JP6498657B2 - 水硬性粉体の製造方法 - Google Patents
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特許文献2には、多価アルコールと高級脂肪酸のエステル化によって得られる化合物をコンクリート混練物に添加することにより、コンクリートの温度上昇と上昇速度を簡便に抑制するセメント用添加剤が開示されている。
また、特許文献3には、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル誘導体、アクリル系ポリマー誘導体を配合した水溶性高分子、およびポリカルボン酸塩を含有することを特徴とする高流動コンクリート用混和剤が開示されている。
一方、水硬性粉体の製造においても、水硬性化合物の粉砕により得られる水硬性粉体を用いて水硬性組成物を調製する場合、水和発熱上昇速度を、温度ひび割れ防止のために抑制することが望まれる。更に、水硬性粉体の製造において、粉砕により得られる水硬性粉体の同一粉末度を達成する時間を、生産性向上のため、より短縮することが望まれる。
(A)成分:2価以上5価以下の多価アルコールと、炭素数8以上16以下の飽和脂肪酸又は炭素数18の不飽和脂肪酸とのエステル化合物
またセメントと水を接触した際、一定期間に限って水和発熱、すなわち水和反応を抑制でき、その後、適切な水和発熱量を生じさせるため、大幅な硬化遅延を起こさない水硬性組成物が提供できる。
本発明の水硬性粉体の製造方法は、(A)成分の存在下において、水硬性化合物を粉砕することに特徴を有し、水硬性化合物の粉砕性を向上しつつ、水硬性組成物の水和発熱上昇速度を抑制する。更に、一定期間に限って水和反応を抑制でき、その後、適切な水和発熱量を生じさせるため、大幅な硬化遅延を起こさない。この機構の詳細は不明であるが、以下の様に推定される。
脂肪酸エステルはセメントペーストの液相中で一部が加水分解し、脂肪酸が生成される。脂肪酸は液相中のカルシウムイオンと反応し、難溶性の脂肪酸カルシウム塩となってセメント粒子表面に析出する。また未分解の脂肪酸エステルは親油性であるため、油性の強い脂肪酸カルシウム塩の表面に配位し、セメント粒子表面に油膜が形成される。この油膜がセメント粒子と水との接触を妨げることによって、セメントの水和発熱が抑制されると考えられる。一方、セメントの水和反応は水和生成物の核生成および核成長によって開始される。本発明の特定の脂肪酸エステル及びそれから得られる加水分解物は核生成・核成長反応を阻害しないため、水和反応を遅延させることなく水和発熱を抑制できるものと推察される。
また多価アルコールは、加水分解性およびセメントの反応遅延性の観点から、2価以上、好ましくは3価以上、そして、5価以下、好ましくは4価以下である。
また炭素数8以上16以下の飽和脂肪酸又は炭素数18の不飽和脂肪酸は、セメントへの吸着性の観点から、好ましくは炭素数8以上12以下の飽和脂肪酸又は炭素数18の不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数18の不飽和脂肪酸である。
また2価以上5価以下の多価アルコールは無水物を用いることが、加水分解時に生成するアルコールのセメントに対する反応遅延性の観点から好ましい。
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、化合物が親水性か親油性かを知る指標となるものであり、0〜20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、下記式より算出される。
HLB=20×(1−S/A)
S:エステルのケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
なお(A)成分の存在量は、水硬性化合物を粉砕する工程で存在させる、全量に基づくものであり、具体的には、水硬性化合物の粉砕が終了するまで、更には、後述する目標のブレーン値に到達するまでに存在させる(A)成分の全量に基づくものである。
(B)成分は、2種以上を用いることができ、例えば、2種又は3種を用いることができる。(B)成分を2種以上用いる場合、(B)成分に、少なくともジエチレングリコール又はトリエタノールアミンが含まれていることが好ましい。
なお(B)成分の存在量は、水硬性化合物を粉砕する工程で存在させる、全量に基づくものであり、具体的には、水硬性化合物の粉砕が終了するまで、更には、後述する目標のブレーン値に到達するまでに存在させる(B)成分の全量に基づくものである。
(A)成分は、セメント中での拡散のしやすさの観点から、有機溶媒に溶かしてから、水硬性組成物に添加するのが好ましい。
有機溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、オレイルアルコール、イソプロパノール、イソブタノール、イソペンタノール、2−エチルヘキサノール、イソステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ベンジルアルコール、ジエチルエーテル、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン、石油エーテル、パラフィン、植物性脂肪油等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。有機溶媒は、引火性および(A)成分であるエステル化合物との相溶性の観点から、好ましくはプロピレングリコール、ブチルトリグリコール、パラフィン及び植物性脂肪油から選ばれる1種以上であり、より好ましくはプロピレングリコール、ブチルトリグリコールから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはブチルトリグリコールである。
分散剤は、リグニンスルホン酸系重合体、ポリカルボン酸系重合体、ナフタレン系重合体、メラミン系重合体、及びフェノール系重合体から選ばれる1種以上の分散剤が挙げられ、分散性の観点から、好ましくはリグニンスルホン酸系重合体、ポリカルボン酸系重合体、及びナフタレン系重合体から選ばれる1種以上の分散剤であり、より好ましくはリグニンスルホン酸系重合体、及びポリカルボン酸系重合体から選ばれる1種以上の分散剤である。
本発明の水硬性粉体の製造方法において、(A)成分と分散剤とを混合して添加する場合、(A)成分と分散剤との質量比((A)成分/分散剤)は、相溶性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、そして、水硬性組成物の作業性の観点から、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは7.5以下となるように混合して、水硬性化合物に添加する。
また、水硬性化合物の粉砕時の作業性を向上させる観点から、本発明の水硬性粉体の製造方法では、(A)成分を含有する、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物を用いることができる。即ち、本発明は、(A)成分を含有する、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物を提供する。
本発明の水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物は、本発明の水硬性粉体の製造方法にて述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の水硬性粉体の粉砕用添加剤組成物中、(A)成分の含有量と有機溶媒の含有量との質量比((A)/有機溶媒)は、有機溶媒と(A)成分であるエステル化合物との相溶性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、そして、(A)成分の溶液粘度の観点から、好ましくは9以下、より好ましくは5以下である。
本発明の水硬性粉体の粉砕用添加剤組成物中、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比((A)成分/(B)成分)は、好ましくは5/95以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは100/0以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは70/30以下である。
本発明の水硬性粉体の粉砕用添加剤組成物中、(A)成分の含有量と消泡剤の含有量との質量比((A)成分/消泡剤)は、添加剤のコストの観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは90/10以上、そして、消泡性の観点から、好ましくは99.9999/0.0001以下、より好ましくは99.999/0.001以下、更に好ましくは99.99/0.01以下である。
本発明の水硬性粉体の粉砕用添加剤組成物中、(A)成分の含有量と分散剤の含有量との質量比((A)成分/分散剤)は、相溶性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、そして、水硬性組成物の作業性の観点から、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは7.5以下である。
本発明の水硬性組成物の製造方法として、以下のものが挙げられる。
本発明の水硬性粉体の製造方法により水硬性粉体を得る工程(1)と、
工程(1)で得られた水硬性粉体と水とを混合して水硬性組成物を得る工程(2)と、
を有する水硬性組成物の製造方法。
この製造方法には、本発明の水硬性粉体の製造方法、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物で述べた事項を、適宜適用することができる。
クリンカー、二水石膏を、下記の含有量で混合した水硬性化合物を用いた。
・水硬性化合物:クリンカー95質量%、二水石膏5質量%を混合した。
・クリンカー:成分が、CaO:約65%、SiO2:約22%、Al2O3:約5%、Fe2O3:約3%、MgO他:約3%(質量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た、普通ポルトランドセメント用クリンカー(3.5mmふるい通過物)
・二水石膏:試薬特級、和光純薬工業株式会社製
水硬性化合物を粉砕する際の添加剤として、以下のものを用いた。
(A)成分
・ソルビタンモノオレエート:花王(株)製、HLB4.3、4価の多価アルコールとオレイン酸とのモノエステル化合物
・オレイン酸モノグリセライド:花王(株)製、HLB2.8、3価の多価アルコールとオレイン酸とのモノエステル化合物
・ソルビタンモノステアレート:花王(株)製、HLB4.7、4価の多価アルコールとステアリン酸とのモノエステル化合物
ブレーン値の測定は、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に定められるブレーン空気透過装置を使用した。この試験での結果の相違は、実機レベルではより大きな差となってあらわれる。ブレーン値が大きいほど粉砕性に優れることを示す。
前記水硬性化合物1000gに、表1で示した添加剤を、表1に示した量で添加し、添加剤の存在下で、ボールミルで粉砕して水硬性粉体を製造した。
セメントの接水時から12時間後、24時間後、72時間後の発熱量の結果を表1に示した。表2中、比較例1を基準に、各実施例、比較例の発熱量、および比較例1に対する相対値を示した。比較例1に対する相対値が、100以下の場合、比較例1よりも水和に伴う発熱を抑制していると言える。
また、比較例1および比較例2に対し、実施例1〜3は、接水時から12時間後までの水和発熱量を抑制するが、接水時から24時間後までの水和発熱量は、比較例1および比較例2と同等になっており、一定期間に限って水和発熱、すなわち水和反応を抑制するため、大幅な硬化遅延を起こさないことが分かる。更に、接水時から72時間後までの水和発熱量では、比較例1および比較例2に対し、実施例1〜3の方が、水和発熱量が増大し、水和反応をより促進していることが分かる。また、実施例3の結果より、実施例1よりも添加量を少なくしても同様の効果が発現することが分かる。
Claims (4)
- 下記(A)成分の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法。
(A)成分:2価以上5価以下の多価アルコールと、炭素数18の不飽和脂肪酸とのエステル化合物 - (A)成分のHLBが1以上9以下である、請求項1に記載の水硬性粉体の製造方法。
- (A)成分の存在量が、水硬性化合物100質量部に対して、0.001質量部以上0.5質量部以下である、請求項1又は2に記載の水硬性粉体の製造方法。
- 下記(A)成分を含有する、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
(A)成分:2価以上5価以下の多価アルコールと、炭素数18の不飽和脂肪酸とのエステル化合物
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