JP6511751B2 - ラックシャフトおよびラックシャフトの製造方法 - Google Patents

ラックシャフトおよびラックシャフトの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ラックシャフトおよびラックシャフトの製造方法に関する。
ステアリング装置において、ステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達される回転運動は、ピニオンシャフトに設けられたピニオン歯と、ラックシャフトに設けられたラック歯とが噛み合うことによりラックシャフトの直線運動に変換される。ラックシャフトに連動して、転舵輪の転舵角が変化する。たとえば特許文献1に記載されるように、ラックシャフトには、鋼などの中実棒材を鍛造することによってラック歯を成形する。
特開昭58−218339号
ラックシャフトを鍛造する際には、上型と下型の間の空間に中実棒材を挟み込む。この際に、型と型の合わせ目から中実棒材がはみ出すことによって、中実棒材の上下の金型の合わせ目に余肉が発生する。ラックシャフトに成形される余肉は、ラックシャフトを使用する上で邪魔になるため、トリミング工程で切刃により除去される。ラックの生産性向上に対する要求があるところ、このトリミング工程はラックシャフトの製造工数の低減を妨げる一因となっていた。
本発明の目的は、製造工数を減らすことのできるラックシャフトの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成しうるラックシャフトは、軸方向に沿った一定範囲にわたってラック歯が型鍛造されてなるラックシャフトにおいて、前記ラック歯が形成されている部分を前記軸方向に直交する平面で切断した断面の輪郭形状は、次のものにより形成されている。すなわち、中心角が平角よりも小さい角度に設定されている円弧部と、前記円弧部に対してその中心を間に挟む反対側に設けられて前記軸方向に交わる方向へ延びる前記ラック歯と、前記円弧部と前記ラック歯との両端間をそれぞれ接続する接続部と、により閉じた線形状をなしている。前記接続部は、前記円弧部を含む仮想円の径方向における外側へ凸となる抜き勾配部を含み、当該抜き勾配部の頂点は前記仮想円の内側に位置している。
この構成によれば、接続部は仮想円の径方向内側に形成されているため、接続部において型鍛造による余肉が形成される場合には、余肉が仮想円の外側にはみ出して形成されることを抑制することができる。余肉が仮想円の内側に形成される場合は、余肉を切削して除去する工程を必要としないため、製造工程をより少なくすることができる。
前記接続部は、前記円弧部と前記ラック歯とを結ぶ直線より外側に位置していることが好ましい。
この構成によれば、抜き方向に対して傾斜して接続部が設けられているので、型鍛造したラックシャフトが金型からより抜けやすくなる。
前記抜き勾配部はテーパ面を含み、前記テーパ面は型の抜き方向に向かうにつれて前記円弧部の中心を含み、かつ前記ラック歯に交わる平面に近接するように傾斜していることが好ましい。
前記抜き勾配部は曲面を含み、前記曲面は前記仮想円の径方向における外側へ凸となる曲率を有していてもよい。
これらの構成によれば、テーパ面または曲面が設けられているため、テーパ面または曲面を設けない場合と比べて抜き抵抗を低減することができる。そのため、型鍛造したラックシャフトを金型からより抜けやすくすることができる。
前記テーパ面は、前記ラック歯側の第1のテーパ面と、前記円弧部側の第2のテーパ面とを含むことが好ましい。前記抜き勾配部の頂点は、前記第1のテーパ面と前記第2のテーパ面とが交わる部分である。
この構成によれば、テーパ面が少なくとも2つ設けられているため、たとえば上型と下型にそれぞれテーパ面を設けることができる。そのため、型鍛造したラックシャフトを上型と下型から抜く際の抜き抵抗をそれぞれ低減することができるため、より確実にラックシャフトを金型から取り外すことができる。
前記第1のテーパ面は前記第2のテーパ面よりも、前記円弧部の中心を含み、かつ前記ラック歯に交わる平面に対する傾きが大きく設定されていることが好ましい。
この構成によれば、たとえば上型にラック歯が形成されている場合には、下型に比べて抜き抵抗が大きくなり易いが、上型側のテーパ面の傾きを大きく設定することにより、上型側の抜き抵抗を低減することができる。
前記抜き勾配部の頂点に余肉が形成され、前記余肉は前記仮想円の内側に位置している。
余肉はたとえば接続部における上型と下型の境界部に形成される。接続部は仮想円よりも径方向内側に形成されているため、余肉が形成された場合にも、余肉が仮想円の径方向外側にまではみ出すことを軽減することができる。さらに、接続部と仮想円との間に十分な間隔を空けるように設定すれば、余肉が形成されても余肉は仮想円よりも内側に形成される。この場合、余肉を切削しなくても、ラックシャフトを使用することが可能である。
ラック歯を有するラックシャフトの鍛造方法において、前記ラック歯に対応する歯型列が設けられた第1の成形面を有する第1の金型と、前記第1の成形面に対向する第2の成形面を有する第2の金型との間に棒状素材を配置した状態で、前記第1の金型と前記第2の金型とを互いに近接させる。前記棒状素材を前記第1の成形面と前記第2の成形面とで圧縮変形させることにより、前記棒状素材に前記歯型列に対応するラック歯を成形する成形工程を含んでいる。前記第1の成形面は、前記棒状素材の周方向における前記ラック歯の両隣りにそれぞれ第1のテーパ面を形成するための第1のテーパ面成形部を有し、前記第2の成形面は、前記ラック歯の両隣りの第1のテーパ面にそれぞれ交わる第2のテーパ面を形成するための第2のテーパ面成形部を有している。前記第1のテーパ面成形部および前記第2のテーパ面成形部は、それぞれ金型の抜き方向へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜する2つの斜面を有している。第1のテーパ面成形部の斜面と、第2のテーパ面成形部の斜面とは、第1の金型と第2の金型とを閉じたときのそれらの境界で交わるとともに、当該交わる部分は、第1および第2の成形面により規定されるラックシャフトの輪郭形状における円弧部を含む仮想円の内側に位置している。
この構成によれば、ラック歯を有するラックシャフトは第1の金型と第2の金型に挟まれることにより圧縮変形される成形工程を経て成形される。第1の金型と第2の金型はそれぞれ第1のテーパ面成形部と第2のテーパ面成形部を有しているため、成形工程によってラックシャフトには第1のテーパ面と第2のテーパ面が形成される。第1のテーパ面と第2のテーパ面の境界において形成される余肉は仮想円よりも径方向内側に形成される。そのため、余肉除去工程を削減することができる。
本発明によれば、ラックシャフトの製造工数を減らすことができる。
一実施の形態におけるステアリング装置の構成を示す概略図。 一実施の形態におけるラックシャフトの正面図。 (a)図2の3−3線に沿って切断したラックシャフトの断面図。(b)曲面のテーパ面の断面図。 一実施形態におけるラックシャフトの製造工程における、括れ工程を行ったブランクの側面図。 一実施形態におけるラックシャフトの製造工程における、鍛造工程でのラックシャフトおよび金型の断面構造を示す断面図。
以下、ラックシャフトを車両のステアリング装置に適用した一実施形態について説明する。
図1に示すように、ステアリング装置1は、ステアリングホイール10およびステアリングホイール10と一体回転するステアリングシャフト11を備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト12と、コラムシャフト12の下端部に連結されたインターミディエイトシャフト13、およびインターミディエイトシャフト13の下端部に連結されたピニオンシャフト14を有している。ピニオンシャフト14(正確にはそのピニオン歯14a)は、ピニオンシャフト14に交わる方向へ延びるラックシャフト15(正確にはそのラック歯15a)に噛合っている。したがって、ステアリングシャフト11の回転運動は、ピニオンシャフト14およびラックシャフト15からなるラックアンドピニオン機構16を介してラックシャフト15の軸方向の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラックシャフト15の両端にそれぞれ連結されたタイロッド17を介して左右の転舵輪18にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪18の転舵角が変化する。
次に、ラックシャフト15の構成について説明する。
図2に示すように、ラックシャフト15は、たとえば炭素鋼により中実の略円柱形状の丸棒に形成されている。ラックシャフト15の周面にはラック歯部20が形成されている。ラック歯部20は、ラックシャフト15の軸方向における一定範囲にわたって設けられている。ラック歯部20には、複数のラック歯15aが軸m方向に並んで形成されている。
図3(a)に示すように、ラックシャフト15を軸m方向から見たとき、ラックシャフト15におけるラック歯部20の軸mを間に挟む反対側の部位には円弧部21が設けられている。円弧部21は、ラックシャフト15の軸m方向におけるラック歯部20の形成範囲Rの全域に亘って、設けられている。また、ラックシャフト15のラック歯部20の設けられていない領域を軸mに直交する平面で切断した断面形状は円形である。ラックシャフト15を軸方向からみたとき、円弧部21の輪郭線は、ラック歯部20の断面形状の輪郭線に一致する。図3(a)中に二点鎖線で示されるように、円弧部21は、ラックシャフト15を保持する受け部材26の形状と対応している。円弧部21の中心角θは、受け部材の形状に対応して決定される。中心角θは、大きくても180度に設定され、一例としては140度程度に設定される。
ラックシャフト15の円周方向において、円弧部21の両端とラック歯部20の間には、それぞれ第1テーパ面22、第2テーパ面23、余肉24が設けられている。第1テーパ面22は、ラック歯部20と曲面を介して連続している。第1テーパ面22は、ラックシャフト15の円周方向において、ラック歯部20から遠ざかるほど径方向における外側へ傾斜している。また、第2テーパ面23はラックシャフト15の円周方向において、円弧部21と第1テーパ面22との間を連結している。第2テーパ面23は、ラックシャフト15の円周方向において、円弧部21から遠ざかるほど径方向外側へ傾斜している。すなわち、第1テーパ面22と第2テーパ面23は径方向に膨らむような勾配を有する。ラック歯部20の端部と円弧部21の端部を結ぶ直線Lよりも外側に第1テーパ面22と第2テーパ面23は形成されている。第1テーパ面22は第2テーパ面23よりも傾いた勾配に設定されている。すなわち、軸mを通り、図3(a)の上下方向(後述の金型40を上下に抜く方向)へ延びる仮想平面Pを基準として、当該仮想平面Pと第1テーパ面22とのなす角度は、当該仮想平面Pと第2テーパ面23とのなす角度より大きな角度に設定される。
余肉24は、第1テーパ面22と第2テーパ面23との境界に形成されている。ラックシャフト15の軸方向から見たとき、余肉24は、ラックシャフト15の半径方向における外側へ向けてごくわずかに突出している。また余肉24は、ラックシャフト15のラック歯部20の設けられている領域に対応して、軸mに沿って延びている。ラックシャフト15の軸m方向から見たとき、第1テーパ面22、第2テーパ面23、および余肉24は、それぞれ前記領域(円柱部分)の輪郭線25より内側に存在している。
次に、ラックシャフト15の製造方法について説明する。
ラックシャフト15の製造の工程は、括れ工程、成形工程(鍛造)、制御冷却、歪取り工程を有する。
ラックシャフト15の製造にあたっては、まず括れ工程がなされる。この括れ工程がなされるのは、ラックシャフト15のラック歯部20が設けられる部分についてである。
図4に示すように、括れ工程では、外径D4を有する丸棒素材を、たとえば旋削することにより外径の異なる複数の部分を有するブランク30を形成する。ブランク30において、ラック歯部20の形成範囲Rの中央付近には第1括れ部31が設けられている。また、ブランク30において、第1括れ部31を基準とする図中左側の部分には、第1拡径部32、第2括れ部33、第2拡径部34、第1軸部35がこの順で設けられている。また、ブランク30において、第1括れ部31を基準とする図中右側の部分には、第3拡径部36、第3括れ部37、第4拡径部38、第2軸部39がこの順で設けられている。第1括れ部31は、ブランク30の中で最も外径が小さく設定されており、その外径は外径D1である。
第1括れ部31は第1拡径部32を介して、第2括れ部33に接続されている。第2括れ部33の外径D2は第1括れ部31の外径D1よりも大きい。第1拡径部32は軸m方向左側に向かうにつれて外径D1から外径D2へ拡径している。第2括れ部33は第2拡径部34を介して、第1軸部35に接続されている。第1軸部35の外径D4は第2括れ部33の外径D2よりも大きい。第2拡径部34は軸m方向左側に向かうにつれて、外径D2から外径D4へ拡径している。
また、第1括れ部31は第3拡径部36を介して、第3括れ部37に接続されている。第3括れ部37の外径D3は第1括れ部31の外径D1よりも大きい。第3拡径部36は外径D1から外径D3へ拡径している。第3括れ部37は、第4拡径部38を介して、第2軸部39に接続されている。第4拡径部38は、外径D3から外径D4へ拡径している。
なお、第1軸部35と第2軸部39はそれぞれラック歯部20の形成範囲Rから外れる部分であって、旋削などが行われない部分である。また、外径D2および外径D3は設計上の要求に応じて適宜に設定される。また、第1〜第4拡径部32,34,36,38の勾配についても同様である。設計上の要求に応じてそれぞれ適宜の勾配に設定されている。本例では、外径D2は外径D3より小さく設定されている。
ところで、従来、ピーリングと呼ばれる表面加工がなされた後の丸棒などの素材をブランクとして温間鍛造が施されることがある。素材の表面のキズや表面欠陥などを除去するためである。この点、本例では、ピーリングなどの表面加工の代わりに括れ工程をすればよい。
次に、成形工程がなされる。成形工程では、鍛造によってブランク30を塑性変形させて、図2に示すようなラックシャフト15を形成する。
図4に示すように、本実施形態では、金型40による温間鍛造を行う。金型40は上型41と下型42を有する、いわゆる開放型である。たとえば、上型41および下型42はそれぞれ直方体状に形成され、それらの間にブランク30を挟みこんで加圧することにより、ブランク30を塑性変形させる。
上型41の下面(下型42に対向する面)には、ラックシャフト15の外形径状に対応したくぼみが設けられている。上型41のくぼみには、ラック歯成形部43および第1テーパ面成形部44が設けられている。ラック歯成形部43は、ラックシャフト15の軸m方向に並んだ複数のラック歯15aに対応して反転した形状の歯形を有している。第1テーパ面成形部44は、ラックシャフト15の2つの第1テーパ面22に対応する2つの斜面を有している。第1テーパ面成形部44の2つの斜面は、輪郭線25よりも内側に位置するように設けられている。第1テーパ面成形部44の2つの斜面は、くぼみの開口へ向かうにつれて、互いに離間する方向へ傾斜している。第1テーパ面成形部44は、上型41からラックシャフト15を抜く際の抜き勾配として働く。下型42も上型41と同様に、下型42の上面(上型41に対向する面)には、ラックシャフト15に対応した略円弧状のくぼみが設けられている。下型42のくぼみには、円弧部成形部45および第2テーパ面成形部46が設けられている。円弧部成形部45は、円弧部21に対応した、中心角θの円弧面を有している。第2テーパ面成形部46は、ラックシャフト15の2つの第2テーパ面23に対応する2つの斜面を有している。第1テーパ面成形部44の2つの斜面も、輪郭線25よりも内側に位置するように設けられている。第1テーパ面成形部44の2つの斜面は、くぼみの開口へ向かうにつれて互いに離間する方向へ傾斜している。第2テーパ面成形部46は、下型42からラックシャフト15を抜く際の抜き勾配として働く。
ところで、抜き抵抗が大きいと、成形品であるラックシャフト15は安定した状態で離型できないため、離型の際に傷や変形、場合によっては金型40から外れないこともある。ラックシャフト15が金型40に密着して金型40の内部に残存しようとする力よりも大きな力でラックシャフト15を金型40から外さなければ、ラックシャフト15は金型40から外れない。ラックシャフト15が金型40の内部に残存しようとする力は、抜き抵抗、表面の粗さなどの要因が関係する。たとえば温間鍛造であれば、高温で金型40の内部に挟み込まれるラックシャフト15は、冷却および固化の際に熱収縮するため、特にラック歯15aはラック歯成形部43を強く締め付ける。その一方、金型40の取り外しの際に加圧は終了するため、ラックシャフト15はわずかに膨張する。その結果、金型40とラックシャフト15とが接触する面は、滑らかに形成されていても、ラックシャフト15の各部材の熱収縮および熱膨張が関連しあって、ラックシャフト15は金型40から抜き難くなる。このため、ラックシャフト15を金型40から抜く離型に際して、ラックシャフト15の傷や変形を伴わないで金型40から取り外すために抜き勾配を設ける必要がある。抜き勾配は、材料の収縮率などの材料特性や、成形品や金型の形状、成形条件などを考慮して決定される。
上型41にはラック歯成形部43があるのに比べて、下型42には、円弧部成形部45が設けられているだけである。このため、下型42とブランク30との接触面積に比べて、上型41とブランク30との接触面積は大きい。接触面積が大きいほど、抜き抵抗は大きくなるため、下型42を抜くのに比べて上型41を抜くのは容易でない。このため、下型42にも増して、上型41の抜き抵抗は低減されることが好ましい。そのため、下型42の第2テーパ面成形部46の勾配に比べて、上型41の第1テーパ面成形部44の勾配は大きく設定されている。これに対応して、ラックシャフト15の第2テーパ面23の勾配よりも第1テーパ面22の勾配は大きくなる。なお、ラック歯15aはラックシャフト15に比べて小さく、その抜き抵抗も小さいことが想定されるが、ラック歯成形部43の歯形にも抜き勾配が設けられていることが好ましい。また、抜き勾配は、ラックシャフト15を抜きやすくするためだけでなく、ラックシャフト15と当接する上型41および下型42のくぼみの表面の磨耗も抑制する効果がある。
このように構成されている上型41と下型42とを使用して、ブランク30の鍛造が行われる。この鍛造を行うに際しては、まず、ブランク30を、その材質に応じて設定される温間鍛造に適した温度まで加熱する。そして、上型41を開いた状態で、この加熱されたブランク30を下型42の円弧部成形部45に配置する。
続いて、上型41を下型42へ向けて移動させる。これに伴い、ラック歯成形部43がブランク30の上部(下型42のくぼみから露出する部分)へと近接し、やがてラック歯成形部43は、第1括れ部31および第2括れ部33よりも径の大きい、第3括れ部37に当接する。
この状態で加圧装置により上型41を下型42にさらに近接させて加圧する。すると、まず径の大きい第3括れ部37がラック歯成形部43によって、塑性変形され始める。当該塑性変形に伴い、ラック歯15aが成形されてくると、ブランク30の第3括れ部37に対応した部分の断面積は減ってくる。上型41が下型42に近接するにつれて第3括れ部37の断面積が徐々に小さくなり、やがてラック歯成形部43は第2括れ部33に当接する。さらなる加圧に伴い、ラック歯成形部43により第2括れ部33にラック歯15aが成形されるにつれて、ブランク30の第2括れ部33に対応した部分の断面積が減ってくる。
ここで、第3括れ部37および第2括れ部33にラック歯15aが成形される際、ラック歯成形部43により押しのけられる材料は軸m方向に移動する。具体的には、第3括れ部37において押しのけられる材料は図3(a)左方の第1括れ部31へ向けて、第2括れ部33において押しのけられる材料は図3(a)右方の第1括れ部31へ向けてそれぞれ流れ込む。
この後、さらに加圧されて上型41が閉じるタイミングで、第3括れ部37および第2括れ部33にラック歯15aが形成される。
なお、上型41と下型42に挟まれる部分であるブランク30における第2拡径部34から第4拡径部38までの間の部分の体積は、上型41が閉じた状態(上型41と下型42とが互いに接した状態)で上型41と下型42の間にできる空間(くぼみ)の体積よりも、わずかに大きく設定される。そのため、上型41と下型42を十分に加圧することで、ブランク30における体積の大きい軸部から、体積の小さい軸部へと材料が流れ込むことにより、体積の小さい部分の材料が足りなくなることが抑制される。そのため、ラック歯15aをより確実に形成することができる。また、上型41が閉じるタイミングで、上型41と下型42との間のくぼみがブランク30の塑性変形により満たされることにより、円弧部21、第1テーパ面22、および第2テーパ面23がそれぞれ成形される。
ところで、ブランク30における上型41と下型42に挟まれる部分の体積は、上型41と下型42の間にできる空間の体積よりもわずかに大きいため、十分に加圧されると、ブランク30の材料はわずかに余る。このブランク30の材料の余りが、上型41と下型42との境界部分に進入することにより、余肉24が形成される。ブランク30の材料の余りはわずかになるように設定されるため、余肉24はわずかにしか成形されない。さらに、余肉24が成形されうる第1テーパ面22と第2テーパ面23が交わる部分は、輪郭線25よりも内側に形成されるため、余肉24が形成されたとしても輪郭線25から外側へはみ出すことが抑制される。
次に、制御冷却が行われる。成形工程における温間鍛造によって、ラックシャフト15は熱されている。このため、たとえば成形工程後のラックシャフト15に冷却水を供給することにより、ラックシャフト15を冷却して温度を下げる。
次に、歪取りがなされる。歪取りには機械的な方法や熱処理的な方法があり、いずれの方法を採用してもよい。歪取りを行うことにより、鍛造により成形されたラックシャフト15の強度を高めることができる。また、ラックシャフト15内の内部応力を除去することもできる。以上でラックシャフト15の製造が完了となる。
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)従来のラックシャフトの製造方法によれば、温間鍛造などの成形工程、余肉を除去するトリム工程、制御冷却、切削や研磨による余肉除去工程、および歪取り工程の5工程が必要であった。本実施形態では、鍛造により形成される余肉24は、ラックシャフト15を軸方向から見たときの輪郭線25の範囲内に存在する。このため、ラックシャフト15を使用する際に余肉24が邪魔にならない。したがって、括れ工程、成形工程、制御冷却、歪取り工程の4工程によってラックシャフト15を製造することができる。そのため、ラックシャフト15をより少ない工程で製作することが可能となる。
(2)従来、鍛造をする前に切削や研磨などの表面加工(いわゆるピーリング)を行った鍛造素材を用いて鍛造を行っていた。この工程を省いた場合、鍛造素材の表面の傷などにより設計通りに成形できない場合や、金型40に傷が入るおそれがあった。また、表面加工を行った鍛造素材は、表面加工を行っていないものよりも高価である。
本実施形態では、表面加工の工程を省く代わりに括れ工程を行っている。これによって、鍛造前にブランク30の体積調整と共に表面状態を整えることができる。そのため、鍛造素材の表面粗さ、表面形状などを問わない。また、括れ工程を通じてブランク30の体積調整が行われることによって、鍛造によって発生する余肉24の量を低減することができる。
さらに、従来であればブランクとしてその全長にわたって同径の棒材を用いていたが、本例では鍛造素材を括れさせるため同径の棒材でなくてもよい。たとえばある部分から端に向けて拡径するような棒材を鍛造素材として用いる場合には、ある部分を第1括れ部31として設定すれば、ある部分の径が他の部分より小さい素材であっても鍛造素材として用いることができる。この場合、拡径した部分と同径の棒材を切削してブランク30を形成する場合と比べて、切削する部分も減らすことができる。そのため、材料の節約が可能となる。また、ピーリングなどの表面加工が施されていない鍛造素材を用いればよいため、より安価な鍛造素材を使用でき、材料費を抑えることができる。
(3)ブランク30における上型41と下型42に挟まれる部分の体積は、上型41と下型42の間にできる空間の体積よりもわずかに大きい。このため、上型41が十分に加圧されるとき、ブランク30の材料はわずかに余る。余肉24は形成されなくてもよいが、ほぼ確実に余肉24が成形されるようにブランク30の体積を設定してもよい。このようにすれば、余肉24が十分に成形されていない、若しくは余肉24が全く成形されていない場合には、ブランク30が図3(a)に示すようなラックシャフト15の形状に形成されていない、もしくは金型40に傷ができている、などの異常を発見する目安として余肉24を用いることが可能である。
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。なお、以下の他の実施の形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・図3(b)に示すように、第1テーパ面22は、曲面のテーパ面22aであってもよい。その場合、抜き抵抗を低減するために、曲面は輪郭線25の径方向外側に凸となるような曲率であることが好ましい。なお、第2テーパ面23も同様である。
・テーパ面を1つだけ設けてもよい。この場合、少なくとも第1テーパ面22を設けることが好ましい。抜き抵抗が比較的小さい第2テーパ面23は設けられなくてもよい。なお、テーパ面は抜き方向(たとえば図5の上下方向)に対して平行に設けられることは好ましくない。
・本実施形態では、第1および第2テーパ面22,23を設けたが、テーパ面は3つ以上設けられてもよい。その場合も、余肉24は上型41と下型42の境界に形成されるので、輪郭線25の内側に余肉24が入るように各テーパ面の傾斜が設定されることが好ましい。
・本実施形態では、第2テーパ面23よりも第1テーパ面22の傾きを大きく設定したが、等しく設定してもよい。さらに、抜き抵抗を十分に低減できるなら、第1テーパ面22よりも第2テーパ面23の傾きを大きく設定してもよい。
・本実施形態では、ブランク30の各括れ部31,33,37および各軸部35,39の外径D1〜D4の大小関係は、製品仕様などの設計によって、適宜に設定してもよい。ただし、外径D4よりも外径D1,D2,D3は小さいほうが好ましい。また、ブランク30の拡径部は4つ設けられているが、5つ以上設けられてもよい。また、ブランク30は括れ工程を経ずに、従来と同じピーリングなどの表面加工が施された鍛造素材から成形されてもよく、この場合であってもトリム工程および余肉除去工程は減らすことができる。
・本実施形態のラックシャフト15はテーパラックであることが好ましい。
・本実施形態では、ラックシャフト15をステアリング装置1に適用したが、ラックシャフト15の用途はステアリング装置1に限らない。
次に前記実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記棒状素材に括れを形成する工程を有し、前記成形工程では前記括れを有する棒状素材が使用される。
この構成によれば、鍛造前にブランク30の体積調整と共に表面状態を整えることができる。また、鍛造によって発生する余肉24の量を低減することができる。
1…ステアリング装置、10…ステアリングホイール、11…ステアリングシャフト、12…コラムシャフト、13…インターミディエイトシャフト、14…ピニオンシャフト、14a…ピニオン歯、15…ラックシャフト、15a…ラック歯、16…第1ラックアンドピニオン機構、17…タイロッド、18…転舵輪、20…ラック歯部、21…円弧部、22…第1テーパ面(抜き勾配部)、23…第2テーパ面(抜き勾配部)、24…余肉、25…輪郭線(仮想円)、26…受け部材、30…ブランク、31…第1括れ部、32…第1拡径部、33…第2括れ部、34…第2拡径部、35…第1軸部、36…第3拡径部、37…第3括れ部、38…第4拡径部、39…第2軸部、40…金型、41…上型、42…下型、43…ラック歯成形部、44…第1テーパ面成形部、45…円弧部成形部、46…第2テーパ面成形部。

Claims (5)

  1. 軸方向に沿った一定範囲にわたってラック歯が型鍛造されてなるラックシャフトにおいて、
    前記ラック歯が形成されている部分を前記軸方向に直交する平面で切断した断面の輪郭形状は、
    中心角が平角よりも小さい角度に設定されている円弧部と、
    前記円弧部に対してその中心を間に挟む反対側に設けられて前記軸方向に交わる方向へ延びる前記ラック歯と、
    前記円弧部と前記ラック歯との両端間をそれぞれ接続する接続部と、により閉じた線形状をなし、
    前記接続部は、前記円弧部を含む仮想円の径方向における外側へ凸となる抜き勾配部を含み、当該抜き勾配部の頂点は前記仮想円の内側に位置し
    前記抜き勾配部はテーパ面を含み、
    前記テーパ面は型の抜き方向に向かうにつれて前記円弧部の中心を含み、かつ前記ラック歯に交わる平面に近接するように傾斜し、
    前記テーパ面は、前記ラック歯側の第1のテーパ面と、前記円弧部側の第2のテーパ面とを含み、
    前記抜き勾配部の頂点は、前記第1のテーパ面と前記第2のテーパ面とが交わる部分であって、
    前記第1のテーパ面は前記第2のテーパ面よりも、前記円弧部の中心を含み、かつ前記ラック歯に交わる平面に対する傾きが大きく設定されているラックシャフト。
  2. 請求項1に記載のラックシャフトにおいて、
    前記接続部は、前記円弧部と前記ラック歯とを結ぶ直線より外側に位置しているラックシャフト。
  3. 請求項1または2に記載のラックシャフトにおいて、
    前記テーパ面は曲面を含み、
    前記曲面は前記仮想円の径方向における外側へ凸となる曲率を有しているラックシャフト。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載のラックシャフトにおいて、
    前記抜き勾配部の頂点に余肉が形成され、
    前記余肉は前記仮想円の内側に位置しているラックシャフト。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のラックシャフトの造方法において、
    棒状素材の軸方向における途中部位を他の部位よりも外径を小さくした括れ部を形成する括れ工程と、前記ラック歯に対応する歯型列が設けられた第1の成形面を有する第1の金型と、前記第1の成形面に対向する第2の成形面を有する第2の金型との間に前記括れ工程によって前記括れ部が形成された前記棒状素材を配置した状態で、前記第1の金型と前記第2の金型とを互いに近接させて、前記棒状素材を前記第1の成形面と前記第2の成形面とで圧縮変形させることにより、前記棒状素材に前記歯型列に対応するラック歯を成形する成形工程とを含み、
    前記第1の成形面は、前記棒状素材の周方向における前記ラック歯の両隣りにそれぞれ第1のテーパ面を形成するための第1のテーパ面成形部を有し、前記第2の成形面は、前記ラック歯の両隣りの第1のテーパ面にそれぞれ交わる第2のテーパ面を形成するための第2のテーパ面成形部を有し、
    前記第1のテーパ面成形部および前記第2のテーパ面成形部は、それぞれ金型の抜き方向へ向かうにつれて互いに近接するように傾斜する2つの斜面を有し、
    第1のテーパ面成形部の斜面と、第2のテーパ面成形部の斜面とは、第1の金型と第2の金型とを閉じたときのそれらの境界で交わるとともに、当該交わる部分は、
    第1および第2の成形面により規定されるラックシャフトの輪郭形状における円弧部を含む仮想円の内側に位置する、
    ラックシャフトの製造方法。
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