JP6473606B2 - シラン架橋ポリオレフィン組成物及びその成形物 - Google Patents

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Description

本発明は、シラノール縮合触媒を使用することにより架橋されたシラン架橋ポリオレフィン組成物、及び当該シラン架橋ポリオレフィン組成物の成形物に関する。
ポリオレフィンにシラン化合物を共重合させたシラン架橋ポリオレフィン組成物は、機械的強度や耐熱性に優れているため、電線やケーブルの絶縁被覆材料として使用されている。このようなシラン架橋ポリオレフィン組成物では、シラノール縮合触媒を添加することによりシラン化合物の架橋反応を促進し、ポリオレフィンの強度を向上させている。
従来、シラノール縮合触媒に関し、環境ホルモンの問題が指摘されている有機錫化合物の代替材料として、有機亜鉛化合物や有機アルミニウム化合物等が提案されている。また、特許文献1では、シラノール縮合触媒が、ArSOHで表される化合物(Arはヒドロカルビル置換されたベンゼン又はナフタレン環である)又はその加水分解性前駆物質を含むことを開示している。さらに、特許文献1のシラノール縮合触媒は、加水分解性シラン基を含むポリエチレンに対して相溶性であり、さらに十分な親油性を有するベンゼン又はナフタレンスルホン酸であることも開示している。
特表平9−506915号公報
上述のように、特許文献1のシラノール縮合触媒は、加水分解性シラン基を含むポリエチレンに対して相溶性であることが記載されている。しかしながら、シラノール縮合触媒が相溶性を有していない場合、シラノール縮合触媒が当該ポリエチレンから溶出し、架橋効率が低下するため、得られる組成物の強度が不十分となる恐れがある。そのため、シラノール縮合触媒は、当該ポリエチレンと相溶性があるものしか使用できないという問題があった。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、シラノール縮合触媒の溶出が抑制されたシラン架橋ポリオレフィン組成物、および当該シラン架橋ポリオレフィン組成物の成形物を提供することにある。
本発明の第1の態様に係るシラン架橋ポリオレフィン組成物は、オレフィン系樹脂を主成分として含むベース樹脂、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物を含む。また、シラノール縮合触媒は、一般式ArSOH(式中、Arは、ナフタレン環、ベンゼン環又はアルキルベンゼン環を表す)で表される。そして、ベース樹脂100質量部に対して、シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上1.0質量部以下であり、カルボジイミド化合物の含有量が0.5質量部以上3.0質量部以下である。
本発明の第2の態様に係るシラン架橋ポリオレフィン組成物は、第1の態様において、シラノール縮合触媒が、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
本発明の第3の態様に係る成形物は、第1又は第2の態様のいずれかに係るシラン架橋ポリオレフィン組成物を含有する。
本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、シラノール縮合触媒のベース樹脂からの溶出が抑制されているため、シラン化合物の架橋反応を促進し、得られるポリオレフィン組成物の強度及び耐久性を高めることが可能となる。また、本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物を適用した成形物は、表面が滑らかな外観を呈するとともに、シラン架橋由来の優れた耐熱性を発揮することができる。
本発明の実施形態に係る電線を示す断面図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
[シラン架橋ポリオレフィン組成物]
本発明の一実施形態に係るシラン架橋ポリオレフィン組成物について詳細に説明する。本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、オレフィン系樹脂を主成分として含むベース樹脂、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物を含有する。
<ベース樹脂>
本実施形態において、「ベース樹脂」はポリオレフィン組成物中の主成分であり、ポリオレフィン組成物全体の50質量%以上を占める樹脂である。さらに当該ベース樹脂は、主成分としてオレフィン系樹脂を含有している。つまり、ベース樹脂全体の50質量%以上をオレフィン系樹脂で占めている。このようなベース樹脂は高い柔軟性を有しているため、本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物を電線の絶縁体として使用した場合、電線に良好な柔軟性を付与することができる。
十分な柔軟性を確保する観点から、本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物中、ベース樹脂が50〜99質量%含有されていることが好ましい。また、ベース樹脂は、ベース樹脂全体の80質量%以上をオレフィン系樹脂で占めていることが好ましく、ベース樹脂はオレフィン系樹脂のみから成っていてもよい。
ベース樹脂として用いられるオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチルペンテン−1などのαオレフィンの単独重合体又はそれらの共重合体であることが好ましい。具体的には、オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1などの単独重合体;複数種のαオレフィンの共重合体;エチレン−ビニルエステル共重合体;及びエチレン−α,β−不飽和エステル共重合体などを挙げることができる。
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)を用いることができる。なお、密度が高いものは結晶度が高く、硬くなる傾向がある。そのため、十分な柔軟性を確保する観点から、結晶度が低く密度が低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
ポリプロピレン(PP)は、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のαオレフィンとのブロック共重合体又はランダム共重合体など、公知のポリプロピレンを用いることができる。
エチレン−ビニルエステル共重合体としては、エチレンと、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体が挙げられる。これらの中では、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。
エチレン−α,β−不飽和エステル共重合体としては、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などを挙げることができ、特にエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)が好ましい。
本実施形態において、オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)等を使用することが特に好ましい。なお、オレフィン系樹脂は、上述の樹脂を単独で用いてもよく、また複数種を混合して用いてもよい。
<シラン化合物>
本実施形態では、シラン化合物をオレフィン系樹脂中に導入し、さらにシラン化合物のアルコキシ基が加水分解し、互いに縮合反応する特性を利用して、オレフィン系樹脂を水分で架橋させている。つまり、まず、後述する遊離ラジカル発生剤を用いることで、シラン化合物をオレフィン系樹脂に結合させる。そして、シラノール縮合触媒を用いてシラン化合物のアルコキシ基を加水分解させてシラノール基を生成した後、シラノール基同士を脱水縮合させ、隣接するオレフィン系樹脂同士を架橋させる。このように、オレフィン系樹脂の架橋度を高めることで、得られるシラン架橋ポリオレフィン組成物の強度を向上させることが可能となる。
このようなシラン化合物としては特に限定されず、例えばアルキル基又はビニル基とアルコキシ基とを有するシラン化合物を用いることができる。シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシシランやノルマルヘキシルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシランなどを使用することができる。シラン化合物は、上述の化合物を単独で用いてもよく、また複数種を混合して用いてもよい。なお、シラン架橋反応の反応効率を考慮すると、上記シラン化合物の含有量としては、ベース樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部とすることが好ましいが、上記範囲に限定されるものではない。
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒は、上述のシラン化合物のアルコキシ基を加水分解させてシラノール基を生成し、さらにシラノール基同士の脱水縮合を促進する触媒である。シラノール縮合触媒としては、有機錫化合物の他、有機亜鉛化合物や有機アルミニウム化合物等も挙げられるが、いずれもその触媒作用によりシラン化合物の架橋度を上げるものである。
本実施形態では、シラノール縮合触媒として、一般式:ArSOHで表される化合物を使用する。なお、一般式中、Arは、ナフタレン環、ベンゼン環又はアルキルベンゼン環を表す。このようなシラノール縮合触媒は、環境ホルモンの問題が指摘される有機錫触媒に比べて、環境に優しい材料である。さらに、当該シラノール縮合触媒は、有機アルミニウム触媒や有機亜鉛触媒等の加水分解しやすい材料に比べて熱安定性に優れる。そのため、安定的に触媒活性を発揮し、触媒効果を長期間維持することができる。
本実施形態において、シラノール縮合触媒は、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。これらの化合物を含有する場合、特に優れた熱安定性及び成形性を発揮することができる。
本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物において、シラノール縮合触媒の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上1.0質量部以下である。0.1質量部未満の場合、十分な架橋度を得ることが困難となる。一方、1.0質量部を超える場合、成形時の外観に悪影響を及ぼす恐れがある。
<遊離ラジカル発生剤>
遊離ラジカル発生剤としては、グラフト反応等によってオレフィン系樹脂にシラン化合物を修飾するための触媒として機能するものであれば特に限定されない。遊離ラジカル発生剤としては、例えば有機過酸化物を使用することができる。このような有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、クメンハイドロパーオキサイド等を用いることができる。なお、上記遊離ラジカル発生剤は、単独で用いてもよく、また複数種を混合して用いてもよい。
シラン架橋反応の反応効率を考慮すると、遊離ラジカル発生剤の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.001〜2質量部を配合することが好ましく、0.005〜1質量部を配合することがより好ましい。しかしながら、上記範囲に限定されるものではない。
<カルボジイミド化合物>
上述のように、本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、シラノール縮合触媒として一般式:ArSOHで表される化合物を使用する。なお、一般式中、Arは、ナフタレン環、ベンゼン環又はアルキルベンゼン環を表す。このようなシラノール縮合触媒は、オレフィン系樹脂に対し相溶性を有するため、オレフィン系樹脂の内部に高分散し、シラン化合物の架橋を促進することができる。ただ、芳香族スルホン酸は一般に白色結晶で吸湿性が大きく,水に溶解しやすい性質がある。そのため、当該シラノール縮合触媒を単独で使用した場合、架橋工程においてオレフィン系樹脂からシラノール縮合触媒が水中に溶出し、シラン化合物の架橋が不十分となる恐れがある。そのため、本実施形態では、耐加水分解剤として、カルボジイミド化合物を添加する。シラノール縮合触媒と共にカルボジイミド化合物を配合することにより、シラノール縮合触媒の水中への溶出を抑え、シラン化合物の架橋効率を向上させることが可能となる。
カルボジイミド化合物としては、加水分解を抑制する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えばポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等を用いることができる。ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられる。また、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。なお、上記カルボジイミド化合物は、単独で用いてもよく、また複数種を混合して用いてもよい。
本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物において、カルボジイミド化合物の含有量は、ベース樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上3.0質量部以下である。0.5質量部未満である場合、シラノール縮合触媒が溶出してしまい、十分な架橋度を得ることが困難となる。一方、3.0質量部を超える場合、成形時の外観に悪影響を及ぼす恐れがある。
本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、上記の必須成分に加えて、本実施形態の効果を妨げない範囲で種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、酸化防止剤、金属不活性剤、老化防止剤、滑剤、充填剤、補強剤、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤等が挙げられる。
本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、上述のベース樹脂、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物を溶融混練することにより、調製することができる。また、添加剤やフィラーを含有させる場合には、ベース樹脂、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物に加え、添加剤を加えて溶融混練する。なお、各材料を添加する順序は特に限定されず、温度や時間などの混練条件も各材料に応じて適宜設定することができる。
ここで、本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物では、上述のように、遊離ラジカル発生剤が分解してラジカルが生成し、当該ラジカルによりシラン化合物とオレフィン系樹脂との付加反応が起こることで、シラン化合物がオレフィン系樹脂に修飾される。その後、修飾したシラン化合物のアルコキシ基が例えば大気中の水分で加水分解してシラノール基が生成した後、シラノール基が脱水縮合することで、オレフィン系樹脂がシロキサン結合で架橋される。その結果、得られる樹脂組成物の強度を高めることが可能となる。そのため、シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進するために、ベース樹脂、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物の混練物を水と接触させてもよい。具体的には、当該混練物を水中に浸漬してもよく、また高温高湿(例えば80℃、RH95%)の水蒸気雰囲気下に晒してもよい。本実施形態はカルボジイミド化合物を含有するため、水中へのシラノール縮合触媒の溶出を抑制し、加水分解および脱水縮合の反応効率を高めることが可能となる。
本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、オレフィン系樹脂を主成分として含むベース樹脂、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物を含む。また、シラノール縮合触媒は、一般式ArSOH(式中、Arは、ナフタレン環、ベンゼン環又はアルキルベンゼン環を表す)で表される。そして、ベース樹脂100質量部に対して、シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上1.0質量部以下であり、カルボジイミド化合物の含有量が0.5質量部以上3.0質量部以下である。当該シラン架橋ポリオレフィン組成物は、有機錫化合物以外の縮合触媒を用いているため、環境に配慮した成形品とすることができる。特に、本実施形態ではカルボジイミド化合物を含有しているため、耐水性が向上し、その結果、長期の保管や安価なシラノール縮合触媒の選定が可能となる。さらに、上述のシラン架橋ポリオレフィン組成物を電線の絶縁被覆層に適用する場合、優れた耐熱性を発揮させるとともに、表面が滑らかな外観を与えることができる。
[成形物]
本実施形態の成形物は、上述のシラン架橋ポリオレフィン組成物を含有している。そして、このような成形物は、例えば電線やケーブルを被覆する電気絶縁材として好適に使用することができる。以下、本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物を使用した電線について説明する。
図1は、本実施形態のシラン架橋ポリオレフィン組成物を絶縁被覆層として使用した電線の一例を示す。電線1は、導体2を絶縁被覆層3で被覆することにより形成されている。
導体2は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。そして導体2は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。導体2の材料としては、銅、銅合金及びアルミニウム、アルミニウム合金等の公知の導電性金属材料を用いることができる。
本実施形態の電線1における絶縁被覆層3は、上記材料を溶融混練することにより調製されるが、その方法は公知の手段を用いることができる。さらに、導体2を絶縁被覆層3で被覆する方法も公知の手段を用いることができる。例えば、絶縁被覆層3は、一般的な押出成形法により形成することができる。そして、押出成形法で用いる押出機としては、例えば単軸押出機や二軸押出機を使用し、スクリュー、ブレーカープレート、クロスヘッド、ディストリビューター、ニップル及びダイスを有するものを使用することができる。
絶縁被覆層3を構成するシラン架橋ポリオレフィン組成物を調製する場合には、まずベース樹脂が十分に溶融する温度に設定された押出機に、ベース樹脂を投入する。この際、シラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物、さらには必要に応じて、酸化防止剤などの他の添加剤も投入する。そして、ベース樹脂等はスクリューにより溶融及び混練され、一定量がブレーカープレートを経由してクロスヘッドに供給される。溶融したベース樹脂等は、ディストリビューターによりニップルの円周上へ流れ込み、ダイスにより金属導体の外周上に被覆された状態で押し出されることにより、導体2の外周を被覆する絶縁被覆層3を得ることができる。
なお、上述のように、シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進するために、得られた絶縁被覆層3を水と接触させてもよい。上述のように、本実施形態はカルボジイミド化合物を含有するため、水中へのシラノール縮合触媒の溶出を抑制し、加水分解および脱水縮合の反応効率を高めることができる。
本実施形態の電線1は、絶縁被覆材料として上記シラノール縮合触媒を使用してシランカップリングさせたシラン架橋ポリオレフィン組成物を用いている。そして、シラン架橋ポリオレフィン組成物は高度に架橋されているため、表面が滑らかな外観を呈するとともに、優れた耐熱性に優れた電線1とすることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、表1に示す材料を準備した。オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE、ダウケミカル日本(株)製、商品名「NUCG−9301」)を用いた。また、シラン化合物としては、ビニルメトキシシランを用いた。シラノール縮合触媒としては、ナフタレンスルホン酸(楠本化成株式会社製)を用いた。遊離ラジカル発生剤としては、日油(株)製、商品名「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド)を用いた。カルボジイミド化合物としては、日清紡(株)、商品名「カルボジライト(登録商標)LA−1」を用いた。これらの配合量は、オレフィン系樹脂100質量部に対して、シラン化合物を5質量部、シラノール縮合触媒を0.1質量部、遊離ラジカル発生剤を1質量部、カルボジイミド化合物を2質量部とした。
次に、上記各材料を溶融混練し、得られた樹脂組成物を金属導体に押出成形して被覆した。その後、被覆した導体を80℃の温水に16時間浸漬して架橋反応を進行させることにより、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例2]
シラノール縮合触媒としてのナフタレンスルホン酸の配合量を0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例3]
シラノール縮合触媒としてのナフタレンスルホン酸の配合量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例4]
シラノール縮合触媒として、ベンゼンスルホン酸(楠本化成株式会社製)を使用し、配合量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例5]
シラノール縮合触媒として、トルエンスルホン酸(楠本化成株式会社製)を使用し、配合量を1質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例6]
シラノール縮合触媒としてのベンゼンスルホン酸の配合量を0.5質量部としたこと以外は実施例4と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例7]
シラノール縮合触媒としてのトルエンスルホン酸の配合量を0.5質量部としたこと以外は実施例5と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例8]
シラノール縮合触媒としてのベンゼンスルホン酸の配合量を0.1質量部としたこと以外は実施例4と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例9]
シラノール縮合触媒としてのトルエンスルホン酸の配合量を0.1質量部としたこと以外は実施例5と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例1]
シラノール縮合触媒としてのナフタレンスルホン酸の配合量を0.05質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例2]
シラノール縮合触媒としてのナフタレンスルホン酸の配合量を2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例3]
シラノール縮合触媒を配合せず、さらにカルボジイミド化合物の配合量を0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例4]
シラノール縮合触媒を配合せず、さらにカルボジイミド化合物の配合量を3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
実施例1〜9および比較例1〜4における材料および配合量を表1に示す。
Figure 0006473606
[実施例10]
まず、実施例1と同じオレフィン系樹脂(PE)、シラン化合物(ビニルメトキシシラン)、シラノール縮合触媒(ナフタレンスルホン酸)、遊離ラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)、カルボジイミド化合物を準備した。これらの配合量は、オレフィン系樹脂100質量部に対して、シラン化合物を5質量部、シラノール縮合触媒を0.5質量部、遊離ラジカル発生剤を1質量部、カルボジイミド化合物を0.5質量部とした。
次に、上記各材料を溶融混練し、得られた樹脂組成物を金属導体に押出成形して被覆した。その後、被覆した導体を80℃の温水に16時間浸漬して架橋反応を進行させることにより、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例11]
シラノール縮合触媒として実施例4と同じベンゼンスルホン酸を使用したこと以外は実施例10と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例12]
シラノール縮合触媒として実施例5と同じトルエンスルホン酸を使用したこと以外は実施例10と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例13]
カルボジイミド化合物の配合量を3質量部としたこと以外は実施例10と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例14]
カルボジイミド化合物の配合量を3質量部としたこと以外は実施例11と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例15]
カルボジイミド化合物の配合量を3質量部としたこと以外は実施例12と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例5]
カルボジイミド化合物を配合しなかったこと以外は実施例10と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例6]
カルボジイミド化合物を配合しなかったこと以外は実施例11と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例7]
カルボジイミド化合物を配合しなかったこと以外は実施例12と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例8]
カルボジイミド化合物の配合量を0.3質量部としたこと以外は実施例10と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例9]
カルボジイミド化合物の配合量を0.3質量部としたこと以外は実施例11と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例10]
カルボジイミド化合物の配合量を0.3質量部としたこと以外は実施例12と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例11]
カルボジイミド化合物の配合量を5質量部としたこと以外は実施例10と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例12]
カルボジイミド化合物の配合量を5質量部としたこと以外は実施例11と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[比較例13]
カルボジイミド化合物の配合量を5質量部としたこと以外は実施例12と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
実施例10〜15および比較例5〜13における材料および配合量を表2に示す。
Figure 0006473606
[実施例16]
オレフィン系樹脂としてエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。なお、EMAは、三井・デュポン ポリケミカル(株)製、エルバロイ(登録商標)1125を用いた。
[実施例17]
オレフィン系樹脂として、実施例16と同じエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例18]
オレフィン系樹脂としてエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。なお、EEAは、三井・デュポン ポリケミカル(株)製、エルバロイ(登録商標)12112を用いた。
[実施例19]
オレフィン系樹脂として、実施例18と同じエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例20]
オレフィン系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。なお、EVAは、三井・デュポン ポリケミカル(株)製、エバフレックス(登録商標)EV560を用いた。
[実施例21]
オレフィン系樹脂として、実施例20と同じエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例22]
オレフィン系樹脂としてポリプロピレン(PP)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。なお、PPは、住友化学(株)製、住友ノーブレン(登録商標)EP3711E1を用いた。
[実施例23]
オレフィン系樹脂として、実施例22と同じポリプロピレン(PP)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
[実施例24]
オレフィン系樹脂としてエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。なお、EMMAは、住友化学(株)製、アクリフト(登録商標)WH401を用いた。
[実施例25]
オレフィン系樹脂として、実施例24と同じエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、本例の試験サンプルを作製した。
実施例16〜25における材料および配合量を表3に示す。
Figure 0006473606
[評価]
実施例1〜25および比較例1〜13の試験サンプルに関し、次に押出外観とゲル分率を評価した。
(押出外観)
各実施例及び比較例の試験サンプルの外観評価は、電線表面の平滑さ、粒や発泡の有無を目視及び手触りで判定するものとした。すなわち、粒や発泡などの表面荒れが目立ち、製品ないし成形物としての使用に適さないものを「×」と評価し、そうでないものを「○」と評価した。これらの評価結果を表1〜3に併せて示す。
(ゲル分率)
まず、各例の試験サンプルを144℃で沸騰したキシレン中に浸漬した。そのままの状態で10時間抽出を行った後、サンプルを十分に乾燥させた。上記抽出の際、未架橋成分が溶媒に抽出されるため、溶出量が少ないほど架橋反応が十分に進行したものと評価される。そして、その架橋の進行度合いの指標として、次式によりゲル分率を算出した。このゲル分率が大きいほど、架橋度が高い、すなわち、シロキサン架橋由来の耐熱性が十分に付与されているものと評価される。これらの評価結果を表1〜3に併せて示す。
[数1]
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試験サンプルの質量)/(抽出前の試験サンプルの質量)×100
表1および2より、本発明に係る実施例1〜15は、押出外観およびゲル分率で良好な結果となった。つまり、得られる成形品の外観および強度の両方とも優れた結果となった。
これに対し、シラノール縮合触媒の配合量が過少な比較例1および3〜4は、架橋反応が十分に進行せず、ゲル分率が悪化する結果となった。特に、これらの比較例はゲル分率が5%以下であるため、シラン架橋ポリオレフィン組成物の成形品の特徴である耐熱性が不十分となった。また、シラノール縮合触媒の配合量が過多な比較例2は外観が悪化し、成形品として使用できない結果となった。
さらに、カルボジイミド化合物の配合量が過少な比較例5〜10は、架橋反応時におけるシラノール縮合触媒の溶出が抑制できず、架橋反応が十分に進行しなかったため、ゲル分率が悪化する結果となった。また、カルボジイミド化合物の配合量が過多な比較例11〜13は外観が悪化する結果となった。
なお、表3に示すように、オレフィン系樹脂としてポリエチレン以外のもの(EMA、EEA、EVA、PP、EMMA)を用いた実施例16〜25の電線もまた、実施例1〜15と同様に得られる成形品の外観および強度の両方とも優れた結果となった。
以上、本発明を実施例及び比較例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 電線
2 導体
3 絶縁被覆層

Claims (3)

  1. オレフィン系樹脂を主成分として含むベース樹脂、ビニル基とアルコキシ基とを有するシラン化合物、シラノール縮合触媒、遊離ラジカル発生剤及びカルボジイミド化合物からなり、前記オレフィン系樹脂がシロキサン結合で架橋されているシラン架橋ポリオレフィン組成物であって
    前記シラノール縮合触媒は、一般式ArSOH(式中、Arは、ナフタレン環、ベンゼン環又はアルキルベンゼン環を表す)で表され、
    前記ベース樹脂100質量部に対して、前記シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上1.0質量部以下であり、前記カルボジイミド化合物の含有量が0.5質量部以上3.0質量部以下であることを特徴とするシラン架橋ポリオレフィン組成物。
  2. 前記シラノール縮合触媒が、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のシラン架橋ポリオレフィン組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のシラン架橋ポリオレフィン組成物を含有する成形物。
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