる。
これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、その他の重合性単量体としては、アクリルアミド類が好ましく、アクリルアミドがより好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
また、上述した粘度性状を有するポリアクリル酸としての架橋型ポリアクリル酸は、未架橋型のポリアクリル酸と架橋剤とを混合し、反応させて製造することもできる。具体的な製造方法としては、例えば、未架橋型のポリアクリル酸の水溶液を用意し、これにポリアクリル酸を架橋可能な架橋剤を添加して未架橋型のポリアクリル酸と架橋剤とを反応させる方法が挙げられる。
未架橋型のポリアクリル酸は、アクリル酸またはその塩と、任意に他の重合性単量体とを既知の手法で重合して得ることができる。なお、「アクリル酸またはその塩」および「他の重合性単量体」としては、上述した「アクリル酸またはその塩」および「その他の重合性単量体」を用いることができる。
なお、「数平均分子量」は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用し、ポリスチレン換算値として求めることができる。
未架橋型のポリアクリル酸と反応させる架橋剤としては、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。
−N=C=N− ・・・(1)
で表されるカルボジイミド基を有し、ポリアクリル酸間に架橋構造を形成し得る架橋性化合物であれば特に限定されない。そして、このようなカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物としては、例えば、カルボジイミド基を2つ以上有する化合物、具体的には、一般式(2):
−N=C=N−R1 ・・・(2)
[一般式(2)中、R1は2価の有機基を示す。]で表される繰返し単位を有するポリカルボジイミドおよび/または変性ポリカルボジイミドが好適に挙げられる。なお、本明細書において変性ポリカルボジイミドとは、ポリカルボジイミドに対して、反応性化合物を反応させることによって得られる樹脂をいう。そして、反応性化合物としては、ポリカルボジイミドとの反応性を有する基(カルボキシル基あるいは第一級もしくは第二級のアミノ基などの、活性水素を有する基)を1つと、さらに他の官能基を有する化合物、例えば特開2005−49370号公報に記載の化合物が挙げられる。
このようなカルボジイミド化合物としては、例えば日清紡ケミカル製SV−02,V−02等をあげることができる。
ここで、上述のようにして得られる架橋型ポリアクリル酸の粘度比、0.5質量%水溶液の粘度および1.0質量%水溶液の粘度は、例えば、架橋型ポリアクリル酸の架橋密度や架橋点間距離を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、架橋型ポリアクリル酸の粘度比は、使用する架橋性単量体や架橋剤の量を増加させて架橋密度を高めることにより向上させることができる。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いるポリアクリル酸は、分子中に存在するカルボキシル基の少なくとも一部が中和されていることが好ましい。即ち、ポリアクリル酸はポリアクリル酸塩であってもよい。カルボキシル基の少なくとも一部が中和されていれば、ポリアクリル酸の分子鎖が広がり易く、充放電に伴う負極活物質の膨張および収縮を抑制し易いからである。
ここで、ポリアクリル酸の中和に用いる塩は、特に限定されるものではない。特に好ましくは、ポリアクリル酸の分子鎖の広がりを得やすいという観点で、一価の塩基が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウムを挙げることができる。なお、リチウムイオン二次電池の特性の観点からは、水酸化リチウムが好ましい。
[[中和度の測定方法]]
JIS K0113−1997に準拠する方法によって測定した値から、目的とする中和度を算出する。ここで、JIS K0113−1997に準拠する方法とは、0.1規定の水酸化カリウム水溶液を滴定液として使用して電位差滴定を行い、変曲点法によって終点を決定する方法である。
なお、アクリル酸を中和した後に重合して得たポリアクリル酸の場合には、上記方法以外に、アクリル酸の中和度(中和後のアクリル酸塩のモル数÷中和前のアクリル酸のモル数)からも中和度を求めることができる。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、負極活物質100質量部当たり、ポリアクリル酸を、0.5質量部以上の割合で含有することが好ましく、1質量部以上の割合で含有することが更に好ましく、10質量部以下の割合で含有することが好ましく、5質量部以下の割合で含有することが更に好ましく、3質量部以下の割合で含有することが特に好ましく、2質量部以下の割合で含有することが最も好ましい。負極活物質100質量部当たりのポリアクリル酸の含有量が0.5質量部以上であれば、充放電に伴う負極活物質(特に、シリコン系負極活物質)の膨張および収縮を十分に抑制することができる。また、ポリアクリル酸の含有量が10質量部以下であれば、スラリー組成物の粘度が上昇して塗工性が低下するのを十分に抑制することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、カルボキシメチルセルロース塩を含むことが好ましい。ポリアクリル酸とカルボキシメチルセルロース塩とを併用することで、負極活物質等の分散性を良好なものとし、負極用スラリー組成物の保存安定性を向上させることができる。
ここで、カルボキシメチルセルロース塩としては、特に限定されることなく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、アンモニウム塩を用いることができる。
なお、充放電に伴う負極活物質の膨張および収縮を更に抑制する観点からは、カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度が、1.0Pa・s以上であることが好ましい。また、負極用スラリー組成物の過度な粘度上昇を抑制して塗工性を確保する観点からは、カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度は、12Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることが更に好ましい。なお、カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液粘度は、JIS Z8803(1991)に準拠して、単一円筒形回転粘度計(温度25℃、回転数60rpm、スピンドル形状=1)により測定することができる。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、カルボキシメチルセルロース塩の含有量が、ポリアクリル酸の含有量の0.1倍以上9倍以下であることが好ましく、ポリアクリル酸の含有量の0.25倍以上4倍以下であることがより好ましく、ポリアクリル酸の含有量の0.25倍以上2.3倍以下であることが更に好ましい。カルボキシメチルセルロース塩の含有量を上記範囲内とすれば、負極用スラリー組成物の保存安定性を十分に高めつつ、充放電に伴う負極活物質の膨張および収縮を更に抑制することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、粒子状結着材を含むことが好ましい。ここで、粒子状結着材は、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を用いて形成した負極合材層において、上述したポリアクリル酸と共に、負極合材層中の各成分同士または各成分と集電体とを結着させる。従って、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に粒子状結着材を配合すれば、負極合材層中の各成分同士または各成分と集電体との結着性を更に高めて、負極用スラリー組成物を用いて製造した負極からの粉落ちの発生を抑制することができる。また、負極の柔軟性を確保しつつ、負極合材層と集電体との密着性を高めることができる。
ここで、上述した粒子状結着材としては、共役ジエン系重合体、アクリル系重合体等の重合体を用いることができる。
ここで、粒子状結着材として好ましいアクリル系重合体について説明する。アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体である。なお、アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位以外に、カルボキシル基含有単量体単位、α,β-不飽和ニトリル単量体単位、および、その他任意の単量体単位を含んでいてもよい。
なお、本発明において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
なお、アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、特に好ましくは58質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、特に好ましくは96質量%以下である。
エチレン性不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、β−ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、ジアクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。さらに、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキルなどが挙げられる。
これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、アクリル系重合体におけるカルボキシル基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
なお、アクリル系重合体におけるα,β−不飽和ニトリル単量体単位の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
なお、アクリル系重合体における任意の単量体単位の割合は、特に限定されないが、合計量で好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
次に、粒子状結着材として好ましい共役ジエン系重合体について説明する。共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体単位を含む重合体であり、それらの水素添加物も含まれる。
共役ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの脂肪族共役ジエン重合体;スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
以下、共役ジエン系重合体として好ましい芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体の製造に用いられる芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体、その他任意の単量体について詳述する。
なお、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、好ましくは79.5質量%以下、より好ましくは69質量%以下である。
なお、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体における脂肪族共役ジエン単量体単位の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。
なお、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体におけるカルボキシル基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
なお、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体におけるヒドロキシル基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
なお、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体における任意の単量体単位の割合は、特に限定されないが、合計量で好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、ポリアクリル酸100質量部当たり、粒子状結着材を、4質量部以上の割合で含有することが好ましく、20質量部以下の割合で含有することが好ましく、10質量部以下の割合で含有することが更に好ましい。ポリアクリル酸100質量部当たりの粒子状結着材の含有量が4質量部以上であれば、結着性を十分に高めて、負極用スラリー組成物を用いて製造した負極からの粉落ちの発生を抑制することができる。また、ポリアクリル酸の存在比が低下するのを抑制し、負極活物質の膨張よび収縮を良好に抑制する観点からは、ポリアクリル酸100質量部当たりの粒子状結着材の含有量は20質量部以下とすることが好ましい。
なお、同様の理由により、粒子状結着材の配合量は、負極活物質100質量部当たり、例えば0.05質量部以上とすることが好ましく、0.1質量部以上とすることがより好ましく、1.0質量部以下とすることが好ましく、0.6質量部以下とすることがより好ましく、0.5質量部以下とすることが更に好ましい。
粒子状結着材は、ゲル含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。粒子状結着材のゲル含有量が50質量%未満の場合、粒子状結着材の凝集力が低下して、集電体などとの密着強度が不十分となる場合がある。一方、粒子状結着材のゲル含有量が98質量%超の場合、粒子状結着材が靱性を失って脆くなり、結果的に密着強度が不十分となる場合がある。なお、本発明において、粒子状結着材の「ゲル含有量」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
また、粒子状結着材は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−20℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは30℃以下である。粒子状結着材のガラス転移温度が−30℃以上であることで、二次電池負極用スラリー組成物中の配合成分が凝集して沈降するのを防ぎ、スラリー組成物の安定性を確保することができる。また、粒子状結着材のガラス転移温度が80℃以下であることで、二次電池負極用スラリー組成物を集電体上などに塗布する際の作業性を良好なものとすることができる。なお、本発明において、粒子状結着材の「ガラス転移温度(Tg)」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、上記成分の他に、導電材、補強材、レベリング剤、電解液添加剤などの成分を含有していてもよい。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、上記各成分を分散媒としての水系媒体中に分散させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と水系媒体とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。
ここで、水系媒体としては、通常は水を用いるが、任意の化合物の水溶液や、少量の有機媒体と水との混合溶液などを用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を使用して製造することができる。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、集電体上に形成された負極合材層とを備え、負極合材層には、少なくとも、負極活物質と、ポリアクリル酸とが含まれている。なお、負極合材層中に含まれている各成分は、本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、負極用スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、負極合材層が、シリコン系負極活物質を含む上述した負極活物質と、上述したポリアクリル酸とを含んでいるので、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の低下を防止しつつ、電池容量を向上させることができる。
上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、負極用スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる負極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
なお、負極合材層の厚さは、好ましくは1〜200μm、より好ましくは3〜100μmとすることができる。
集電体上の負極用スラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上の負極用スラリー組成物を乾燥することで、集電体上に負極合材層を形成し、集電体と負極合材層とを備えるリチウムイオン二次電池用負極を得ることができる。
さらに、負極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、負極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、セパレータとを備え、負極として、本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いたものである。そして、本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極を用いているので、電池容量が高く、且つ、サイクル特性に優れている。
リチウムイオン二次電池の正極としては、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる既知の正極を用いることができる。具体的には、正極としては、例えば、正極合材層を集電体上に形成してなる正極を用いることができる。
なお、集電体としては、アルミニウム等の金属材料からなるものを用いることができる。また、正極合材層としては、既知の正極活物質と、導電材と、結着材とを含む層を用いることができる。
電解液としては、溶媒に電解質を溶解した電解液を用いることができる。
ここで、溶媒としては、電解質を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。具体的には、溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等のアルキルカーボネート系溶媒に、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、ジオキソラン、プロピオン酸メチル、ギ酸メチル等の粘度調整溶媒を添加したものを用いることができる。
電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらのリチウム塩の中でも、有機溶媒に溶解しやすく、高い解離度を示すという点より、電解質としてはLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。
セパレータとしては、例えば、特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、リチウムイオン二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)からなる微多孔膜が好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。リチウムイオン二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。リチウムイオン二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
実施例および比較例において、ポリアクリル酸の粘度比、粒子状結着材のゲル含有率およびガラス転移温度、負極の平滑性、耐粉落ち性および設計容量、並びに、リチウムイオン二次電池の初期効率およびサイクル特性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
ポリアクリル酸の0.5質量%水溶液および1.0質量%水溶液について、B型粘度計(東機産業株式会社製、TVB-10M)を用いて、温度25℃、pH8.0、回転速度60rpm(ローター:M4)での粘度をJIS K7117−1に準拠して測定した。そして、粘度比(=1質量%水溶液の粘度/0.5質量%水溶液の粘度)を算出した。なお、pHの調整は、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムを用いて行った。
<ガラス転移温度>
粒子状結着材を含む水分散液を、湿度50%、温度23〜26℃の環境下で3日間乾燥させて、厚み1±0.3mmのフィルムを得た。このフィルムを、温度60℃の真空乾燥機で10時間乾燥させた。その後、乾燥させたフィルムをサンプルとして、JIS K7121に準拠し、測定温度:−100℃〜180℃、昇温速度:5℃/分の条件下、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、DSC6220SII)を用いてガラス転移温度を測定した。
<ゲル含有量>
粒子状結着材を含む水分散液を用意し、この水分散液を湿度50%、温度23〜25℃の環境下で乾燥させて、厚み1±0.3mmのフィルムに成膜した。このフィルムを、温度60℃の真空乾燥機で10時間乾燥させた。その後、乾燥させたフィルムを3〜5mm角に裁断し、約1gを精秤した。裁断により得られたフィルム片の質量をw0とする。
このフィルム片を、50gのテトラヒドロフラン(THF)に24時間浸漬した。その後、THFから引き揚げたフィルム片を温度105℃で3時間真空乾燥して、不溶分の質量w1を計測した。
そして、下記式に従ってゲル含有量(質量%)を算出した。
ゲル含有量(質量%)=(w1/w0)×100
<負極の平滑性>
負極原反について、塗布量を長さ方向に10mm毎に10点測定した。10点の測定値の最小値と最大値の差を下記基準に従って評価した。差が小さいほど、負極の形成に用いた負極用スラリー組成物の塗工性が優れていることを示す。
A:差が0.5mg/cm2未満
B:差が0.5mg/cm2以上
<負極の耐粉落ち性>
シート状負極を10cm角に切断して、得られた試料片の質量(Y0)を測定した。その後、φ16mmの円形打ち抜き機を用いて試料片を5か所打ち抜いた。その後、エアーブラシをかけ、打ち抜いた試料片と、打ち抜かれた試料片との合計の質量(Y1)を測定し、下記式に従って粉落ち残存率を算出した。
粉落ち残存率=(Y1/Y0)×100(%)
そして、下記基準に従って耐粉落ち性を評価した。粉落ち残存率の値が大きいほど、負極の端部の割れ、はがれが少ないことを示す。
A:粉落ち残存率が99.98%以上
B:粉落ち残存率が99.96%以上99.98%未満
C:粉落ち残存率が99.96%未満
<負極の設計容量>
用いた負極活物質の質量平均の理論容量(mAh/g)を算出し、以下の基準で評価した。
A:理論容量が800mAh/gを超える
B:理論容量が470mAh/gを超え、800mAh/g以下
C:理論容量が470mAh/g以下
<初期効率>
作製したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、温度25℃で5時間静置してから、温度25℃の条件下、0.2Cの定電流法によってセル電圧3.65Vまで充電(充電量を「C1(mAh)」と定義する。)した。その後、温度60℃で12時間エージング処理を行い、温度25℃の条件下、0.2Cの定電流法によってセル電圧2.75Vまで放電(放電量を「D1(mAh)」と定義する。)した。
その後、0.2Cの定電流にてCC−CV充電(上限セル電圧4.20V)を行い(充電量を「C2(mAh)」と定義する。)、0.2Cの定電流にてCC放電(下限セル電圧2.75V)を実施(放電量を「D2(mAh)」と定義する)した。
初期効率を下記式に従って算出し、以下の基準により評価した。
初期効率={(D1+D2)/(C1+C2)}×100(%)
A:初期効率が88%以上
B:初期効率が85%以上88%未満
C:初期効率が81%以上85%未満
D:初期効率が81%未満
<サイクル特性>
初期効率の評価で用いたリチウムイオン二次電池を、温度25℃の条件下、0.1Cの定電流法にてセル電圧2.75Vまで放電した。その後、温度45℃の条件下、充電電圧4.2V、放電電圧2.75V、0.5Cの充放電レートにて100サイクル充放電の操作を行った。そのとき、1サイクル目の放電容量(初期放電容量X1)および100サイクル目の放電容量X2を測定し、ΔC´=(X2/X1)×100(%)で示される容量変化率ΔC´を求め、以下の基準により評価した。この容量変化率ΔC´の値が高いほど、サイクル特性に優れることを示す。
A:ΔC´が85%以上
B:ΔC´が83%以上85%未満
C:ΔC´が80%以上83%未満
D:ΔC´が80%未満
<負極活物質の準備>
炭素系負極活物質としての人造黒鉛(日立化成製、理論容量:360mAh/g)と、シリコン系負極活物質としてのSiOx(信越化学製、理論容量:2300mAh/g)とを準備した。
<ポリアクリル酸1の準備>
架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成株式会社製、レオジック260H)の1質量%水溶液を準備した。
<カルボキシメチルセルロース塩の準備>
カルボキシメチルセルロース塩としてMAC800LC(日本製紙ケミカル製、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、1質量%水溶液粘度6.7〜9.2Pa・s)を準備した。
<粒子状結着材の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、芳香族ビニル単量体としてスチレン62部、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン35部、カルボキシル基含有単量体としてイタコン酸2部、ヒドロキシル基含有単量体としてアクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−ヒドロキシエチルアクリレート)1部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、溶媒としてイオン交換水150部、及び重合開始剤として過硫酸カリウム1部を入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温して重合を開始した。
モノマー消費量が95.0%になった時点で冷却し、反応を停止した。こうして得られた重合体を含んだ水分散液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。さらにその後、30℃以下まで冷却し、粒子状結着材の水分散液を得た。得られた粒子状結着材の水分散液を用いて、上述した方法により、ゲル含有量、及び、ガラス転移温度を測定した。測定の結果、ゲル含有量は92%、ガラス転移温度(Tg)は10℃であった。
<リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、炭素系負極活物質としての人造黒鉛90部、シリコン系負極活物質としてのSiOx(信越化学製)10部、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成株式会社製、レオジック260H)の1質量%水溶液を固形分相当で1.5部、カルボキシメチルセルロース塩(MAC800LC、日本製紙ケミカル製、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)の1質量%水溶液を固形分相当で1.5部投入し、回転速度40rpmで30分間混合した。その後、粒子状結着材の水分散液を固形分相当で0.10部投入し、B型粘度計(東機産業株式会社製、TVB-10M)を用いて、温度25℃、回転速度60rpm(ローターM4)の条件でスラリー組成物の粘度が4.0Pa・sとなるようにイオン交換水を加えて混合し、負極活物質、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース塩(CMC)、粒子状結着材を含んでなるリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を調製した。
<負極の製造>
上述のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、厚さ20μmの銅箔(集電体)の上に塗付量が9.2〜9.8mg/cm2となるように塗布した。このリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物が塗布された銅箔を、0.2m/分の速度で、温度60℃のオーブン内を2分間、さらに温度110℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、銅箔上のスラリー組成物を乾燥させ、負極原反を得た。
そして、得られた負極原反をロールプレス機にて密度が1.63〜1.67g/cm3となるようプレスし、さらに、水分の除去および架橋のさらなる促進を目的として、真空条件下、温度120℃の環境に10時間置き、負極を得た。得られた負極について、平滑性および耐粉落ち性を評価した。結果を表1に示す。
<正極の製造>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてのLiCoO2100部、導電材としてのアセチレンブラック2部(電気化学工業(株)製、HS−100)、結着材としてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン、(株)クレハ化学製、KF−1100)2部、および溶媒としての2−メチルピリロドンを、全固形分濃度が67%となるように加えて混合し、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を調製した。
得られたリチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、厚さ20μmのアルミ箔の上に塗付量が30.5〜31.5mg/cm2となるように塗布した。その後、リチウムイオン二次電池正極用スラリー組成物が塗布されたアルミ箔を、0.5m/分の速度で温度60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、乾燥させた。その後、温度120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。
得られた正極原反をロールプレス機にてプレス後の密度が3.40〜3.50g/cm3になるようにプレスし、さらに、水分の除去を目的として、真空条件下、温度120℃の環境に3時間置き、正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
単層のポリプロピレン製セパレータ(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm;乾式法により製造;気孔率55%)を用意し、5cm×5cmの正方形に切り抜いた。また、電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。
そして、作製した正極を、3.8cm×2.8cmに切り出し、集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。次に、正極の正極合材層の面上に、上記の正方形のセパレータを配置した。さらに、作製した負極を、4.0cm×3.0cmに切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。その後、電解液として濃度1.0MのLiPF6溶液(溶媒はエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)の混合溶媒、添加剤としてビニレンカーボネート2体積%含有)を充填した。さらに、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装の開口を密封閉口し、ラミネートセル型のリチウムイオン二次電池を製造した。そして、リチウムイオン二次電池の初期効率およびサイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
炭素系負極活物質としての人造黒鉛の配合量を75部とし、シリコン系負極活物質としてのSiOxの配合量を25部とした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
炭素系負極活物質としての人造黒鉛の配合量を65部とし、シリコン系負極活物質としてのSiOxの配合量を35部とした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
カルボキシメチルセルロース塩を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
粒子状結着材を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
粒子状結着材の配合量を固形分相当で0.225部とした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアクリル酸として架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック260H)1.5部に替えて下記のポリアクリル酸2を3部用い、さらにカルボキシメチルセルロース塩および粒子状結着材を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<ポリアクリル酸2の準備>
反応容器に、未架橋型のポリアクリル酸(アルドリッチ製、数平均分子量:125万)を固形分濃度2%で溶解し、撹拌した。その後、反応容器を60℃に加熱し、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、SV−02、固形分濃度0.5%に希釈したもの)を1時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後、さらに8時間撹拌した。その後、1%水酸化ナトリウム水溶液にて、pH=8.0に調整し、得られた水溶液を60℃、真空乾燥条件下で水を蒸発させて、ポリアクリル酸2を得た。
ポリアクリル酸として架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック260H)1.5部に替えて下記のポリアクリル酸3を3部用い、さらにカルボキシメチルセルロース塩および粒子状結着材を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
<ポリアクリル酸3の準備>
反応容器に、未架橋型のポリアクリル酸(アルドリッチ製、数平均分子量:125万)を固形分濃度2%で溶解し、撹拌した。その後、反応容器を60℃に加熱し、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル社製、SV−02、固形分濃度0.5%に希釈したもの)を1時間かけて徐々に滴下し、滴下終了後、さらに8時間撹拌した。その後、1%水酸化リチウム水溶液にて、pH=8.0に調整し、得られた水溶液を60℃、真空乾燥条件下で水を蒸発させて、ポリアクリル酸3を得た。
カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液の配合量を固形分相当で0.375部とした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
負極活物質として人造黒鉛100部のみを使用し、シリコン系負極活物質としてのSiOxを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
炭素系負極活物質としての人造黒鉛の配合量を50部とし、シリコン系負極活物質としてのSiOxの配合量を50部とした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアクリル酸として架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック260H)に替えてポリアクリル酸4(アルドリッチ製、非架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量=45万、1質量%水溶液をNaOH(和光純薬、特級試薬)でpH=8に調整したもの)を使用した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアクリル酸として架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック260H)に替えてポリアクリル酸5(アルドリッチ製、非架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、重量平均分子量=300万、1質量%水溶液をNaOH(和光純薬、特級試薬)でpH=8に調整したもの)を使用した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアクリル酸として架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック260H)に替えてポリアクリル酸6(東亜合成株式会社製、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、レオジック262L)を使用した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアクリル酸を配合せず、カルボキシメチルセルロース塩の1質量%水溶液の配合量を固形分相当で3.0部とした以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1より、特に実施例1〜3および9では、負極の耐粉落ち性に優れると共に、電池容量、初期効率およびサイクル特性の全てに優れるリチウムイオン二次電池が得られることが分かる。
また、本発明によれば、優れた電池容量およびサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができるリチウムイオン二次電池用負極を提供することができる。
更に、本発明によれば、電池容量が高く、且つ、サイクル特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
Claims (5)
- 負極活物質と、ポリアクリル酸と、水とを含み、
前記負極活物質は、シリコン系負極活物質を5質量%以上40質量%以下の割合で含有し、
前記ポリアクリル酸は、0.5質量%水溶液の粘度が0.3Pa・s以上10.0Pa・s以下であり、且つ、0.5質量%水溶液の粘度に対する1質量%水溶液の粘度の比(1質量%水溶液の粘度/0.5質量%水溶液の粘度)が2.0以上6.0以下である、
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物。 - カルボキシメチルセルロース塩を更に含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物。
- 前記ポリアクリル酸は、1質量%水溶液の粘度が0.6Pa・s以上15.0Pa・s以下である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物。
- 請求項1〜3の何れかに記載のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を用いて得られる負極合材層を有する、リチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項4に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解液と、セパレータとを備えるリチウムイオン二次電池。
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