以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する写真以外の図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」は板やシートと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「反射防止フィルム」は、「反射防止板」や「反射防止シート」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
<<<区画部材>>>
区画部材10は、領域を区画する透明な部材である。典型的な例として、区画部材10は、建物に形成された開口部に取り付けられて、室内及び室外を区分けする。このような用途において、区画部材10は、室内と室外との可視光透過性を確保しながら、すなわち室内と室外との間での視認性を確保しながら、室内空間を室外から区画する。とりわけ、ここで説明する区画部材10は、明暗が生じている二つの区域S1,S2、或いは、時期や時間帯に応じて明暗が生じ得る二つの区域を区分けする部材として用いられた際においても、当該区画部材10を介した二つの区域間での良好な視界を確保することを可能にする。
ここで明暗が生じるとは、一方の区域S1内において区画部材10へ向かう光量と、他方の区域S2内において区画部材10へ向かう光量と、に差が生じていることを意味する。したがって、一方の区域S1内及び他方の区域S2内のそれぞれにおいて区画部材10の近傍に配置された照度計で測定された照度を比較することにより、明暗が生じているか否かを判断することができる。本件発明者が鋭意研究を重ねたところ、図6及び図7を参照して後述するように工場や駐車場等内に入退場を監視する監視者(警備員)の詰所の窓硝子板として区画部材を適用する場合において、室外の明るさが室内の明るさの5%以下となっている夜間のような状況下においても、室内から室外を観察した際に監視の目的において十分な視界を確保することができた。
また、本件明細書において、「透明」とは、その部材を通して向こうの状態を良好に視認できることを意味する。区画部材として窓ガラスに本発明の反射防止フィルムを貼り付けるような場合には、窓ガラスが全体的に着色していたり全体的に曇っていたりしていても視認は可能であるが、外光の映り込みはこれを著しく妨げるため、透過率よりは映り込みを防ぐことが必要である。但し、一般的には窓ガラス等の透明性を損なわないよう、反射防止フィルムとしての全光線透過率は80%以上、好ましくは95%以上のものが適している。
図1及び図2に示すように、区画部材10は、透明な透明体15と、透明体15の一側の表面(第1表面)15aに貼り付けられた第1反射防止フィルム20aと、を有している。とりわけ図示された例では、区画部材10を介したより良好な視界を確保するため、区画部材10は、透明体15の他側の表面(第2表面)15b上に、1反射防止フィルム20aに対向して、貼り付けられた第2の反射防止フィルム20bを、さらに有している。図2に示すように、第1反射防止フィルム20aは、第1接合層18aを介して、透明体15の第1表面15aに貼合されている。また、第2反射防止フィルム20bは、第2接合層18bを介して、透明体15の第2表面15bに貼合されている。
図1及び図2に示された例において、第1反射防止フィルム20aは、透明体15の第1表面15aの一部分上のみに配置されている。同様に、第2反射防止フィルム20bは、透明体15の第2表面15bの一部分上のみに配置されている。また図1及び図2に示された例では、板状の透明体15の板面への法線方向に沿って、第1反射防止フィルム20aの外輪郭と第2反射防止フィルム20bの外輪郭とが重なるようにして配置されている。すなわち、平面視において同一形状に形成された二枚の反射防止フィルム20a,20bが、透明体15を挟んで向かい合う位置に配置されている。
以下、区画部材10の構成要素である、透明体、接合層および反射防止フィルムについて順に説明していく。なお、第1反射防止フィルム20a及び第2反射防止フィルム20bは、同一に構成することができる。第1反射防止フィルム20a及び第2反射防止フィルム20bを区別して説明する必要がない場合には、反射防止フィルムに対して符号「20」を用いて説明する。同様に、第1接合層18a及び第2接合層18bは、同一に構成することができる。そして、第1接合層18a及び第2接合層18bを区別して説明する必要がない場合には、接合層に対して符号「18」を用いて説明する。
<<透明体>>
透明体15は、例えば建物に取り付け固定され、区画部材10の本体部分を形成する。
透明体15としては、既知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。透明体15に用いられる材料としては、例えば、透明無機材料や透明樹脂を例示することができる。透明無機材料としては、例えばソーダ硝子、カリ硝子、鉛ガラス等の硝子、PLZT等のセラミックス、石英、蛍石等を例示することができる。一方、透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマ一等のオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリエーテルサルホンやポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、アクロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
区画部材10を介した良好な視認性を確保する観点から、透明体15の可視光透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。透明体15は無色(即ち、無色透明)であることが好ましいが、其の用途、要求特性如何によっては、区画部材10としての視認性を妨げ無い範囲内で、有彩色又は無彩色に着色していても良い。
透明体15は、単層で形成されていてもよいし、多層で形成されていてもよい。ただし、多層で形成されている場合には、隣接する層間での反射を抑制する観点から、隣接する層の屈折率差が0.03以下となっていることが好ましく、0.01以下となっていることがより好ましい。
<<接合層>>
接合層18は、反射防止フィルム20を透明体15に貼合するための透明な層である。接合層18は、接着剤からなる接着層として形成されていてもよいし、或いは、リワーク性を有した、すなわち、剥離して再貼合可能な粘着層として形成されていてもよい。接合層18は、既知の種々の接着材料や粘着材料を用いて形成され得る。ただし、区画部材10の設置場所に依っては、接合層18が耐水性を有した材料から形成されていることが好ましい。また、区画部材10を介した良好な視認性を確保する観点から、接合層18の可視光透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。同様に、区画部材10を介した良好な視認性を確保する観点から、接合層18にオレンジピール(柚子肌状の厚みムラ)が生じていないことが好ましい。さらに、接合層18と透明体15との界面における反射を抑制する観点から、接合層18と透明体15との屈折率差が0.03以下となっていることが好ましく、0.01以下となっていることがより好ましい。
<<反射防止フィルム>>
図3及び図4に示すように、反射防止フィルム20は、凹凸面31を有する凹凸構造層30を含んでいる。凹凸構造層30の凹凸面31は、可視光線帯域の最短波長以下の間隔で配列された微小突起32によって形成されている。また、図3及び図4に示された反射防止フィルム20は、凹凸構造層30を支持する透明基材25を、さらに有している。反射防止フィルム20は、凹凸面31が透明体15とは反対側を向くように配置されている。したがって、第1反射防止フィルム20aが設けられている領域において、区画部材10の表面は、第1反射防止フィルム20aの凹凸面31によって形成されている。同様に、第2反射防止フィルム20bが設けられている領域において、区画部材10の表面は、第2反射防止フィルム20bの凹凸面31によって形成されている。
この反射防止フィルム20では、凹凸構造層30が、いわゆるモスアイ構造体として機能する。結果として、反射防止フィルム20は、凹凸構造層30の凹凸面31において、極めて優れた反射防止機能を発揮することができる。加えて、反射防止フィルム20は、凹凸構造層30が親水性の材料で形成されることにより、極めて優れた防曇機能を発現することができる。反射防止フィルム20の防曇機能は、凹凸面31が親水性を示すことに起因して発現されている。より具体的には、凹凸面31に結露等により付着した水滴が、親水性の凹凸面31上で広く延び広がり、その後、凹凸面31上にて均一且つ迅速な蒸発が促進されることから、防曇が実現される。このようにして反射防止フィルム20の凹凸面31上で、反射防止機能および防曇機能の両方が発現される。
なお、凹凸構造層30に用いられる材料自体の親水性と比較し、当該親水性材料を用いて形成された凹凸構造層30の凹凸面31は、材料自体の持つ親水性を大きく上回る予想を超える親水性を示すようになる。
即ち、本発明の反射防止フィルム20に於いては、親水性材料表面に形成された凹凸構造層30の水に対する接触角が、該親水性材料自体の水に対する接触角の50%以下になる。斯かる親水性の発現を、本件明細書に於いては、超親水性と呼稱する。
尚、本件明細書で言及する特定材料自体の特定液体に対する接触角(すなわち、θ/2法での静的接触角)は、凹凸構造層30の凹凸面31上での接触角とは異なる。特定材料自体の接触角は、特定材料表面を微小突起形状32を有しない平坦面として、該平坦面上で測定される接触角である。ここで平坦な面とは、JIS B 0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが10nm以下となる面である。
又、特定材料自体の親水性とは、特定材料からなる平坦面の有する水の接触角に基づく親水性である。特定材料自体の特定液体に対する接触角測定の具体的な方法として、特定材料からなる平坦な表面上に接触角を測定しようとする特定液体(純水、n−ヘキサデカン、又はオレイン酸等)の1.0μLの液滴を滴下し、着滴1秒後に、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出するθ/2法に従って測定した値(静的接触角)を、接触角の値とすることができる。測定装置としては、例えば、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いることができる。具体的には、水に対する接触角が50°以上90°以下となる材料を用いて凹凸構造層30を形成した場合、凹凸面31の水に対する接触角を20°以下にまでも低下させることが可能となる。凹凸構造層30の凹凸面31が超親水性を発現するのは、凹凸構造層30をなす材料自体の親水性が、凹凸構造層30の微小突起32によって形成された比表面積が大きい凹凸面31によって、大幅に増強されること、に起因していると考えられる。そして、反射防止機能および防曇機能の両方を極めて高いレベルで発現し得る凹凸面31を、区画部材10の表面に適用したことにより、後述するように、透明な区画部材10に対する固有の要求、すなわち、視界を確保しながら領域の区画を行うといった要求に好適な優れた作用効果を奏することができる。
したがって、このような背景からすれば、親水性材料を用いて形成された凹凸構造層30を区画部材10へ適用することによって奏される作用効果は、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものと言える。或いは、親水性材料を用いて形成された凹凸構造層30の区画部材10への適用は、モスアイ構造体としての凹凸構造層30の反射防止機能とは異質または際だった作用効果であり且つ凹凸構造層30をなす材料自体の親水性と比較して際だって優れた作用効果を奏することを可能にしていると言える。
なお、本件明細書において、「親水性」とは、水に対する接触角が90°未満となることを意味している。また、本明細書で言及する接触角は、JISR3257(1999)に準拠して測定された値とする。すなわち、明細書で言及する接触角は、前記の通り、また、材料自体の水に対する接触角は、実際の測定対象となる部位の表面の影響を排除するため、当該材料を用いて厚さ10μmの表面が平坦面の膜を形成して、当該膜の水に対する接触角をJISR3257(1999)に準拠して測定した値とする。
また、区画部材10を介した良好な視認性を確保する観点から、反射防止フィルム20の可視光透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
以下、反射防止フィルム20の透明基材25及び凹凸構造層30について順に説明していく。
<透明基材>
透明基材25としては、既知の透明基材を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。例えば、透明体15に用いられる材料として例示した材料を、透明基材25に適用することができる。ただし、区画部材10を介した良好な視認性を確保する観点から、透明基材25の可視光透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、透明基材25と接合層18との界面における反射を抑制する観点から、透明基材25と接合層18との屈折率差が0.03以下となっていることが好ましく、0.01以下となっていることがより好ましい。
透明基材25の厚みは、反射防止フィルム20の用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常20〜5000μmであり、透明基材25は、可撓性でロールの形で供給されるもの、巻き取れるほどには曲がらないが負荷をかけることによって湾曲するもの、完全に曲がらないもののいずれであってもよい。ただし、接合層18がリワーク性を有している場合には、透明体15からの反射防止フィルム20の剥離を容易に行うことができるよう、透明基材25は後述する凹凸構造層30とともに湾曲可能な厚みとなっていることが好ましい。
透明基材25の構成は、単一の層からなる構成に限られるものではなく、複数の層が積層された構成を有していてもよい。複数の層が積層された構成を有する場合は、同一組成の層が積層されてもよく、また、異なった組成を有する複数の層が積層されてもよい。また、透明基材25と凹凸構造層30とが別の材料から形成される場合には、透明基材25と凹凸構造層30との間にプライマー層を形成してもよい。このプライマー層は、密着性を向上させ、ひいては耐摩耗性を向上させるため、及び/又は、凹凸構造層30と透明基材25との間の屈折率の段差を縮小するために設ける。該プライマー層は透明基材25および凹凸構造層30との双方に密着性を有し、透明であり、且つ透明基材25と凹凸構造層30との中間の屈折率を有することが好ましい。プライマー層の材料としては、電離放射線硬化樹脂や熱硬化樹脂などを用いることが出来る。
<凹凸構造層>
図3〜図5に示すように、凹凸構造層30は、可視光線帯域の最短波長以下の間隔で配列された微小突起32によって形成された凹凸面31を有している。そして、ここで、微小突起32の「微小」とは、可視光線帯域の最短波長以下の間隔で配列される程度に微小であることを意味している。また、可視光線帯域の最短波長は、反射防止フィルム20を含む区画部材10が使用される環境下における可視光線帯域の最短波長を指している。したがって、区画部材10が使用される環境下に制限された光源からの光のみが存在する場合には、当該光源から射出される可視光の最短波長が、ここでいう可視光線帯域の最短波長となり、それ以外の場合には、一般的な可視光線帯域の最短波長として380nmを、ここでいう可視光線帯域の最短波長として採用する。
凹凸構造層30の凹凸面31は、反射防止機能および防曇機能の両方を発揮し、明暗差が生じる区域S1,S2を区分けする区画部材10に対して、明るい側の区域S1から暗い側の区域を観察した際における良好な視認性を付与する。この観点から、凹凸構造層30の凹凸面31上での5°正反射による反射率が、0%以上0.3%以下となっていることが好ましく、0.1%以下となっていることがより好ましい。同時に、凹凸構造層30の凹凸面31上での水に対する接触角が、0°より大きく30°以下となっていることが好ましく、20°以下となっていることがより好ましく、9°以下となっていることが更に好ましく、6°以下であることが更により好ましい。そして、以下に説明するようにして凹凸構造層30を形成すれば、このような特性を実現することができる。
なお、本明細書で言及する正反射の反射率は、(株)島津製作所製のUV-3100を用いてJIS R3106に準拠して測定された値とする。
凹凸構造層30は、樹脂を含有してなる層とすることができ、更に、樹脂組成物の硬化物からなる層とすることができる。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて重合開始剤等その他の成分を含有する。凹凸構造層30と透明基材25との界面における反射を抑制する観点から、凹凸構造層30と透明基材25との屈折率差が0.03以下となっていることが好ましく、0.01以下となっていることがより好ましい。凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、上述したように、親水性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、アクリレート系、エポキシ系、ポリエステル系等の電離放射線硬化性樹脂、アクリレート系、ウレタン系、エポキシ系、ポリシロキサン系等の熱硬化性樹脂、アクリレート系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の熱可塑性樹脂等の各種材料及び各種硬化形態の賦型用樹脂を、凹凸構造層30の形成に用いることができる。
なお、凹凸構造層30に高い親水性を付与する観点からは、親水性の高い構造を持った樹脂、例えばエチレンオキシド基(EO基)やヒドロキシル基、カルボキシル基等を有する化合物を含む組成物を用いて、凹凸構造層30が形成されていることが好ましい。凹凸構造層30をなす樹脂材料自体の水に対する接触角度は、90°以下となっていれば十分であり、60°以下となっていればより好ましい。
凹凸構造層30の形成に用いられる樹脂としては、微小突起32の成形性及び機械的強度に優れる点から電離放射線硬化性樹脂が好ましい。電離放射線硬化性樹脂とは、分子中にラジカル重合性及び/又はカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体を適宜混合したものであり、重合開始剤によって硬化されるものである。なお、非反応性重合体を含有してもよい。なお、電離放射線とは、分子を重合させて硬化させ得るエネルギーを有する電磁波または荷電粒子を意味し、例えば、すべての紫外線(UV、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線等の電磁波、電子線、α線等の荷電粒子線が挙げられる。
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、界面活性剤、重合開始剤、離型剤、光増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、粘度調整剤、密着性向上剤等を含有することもできる。とりわけ、樹脂組成物が、上述した親水性基を含む界面活性剤を含有するようにしてもよいが、樹脂組成物の主な親水性が界面活性剤により担持される場合には、経年での界面活性剤溶出による防曇性能低下が懸念されるため、樹脂骨格自体が親水性であることがより好ましい。
次に、凹凸構造層30の寸法について説明する。モスアイ構造による反射防止機能では、モスアイ構造体とこれに隣接する媒質との界面における有効屈折率を、厚み方向に連続的に変化させて反射防止を図るものである。このため、凹凸構造層30の凹凸面31は、凹凸構造層30のシート面に沿って可視光線帯域の最短波長以下の間隔dで配列された微小突起32によって形成されている。優れた反射防止機能を確保する観点から、隣接する微小突起32の間隔dの平均値daveが可視光線帯域の最短波長以下となるようにする。特に、該間隔dの最大値dmaxが、可視光線帯域の最短波長以下となっていることがより好ましい。ここで、この間隔dに係る隣接する微小突起32とは、いわゆる隣り合う微小突起32であり、透明基材25側の付け根部分である微小突起の裾の部分が接している二つの突起である。凹凸構造層30では微小突起32が密接して配置されることにより、微小突起32間の谷の部位を順次辿るようにして線分を作成すると、平面視において各微小突起を囲む多角形状領域を多数連結してなる網目状の模様が作製されることになる。間隔dに係る隣接する微小突起32は、この網目状の模様を構成する一部の線分を共有する突起である。また、間隔dは、図4に示すように、反射防止フィルム20のフィルム面に沿った、隣接する二つの微小突起32の頂部33間の距離とすることができる。以下において、隣接する微小突起32の間隔dを隣接突起間距離とも呼ぶ。
ただし、凹凸構造層30に対して優れた反射防止機能および防曇機能を付与する観点からは、凹凸構造層30をなす微小突起32が次のように形成されていることがより好ましい。まず、凹凸構造層30の微小突起32は、反射防止フィルム20のフィルム面に沿って、70nm以上300nm以下の間隔dで設けられていることが好ましく、70nm以上180nm以下の間隔dで設けられていることがより好ましい。また、反射防止フィルム20のフィルム面への法線方向ndに沿った微小突起32の高さHは、50nm以上300nm以下となっていることが好ましく、100nm以上250nm以下となっていることがより好ましい。
また、凹凸構造層30の凹凸面31上における超親水性は、親水性の材料と凹凸面31との組み合わせによって得られ、微小突起32のアスペクト比および凹凸面31の比表面積の影響を受ける。同様に、凹凸面31での反射防止機能も、微小突起32のアスペクト比の影響を受ける。アスペクト比は、微小突起32の幅に対する微小突起32の高さHの比であり、凹凸構造層30においては、微小突起32の幅を微小突起32間の間隔dと置き換えて取り扱うことが可能な指標である。凹凸構造層30に対して優れた反射防止機能および防曇機能を付与する観点から、微小突起32のアスペクト比は、0.17以上4.23以下となっていることが好ましく、1.8以上3.57以下となっていることがより好ましい。一方、比表面積は、単位面積あたりの実効表面積である。上記微細突起構造により、比表面積が増大すると、凹凸構造を形成する材料の親水性が、より親水側に強調される。
なお、凹凸構造層30の凹凸面31及び微小突起32に関する各種寸法及び形状は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて、特定することができる。
凹凸構造層30の厚みは、特に限定されないが、一例として10〜300μmとすることができる。なお、この場合の凹凸構造層30の厚みとは、図3に示すように、凹凸構造層30の透明基材25側の界面から、当該凹凸構造層30の凹凸面31をなす微小突起32の頂部33までの反射防止フィルム20のフィルム面への法線方向ndに沿った高さt1を意味する。
また、凹凸構造層30をその法線方向ndに対して傾斜した方向から観察した場合、凹凸構造層30の凹凸面31が白く濁ったように観察されることがあるが、これは凹凸のピッチが可視光の下限波長に近い場合に散乱が発生するという現象に基づく。これを回避するにはピッチを小さくしていけばよいが、斜めから見たときに見えにくくしたいという用途の場合にはあえてピッチを広くするという設計も可能である。
白い濁りが観察されるようになるメカニズムは、以下のことが要因であると推察される。まず、光の波長に対して小さく形成した微小突起32を斜めから観察することにより、当該観察方向に沿った微小突起32の断面形状が変化する。そして、凹凸構造層30の法線方向から傾斜したある観察方向から観察する際、当該観察方向と平行になる断面での微小突起32の隣接突起間距離d乃至は外周長が、概ね、可視光の波長と等しくなることがある。其の結果、モスアイ構造による反射防止效果が低減する。又、この際、微小突起32によってミー散乱が生じ、観察者はミー散乱した光を白く濁った光として観察しているものと推察される。ただし、本発明は、この推定に拘束されるものではない。
以上のような凹凸構造層30では、区画部材10を介した良好な視認性を確保することを考慮すると、当該凹凸構造層30単体での可視光透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
ところで、図5に示された凹凸構造層30において、微小突起32は不規則的に配置されているが、微小突起32の配列は、不規則的でも規則的でもよい。ただし、干渉模様の発生を防止する観点からは、微小突起32の配列が不規則的であることが好ましい。したがって、図1及び図2に示すように、二枚の反射防止フィルム20a,20bが少なくとも部分的に重なるように配置されている場合には、二枚の反射防止フィルム20a,20bの間で微小突起32の配列に起因した干渉模様が生じてしまうことのないよう、少なくとも一方の反射防止フィルム20の微小突起32の配列が不規則となっていることが好ましい。
<反射防止フィルムの製造方法>
反射防止フィルム20は、透明基材25上に凹凸構造層30を形成する従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。例えば、まず透明基材25上に、凹凸構造層30を構成するようになる凹凸構造層形成用樹脂組成物を塗布し、所望の微小突起形状と相補的な微細穴を有する凹凸構造層形成用原版を用いて、凹凸構造層形成用樹脂組成物の塗膜に賦型した後、該凹凸構造層形成用樹脂組成物を硬化させることにより凹凸構造層を形成し、凹凸構造層形成用原版から剥離する方法等が挙げられる。凹凸構造層形成用樹脂組成物を硬化させる方法は、該凹凸構造層形成用樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択することができる。
凹凸構造層形成用原版としては、繰り返し使用した際に変形および摩耗するものでなければ、特に限定されるものではなく、金属製であっても良く、樹脂製であっても良いが、通常、金属製が好適に用いられる。耐変形性および耐摩耗性に優れているからである。凹凸構造層形成用原版の微細穴を有する面は、特に限定されないが、陽極酸化による加工が容易である点から、アルミニウムからなることが好ましい。凹凸構造層形成用原版は、具体的には、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属製の母材の表面に、直接に又は各種の中間層を介して、スパッタリング等により純度の高いアルミニウム層が設けられ、当該アルミニウム層に微細穴を形成したものが挙げられる。前記母材は、前記アルミニウム層を設ける前に、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の表面を超鏡面化しても良い。
凹凸構造層形成用原版に微細穴を形成する方法としては、例えば、陽極酸化法によってアルミニウム層の表面に複数の微細な穴を有する多孔質アルミナ層を形成する陽極酸化工程と、多孔質アルミナ層をエッチングすることにより微細穴の開口部にテーパー形状を形成すると共に微細穴の穴径を拡大するエッチング工程とを順次繰り返し実施することによって形成することができる。微細な凹凸形状を形成する際には、アルミニウム層の純度(不純物量)や結晶粒径、陽極酸化処理及び/又はエッチング処理の諸条件を適宜調整することによって、所望の形状とすることができる。陽極酸化処理において、より具体的には、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な孔をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製することができる。
このようにして、凹凸構造層形成用原版は、深さ方向に徐々に穴径が小さくなる多数の微細穴が密に作製される。当該凹凸構造層形成用原版を用いて製造される凹凸構造層30には、凹凸構造層形成用原版の微細穴に対応して、頂部に近付くに従って徐々に径が小さくなる複数の微小突起32が密接して配置された凹凸構造層30が形成され、すなわち、当該微小突起32の深さ方向と直交する水平面で切断したと仮定したときの水平断面内における当該微小突起32を形成する材料部分の断面積占有率が、当該微細突起32の頂部から最深部方向に近づくに従い連続的に漸次増加する微小突起形状が形成される。
また、凹凸構造層形成用原版の形状としては、所望の形状を賦型することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、平板状であっても良く、ロール状であっても良いが、凹凸構造層形成用原版は、生産性向上の観点からは、ロール状の金型(以下、「ロール金型」と称する場合がある。)を用いることが好ましい。ロール金型としては、例えば、母材として、円筒形状の金属材料を用い、当該母材の周側面に、直接に又は各種の中間層を介して設けられたアルミニウム層に、上述したように、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにより、微細な凹凸形状が作製されたものが挙げられる。
図5に、凹凸構造層形成用樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用い、凹凸構造層形成用原版としてロール金型を用いた場合に、透明基材25上に凹凸構造層30を形成する方法の一例を示す。図5に示す方法では、樹脂供給工程において、ダイ36により帯状フィルム形態の透明基材25に、未硬化で液状の光硬化性樹脂組成物を塗布し、微小突起形用の受容層35を形成する。なお光硬化性樹脂組成物の塗布については、ダイ36による場合に限らず、各種の手法を適用することができる。続いて、押圧ローラ38aにより、第一の凹凸構造層形成用原版であるロール金型37の周側面に透明基材25を加圧押圧し、これにより透明基材25に受容層35を密着させると共に、ロール金型37の周側面に作製された微細な凹凸形状の穴に、受容層35を構成する光硬化性樹脂組成物を充分に充填する。この状態で、紫外線の照射により光硬化性樹脂組成物を硬化させ、これにより透明基材25の表面に凹凸構造層30を作製する。続いて剥離ローラ38bを介してロール金型37から、硬化した凹凸構造層30と一体に透明基材25を剥離する。必要に応じてこの透明基材25の凹凸構造層31形成面の反対側面に粘着層等を作製した後、所望の大きさに切断して反射防止フィルム20を作製する。これにより反射防止フィルム20は、ロール材による長尺の透明基材25に、凹凸構造層形成用原版であるロール金型37の周側面に作製された微小突起形状32を順次賦型して、効率良く大量生産される。
また上述の実施形態では、ロール金型37を使用した賦型処理によりフィルム形状の反射防止フィルム20を生産する場合について述べたが、この例に限らず、反射防止フィルム20の形状に係る透明基材25の形状に応じて、例えば平板、特定の曲面形状による賦型用金型を使用した枚葉の処理により反射防止フィルム20を作成する場合等、賦型処理に係る工程、凹凸構造層形成用原版は、反射防止フィルム20の形状に係る透明基材25の形状に応じて適宜変更することができる。
<<区画部材の作用効果>>
次に、以上のような区画部材10の作用効果について説明する。領域を区画するための以上に説明した区画部材10は、図2に示す如く、透明体15と、透明体15に貼り付けられた反射防止フィルム20と、を有している。反射防止フィルム20は、図3に示す如く、可視光線帯域の最短波長以下となる間隔dで設けられた微小突起32によって形成された凹凸面31を有する凹凸構造層30を有している。この反射防止フィルム20は、凹凸面31が透明体15とは反対側を向くように配置されている。
そして、反射防止フィルム20の凹凸面31上での5°正反射による反射率が0.3%以下となっており、反射防止フィルム20の凹凸面31上での水に対する接触角が20°以下となっている。すなわち、反射防止フィルム20の凹凸面31は、従来の低屈折率層からなる反射防止層と比較して格段に優れた反射防止機能を発現することができる。同時に、反射防止フィルム20の凹凸面31が、超親水性を有するため、凹凸面31が水滴で曇ってしまうことを効果的に防止することができる。具体的には、凹凸面31上に結露等によって水滴が付着したとしても、水滴は凹凸面31上を薄く延び広がる。この結果、凹凸面31上での水滴粒子による光の散乱が抑制され、防曇機能が発現される。また、表面に薄い水の膜ができることから、汚れが付着しにくく、自己クリーニング性も発現する。この防曇性能は界面活性剤等の添加による親水性付与によるものではなく、親水性樹脂材料と表面微細構造の相乗効果で発現するものであるため、経年で防曇性能が劣化しにくいという特徴もある。
このような区画部材10によれば、反射防止フィルム20が設けられた領域における表面反射が極めて効果的に防止される。したがって、単に高い可視光透過率にて、区画部材10越しに区域S1,S2間の観察が可能となるだけでなく、区画部材10の表面への写り込みを防止しながら、区画部材10越しに区域S1,S2間の観察が可能となる。加えて、梅雨等の湿度が高い時期や、空調等によって区域S1,S2間で環境条件が相違しているような場合においても、区画部材10の表面が水滴で曇ってしまうことを効果的に防止することができる。この結果、たとえ区域S1,S2に明暗差が生じており、明るい区域の側から暗い区域の側を観察したとしても、区画部材10越しに暗い区域の様子を比較的明瞭に確認することができる。
とりわけ、透明体15の両面に反射防止フィルム20が形成されている場合には、区画部材10の対向する一対の表面の両方において、反射防止機能および防曇機能が十分に発揮される。したがって、区画部材10越しに極めて良好な視界を確保することができる。
さらに、凹凸構造層30の凹凸面31が超親水性を有していることから、水性クリーナーを用いて、凹凸面31の汚れを十分に洗浄することができる。すなわち、クリーナーが水分とともに凹凸面31上を延び広がり、微小突起32間にも入り込むことができる。これにより、微小突起32間に入り込んだ異物の除去をクリーナーによって促進することが可能となり、凹凸構造層30が反射防止機能および防曇機能を十分に発揮し続けることができる。この点において、反射防止フィルム20及び区画部材10は、除染性においても優れていると言える。
さらに、低屈折率層として形成された反射防止膜での反射率は、スペクトル分布を持つ。具体的には、低屈折率層からなる反射防止膜は、低屈折率層の厚み及び観察方向に応じた特定波長の光に対して、他の波長域の光に対してよりも、優れた反射防止機能を及ぼす。結果として、観察方向に応じて低屈折率層に色味がついてしまい、区画部材10に適用した場合には、不都合が生じることも予想される。一方、低屈折率層からなる反射防止層とは異なり、凹凸構造層30により反射防止機能を発現する区画部材10においては、区画部材10を観察した際に、観察方向に応じて変化する色味が生じることはない。
さらに、反射防止フィルム20は、透明基材25上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型してなる凹凸構造層30を形成することにより作製され得る。そして、樹脂組成物の硬化物からなる凹凸構造層30は、安定性の面で優れ、長期間安定して予定した機能を発揮し続けることができる。この点、化学的な手法によりロータス効果(はす効果)を発現するような構造と比較して、凹凸構造層30の寿命は長く、しかも、安価で簡易に形成することができる。
<<区画部材の具体的な適用例>>
図6及び図7には、区画部材50の具体的な適用例が示されている。図6及び図7に示された例では、例えば工場や駐車場等の敷地内への入場および敷地内からの退場を監視する監視者(警備員)Gが駐在する建物90に対して、区画部材50が適用されている。図7に示すように、建物90は、壁91、天井92及び床93によって室外から区分けされた室内区域S1を形成している。区画部材50は、いわゆる窓材として、建物90に形成された開口部に取り付けられ、室内となる区域S1と室外となる区域S2とを区分けしている。警備員Gは、この区画部材50に対面して室内区域S1内に位置し、区画部材50を介して区域S1から区域S2の様子を監視している。建物90内には、照明器具84が天井92に取り付けられている。夕方から夜間にかけて、照明器具84を点灯することにより、建物90内となる区域S1は、区域S2よりも明るくなる。
図6及び図7に示された、区画部材50は、透明体55の区域S1側となる面の一部分に貼り付けられた第1反射防止フィルム60aと、透明体55の区域S2側となる面の一部分に第1反射防止フィルム60aに対向して貼り付けられた第2反射防止フィルム60bと、を有している。第1反射防止フィルム60a及び第2反射防止フィルム60は、警備員Gに正対する位置に配置されている。第1反射防止フィルム60a及び第2反射防止フィルム60bは、上述した実施の形態と同様に、接合層18を介して透明体55に貼合されている。透明体55は、上述した実施の形態の透明体15と同様に構成され得る。また、第1反射防止フィルム60a及び第2反射防止フィルム60bは、上述した実施の形態の反射防止フィルム20と同様に構成され得る。
さらに、図6及び図7に示された例においては、区域S1に撮影手段80が設けられている。撮影手段80は、区画部材50とともに、監視システム40を形成している。撮影手段80は、支持手段81によって建物90の天井92に取り付けられている。支持手段81は、建物90及び区画部材50に対して撮影手段80を回動可能に支持している。撮影手段80は、区画部材50の近傍に配置されており、建物90内の区域S1から区画部材50越しに区域S2の様子を撮影している。建物90内には、接続線83を介して撮影手段80と接続された表示手段82が設けられている。表示手段82は、撮影手段80で撮影された映像を接続線83を介して受信し、当該映像を表示することができるようになっている。図示された例において、表示手段82は、警備員Gの後方に配置され、表示手段82の表示面は区画部材50の側を向いている。
図6及び図7に示された例において、区画部材50は、透明体55の区域S1側となる面の一部分に貼り付けられた第3反射防止フィルム60cと、透明体55の区域S2側となる面の一部分に第3反射防止フィルム60cに対向して貼り付けられた第4反射防止フィルム60dと、を有している。第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dは、撮影手段80の回動軸線a1と非平行な方向に細長く延びている。そして、撮影手段80は、区画部材50のうちの、第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dが貼合されている部分を介して、区域S2を撮影している。言い換えると、撮影手段80と、撮影手段80による撮影範囲との間となる位置に、第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dが配置されている。
図示された例において、撮影手段80の回動軸線a1は垂直方向と平行になっている。この結果、撮影手段80は、水平方向に延びる広い領域を撮影することができる。これにともなって、第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dは、水平方向に細長く延びている。すなわち、第3及び第4反射防止フィルム60c,60dの水平方向に沿った幅は、第3及び第4反射防止フィルム60c,60dの水平方向に直交する方向(区画部材50が鉛直方向に延びている場合には鉛直方向)に沿った幅よりも広くなっている。
なお、第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dは、上述した実施の形態と同様に、接合層18を介して透明体55に貼合されている。第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dは、それぞれ、区画部材10の板面に沿って第1反射防止フィルム60a及び第2反射防止フィルム60bからずれた位置に配置されている。第3反射防止フィルム60c及び第4反射防止フィルム60dは、上述した実施の形態の反射防止フィルム20と同様に構成され得る。
このような区画部材50によれば、警備員Gは、区画部材50のうちの第1及び第2反射防止フィルム60a,60bが設けられている部分を介して、建物90内である区域S1から建物90外である区域S2の様子を観察することになる。第1及び第2反射防止フィルム60a,60bは、反射防止機能および防曇機能の両方を発揮する。このため、例えば照明器具84や表示手段82等の室内の像が区画部材50に写り込んでしまうことが効果的に防止され、同時に、湿度等の環境条件に依存して区画部材50が結露で曇ってしまうことが効果的に防止される。
この結果、警備員Gは、夜間、曇天等で区域S1の明るさが区域S2の明るさよりも明るい状況下であっても、区画部材50のうちの第1及び第2反射防止フィルム60a,60bが設けられている部分を介して、区域S1から区域S2の様子を明瞭に確認することができる。すなわち、従来のように、開放可能な窓材からなる区画部材50を其の都度開き、さらには、顔を区域S1から区域S2に出して、建物90外となる区域S2の様子を確認する必要がない。このように、区画部材50の開け閉めの必要性を排除し得ることは、安全上好ましく、とりわけ安全上の観点から開放不可能となっている区画部材50に対して有用である。また、区画部材50を開ける必要がないことから、空調機器の使用量を削除することができ、省エネルギーを実現し更にはCO2の削減を図ることもできる。また、建物90内に虫等が入ってくることを防止することができる。
なお、第1及び第2反射防止フィルム60a,60bの水平方向に沿った幅が、第1及び第2反射防止フィルム60a,60bの水平方向に直交する方向(区画部材50が鉛直方向に延びている場合には鉛直方向)に沿った幅よりも広くなるように、すなわち、第1及び第2反射防止フィルム60a,60bが水平方向により細長く延びるようにしてもよい。この場合、警備員Gは、座ったままの状態で、水平方向に沿ってより広い範囲を区画部材50越しに監視することができる。
同様に、監視システム40をなす撮影手段80は、区画部材50のうちの第3及び第4反射防止フィルム60c,60dが設けられている部分を介して、建物90内である区域S1から建物90外である区域S2の様子を撮影することになる。この際、第3及び第4反射防止フィルム60c,60dは、反射防止機能および防曇機能の両方を発揮する。このため、撮影手段80は、区画部材50に写り込んだ照明器具84や表示手段82等の室内の像を撮影することなく、区域S2の様子を高画質で撮影することができる。また、意図せず、区画部材50に結露等で水滴が付着してしまい区域S2の様子を撮影できていなかったことを後で気付くといった不具合を、回避することできる。斯かる撮影手段としては、撮像管や固体撮像素子を用いたTVカメラ、銀塩フィルムを用いた写真機等が使用できる。撮影様式は、用途、目的に応じて、動画又は静止画を適宜選択する。表示手段82も通常の液晶表示裝置(LCD)、プラズマ表示裝置(PDP)、陰極線管(CRT)表示裝置、電場発光(EL)表示裝置等を適宜選択すれば良い。
尚、第1及び第2反射防止フィルム60a、60bの面積を透明体55の全面に亙って設けることによって、第1及反射防止フィルム60aと第3反射防止フィルム60cとを兼用し、且つ第2反射防止フィルム60bと第4反射防止フィルム60dとを兼用する形態とすることも可能である。又、斯かる形態の場合、区画部材50の前面に亙って良好な視認性を確保することが可能である。但し、其の反面、斯かる形態の場合、区画部材50の存在が感知し難い為、区画部材50に体や物が衝突し易い等の不具合が発生する可能性が有る。これを防止する為、斯かる形態の場合には、区画部材の一部分に衝突防止用の表示をすることが好ましい。斯かる衝突防止用の表示として、例えば、透明体55と反射防止フィルム60a、60b(等)との層間、或いは反射防止フィルム60a、60b(等)の外側表面上に、所定のパターンをインキ乃至塗料を用いて印刷、塗工、筆書きしたり、或いは着色した紙、樹脂フィルム、金屬箔等を所定のパターン切り抜いて接着剤層を介して貼り合わせる等により行うことが出来る。所定のパターンとしては、例えば、円、多角形等の図形、「窓硝子有り、注意。」等の文字乃至文章等適宜選択可能である。
また、建物90内となる区域S1側において、第1及び第3反射防止フィルム60a,60cの結露を防止することができるので、建物90内を除湿する必要も省ける。この点においても、省エネルギーを実現し更にはCO2の削減を図ることができる。
さらに、区画部材50の反射防止フィルム60a,60b,60c,60dが設けられた部分を介して、区域S2から区域S1の様子を明瞭に確認することも可能となる。このことは、敷地内に侵入しようとする不審者の警戒心を煽り、これによって、不審者の侵入を未然に防止することも可能となる。とりわけ、図示された例では、区画部材50のうちの一部分に、反射防止フィルム60a,60b,60c,60dが貼合されているので、注意または警戒心をより効果的に喚起することができる。
区画部材10,50並びに監視システム40は、図6及び図7に示された例に限られず、種々の具体的な用途に適用することができる。一例として、移動手段の窓材を、反射防止フィルムを有した区画部材に置き換えることができる。この用途においては、車、電車、飛行機、船舶といった移動手段に乗車した人(操縦者、乗客、乗務員、及び/又は乗務員)が、区画部材を介して良好な視界により、移動手段の外部の様子を確認することができる。また、昨今の移動手段は、ドライブレコーダ、トラベルレコーダといった監視システムを有しており、上述の区画部材10,50及び撮影手段80を有した監視システム40を、移動手段のドライブレコーダやトラベルレコーダに適用することができる。
また、店舗の透明な窓や扉に上述した区画部材10,50を適用することができる。さらに、コンビニエンスストアに代表されるように店舗内には、防犯用の撮影手段が設けられていることもある。このような店舗に対して、上述の区画部材10,50及び撮影手段80を有した監視システム40を適用することも可能である。
さらに、展望車、展望台、展望施設の窓に、上述した区画部材10,50を適用することができる。また、ヘルメット、とりわけフルフェイス型のヘルメットの風防に、上述した区画部材10,50を適用することもできる。
<<凹凸構造層をなす樹脂材料>>
上述したように、凹凸構造層30は、樹脂材料を用いて形成され得る。より具体的には、凹凸構造層30は、樹脂組成物の硬化物からなり得る。ここでは、本件発明者らが、反射部材10に組み込まれる凹凸構造層30をなす樹脂材料について検討を行った結果について説明する。
本件発明者らが、鋭意検討を重ねた結果として、反射防止フィルム20の凹凸構造層30が樹脂材料、とりわけ樹脂組成物の硬化物からなる場合、当該樹脂材料(樹脂組成物の硬化物)が、次の物性を有することが好ましいことを知見した。まず、当該樹脂材料(樹脂組成物の硬化物)自体の25℃における貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下であることが好ましい。次に、当該樹脂材料(樹脂組成物の硬化物)の25℃における貯蔵弾性率(E1’)に対する損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’))が0.2以下であることが好ましい。さらに、当該樹脂材料(樹脂組成物の硬化物)の表面における、n−ヘキサデカンの接触角(θ/2法による静的接触角)が30°以下であること、或いは、当該樹脂材料(樹脂組成物の硬化物)の表面における、オレイン酸の接触角(θ/2法による静的接触角)が、25°以下であることが好ましい。これらの場合、乾拭きで汚れが拭取りやすく、仮に表面に付着した指紋汚れ等の油性の汚れが完全に拭取れなかった場合であっても、微細凹凸層の表面に薄く広がるため、当該汚れが目立たなくなり、拭取り後の視認性が良好になる。そのため、当該反射防止フィルム20を反射体15に積層した場合、反射防止フィルム20を介した反射体15の視認性を向上させることができる。
従来のモスアイ構造体は、耐擦傷性の点から、微小突起32の硬度が高いものが広く用いられてきた。硬度の高い微小突起は、拭取り時に圧力がかかってもほとんど変形しないため、乾拭きで汚れを拭き取ることは困難であった。一方、圧力により容易に変形可能な微小突起32は、圧力により当該突起32が潰れやすく、また隣り合う微小突起が接触した状態に維持される現象であるスティッキングが生じやすく、さらに拭いた箇所に拭き痕が残ってしまいやすかった。
その一方で、凹凸構造層30をなす樹脂材料(樹脂組成物の硬化物)の貯蔵弾性率(E1’)が300MPa以下、且つ、損失正接(tanδ)が0.2以下である場合、当該樹脂材料からなる凹凸構造層30の微小突起32は、拭取る程度の圧力で変形し、且つ、優れた弾性復元性を備えるようになる。そのため、乾拭きで汚れを拭取る際には、その圧力により微小突起32が変形して、微小突起32間の谷間に付着した汚れを微小突起頂部近傍に迄搾り出して機械的に掻き出し易くなり、その後、圧力が取り除かれると、塑性変形を生じることなく元の微小突起32の形状に復元する。このようなことから、上記物性を有する凹凸構造層30によれば、乾拭きであっても、反射防止性能を低下させることなく、汚れを拭取ることが可能となる。なお、拭取り時の圧力の大きさは、特に限定されるものではないが、通常、およそ2〜5kg/cm2程度の圧力である。
以下、凹凸構造層30が樹脂組成物の硬化物として形成される例において、凹凸構造層の形成に用いられる凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の好適な物性を説明し、次いで、この物性を実現するための凹凸構造層形成用樹脂組成物の好適な組成について説明する。
上述したように、凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)は300MPa以下であることが好ましい。E1’を300MPa以下とすることにより、拭取り時の圧力によって微小突起が変形し、微小突起間の隙間に入り込んだ汚れを、微小突起頂部近傍に迄搾り出して乾拭きで除去することが可能となる。この観点から、中でも貯蔵弾性率(E1’)が、1〜250MPaであることが好ましく、1〜100MPaであることがより好ましい。
同様に上述したように、凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率(E1’)に対する損失弾性率(E1”)の比(tanδ(=E1”/E1’)損失正接)が0.2以下であることが好ましい。損失正接を0.2以下とすることにより、拭取り時に変形した微小突起が、弾性復元され、元の形状に戻りやすい。これにより、突起の塑性変形や微小突起年の永久的な融合即ちスティッキングが抑制され、反射防止性能を低下することなく、乾拭きで汚れを拭取ることが可能になる。中でも、tanδが0.18以下であることが好ましい。
なお、本明細書で言及する樹脂組成物自体の貯蔵弾性率及び損失弾性率(単に、樹脂組成物の貯蔵弾性率及び損失弾性率とも呼稱する)は、JIS K7244に準拠して、以下の方法により測定される。まず、凹凸構造層形成用樹脂組成物を、2000mJ/cm2のエネルギーの紫外線を1分以上照射することにより十分に硬化させて、基材及び微小突起形状を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの単膜とする。次いで、25℃下、上記凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、E’、E”が求められる。測定装置としては、例えば、UBM製 Rheogel E400を用いることができる。
また、凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物は、当該硬化物の表面において、n−ヘキサデカンの接触角(θ/2法での静的接触角)が30°以下であるか、或いは、オレイン酸の接触角(θ/2法での静的接触角)が、25°以下となることが好ましい。凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の表面が上記のような親油性を有することにより、凹凸構造層30の表面をなす凹凸面31に付着した油性の汚れが完全に拭取れなかった場合であっても、凹凸構造層30の凹凸面31に薄く広がるため、当該汚れが目立たなくなり、拭取り後の視認性が良好になる。
なお、本件明細書で言及する凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の接触角は、前記の如く、凹凸構造層30の凹凸面31上での接触角では無く、基材上に凹凸構造層形成用樹脂組成物を塗布して硬化させることによって形成された硬化物の、微小突起形状32を有しない平坦な面上に、測定される接触角である。
反射防止フィルム20において、凹凸構造層30の凹凸面31の弾性率(樹脂組成物自体の弾性率とは異なる)は、柔軟性に優れる点から、200〜500MPaであることが好ましく、220〜400MPaであることが好ましい。凹凸構造層30の凹凸面31の最大押し込み深さは、変形し易く、拭取り性に優れる点から、1.0〜2.0μmであることが好ましく、1.2〜1.8μmであることがより好ましい。また、凹凸構造層凹凸構造層30の凹凸面31の弾性復元率は、塑性変形が少なく、拭き痕が生じにくい点から、80%以上であることが好ましく、85〜98%であることがより好ましい。
本明細書で言及する弾性率、最大押し込み深さ、及び弾性復元率は、以下のようにして測定される。すなわち、反射防止フィルム20の凹凸構造層30の凹凸面31に、次の特定の条件で圧子を押し込んで、フィルム表面の弾性率、最大押し込み深さ、弾性復元率を測定することができる。測定装置は、例えば、フィッシャーインストルメンツ社製PICODENTER HM−500を用いることができる。
<測定条件>
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース
・測定温度 25℃
次に、凹凸構造層30の形成凹凸構造層形成用樹脂組成物の組成について説明する。
凹凸構造層形成用樹脂組成物は、熱硬化性成分及び/又は光硬化性成分を含み、硬化後に上記物性が得られるものが用いられる。中でも、光硬化性成分を含む光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。上記光硬化性成分としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含む組成物であることが好ましく、(メタ)アクリレートを含む組成物であることがより好ましい。光硬化性樹脂組成物は、少なくとも上記光硬化性成分を含有していればよく、必要に応じて、更に他の成分を含有してもよい。また、上記凹凸構造層形成用樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましい。以下、光硬化性成分として好ましく用いられる(メタ)アクリレートを含む組成物中の各成分について順に説明する。
(1)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を1分子中に1個有する単官能(メタ)アクリレートであっても、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する多官能アクリレートであってもよく、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用するものであってもよい。中でも、硬化物が上記物性を満たし、微小突起が柔軟性と弾性復元性を両立する点から、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ビフェニロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、中でも、炭素数12以上であることがより好ましく、トリデシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いる場合、後述する炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の特性を兼ね備える。
単官能(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、多官能アクリレートの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、微小突起が柔軟性及び復元性に優れる点から、アルキレンオキサイドを含む多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましく、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含むことが更により好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートの含有量は、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、10〜95質量%であることが好ましく、15〜90質量%であることがより好ましい。
(2)炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物
凹凸構造層形成用樹脂組成物は、硬化物表面の親油性が向上し、微小突起が柔軟性に優れる点から、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することが好ましく、炭素数12以上の長鎖アルキル基を有する化合物を含有することがより好ましい。炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物の具体例としては、例えば、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンを有する化合物等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない限り、更に置換基を有していてもよい。置換基の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基の他、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基等が挙げられる。中でも、光硬化性を備える点から、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有することがより好ましい。なお、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物が(メタ)アクリロイル基を有する場合、当該化合物は、前記(メタ)アクリレートにも該当し得る。
炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する化合物を用いる場合、当該化合物の含有量は、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
凹凸構造層形成用樹脂組成物として好ましく用いられる光硬化性樹脂組成物は、硬化物の貯蔵弾性率、損失正接を上記所定の範囲に調整しやすく、且つ親油性に調整しやすく、優れた乾拭き取り性を得ることができる点から、少なくとも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートと、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートとを含有することが特に好ましい。中でも、炭素数10以上の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有割合が、エチレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、5〜30質量部であることが好ましく、10〜15質量部であることがより好ましい。
(3)光重合開始剤
上記(メタ)アクリレートの硬化反応を開始又は促進させるために、必要に応じて光重合開始剤を適宜選択して用いても良い。光重合開始剤の具体例としては、例えば、ビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤の含有量は、通常、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0.8〜20質量%であり、0.9〜10質量%であることが好ましい。
(4)帯電防止剤
凹凸構造層形成用樹脂組成物中に帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤を含有することにより、凹凸構造層30の凹凸面31に汚れが付着することを抑制することができ、また、拭取り時に汚れが落ちやすい。帯電防止剤は、従来公知のもの中から適宜選択して用いることができる。帯電防止剤の具体例としては、例えば、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、1級〜3級アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられる。中でも、カチオン性化合物が好ましく、3級アミノ基を有するカチオン性化合物がより好ましく、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン等のトリアルキルアミンであることが更により好ましい。
帯電防止剤を用いる場合、当該帯電防止剤の含有量は、通常、光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して1〜20質量%であり、2〜10質量%であることが好ましい。
(5)溶剤
凹凸構造層形成用樹脂組成物は、塗工性などを付与する点から溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合、当該溶剤は、組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤の具体的としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)等のエーテル系溶剤、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤、シクロヘキサン等のアノン系溶剤、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶剤を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、凹凸構造層形成用樹脂組成物に用いられる溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶剤の混合溶剤でもよい。
凹凸構造層形成用樹脂組成物全量に対する、固形分の割合は20〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。なお、本明細書で言及する固形分とは、樹脂組成物中の溶剤以外のすべての成分を表す。
(6)その他の成分
反射防止フィルム20に用いられる凹凸構造層形成用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、濡れ性調整のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、安定化剤、消泡剤、撥き防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、粘度調製剤、離型剤等が挙げられる。
ここで、本件発明者らが実際に反射防止フィルム20を作製し、作製された反射防止フィルム20の凹凸構造層30の指紋拭き取り性および耐擦傷性について調査した結果を説明する。
(製造例1−1:反射防止フィルム用金型1−1の製造)
純度99.50%の圧延されたアルミニウム板を、その表面が、十点平均粗さRz30nm、且つ周期1μmの凹凸形状となるように研磨後、0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、陽極酸化を実施した。次に、第一エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第二エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径処理を行った。さらに、上記処理を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム基板上に微細な凹凸形状が形成された陽極酸化アルミニウム層が形成された。最後に、フッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、反射防止フィルム用金型1−1を得た。なお、アルミニウム層に形成された微細な凹凸形状は、平均隣接微細孔間距離が100nm、平均深さが200nmで、深さ方向に徐々に孔径が小さくなる多数の微細孔が密に形成された形状であった。
(製造例1−2:凹凸構造層用樹脂組成物Aの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の凹凸構造層用樹脂組成物Aを調製した。
<樹脂組成物Aの組成>
・エチレンオキサイド変性(EO変性)ビスフェノールAジアクリレート 55質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 35質量部
・トリデシルアクリレート 5質量部
・ドデシルアクリレート 5質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(製造例1−3:凹凸構造層用樹脂組成物Bの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の凹凸構造層用樹脂組成物Bを調製した。
<樹脂組成物Bの組成>
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 50質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 30質量部
・トリデシルアクリレート 5質量部
・ドデシルアクリレート 5質量部
・メチルメタクリレート 5質量部
・ヘキシルメタクリレート 5質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(比較製造例1−4:比較凹凸構造層用樹脂組成物Cの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の比較凹凸構造層用樹脂組成物Cを調製した。
<樹脂組成物Cの組成>
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート 30質量部
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 20質量部
・ドデシルアクリレート 50質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(比較製造例1−5:比較凹凸構造層用樹脂組成物Dの製造)
以下の各成分を混合し、希釈溶剤として、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを用いて、固形分45質量%の比較凹凸構造層用樹脂組成物Dを調製した。
<樹脂組成物Dの組成>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 15質量部
・2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート 15質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート 70質量部
・ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(ルシリンTPO) 1質量部
(製造例1−6:反射防止フィルムAの製造)
製造例1−2で得られた凹凸構造層用樹脂組成物Aを、製造例1−1で得られた反射防止フィルム用金型1−1の微細凹凸面が覆われ、硬化後の凹凸構造層の厚さが20μmとなるように塗布、充填し、その上に透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC)(富士フィルム社製)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をゴムローラーで10N/cm2の加重で圧着した。金型全体に均一な組成物が塗布されたことを確認し、透明基材側から2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して凹凸構造層用樹脂組成物Aを硬化させた。その後、金型より剥離し、反射防止フィルムAを得た。
(製造例1−7:反射防止フィルムBの製造)
製造例1−6において、凹凸構造層用樹脂組成物Aの代わりに、製造例1−3で得られた凹凸構造層用樹脂組成物Bを用いた以外は、製造例1−6と同様にして反射防止フィルムBを得た。
(比較製造例1−8:比較反射防止フィルムCの製造)
製造例1−6において、凹凸構造層用樹脂組成物Aの代わりに、比較製造例1−4で得られた比較凹凸構造層用樹脂組成物Cを用いた以外は、製造例1−6と同様にして比較反射防止フィルムCを得た。
(比較製造例1−9:比較反射防止フィルムDの製造)
製造例1−6において、凹凸構造層用樹脂組成物Aの代わりに、比較製造例1−5で得られた比較凹凸構造層用樹脂組成物Dを用いた以外は、製造例1−6と同様にして比較反射防止フィルムDを得た。
<凹凸構造層用樹脂組成物及び反射防止フィルムの物性>
(貯蔵弾性率(E’)及びtanδの測定)
製造例1−2〜1−5で得られた凹凸構造層用樹脂組成物A〜Dをそれぞれ2000mJ/cm2のエネルギーの紫外線を1分間照射することにより十分に硬化させて、基材及び微小突起を有しない、厚さ1mm、幅5mm、長さ30mmの試験用単膜A〜Dをそれぞれ得た。次いで、JIS K7244に準拠し、25℃下、上記試験用単膜A〜Dの長さ方向に10Hzで25gの周期的外力を加え、動的粘弾性を測定することにより、25℃における、貯蔵弾性率E’、及び損失弾性率E”を求めた。また、当該E’及びE”の結果からtanδを算出した。測定装置はUBM製 Rheogel E400を用いた。結果を表1に示す。
(接触角の測定)
トリアセチルセルロースフィルム上に凹凸構造層用樹脂組成物A〜Dを塗布して硬化させて、微細凹凸形状を有しない塗膜を形成した。当該塗膜側表面を上面にして、粘着層つきの黒アクリル板に貼り付けたものの上に、水1.0μLの液滴を滴下し、着滴5秒後の水の接触角を計測した。水の代わりに、n−ヘキサデカン及びオレイン酸をそれぞれ用いて、各溶媒の接触角をそれぞれ計測した。結果を表1に示す。測定装置は協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いた。
(弾性率、最大押し込み深さ、弾性復元率の測定)
製造例1−6〜1−9で得られた反射防止フィルムA〜B及び比較反射防止フィルムC〜Dの凹凸構造層の凹凸面に、下記特定の条件で圧子を押し込んで、凹凸構造層の凹凸面の弾性率、最大押し込み深さ、弾性復元率を測定した。測定装置は、フィッシャーインストルメンツ社製PICODENTER HM−500を用いた。結果を表2に示す。
○測定条件
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース
・測定温度 25℃
反射防止フィルムの凹凸面に、純水(液クロマトグラフィー用蒸留水(純正化学(株)製))1.0μLの液滴を滴下し、着滴1秒後、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて接触角を測定した。接触角は、測定装置は協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて測定した。結果を表2に示す。
<指紋拭き取り試験評価>
製造例1−6〜1−9で得られた反射防止フィルムA〜B及び比較反射防止フィルムC〜Dの凹凸構造層の凹凸面に、指を押し付けて指紋を付着させた。その後、ザヴィーナミニマックス(富士ケミカル製)にて指紋を乾拭きした。乾拭きは3kg/cm2程度の力で10往復行い、拭取り後の外観を評価した。結果を表3に示す。
(指紋拭き取り試験評価基準)
A:指紋汚れが視認できない。
B:指紋付着跡に若干の色味の変化が視認される。
C:指紋がほぼ拭取られない。
<耐擦傷性試験>
製造例1−6〜1−9で得られた反射防止フィルムA〜B及び比較反射防止フィルムC〜Dの凹凸構造層の凹凸面に、ザヴィーナミニマックス(富士ケミカル製)にて3kg/cm2程度の力で10往復擦った。擦過1分後の視認性の評価を下記基準で行った。結果を表3に示す。
(摺動性試験評価基準)
A:擦り痕が視認されない。
B:擦り痕に若干色味の変化がある。
C:擦り痕が明らかに白濁する。
25℃において、貯蔵弾性率(E’)が300MPa以下であり、且つ、tanδが0.2以下である凹凸構造層用樹脂組成物の硬化物を用いて形成された凹凸構造層を有する反射防止フィルムA及びBは、乾拭きであっても指紋を拭取ることが可能で、拭取り跡が確認されなかった。tanδが0.69の比較反射防止フィルムCは、拭取り時の圧力により微細突起が塑性変形を生じたり、スティッキングが発生したものと推定される。貯蔵弾性率E’が330MPaの比較反射防止フィルムDは、微小突起が変形しにくく、乾拭きでは十分に指紋汚れを落とすことができなかった。
<<微小突起の構成>>
本件発明者らは、凹凸構造層30の耐擦傷性をさらに向上させるための検討を行った。そして、本件発明者らは、上述した凹凸構造層形成用樹脂組成物の硬化物の物性や凹凸面31での接触角特性とは別途に、凹凸面31をなす微小突起32の構成に工夫を加えることによっても、凹凸構造層30の耐擦傷性を向上させ得ることを知見した。
すなわち、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、頂部に頂点(高さの極大点)を複数有する微小突起(多峰性の微小突起と呼ぶ)32を所定の分布で設けることにより、凹凸構造層30の耐擦傷性を向上させ得ることを知見した。なお以下において、多峰性の微小突起との対比により、頂点が1つのみの微小突起を単峰性の微小突起と呼ぶ。また多峰性の微小突起、単峰性の微小突起に係る各頂点を形成する各凸部を、適宜、峰と呼ぶ。
多峰性突起の「峰」は微小突起の各極大点近傍領域であって、各極大点間の高さの極小領域即ち溝g(図19参照)によって相互に区劃された該溝gよりも高高度領域を言う。そして、多峰性微小突起に於いては、複数の峰が同一微小突起の麓部に共有されていることが特徴である。又、図19の如く、微小突起の高さ方向(麓部から頂部に向かう+Z方向)に向かって該高さ方向と直交する仮想的切斷面で切断した斷面積が漸次減少する(数学的に言えば、該斷面積が高さZの広義の単調減少函数となる)形態が、反射率低減の点で好ましい。
本件発明者らが検討を重ねたところ、次の構成(a)を有する反射防止フィルム20が、優れた耐擦傷性を発揮した。また、構成(a)をより具体化した構成(b1)、(b2)を有する反射防止フィルム20は、優れた耐擦傷性をより安定して有するようになる。
構成(a):微小突起32は、頂点が複数の多峰性微小突起と、頂点が一つの単峰性微小突起とから構成され、微小突起の高さの度数分布が一つ又は二つの峰(度数分布の柱状グラフ又は度数分布曲線の頂部であり、度数分布の極大値でもある)からなる分布であり、多峰性微小突起は、各分布の裾野部よりも頂部近傍に多く分布している。
構成(a)によれば、凹凸構造層30は、微小突起(単に微小突起と呼稱する場合は単峰性微小突起及び多峰性微小突起の両方を包含する)32の高さの度数分布が一つ又は二つの頂部からなる一つ又は二つの分布から構成され、多峰性微小突起が各分布の裾野部よりも頂部近傍に多く分布しているので、反射防止フィルム20の凹凸構造層30による反射防止機能の広帯域化を図るとともに、斜め方向からの光学特性を限定して視野角特性を制限することができる。このような形状による多峰性微小突起は、賦型処理後の樹脂の充填不良により生じる多峰性微小突起とは異なり、対応する形状を備えている賦型処理用の金型により作製されることにより、設計通りの高さの分布を設定して均一かつ高い量産性を確保することができる。またさらに、充填不良による場合に比して突起間の間隔を広く設定することにより、十分に耐擦傷性を向上することができ、さらには光学特性を向上することができる。
また、単峰性の微小突起に比して機械的強度が優れた微小突起32が設けられることにより、衝撃力が加わった場合、単峰性の微小突起のみの場合に比して、突起が損傷しないようにすることができ、これにより反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。また仮に微小突起が損傷した場合でも、その損傷個所の面積を低減することができ、これによっても反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。
構成(b1):微小突起32の高さHの度数分布における高さHの平均値をmとし、標準偏差をσとし、H<m−σの領域を低高度領域とし、m−σ≦H≦m+σの領域を中高度領域とし、m+σ<Hの領域を高高度領域とした場合に、各領域内の多峰性微小突起の数Nmと、度数分布全体における微小突起32の総数Ntとの比率が、中高度領域のNm/Nt>低高度領域のNm/Ntと、中高度領域のNm/Nt>高高度領域のNm/Ntとの関係を満たす。
構成(b1)によれば、反射防止フィルム20は、中高度領域の多峰性の微小突起の数(Nm)と、度数分布全体における微小突起の総数(Nt)との比(Nm/Nt)が、低高度領域や高高度領域の多峰性の微小突起の数と、度数分布全体における微小突起の総数(Nt)との比(Nm/Nt)よりも大きいので、反射防止機能の広帯域化及び視野角特性の制限をより具体的に図ることができる。
構成(b2):微小突起32の高さhの度数分布が高さの高い側と低い側とに各々分布の峰を有する双峰性であり、
2つの峰の境界となる高さhsを境として、該度数分布は高さhs未満の微小突起の分布と高さhs以上の微小突起の分布との2つの分布から構成され、
該高さhs未満の分布における微小突起32の高さhの平均値をm1とし、標準偏差をσ1とし、
h<m1−σ1の領域を低高度領域とし、m1−σ1≦h≦m1+σ1の領域を中高度領域とし、m1+σ1<h<hsの領域を高高度領域とした場合に、hs未満の分布における各領域内の多峰性微小突起の数Nm1と、度数分布全体における微小突起の総数Ntとの比率が、中高度領域のNm1/Nt>低高度領域のNm1/Ntと、中高度領域のNm1/Nt>高高度領域のNm1/Ntとの関係を満たし、
該高さhs以上の分布における微小突起32の高さhの平均値をm2とし、標準偏差をσ2とし、hs<h<m2−σ2の領域を低高度領域とし、m2−σ2≦h≦m2+σ2の領域を中高度領域とし、m2+σ2<hの領域を高高度領域とした場合に、hs以上の分布における各領域内の多峰性微小突起の数Nm2と、度数分布全体における微小突起の総数Ntとの比率が、中高度領域のNm2/Nt>低高度領域のNm2/Ntと、中高度領域のNm2/Nt>高高度領域のNm2/Ntとの関係を満たす。
構成(b2)によれば、反射防止フィルム20は、突起高さ度数分布が分布の峰即ち突起高さの極大値を2つ有する。そして、境界高さhsを境として、突起高さがhs未満の微小突起の分布と突起高さhs以上の微小突起の分布との二つの分布の各々において、中高度領域の多峰性の微小突起の数と、度数分布全体における微小突起の総数との比が、低高度領域や高高度領域の多峰性の微小突起の数と、度数分布全体における微小突起の総数との比よりも大きいので、反射防止機能の広帯域化及び視野角特性の制限をより具体的に図ることができる。とりわけ、構成(b2)によれば、反射防止機能の大幅な広帯域化を実現することができる。
以下、以上の点の詳細について説明する。
上述したように、凹凸構造層30の凹凸面31及び微小突起32に関する各種寸法及び形状は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、特定することができる。すなわち、隣接する微小突起32の間隔(隣接突起間隔)dおよび微小突起32の高さHは、原子間力顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。まず、微小突起32に関する各種寸法及び形状の特定方法について詳述する。
(1)すなわち先ず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(以下、AFMと呼ぶ))又は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope(以下、SEMと呼ぶ))を用いて微小突起32の面内配列(突起配列の平面視形状)を検出する。なお図8〜図10は、実際に原子間力顕微鏡により求められた拡大写真である。AFMのデータには微小突起群の高さの面内分布データを付随する為、此の写真は輝度により高さの面内分布を示す写真であると言える。図8〜図10において、単峰性の微小突起は符号32Aで示され、多峰性の微小突起は符号32Bで示されている。
(2)続いてこの求められた面内配列から各突起の高さの極大点(以下、単に極大点と呼ぶ)を検出する。極大点とは、高さが、其の近傍周辺の何れの点と比べても大(極大値)となる点を意味する。なお極大点を求める方法としては、平面視形状と対応する断面形状の拡大写真とを逐次対比して極大点を求める方法、平面視拡大写真の画像処理によって極大点を求める方法等、種々の手法を適用することができる。図9は、図8に示した拡大写真に係る画像データの処理による極大点の検出結果を示す図であり、この図において黒点により示す個所がそれぞれ各突起の極大点である。なおこの処理では4.5×4.5画素のガウシアン特性によるローパスフィルタにより事前に画像データを処理し、これによりノイズによる極大点の誤検出を防止した。また8画素×8画素による最大値検出用のフィルタを順次スキャンすることにより1nm(=1画素)単位で極大点を求めた。
(3)次に検出した極大点を母点とするドロネー図(Delaunary Diagram)を作成する。ここでドロネー図とは、各極大点を母点としてボロノイ分割を行った場合に、ボロノイ領域が隣接する母点同士を隣接母点と定義し、各隣接母点同士を線分で結んで得られる3角形の集合体からなる網状図形である。各3角形は、ドロネー3角形と呼ばれ、各3角形の辺(隣接母点同士を結ぶ線分)は、ドロネー線と呼ばれる。図10は、図9から求められるドロネー図(白色の線分により表される図である)を図9による原画像と重ね合わせた図である。ドロネー図は、ボロノイ図(Voronoi diagram)と双対の関係に有る。またボロノイ分割とは、各隣接母点間を結ぶ線分(ドロネー線)の垂直2等分線同士によって画成される閉多角形の集合体からなる網状図形で平面を分割することを言う。ボロノイ分割により得られる網状図形がボロノイ図であり、各閉領域がボロノイ領域である。
(4)次に、各ドロネー線の線分長の度数分布、すなわち隣接する極大点間の距離(以下、隣接突起間距離と呼ぶ)の度数分布を求める。図11は、図10のドロネー図から作成した度数分布のヒストグラムである。なお図8、図19に示すように、突起の頂部に溝状等の凹部が存在したり、あるいは頂部が複数の峰に分裂している場合は、求めた度数分布から、このような突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している微細構造に起因するデータを除去し、突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を作成する。
具体的には、突起の頂部に凹部が存在する微細構造、頂部が複数の峰に分裂している多峰性の微小突起に係る微細構造においては、このような微細構造を備えていない単峰性の微小突起の場合の数値範囲から、隣接極大点間距離が明らかに大きく異なることになる。これによりこの特徴を利用して対応するデータを除去することにより突起本体自体のデータのみを選別して度数分布を検出する。より具体的には、例えば図8に示すような微小突起(群)の平面視の拡大写真から、5〜20個程度の互いに隣接する単峰性微小突起を選んで、その隣接極大点間距離の値を標本抽出し、この標本抽出して求められる数値範囲から明らかに小さい方向に外れる値(通常、標本抽出して求められる隣接極大点間距離平均値に対して、値が1/2以下のデータ)を除外して度数分布を検出する。図11の例では、隣接極大点間距離が56nm以下のデータ(矢印Aにより示す左端の小山)を除外する。なお図11は、このような除外する処理を行う前の度数分布を示すものである。因みに上述の極大点検用のフィルタの設定により、このような除外する処理を実行してもよい。
(5)このようにして求めた隣接突起間距離dの度数分布から平均値dAVG及び標準偏差σを求める。ここでこのようにして得られる度数分布を正規分布とみなして平均値dAVG及び標準偏差σを求めると、図11の例では、平均値dAVG=158nm、標準偏差σ=38nmとなった。これにより隣接突起間距離dの最大値を、dmax=dAVG+2σとし、この例ではdmax=234nmとすることができる。
なお同様の手法を適用して突起の高さを定義する。この場合、上述の(2)により求められる極大点から、特定の基準位置からの各極大点位置の相対的な高さの差を取得してヒストグラム化する。図12は、このようにして求められる突起付け根位置を基準(高さ0)とした突起高さHの度数分布のヒストグラムを示す図である。このヒストグラムによる度数分布から突起高さの平均値HAVG、標準偏差σを求める。ここでこの図12の例では、平均値HAVG=178nm、標準偏差σ=30nmである。これによりこの例では、突起の高さは、平均値HAVG=178nmとなる。なお図12に示す突起高さHのヒストグラムにおいて、多峰性の微小突起の場合は、頂点を複数有していることにより、1つの突起に対してこれら複数のデータが混在することになる。そこでこの場合は麓部が同一の微小突起に属するそれぞれ複数の頂点の中から高さの最も高い頂点を、当該微小突起の突起高さとして採用して度数分布を求める。
なお上述した突起の高さを測る際の基準位置は、隣接する微小突起の間の谷底(高さの極小点)を高さ0の基準とする。但し、係る谷底の高さ自体が場所によって異なる場合(例えば、図23について後述するように、谷底の高さが微小突起の隣接突起間距離に比べて大きな周期でウネリを有する場合等)は、(1)先ず、基材2の表面又は裏面から測った各谷底の高さの平均値を、該平均値が收束するに足る面積の中で算出する。(2)次いで、該平均値の高さを持ち、基材2の表面又は裏面と平行な面を基準面として考える。(3)その後、該基準面を改めて高さ0として、該基準面からの各微小突起の高さを算出する。
突起が不規則に配置されている場合には、このようにして求められる隣接突起間距離の最大値dmax=dAVG+2σ、突起の高さの平均値HAVGが、規則正しく配置されている場合の上述の条件を満足することがより好ましいことが判った。具体的には、反射防止効果を発現する微小突起間距離の条件は、dmax≦Λminとなることが好ましい。最低限、可視光線帯域の最長波長において反射防止効果を奏し得る必要最短限の条件は、Λmin=λmaxであるため、dmax≦λmaxとなることが好ましく、可視光線帯域の全波長に対して反射防止効果を奏し得る必要十分の条件は、Λmin=λminであるため、dmax≦λminとなることが好ましい。そして、可視光線帯域の全波長に対する反射防止効果をより確実に奏し得る好ましい条件は、dmax≦300nmであり、更に好ましい条件は、dmax≦180nmである。しかしながら実用上十分な程度に反射防止機能を確保する観点からは、平均突起間距離daveを、dave≦λminとしても良い。
因みに、図8〜図12の例により説明するとdmax=234nm≦λmax=780nmとなり、dmax≦λmaxの条件を満足して十分に反射防止効果を奏し得ることが判る。また可視光線帯域の最短波長λminが380nmであることから、可視光線の全波長帯域において反射防止効果を発現する十分条件dmax≦λminも満たすことが判る。またdave≦dmaxであることから、dave≦λminの条件も満足していることが判る。また平均突起高さHAVG=178nmであることにより、平均突起高さHAVG≧0.2×λmax=156nmとなり(可視光波長帯域の最長波長λmax=780nmとして)、十分な反射防止効果を実現するための突起の高さに関する条件(HAVG≧0.2×λmax)も満足していることが判る。なお標準偏差σ=30nmであることから、HAVG−σ=148nm<0.2×λmax=156nmとの関係式が成立することから、統計学上、全突起の50%以上、84%以下が、突起の高さに係る条件(178nm以上)の条件を満足していることが判る。なおAFM及びSEMによる観察結果、並びに微小突起の高さ分布の解析結果から、多峰性の微小突起は相対的に高さの低い微小突起よりも高さの高い微小突起でより多く生じる傾向にあることが判明した。
このように単峰性の微小突起32Aと多峰性の微小突起32Bとを混在させる場合には、アスペクト比の異なる単峰性の微小突起を混在させた場合と同様に、広い波長帯域で低い反射率を確保することができる。尚、アスペクト比とは、微小突起の高さHを谷底に於ける径W(幅乃至太さと言う事も出来る)で除した比、H/Wとして定義される。此処で、谷底に於ける径とは、微小突起の谷底近傍の形状が円柱であれば、該円柱の(底面の)直径と一致する。微小突起の谷底近傍形状が円柱では無く、谷底を連ねた仮想的平面と微小突起とが交叉して得られる底面の径の大きさが面内方向によって異なる場合は、其の最大値を該微小突起の径とする。例えば、微小突起の底面形状が楕円の場合は、径は其の長径となる。又、微小突起の底面形状が多角形の場合は、径は其の最大の対角線長となる。又、谷底部(高さの極小点からなる領域)の幅が径に比べて小さく2割以下の場合には、各微小突起のアスペクト比H/Wの平均値(H/W)aveは、設計上は実質、Have/daveと見做すことが出來る。
反射防止フィルム20の反射防止機能は、微小突起の間隔だけでなく、アスペクト比にも依存し、アスペクト比が一定である場合、例えば可視光域では十分に小さな反射率を確保できる場合でも、紫外線域では可視光域に比して反射率が増大して反射防止機能が不足する。なお隣接突起間距離を一段と小さくして紫外線域で十分な反射防止機能を確保できるように設定すると、今度は、赤外線域で反射防止機能が低下することになる。
しかしながら多峰性の微小突起を含む微小突起群では、同一微小突起の頂部近傍に存在する峰間距離が隣接突起間距離(通常100〜200nm程度)よりも小さい(通常10〜50nm程度)。斯かる峰間距離の寄与によって、同一隣接突起間距離の単峰性微小突起のみからなる微小突起群に比べて、実効的な隣接突起間間隔を低下させた反射防止機能を確保することができ、これにより多峰性微小突起と単峰性微小突起との混在により広い波長帯域で低い反射率を確保することができる。なお可視光域を中心にした広い波長帯域で十分に小さな反射率を確保する場合、可視光域に係る波長480〜660nm帯域の光に対する反射防止性能に寄与する隣接突起間間隔、即わち、d≦400nm、好ましくはd≦300nmとなる微小突起において、多峰性の微小突起と単峰性の微小突起とを混在させることが望ましい。
なお、上述したように、凹凸構造層30の微小突起32が、単峰性の微小突起とともに多峰性の微小突起を有する場合には、耐擦傷性を向上させる観点から、上述した構成(a)、または、構成(a)及び(b)の両方を有することが好ましい。なお、図13は、凹凸構造層30に形成される微小突起の高さHの度数分布の例を示す図である。この度数分布で、峰(極大値)が一つだけ存在している。
上述したように、反射防止フィルム20は、ロール版37を用いて透明基材25上に凹凸構造層30を賦型することにより作製され得る。また、ロール版37は、陽極酸化処理及びエッチングにより、微小突起32を形成するための微細孔を作製され得る。次にここでは、単峰性の微小突起32Aに加えて多峰性の微小突起32Bを有する凹凸構造層30を賦型するためのロール版37の製造方法について説明する。
〔陽極酸化処理、エッチング処理〕
図14は、ロール版37の製造工程を示す図である。この製造工程は、電解溶出作用と、砥粒による擦過作用の複合による電解複合研磨法によって母材の周側面を超鏡面化する(電解研磨)。続いてこの工程は、アルミニウム層形成工程において、母材の周側面にアルミニウムをスパッタリングし、純度の高いアルミニウム層を作製する。続いてこの工程は、陽極酸化工程A1、…、AN、エッチング工程E1、…、ENを交互に繰り返して母材を処理し、ロール版37を作製する。
この製造工程において、陽極酸化工程A1、…、ANでは、陽極酸化法により母材の周側面に微細な穴を作製し、さらにこの作製した微細な穴を掘り進める。ここで陽極酸化工程では、例えば負極に炭素棒、ステンレス板材等を使用する場合のように、アルミニウムの陽極酸化に適用される各種の手法を広く適用することができる。また溶解液についても、中性、酸性の各種溶解液を使用することができ、より具体的には、例えば硫酸水溶液、シュウ(蓚)酸水溶液、リン酸水溶液等を使用することができる。この製造工程A1、…、ANは、液温、印加する電圧、陽極酸化に供する時間等の管理により、微細な穴をそれぞれ目的とする深さ及び微小突起形状に対応する形状に作製する。
続くエッチング工程E1、…、ENは、金型をエッチング液に浸漬し、陽極酸化工程A1、…、ANにより作製、掘り進めた微細な穴の穴径をエッチングにより拡大し、深さ方向に向かって滑らか、かつ徐々に穴径が小さくなるように、これら微細な穴を整形する。なおエッチング液については、この種の処理に適用される各種エッチング液を広く適用することができ、より具体的には、例えば硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等を使用することができる。なお陽極酸化処理に用いる溶解液と同じ液を、電圧印加無しで用いることにより、溶解液をエッチング液としても兼用してもよい。これらによりこの製造工程では、陽極酸化処理とエッチング処理とを交互にそれぞれ複数回実行することにより、賦型に供する微細穴を母材の周側面に作製する。
〔微小突起を形成する微細穴の形成過程〕
次に、多峰性の微小突起32Bを形成し、また、微小突起32の高さHの分布が制御された微細な穴が形成される方法について説明する。上述したように、賦型用金型(ロール版)に形成される微細穴は、陽極酸化処理及びエッチング処理の交互の繰り返しによって形成されるが、この繰り返しの陽極酸化処理における印加電圧を可変することによって、微細穴の深さ(微小突起の高さ分布)を制御することができる。ここで、陽極酸化処理における印加電圧と、形成される微細穴の間隔(ピッチ)とは、比例する関係にあるため、陽極酸化処理、エッチング処理の繰り返しにおいて、陽極酸化処理の印加電圧を可変すれば、深さ方向に掘り進める時間が相違する微細穴を混在させてその比率を制御することができる。
また、このように陽極酸化処理における印加電圧を可変する場合にあっては、太さ(径)の太い微細穴の底面に、複数の微細穴を作成して多峰性の微小突起32Bに係る微細穴とすることができる。この太さの太い微細穴の高さの制御等により、多峰性の微小突起32Bについても、高さ分布を制御することができる。
図15は、このような高さの分布の制御の説明に供する模式図であり、賦型用金型の製造工程における陽極酸化工程とエッチング工程とにより作製される微細穴を示す図である。上述したように、陽極酸化処理における印加電圧と、微細穴のピッチとの関係は比例関係であるが、実際上、処理に供するアルミニウムの粒界等により微細穴のピッチにはばらつきが生じる。しかし、図15においては、このばらつきが存在しないものとして、微細穴が規則正しい配列により作製されるものとして説明する。なお、図15(a)〜図15(e)において、左側の図は、ロール版37の表面の拡大図を示し、右側の図は、左側の図におけるa−a断面図を示す。
(第1の工程)
図15(a)に示すように、まず、賦型用金型の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微細穴f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
(第2の工程)
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、図15(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微細穴f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微細穴f1を更に掘り下げる。図示された例では、陽極酸化工程A2によって、先の陽極酸化工程A1で形成された微細穴f1を二つ置きに掘り進める処理が行われる。従って、賦型用金型の表面には、二つ置きに広くかつ深く掘り下げられた微細穴f2が形成され、ロール版37の表面には、微細穴f1と微細穴f2とが混在する状態となる。
(第3の工程)
続いて、電圧V2よりも高い電圧V3(V3>V2)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微細穴を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V2から電圧V3へ徐々に上昇させ、この印加電圧の上昇を離散的(段階的)に実行すると、微小突起32の高さ分布(微細穴の深さ分布)を離散的に作製することができ、この印加電圧の上昇を連続的に実行すると、微小突起32の高さ分布を正規分布に設定することができる。そのため、本実施形態では、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程、第2の工程よりも長く設定することにより、図15(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微細穴f1が二つ、一つに纏まるように広くかつ深く掘り進められ、また、その一つに纏められた微細穴f3の底面が略平坦に形成される(平坦微細穴形成工程)。ここで、略平坦とは、微細穴の底面が平坦な状態だけでなく、その底面が大きい曲率半径で湾曲している状態をも含む状態をいう。
(第4の工程)
続いて、電圧V3よりも高い電圧V4(V4>V3)を印加して陽極酸化工程A4を実行した後に、エッチング工程E4を実行する。この工程では、目的とする突起間間隔によるピッチにより微細穴を作成する。この陽極酸化工程A4においても、印加電圧は、電圧V3から電圧V4へ徐々に上昇させる。これにより、上記第3の工程により掘り進められた微細穴f3の一部が更に掘り進められ、その結果、図15(d)に示すように、微細穴f4となり、この微細穴f4が高さの高い単峰性の微小突起を形成する。
(第5の工程)
続いて、印加電圧を上記第1の工程における電圧V1に変更して陽極酸化工程A5を実行した後に、エッチング工程E5を実行する。この工程では、陽極酸化工程A3において形成された微細穴f3であって、第4の工程の陽極酸化工程A4の影響を受けていない微細穴f3の底面に、図15(e)に示すように、微細穴を複数個形成し、多峰性の微小突起に対応する微細穴f5を形成する(多峰突起用微細穴形成工程)。ここで、印加する電圧V1の大きさを調整することによって、微細穴f5の底面に形成される微細穴の数を増減したり、その微細穴の間隔を調整したりすることができる。
以上より、賦型用金型の表面には、高さの異なる微小突起を形成する微細穴f1、f2、f4や、多峰性の微小突起を形成する微細穴f5が形成される。ここで、この一連の工程では、第1の工程及び第2の工程により作製された深さの異なる微細穴f1、f2を、第3の工程で掘り進めて底面の略平坦な微細穴f3を作製し、第4の工程において、この微細穴f3を掘り進めて単峰性の微小突起に係る微細穴f4を作製し、また、第5の工程において、この微細穴f3の底面を加工して多峰性の微小突起に係る微細穴f5を作製している。ここで、第1の工程から第4の工程に係る陽極酸化工程の印加時間、処理時間、エッチング工程の処理時間等を制御して、各工程で作製される微細穴の深さを制御することにより、微小突起の高さの分布や、多峰性の微小突起の高さの分布を制御することができる。なお、上述の第1の工程〜第5の工程は、必要に応じて回数を省略したり、繰り返したり、工程を一体化したりすることができる。
図16は、図15との対比により、微小突起の高さ分布の制御に係る深さの異なる微細穴が形成される過程の説明に供する図である。
(第1の工程)
ここで図16(a)に示すように、第1の工程において、先ず、賦型用金型の表面のアルミニウム層に、電圧V1を印加して陽極酸化工程A1を実行した後に、エッチング工程E1を実行し、微細な穴f1を形成する。ここで、陽極酸化工程A1は、アルミニウムのフラット面に後続する陽極酸化処理のきっかけを作製するものである。なお、この場合、エッチング工程を適宜省略してもよい。
(第2の工程)
次に、電圧V1よりも高い電圧V2(V2>V1)を印加して陽極酸化工程A2を実行した後に、エッチング工程E2を実行する。これにより、陽極酸化工程A2では、図16(b)に示すように、先の陽極酸化工程A1により形成された微細な穴f1のうち、陽極酸化工程A2に対応する間隔の微細な穴f1を更に掘り下げる。
ここで印加電圧V2をV2=2×V1に設定すると、陽極酸化工程A2によって、先の陽極酸化工程A1で形成された微細な穴f1を一つ置きに掘り進める処理が行われる。従って、賦型用金型の表面には、一つ置きに広くかつ深く掘り下げられた微細な穴f2が形成され、成形型の表面には、微細な穴f1と微細な穴2とが混在する状態となる。
(第3の工程)
続いて、電圧V1と電圧V2の間の電圧V3(V2>V3>V1)を印加して陽極酸化工程A3を実行した後に、エッチング工程E3を実行する。この工程では、ピッチの異なる微細な穴を作製する。具体的には、印加する電圧を、電圧V3として、縦横に面内に配列した微細な穴f2の間に存在する図示の如くの特定の微細な穴f1を一つ置きに広く且つ深く掘り下げる。ここで印加電圧V3をV3=(V1)1/2に設定すると、陽極酸化工程A3における印加電圧の印加時間、エッチング工程の処理時間を上述の第1の工程よりも長く設定することにより、図15(c)に示すように、最初の陽極酸化工程A1において形成された微細な穴f1のうち、4個の微細な穴f2で囲まれる最小の四角形の中心に位置する微細な穴f1が選択的に深く掘り下げられる。且つ同時に、第2の陽極酸化工程A2形成された微細な穴f2のうちで図16(c)で図示される位置関係に有る一部のものが更に掘り下げられ、微細な穴f3となる。
その結果、図16(c)に示すように、微細な穴f1(これが最も高さの低い微小突起に対応する穴となる)の周囲をf1よりも深い微細な穴f2及びf3(それぞれ中程度及び高程度の高さの微小突起に対応する穴となる)によって周囲を包囲された穴群が面内に配列した表面構造を有する成形型が得られる。
このように複数回の陽極酸化処理における印加電圧の切り替えにより掘り進める微細穴が異なることにより、微細穴の深さを大きく異ならせることができ、これにより意図する分布により微小突起の高さを制御することができる。
次に、上述の方法により作製された賦型用金型によって、実際に、凹凸構造層30を作製した例について説明する。
〔実施例1〕
図17は、実施例1の反射防止フィルム20の微小突起の高さHの度数分布を示す図である。実施例1の反射防止フィルム20を製造する賦型用金型は、上述の第2工程、第3工程、第4工程で陽極酸化処理の印加電圧を連続的に変化させたものであり、また第4工程では、第3工程の印加電圧から電圧を低下させたものである。より具体的にこの図17の例では、第1工程における印加電圧V1に対して第2工程における印加電圧V2をV2=3×V1に設定し、また第3工程における印加電圧V3をV3=4×V1に設定し、第4工程の印加電圧V4をV4<V3とした例である。
また、図17の例は、陽極酸化工程とエッチング工程とを5回繰り返した場合であり、第1回目の陽極酸化工程の印加電圧をV1(15V〜35Vの範囲の一定電圧である)とした場合に、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目の陽極酸化工程の印加電圧をそれぞれ2V1、3.5V1、5V1、V1とした例である。なお陽極酸化処理は、濃度0.02Mのシュウ酸水溶液を使用して100秒実施した。エッチング工程は、濃度0.02Mのシュウ酸水溶液を使用して45秒間エッチング処理した後、濃度1.0Mのリン酸水溶液を使用して110秒間エッチング処理した。
この賦型用金型によって製造された反射防止フィルム20は、微小突起の高さ分布が一つの頂部からなる分布である正規分布を示しており、微小突起が作製されてなる面の鉛直線を中心とした比較的狭い範囲で、良好な反射防止機能を確保することができる。またこのときこのような高さ分布において、多峰性の微小突起(頂点数が2つ及び3つのものをそれぞれ二峰、三峰により示す)についても、ほぼ高さの平均値が一致した正規分布とすることができ、これにより効率良く多峰性の微小突起の耐擦傷性の機能、光学特性の向上機能を発揮させることができる。
上述の方法により製造された実施例1の反射防止フィルム20は、図17に示すように、微小突起の高さの平均値がm=145.7nmであり、その標準偏差がσ=22.1nmである。ここで、微小突起の高さHの度数分布において、低高度領域は、H<m−σ=123.6nmとなり、中高度領域は、m−σ=123.6nm≦H≦m+σ=167.8nmとなり、高高度領域は、H>m+σ=167.8nmとなる。度数分布全体の微小突起の総数Ntは、263個である。また、中高度領域の多峰性の微小突起の数Nmは、23個であるので、中高度領域のNm/Ntは、0.087となる。低高度領域の多峰性の微小突起の数Nmは、2個であるので、低高度領域のNm/Ntは、0.008となる。高高度領域の多峰性の微小突起の数Nmは、5個であるので、高高度領域のNm/Ntは、0.019となる。
従って、実施例1の反射防止フィルム20は、次の(i)、(ii)の関係、すなわち、
(i)中高度領域のNm/Nt=0.087>低高度領域のNm/Nt=0.008
(ii)中高度領域のNm/Nt=0.087>高高度領域のNm/Nt=0.019
を満足する。
以上より、実施例1の反射防止フィルム20は、中高度領域における多峰性の微小突起の数(Nm)と度数分布における微小突起の総数(Nt)との比率(Nm/Nt)が、低高度領域及び高高度領域の比率よりも大きくなるように多峰性の微小突起が形成されているので、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止フィルム20の反射防止機能の広帯域化を図ることができる。
また、この20は、このような高さ分布において、多峰性の微小突起(頂点数が2つ及び3つのものをそれぞれ二峰、三峰により示す)についても、ほぼ高さの平均値が一致した正規分布とすることができるので、視野角特性を制限することができる。また、効率良く多峰性の微小突起の耐擦傷性を向上させることができる。
更に、上述の構成にすることによって、反射防止フィルム20は、高さが高い(180nm以上)微小突起に分布する多峰性の微小突起の比率が小さく、単峰性の微小突起の比率が多いので、他の物体が微小突起に摩擦接触したとしても、高さの高い単峰性の微小突起が先に接触することとなり、反射防止機能を主に向上させる多峰性の微小突起に接触してしまうのを抑制することができる。
〔実施例2〕
図18は、実施例2の反射防止フィルム20の微小突起32の高さhの度数分布の他の例を示す図である。実施例2の反射防止フィルム20を製造する賦型用金型は、上述の第1〜第5の工程のうちで、第2工程では段階的に電圧を上昇させて第3工程及び第4工程の処理を併せて実行し、第4工程では、図17の例による最高電圧に比して一段とより高い電圧により陽極酸化処理を実行し、またさらにこの第4工程に対応して第5工程を実行したものである。
より具体的に図18の例は、図17の例と同一の繰り返し回数、溶液及び処理時間により陽極酸化工程、エッチング工程を実行した。この図18の例では、第1回目の陽極酸化工程の印加電圧をV1(15V〜35Vの範囲の一定電圧である)とした場合に、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目の陽極酸化工程の印加電圧をそれぞれ2.5V1、4V1、6V1、V11/2〜V1とした例である。2回目から4回目の陽極酸化工程では、2回目の陽極酸化処理の開始電圧及び4回目の陽極酸化処理の終了電圧がそれぞれ2.5V1及び6V1となるように設定して、徐々に印加電圧を増大させた。
この図18の例では、突起高さの度数分布に於いて、高さの高い側と低い側とに分布の峰(ピーク;極大値)を有する、微小突起32の高さ分布が離散的、すなわち、双峰性を持つ分布を示しており、各分布の峰に対応して多峰性微小突起の分布が形成される。
実施例2の反射防止フィルム20は、高さの度数分布が双峰性の分布となり、この度数分布全体の微小突起の高さの平均値がm=195.7nmであり、標準偏差がσ=57.2nmである。
ここで、微小突起の高さhの度数分布において、低高度領域は、h<m−σ=138.5nmとなり、中高度領域は、m−σ=138.5nm≦h≦m+σ=252.9nmとなり、高高度領域は、h>m+σ=252.9nmとなる。度数分布全体の微小突起の総数Ntは、131個である。また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、21個であるので、中高度領域のNm/Ntは、0.160となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、3個であるので、低高度領域のNm/Ntは、0.023となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nmは、0個であるので、高高度領域のNm/Ntは、0となる。
従って、実施例2の反射防止物品は、次の(i)、(ii)の関係、すなわち、
(i)中高度領域のNm/Nt=0.160>低高度領域のNm/Nt=0.023
(ii)中高度領域のNm/Nt=0.160>高高度領域のNm/Nt=0
を満足する。
また、上述したように、実施例2の反射防止フィルム20の微小突起32の高さhの度数分布は、双峰性、すなわち2つの分布の峰が存在する。この場合、各分布の峰についても、低高度領域、中高度領域、高高度領域を定め、それぞれの峰の各領域の多峰性微小突起の数と、度数分布全体の微小突起の総数Ntとの比の大小を評価する必要がある。
具体的には、各峰間の境界となる高さをhsとしたとき、hs未満の分布の峰(高さが低い側の分布の峰)については、高さhの平均値をm1とし、標準偏差をσ1とし、h<m1−σ1の領域を低高度領域とし、m1−σ1≦h≦m1+σ1の領域を中高度領域とし、m1+σ1<h<hsの領域を高高度領域とした場合に、hs未満の分布の峰における各領域の多峰性微小突起の数Nm1と、度数分布全体における微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(iii)、(iv)の関係を満たすことが好ましい。
(iii) 中高度領域のNm1/Nt>低高度領域のNm1/Nt
(iv) 中高度領域のNm1/Nt>高高度領域のNm1/Nt
また、hs以上の分布(高さが高い側の分布)については、高さhの平均値をm2とし、標準偏差をσ2とし、hs<h<m2−σ2の領域を低高度領域とし、m2−σ2≦h≦m2+σ2の領域を中高度領域とし、m2+σ2<hの領域を高高度領域とした場合に、hs以上の分布における各領域の多峰性微小突起の数Nm2と、度数分布全体における微小突起の総数Ntとの比率が、以下の(v)、(vi)の関係を満たすことが好ましい。
(v) 中高度領域のNm2/Nt>低高度領域のNm2/Nt
(vi) 中高度領域のNm2/Nt>高高度領域のNm2/Nt
ここで、hs未満(高さが低い側)の分布における微小突起の高さhの平均値がm1=52.9nmであり、標準偏差がσ1=24.8nmである。各分布の境界となる高さhsは以下のようにして求める。先ず、度数分布の高さのデータを図18の如き柱状グラフ(ヒストグラム)として表示し、次いで該柱状グラフの頂部の中点を結ぶ折線を最小二乗法により平滑化した曲線(これを平滑化度数分布曲線と呼稱する)を求め、該平滑化度数分布曲線について、2つの度数分布の峰間に位置する極小点に於ける高さを求め、これを以って2つの峰間の境界高さhsとする。図18の例については、斯かる処理によってhs=100nmと求められる。そのため、hs未満の分布の低高度領域は、h<m1−σ1=28.1nmとなり、中高度領域は、m1−σ1=28.1nm≦h≦m1+σ1=77.7nmとなり、高高度領域は、m1+σ1=77.7nm<h<hs=100nmとなる。また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、2個であるので、中高度領域のNm1/Ntは、0.015となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、0個であるので、低高度領域のNm1/Ntは、0となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nm1は、0個であるので、高高度領域のNm1/Ntは、0となる。
従って、実施例2の反射防止物品は、hs未満の分布において、上記(iii)、(iv)の関係、すなわち、
(iii) 中高度領域のNm1/Nt=0.015>低高度領域のNm1/Nt=0
(iv) 中高度領域のNm1/Nt=0.015>高高度領域のNm1/Nt=0
の関係を満たす。
また、hs以上(高さが高い側)の分布の微小突起については、高さhの平均値がm2=209.2nmであり、標準偏差がσ2=39.4nmである。そのため、hs以上の分布の低高度領域は、hs=100nm≦h<m2−σ2=169.9nmとなり、中高度領域は、m2−σ2=169.9nm≦h≦m2+σ2=248.7nmとなり、高高度領域は、m+σ=248.7nm<hとなる。また、中高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、19個であるので、中高度領域のNm2/Ntは、0.145となる。低高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、3個であるので、低高度領域のNm2/Ntは、0.023となる。高高度領域の多峰性微小突起の数Nm2は、0個であるので、高高度領域のNm2/Ntは、0となる。
従って、実施例2の反射防止物品は、hs以上の分布においても、上記(v)、(vi)の関係、すなわち、
(v) 中高度領域のNm2/Nt=0.145>低高度領域のNm2/Nt=0.023
(vi) 中高度領域のNm2/Nt=0.145>高高度領域のNm2/Nt=0
の関係を満たす。
以上より、実施例2の反射防止フィルム20は、中高度領域の多峰性微小突起の数(Nm)と度数分布における微小突起の総数(Nt)との比率(Nm/Nt)が、低高度領域及び高高度領域の比率よりも大きくなるように多峰性微小突起が形成されているので、可視光域に係る入射光に対する反射率を低減することができ、反射防止物品の反射防止機能の広帯域化を図ることができる。
また、実施例2の反射防止フィルム20は、度数分布が双峰性であり、上述の(iii)〜(vi)の関係を満たすので、各分布における多峰性微小突起の分布を、各分布の頂部近傍に集中させることができる。これにより、斜め方向からの光学特性を向上して広い視野角特性を向上することができる。また、低い側の分布の多峰性微小突起によって、紫外線域の反射防止機能を向上させ、高い側の分布に存在する多峰性微小突起によって、可視光域の反射防止機能を向上させているため、広帯域化された反射防止機能を更に向上することができる。
また、赤外線域に対しては、反射防止機能の確保のために配置間隔(ピッチ)が広く、高さが高い単峰性微小突起が形成される必要があるが、実施例2の反射防止フィルム20は、高さが高い微小突起に分布する多峰性微小突起の比率が小さいので、多峰性微小突起が存在することによる赤外線域の反射防止機能の低下を防ぐことができる。また、このような構成により、他の物体が微小突起に摩擦接触したとしても高さの高い単峰性微小突起が先に接触することとなり、多峰性微小突起に接触してしまうのを抑制することができる。
なお、実施例1及び実施例2に関連して説明した多峰性の微小突起32Bの特徴は、賦型用金型の対応する形状を備えた微細穴により作製される多峰性の微小突起の固有の特徴であり、特開2012−037670号公報に開示の樹脂の充填不良により生じる多峰性微小突起によっては得ることができない特徴である。すなわち樹脂の充填不良による多峰性の微小突起は、本来、単峰性の微小突起として作製される微細穴に十分に樹脂が充填されないことにより作製されるものであるので、頂点間の間隔が極めて微小であり、これにより耐擦傷性を十分に向上することが困難であり、また上述したような光学特性の向上も困難である。
また、充填不良による多峰性の微小突起にあっては、再現性が乏しく、これにより均一な製品を量産できない欠点もあり、これに対して、この実施形態に係る多峰性の微小突起は、いわゆる金型により高い再現性を確保することができる。また、上述の実施例1及び実施例2について詳述するように、多峰性の微小突起の高さ分布について制御できるのに対し、充填不良の多峰性の微小突起については、このような制御が困難である。
〔耐擦傷性の向上〕
単峰性の微小突起32Aだけでなく多峰性の微小突起32Bを含む凹凸構造層30は、上述したように、耐擦傷性に優れる。このように耐擦傷性が改善された反射防止フィルム20の凹凸構造層30の表面形状をAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)及びSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察したところ、多峰性微小突起32Bは、単に頂点を複数有するだけでなく、微小突起を先端側より平面視覚した場合に、ほぼ中央より外方に向かって形成された溝により複数の領域に分割され、この複数の領域の各領域が、それぞれ各頂点に係る峰であるように形成されていた。またこの多峰性の微小突起は、対応する形状を備えた微細穴の賦型処理により作製され、このような多峰性の微小突起に係る微細穴は、陽極酸化処理とエッチング処理との繰り返しにおいて、極めて近接して作製された微細穴が、エッチング処理により、一体化して作製される。これにより多峰性の微小突起は、微小突起を先端側より平面視覚した場合の周囲長が、単峰性の微小突起に比して長く形成されている。この点については、後述する図20により見て取ることができる。なおこれら多峰性微小突起の形状は、特開2012−037670号公報に開示の賦型処理時の樹脂の充填不良により生じる多峰性微小突起とは異なる特徴である。
このような頂点を複数有する多峰性の微小突起32Bは、単峰性の微小突起32Aに比して、頂点近傍の寸法に対する裾の部分の太さが相対的に太くなる。これにより、多峰性の微小突起32Bは、単峰性の微小突起32Aに比して機械的強度が優れていると言える。これにより頂点を複数有する多峰性の微小突起32Bが存在する場合、反射防止フィルム20では、単峰性の微小突起32Aのみによる場合に比して耐擦傷性が向上するものと考えられる。さらに、具体的に反射防止フィルム20に外力が加わった場合、単峰性の微小突起32Aのみの場合に比して、外力をより多くの頂点で分散して受ける為、各頂点に加わる外力を低減し、微小突起32が損傷し難いようにすることができ、これにより反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。また仮に微小突起32が損傷した場合でも、その損傷個所の面積を低減することができる。更に、多峰性の微小突起32Bの半分程度は、最高峰高さ(麓が同じ微小突起に属する最も高い峰の高さ)が突起高さの平均値HAVG以上の微小突起に生じる為、外力を先ず各峰部分が受止めて犠牲的に損傷することによって、該微小突起の峰より低い本体部分、及び該多峰性の微小突起よりも高さの低い微小突起の損耗を防ぐ。これによっても反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらに外観不良の発生を低減することができる。上述した図17に示す度数分布では、隣接突起間距離d(横軸の値)について、146nmに1つの極大値が存在しており、このような損耗防止機能がより効果的に発揮され得る。
なお多峰性の微小突起32Bは、その存在により耐擦傷性を向上できるものの、充分に存在しない場合には、この耐擦傷性を向上する効果を十分に発揮できないことは言うまでもない。係る観点より、全微小突起中における多峰性の微小突起の個数の比率は10%以上であることが好ましい。特に多峰性の微小突起32Bによる耐擦傷性を向上する効果を十分に奏する為には、該多峰性の微小突起の比率は30%以上、好ましくは50%以上とする。又、多峰性微小突起の比率を増やすに伴い製造工程の管理の難度が増す為、当該比率は好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下とすることが好ましい。
さらにこのような多峰性の微小突起32Bを含む微小突起群を有する反射防止フィルム20には、上述したように高さが制御された微小突起32が形成され、また、高さの異なる微小突起32が分布している。なおここで各微小突起32の高さHとは、上述したように、麓(付け根)部を共有するある特定の微小突起について、その頂部に存在する最高高さを有する峰(最高峰)の頂点の高さを言う。図19(a)の微小突起32Aの如くの単峰性の微小突起の場合は、頂部における唯一の峰の高さ(極大点)が該微小突起の突起高さHとなる。また図19(a)の微小突起32Bのような多峰性の微小突起の場合は、頂部に在る麓部を共有する複数の峰のうちの最高峰の高さをもって該微小突起の高さとする(麓部を共有する全峰が同一高さの場合は、其の同一の頂点の高さを以って該微小突起の高さとする)。このように微小突起32の高さHが種々に異なる場合には、例えば物体の接触により高さの高い微小突起の形状が損なわれた場合でも、高さの低い微小突起においては、形状が維持されることになる。これによっても反射防止フィルム20の凹凸構造層30では、反射防止機能の局所的な劣化を低減し、さらには外観不良の発生を低減することができ、その結果、耐擦傷性を向上することができる。
また反射防止フィルム20の凹凸構造層30の微小突起群と物体との間に塵埃が付着すると、当該物品が凹凸構造層30に対して相対的に摺動した際に、該塵埃が研磨剤として機能して微小突起(群)の磨耗、損傷が促進されることになる。この場合に、微小突起群を構成する各微小突起間に高低差が有ると、塵埃は高さの高い微小突起に強く接触し、これを損傷させる。一方で低高さの微小突起との接触は弱まり、高さの低い微小突起については損傷が軽減され、無傷ないしは軽微な傷で残存した高さの低い微小突起によって反射防止性能が維持される。
またこれに加えて、各微小突起の高さに分布(高低差)の有る微小突起群は、反射防止性能が広帯域化され、白色光のような多波長の混在する光、あるいは広帯域スペクトルを持つ光に対して、全スペクトル帯域で低反射率を実現するのに有利である。これは、かかる微小突起群によって良好な反射防止性能を発現し得る波長帯域が、隣接突起間距離dの他に、突起高さHにも依存する為である。
またこの場合には、多数の微小突起のうちの高さの高い微小突起32のみが、例えば反射防止フィルム20の凹凸構造層30と対向するように配置された各種の部材表面と接触することになる。これにより高さが同一の微小突起のみによる場合に比して格段的に滑りを良くすることができ、製造工程等における反射防止フィルム20の取り扱いを容易とすることができる。なおこのように滑りを良くする観点から、ばらつきは、標準偏差により規定した場合に、10nm以上必要であるものの、50nmより大きくなると、このばらつきによる表面のざらつき感が感じられるようになる。従ってこの高さのばらつきは、10nm以上、50nm以下であることが好ましい。
またこのように多峰性の微小突起32Bが混在する場合には、単峰性の微小突起のみによる場合に比して反射防止の性能を向上することができる。すなわち図8、図19、及び図20等に示すような多峰性の微小突起32B等は、隣接突起間距離が同じ場合であっても、また突起高さが同じ場合であっても、単峰性の微小突起と比べて、より光の反射率が低減することになる。その理由は、多峰性の微小突起32Bは、頂部より下(中腹及び麓)の形状が同じ単峰性の微小突起よりも、頂部近傍における有効屈折率の高さ方向の変化率が小さくなる為である。
すなわち図19において、z=0を高さH=0とおき、高さ方向(Z軸方向)に直交する仮想的切断面Z=zで微小突起32Bを切断したと仮定した場合の面Z=zにおける微小突起と周辺の媒質(通常は空気)との屈折率の平均値として得られる有効屈折率nefは、切断面Z=zにおける周辺媒質(ここでは空気とする)の屈折率をnA=1、微小突起32Bの構成材料の屈折率をnM>1とし、又周辺媒質(空気)の断面積の合計値をSA(z)、微小突起32Bの断面積の合計値をSM(z)としたとき、
nef(z)=1×SA(z)/(SA(z)+SM(z))+nA×SM(z)/(SA(z)+SM(z))(式1)
で表される。これは、周辺媒質の屈折率nA及び微小突起構成材料の屈折率nMを、各々周辺媒質の合計断面積SA(z)及び微小突起の合計断面積の合計値SM(z)の比で比例配分した値となる。
ここで、単峰性の微小突起32を基準にして考えたときに、多峰性の微小突起32Bは、頂部近傍が複数の峰に分裂している。そのため、頂部近傍を切断する仮想的切断面Z=zにおいて、多峰性の微小突起32Bは、単峰性の微小突起32Aに比べて相対的に低屈折率である周辺媒質の合計断面積SA(z)の比率が、相対的に高屈折率である微小突起の合計断面積SM(z)の比率に比べて、より増大することになる。
その結果、仮想的切断面Z=zにおける有効屈折率nef(z)は、多峰性の微小突起32Bの方が単峰性の微小突起32Aに比べて、より周辺媒質の屈折率nAに近くなる。面Z=zにおける多峰性の微小突起の有効屈折率と周辺媒質の屈折率との差を|nef(z)−nA(z)|multi、単峰性の微小突起の有効屈折率と周辺媒質の屈折率との差を|nef(z)−nA(z)|monoとすると、
|nef(z)−nA(z)|multi<|nef(z)−nA(z)|mono(式2)
となる。ここでnA(z)=1とすると、
|nef(z)−1|multi<|nef(z)−1|mono(式2A)
となる。
これにより頂部近傍において、多峰性の微小突起32Bを含む微小突起群(各微小突起間に周辺媒質を含む)については、単峰性の微小突起32Aのみからなる突起群に比べて、その有効屈折率と周辺媒質(空気)の屈折率との差、より詳細に言えば、微小突起の高さ方向の単位距離当たりの屈折率の変化率をより低減化すること、換言すれば、屈折率の高さ方向変化の連続性をより高めること)が可能になることが判る。
一般に、隣接する屈折率n0の媒質と屈折率n1の媒質との界面に光が入射する場合に、該界面における光の反射率Rは、入射角=0として、
R=(n1−n0)2/(n1+n0)2(式3)
となる。この式より界面両側の媒質の屈折率差n1−n0が小さいほど界面での光の反射率Rは減少し、(n1−n0)が値0に近づけばRも値0に近づくことになる。
(式2)、(式2A)及び(式3)より、多峰性の微小突起32Bを含む微小突起群(各微小突起間に周辺媒質を含む)については、単峰性の微小突起32Aのみからなる突起群に比べて光の反射率が低減する。
なお単峰性の微小突起32Aのみからなる微小突起群を用いても、隣接突起間距離の最大値dmaxを反射防止を図る電磁波の波長帯域の最短波長λmin以下の十分小さな値にすることによって、十分な反射防止効果を発現することは可能である。但し、その場合、隣接峰間の距離と隣接微小突起間距離とが同一となる為、隣接微小突起間が接触、一体複合化する現象(いわゆるスティッキング)が発生し易くなる。スティッキングを生じると、実質上の隣接突起間距離dは一体複合化した微小突起数の分だけ増加する。
例えば、d=200nmの微小突起が4個スティッキングすると、実質上、スティッキングして一体化した突起の大きさは、d=4×200nm=800nm>可視光線帯域の最長波長(780nm)となり、これにより局所的に反射防止効果を損なうことになる。
一方、多峰性の微小突起32Bからなる微小突起群の場合、頂部近傍の各峰間の隣接突起間距離dPEAKは、麓から中腹にかけての微小突起本体部の隣接突起間距離dBASEよりも小さくなり(dPEAK<dBASE)、通常、dPEAK=dBASE/4〜dBASE/2程度である。その為、各峰間の隣接突起間距離dPEAK≪λminとすることで十分な反射防止性能を得ることができる。但し、多峰性の微小突起32Bの各峰部は、麓部の幅に対する峰部の高さの比が小さく、単峰性の微小突起32Aの麓部の幅に対する頂点の高さの比の1/2〜1/10程度である。従って、同じ外力に対して、多峰性微小突起の峰部は単峰性の微小突起に比べての変形し難い。且つ、多峰性微小突起の本体部自体は峰部よりも隣接突起間距離は大であり、且つ強度も大である。その為、結局、多峰性の微小突起からなる微小突起群は、単峰性の微小突起からなる突起群に比べて、スティッキングの生じ難さと低反射率とを容易に両立させることができる。
なお可視光の反射防止用途の他の用途であっても、又は可視光環境下であっても、当該反射防止材料が設置、使用される環境条件に応じて、想定する反射防止波長に応じたモスアイ構造を形成し、高さ分布を持たせる事により、前記の通り、従来のものより耐擦性があり、かつ、プロセス要件などで低硬度の材料を使用した場合においても互いのスティッキングを防止し、光学的必要性能を合わせ持つ反射防止材料を作製する事が可能となる。例えば、380nm前後の紫外領域について反射防止性能を得たい場合はモスアイの高さが約50nmでも可能であり、同様に700nm前後の赤外領域については約150nm〜実用上を考慮し400nmであれば可能である。なお、前記の通りモスアイの配置ピッチについては高さについて飽和するような製作条件を見出し、モスアイの反射率を効果的に操作する事が可能である。さらに、モスアイの頂部構造についても、従来の単峰から改良を加える事で高さと反射率を両立し、かつ物理的にスティッキングを起こしにくく、効果的に反射率を低減する事が可能となっている。
図20は、頂点が複数の微小突起を示す写真であり、図20(a)は本実施形態のものとは異なる微小突起の例ではあるが、AFMによるものであり、図20(b)及び(c)は本実施形態の微小突起の例で、SEMによるものである。図20(a)では、溝g及び3つの頂点を有する微小突起、及び溝g及び2つの頂点を有する微小突起を見て取ることができ、図20(b)では、溝g及び4つの頂点を有する微小突起、及び溝g及び2つの頂点を有する微小突起を見て取ることができ、図20(c)では、溝g及び3つの頂点を有する微小突起、溝g及び2つの頂点を有する微小突起を見て取ることができる。なおこの図20(b)及び(c)は、第1工程において水温20℃、濃度0.02Mのシュウ酸水溶液を適用し、印加電圧40Vにより120秒、陽極酸化処理を実行したものである。またエッチング処理には、第1工程に同上陽極酸化液、第2工程に水温20℃、濃度1.0Mのリン酸水溶液を適用した。そして、陽極酸化処理においては、上述したように、前記第1工程から第4工程まで印加電圧を漸次連続的に増加し、第5工程において再び第1工程と同様の印加電圧で実施したものである。陽極酸化処理とエッチング処理との回数は、それぞれ5回である。
図21及び図22は、図14〜図16を参照して説明した製造方法にて作製されたロール版37を用いて実際に作製された反射防止フィルム20の微小突起32の形状を示す斜視図(図21)、平面図(図22(a))、正面図(図22(b))及び側面図(図22(c))である。これら図21及び図22は、等高線図である。上述したように、複数回の陽極酸化処理における印加電圧を切り替えることにより、この図21及び図22による微小突起においては、高さの大きく異なる3つの峰が合体して1つの微小突起が形成されており、ほぼ中央より外方に向かって形成された3本の放射状の溝(沢状の極小部)によりこの3つの峰に係る領域に分割されて微小突起が作製されていることが判る。なおこの図21及び図22は、AFMによる計測結果によるデータを部分的に選択して詳細に示したものである。またこの図21及び図22における数字の単位は〔nm〕である。X座標及びY座標は、所定の基準位置からの座標値である。
〔耐擦傷性の評価〕
表4は、耐擦傷性の評価結果を示している。図17の例による反射防止フィルム20を、単峰性微小突起のみによる同様の突起高さ分布による反射防止フィルムとの比較によるものである。なお単峰性微小突起32Aのみの反射防止フィルムは、繰り返しの陽極酸化処理の印加電圧を第2の工程以下に於いても第1の工程と同一定電圧として作製した。
この表4において、スチールウールの欄は、押し付け力100g及び200gによりスチールウールを押し付けて往復させた後の表面の変化を目視により確認した結果である。二重丸の印は、目視上傷、濁りは見られないとの評価が得られたものであり、×の印は、目視上、6本以上の傷が観察されるものである。なお評価の範囲は、1辺5cmの矩形の領域である。これにより多峰性微小突起により充分に耐擦傷性が向上していることが判る。
また乾拭きの欄は、指紋を付着させた後、不織布を用いて溶剤を含まない乾いた状態での拭きを50往復させた時の、5°正反射率ΔY(%)である。指紋を付着させた状態で、5°正反射率が4%となるように設定した。なお不織布は、KBセーレン社製、ザヴィーナミニマックス(登録商標)150mm□を使用した。また何ら指紋による汚れを付着させない状態における5°正反射率の初期値は、0.5%であった。この検討結果によれば、多峰性微小突起により付着した汚れがふき取り易くなって反射防止性能を指紋付着前に近い状態にまで回復していることが判り、このことは多峰性微小突起を設けた場合には、微小突起の付け根側に汚れが深くもぐり込まないことによるものと考えられる。
以上の構成によれば、頂点が複数からなる多峰性の微小突起と頂点が1つの単峰性の微小突起とを混在させることにより、従来に比して耐擦傷性を向上することができる。また指紋に対する耐汚染性(易拭取り性)にも向上が見られる。
またさらに微小突起の高さに分布を持たせることにより、滑り性を向上することができる。
ところで、上述の説明では、図19(a)に示すように、各隣接微小突起間の谷底(高さの極小点)を連ねた面は高さが一定な平面であったが、この例に限らず、図23に示すように、各微小突起間の谷底を連ねた包絡面が、可視光線帯域の最長波長λmax以上の周期D(すなわちD>λmaxである)でうねった構成としてもよい。又該周期的なうねりは、透明基材25の表裏面に平行なXY平面(図19、図23参照)における1方向(例えばX方向)のみでこれと直交する方向(例えばY方向)には一定高さであっても良いし、或いはXY平面における2方向(X方向及びY方向)共にうねりを有していても良い。D>λmaxを満たす周期Dでうねった凹凸谷底面33が多数の微小突起からなる微小突起群に重畳することによって、微小突起群で完全に反射防止し切れずに残った反射光を散乱し、殘留反射光、とくに鏡面反射光を更に視認し難くし、以って、反射防止効果を一段と向上させることができる。
尚、係る凹凸谷底面33の周期Dが全面に亙って一定では無く分布を有する場合は、該凹凸谷底面33について凸部間距離の度数分布を求め、その平均値をDAVG、標準偏差をΣとしたときの、
DMIN=DAVG―2Σ
として定義する最小隣接突起間距離を以って周期Dの代わりとして設計する。即ち、微小突起群の殘留反射光の散乱効果を十分奏し得る条件は、
DMIN>λmax
又、該凹凸の高低差に相当するJIS B0601(1994年)規定のRz値(10点平均粗さ)は、
Rz≧λmin
である。通常、D又はDMINは1〜600μm、好ましくは10〜3100μmとされる。又、通常、Rzは0.4〜5μmとされる。各微小突起の谷底を連ねた包絡面形が、D(又はDMIN)>λmax、なる凹凸谷底面33を呈する樣な微小突起群を形成する具体的な製造方法の一例を挙げると以下の通りである。即ち、ロール版37の製造工程において、円筒(又は円柱)形状の母材の表面にサンドブラスト又はマット(つや消し)メッキによって凹凸谷底面33の凹凸形状に対応する凹凸形状を賦形する。次いで、該凹凸形状の面上に、直接或いは必要に応じて適宜の中間層を形成した後、アルミニウム層を積層する。その後、該凹凸形状表面に対応した表面形状を賦形されたアルミニウム層に上述の実施形態と同様にして陽極酸化処理及びエッチング処理を施して微小突起32を含む微小突起群を形成する。
<<追加、変形、その他>>
なお、上述した例に対して様々な追加や変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
上述した例では、反射防止フィルムが、透明基材25と凹凸構造層30との二層を含むように形成されていた。このような反射防止フィルムは、透明基材25上に、電離放射線硬化型樹脂を賦型してなる凹凸構造層30を形成することにより作製され得る。その一方で、反射防止フィルムが、三層の積層構造であってもよいし、或いは、単層品でもよい。また、反射防止フィルム20は、熱可塑性樹脂を押し出し成型することによっても作製され得る。
また、上述した例においては、透明体15の第1表面15aの一部分上のみに反射防止フィルムが配置されているが、これに限られず、透明体15の第1表面15aの全面を、反射防止フィルムが覆うようにしてもよい。また、上述した例においては、透明体15の第2表面15bの一部分上のみに反射防止フィルムが配置されているが、これに限られず、透明体15の第2表面15bの全面を、反射防止フィルムが覆うようにしてもよい。
さらに、上述した例においては、板状の透明体15の板面への法線方向に沿って、透明体15の第1表面15a上の一方の反射防止フィルムの外輪郭と、第2表面15b上の他方の反射防止フィルム20bの外輪郭とが、重なるようにして配置されている例を示したが、これに限られず、透明体15の第1表面15a上の一方の反射防止フィルム及び他方の反射防止フィルムが、透明体15の法線方向に沿って少なくとも一部分において重なるように、配置されていてもよい。
また、上述した例において、透明体15の第1表面15a上の一方の反射防止フィルム及び第2表面15b上の他方の反射防止フィルムが同一に構成されている例を示したが、これに限られない。例えば、透明体15の第1表面15a上の一方の反射防止フィルムと、第2表面15b上の他方の反射防止フィルムとの間で、凹凸面31上での5°正反射による反射率および凹凸面31上での水に対する接触角の少なくとも一方の特性が互いに異なるようにしてもよい。
またそもそも、透明体15の第1表面15a上の一方の反射防止フィルム及び第2表面15b上の他方の反射防止フィルムはそれぞれ単独でも反射防止機能及び防曇機能を発現し得るので、互いに対向する二つの反射防止フィルムの一方を対応する接合層とともに省略することもできるし、あるいは、互いに対向する二つの反射防止フィルムの一方を疎水性材料により形成された単なるモスアイ構造体としてもよい。例えば、反射防止機能及び防曇機能の両方を有した反射防止フィルムが、建物90の内部側に位置し、防曇機能を持たない単なるモスアイ構造体が、建物90の外部に位置するようにしてもよい。
さらに、互いに対向する二つの反射防止フィルムの一方の反射防止フィルムの凹凸構造層30の凹凸面31が、耐擦傷性を向上させるためのハードコート層として形成されていてもよい。このハードコート層は、薄膜として形成されていてもよい。或いは、耐擦傷性の改善を図る観点から、凹凸構造層30が、スリップ剤を含有するようにしてもよい。さらに、紫外線による劣化を防止する観点から、区画部材または区画部材のいずれかの部位が、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤を含有するようにしてもよい。
さらに、反射防止フィルムが優れた反射防止機能および防曇機能を発揮することから、区画部材のうちの、反射防止フィルムが設けられている部分が、開口しているようにも視認される。このため、反射防止フィルムに、または、透明体15の反射防止フィルムの周囲となる部分に、何らか絵柄が形成されていてもよい。ここで絵柄とは、反射防止フィルムや透明体15に記録または印刷され得る種々の態様の記録対象のことであり、特に限定されることなく、図、文字、模様、パターン、記号、柄、マーク等を広く含む。例えば「Don’t Touch」等の文字や、反射防止フィルムを縁取るパターン、反射防止フィルムの領域内に形成される網状パターン等を、例示することができる。また、これら絵柄については、反射防止フィルム自体を切り抜いた形状やその残り(反射防止機能がない領域)などで形成してもよい。
なお、以上において上述した例に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。