JP6574574B6 - 積層インダクタ - Google Patents

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本発明は積層インダクタに関する。具体的にはハードフェライトからなる層とソフトフェライトからなる層とを備えた積層インダクタに関する。
周知のごとく積層インダクタは、グリーンシートと呼ばれるペースト状にした磁性体材料のシート上に導体パターンとなるペースト状の金属を印刷したものを順次積層し、その積層したものを焼成してなる積層体に外部電極を設けたものである。そしてこのような積層インダクタでは、各層の導体パターンが順次層間で接続されることで積層方向に重畳しながら螺旋状に周回するコイルが形成され、そのコイルの周囲が電気絶縁性の磁性体で囲まれることになる。そのため積層インダクタには外部への磁気漏洩が少なく、比較的少ない巻数で必要なインダクタンスが得られるという特徴があり、小型化、薄型化に適している。
ところで電子機器に内蔵されるCPUやLSIなど集積回路における近年の技術的傾向は高周波数駆動と低電圧駆動にあると言える。そしてそのいずれもが大電流で駆動することを意味する。そのため集積回路の周辺部品であるインダクタには大電流が流れることとなる。したがってインダクタには大電流に対しても磁気飽和しない直流重畳特性の優れたものが求められる。その一方で電子機器に対する小型化への要求から回路部品にはさらなる小型化が求められている。
そこで、コイルが発生する磁束に対して逆向きに磁束を加えてバイアス(逆バイアス)し、B−H特性の基点を負側にシフトさせて磁気飽和するまでの磁束を増大させるという技術思想に基づいて、積層体の内部に軟磁性体材料からなる層(以下、ソフトフェライト層)と永久磁石の材料である硬磁性体材料からなる層(以下、ハードフェライト層)とを積層した積層インダクタがある。このような積層インダクタでは、ハードフェライト層は永久磁石として機能し、その永久磁石がコイルの磁束とは逆向きの磁束を発生する。それによって同一寸法であってもより大電流を流すことを可能としている。なおこのような永久磁石を組み込んだ積層インダクタについては、例えば以下の特許文献1などに記載されている。
特開2006−196591号公報
積層インダクタでは、普通、導体パターンを銀(Ag)を用いて形成している。周知のごとくAgの融点は約960℃と低い。そのため積層インダクタを構成する磁性体材料にはAgの融点以下で焼成しても十分な焼結密度が得られるという特性が求められる。そのためハードフェライト層の有無によらず、積層インダクタを構成するソフトフェライト層には、焼結性を高めるためのCuを含んだニッケル銅亜鉛系フェライト(Ni−Cu−Zn系フェライト)が用いられる。なお永久磁石となるハードフェライト層を備えた上記の積層インダクタでは、硬磁性体材料してバリウムフェライト(Baフェライト)やストロンチウムフェライト(Srフェライト)が用いられる。そして焼結助剤としては低融点ガラスなどがよく用いられる。ところが本発明者が永久磁石となるハードフェライト層を有する積層インダクタの特性向上を目的として研究を重ねた結果、ハードフェライト層とCuを含んだソフトフェライト層を積層して同時焼成すると、層間の界面反応により、Ni−Cu−Znフェライト中のCuがハードフェライト層側に偏析し、磁気特性が劣化したり抵抗率が低下したりするという問題があることが判明した。
そこで本発明は、永久磁石となるハードフェライト層を設けつつ、低温焼成が可能でかつCuの偏析に伴う特性劣化がない積層インダクタを提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明は、磁性体中にAgの導体パターンが形成されてなる焼結体を含む積層インダクタであって、
前記焼結体は、軟磁性体材料を含有するソフトフェライト層と硬磁性体材料を含有し永久磁石として機能するハードフェライト層とが積層された状態で一体的に焼成された前記磁性体を含み
前記ソフトフェライト層は、Cuを含まないNi−Znフェライトに1.5〜3.0wt%のBiが添加されてなり、
前記ハードフェライト層は、SiOを添加剤として含むBaフェライトにさらに5.0〜10wt%のBiが添加されてなる、
ことを特徴とする積層インダクタとしている。
本発明のその他の態様は、Ni−Znフェライトと1.5〜3.0wt%のBi とを含みCuを含まないソフトフェライト層となる第1層と、BaフェライトとSiO と5.0〜10wt%のBi とを含むハードフェライト層となる第2層とが積層された積層体を一体的に焼成し、磁性体を得る工程と、上記の積層体にAgの導体パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする積層インダクタの製造方法としている。
本発明の積層インダクタによれば、永久磁石となるハードフェライト層を設けつつ、低温焼成が可能でかつCuの偏析がなく、優れた磁性特性や高い焼結密度を有している。
ハードフェライト層とソフトフェライト層とからなる積層焼結体の元素マッピングを示す図である。
===積層インダクタ===
上述したように、永久磁石層を有する積層インダクタでは軟磁性体層に従来のNi−Cu−Znフェライトを用いるとCuが偏析するという問題があった。そこで本発明の実施例に係る積層インダクタでは、Cuを含まないニッケル亜鉛系フェライト(Ni−Znフェライト)を主成分とした軟磁性材料を用いてソフトフェライト層を形成している。具体的にはソフトフェライト層とハードフェライト層の双方に酸化ビスマス(Bi)が副成分として含まれている。
===ソフトフェライト層===
本発明の実施例に係る積層インダクタについて、まずソフトフェライト層の特性を評価するためにCuを含まないNi−Znフェライトを主成分とするとともに、副成分となるBiの添加量が異なる8種類の軟磁性材料の焼結体をサンプルとして作製した。
<サンプルの作製手順>
サンプルの作製手順としては、まず主成分であるNi−Znフェライトの原料となるFe、ZnO、およびNiOをそれぞれ49.0mol%、23.0mol%、および28.0mol%の割合で混合し、その混合物を950℃で仮焼成した。この仮焼成によって得られた粉体をさらに粉砕して得られた粉末に対し、Bi2O3を種類が異なるそれぞれのサンプルに応じた量だけ添加した。次にこの混合物にバインダー(例えば、PVA水溶液)を加えて混合し、適宜な大きさの粒子径(例えば1μm)の粉末となるように造粒する。その後、この造粒された粉末を目的とする形状に成形し、Agの融点よりも低い約900℃で3時間焼成して、Biを副成分として含むNi−Znフェライトを得た。
<特性評価>
上述した手順によって作製した各種サンプルについて、3000A/mでの最大磁束密度Bmと焼結密度dを測定した。
以下の表1に積層インダクタにおけるソフトフェライト層に対応する各種サンプルの特性を示した。
表1に示したように、Biの添加量が異なる8種類のサンプルA〜Gにおいて、Biの添加量が1.0wt%で最も少ないサンプルAでは、最大磁束密度Bm=311(mT)、焼結密度d=5.06(g/cm)であった。またサンプルA〜Gの最大磁束密度Bmを見ると、Biの添加量が1.0wt%のサンプルAに対し、1.5wt%の添加量のサンプルBでは急激に増加し、2.0wt%のサンプルCで最大磁束密度Bmが極大値(396mT)となり、以後はBiの添加量の増加に伴って最大磁束密度Bmが漸減していく。しかし添加量が7.0wt%のサンプルGにおいても最大磁束密度Bm=352mTであり、十分に大きな値を維持している。なおサンプルA〜Gの焼結密度dを見ると、Biの添加量が多いほど焼結密度dが高くなることがわかる。以上より、ソフトフェライト層にCuが含まれていなくてもBiを添加することで必要な焼結密度dが得られることが確認できた。そしてBiを1.5wt%以上添加すると最大磁束密度Bmが急激に増加し添加量が7.0wt%まではある程度大きな値を維持できた。したがってより好ましいBiの添加量の下限については1.5wt%以上とすればよい。上限については表1に示したBiの添加量が5.0wt%と7.0wt%のそれぞれに対する最大磁束密度Bmの増減傾向や、Biがレアメタルであることなどを考慮して7.0wt%以下とすればよい。
===ハードフェライト層===
次に本発明の実施例に係る積層インダクタにおけるハードフェライト層の特性を評価するために代表的な硬磁性材料に対し、Biの添加量が異なる各種硬磁性材料の焼結体をサンプルとして作製した。概略的にはBaフェライトに一般的な添加剤であるSiOが含まれている一般的な硬磁性材料に対し、Biの添加量を調整した各種硬磁性材料を焼結させてサンプルとした。
<サンプルの作製手順>
ハードフェライト層に相当するサンプルの作製手順は原材料が異なるだけで上記のソフトフェライト層に相当するサンプルとほぼ同じである。ここではハードフェライト層の主成分であるBaフェライトの原料の内、フェライトそのものの原料であるFeとBaCOをそれぞれ85.0mol%と15.0mol%の割合で混合し、その混合物を900℃で仮焼成した。この仮焼成によって得た粉体をさらに粉砕して得られた粉末に対しSiOとBiを添加した。SiOは一般的なBaフェライトでは周知の添加剤でありここでは0.4wt%とした。すなわちここまでの混合物を造粒して焼成すれば一般的なBaフェライトとなる。しかし本実施例に係る積層インダクタを構成するハードフェライト層にはソフトフェライト層と同じ添加物であるBiが含まれている。そのため仮焼成後のフェライト材料からなる粉末に0.4wt%のSiOとともにサンプルに応じた量のBiを添加した。次に仮焼成を経たフェライトの原材料と、添加剤であるSiOおよびBiの混合物にバインダーを加えて混合したものを造粒して成形する。そしてその成形物を約900℃で3時間焼成して、Biを副成分として含むBaフェライトを得た。
<特性評価>
上述した手順によって作製したサンプルについて、残留磁束密度Br、保持力Hc、および焼結密度dを測定した。
以下の表2にハードフェライト層に対応するサンプルの特性を示した。
表2に示したように、Biの添加量が異なる8種類のサンプルH〜Nにおいて、保持力Hcについては、Biの添加量に対して明確な傾向がなく、多少の増減があるものの1.0wt%〜7.0wt%の範囲でほぼ一定であると言える。焼結密度dについてはBiの添加量が1.0wt%で最も少ないサンプルHで3.62g/cmであり、添加量が多いほど焼結密度dが増加する傾向が認められた。残留磁束密度Brについては5.0wt%の添加量までは添加量が多いほど増加する傾向にある。5.0wt%を越えると飽和する傾向にある。そして添加量が1.5wt%以上で焼結密度dが4g/cmを越え、残留磁束密度Brの増加傾向が顕著なることから、Bi添加量は1.5wt%であることが望ましい。上限については焼成時の収縮率がソフトフェライト層を構成する軟磁性材料の収縮率と大きく乖離しない程度となるように調整すればよく、敢えて上限の最適値を設定する必要はないと思われる。しかし一般的な添加剤の上限添加量を考慮すれば10wt%程度とするのが妥当であると思われる。いずれにしても7.0wt%の添加量ではまったく問題が無かった。
===積層界面での特性===
実際の積層インダクタでは、上述したソフトフェライト層とハードフェライト層とが一体的な焼結体(以下、積層焼結体)として同時に焼成される。そこでソフトフェライトの組成が異なる2種類の積層焼結体を作製した。一方の種類はサンプルCを作製する際に用いた軟磁性材料とサンプルJを作製する際に用いた硬磁性材料とを互いに積層したものを900℃で3時間焼成してなる積層焼結体である。他方の種類はサンプルCにおけるBiに代えてCuOを2.0wt%添加したNi−Cu−Znフェライトからなる軟磁性材料と、サンプルJを作製する際に用いた硬磁性材料とを互いに積層したものを900℃で3時間焼成してなる積層焼結体である。そして各種類の積層焼結体の積層界面付近の元素の分散状態を蛍光X線分光分析法など用いて調べた。そしてその分散状態を元素マッピングによって可視化した。
図1に作製した2種類の積層焼結体(1a、1b)における元素マッピングの結果を示した。図1(A)および(C)はソフトフェライト層にCuを含まない積層焼結体(以下、焼結体1aとも言う)におけるBiおよびCuについての元素マッピングであり、図1(B)および(D)はNi−Cu−Znフェライトをソフトフェライト層とした積層焼結体(以下、焼結体1bとも言う)におけるBiおよびCuの元素マッピングである。そして図中では元素の分布度合いが濃淡によって表現されており、特定の元素が多いほど濃度が低く(淡く)なっている。なお図1(A)〜(D)において図中の白点線が積層界面2であり、その積層界面2に対して紙面上側がハードフェライト層3であり下側がソフトフェライト層4である。
まず図1(A)より、本発明の実施例に対応する焼結体1aではハードフェライト層3とソフトフェライト層4の双方にBiが添加されていることから、ハードフェライト層3とソフトフェライト層4の双方にBiが分布しており、かつその分布の度合いに大きな差がない。一方比較例となる焼結体1bではハードフェライト層3にのみBiが含まれており、図1(B)を見ると積層境界2の近傍ではBiを含まないソフトフェライト側4にも若干のBiが分布していることがわかる。
そしてCuについての分布を見てみると、まず図1(C)に示した焼結体1aではハードフェライト層3にはもちろん、ソフトフェライト層4にもCuが含まれていないことから、当然のごとくCuの分布がまったく認められない。一方ソフトフェライト層4が従来のNi−Cu−Znフェライトからなる焼結体1bでは、図1(D)に示したように、多量のCuが積層境界2に偏析しており、Ni−Cu−Znフェライト層内のCu濃度が不均一になっていることが確認できる。すなわち単体のNi−Cu−Znフェライトの磁気特性、電気特性が得られていないと予想される。以上より、本発明の実施例に係る積層インダクタでは、ソフトフェライト層3にCuを含まない焼結体1aと同様の構成を備えていることから、実質的に界面反応が無く、磁気特性が劣化したり抵抗率が低下したりするという問題が発生しない。
1a,1b 積層焼結体、2 積層界面、3 ハードフェライト層、
4 ソフトフェライト層

Claims (3)

  1. 磁性体中にAgの導体パターンが形成されてなる焼結体を含む積層インダクタであって、
    前記焼結体は、軟磁性体材料を含有するソフトフェライト層と硬磁性体材料を含有し永久磁石として機能するハードフェライト層とが積層された状態で一体的に焼成された前記磁性体を含み
    前記ソフトフェライト層は、Cuを含まないNi−Znフェライトに1.5〜3.0wt%のBiが添加されてなり、
    前記ハードフェライト層は、SiOを添加剤として含むBaフェライトにさらに5.0〜10wt%のBiが添加されてなる、
    ことを特徴とする積層インダクタ。
  2. Ni−Znフェライトと1.5〜3.0wt%のBi とを含みCuを含まないソフトフェライト層となる第1層と、BaフェライトとSiO と5.0〜10wt%のBi とを含むハードフェライト層となる第2層とが積層された積層体を一体的に焼成し、磁性体を得る工程と、
    前記積層体にAgの導体パターンを形成する工程と、
    を有することを特徴とする積層インダクタの製造方法。
  3. 請求項2に記載の積層インダクタの製造方法であって、
    前記第1層は、Fe 、ZnO、およびNiOをそれぞれ49.0mol%、23.0mol%、および28.0mol%の割合で混合され仮焼成された前記Ni−Znフェライトの原料に1.5〜3.0wt%のBi が添加されてなり、
    前記第2層は、Fe とBaCO をそれぞれ85.0mol%と15.0mol%の割合で混合され仮焼成されたBaフェライトの原料に、SiO と5.0〜10wt%のBi とが添加されてなる、
    ことを特徴とする積層インダクタの製造方法。
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