JP6501538B2 - ナノカーボン基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ナノカーボン基材の製造方法およびナノカーボン基材に関する。
カーボンナノチューブ(以下、CNTと称する)等のナノカーボンの合成方法として、アーク放電法、レーザー蒸発法、およびCVD法等が、従来から知られている。最近では、SiC基板を真空中、高温で加熱して基板からケイ素(Si)原子を除去し、残留した炭素(C)原子によりナノカーボンを得る、いわゆるSiC表面分解法が提案されている。SiC表面分解法によって、SiC結晶の表面がSi除去層に変化し、厚み方向に配向した多数本のCNTからなるナノチューブ膜が、このSiC除去層に得られることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
SiC表面分解法における真空中での加熱の際、SiC基板表面の所定の領域をマスクで覆って保護することによって、Si原子が除去される領域が制限される。これによりナノカーボンは、SiC基板表面の露出部に選択的に成長するので、パターン化されたナノカーボン膜が、SiC基板の表面と裏面との間で基板のSiC基板の厚み方向に得られる。例えば、Si膜をマスクとして用いて、パターン化されたCNT膜を形成することが報告されている(例えば、非特許文献1)。また、SiCウェハーの表面の所定の領域をカーボン膜(C膜)で保護してCNTの成長領域を抑制することにより、CNT膜のパターンを形成することが報告されている(例えば、非特許文献2)。
特許第3183845号公報
Michiko Kusunoki et al., 「Patterned Carbon Nanotube Films Formed by Surface Decomposition of SiC Wafers」,Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 42 (2003) pp.L1486-1488 Z. Goknur Cambaz et al., 「Nanocatalytic synthesis of carbon nanotubes, graphene and graphite on SiC」,Carbon,46 (2008), p.841-849
SiC基板の厚み方向に形成され、パターン化されたCNT膜等のナノカーボン膜は、SiCパワーデバイスにおける電極などとして用いることができる。そのような用途に適用するためには、選択成長させたナノカーボンにダメージを与えることなく、SiC基板表面のマスクが除去されたナノカーボン基材が求められる。
ナノカーボンを選択成長させて、パターン化されたナノカーボン膜をSiC基板の厚み方向に得るために、Si膜およびC膜がマスクとして用いられている。Si膜およびC膜は、いずれも、真空中での高温加熱からSiC基板を保護できる耐性を備えたものである。しかしながら、これらの膜は、ナノカーボンにダメージを与えずに、SiC基板表面から選択的に除去するのは困難であることが本発明者らによって見出された。
例えば、Si膜をSiC基板表面から除去するには、比較的高濃度のリン酸での処理が必要とされる。このリン酸によって、ナノカーボンは少なからずダメージを受けることが予測される。一方、C膜は、ナノカーボンに対して選択的に除去することができない。マスクとしてのC膜をSiC基板表面から除去しようとすると、SiC基板の所定の領域に選択成長させたナノカーボンも除去されてしまう。このため、パターン化されたナノカーボン膜を得ることはできない。
そこで本発明は、選択成長させた、実質的にダメージのないナノカーボンをSiC基板の厚み方向に有し、SiCパワーデバイスに適用できるナノカーボン基材の製造方法、および選択成長させた、実質的にダメージのないナノカーボンをSiC基板の厚み方向に有し、SiCパワーデバイスに適用できるナノカーボン基材を提供することを目的とする。
本発明に係るナノカーボン基材の製造方法は、SiC基板上のナノカーボン形成領域内にナノカーボンが形成されたナノカーボン基材の製造方法であって、前記SiC基板の上に、順次積層された剥離層と耐熱層とを含み、少なくとも前記耐熱層によって、前記SiC基板の前記ナノカーボン形成領域を画定するマスク層を形成する工程と、前記マスク層が形成された前記SiC基板を加熱し、前記ナノカーボン形成領域からSiを除去することにより、前記ナノカーボン形成領域にナノカーボンを形成する工程と、前記マスク層を前記SiC基板の表面から除去する工程とを備えることを特徴とする。
本発明に係るナノカーボン基材は、SiC基板上のナノカーボン形成領域内にナノカーボンが形成されたナノカーボン基材であって、前記SiC基板は、ナノカーボン非形成領域と、前記ナノカーボン非形成領域の表面より凹んだ前記ナノカーボン形成領域とを含み、前記ナノカーボンは、前記ナノカーボン形成領域の底面から前記SiC基板の厚さ方向に成長しており、ラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドとのピーク強度比(G/D比)が0.6以上であることを特徴とする。
本発明によれば、耐熱層を有するマスク層をSiC基板(以下、単に基板とも称する)の上に設け、マスク層に覆われた基板の領域を保護しつつ、マスク層に覆われていないナノカーボン形成領域において、基板の表面と裏面との間で基板の厚み方向にナノカーボンを形成する。マスク層は、順次積層された剥離層と耐熱層とを含んでいる。基板と耐熱層との間に剥離層が存在しているので、耐熱層を有するマスク層は基板から容易に除去される。これによって、選択成長させた、実質的にダメージのないナノカーボンを基板の厚み方向に有し、SiCパワーデバイスに適用できるナノカーボン基材を製造することができる。
本発明のナノカーボン基材の構成を説明する断面図である。 本発明の第1実施形態に係るナノカーボン基材の製造方法を段階的に示す断面図であり、図2AはSiC基板上に剥離層を形成した段階、図2Bは、剥離層と耐熱層との積層構造からなるマスク層をSiC基板表面に形成した段階、図2CはSiC基板にナノカーボンを形成した段階、図2Dはマスク層をSiC基板表面から除去した段階を示す図である。 剥離層および耐熱層を有するSiC基板の熱処理前の電子顕微鏡写真である。 図3に示したSiC基板の熱処理後の電子顕微鏡写真である。 図4に示したSiC基板から剥離層を除去して得られたナノカーボン基材の電子顕微鏡写真である。 本発明のナノカーボン基材について得られたラマンスペクトルである。 本発明の第2実施形態に係るナノカーボン基材の製造方法を段階的に示す断面図であり、図7AはSiC基板表面に犠牲層を形成した段階、図7Bは犠牲層およびSiC基板の表面に剥離層および耐熱層を順次形成した段階、図7Cは犠牲層を除去してマスク層をSiC基板表面に得た段階、図7DはSiC基板にナノカーボンを形成した段階、図7Eはマスク層をSiC基板表面から除去した段階を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.第1実施形態
(全体構成)
本発明の第1実施形態に係るナノカーボン基材について、図1を参照して説明する。
本発明のナノカーボン基材30は、図1に示すように、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bに形成されたナノカーボンとしてのCNT20を備える。本発明のナノカーボン基材30においては、CNT20は、SiC基板10の表面の所定の領域(ナノカーボン形成領域10b)に選択的に形成されたものである。
SiC基板10は、ナノカーボン非形成領域10aと、このナノカーボン非形成領域10aの表面より凹んだナノカーボン形成領域10bとを含んでいる。CNT20が形成されたナノカーボン形成領域10bにおいては、SiC基板10からSiが除去されるので、ナノカーボン形成領域10bはナノカーボン非形成領域10aの表面より凹んでいる。本発明のナノカーボン基材30においては、CNT20は、SiC基板10の表面と裏面との間で、ナノカーボン形成領域10bの底面11からSiC基板10の厚さ方向に成長したものである。CNT20が成長しているナノカーボン形成領域10bの底面11は、SiC基板10の(000−1)面(C面)である。
本発明のナノカーボン基材30において、ナノカーボン形成領域10bに形成されたCNT20は、ラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドとのピーク強度比(G/D比)が、0.6以上である。CNT20の高さhは、成長させる際の条件に依存するが、一般的には3〜500nm程度、例えば200nm程度である。CNT20の高さは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope: TEM)観察により確認することができる。また、ナノカーボン形成領域10bに選択的に形成されたCNT20は、パターン化されたCNT膜ということができる。このパターン化されたCNT膜の表面の粗さは5nm程度であることが、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)により確認される。
(製造方法)
本発明の第1実施形態に係るナノカーボン基材の製造方法について、図2を参照して説明する。
第1実施形態に係るナノカーボン基材30の製造方法においては、まず、図2Aに示すように、SiC基板10の表面全体に剥離層12を形成する。次いで、図2Bに示すように剥離層12の所定の領域に耐熱層14を形成して、ナノカーボン非形成領域10aの上に剥離層12と耐熱層14との積層構造からなるマスク層16を得、耐熱層14によりSiC基板10のナノカーボン形成領域10bを画定する。その後、マスク層16を有するSiC基板10を加熱して、図2Cに示すように、SiC基板10のナノカーボン形成領域10b上の剥離層12を除去し、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bにナノカーボンとしてのCNT20を形成する。最後に、マスク層16をSiC基板10の表面から除去してナノカーボン非形成領域10aを露出して、図2Dに示すような、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bにCNT20を選択成長させた本発明のナノカーボン基材30が得られる。
図2A〜図2Dに示す各工程について、以下に詳細に説明する。
まず、図2Aに示すように、SiC基板10の(000−1)面(C面)全体に剥離層12を形成する。SiC基板10を構成するSiCは、特に限定されず、例えば4H−SiC、6H−SiC等が挙げられる。
剥離層12は、特定の液体に可溶性の金属酸化物により形成される。特定の液体とは、後の工程でSiC基板10のナノカーボン形成領域10bに形成されるCNT20に実質的にダメージを与えない液体である。本明細書においては、CNTに実質的にダメージが与えられていないとは、CNTのラマンシフト(G/D比、ピークの波数、半値幅)が変化しないこと、すなわちCNTの欠陥量を増やさないことをいう。剥離層12の形成に用いられる金属酸化物としては、例えばZnO、Ga、Y、ZrO、およびHfOが挙げられる。剥離層12を形成する方法は特に限定されない。所定の厚さの剥離層12をSiC基板10の全面に形成できれば、任意の方法によって剥離層12を形成することができる。例えば、ZnOを用いて剥離層12を形成する場合には、任意の材料を用いた液相法を採用することができる。
ここで形成される剥離層12の厚さは、1〜3μm程度であることが好ましい。1〜3μm程度の厚さを有する剥離層12であれば、加熱した際、耐熱層14で覆われた部分では実質的な変化を起こすことなく、また、耐熱層14で覆われていないSiC基板10のナノカーボン形成領域10b上の部分を除去することができる。
SiC基板10の全面に形成された剥離層12の上の所定の領域には、図2Bに示すように耐熱層14を形成する。順次積層された剥離層12と耐熱層14とによって、ナノカーボン非形成領域10aのマスク層16が構成される。マスク層16の上層の耐熱層14によって、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bが画定される。
耐熱層14は、加熱からSiC基板10を保護できる高融点材料により形成される。耐熱層14で覆われることにより、その下の剥離層12も加熱から保護される。耐熱層14の形成に用いられる高融点材料は、例えば、C、W、Ta、Re、およびOsからなる群から選択することができる。例えば耐熱層14としてのC層は、例えば集束イオンビーム(Focused Ion Beam: FIB)により剥離層12の所定の領域にCを堆積して耐熱層14を形成して、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bを画定することができる。
後の工程で行われる加熱によって、耐熱層14を形成している金属酸化物の一部が昇華して、耐熱層14の厚さが減少することがある。厚さが小さくなりすぎた場合には、耐熱層14は、その下の剥離層12およびSiC基板10を保護するという機能を十分に果たすことができなくなる。100nm以上の厚さを有する耐熱層14は、例えば1600℃で1時間の熱処理に供された場合でも、完全に消失することはない。100nm以上の厚さを有する耐熱層14であれば、熱処理の間、その下の剥離層12およびSiC基板10を保護するために必要な厚さを維持できる。なお、耐熱層14が過剰に厚く形成されても、格別な効果が得られるわけではない。耐熱層14の厚さは、最大でも300nm程度であれば、1600℃で1時間の熱処理の間、その下の剥離層12およびSiC基板10を保護することができる。
図2Bに示すように、SiC基板10においては、ナノカーボン形成領域10bの表面は剥離層12で覆われる。一方、ナノカーボン形成領域10bを除いたナノカーボン非形成領域10aは、剥離層12と耐熱層14との積層構造からなるマスク層16で覆われる。
マスク層16を有するSiC基板10を加熱することによって、図2Cに示すようにSiC基板10のナノカーボン形成領域10bが露出され、このナノカーボン形成領域10bの底面11からナノカーボンとしてのCNT20が形成される。この際の圧力は、10−6〜10-1Pa程度の範囲とすることができ、加熱温度は、1400〜1700℃程度とすることができる。加熱時間は、圧力範囲や加熱温度に応じて適宜設定することができるが、一般的には、5分〜3時間程度である。
加熱は、例えば、連続発振されたYAGレーザビームを、マスク層16を有するSiC基板10に照射することによって行うことができる。YAGレーザビームは、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bのほぼ中央部に、例えばφ0.2〜3mm程度の面積で照射することができる。
例えば、1×10−2Pa以下、1600℃で1時間の加熱を行うことによって、SiC基板10のナノカーボン形成領域10b上においては、剥離層12を形成している金属酸化物が昇華して、この部分の剥離層12が除去される。この際、剥離層12の耐熱層14に覆われている部分は、実質的に変化しない。剥離層12が除去されて露出したSiC基板10のナノカーボン形成領域10bにおいては、SiCが分解されてSiが除去される。図2Cに示すCNT20は、Siの除去が進行するにしたがって、SiC基板10の表面から内部に形成されるものである。こうして形成されるので、ナノカーボン形成領域10bには、直線性の優れたCNT20が高密度で得られる。
その後、マスク層16をSiC基板10に対して選択的に除去して、図2Dに示すようにSiC基板10のナノカーボン非形成領域10aの表面を露出する。マスク層16は、剥離層12を溶解することによって、SiC基板10表面から容易に除去することができる。剥離層12を溶解するには、CNT20に実質的にダメージを与えない液体が用いられる。例えば、剥離層12としてのZnO層は、1〜35%のHCl溶液で1秒〜3時間処理して溶解することができる。こうして、SiC基板10の表面からマスク層16を選択的に除去して、SiC基板10にCNT20を選択成長させた本発明のナノカーボン基材30を得ることができる。
(作用及び効果)
本実施形態に係るナノカーボン基材30の製造方法においては、SiC基板10のナノカーボン非形成領域10aをマスク層16により保護して加熱する。これによって、CNT20をSiC基板10のナノカーボン形成領域10bに選択成長させる。SiC基板10のナノカーボン非形成領域10aを保護するマスク層16は、下層の剥離層12と上層の耐熱層14との積層構造であり、上層の耐熱層14は、加熱からSiC基板10を保護する高融点材料を用いて形成される。
一方、下層の剥離層12は、CNT20に実質的にダメージを与えない液体に可溶の金属酸化物により形成される。ここで用いられる金属酸化物は、加熱されても基板10を構成しているSiCと化合しない。したがって、第1実施形態の方法によれば、耐熱層14を含むマスク層16がSiC基板10の表面から除去されるまで、耐熱層14は、剥離層12によってSiC基板10から隔てられることになる。上述したとおり、剥離層12を形成する材料は、選択成長させたCNT20に実質的にダメージを与えない液体に可溶である。このため、CNT20が形成された後には、剥離層12を所定の液体で溶解することによって、CNT20に実質的にダメージに与えずに、耐熱層14を含むマスク層16を除去することができる。
こうして、第1実施形態の方法により、選択成長させた、実質的にダメージのないCNT20を、SiC基板10の厚み方向に有する本発明のナノカーボン基材30を得ることができる。
以下に、図2に示した方法によりナノカーボン基材30を製造した具体例を示す。まず、SiC基板10の表面に剥離層12および耐熱層14を形成して、図2Bに示したようにSiC基板10のナノカーボン形成領域10bを画定した。剥離層12としては、液相法によりZnO層(2.4μm厚)をSiC基板10のC面全体に形成した。耐熱層14としては、FIBにより剥離層12の所定の領域に所定の厚さのC層を形成した。このように剥離層12と耐熱層14とが設けられたSiC基板10の電子顕微鏡写真を、図3に示す。
図3に示すように、SiC基板10の全面を覆う剥離層12の所定の領域には、耐熱層14c1,14c2,14c3,14c4,14c6,14c9が設けられている。耐熱層14c1,14c2,14c3,14c4,14c6,14c9の厚さは、それぞれ、100nm、200mn、300nm、400nm、600nm、900nmである。図3において、剥離層12が露出している領域は、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bに相当する。剥離層12上に耐熱層14c1,14c2,14c3,14c4,14c6,14c9が設けられている領域は、SiC基板10のナノカーボン非形成領域10aに相当する。
このように剥離層12上に耐熱層14が形成されたSiC基板10を、10−2Pa以下、1600℃で1時間の熱処理に供して、図2Cに示したように、ナノカーボン形成領域10bにナノカーボンとしてのCNT20を形成した。熱処理後のSiC基板10の電子顕微鏡写真を図4に示す。
図4に示すように、熱処理後、ナノカーボン形成領域10bに剥離層12は存在せず、この領域にはCNT20が確認される。一部に損失があるものの、耐熱層14c1,14c2,14c3,14c4,14c6,14c9は、熱処理後にも残留しており、SiC基板10のナノカーボン非形成領域10aは熱処理から保護されたことが推測される。
CNT20が形成された後、3%のHCl溶液で3秒間処理して剥離層12としてのZnO層を溶解して耐熱層14c1,14c2,14c3,14c4,14c6,14c9を除去し、図2Dに示したようにSiC基板10のナノカーボン非形成領域10aの表面を露出した。図5には、こうして得られたナノカーボン基材30の電子顕微鏡写真を示す。耐熱層14c1,14c2,14c3,14c4,14c6,14c9で保護されていた領域は、それぞれナノカーボン非形成領域10a,10a,10a,10a,10a,10aとして図5に表れている。熱処理後に耐熱層が残留していれば、これらのナノカーボン非形成領域10a,10a,10a,10a,10a,10aにはSiCの存在が認められたことから、熱処理から保護されたことが確認された。
こうして形成されたCNT20のラマンスペクトルを、図6に曲線cとして示す。図6中、曲線cは、耐熱層14c1として100nm厚のC層を設けたナノカーボン非形成領域10aについて得られた結果であり、曲線cは、耐熱層14c3として300nm厚のC層を設けたナノカーボン非形成領域10aについて得られた結果である。曲線a,曲線bは参照として示したものである。具体的には、曲線aは、マスク層を形成せずに上述と同様の熱処理を施してSiC基板に形成されたCNTのラマンスペクトルであり、曲線bは、熱処理前のSiC基板のラマンスペクトルである。
曲線aにおいては、1590cm−1付近にCNTのGバンドのピークが確認され、1300cm−1付近にはCNTのDバンドのピークが確認される。この場合、GバンドとDバンドとのピーク強度比(G/D比)は、0.9程度である。一般的に、ラマンスペクトルにおけるG/D比が高いほど、CNT等のナノカーボンはダメージが少なく品質が高いことが知られている。G/D比が0.6以上であれば、実質的にダメージを有しないCNTであるということができる。
G/D比が0.5以下の場合には、CNTはダメージを有していることになる。例えば、Si膜をマスクとして用いてCNTをSiC基板に選択成長させた後、SiC基板上のSi膜をリン酸により除去し、SiC基板上のCNTについて得られるラマンスペクトルにおいては、G/D比が0.5以下となる。
曲線cにおいても、曲線aと同様、1590cm−1付近にCNTのGバンドのピークが確認され、1300cm−1付近にはCNTのDバンドのピークが確認されている。GバンドとDバンドとのピーク強度比(G/D比)は、0.9程度である。ラマンスペクトルにおけるG/D比が0.6以上であるので、ここで得られたCNT20は、実質的にダメージを有しないことがわかる。
熱処理前のSiC基板について示した曲線bには、1500〜1900cm−1付近にSiCピークが表れている。CNTのGバンドのピーク(1590cm−1付近)、およびCNTのDバンドのピーク(1300cm−1付近)は、曲線bには確認されない。
曲線c、曲線cにおいても、曲線bと同様、1500〜1900cm−1付近にSiCピークが表れており、CNTのGバンドのピーク(1590cm−1付近)、およびCNTのDバンドのピーク(1300cm−1付近)は確認されない。
曲線c、曲線cの形状は曲線bの形状と同様であることから、耐熱層14を設けることによりSiC基板10を熱処理から保護して、この領域におけるSiCの分解を回避できたことがわかる。上述したように耐熱層14としてC層が形成される場合には、C層の厚さが100nm以上であれば、その下のSiC基板10をほぼ確実に保護できることも確認された。
2.第2実施形態
上述したようなナノカーボン基材30は、第2実施形態に係る方法により製造することもできる。第2実施形態に係るナノカーボン基材30の製造方法について、図7を参照して説明する。
(製造方法)
第2実施形態に係るナノカーボン基材30の製造方法においては、まず、図7Aに示すように、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bの表面に犠牲層22を形成する。次いで、図7Bに示すように、犠牲層22およびSiC基板10の表面に、剥離層24および耐熱層26を順次形成する。その後、犠牲層22を除去することにより、図7Cに示すような剥離層24と耐熱層26との積層構造からなるマスク層28をナノカーボン非形成領域10aの上に得、このマスク層28によってSiC基板10のナノカーボン形成領域10bを画定する。さらに、マスク層28を有するSiC基板10を加熱して、図7Dに示すように、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bにナノカーボンとしてのCNT20を形成する。最後に、マスク層28をSiC基板10表面から除去してナノカーボン非形成領域10aを露出して、図7Eに示すような、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bにCNT20を選択成長させた本発明のナノカーボン基材30が得られる。
上述した第1実施形態においては、加熱によって、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bの表面の剥離層12を除去してナノカーボン形成領域10bを露出させていたが、第2実施形態においては、ナノカーボン形成領域10bの表面は、加熱の際にすでに露出している。この点が異なる以外は、第2実施形態に係るナノカーボン基材の製造方法は、基本的には、第1実施形態に係るナノカーボン基材の製造方法と同様である。
図7A〜図7Eに示す各工程について、以下に詳細に説明する。
まず、図7Aに示すように、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bの上に、犠牲層22を形成する。この犠牲層22は、ナノカーボン形成領域10bを画定するマスク層28を形成するために、後の工程で除去されるものである。こうした用途ゆえ、犠牲層22は、得られるマスク層28以上の厚さで形成される。例えば、犠牲層22は、5μm程度で形成することができる。犠牲層22としては、例えば、任意のレジスト材料を用いて、一般的な手法で形成されたレジストパターンを用いることができる。
次いで、図7Bに示すように、犠牲層22が形成されたSiC基板10の全面に、剥離層24と耐熱層26とを順次形成する。剥離層24および耐熱層26は、第1実施形態において説明したような材料を用いて、同様の厚さで形成することができる。ただし、第2実施形態においては、剥離層24および耐熱層26の形成は、犠牲層22がダメージを受けない温度で行われる。第2実施形態の製造方法においては、剥離層24、耐熱層26の形成温度は、第1実施形態の場合より低く、犠牲層22の材料に応じて適宜設定することができる。
第2実施形態においては、剥離層24、耐熱層26の形成には、イオンビームスパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを採用することができる。剥離層24としてZnO層を形成する場合には、第1実施形態と同様の液相法により堆積してもよい。
剥離層24および耐熱層26を順次形成した後、犠牲層22を、剥離層24および耐熱層26における当該犠牲層22上の部分とともに除去する。犠牲層22は、例えば有機溶剤により溶解して除去することができる。これによって、図7Cに示すように、剥離層24および耐熱層26の残置された部分からなるマスク層28が、SiC基板10のナノカーボン非形成領域10aの表面に形成される。このマスク層28によって、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bが画定される。
次いで、マスク層28が形成されたSiC基板10を加熱する。この際の条件は、第1実施形態の場合と同様とすることができる。加熱処理することによって、SiC基板10のSi除去領域10aにおいては、SiCが分解されてSiが除去される。図7Dに示すCNT20は、Siの除去が進行するにしたがって、SiC基板10の表面から内部に形成されるものである。
以降の工程においては、第1実施形態の場合と同様に剥離層12を溶解することにより、マスク層28をSiC基板10の表面から除去して、ナノカーボン非形成領域10aを露出する。こうして、図7Eに示すような、SiC基板10にCNT20を選択成長させた本発明のナノカーボン基材30を得ることができる。
(作用及び効果)
第2実施形態に係る方法においては、第1実施形態と同様、SiC基板10のナノカーボン非形成領域10aをマスク層28で保護し、加熱することによりSiC基板10のナノカーボン形成領域10bにCNT20を選択成長させる。第2実施形態におけるマスク層28は、第1実施形態と同様、剥離層24と耐熱層26との積層構造からなり、剥離層24、耐熱層26としては第1実施形態の場合と同様の材料が用いられることから、第1実施形態の場合と同様の効果が得られる。
第2実施形態に係る方法におけるマスク層28は、犠牲層22を用いて、SiC基板10の所定の領域に形成されるものである。犠牲層22が存在していることから、剥離層24および耐熱層26を含むマスク層28の形成は、一般的には低温で行われる。また、マスク層28においては、耐熱層26のみならず剥離層24もパターン化されている。このような第2実施形態に係る方法は、選択成長させるCNT20に不純物が付かない点で有利となる。
こうして、第2実施形態の方法により、選択成長させた、実質的にダメージのないCNT20を、SiC基板10の厚み方向に有する本発明のナノカーボン基材30を得ることができる。
3.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。第1実施形態においては、FIBを用いて剥離層12の所定の領域に耐熱層14を形成してSiC基板10のナノカーボン形成領域10bを画定したが、耐熱層14は、他の手法により形成してもよい。例えば抵抗加熱蒸着法などにより剥離層12の全面に耐熱層14を形成し、これをパターニングすることによって、SiC基板10のナノカーボン形成領域10bを画定することができる。
また、ZnOを用いて剥離層12を形成した場合、HCl溶液を用いて剥離層12を溶解してマスク層16を除去することを説明したが、剥離層12を形成する材料の種類に応じて、溶解除去に用いる液体を適宜選択すればよい。例えば、Gaを用いて形成された剥離層12は、HCl等の酸、NaOH等の塩基で溶解することができる。Y、ZrO、またはHfOを用いて形成された剥離層12は、HFで溶解することができる。
さらに、上記実施形態では、所定の領域をマスク層で保護したSiC基板を加熱して、SiC基板のC面側からSiを除去して、ナノカーボンとしてのCNTを選択成長させる場合について説明したが、SiC基板の(0001)表面(Si面)の所定の領域を同様のマスク層で保護した場合には、ナノカーボンとしてグラフェンを選択成長させることができる。
グラフェンを選択成長させる場合には、CNTを形成する場合より広い温度範囲で加熱することができる。具体的には、加熱温度は、1100〜1600℃、例えば1400℃とすることができる。また、グラフェンを選択成長させる際の圧力は、CNTの場合と同程度とすることができるが、大気圧下で加熱してもよい。グラフェンを選択成長させる場合には、10−6〜10Pa程度の圧力範囲が適用できる。
本発明の方法を用いることによって、選択成長させた、実質的にダメージのないグラフェンをSiC基板の厚み方向に有するナノカーボン基材を得ることもできる。
10 SiC基板
10a ナノカーボン非形成領域
10b ナノカーボン形成領域
12,24 剥離層
14,26 耐熱層
16,28 マスク層
20 CNT(ナノカーボン)
22 犠牲層
30 ナノカーボン基材

Claims (3)

  1. SiC基板上のナノカーボン形成領域内にナノカーボンが形成されたナノカーボン基材の製造方法であって、
    前記SiC基板の上に、順次積層された剥離層と耐熱層とを含み、少なくとも前記耐熱層によって、前記SiC基板の前記ナノカーボン形成領域を画定するマスク層を形成する工程と、
    前記マスク層が形成された前記SiC基板を加熱し、前記ナノカーボン形成領域からSiを除去することにより、前記ナノカーボン形成領域にナノカーボンを形成する工程と、
    前記マスク層を前記SiC基板の表面から除去する工程とを備え
    前記剥離層は、前記ナノカーボンに実質的にダメージを与えない液体に可溶の金属酸化物により形成され、前記金属酸化物は、ZnO、Ga 、Y 、ZrO 、およびHfO から選択され、
    前記耐熱層は、前記ナノカーボン形成領域にナノカーボンを形成する工程における前記加熱から、前記SiC基板を保護できる高融点材料により形成され、前記高融点材料は、C、W、Ta、Re、およびOsから選択される
    ことを特徴とするナノカーボン基材の製造方法。
  2. 前記マスク層は、
    前記SiC基板の表面全体に前記剥離層を形成し、
    前記ナノカーボン形成領域の上を除いて、前記剥離層の表面を前記耐熱層で覆う
    ことにより形成し、
    前記ナノカーボン形成領域上の前記剥離層は、前記加熱により除去される
    ことを特徴とする請求項1記載のナノカーボン基材の製造方法。
  3. 前記マスク層は、
    前記ナノカーボン形成領域の表面に犠牲層を形成し、
    前記犠牲層および前記SiC基板の表面に前記剥離層および前記耐熱層を順次形成し、
    前記犠牲層を、当該犠牲層上の前記剥離層および前記耐熱層とともに除去すること
    により形成することを特徴とする請求項1記載のナノカーボン基材の製造方法。
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