<本開示に係る各実施の形態の内容に至る経緯>
先ず、本開示に係るフェーズドアレイ送信装置の実施の形態を説明する前に、フェーズドアレイアンテナにおける位相誤差および振幅誤差の補正技術における課題について説明する。
前述した特許文献1および特許文献2では、キャリブレーション用受信系として、各送信ブランチのループバック信号をダウンコンバート処理し、ディジタル信号処理によって位相誤差および振幅誤差を各々検出する回路を別途設けている。キャリブレーション用受信系は、信号受信系の回路と同様に、送信RF信号(送信無線信号)の受信処理を行う回路であり、回路規模および消費電力が大きくなる課題がある。
また、各送信ブランチのループバック信号をキャリブレーション用受信系に入力する配線において、配線長または付加される寄生素子(他の回路との電気的結合)に違いが生じると、位相および振幅の検出結果に誤差が生じる要因となる。特に、RF信号(無線信号)がマイクロ波またはミリ波といった高周波信号では、キャリブレーション用受信系の配線による誤差要因が大きくなる。例えば、ループバック信号の配線を等長とする、あるいは、シールドを設ける、等の対策を施す必要があり、回路の実装が困難となる課題がある。
また、前述した特許文献3では、実際に各アンテナより送信される送信信号の位相および位相を検出する手段が設けられていない。従って、特許文献3に開示された技術では、温度を含む様々な要因により送信信号の位相および振幅の誤差が時間変化する場合、位相および振幅の誤差を高精度に補正することが困難である。
上述した電流出力の高速立ち上げにおける課題を鑑み、本開示では、実装容易な簡易な構成によって実現可能であり、位相誤差および振幅誤差を高精度に補正可能なフェーズドアレイ送信装置を提供する。
<本開示に係る実施の形態の説明>
以下に本開示に係るフェーズドアレイ送信装置の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下では、フェーズドアレイアンテナ技術を用いた無線送信装置(フェーズドアレイアンテナによる無線送信装置)を、フェーズドアレイ送信装置と記載する。
(第1の実施の形態)
図1は本開示に係る第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置の構成を示すブロック図である。第1の実施の形態では、複数の並列送信系統として、2つの送信ブランチを有する構成例を示す。しかしながら、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、送信ブランチを3つ以上有する構成にも適用は可能である。
第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、送信ブランチ101、102、ブランチ間誤差検出部110、送信信号発生部120、補正制御部130、ビーム角制御部140、補正記憶部150、送信部制御部170、位相制御部180、および振幅制御部190を備える。
送信ブランチ101、102は、フェーズドアレイ送信装置において複数の各アンテナに各々送信信号を給電し、送信信号を無線周波数へアップコンバートするとともに、送信信号の位相および振幅の制御を行う。
送信ブランチ101は、アンテナ部11、送信出力検出部161、送信部171、位相調整部181、および振幅調整部191をを有する。送信ブランチ102は、アンテナ部12、送信出力検出部162、送信部172、位相調整部182、および振幅調整部192を有する。すなわち、送信ブランチ101および102は、同様の構成を有する。
アンテナ部11、12は、送信信号を空間に放射する。アンテナ部11および12は、ビームの制御をアンテナ素子の励振係数の相対位相によって行うフェーズドアレイアンテナを構成する。フェーズドアレイアンテナでは、アンテナ単体の指向性、複数のアンテナの配置間隔、各アンテナへ給電される送信信号のレベルと位相によって、送信ビームの形状を決定する。
送信出力検出部161、162は、各々アンテナ部11、12の手前のアンテナ端付近に設けられ、給電される送信信号の一部を抜き出して、ブランチ間誤差検出部110に出力する。以下では、送信出力検出部161が送信ブランチ101から抜き出した信号をブランチA信号と称し、送信出力検出部162が送信ブランチ102から抜き出した信号をブランチB信号と称する。送信信号のレベル減少および品質劣化、並びにアンテナ端出力インピーダンスへの影響を考慮して、送信出力検出部161および162が抜き出すブランチAおよびB信号のレベルは、送信信号に対して5分の1程度またはそれ以下となるように設定される。送信出力検出部161、162は、例えば、送信信号の伝送路に対して、電界結合または磁界結合する分布結合線路またはトランス、あるいは、比較的容量値の小さい容量、またはインダクタンス値の大きなチョークインダクタ等の受動回路を結合することによって構成される。
送信部171、172は、電力増幅器1713、1723およびミキサ回路1711、1721を有する。電力増幅器1713、1723およびミキサ回路1711、1721は、送信信号を無線周波数帯へアップコンバートし、送信に必要な出力レベルにまで増幅する。
位相調整部181、182は、例えば移相器や遅延器等の回路(図示しない)によって構成され、各送信ブランチ101、102における送信信号の位相を調整する。位相調整部181、182は、後述する補正制御部130が生成した移相制御量に基づいて、位相の調整を行う。
なお、位相調整部181、182による送信信号の位相調整は、ベースバンド信号と無線周波数信号のどちらに対して行ってもよい。また、位相調整部181、182は、ベースバンド信号をアップコンバートする場合に使用される局部発振信号に対して位相調整を行ってもよい。また、送信部171、172が中間周波数を使用する場合には、位相調整部181、182は当該中間周波数に対して位相調整を行ってもよい。
すなわち、図1においては、位相調整部181、182はベースバンド帯の回路に設けられているが、本開示はこれには限定されず、無線周波数帯の回路に設けられてもよい。具体的には、位相調整部181、182は、送信部171、172の内部に設けられてもよいし、または、送信出力検出部161、162と送信部171、172との間に設けられてもよい。あるいは、位相調整部181、182は、図示しない局部発振信号源と、送信部171、172のアップコンバート用のミキサ回路1711、1721との間に設けられてもよい。
振幅調整部191、192は、例えば可変利得増幅器や可変減衰器等の回路によって構成され、各送信ブランチ101、102における送信信号の振幅を調整する。振幅調整部191、192は、後述する補正制御部130が生成した振幅制御量に基づいて、振幅の調整を行う。
なお、振幅調整部191、192による送信信号の振幅調整は、ベースバンド信号と無線周波数信号のどちらに対して行ってもよい。また、振幅調整部191、192は、ベースバンド信号をアップコンバートする場合に使用される局部発振信号に対して振幅調整を行うことで送信信号の振幅を調整してもよい。
すなわち、図1においては、位相調整部181、182と同様に、振幅調整部191、192は、ベースバンド帯の回路に設けられているが、本開示はこれには限定されず、無線周波数帯の回路に設けられてもよい。つまり、振幅調整部191、192は、送信部171、172の内部に設けられてもよいし、または、送信出力検出部161、162と送信部171、172との間に設けられてもよい。あるいは、振幅調整部191、192は、図示しない局部発振信号源と、送信部171、172のアップコンバート用のミキサ回路1711、1721との間に設けられてもよい。また、振幅調整部191、192は、送信部171、172の電力増幅器1713、1723のバイアス制御によって利得を調整することで実現されてもよい。
また、送信部171、172、位相調整部181、182、および振幅調整部191、192の配置順については、本開示では限定しない。送信部171、172、位相調整部181、182、および振幅調整部191、192は、図1に示した順番に限らず、どのような順番で配置してもよい。
ブランチ間誤差検出部110は、送信出力検出部161および162から入力される、ブランチAおよびB信号に基づいて、送信ブランチ101および102の送信信号の各出力レベル(振幅)と、2つの送信信号の位相差に関する情報を検出する。そして、ブランチ間誤差検出部110は、検出した情報に基づいて誤差検出信号を生成し、当該誤差検出信号を補正制御部130へ出力する。図1に示すように、ブランチ間誤差検出部110は、送信ブランチ101と送信ブランチ102との間に設けられ、これら送信ブランチ101、102の送信出力検出部161、162と接続されている。ブランチ間誤差検出部110の構成および動作の詳細については後述する。
送信信号発生部120は、送信しようとする変調されたベースバンド信号を生成し、各送信ブランチ101、102に同じ送信信号を同じタイミングで供給する。
ビーム角制御部140は、送信信号の出力レベルと、送信信号を放射したい方向および不要方向への放射量(指向性サイドローブ)の抑圧比等のビーム指向性の要求仕様とに基づいて、送信ブランチ101、102が送信すべき送信信号の移相量および振幅量を算出する。ここで、ビーム角制御部140が算出する、送信ブランチ101、102が送信すべき送信信号の移相量および振幅量を、以下では所要移相量および所要振幅量と称する。
補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部110から入力される送信ブランチ101および102の誤差検出信号に基づいて、送信ブランチ間の位相および振幅に関する誤差量を算出する。そして、補正制御部130は、ビーム角制御部140から入力された所要移相量および所要振幅量の値を当該誤差量によって補正し、移相制御量および振幅制御量を算出する。さらに、補正制御部130は、算出した移相制御量および振幅制御量とに基づいて、各送信ブランチに対して送信信号の出力のオンまたはオフを制御するための出力指示を後述する送信部制御部170に対して出力する。
補正記憶部150は、補正制御部130によって算出された各送信ブランチの位相および振幅の誤差量、あるいは、誤差量に基づく補正値である振幅制御量と移相制御量に関する情報のいずれかを記憶する。また、補正記憶部150は、補正制御部130が新たに誤差量を算出した場合には、記憶している誤差量あるいは補正した移相制御量および振幅制御量に関する情報を更新する。なお、補正記憶部150において移相および振幅の誤差量と移相制御量および振幅制御量の双方を記憶してもよい。
送信部制御部170は、補正制御部130の出力指示に従い、送信部171および172に対して、送信ブランチ101、102の送信信号の出力を個別にオンまたはオフする制御を行う。なお、図1においては、送信部制御部170が送信部171、172を制御する例を示したが、本開示はこれには限定されず、例えば送信部制御部170が送信信号発生部120を制御することによって、各送信ブランチ101、102の出力の有無を制御するようにしてもよい。
位相制御部180は、補正制御部130が算出した移相制御量を用いて生成した移相制御信号を送信し、送信ブランチ101の位相調整部181と送信ブランチ102の位相調整部182を制御する。例えば位相調整部181、182がアナログ電圧値またはディジタル電圧値によって移相量を変化させる場合、位相制御部180は、位相調整部181、182に与える移相制御信号をアナログ電圧値またはディジタル値に変換する。
振幅制御部190は、補正制御部130が算出した振幅制御量を用いて生成した振幅制御信号を送信し、送信ブランチ101の振幅調整部191と送信ブランチ102の振幅調整部192を制御する。例えば振幅調整部191、192がアナログ電圧値またはディジタル電圧値によって振幅量を変化させる場合、振幅制御部190は、振幅調整部191、192に与える振幅制御信号をアナログ電圧値またはディジタル値に変換する。
補正制御部130および補正記憶部150、並びに、送信部制御部170、位相制御部180、振幅制御部190、ビーム角制御部140は、プロセッサ、メモリを含む情報処理回路によるディジタル信号処理によって実現することができる。具体的には、これらの構成は、プロセッサにおいてソフトウェアプログラムを動作させて所定の処理を実行することによって、各々が有する機能を実現することができる。
図2は、図1におけるブランチ間誤差検出部110の構成を示すブロック図である。ブランチ間誤差検出部110は、信号合成部210、検波部220、およびAD変換部230を備える。
信号合成部210は、送信出力検出部161、162から入力されるブランチA信号(送信ブランチ101の送信信号を一部抜き取った信号)とブランチB信号(送信ブランチ102の送信信号を一部抜き取った信号)の2つの信号を加算する。信号合成部210は、例えば2つの信号を電力合成するウイルキンソン型電力合成器等の受動回路により構成され、2つの送信ブランチ101、102間の分離を確保することができる。2つの送信ブランチ101、102からの入力信号が同位相の場合に、信号合成部210の加算出力は振幅最大となる。一方で、2つの送信ブランチ101、102からの入力信号が逆位相、すなわち180度位相差の場合には、信号合成部210の加算出力は振幅最小となる。
検波部220は、信号合成部210の出力端と接続され、信号合成部210の出力レベルを検波して検波信号を出力(測定)する。検波部220は、例えばダイオードまたはFET(電界効果型トランジスタ)による二乗検波器等、簡単かつ小型であり、さらに低消費電力な回路により構成することができる。また、検波部220は、必要に応じて増幅器と検波器とをさらに有し、検波性能を向上するように構成されてもよい。
AD変換部230は、検波部220の出力端と接続され、検波部220の出力する検波信号のアナログ電圧を補正制御部130が処理できるディジタル値の誤差検出信号に変換する。AD変換部230は、検波部220が2乗検波または包絡線検波動作によって出力する直流の検波電圧値をディジタル値に変換する直流用の回路等によって構成される。AD変換部230としては、低速動作の回路を利用してもよい。すなわち、AD変換部230としては、送信信号の復調用途に使用されるような変調速度相当、またはそれ以上に高速なサンプリング動作を行う回路は不要である。よってAD変換部230は、簡単かつ小型であり、さらに低消費電力な回路により実現することができる。
第1の実施の形態における、各送信ブランチ間の位相誤差および振幅誤差に関する誤差補正の手順について説明する。
第1の手順として、補正制御部130が、送信ブランチ101と送信ブランチ102の送信出力レベルを各々検出する。具体的には、まず、補正制御部130の出力指示に応じて、送信部制御部170は送信ブランチ101に送信信号を送信させる。送信出力検出部161によって送信信号の一部が抜き取られ、ブランチA信号としてブランチ間誤差検出部110に入力される。そして、ブランチ間誤差検出部110は、ブランチA信号に基づいて、送信信号101の送信出力レベル(振幅)を検出する。同様に、補正制御部130の出力指示に応じて、送信部制御部170は送信ブランチ102に送信信号を送信させる。送信出力検出部162によって送信信号の一部が抜き取られ、ブランチB信号としてブランチ間誤差検出部110に入力される。そして、ブランチ間誤差検出部110は、ブランチB信号に基づいて、送信信号102の送信出力レベルを検出する。この際、補正制御部130は、送信ブランチ間誤差が0であると仮定した場合に、すべての送信ブランチの振幅が等しくなるような振幅制御量の初期値を生成して振幅制御部190に出力する。これにより、補正制御部130は、送信ブランチ101、102に対して振幅制御部190への振幅制御量の初期値に対する実際の送信出力レベルを把握することができる。
第2の手順として、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部110から入力される送信ブランチ101および102の誤差検出信号に基づいて、送信ブランチ101、102間の位相誤差量を算出する。
図3は、2つの送信ブランチ101、102の送信信号の位相差と、ブランチ間誤差検出部110からの誤差検出信号との関係を示す特性図である。図3において、横軸は送信ブランチ101、102間の位相差、縦軸はブランチ間誤差検出部110の出力を示す。ブランチ間誤差検出部110から実際に出力される値は、AD変換部230によるAD変換後のディジタル値であるが、図3では簡単のため、検波部220が出力するアナログ電圧値として図示する。
図3に示すように、ブランチ間位相差を0度から360度まで変化させると、誤差検出信号は位相差が同相となる条件において最大値を示し、位相差が逆相の180度となる条件において最小値を示す。また、誤差検出信号の参照値として、例えば参照電圧値0.3Vの設定では、誤差検出信号が参照値となる位相値(位相差の値)が2つ存在する。
図3に示すように、ブランチ間位相差が同相および逆相となる移相制御量は、誤差検出信号が最大値および最小値である場合に得られる。しかし、例えばブランチ間位相差が逆相となる場合では、誤差検出信号がゼロの電圧値、またはゼロに近い値の電圧値となる。ここで、ブランチ間誤差検出部110のAD変換部230が、微小である誤差検出信号を高精度に検出してディジタル値に変換することは困難である。また、例えば位相差が180度から1度だけずれた場合の出力の変化は数ミリボルト程度と小さく、微小な電圧差を検出するためには多くのビット数を有するAD変換回路をAD変換部230に用意する必要があり、回路が大きくなるという課題がある。
このような課題を解決するために、第1の実施の形態では、誤差検出信号に対して検出の困難な微小の電圧値を検出するのではなく、精度確保が容易な参照電圧値を設定し、誤差検出信号の出力が参照電圧値となる位相値に基づいて同相および逆相の移相制御量を得る。すなわち、第1の実施の形態では、位相差に対する誤差検出信号の対称性を利用し、1つの参照電圧値に対応する同値となる2点を検出し、検出した2点の中央値を求め、同相条件および逆相条件に相当する移相制御量を得る。参照電圧値は、例えば、誤差検出信号の出力レベル範囲の中間付近の値として、位相変化に対する誤差検出信号の出力レベル変化が大きくなるように設定すればよい。
具体的には、第1の実施の形態では、以下のようにして移相制御量を取得する。まず、補正制御部130は、振幅制御部190によって送信ブランチ101と送信ブランチ102の送信出力レベルが同程度となるように調整する。次に、補正制御部130は、位相制御部180によって位相調整部181の移相量を固定するとともに、位相調整部182の移相量を制御し、送信ブランチ間の位相差を0度から360度まで変化させる。
これにより、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部110からの誤差検出信号があらかじめ設定した参照電圧値となる第1および第2の参照移相制御量(2つの参照移相制御量(1)および(2))を取得する。
最後に、補正制御部130は、位相調整部182に対する第1および第2の参照移相制御量と、位相変化に対する誤差検出信号の出力レベル変化の関係から、送信ブランチ間が同相および逆相となる移相制御量を各々算出する。
なお、送信ブランチ間が同相および逆相となる移相制御量は、以下のようにして算出することができる。例えば図3においては、あらかじめ設定する参照電圧値を0.3Vとして、位相制御部180に与える位相調整部182に対する移相制御量を変化させた場合に、図3に示す2つの参照移相制御量AおよびBが得られる。移相制御量をAからBへ変化させたときに誤差検出信号の出力レベルが減少の後増加する場合には、これらの間に逆相条件における最小値が存在すると想定され、移相制御量AとBとの中央値が送信ブランチ間位相差が逆相となる移相制御量Cとなる。また、移相制御量BとAとの中央値が、送信ブランチ間位相差が同相となる移相制御量Dとなる。
もし反対に、移相制御量をAからBへ変化させたときに誤差検出信号の出力レベルが増加の後減少する場合には、これらの間に同相条件における最大値が存在すると想定される。移相制御量AとBとの中央値が、ブランチ間位相差が同相となる移相制御量D、移相制御量BとAとの間の中央値が、ブランチ間位相差が逆相となる移相制御量Cとなる。
このように上記第2の手順により、例えば各種バラツキの要因により送信部171と送信部172の位相特性が異なる場合であっても、送信ブランチ101と送信ブランチ102をと同相あるいは逆相とするような移相制御量を取得することができる。そして、位相調整部182に対する移相制御量と位相調整部181に対する移相制御量とを比較することによって、送信部171と送信部172の位相誤差量を把握することができる。
補正制御部130は、このようにして位相誤差量を算出する。ここで、同相条件によって得られた位相誤差量と逆相条件によって得られた位相誤差量とは、基本的には同じ量となる。よって、一方の条件により得られた位相誤差量をもって、他方の条件により得た位相誤差量の妥当性を評価することができる。但し、例えば位相調整部181、182の非線形性等の要因により、同相条件と逆相条件の位相誤差量が異なる場合もある。同相条件と逆相条件の各々について位相誤差量を補正データとして導出し、0度と180度の間の位相設定に対しては、2つの補正データを基に内挿補間によって補正データを算出することもできる。
なお、上述した第2の手順では、最初に送信ブランチ101と送信ブランチ102の送信出力レベルを同じレベルに調整するように説明したが、2つの出力レベルが同じとならなくても、同じ手順により同相および逆相となる移相制御量を得ることができる。従って、送信ブランチ101、102間の振幅誤差が残留している場合、ビーム形成動作時において意図的に送信信号に振幅差を生じさせている場合でも、位相誤差および移相制御量の検出を行うことができる。
また、第2の手順では、位相調整部182を調整して送信ブランチ間の位相差が0度から360度まで変化させるように説明した。しかしながら、位相調整部181を調整する、もしくは位相調整部181と182の両方を調整して、送信ブランチ間の位相差を0度から360度まで変化させるように動作させてもよい。
次に、第3の手順として、補正制御部130は、振幅誤差の補正値と位相誤差の補正値を算出する。具体的には、まず、補正制御部130は、第1の手順において各送信ブランチに対して行った振幅制御部190への振幅制御量に対する実際の送信出力レベルの比較結果に基づいて、各送信ブランチの振幅誤差の補正値を算出する。そして、補正制御部130は、第2の手順によって求めた送信ブランチ間位相差の同相条件および逆相条件の移相制御量に基づいて、各送信ブランチの位相誤差の補正値を算出する。そして、補正制御部130は、振幅誤差の補正値と位相誤差の補正値を補正記憶部150に記憶させる。
補正記憶部150は、振幅補正テーブルおよび位相補正テーブルを保持する。振幅補正テーブルは、ビーム角制御部140より入力される所要振幅量を実現するために、振幅制御部190へ入力するべき各送信ブランチへの振幅制御量の情報を有する。すなわち、振幅補正テーブルは、例えば、所要振幅量としての所定の振幅値に対して、送信ブランチ毎に、各振幅値に対する補正値または振幅制御量が対応づけられたテーブルである。位相補正テーブルは、ビーム角制御部140より入力される所要移相量を実現するために、位相制御部180へ入力するべき各送信ブランチへの移相制御量の情報を有する。すなわち、位相補正テーブルは、例えば、所要移相量としての所定の位相値に対して、送信ブランチ毎に、各位相値に対する補正値または移相制御量が対応付けられたテーブルである。
補正制御部130は、補正記憶部150が保持する振幅補正テーブルおよび位相補正テーブルに、算出した振幅補正値と位相補正値を加えて記憶させる。また、補正制御部130は、第1の手順および第2の手順によって振幅誤差および位相誤差に関する補正値を得る度に、補正記憶部150が有する振幅補正テーブルおよび位相補正テーブルを更新する。
以上の手順によって、補正制御部130は、各送信ブランチ間の位相誤差および振幅誤差に関する補正値を取得し、補正記憶部150に記憶させる。そして、補正制御部130は、各送信ブランチ101、102に対して、位相補正テーブルと振幅補正テーブルの情報に基づいて位相調整部181、182および振幅調整部191、192を制御し、位相および振幅の誤差を補正する。
これにより、誤差補正がなされた所要の振幅と位相を持つ送信信号を、各送信ブランチ101、102より出力可能である。よって、所望のビーム指向性を得るための位相および振幅の調整において、送信ブランチ間の誤差が抑制された送信ビームを形成できる。
なお、実際の運用では、例えば、環境の変化によって送信ブランチ間の誤差の値が変化するため、上述した誤差補正の手順は定期的に行うようにすればよい。
また、送信ブランチ101、102において、送信信号の出力レベルによって位相誤差が異なる場合は、例えば実使用時に必要となる振幅毎に位相誤差を求めて補正するようにすればよい。位相調整部181、182の移相器における移相特性が非線形である場合は、例えば実使用時に必要となる移相量毎に位相誤差を求めて補正するようにすればよい。
以上のように、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置では、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間にブランチ間誤差検出部110を設け、補正制御部130がブランチ間誤差検出部110の出力する誤差検出信号に基づいて複数の送信ブランチ間の位相誤差および振幅誤差を算出し、位相制御部180および振幅制御部190によって位相誤差および振幅誤差を補正する。ブランチ間誤差検出部110は、小型かつ低電力に実装可能な信号合成部、検波部およびAD変換部によって構成することができる。このため、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置では、2つの送信ブランチ間の振幅特性および位相特性の誤差を、簡単な構成を用いて、かつ簡単な手順によって検出し補正することができる。
また、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置では、ブランチ間誤差検出部110を小型回路とすることができる。このため、集積回路またはプリント基板上にブランチ間誤差検出部110の回路を実装する場合、送信ブランチ101と送信ブランチ102の回路レイアウトまたは回路実装パターンの間のスペースに、自由度を持って実装することが容易となる。したがって、送信出力検出部161、162からブランチ間誤差検出部110に接続する高周波の信号配線を、短く、かつ等長、対称となるように配線することができ、実装性を高くすることができる。
これにより、送信信号を抜き出す配線によって生じ得る振幅および位相の検出誤差を低減でき、精度の高い位相および振幅の補正を実現することができる。従って、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、例えば回路の製造プロセスによるバラツキ、使用環境(例えば、温度)のバラツキ、動作時の電源電圧のバラツキといった各種バラツキに対する耐性を有する。また、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、同様の理由により、バラツキ対策も可能であり、精度良く振幅誤差および位相誤差を検出することができる。
また、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置では、送信出力検出部161、162によって各送信ブランチから送信信号の一部を抜き出す構成を有する。これにより、特許文献1に示すようなスイッチ切り替えによって送信信号を抜き出す構成における、スイッチ切り替え時のインピーダンス変化によりアンテナの特性が変化してしまう事態を回避することができる。
また、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置では、各送信ブランチの振幅誤差および位相誤差を検出するために、送信信号をベースバンド信号にダウンコンバートして受信処理するキャリブレーション用受信系の回路が不要である。このため、回路の増大、消費電力の増加、コスト増を抑制できる。
また、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、各送信ブランチが個別に振幅を調整する手段として振幅調整部191、192を有する。このため、複数アンテナからの送信出力レベルを重み付けすることによって、送信出力レベルを一様とした場合と比較して送信ビームの指向性サイドローブをさらに抑圧することができる。
結果として、第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置では、送信ブランチ間の振幅位相調整をキャリブレーションすることにより、所望のビーム指向性を得ルことができ、サイドローブ抑圧量の劣化を抑制することができる。第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置の構成は、送信信号をミキサによってダウンコンバートする受信系を備える従来方式の構成と比較して、校正に必要な付加回路を小型、低コスト、低電力にて実装することができる。このため、回路を集積化することができ、プリント基板実装においても実装性の高い構成とすることができる。
(第2の実施の形態)
図4は本開示の第2の実施の形態に係るフェーズドアレイ送信装置の構成を示すブロック図である。第2の実施の形態では、図1に示した第1の実施の形態の構成を基本として、送信ブランチ数を3つとした構成例を示す。
第2の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、送信ブランチ101、102に加えて送信ブランチ103を設けた構成である。さらに、ブランチ間誤差検出部111と、ブランチ間誤差検出部110、111と接続される検波部制御部410を設けた構成である。その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、図1と同じ番号を付したものは同じ機能を有するため、説明を省略する。
ブランチ間誤差検出部111は、送信ブランチ102と送信ブランチ103との間に設けられ、これら送信ブランチ102、103の送信出力検出部162、163と接続される。ブランチ間誤差検出部111は、送信出力検出部162および163から入力される信号に基づいて、送信ブランチ102および103の送信信号の各出力レベル(振幅)と2つの信号の位相差に関する情報を検出し、誤差検出信号として補正制御部130へ出力する。ブランチ間誤差検出部111の構成および動作は、図2により説明したブランチ間誤差検出部110と同様である。
検波部制御部410は、補正制御部130によって算出した各ブランチ間誤差検出部の検出特性の誤差を補正するように、ブランチ間誤差検出部110および111を制御する。検波部制御部410は、ブランチ間誤差検出部110とブランチ間誤差検出部111とが同じ誤差検出特性を有するようにするために、例えば、各ブランチ間誤差検出部の内部にある検波部の回路のバイアスを調整し、検波特性の誤差を補正する。
以下、第2の実施の形態における、各送信ブランチ間の位相誤差および振幅誤差に関する誤差補正の手順を説明する。第2の実施の形態の基本的な動作は第1の実施の形態と同様である。以下では、第1の実施の形態と異なる部分について主に説明する。
第2の実施の形態では、3つの送信ブランチ間の位相誤差および振幅誤差を補正する。そのために、第1の実施の形態に示した手順によって送信ブランチ101と102の間の位相誤差および振幅誤差を検出して補正した後、同じ手順によって送信ブランチ102と103の間の位相誤差および振幅誤差を検出して補正する。すなわち、第2の実施の形態では、3つ以上の送信ブランチ101〜103を備える場合に、隣り合う送信ブランチ間の相対誤差を検出、補正することで、全ての送信ブランチ間の相互の位相誤差および振幅誤差を補正する。
ここで、精度の良い補正を実現するために、ブランチ間誤差検出部110、111の誤差検出特性が同一であることが重要である。第2の実施の形態では、ブランチ間誤差検出部110、111の検波特性を同一にするために、以下の手順を行う。
第1の手順として、補正制御部130は、送信部制御部170によって送信ブランチ101、103をオフとして送信ブランチ102を送信動作させる。送信出力検出部162は、ブランチ間誤差検出部110、111への2つの出力が略同レベルとなるように設計され、送信ブランチ102の送信信号がブランチ間誤差検出部110、111の両方へ同レベルで入力される。
第2の手順として、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部110、111のそれぞれから入力される2つの誤差検出信号を比較して、両者が同じレベルとなるように検波部制御部410に制御を指示する。検波部制御部410は、ブランチ間誤差検出部110、111それぞれが有する検波部のどちらか一方、または両方の検波特性を例えばバイアスによって調整し、ブランチ間誤差検出部110、111のそれぞれが出力する誤差検出信号が同じレベルとなるようにする。
なお、ブランチ間誤差検出部110、111が有する検波部の初期設定として、例えば、検波部制御部410が各検波部のバイアス電流をチェックして、これらが同じとなるように初期調整しておいてもよい。このようにすることで、検波部にある検波回路の検波特性、すなわち入力信号レベルに対する出力検波電圧値の関係を予めある程度揃えておくことができる。これにより、第1の手順の実行前に誤差を小さくしておくことができる。
以上の手順によって、全てのブランチ間誤差検出部が同じ検波特性を有するように補正した後、補正制御部130は、第1の実施の形態と同様にして、各送信ブランチの送信出力レベルを検出する。すなわち、補正制御部130は、送信部制御部170によって全ての送信ブランチ101〜103を順次動作させ、信号レベルを検知し、全ての送信ブランチの出力レベルを検出し、全送信ブランチの送信出力レベルを比較し、送信ブランチ間の振幅誤差を検出する。その後、補正制御部130は、振幅制御部190に各送信ブランチ101〜103の振幅誤差の補正値を算出させ、補正された振幅制御量によって送信ブランチ101〜103の振幅調整部191〜193を各々調整し、振幅特性を補正する。
また、位相誤差についても、第1の実施の形態と同様に、送信ブランチ間の位相誤差量を検出し、位相誤差の補正値を算出し、補正された移相制御量によって送信ブランチ101〜103の位相調整部181〜183を各々調整し、位相特性を補正する。
以上のように、第2の実施の形態では、3つ以上のアンテナを使用するフェーズドアレイ送信装置において、第1の実施の形態と同様に全ての送信ブランチ間の振幅特性および位相特性の誤差を検出できる。また、簡単な手順によって、位相誤差および振幅誤差を補正すつことができる。これにより、多くのアンテナを制御することで指向性の高いビームを形成するフェーズドアレイ送信系において、高精度のビーム形成を行うことができる。
なお、送信ブランチを4つ以上有する構成にも第2の実施の形態において示した構成は適用することができる。例えば、N個の送信ブランチがある場合、送信ブランチ間に(N−1)個のブランチ間誤差検出部を設け、隣り合う送信ブランチ間の位相誤差および振幅誤差を順次検出することによって、全ての送信ブランチ間の誤差を把握して、同様に補正することができる。
第2の実施の形態によれば、N個の送信ブランチを有するフェーズドアレイ送信装置に対して、全ての組み合わせ(N×(N−1)/2)についてブランチ間誤差検出部を設ける必要が無く、より少数の(N−1)の回路を設ければよい。これは、隣接する送信ブランチ間のみブランチ間誤差検出部を設けるようにしているからである。したがって、回路の増大や消費電力の増加を抑制することができ、小型であり実装容易な構成によってフェーズドアレイ送信装置全体の誤差を補正することができる。
なお、第2の実施の形態では、送信出力検出部162がブランチ間誤差検出部110および111への2つの出力を有し、送信出力検出部161と163はそれぞれ1つのブランチ間誤差検出部110あるいは111への出力を有した非対称な構成とした。しかしながら、本開示は、これには限定されない。例えば、同じ送信信号レベルに対して、各送信出力検出部により抜き出される信号レベルを全て同じとなるようにすれば動作上問題はない。
また、例えば全てのブランチ間誤差検出部の出力が同じとなるように設計することが実装上難しく、理想的な動作をする回路としての設計が困難であり、検出誤差を生じる場合には、検出誤差を考慮して補正する構成としてもよい。このような場合、回路の設計誤差は予め見込むことができるため、設計誤差を考慮して補正制御部130が位相誤差および振幅誤差を補正する、もしくは検波部制御部410が誤差検出信号を補正するように制御すれば動作上問題はない。
(第3の実施の形態)
図5は、本開示の第3の実施の形態に係るフェーズドアレイ送信装置を含む集積回路の構成を示す図である。第3の実施の形態は、4つの送信ブランチを有するフェーズドアレイ送信系の回路を集積回路に実装した構成例を示す。
フェーズドアレイ送信装置を構成する集積回路200には、4つの送信ブランチ101、102、103、104の回路が半導体チップ上にレイアウトされて実装されている。送信ブランチ101〜104の端部には、それぞれパッド201、202、203、204が形成され、各パッド201〜204にアンテナ部11、12、13、14がそれぞれ接続される。なお、図5ではアンテナ部11〜14を外部に設けてパッド201〜204に接続する構成を示したが、パッド201〜204を設けずにアンテナ部11〜14を半導体チップ上に形成した構成であってもよい。
各送信ブランチ101〜104は、第1の実施の形態と同様に、送信出力検出部161〜164、送信部171〜174、位相調整部181〜184、および振幅調整部191〜194を有する。また、送信ブランチ101と102との間にブランチ間誤差検出部110、送信ブランチ102と103との間にブランチ間誤差検出部111、送信ブランチ103と104との間にブランチ間誤差検出部112が配置される。
また、集積回路200には、送信信号発生部120、補正制御部130が配置される。なお、位相制御部180、振幅制御部190を含む回路も同様に集積回路200に配置されるが、図示は省略する。
第3の実施の形態のブランチ間誤差検出部110〜112は、受信信号の処理に用いる受信回路と比較して、簡単な回路により小型に構成でき、小さいスペースに実装可能である。ブランチ間誤差検出部を各送信ブランチの間にレイアウトすることによって、送信出力検出部161〜164からブランチ間誤差検出部110〜112までの配線211〜216を短くすることができる。
すなわち、配線引き回しの回避によって、他の回路および配線との間の寄生素子(電気的結合)を低減したレイアウト設計(配線)が可能である。また、各送信ブランチ101〜104からブランチ間誤差検出部110〜112までの配線211〜216の長さを等長にできる。結果として、寄生素子が少なく、信号の位相変化および振幅変化は各配線において同じとなるので、配線引き回しによる振幅誤差、位相誤差を低減でき、高精度の補正が可能となる。
集積回路200において、配線に寄生素子が生じると、信号の位相および振幅を変化させる要因となり、振幅および位相の検出誤差が発生する。仮に、1系統のキャリブレーション用受信系を設けて各送信ブランチの送信出力を受信検波する構成では、集積回路のどこか1か所に受信部が配置される。このような構成では、各送信ブランチの出力を1か所に設けた受信部の入力まで配線を引き回して接続するため、特に高周波信号に対して配線による位相振幅変化を同じ特性を得ることは困難である。よって、配線による誤差と送信ブランチに内在する誤差との区別が困難であり、精度良いキャリブレーションが困難となる事態が生じる。
これに対し、第3の実施の形態では、送信ブランチ間のブランチ間誤差検出部への配線を短くかつ等長にできるため、回路の配線レイアウトによる誤差を最小限に抑えられる。なお、ブランチ間誤差検出部110〜112と補正制御部130との間を伝送される誤差検出信号は、検波レベルを示すディジタル信号であり、高周波信号ではないため、配線が長くても問題なく、等長配線の制約もない。
以上のように、第3の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、送信ブランチ間の位相誤差と振幅誤差を補正することにより、精度の高い送信ビームを形成可能となり、主ビーム方向の指向性利得を向上させ、不要方向の放射レベルを抑圧できる。例えば、振幅誤差および位相誤差の目標精度としては、サイドローブ抑圧レベルの劣化許容量を3dBとした場合、振幅誤差1dB以下、位相誤差5度以下の精度確保が必要となるが、第3の実施の形態の構成を適用すれば十分に対応可能である。これにより、無線通信における通信エリアの制御、リンクバジェットの改善、あるいは、レーダにおける不要方向からのクラッタ反射またはマルチパスの抑圧による検知精度の向上に有効である。
また、本第3の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、簡単な回路によって誤差を検出するブランチ間誤差検出部を実装することができる。このため、回路の低消費電力化を実現することができ、ミリ波帯といった高い周波数の送信信号に対しても精度よく誤差を補正することができ、高い周波数を利用するシステムへの適用が可能である。
また、高周波数帯に適用する場合、ブランチ間誤差検出部および送信出力検出部等の高周波信号を処理する回路部分は、集積化に親和性の高い回路を用いて実装することができるので、システム全体の小型実装が可能である。さらに、ブランチ間誤差検出部といった誤差検出用の回路にバラツキが生じて、補正誤差の要因となる場合にも、誤差検出用の回路自体を補正可能であるため、システム全体として精度の高い振幅および位相の誤差補正が実現できる。
(第4の実施の形態)
図6は、本開示の第4の実施の形態に係るフェーズドアレイ送信装置の構成を示すブロック図である。第4の実施の形態では、図1に示した第1の実施の形態の構成を基本として、送信ブランチ数を4つとした構成例を示す。
第4の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、送信ブランチ101、102に加えて送信ブランチ103、104を、ブランチ間誤差検出部110に加えてブランチ間誤差検出部111、112を有する。さらに、第4の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置は、ブランチ間誤差検出部110、111、112のそれぞれの出力および補正制御部130と接続される誤差記憶部510を有する。その他の構成は第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置と同様であり、図1と同じ番号を付したものは同じ機能を有するため、説明を省略する。
ブランチ間誤差検出部111は、送信ブランチ102と送信ブランチ103との間に設けられ、送信出力検出部162、163と接続される。また、ブランチ間誤差検出部112は、送信ブランチ103と送信ブランチ104との間に設けられ、送信出力検出部163、164と接続される。
ブランチ間誤差検出部111、112はそれぞれ、送信出力検出部162、163、164から入力される信号に基づいて、送信ブランチ102、103及び104の送信信号の各出力レベル(振幅)と位相差に関する情報を検出する。そして、ブランチ間誤差検出部111、112は、検出した情報に基づいて誤差検出信号を生成し、補正制御部130へ出力する。ブランチ間誤差検出部111、112の構成及び動作は、図2に関連して説明したブランチ間誤差検出部110と同様である。
以下、第4の実施の形態フェーズドアレイ送信装置における、各送信ブランチ間の位相誤差及び振幅誤差に関する誤差補正の手順を説明する。第4の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置の基本動作は第1の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置と同様であり、ここでは第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
第4の実施の形態では、4つの送信ブランチ間の位相誤差及び振幅誤差を補正するために、以下のような動作を行う。まず、第1の実施の形態に示した手順によって送信ブランチ101と102の間の位相誤差及び振幅誤差を検出して補正し、同じ手順によって送信ブランチ102と103の間の位相誤差及び振幅誤差を検出して補正する。さらに、同じ手順によって送信ブランチ103と104の間の位相誤差及び振幅誤差を検出して補正することで、全ての送信ブランチ101〜104間の相互の位相誤差及び振幅誤差の補正を行う。
ここで、第4の実施の形態では、精度の良い補正を実現するため、補正後に各ブランチ間に残留する位相誤差および振幅誤差に注目する。図7に示すように、位相調整部181〜184および振幅調整部191〜194における位相および振幅の調整をディジタル値によって行う場合、ディジタル値を扱うためにステップ状に非連続な調整となる。このため、第1の実施の形態において説明したような位相誤差及び振幅誤差の補正を行った後に、図7(a)に示す位相調整部または振幅調整部のステップサイズS(本発明の調整単位に対応)以下の誤差が残留してしまう可能性がある。
具体的には、例えば図7(b)を参照して説明する。図7(b)において、V2は初期状態での送信ブランチ102の振幅であり、V3は初期状態での送信部探知103の振幅である。ここで、例えばV2とV3との差、すなわち初期状態での送信ブランチ102、103間の振幅誤差は、V2の方がV3よりも+2.3dBだけ大きいとする。そして、振幅調整部191、192の振幅調整ステップサイズが1.0dBであると仮定する。このような場合を想定すると、誤差の補正単位は1.0dB毎となるため、ステップサイズの2倍である2.0dBをV3に足した値から当該振幅誤差の値を見ると、+0.3dBの誤差が残留する。また、ステップサイズの3倍である3.0dBをV3に足した値から見ると、−0.7dBの誤差が残留する。このように、位相調整部または振幅調整部におけるステップサイズ未満の誤差、すなわち位相調整部および振幅調整部に補正しきれない誤差を残留誤差と称する。
ここで、残留誤差の絶対値が最小になるように位相誤差および振幅誤差の補正を行うようにすると、補正後の残留誤差の絶対値は最大で位相調整部および振幅調整部のステップサイズの半分の値(S/2)となる。このとき例えば、ブランチ間誤差検出部110、111、112による補正の結果、全ての補正後の残留誤差の値の正負が同一であった場合には、送信ブランチ101と送信ブランチ104の間の位相誤差および振幅誤差の最大値は3S/2となる。これは、各ブランチ間の残留誤差の最大値S/2が同一符号方向に累積されるからである。残留誤差の影響はN個のブランチのフェーズドアレイ送信装置についても同様に求められ、全てのブランチ間の誤差補正後における1番目とN番目の送信ブランチの間の誤差は、最大で((N−1)×S/2)となる。従って、隣接するブランチ間においては位相誤差および振幅誤差を予め設定した目標値以下に補正したとしても、フェーズドアレイ送信装置全体としての位相誤差および振幅誤差が目標値を超えてしまう事態が生じうる。
第4の実施の形態では、このような事態を回避するために、すなわち、補正後の残留誤差がフェーズドアレイ送信装置全体に与える影響を緩和するために、以下の各手順を実行する。
まず、第4の手順として、ブランチ間誤差検出部110が、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の位相誤差および振幅誤差の検出を行う。補正の方法は、第1の実施の形態において説明した方法と同様の方法を用いればよい。そして、補正制御部130は、位相誤差および振幅誤差の補正後の残留誤差の絶対値が最小値となるように補正値の算出を行う。
次に、第5の手順として、補正制御部130は、第4の手順で算出した補正値を用いて、第1の実施の形態の同様に、位相調整部181、182および振幅調整部191、192を制御する。この状態において、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部110により送信ブランチ101と送信ブランチ102の間に残留する位相誤差および振幅誤差を検出し、その値を誤差記憶部510に記憶させる。
なお、誤差記憶部510に記憶させる残留誤差の値は、絶対値ではなく、正負の符号を有する値である。残留誤差の値の正負は、例えば以下のように決定すればよい。すなわち、番号が大きい送信ブランチの出力信号の位相および振幅が、番号が小さい送信ブランチの出力信号の位相および振幅より大きい場合の誤差を正の値とし、逆の場合には負の値とする。すなわち、送信ブランチ101と送信ブランチ102と間の残留誤差の値は、送信ブランチ102の出力信号の位相および振幅が送信ブランチ101の出力信号の位相および振幅より大きい場合は正の値とし、小さい場合は負の値とすればよい。
なお、反対に、番号が小さい送信ブランチの出力信号の位相および振幅が、番号が大きい送信ブランチの出力信号の位相および振幅より大きい場合の誤差を正の値としてもよい。すなわち、フェーズドアレイ送信装置においては、全てのブランチ間の誤差補正において同一のルールに従って誤差値の正負の定義を行うようにすればよい。具体的には、送信ブランチ101と送信ブランチ102との間の誤差値を、送信ブランチ102の出力信号の位相および振幅が送信ブランチ101の出力信号の位相および振幅より大きい場合を正の値としたとする。この場合には、送信ブランチ102と送信ブランチ103との間の誤差値においても、同様に送信ブランチ103の出力信号の位相および振幅が送信ブランチ102の出力信号の位相および振幅より大きい場合を正の値としなければならない。それ以降のブランチ間の誤差値においても同様の定義を用いる。
次に、第6の手順として、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部111により送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の位相誤差および振幅誤差の補正を行う。この際、補正制御部130は、誤差記憶部510に記憶されている送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の位相および振幅の残留誤差の正負の符号と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の位相誤差及び振幅誤差の正負の符号とが反転するように、かつ、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の位相誤差及び振幅誤差の絶対値が最小となるように、補正値の算出を行う。すなわち、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の位相および振幅の残留誤差が正の値である場合には、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の位相誤差及び振幅誤差が負の値、かつ絶対値が最小となるように、補正値の算出を行う。そして、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値を誤差記憶部510に記憶させる。
第6の手順を完了した時点での送信ブランチ101と送信ブランチ103の間の位相誤差および振幅誤差は、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差と、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差との和となる。上述したように、両者の正負の符号が反転するように送信ブランチ102と送信ブランチ103の誤差補正値が決定されるため、これらの誤差の値が相殺され、結果として、送信ブランチ101と送信ブランチ103の間の位相誤差および振幅誤差の増加が抑制される。
以降、第6の手順と同様に、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値を用いて、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の位相誤差および振幅誤差の補正を行う。このような手順により、複数のブランチ間の位相誤差および振幅誤差が正負のいずれかに偏ることで、フェーズドアレイ送信装置全体での誤差の値が大きくなることを抑制できる。
以下、上記説明した第4の実施の形態における補正値の設定方法を、数値を例示して具体的に説明する。なお、簡単のため、振幅誤差についてのみ例示するが、位相誤差についても同様に設定すればよい。また、この例では振幅調整部のステップサイズを1.0dBとする。
まず、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値が+0.5dBである、すなわち、送信ブランチ101の振幅誤差値の方が送信ブランチ102の振幅誤差値より0.5dBだけ大きいとする。
次に、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値は、+0.3dB、あるいは−0.7dBであるとする。上述したように、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値は正の値である。このため、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値が、負の値である−0.7dBとなるように、振幅誤差の補正値を設定する。
さらに、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の残留誤差値は、+0.4dB、あるいは−0.6dBであるとする。上述したように、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値は負の値である。このため、補正制御部130は、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の残留誤差の値が、正の値である+0.4dBとなるように、振幅誤差の補正値を設定する。
以上のように、補正制御部130は、N−2番目とN−1番目の送信ブランチの間の残留誤差の正負の符号と、N−1番目の送信ブランチとN番目の送信ブランチの間の残留誤差の正負の符号とが反転するように補正値を算出する。なお、Nは3以上の整数であり、送信ブランチの数以下の値である。ここで、フェーズドアレイ送信装置全体の残留誤差の値の合計、すなわち送信ブランチ101と送信ブランチ104との間の残留誤差の値は、+0.2dBとなる。また、送信ブランチ間の残留誤差の値の最大値(絶対値)は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の値である0.7dBとなる。この値は、送信ブランチ101〜104間の残留誤差の値の符号が偏った場合、例えばすべて正の値であった場合の合計値である+1.2dBと比較して小さい値となる。
以上説明したように、第4の実施の形態では、補正制御部130は、N−2番目とN−1番目の送信ブランチの間の残留誤差の正負の符号と、N−1番目の送信ブランチとN番目の送信ブランチの間の残留誤差の正負の符号とが反転するように補正値を算出する。このため、複数のブランチ間の位相誤差および振幅誤差が正負のいずれかに偏ることで、フェーズドアレイ送信装置全体での誤差値が大きくなることを抑制することができる。
なお、第4の実施の形態では、送信ブランチが4つの場合について説明したが、上記第5の手順と第6の手順とを複数のブランチ間で繰り返すことにより、本開示は送信ブランチを5つ以上有する構成にも適用することができる。
(第5の実施の形態)
上記説明した第4の実施の形態においては、誤差記憶部510において、1つ前のブランチ間誤差補正を行った後の残留誤差を記憶し、現在のブランチ間誤差補正の補正値の算出に用いた。第5の実施の形態では、最初に誤差補正が行われるブランチ間から、1つ前に誤差補正が行われるブランチ間までの全てのブランチ間の残留誤差を誤差記憶部510で記憶して現在のブランチ間の補正値の算出に用いる。このような構成により、フェーズドアレイ送信装置全体としての位相誤差および振幅誤差が増大することを抑制できる。なお、第5の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置の各構成は、上述した第4の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置と同一である。補正制御部130が振幅誤差の補正値を算出する際に、送信ブランチ間の残留誤差の値の正負を設定する方法が上述した第4の実施の形態と異なっている。従って、以下では、第4の実施の形態とは異なる手順について説明を行う。
補正制御部130は、第4の実施の形態において説明した第4の手順から第6の手順を実行し、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の誤差補正および送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の誤差補正を行う。
次に、補正制御部130は第7の手順として、第6の手順で算出された補正値を用いて位相調整部182、183および振幅調整部192、193を制御する。この状態において、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部111を用いて送信ブランチ102と送信ブランチ103の間に残留する位相誤差および振幅誤差を検出する。さらに、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間のに残留誤差を第5の手順で誤差記憶部510に記憶されている送信ブランチ101と送信ブランチ102の間に残留する位相誤差および振幅誤差と足し合わせる。そして、足し合わせた値を新たに誤差記憶部510に記憶させる。
なお、補正制御部130は、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差とを足し合わせた値を誤差記憶部510に記憶させるのではなく、以下のようにしてもよい。すなわち、補正制御部130は、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差および送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差を、それぞれ個別に誤差記憶部510に記憶させておく。そして、補正制御部130は、後述する補正値の算出の過程において、これらの誤差の和を求めるようにしてもよい。
次に、第8の手順として、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部112により送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の位相誤差および振幅誤差の補正を行う。この際、補正制御部130は、誤差記憶部510に記憶されている送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の和の値の正負の符号と、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の位相誤差及び振幅誤差の正負の符号が反転するように、かつ、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の位相誤差及び振幅誤差の絶対値が最小となるように、補正値の算出を行う。すなわち、補正制御部130は、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差と、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差との和の値が正の値である場合には、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の誤差の値が負の値、かつ絶対値が最小となるように、補正値の算出を行う。そして、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値を誤差記憶部510に記憶させる。
すなわち、第5の実施の形態では、補正制御部130は、現在のブランチの1つ前までのブランチ間の残留誤差の累積値(積分値)を算出し、当該累積値の正負の符号と、現在のブランチ間の残留誤差の値の正負の符号とが反転するように補正値を算出する。ここで、現在のブランチの1つ前までのブランチ間の残留誤差の累積値の算出は、第5の手順等において予め誤差記憶部510に記憶された複数のブランチ間の残留誤差の値を用いて行うようにすればよい。
以下、上記説明した第5の実施の形態における補正値の設定方法を、数値を例示して具体的に説明する。なお、簡単のため、振幅誤差についてのみ例示する。
まず、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値が+0.5dBである、すなわち、送信ブランチ101の振幅誤差値の方が送信ブランチ102の振幅誤差値より0.5dBだけ大きいとする。
次に、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値は、+0.9dB、あるいは−0.1dBであるとする。上述したように、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値は正の値である。このため、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値が、負の値である−0.1dBとなるように、振幅誤差の補正値を設定する。
ここで、補正制御部130は、送信ブランチ101から送信ブランチ103までの残留誤差の値の累積値を算出し、誤差記憶部510に記憶させる。すなわち、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値+0.5dBと、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値が−0.1dBとを累積すると、累積値+0.4dBが得られる。
次に、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の残留誤差の値が、+0.8dB、あるいは−0.2dBであるとする。上述したように、送信ブランチ101と送信ブランチ103までの残留誤差の値の累積値は正の値である。このため、補正制御部130は、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の残留誤差の値が負の値である−0.2dBとなるように、振幅誤差の補正値を設定する。
補正制御部130は、以上のように現在の送信ブランチ間の残留誤差の値の正負が、1つ前までの送信ブランチ間の残留誤差の値の累積値の正負と反転するように、振幅誤差の補正値を設定する。ここで、フェーズドアレイ送信装置全体の残留誤差の値の合計、すなわち送信ブランチ101と送信ブランチ104との間の残留誤差の値は、+0.2dBとなる。また、送信ブランチ間の残留誤差の値の最大値(絶対値)は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の値である0.5dBとなる。これらの値は、送信ブランチ101〜104間の残留誤差の値の符号が偏った場合、例えばすべて正の値であった場合の合計値である+2.2dBと比較して小さい値となる。
以上説明したように、第5の実施の形態では、補正制御部130は、現在の送信ブランチ間の残留誤差の値の正負が、1つ前までの送信ブランチ間の残留誤差の値の累積値の正負と反転するように、振幅誤差の補正値を設定する。このため、複数のブランチ間の位相誤差および振幅誤差が正負のいずれかに偏ることで、フェーズドアレイ送信装置全体での誤差値が大きくなることを抑制することができる。
なお、第5の実施の形態では、送信ブランチが4つの場合について説明したが、本開示は送信ブランチを5つ以上有する構成にも適用することができる。すなわち、例えばN−1番目の送信ブランチとN番目の送信ブランチの間の誤差補正は、1番目の送信ブランチと2番目の送信ブランチの間の補正後の残留誤差から、(N−2)番目の送信ブランチとN−1番目の送信ブランチの間の補正後の残留誤差までの全ての残留誤差の累積値を用いて行うようにすればよい。なお、Nは3以上の整数であり、送信ブランチの数(M)以下の値である。
(第6の実施の形態)
上記説明した第5の実施の形態においては、1つ前までのブランチ間誤差補正後の残留誤差の累積値を、現在のブランチ間誤差補正の補正値の算出に用いた。第6の実施の形態では、1つ前までのブランチ間誤差補正後の残留誤差の累積値と、現在のブランチ間の残留誤差の値との和の絶対値が最小となるように、現在のブランチ間誤差補正値を算出する。このような構成により、フェーズドアレイ送信装置全体としての位相誤差および振幅誤差が増大することを抑制できる。なお、第6の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置の各構成は、上述した第4および5の実施の形態のフェーズドアレイ送信装置と同一である。補正制御部130が振幅誤差の補正値を算出する際に、送信ブランチ間の残留誤差の値の正負を設定する方法が上述した第4および5の実施の形態と異なっている。従って、以下では、第4および5の実施の形態とは異なる手順について説明を行う。
補正制御部130は、第4の実施の形態において説明した第4の手順から第6の手順を実行し、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の誤差補正および送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の誤差補正を行う。
次に、補正制御部130は第5の実施の形態において説明した第7の手順において、第6の手順で算出された補正値を用いて位相調整部182、183および振幅調整部192、193を制御する。この状態において、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部111を用いて送信ブランチ102と送信ブランチ103の間に残留する位相誤差および振幅誤差を検出する。さらに、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間のに残留誤差を第5の手順で誤差記憶部510に記憶されている送信ブランチ101と送信ブランチ102の間に残留する位相誤差および振幅誤差と足し合わせる。そして、足し合わせた値を新たに誤差記憶部510に記憶させる。
次に、第5の実施の形態において説明した第8の手順の代わりに、以下説明する第9の手順を実行する。すなわち、補正制御部130は、ブランチ間誤差検出部112により送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の位相誤差および振幅誤差の補正を行う。ここで、補正制御部130は、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の和の値と、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の誤差の値とを加算する。以下では、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の和の値を、送信ブランチ101から送信ブランチ103の残留誤差の累積値と称する。
なお、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の残留誤差の値としては、上述したように正の値と負の値の両方が存在する。従って、補正制御部130は、送信ブランチ101から送信ブランチ103の残留誤差の累積値と、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の誤差値の正負両方の値を足し合わせて、その絶対値が小さくなるように補正値を設定する。そして、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値を誤差記憶部510に記憶させる。
以下、上記説明した第6の実施の形態における補正値の設定方法を、数値を例示して具体的に説明する。なお、簡単のため、振幅誤差についてのみ例示する。
まず、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値が+0.5dBである、すなわち、送信ブランチ101の振幅誤差値の方が送信ブランチ102の振幅誤差値より0.5dBだけ大きいとする。
次に、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値は、+0.8dB、あるいは−0.2dBであるとする。ここで、補正制御部130は、現在の送信ブランチ103の1つ前までの送信ブランチ間残留誤差の値の累積値と、送信ブランチ102と送信ブランチ103との間の残留誤差の値との和を算出する。現在の送信ブランチ103の1つ前までの送信ブランチ間残留誤差の値の累積値は、送信ブランチ101と送信ブランチ102の間の残留誤差の値である+0.5dBである。この値と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値である+0.8dBあるいは−0.2dBとを加算すると、+1.3dBあるいは+0.3dBとなる。
補正制御部130は、このように算出した値のうち、絶対値が小さくなるように補正値を設定する。すなわち、この例では、現在の送信ブランチ103の1つ前までの送信ブランチ間残留誤差の値の累積値と、送信ブランチ102と送信ブランチ103との間の残留誤差の値との和が+0.3dBとなるように補正値を設定する。従って、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値が−0.2dBとなるように補正値を設定する。
次に、送信ブランチ103と送信ブランチ104の間の残留誤差の値は、+0.1dB、あるいは−0.9dBであるとする。ここで、補正制御部130は、現在の送信ブランチ104の1つ前までの送信ブランチ間残留誤差の値の累積値と、送信ブランチ103と送信ブランチ104との間の残留誤差の値との和を算出する。現在の送信ブランチ104の1つ前までの送信ブランチ間残留誤差の値の累積値は、送信ブランチ101から送信ブランチ103までの残留誤差の値の累積値である+0.3dBである。この値と送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値である+0.1dBあるいは−0.9dBとを加算すると、+0.4dBあるいは−0.6dBとなる。補正制御部130は、このように算出した値のうち、絶対値が小さくなるように補正値を設定する。すなわち、この例では、現在の送信ブランチ103の1つ前までの送信ブランチ間残留誤差の値の累積値と、送信ブランチ102と送信ブランチ103との間の残留誤差の値との和が+0.4dBとなるように補正値を設定する。従って、補正制御部130は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の残留誤差の値が+0.1dBとなるように補正値を設定する。
補正制御部130は、以上のようにN−2番目の送信ブランチとN−1番目の送信ブランチの間の残留誤差まですべての累積値を算出し、当該累積値と、N−1番目の送信ブランチとN番目の送信ブランチの間の残留誤差の取り得る値とを加算しする。そして、加算した値の絶対値が小さくなるように、位相および振幅の補正値を算出する。ここで、フェーズドアレイ送信装置全体の残留誤差の値の合計、すなわち送信ブランチ101と送信ブランチ104との間の残留誤差の値は、+0.2dBとなる。また、送信ブランチ間の残留誤差の値の最大値(絶対値)は、送信ブランチ102と送信ブランチ103の間の値である0.5dBとなる。この値は、送信ブランチ101〜104間の残留誤差の値の符号が偏った場合、例えばすべて正の値であった場合の合計値である+1.4dBと比較して小さい値となる。
以上説明したように、第6の実施の形態では、補正制御部130は、現在の1つ前までの送信ブランチ間の残留誤差の値の累積値と、現在の送信ブランチ間の残留誤差の値とを加算し、加算した値の絶対値が小さくなるように補正値を設定する。このため、複数のブランチ間の位相誤差および振幅誤差が正負のいずれかに偏ることで、フェーズドアレイ送信装置全体での誤差値が大きくなることを抑制することができる。