JP6509773B2 - コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法 - Google Patents

コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法 Download PDF

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Description

本発明は、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法に関する。
通常、コールタール中には、石炭系ガス軽油に不溶な成分(以下、「石炭系ガス軽油不溶分」または単に「不溶分」ということがある)が含まれている。この不溶分は、黒鉛化を妨げるなどの不具合があるため、不溶分を重力沈降分離法、遠心分離法などによって分離している(例えば、特許文献1参照)。重力沈降分離法は、多量のコールタールを処理することができる点で有利である。
粒子を含む混合液を重力沈降させた場合、横軸に時間、縦軸に沈降した粒子の界面高さをとった沈降曲線を描くと、その粒子の沈降曲線には、粒子が一定の速度で沈降する「定速沈降区間」と、粒子の沈降速度が徐々に減速していく「減速沈降区間」とが存在する。コールタール中の不溶分は、典型的には粒子状であるため、その沈降曲線には定速沈降区間と減速沈降区間とが存在する。このように、重力沈降分離法では、沈降初期は、不溶分が一定速度で沈降するため、ある経過時間におけるタンク底面からの不溶分の界面高さを求めることは可能だが、減速沈降区間も含む重力沈降分離全体において、経過時間と、その経過時間における不溶分の界面高さを求めることは困難である。
そして、重力沈降分離操作の時間が不足すると、不溶分が十分に沈降分離せず、清澄液(上澄み液)に不溶分が混入する。一方、重力沈降分離操作を必要以上に長期間にわたって実施すると、生産性の低下などの問題があった。そのため、重力沈降分離法では、沈降分離に要する時間を適切に把握する必要がある。
また、通常、重力沈降分離工程の後に、石炭系ガス軽油(溶剤)を蒸留により分離して、タールのみを取り出す工程が必要となる。コールタールの量に対する石炭系ガス軽油の量の比(溶剤比)が大きいほど不溶分の沈降は速く進むが、その後の溶剤を分離する工程でタールの歩留りが低下する。そのため、溶剤を分離する工程での処理能力と、重力沈降分離の所要時間との兼ね合いから、生産性が最大となるような溶剤比で操業を行う必要がある。さらに、重力沈降分離のために使用可能なタンクなどの設備の数が変化することや、溶剤を分離する工程の処理能力が変化することがあるため、最適な溶剤比が変動し得る。このような理由から、生産性を最大とするために、溶剤比を変更または調整する必要がある。
特開平10−204442号公報
重力沈降分離法は、上述したように多量のコールタールを分離するのに有利であるが、溶剤比をある値から別の値に変更すると、それに応じて沈降分離に要する時間や分離した不溶分の界面高さなどの重力沈降分離の結果が変わることがある。従来は、試行錯誤的に溶剤比を繰り返し調整することで重力沈降分離に要する時間を把握していた。しかし、重力沈降分離法では多量のコールタールを扱うために、多量のコールタールに対して、溶剤比を繰返し調整することは、効率が悪かった。
そこで、本発明は、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、2つの小規模試験と1つのより大規模な試験との3つの試験により、溶剤比を変更した場合の影響に関わるパラメータと、大規模化した場合の影響に関わるパラメータとをそれぞれ求めることにより、高い精度で容易に重力沈降分離の結果を推算できることを見出した。
すなわち、本発明は、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離試験の結果に基づく、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法であって、
前記重力沈降分離試験は、第1、第2および第3の重力沈降分離試験であり、
前記第1および第2の重力沈降分離試験は、コールタールの量が同じであり、
前記第3の重力沈降分離試験および前記重力沈降分離の結果を推算する対象は、コールタールの量が同じであり、
前記第3の重力沈降分離試験は、前記第1の重力沈降分離試験よりもコールタールの量が多く、
前記コールタールの量に対する石炭系ガス軽油の量の比(石炭系ガス軽油量/コールタール量)を溶剤比としたとき、
前記第1の重力沈降分離試験と前記第2の重力沈降分離試験は、溶剤比が異なり、
前記第1の重力沈降分離試験と前記第3の重力沈降分離試験は、溶剤比が同じであり、
前記第2の重力沈降分離試験と、前記重力沈降分離の結果を推算する対象は、溶剤比が同じであり、
前記第1および第2の重力沈降分離試験における以下の式(1)および式(2)と、
1=k・・・式(1)
2=[(h2/h1)−A]/B・・・式(2)
(式(1)中、V1は、定速沈降区間での沈降速度であり、kは、定速沈降区間での沈降速度の平均値であり;
式(2)中、V2は、減速沈降区間での沈降速度であり、h1は、前記コールタールと前記石炭系ガス軽油との混合液の初期界面高さであり、h2は、時間tにおける前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Aは、減速沈降区間における沈降速度0での前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Bは、減速沈降区間における単位界面高さの減少に要する時間でありかつ0ではない)
前記第3の重力沈降分離試験における以下の式(3)および式(4)と、
1=k×l・・・式(3)
2=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]・・・式(4)
(式(3)中、V1およびkは、式(1)と同じであり、lは、調整パラメータであり;式(4)中、h1、h2、AおよびBは、式(2)と同じであり、yは、溶剤比であり、CおよびDは、調整パラメータでありかつDは0ではない)
を用いる、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法である。
本発明に係るコールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法では、前記第1、第2、第3の重力沈降分離試験および前記重力沈降分離の結果を推算する対象の溶剤比が、1.0〜3.0であることが好ましい。これにより、重力沈降分離の結果をより高精度に推算することができる。
本発明によれば、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果を容易に推算することができる。
図1は、本発明に係る重力沈降分離結果に基づく、重力沈降分離結果の推算方法の概念を模式的に示した図である。 図2は、溶剤比1.6および溶剤比2.0の場合の小規模試験の一例における沈降曲線を示したグラフである。 図3は、溶剤比1.6および溶剤比2.0の場合の小規模試験の一例における沈降曲線を示したグラフである。 図4は、溶剤比1.6の場合の大規模試験の一例における沈降曲線を示したグラフである。 図5は、溶剤比1.6の場合の大規模試験の一例における沈降曲線を示したグラフである。 図6は、実施例における溶剤比2.0の場合の推算した沈降曲線と実績を示したグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
本発明において、「石炭系ガス軽油」は、JIS M 0104−1984に記載のガス軽油(石炭ガス中から回収した軽油分)を意味する。
本明細書では、第1の重力沈降分離試験、第2の重力沈降分離試験、第3の重力沈降分離試験を、それぞれ、単に「第1の試験」、「第2の試験」、「第3の試験」ということがある。
本明細書では、「不溶分の界面高さの比」は、「混合液の初期界面高さに対する不溶分の界面高さの比」を意味する。
本明細書では、「境界の界面高さ」は、「定速沈降区間と減速沈降区間の境界における不溶分の界面高さ」を意味する。
(コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法)
本発明は、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離試験の結果に基づく、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法であって、
前記重力沈降分離試験は、第1、第2および第3の重力沈降分離試験であり、
前記第1および第2の重力沈降分離試験は、コールタールの量が同じであり、
前記第3の重力沈降分離試験および前記重力沈降分離の結果を推算する対象は、コールタールの量が同じであり、
前記第3の重力沈降分離試験は、前記第1の重力沈降分離試験よりもコールタールの量が多く、
前記コールタールの量に対する石炭系ガス軽油の量の比(石炭系ガス軽油量/コールタール量)を溶剤比としたとき、
前記第1の重力沈降分離試験と前記第2の重力沈降分離試験は、溶剤比が異なり、
前記第1の重力沈降分離試験と前記第3の重力沈降分離試験は、溶剤比が同じであり、
前記第2の重力沈降分離試験と、前記重力沈降分離の結果を推算する対象は、溶剤比が同じであり、
前記第1および第2の重力沈降分離試験における以下の式(1)および式(2)と、
1=k・・・式(1)
2=[(h2/h1)−A]/B・・・式(2)
(式(1)中、V1は、定速沈降区間での沈降速度であり、kは、定速沈降区間での沈降速度の平均値であり;
式(2)中、V2は、減速沈降区間での沈降速度であり、h1は、前記コールタールと前記石炭系ガス軽油との混合液の初期界面高さであり、h2は、時間tにおける前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Aは、減速沈降区間における沈降速度0での前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Bは、減速沈降区間における単位界面高さの減少に要する時間でありかつ0ではない)
前記第3の重力沈降分離試験における以下の式(3)および式(4)と、
1=k×l・・・式(3)
2=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]・・・式(4)
(式(3)中、V1およびkは、式(1)と同じであり、lは、調整パラメータであり;式(4)中、h1、h2、AおよびBは、式(2)と同じであり、yは、溶剤比であり、CおよびDは、調整パラメータでありかつDは0ではない)
を用いる、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法である。これにより、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果を容易に推算することができる。
図1は、本発明に係る重力沈降分離結果に基づく、重力沈降分離結果の推算方法の概念を模式的に示した図である。上述したようにコールタール中の石炭系ガス軽油不溶分を重力沈降分離する場合、溶剤比をある溶剤比aから別の溶剤比bに変更する必要が生ずる。本発明の推算方法では、第1の試験として、溶剤比a、小規模コールタール量Vs1での試験を行う。また、第2の試験として、溶剤比b、小規模コールタール量Vs1での試験を行う(すなわち、第1の試験と第2の試験は、コールタール量が同じである)。また、第3の試験として、溶剤比a、大規模コールタール量VL1での試験を行う(すなわち、第1の試験と第3の試験は、溶剤比が同じである)。このように、第1の試験と第2の試験から、溶剤比を変更した場合の影響に関わるパラメータを求める。また、第1の試験と第3の試験から、コールタール量を変更(大規模化)した場合の影響に関わるパラメータを求める。そして、これらのパラメータを用いて、推算対象の溶剤比b、大規模コールタール量VL1の場合の沈降曲線の式を求め、その重力沈降分離結果を推算する。
図1を参照して説明したように、重力沈降分離試験は、第1、第2および第3の重力沈降分離試験である。コールタールの量について、第1および第2の試験は、コールタールの量が同じである。第3の試験および重力沈降分離の結果を推算する対象は、コールタールの量が同じである。第3の試験は、第1の試験よりもコールタールの量が多い。したがって、重力沈降分離の結果を推算する対象の重力沈降分離のコールタール量は、第2の試験のコールタール量よりも多い。
溶剤比について、第1の試験と第2の試験は、溶剤比が異なる。第1の試験と第3の試験は、溶剤比が同じである。第2の試験と、重力沈降分離の結果を推算する対象は、溶剤比が同じである。
本発明に係るコールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法では、第1、第2、第3の重力沈降分離試験および重力沈降分離の結果を推算する対象の溶剤比が、1.0〜3.0であることが好ましい。これにより、重力沈降分離の結果をより高精度に推算することができる。
以下の式(1)および(2)は、第1の試験と第2の試験に関する式であり、これらの2つの式から小規模試験における沈降速度を求めることができる。
1=k・・・式(1)
2=[(h2/h1)−A]/B・・・式(2)
(式(1)中、V1は、定速沈降区間での沈降速度であり、kは、定速沈降区間での沈降速度の平均値であり;
式(2)中、V2は、減速沈降区間での沈降速度であり、h1は、前記コールタールと前記石炭系ガス軽油との混合液の初期界面高さであり、h2は、時間tにおける前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Aは、減速沈降区間における沈降速度0での前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Bは、減速沈降区間における単位界面高さの減少に要する時間でありかつ0ではない)
小規模試験の定速沈降区間における沈降速度V1の求め方を例示説明する。以下の例では、視覚的に理解し易いようにグラフを用いて説明するが、グラフを描かずに、データの数値から沈降速度V1などを求めてもよい。
図2は、溶剤比1.6の場合の小規模試験の一例における沈降曲線(ひし形のプロット)を示したグラフである。図2のグラフでは、横軸に時間(沈降開始からの経過時間)、縦軸に不溶分の界面高さをとっている。第1の試験において、沈降開始からの経過時間とその時間における不溶分の界面高さを測定することによって、図2のグラフを描くことができる。沈降開始からの経過時間とその時間における不溶分の界面高さの測定結果から、または図2のグラフから、単位時間当たりの不溶分の沈降速度と、その沈降速度における不溶分の界面高さを求めることができる。
また、一例では、図2のグラフから、グラフの傾きが一定の区間、すなわち、定速沈降区間を求めることができる。例えば、図2の沈降曲線(ひし形のプロット)では、時間0分〜70分までが沈降速度が一定である。そして、定速沈降区間における沈降速度V1は、この定速沈降区間のグラフの傾きの平均値として求めることができる。
また、第1の試験の初期界面高さh1はその第1試験ごとに固有であり、時間に関わらない値であるから、不溶分の界面高さh2が求まれば、不溶分の界面高さの比h2/h1を求めることができる。加えて、境界の界面高さも求めることができる。
図3は、溶剤比1.6の場合の小規模試験の一例における沈降曲線(ひし形のプロット)を示したグラフである。図3のグラフでは、横軸に沈降速度、縦軸に不溶分の界面高さの比をとっている。この例の図3のプロットでは、沈降速度が大きく、一定であるプロット群と、沈降速度が小さく、幅広いプロット群とが存在する。そして、図2から求めた定速沈降区間の沈降速度は、図3の不溶分の界面高さの比0.6〜1.0の沈降速度(沈降速度が大きく、一定であるプロット群)の平均値と等しい。あるいは、図2のグラフから定速沈降区間の沈降速度V1=kを求める代わりに、この図3のグラフの沈降速度が大きく、一定であるプロット群における沈降速度の平均値を求め、定速沈降区間の沈降速度V1=kとしてもよい。
次に、小規模試験の減速沈降区間における沈降速度V2の求め方を例示説明する。
図3の減速沈降区間のグラフは横軸:沈降速度V2、縦軸:不溶分の界面高さの比h2/h1であるから、不溶分の界面高さの比が、沈降速度の1次関数であるということができる。したがって、式(2)をこの1次関数を表す以下の式(2’)に変形することができる。
2/h1=B×V2+A・・・式(2’)
この式(2’)から、図3の減速沈降区間のグラフは、切片A、傾きBの1次関数と表すことができる。この式(2’)と図3の減速沈降区間のグラフから、切片Aは、V2=0、すなわち沈降が終了して沈降速度が0となった時点の不溶分の界面高さとして求めることができる。また、傾きBは、グラフの減速沈降区間の傾きから求めることができる。グラフの減速沈降区間の傾きは、減速沈降区間のプロットから最小二乗法を用いて傾きを求めてもよいし、減速沈降区間の2以上のプロットの傾きの平均値として求めてもよい。このようにして求めたAおよびBから、減速沈降区間における沈降速度V2を式(2)のV2=[(h2/h1)−A]/Bとして求めることができる。
したがって、第1の試験から、第1の試験についての式(1)中のkと、式(2)中のAおよびBと、境界の界面高さとを求めることができる。
次に、第1の試験と同様に、第1の試験の溶剤比と異なる溶剤比の第2の試験を行う。そして、第2の試験に係る式(1)中のkと、式(2)中のAおよびBと、境界の界面高さとを求める。
次に、第3の試験を行う。上述したように、第3の試験は、その溶剤比が第1の試験の溶剤比と同じであり、そのコールタール量が第1の試験のコールタール量よりも多い。第3の試験では第1の試験とコールタール量が異なるため、以下の式(3)と(4)を用いる。
1=k×l・・・式(3)
2=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]・・・式(4)
(式(3)中、V1およびkは、式(1)と同じであり、lは、調整パラメータであり;式(4)中、h1、h2、AおよびBは、式(2)と同じであり、yは、溶剤比であり、CおよびDは、調整パラメータでありかつDは0ではない)
大規模試験の定速沈降区間における沈降速度V1の求め方を例示説明する。以下の例では、視覚的に理解し易いようにグラフを用いて説明するが、グラフを描かずに、データの数値から沈降速度V1などを求めてもよい。
図4は、溶剤比1.6の場合の大規模試験の一例における沈降曲線を示したグラフである。図4のグラフでは、時間(沈降開始からの経過時間)、縦軸に不溶分の界面高さをとっている。第3の試験から、図4のグラフを描くことができ、図4のグラフから、単位時間当たりの不溶分の沈降速度と、その沈降速度における不溶分の界面高さを求めることができる。一例では、図4のグラフから、グラフの傾きが一定の区間、すなわち、定速沈降区間を求めることができる。例えば、図4では、0時間〜44時間までが沈降速度が一定である。そして、大規模試験における定速沈降区間における沈降速度V1は、この定速沈降区間のグラフの傾きの平均値として求めることができる。
このようにして求めた式(3)中のV1と、第1の試験で求めたkとを、大規模化に伴う式(3)V1=k×lに代入することで調整パラメータlを求めることができる。
また、第3の試験でも第1の試験と同様に、不溶分の界面高さが求まれば、不溶分の界面高さの比を求めることができる。加えて、境界の界面高さも求めることができる。
図5は、溶剤比1.6の場合の大規模試験の一例における沈降曲線を示したグラフである。図5のグラフでは、横軸に沈降速度、縦軸に不溶分の界面高さの比をとっている。そして、図4から求めた定速沈降区間の沈降速度は、図5の不溶分の界面高さの比0.7〜1.0の沈降速度(沈降速度が大きく、一定であるプロット群)の平均値と等しい。あるいは、図4のグラフから定速沈降区間の沈降速度V1を求める代わりに、この図5のグラフの沈降速度が大きく、一定であるプロット群における沈降速度の平均値を求め、定速沈降区間の沈降速度V1としてもよい。
次に、大規模試験の減速沈降区間における沈降速度V2の求め方を例示説明する。
図5の減速沈降区間のグラフは横軸:沈降速度V2、縦軸:不溶分の界面高さの比h2/h1であるから、不溶分の界面高さの比が、沈降速度の1次関数であるということができる。したがって、式(4)をこの1次関数を表す以下の式(4’)に変形することができる。
2/h1=(D/y)×B×V2+(C/y)×A・・・式(4’)
この式(4’)から、図5の減速沈降区間のグラフは、切片(C/y)×A、傾き(D/y)×Bの1次関数と表すことができる。この式(4’)と図5の減速沈降区間のグラフから、切片(C/y)×Aは、V2=0、すなわち沈降が終了した時点の不溶分の界面高さとして求めることができる。また、傾き(D/y)×Bは、グラフの減速沈降区間の傾きから求めることができる。グラフの減速沈降区間の傾きの求め方は、小規模試験の減速沈降区間の傾きの求め方と同様である。ここで、第1の試験から、AおよびBを既に求めており、第3の試験の溶剤比yも既知である。したがって、(C/y)×Aに、これらyおよびAを代入することで大規模化に伴う式(4)中の調整パラメータCを求めることができる。同様に、(D/y)×Bに、yおよびBを代入することで大規模化に伴う式(4)中の調整パラメータDを求めることができる。
このようにして求めたCおよびDから、減速沈降区間における沈降速度V2を式(4)のV2=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]として求めることができる。
したがって、第3の試験から、第3の試験についての式(3)中のlと、式(4)中のCおよびDと、境界の界面高さとを求めることができる。
次に、推算対象の結果を推算する方法を例示説明する。
推算対象の沈降曲線は、第3の試験と同様に以下の式(3)および(4)によって表すことができる。
1=k×l・・・式(3)
2=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]・・・式(4)
ここで、第1の試験および第3の試験から、溶剤比に関わらない大規模化に伴う調整パラメータl、CおよびDを既に求めている。また、推算対象と第3の試験ではコールタール量が同じであるから、初期界面高さh1も既知である。また、推算対象と同じ溶剤比の第2の試験からy、k、AおよびBならびに境界の界面高さを既に求めている。この境界の界面高さは、式(3)と式(4)のグラフの交点であるから、k×l=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]より、h2が求められる。
したがって、推算対象の沈降曲線のグラフは、図3のように、横軸:沈降速度、縦軸:不溶分の界面高さの比h2/h1とすると、初期界面高さh1から境界の界面高さまでの定速沈降区間において、式(3)の沈降速度V1で沈降し、その後、境界の界面高さから切片までの減速沈降区間において、式(4)の沈降速度V2で沈降するグラフとなる。
図2のグラフから図3のグラフを得たのとは逆に、横軸:沈降速度、縦軸:不溶分の界面高さの比のグラフから、横軸:時間、縦軸:不溶分の界面高さのグラフを得ることもできる。このグラフからは、例えば、ある時間tと、その時間tにおける不溶分の界面高さh2を容易に求めることができ、あるいは、ある不溶分の界面高さh2と、その不溶分の界面高さとなるまでの時間tを容易に求めることができる。
以上説明したように、第1および第2の試験における式(1)および式(2)と、第3の試験における式(3)および式(4)とを用いることにより、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果を容易に推算することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例で使用した材料および設備は以下のとおりである。
・コールタール:不溶分5.4重量%含有。
・石炭系ガス軽油:ベンゼンおよびトルエンを計92.75重量%含有、その他キシレンなど7.25重量%含有。
・第1および第2の試験の容器:容量500mL、半径約2.5cmのガラス製メスシリンダー
・第3の試験の容器:容量2680kL(タンク内の液量は2213kL)、半径10.65mの鉄製タンク
(第1の試験)
ガラス製メスシリンダー中のコールタール192mLに対し、石炭系ガス軽油308mLを添加して混合し、溶剤比1.6の混合液500mLを調製し、静置して重力沈降分離試験を行った。初期界面高さは、25.0cmだった。静置開始直後から不溶分が重力沈降分離し始めた。第1の試験における経過時間tと不溶分の界面高さh2とを測定した。その結果をプロット(ひし形のプロット)し、グラフ化したものが図2である。第1の試験は、不溶分の界面高さを測定しながら、不溶分の重力沈降分離が完了したと考えられる480分まで行った。
図2の第1の試験のグラフから、沈降速度が一定である定速沈降区間の沈降速度V1=0.074を求めた。この結果と式(1)からk=0.074を求めた。また、境界の界面高さは13.5cm、境界における不溶分の界面高さの比は0.54と求めた。第1の試験終了(V2=0)時の不溶分の界面高さh2と、不溶分の界面高さの比h2/h1は、それぞれ、8.35cm、0.334であった。
図3は、図2から求めた沈降速度を横軸にとり、不溶分の界面高さの比を縦軸にとったときの沈降曲線(ひし形のプロット)を示したグラフである。このグラフの減速沈降区間における式(2’)の傾きBを2.78と求めた。また、式(2’)の切片AはV2=0の不溶分の界面高さの比0.334となる。したがって、式(2)の沈降速度V2は、V2=[(h2/0.250)−0.334]/2.78となる。
(第2の試験)
溶剤比2.0の混合液500mLを調製したこと以外は、第1の試験と同様に重力沈降分離試験を行った。第2の試験における経過時間tと不溶分の界面高さh2とを測定した。その結果をプロット(正方形のプロット)し、グラフ化したものが図2である。
図2の第2の試験のグラフから、沈降速度が一定である定速沈降区間の沈降速度V1=0.101と求めた。この結果と式(1)からk=0.101を求めた。また、境界の界面高さは15.5cm、境界における不溶分の界面高さの比は0.62と求めた。第2の試験終了(V2=0)時の不溶分の界面高さh2と、不溶分の界面高さの比h2/h1は、それぞれ、8.38cm、0.335であった。
第1および第2の試験の溶剤比と、その溶剤比におけるk、AおよびBをまとめた結果を以下の表1に示す。
Figure 0006509773
図3は、図2から求めた沈降速度を横軸にとり、不溶分の界面高さの比を縦軸にとったときの沈降曲線(正方形のプロット)を示したグラフである。このグラフの減速沈降区間における式(2’)の傾きBを2.78と求めた。また、式(2’)の切片AはV2=0の不溶分の界面高さの比0.335となる。したがって、式(2)の沈降速度V2は、V2=[(h2/0.250)−0.335]/2.78となる。
(第3の試験)
鉄製タンク中のコールタール851kLに対し、石炭系ガス軽油1362kLを添加して混合し、溶剤比1.6の混合液2213kLを調製し、静置して重力沈降分離試験を行った。初期界面高さh1は、6.21mだった。静置開始直後から不溶分が重力沈降分離し始めた。第3の試験における経過時間tと不溶分の界面高さh2とを測定した。その結果をプロット(ひし形のプロット)し、グラフ化したものが図4である。第3の試験は、不溶分の界面高さを測定しながら、不溶分の重力沈降分離が完了したと考えられる240時間まで行った。
図4の第3の試験のグラフから、沈降速度が一定である定速沈降区間の沈降速度V1=0.052と求めた。この結果と、第1の試験のk=0.074と、式(3)からl=0.70を求めた。また、境界の界面高さは3.35m、境界における不溶分の界面高さの比は0.54と求めた。第3の試験終了(V2=0)時の不溶分の界面高さh2と、不溶分の界面高さの比h2/h1は、それぞれ、1.13m、0.1817であった。
図5は、図4から求めた沈降速度を横軸にとり、不溶分の界面高さの比を縦軸にとったときの沈降曲線(ひし形のプロット)を示したグラフである。このグラフの減速沈降区間における式(4’)の傾きを17.3と求めた。また、式(4’)の切片はV2=0の不溶分の界面高さの比であるから、0.1817となる。したがって、第1の試験と式(4’)から、h2/h1=(D/1.6)×2.78×V2+(C/1.6)×0.334であるので、(C/1.6)×0.334=0.1817、(D/1.6)×2.78=17.3であり、これらから、C=0.87、D=10.0と求めた。
第3の試験の溶剤比と、その溶剤比におけるl、CおよびDをまとめた結果を以下の表2に示す。
Figure 0006509773
これら第1〜第3の試験の結果から、溶剤比2.0、混合液量2213kLの推算対象は、境界の界面高さ3.35mまで式(3)に従い、V1=0.101×0.70=0.07(m/時)で沈降し、そこから式(4)に従い、V2=[(h2/6.21)−(0.87/2.0)×0.335]/[(10.0/2.0)×2.78]=(h2/86.3)−0.01(m/時)で沈降すると推算した。この推算結果から横軸:時間、縦軸:不溶分の界面高さとして沈降曲線のグラフ(実線)を描いた。そのグラフを図6に示す。
(推算結果の検証)
推算対象について、鉄製タンク中のコールタール738kLに対し、石炭系ガス軽油1475kLを添加して混合し、溶剤比2.0の混合液2213kLを調製し、静置して240時間まで重力沈降分離操作を行った。その経過時間と不溶分の界面高さとを測定した。その結果をプロット(正方形のプロット)したものを、推算した沈降曲線と合わせて図6に示す。図6に示すように、推算した沈降曲線と、実際の鉄製タンクでの重力沈降分離の結果が高精度で一致している。
本発明によれば、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果を容易に推算することができる。

Claims (2)

  1. コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離試験の結果に基づく、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法であって、
    前記重力沈降分離試験は、第1、第2および第3の重力沈降分離試験であり、
    前記第1および第2の重力沈降分離試験は、コールタールの量が同じであり、
    前記第3の重力沈降分離試験および前記重力沈降分離の結果を推算する対象は、コールタールの量が同じであり、
    前記第3の重力沈降分離試験は、前記第1の重力沈降分離試験よりもコールタールの量が多く、
    前記コールタールの量に対する石炭系ガス軽油の量の比(石炭系ガス軽油量/コールタール量)を溶剤比としたとき、
    前記第1の重力沈降分離試験と前記第2の重力沈降分離試験は、溶剤比が異なり、
    前記第1の重力沈降分離試験と前記第3の重力沈降分離試験は、溶剤比が同じであり、
    前記第2の重力沈降分離試験と、前記重力沈降分離の結果を推算する対象は、溶剤比が同じであり、
    前記第1および第2の重力沈降分離試験における以下の式(1)および式(2)と、
    1=k・・・式(1)
    2=[(h2/h1)−A]/B・・・式(2)
    (式(1)中、V1は、定速沈降区間での沈降速度であり、kは、定速沈降区間での沈降速度の平均値であり;
    式(2)中、V2は、減速沈降区間での沈降速度であり、h1は、前記コールタールと前記石炭系ガス軽油との混合液の初期界面高さであり、h2は、時間tにおける前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Aは、減速沈降区間における沈降速度0での前記石炭系ガス軽油不溶分の界面高さであり、Bは、減速沈降区間における単位界面高さの減少に要する時間でありかつ0ではない)
    前記第3の重力沈降分離試験における以下の式(3)および式(4)と、
    1=k×l・・・式(3)
    2=[(h2/h1)−(C/y)×A]/[(D/y)×B]・・・式(4)
    (式(3)中、V1およびkは、式(1)と同じであり、lは、調整パラメータであり;式(4)中、h1、h2、AおよびBは、式(2)と同じであり、yは、溶剤比であり、CおよびDは、調整パラメータでありかつDは0ではない)
    を用いる、コールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法。
  2. 前記第1、第2、第3の重力沈降分離試験および前記重力沈降分離の結果を推算する対象の溶剤比が、1.0〜3.0である、請求項1に記載のコールタール中の石炭系ガス軽油不溶分の重力沈降分離の結果の推算方法。
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