JP6527010B2 - 熱伝導性樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1(特開2015‐937号公報)では、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂に燐片形状の黒鉛とナノサイズのカーボンナノファイバーを分散させた樹脂組成物を、熱プレスすることで黒鉛の層構造を形成し、層間にカーボンナノファイバーを分散させる技術が提案されている。この方法では効率の良い熱伝導経路が形成されるため、少量のフィラー充填量で熱伝導率は飛躍的に向上する。しかしながら、ベース樹脂に熱硬化性樹脂を用いる場合、実用のために熱による硬化処理が必要であり、加えて黒鉛の配向に熱プレスを用いているため、生産性の高い射出成形が不可能という欠点がある。また、この技術では、熱可塑性樹脂を用いた場合でも、得られる樹脂組成物を熱プレスしており、生産性に劣るうえ、当該特許文献では、この樹脂組成物を用いて、熱伝導性に優れた射出成形体を得ることについての具体例もない。
しかしながら、この特許文献に記載の技術では、ベース樹脂中に気相成長炭素繊維が単体で使われているだけであり、より大きなフィラーと組み合わせた場合に生じるフィラー間のせん断力によるアスペクト比の低下については述べられていない。
(1)(a)熱可塑性樹脂からなるベース樹脂中に、共に熱伝導性を有する(b)燐片状黒鉛および(c)ナノ繊維を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、(a)熱可塑性樹脂30〜95体積%、(b)鱗片状黒鉛の、面方向の径が0.1〜200μmで、面方向の径を厚みで除したアスペクト比が10〜150である鱗片状黒鉛1〜69体積%、および(c)直径が1μm以下、繊維長を直径で除したアスペクト比が20以上であるナノ繊維0.1〜15体積%(ただし、ただし、(a)+(b)+(c)=100体積%で、かつ(b)と(c)の合計体積は5〜70体積%である)を主成分とする熱伝導性樹脂組成物を射出成形して得られ、(b)鱗片状黒鉛の面が互いに同一平面内に並んだ平面構造を1つ以上形成し、該平面構造が同一平面方向を向いた1つ以上の層構造を形成し、該平面構造に接触する(a)熱可塑性樹脂層において(c)ナノ繊維の分散層を形成し、(c)ナノ繊維が層間に熱伝導パスを形成してなる、熱伝導性樹脂成形体。
(2)(a)熱可塑性樹脂が、ポリアリーレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびポリエステル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、(1)記載の熱伝導性樹脂成形体。
(3)(b)鱗片状黒鉛のアスペクト比が10〜130である(1)または(2)記載の熱伝導性樹脂成形体。
(4)(c)ナノ繊維がカーボンナノファイバー(CNF)および/またはカーボンナノチューブ(CNT)からなり、直径が10nm〜1μmでかつアスペクト比が30以上である、(1)〜(3)いずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
(5)(a)〜(c)成分の合計100重量%に対し、さらに(d)せん断力により繊維化するフッ素系樹脂を、0.1〜5重量%添加してなる、(1)〜(4)いずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
(6)(d)フッ素系樹脂が、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、およびテトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、(5)記載の熱伝導性樹脂成形体。
(7) (1−1)(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛を溶融混合して得られるペレット(MB1)と、(a)熱可塑性樹脂と(c)ナノ繊維を溶融混合して得られるペレット(MB2)とを作成し、これらMB1とMB2とを混合して、射出成形するか、あるいは、(1−2)まず(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛とを溶融混練りしてペレット化し、得られたペレットに(c)ナノ繊維を塗してから射出成形するか、あるいは、(1−3)(a)熱可塑性樹脂、(b)鱗片状黒鉛および(c)ナノ繊維を同時に溶融混練りし、次いで射出成形する、ことを特徴とする (1)〜(4)いずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
(8)(a)熱可塑性樹脂、(b)鱗片状黒鉛、(c)ナノ繊維および(d)せん断力により繊維化するフッ素系樹脂を同時に溶融混練りし、次いで射出成形することを特徴とする(5)または(6)に記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
図1において、符号1はベース成分(マトリックス成分)である(a)熱可塑性樹脂、符号2は(b)鱗片状黒鉛、符号3は(c)ナノ繊維である。図1から、(a)熱可塑性樹脂からなるベース成分(マトリックス成分)中に、(b)鱗片状黒鉛の面が互いに同一平面内に並んだ平面構造を1つ以上形成し、該平面構造が同一平面方向を向いた1つ以上の層構造を形成し、該平面構造に(c)ナノ繊維が接触して、(c)ナノ繊維の分散層を形成し、(c)ナノ繊維が層間に熱伝導パスを形成し、これにより、高熱伝導性の樹脂成形体が得られていることが分かる。
このような相構造は、(a)〜(c)成分を溶融混練りするだけでは簡単に得られず、(a)熱可塑性樹脂に特定構造の(b)鱗片状黒鉛および(c)ナノ繊維(さらに必要に応じて(d)フッ素系樹脂)を主成分とする熱伝導性樹脂組成物を、さらに射出成形して成形体(ペレットあるいは完成品)とすることにより、(b)鱗片状黒鉛が射出成形方向に配向し、この平面構造の間に(c)ナノ繊維が接触して、(c)ナノ繊維の分散相を形成し、該(c)ナノ繊維が層間に熱伝導性パスを形成するものと考えられる。
すなわち、鱗片状黒鉛の平面方向のサイズが大き過ぎると鱗片状黒鉛の数が少なくなり、層の数も少なくなる結果、層間に入るべきナノ繊維が過剰となり凝集が促進され、十分な熱伝導パスを形成できないだけでなく、凝集塊がせん断力の影響を受けやすくなりナノ繊維の破壊が進行する。一方で、鱗片状黒鉛の平面方向のサイズが小さいと、鱗片状黒鉛の層が数多く形成され、層間の距離が狭くなりナノ繊維の数が不足して十分な熱伝導パスを形成できないだけでなく、鱗片状黒鉛同士でせん断力が発生し、ナノ繊維をすりつぶして破壊してしまう。従って、最適なサイズの鱗片状黒鉛を充填することにより、鱗片状黒鉛の層構造の層間にナノ繊維が分散するという構造を、より完全に形成することが可能となる。更に、溶融せん断力により繊維化可能な(d)フッ素系樹脂を添加することで、加工機(溶融混練り機、射出成形機など)ならびに鱗片状黒鉛から生じるせん断力を、(d)フッ素系樹脂の繊維化により緩和し、ナノ繊維に加わるせん断力を低減することが可能となるものと推察される。
以下、本発明に用いられる(a)熱可塑性樹脂、(b)鱗片状黒鉛、(c)ナノ繊維、(d)フッ素系樹脂などについて、説明する。
本発明の熱伝導性樹脂成形体において、ベース成分(マトリックス成分)として用いられる(a)熱可塑性樹脂としては特に限定されるものではないが、代表的にはポリアリーレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。特に、(c)ナノ繊維との親和性が特に高いポリオレフィン系樹脂が望ましい。
(b)鱗片状黒鉛とは、鱗片状のもの以外に、平板状もしくはフレーク状であれば限定されることはないが、特にグラファイト(黒鉛)が良好である。グラファイトの種類として、αグラファイト、βグラファイトどちらでも良い。また、天然グラファイト、人工グラファイトのどちらでも良い。グラファイト以外には、グラフェン等が挙げられる。また、グラファイトとグラフェンを組み合わせても良い。
(b)鱗片状黒鉛は、面方向の径(長さ)が0.1μm〜200μmであり、面方向の径を厚みで除したアスペクト比が10〜150である。面方向の径は、好ましくは1μm〜30μmで、アスペクト比が好ましくは10〜130、さらに好ましくは30〜80である。
(b)鱗片状黒鉛のアスペクト比が上限又は下限を外れた場合、(c)ナノ繊維の破損を招き、熱伝導率の低下を招く傾向にある。
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、(a)熱可塑性樹脂からなるベース樹脂中に、(b)燐片状黒鉛と、直径が1μm以下、アスペクト比が20以上である(c)ナノ繊維を含有し、(b)鱗片状黒鉛の面が互いに同一平面内に並んだ平面構造を1つ以上形成し、該平面構造が同一平面方向を向いた1つ以上の層構造を形成し、該平面構造に接触する樹脂層に(c)ナノ繊維の分散層を形成し、(c)ナノ繊維が層間に熱伝導パスを形成する。したがって、(b)鱗片状黒鉛の含有量が(a)〜(c)成分中に1体積%未満では、(b)鱗片状黒鉛の平面構造が不足して得られる成形体の熱伝導性が低下し、一方70体積%を超えると、相対的にベース樹脂となる(a)熱可塑性樹脂の配合量が低下して得られる成形体の物性が低下するとともに、(c)ナノ繊維の含有量も低下して、成形体の熱伝導性も低下する。
(c)ナノ繊維としては、カーボンナノファイバー(CNF)、およびカーボンナノチューブ(CNT)からなる群より選ばれる1種以上の導電性繊維状フィラーであることが好ましい。カーボンナノチューブ(CNT)は、シングルウォールでもマルチウォールでも良い。また、カーボンナノファイバー(CNF)は、直径がナノメートルサイズで、繊維長がマイクロメートルサイズであることが好ましい。
この(c)ナノ繊維は、直径が1μm以下、好ましくは10nm〜1μmである。直径が1μmを超えると、アスペクト比が低下し、効率的な熱伝導パスを形成できないので、得られる成形体の熱伝導率が低下し好ましくない。
また、本発明に用いられる(c)ナノ繊維は、繊維長を直径で除したアスペクト比が20以上、好ましくは30以上であり、最も好ましくは(c)ナノ繊維が本来有するアスペクト比を最大とする。アスペクト比が20未満では、熱伝導パスが十分に形成されず、本発明の効果が得られない。
0.1体積%未満では、熱伝導性が充分ではなく、一方15体積%を超えると、樹脂中におけるナノ繊維の分散悪化、およびナノ繊維の表面積増大により、材料の流動性の極端な低下を招き、射出成形に必要な流動性を確保できなくなり好ましくない。
さらに、本発明においては、溶融混練りや射出成形の際のせん断力によって繊維化する(d)フッ素系樹脂を添加することにより、加工機(混練り機や射出成形機)および(b)鱗片状黒鉛より生じるせん断力を緩和し、(c)ナノ繊維の破壊を防止することができる。フィブリル化するフィラーである(d)フッ素系樹脂としては、例えば、フルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フルオロオレフィン樹脂は、通常、フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体である。具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合樹脂等が挙げられる。なかでも、好ましくはテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が挙げられる。
更に、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も使用することができ、このようなフルオロエチレン重合体としては、ポリスチレン−フルオロエチレン共重合体、ポリスチレン−アクリロニトリル−フルオロエチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル−フルオロエチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル−フルオロエチレン共重合体等が挙げられ、具体例としては三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」が挙げられる。なお、フルオロポリマーは、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、(a)〜(c)成分、あるいは(a)〜(d)成分を主成分とするが、そのほか、通常の熱可塑性樹脂の成形時に用いられる周知の添加剤、例えば熱安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤などを添加することができる。
また、本発明の熱伝導性樹脂成形体には、そのほか、着色剤、発泡剤などの第3成分を配合することもできる。
射出成形に用いるための本発明の熱伝導性樹脂組成物は、(a)熱可塑性樹脂を溶融させるための加熱可能なヒーターを備え、(b)鱗片状黒鉛および(c)ナノ繊維を溶融した樹脂中に練り込むために強いせん断力をかけられる機構を備えた2軸押出混練機や加圧ニーダー等の設備を用いて作製することができる。各原料を投入する順番は特に限定されないが、例えば、PTFEを原料とし、せん断力を加えることで繊維化する(d)フッ素系樹脂を、溶融混練前に上記樹脂組成物に添加することで作製することができる。また、例えば(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛を溶融混練し、得られたペレット形状のマスターバッチ(MB1)と、(a)熱可塑性樹脂と(c)ナノ繊維を溶融混練し得られたペレット形状のマスターバッチ(MB2)とを混合し、混合物を加工機に備わっているホッパーに投入して溶融混練し作製することができる。また例えば、(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛を溶融混練し得られたペレットの表面に(c)ナノ繊維を塗すことで作製することができる。
溶融混練り時の温度は、通常、160〜280℃、好ましくは210〜260℃、溶融混練り時間は、通常、30秒〜10分、好ましくは1分〜5分である。
以上のようにして調製された本発明の熱伝導性樹脂組成物は、スクリューや金型内でせん断力を生じる射出成形を用いた加工により、高熱伝導率を有する成形体とすることが可能である。射出成形としては、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。本発明の熱伝導性樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度をポリオレフィン樹脂の場合、その融点Tmまたは流動開始温度以上、好ましくは180〜235℃、より好ましくは190〜220℃の範囲とするのが適当である。シリンダ温度が低すぎると成形体に充填不良が発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷になりやすく、逆に、シリンダ温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすい。また、射出成形時の条件によっては溶融樹脂に加わるせん断力に差があるため、ナノ繊維を破壊して成形体の熱伝導率を低下させる原因となる。加工に使用する成形機によって詳細は異なるが、加工条件の例を更に挙げると、可塑化用スクリューと射出プランジャが同一のスクリューで兼ねているインライン式の射出成形機において、ホッパーから投入された材料を溶融・計量する際のスクリュー回転数が100rpmを超えると成形体の熱伝導率は大きく低下する傾向にある。更に、計量時の背圧を140kg/cm2以上にすると成形体の熱伝導率は大きく低下する傾向にある。従って、本発明の樹脂組成物を用いれば射出成形機のスクリューおよび金型内で生じるせん断力による影響を最小限に抑えることができるが、射出成形の際に適切な条件範囲で成形することも熱伝導率の低下を防ぐために重要となる。
したがって、(a)熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を採用する場合には、好ましくは、シリンダ温度が180〜235℃、スクリュー回転数は40〜95rpm、軽量時の背圧は70〜120kg/cm2である。
このようにして得られる本発明の熱伝導性樹脂成形体は、ペレットであってもよく、最終的な完成品である成形体であってもよい。
(1)熱伝導性樹脂成形体が上記(a)〜(c)成分から構成される場合
この場合は、上記のように、(1−1)(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛を溶融混合して得られるペレット(MB1)と、(a)熱可塑性樹脂と(c)ナノ繊維を溶融混合して得られるペレット(MB2)、これらを混合して、射出成形するか、あるいは、(1−2)まず(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛とを溶融混練りしてペレット化し、得られたペレットに(c)ナノ繊維を塗してから射出成形する。このようにすると、(c)ナノ繊維が破壊されずに高いアスペクト比を有したまま、本発明の熱伝導性樹脂成形体が得られるので、高い熱伝導性を有することになる。また、(1−3)(a)〜(c)成分を同時に溶融混練りして、ペレット化してから射出成形するか、あるいは、溶融混練りに引き続いてただちに射出成形してもよい。すなわち、最適なアスペクト比を持つ(b)鱗片状黒鉛を用いることで、(b)鱗片状黒鉛同士で生じるせん断力が最小に抑えられ、(c)ナノ繊維の破壊が抑えられるため、比較的高い熱伝導率を有する熱伝導性樹脂成形体が得られる。
(2)熱伝導性樹脂成形体が(a)〜(d)成分から構成される場合
この場合は、溶融混練りにより繊維化が可能な(d)フッ素系樹脂を配合しているので、溶融混練り前に、(a)〜(c)成分に(d)成分を添加して、(a)〜(d)成分を同時に溶融混練りして、ペレット化してから射出成形するか、あるいは、溶融混練りに引き続いてただちに射出成形してもよい。すなわち、(d)フッ素系樹脂を配合した場合には、溶融混練り時に繊維化可能な(d)フッ素系樹脂により、高いせん断力が緩和されるので、(c)ナノ繊維の破壊が抑えられて、熱伝導性の低下が少ない本発明の熱伝導性樹脂成形体が得られる。
また、実施例における各種の測定は下記のとおりである。
全自動レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工(株)製 TC-7000 )を用いてサンプルの熱拡散率を測定した後、各サンプルの密度(ρ)および比熱(Cp)を用いて(式1)に従って熱伝導率(λ)を算出した。熱伝導率は、樹脂の流動方向の値を測定した。なお、αは、熱拡散率である。
λ(W/m・K)=ρ(g/m3)×Cp(J/g・K)・α(m2/s) (式1)
熱伝導率を測定したサンプルをガスバーナーで熱し、熱可塑性樹脂を揮発・分解して除去し、残存物を(株)日立ハイテクノロジーズ社製 走査型電子顕微鏡S-3400N(SEM)により観察し、得られた画像から繊維の長さを測定した。標本数300本以上で統計処理し、D50を代表的な繊維長とした。このようにして得られた繊維長を繊維径で除してアスペクト比を算出した。
熱伝導率を測定したサンプルをガスバーナーで熱し、熱可塑性樹脂を揮発・分解して除去し、残存物をSEMにより観察し、得られた画像から黒鉛の厚みおよび平面方向の長さ(径)を測定し、平面方向の長さを厚みで除してアスペクト比を算出した。
(a)熱可塑性樹脂
(a-1)ポリプロピレン(PP、サンアロマー(株)製 PM900A)
ペレット乾燥温度:80℃で5時間
混練温度:230℃
成形温度:200℃
(a-2)ポリエチレン(HDPE、旭化成(株)製 J-240)
ペレット乾燥温度;80℃で5時間
混練温度:220℃
成形温度:200℃
(a-3)ポリアミド(PA6、ユニチカ(株)製 A1015LP)
ペレット乾燥温度;100℃で5時間
混練温度:290℃
成形温度:270℃
(b-1)鱗片状黒鉛(日本黒鉛(株)製 「CB150」、平面方向の平均の長さ40μm、アスペクト比40)
(b-2)鱗片状黒鉛(日本黒鉛(株)製 「CB100」、平面方向の平均の長さ80μm、アスペクト比80)
(b-3)鱗片状黒鉛(日本黒鉛(株)製 「F2」、平面方向の平均の長さ130μm、アスペクト比130)
(b-4)球状化黒鉛(日本黒鉛(株)製 「CGC−20」、平均粒子径20μm、アスペクト比1)
(c-1)ナノ繊維(昭和電工(株)製 「VGCF-H」、平均直径150nm、アスペクト比100以上)
(c-2)炭素繊維(三菱樹脂(株)製 ピッチ系炭素繊維「ダイアリードK223HE」、平均直径6μm、繊維長3mm)
(d-1)繊維化PTFE(繊維化可能なポリテトラフルオロエチレン)(三井・デュポン・フロロケミカル(株)製 K-10J)
(d-2)PTFEパウダー(喜多村(株)製 PTFE KT600M)
表1および表2に示す比率にて各原料を2軸押出混練機(池貝(株)製 PCM30、スクリュ径30mm、L/D17.5)に投入して溶融混練し、ダイヘッドにより成形された紐状のストランドをカッターで裁断することでペレット形状のサンプルを得た。ペレットを乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製 UH-1000)にペレットを投入し、厚み4mm、幅10mm、標線間長さ90mmのダンベル試験片の射出成形体を得た。この成形体から10mm×1mm×1mmの矩形の試料を切り出し、10mm×10mm×1mmの測定用サンプルを得た。
なお、実施例4〜8のサンプル作製に際しては、(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛を用いてペレットを作製し、次いでこのペレットに(c)ナノ繊維を塗すことで射出成形用のペレットを得た。
各成分を表1〜2に示す配合処方で、はじめに2軸混練押出機PCM30に投入し、所定の加工温度にて、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行なった。吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレットを得た。ペレットを乾燥した後、射出成形機にペレットを投入し、厚み4mm、幅10mm、標線間長さ90mmのダンベル試験片を得た。この成形体から10mm×1mm×1mmの矩形の試料を切り出し、10mm×10mm×1mmの測定用サンプルを得た。この成形体について、熱伝導率、ナノ繊維および鱗片状黒鉛のアスペクト比を上記手法に従って測定した。結果を表1〜2に示す。
表1に示す(a)熱可塑性樹脂と(b)鱗片状黒鉛を2軸混練押出機PCM30に投入し、所定の加工温度にて、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行なった。吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレットを得た。ペレットを乾燥した後、得られたペレットの表面に(c-1)ナノ繊維を塗すことで射出成形用のペレットを得た。その後、射出成形機にこのペレットを投入し射出成形することで厚み4mm、幅10mm、標線間長さ90mmのダンベル試験片を得た。その際、(c-1)ナノ繊維のアスペクト比を調整するために計量時のスクリュー回転数及び射出成形時の背圧を調整した。この成形体から10mm×1mm×1mmの矩形の試料を切り出し、10mm×10mm×1mmの測定用サンプルを得た。この成形体について、熱伝導率、繊維および鱗片状黒鉛のアスペクト比を上記手法に従って測定した。結果を表1に示す。
なお、(c−1)ナノ繊維のアスペクト比を調整するための、各実施例における計量時のスクリュー回転数、射出成形時の背圧は次のとおりである。
実施例4;スクリュー回転数 95rpm、背圧 120kg/cm2
実施例5;スクリュー回転数 70rpm、背圧 120kg/cm2
実施例6;スクリュー回転数 50rpm、背圧 120kg/cm2
実施例7;スクリュー回転数 95rpm、背圧 75kg/cm2
実施例8;スクリュー回転数 50rpm、背圧 75kg/cm2
すなわち、本発明においては図3から明らかのように、ナノ繊維のアスペクト比が高いほど熱伝導パスを形成する効率が高く、実施例4〜8は高い熱伝導率を維持できたものと考えられる。更に、形状においても、繊維状フィラーはナノサイズである必要があり、ミクロンサイズの炭素繊維では効果が得られない。また、全ての原料を混練機に同時に投入し、高せん断力により溶融混合するという従来の一般的な手法で作製した実施例1では、(c−1)ナノ繊維がせん断力により破損するためアスペクト比を8より高くすることはできなかった。すなわち、ナノサイズの繊維状フィラーを用い、かつ本発明に示した加工手法によって熱伝導パスを効率よく形成する(c−1)ナノ繊維の高アスペクト比を達成することが可能となり、高熱伝導率を維持することが可能となった。
2・・・(b)鱗片状黒鉛
3・・・(c)ナノ繊維
Claims (5)
- (a)熱可塑性樹脂からなるベース樹脂中に、共に熱伝導性を有する(b)燐片状黒鉛および(c)ナノ繊維を含有する熱伝導性樹脂組成物であって、(a)熱可塑性樹脂30〜65体積%、(b)鱗片状黒鉛の、面方向の径が0.1〜200μmで、面方向の径を厚みで除したアスペクト比が10〜150の鱗片状黒鉛10〜69体積%、および(c)直径が1μm以下、繊維長を直径で除したアスペクト比が20以上であるナノ繊維0.1〜15体積%(ただし、ただし、(a)+(b)+(c)=100体積%で、かつ(b)と(c)の合計体積は30〜50体積%である)を主成分とし、さらに(a)〜(c)成分の合計100重量%に対し、(d)ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、およびテトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合樹脂の群から選ばれた少なくとも1種のフッ素系樹脂を0.1〜5重量%を添加してなる熱伝導性樹脂組成物を射出成形して得られ、(b)鱗片状黒鉛の面が互いに同一平面内に並んだ平面構造を1つ以上形成し、該平面構造が同一平面方向を向いた1つ以上の層構造を形成し、該平面構造に接触する(a)熱可塑性樹脂層において(c)ナノ繊維の分散層を形成し、(c)ナノ繊維が層間に熱伝導パスを形成してなる、熱伝導性樹脂成形体。
- (a)熱可塑性樹脂が、ポリアリーレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、およびポリエステル系樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1記載の熱伝導性樹脂成形体。
- (b)鱗片状黒鉛のアスペクト比が10〜130である請求項1または2記載の熱伝導性樹脂成形体。
- (c)ナノ繊維がカーボンナノファイバー(CNF)および/またはカーボンナノチューブ(CNT)からなり、直径が10nm〜1μmでかつアスペクト比が30以上である、請求項1〜3いずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体。
- (a)熱可塑性樹脂、(b)鱗片状黒鉛、(c)ナノ繊維および(d)フッ素系樹脂を同時に溶融混練りし、次いで射出成形することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
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