本発明のフォトクロミック組成物は、(I)多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂(以下、I成分とも言う。)、及び(II)フォトクロミック化合物(以下、II成分とも言う。)を含んでなることを特徴とする。以下、これらI成分およびII成分について説明する。
<I成分:多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂>
本発明のフォトクロミック組成物において、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂(以下、単に「ポリウレタンウレア樹脂」とも言う)を用いることが特徴である。上記ポリウレタンウレア樹脂は、分子鎖中にウレア結合(−R−NH−CO−NH−)を有するポリウレタン樹脂である。このように狭い範囲の多分散度を有することによって、本発明のポリウレタンウレア樹脂は、良好な接着力、耐熱性、及び耐汗性を有する。なお、多分散度が低いほど、すなわち多分散度が1.0に近いほど、本発明の効果が発現する傾向にあるが、多分散度が1.6未満であるポリウレタンウレア樹脂は、工業的製造方法においては実質困難だと考えられ、多分散度が2.4を超える場合には、低分子量のポリウレタンウレア樹脂の影響により、軟化開始温度が低温となるため、多分散度が狭い樹脂と比較して、耐熱性に劣り、高温下での密着性が低下する。また、高分子量ポリウレタンウレア樹脂の影響により、多分散度が狭い樹脂と比較して、有機溶剤に溶解した際の粘度が著しく上昇し、塗工が困難となる。良好な接着力、耐熱性、及び塗工性の観点から、本発明のポリウレタンウレア樹脂の多分散度は、1.8〜2.2の範囲であることがより好ましい。
また、本発明のポリウレタンウレア樹脂の分子量は、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が上記範囲を満足するものであれば特に制限されるものではないが、接着力、耐熱性、及び耐汗性の観点から、数平均分子量が5千〜10万、特に8千〜5万であり、1万〜4万であることが最も好ましい。
なお、上記ポリウレタンウレア樹脂の数平均分子量、及び重量平均分子量は、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタンウレア樹脂試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定し、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いて算出した値である。また、多分散度は、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、上記方法によって求められた数平均分子量、及び重量平均分子量より算出される値である。
本発明のフォトクロミック組成物におけるI成分は、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が上記の範囲を満たすポリウレタンウレア樹脂であれば特に制限されるものではないが、接着性、耐熱性、及び耐汗性の観点から、
(A)分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物と、
を反応して得られるものであることが好ましく、さらに、
(C)分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物と、
を反応して得られるものであることが好ましい。このようなポリウレタンウレア樹脂においては、原料である(B)成分としてポリアミン化合物を使用することに起因して、分子内にウレア結合が導入される。以下、これらの成分について説明する。
<A成分:分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー>
上記ポリウレタンウレア樹脂の構成成分である分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A成分)としては、公知のウレタンプレポリマーを用いることが可能である。中でも、
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどの少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物と、
を反応して得られるものであることが好ましい。
<A1成分:ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどの少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物>
上記ポリオール化合物(A1成分)としては、生成するポリウレタンウレア樹脂(I成分)が高架橋体になり過ぎないという理由から分子中に含まれる水酸基数が2〜6であることが好ましく、有機溶剤への溶解性を考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数は2〜3であることがより好ましい。また、前述のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどのポリオール化合物は、単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わないが、耐熱性、接着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、特にポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。以下、A1成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
<ポリカーボネートポリオール>
A1成分として使用されるポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上のホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等によるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。この低分子ポリオール類なかでも、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂(I成分)の接着性、及び耐熱性の観点から、直鎖のアルキル鎖を有する低分子ポリオール類がより好ましく、側鎖にアルキル基を有する低分子ポリオールから合成されたポリカーボネートポリオールは、接着性が低下する傾向が見られる。
A1成分としてのポリカーボネートポリオールにおいては、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂(I成分)の耐熱性の観点から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリカーボネートポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
<ポリカプロラクトンポリオール>
A1成分として使用されるポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が使用できる。A1成分としてのポリカプロラクトンポリオールにおいては、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリカプロラクトンポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとしては、分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体である、ポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることが出来る。
なお、上記分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの分子中に水酸基を1個以上有するグリコール、グリセリン等のポリオール化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエーテルポリオールにおいては、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリエーテルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどを挙げることができる。
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエステルポリオールにおいては、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリエステルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
<A2成分:分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物>
上記ジイソシアネート化合物(A2成分)としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からA2成分の30〜100質量%、特に50〜100質量%が脂肪族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。
A2成分として好適に使用できるジイソシアネート化合物を例示すれば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物などを挙げることができる。
これらの中でも、得られるポリウレタンウレア樹脂(I成分)の耐候性の観点から、上記の通り、A2成分のジイソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好ましい。好適な化合物を具体的に例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
<(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物>
前記分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物(B成分)は、分子内に2つ以上のアミノ基(−NH2、または−NH(R)。但し、Rはアルキル基、特に炭素数1〜5のアルキル基を意味する。)を有するポリアミン化合物である。
該B成分は、ポリウレタンウレア樹脂(I成分)を合成する際の鎖延長剤として機能するものであり、鎖延長剤として、B成分を用いることによりポリウレタン樹脂中にウレア結合が導入され、ポリウレタンウレア樹脂となる。
得られるポリウレタンウレア樹脂(I成分)を適度の硬さにし、また、接着性、及び耐熱性を良好に維持するためには、ポリアミン化合物の分子量は、50〜300であることが好ましく、50〜250であることがより好ましく、100〜220であることが最も好ましい。
B成分のポリアミン化合物としては、ジアミン、及びトリアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に使用し得る。本発明においてポリアミン化合物として好適に使用される化合物を具体的に例示すれば、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物においては、接着性、及び耐熱性などの観点から、特にジアミン化合物を使用することが好ましい。この理由は、ウレタンウレア樹脂(I成分)を合成する際に、ポリアミン化合物を用いることにより、ウレア結合を有することになり、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固となるため、耐熱性が向上するものと推定している。また、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合がより強固となることによって、空気中の酸素が該ポリウレタンウレア樹脂(I成分)中へ拡散し難くなり、該ポリウレタンウレア樹脂の光酸化劣化が抑制されたためであると推定している。さらに、接着力が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって樹脂の凝集破壊が起こりにくくなったためであると推定している。
また、前記ポリアミン化合物のなかにおいて、耐水性、及び耐汗試験への安定性の観点から、イソホロンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミンを用いることがより好ましく、その中でも、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを用いることが最も好ましい。
<(C)分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物>
上記のポリウレタンウレア樹脂を合成する際に、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物(C成分)を併用することも可能である。このC成分を使用することにより、分子鎖の末端がキャッピングされたポリウレタンウレア樹脂となる。前述のイソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH2基、及び−NH(R)基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕が挙げられる。上記のC成分の中でも、分子内に少なくとも1つのピペリジン構造を有する機能性付与化合物であることが好ましい。この機能性付与化合物は、ピペリジン構造の代わりにヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するものであってもよい。ただし、最も優れた効果を発揮するのは、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物である。
このような機能性付与化合物を用いることによって、ポリウレタンウレア樹脂(I成分)にピペリジン構造を導入することができる。その結果、光安定性能、酸化防止性能、及び紫外線吸収性能等の機能性に優れたポリウレタンウレア樹脂(I成分)を得ることができる。
以下、C成分として使用される各種化合物について、代表例としてピペリジン構造を有する化合物などを詳しく説明する。
<ピペリジン構造を有する化合物>
ポリウレタンウレア樹脂におけるC成分として使用されるピペリジン構造を有する化合物としては、下記一般式(i)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
(式中、
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に、メチル基であることが好ましい。)。そして、上記ピペリジン環の窒素原子、または、4位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物が、ピペリジン構造を有する化合物に該当する。
以下、より具体的な化合物について説明する。
本発明でC成分として使用される化合物の中で、本発明のI成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物などを使用することが好適に挙げられる。
(式中、
R1、R2、R3、及びR4は、前記一般式(i)におけるものと同義であり、
R5は、炭素数1〜10アルキル基、または水素原子であり、
R6は炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、aは0または1であり、
Xは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
上記一般式(1)において、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
R5は、炭素数1〜10アルキル基、または水素原子である。中でも、入手の容易さの観点から、炭素数1〜4アルキル基、または水素原子であることが好ましい。なお、R1〜R4が炭素数1〜4のアルキル基であるため、R5が水素原子であっても、立体障害の影響でR5が結合している窒素原子とイソシアネート基が反応することはない。
R6は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、aは、R6の数を示すが、aが0の場合は、Xが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
Xは、イソシアネート基と反応しうる基であり、好ましくは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、入手の容易さなどの観点からアミノ基、及び水酸基であることが好適である。
上記式(1)で示される化合物を具体的に例示すれば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどを挙げることができる。
<その他のC成分>
上記C成分としては、前述したピペリジン構造を有する耐候性の向上を目的とした化合物以外にも、一般的なアミン、アルコール、チオール、及びカルボン酸を用いることができる。これらの化合物は、分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有することにより、I成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端を、不活性化することができる。
本発明で使用されるその他のC成分の中でも、好ましい化合物としては、下記一般式(2)、及び(3)を挙げることができる。
(式中、
R7は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であり、
R8は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはエステル基である。)
R7が水素原子である化合物をC成分として用いた場合には、I成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端は、−NH(R8)基となるが、この−NH(R8)基は、他のポリマー、およびイソシアネート化合物とは実質的に反応しない。そのため、−NH(R8)基は、イソシアネート基と反応しうる基には該当しない。
上記一般式(2)において、R7は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子である。中でも、R7は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基、または水素原子であることが好ましい。前記アリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR7を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、又は水素原子等が挙げられる。
また、R8は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基である。中でも、R8は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。前記アリール基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR8を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、又はカルボキシプロピル基等が挙げられる。
下記一般式(3)
(式中、
R9は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であり、
Zは、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。)
で示される化合物も好適に使用できる。
上記一般式(3)において、R9は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であり、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。このアリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。好ましい基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子を有するフェニル基が挙げられる。好適なR9を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、及びカルボキシプロピル基等が挙げられる。
上記一般式(3)におけるZは、イソシアネート基と反応しうる基であり、具体的には水酸基、カルボキシル基、またはチオール基であり、好ましくは水酸基である。
上記一般式(2)、及び(3)で示される具体的な化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、4−ヘプチルアミン、オクチルアミン、1,1−ジプロピルブチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルヘプチルアミン、メチルオクチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、エチルヘキシルアミン、エチルヘプチルアミン、エチルオクチルアミン、プロピルブチルアミン、イソプロピルブチルアミン、プロピルペンチルアミン、プロピルヘキシルアミン、プロピルヘプチルアミン、プロピルオクチルアミンなどのアミン類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デカノール、2−デカノールなどのアルコール類、メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、プロパンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、2−メチルプロパンチオール、3−メチル−2−ブテンチオール、1,1−ジメチルヘプタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール、2,6−ジメチルベンゼンチオールなどのチオール類、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸などのカルボン酸類などが挙げられる。
以上のC成分は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても構わないが、ポリウレタンウレア樹脂の耐久性を向上させるという観点から、ピペリジン構造を有する化合物を用いることが好適である。
<ポリウレタンウレア樹脂におけるA1、A2、B、及びC成分の使用量>
上記本発明のフォトクロミック組成物におけるポリウレタンウレア樹脂(I成分)を構成する上記各成分、即ちA1成分、A2成分、B成分、およびC成分の量比は、ポリウレタンウレア樹脂を使用する用途等を勘案して適宜決定すればよいが、得られるポリウレタンウレア樹脂の耐熱性、接着力などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、B成分に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基等)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.4〜0.8/1.0/0.19〜0.59/0.01〜0.2となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.45〜0.75/1.0/0.23〜0.53/0.02〜0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.65〜0.75/1.0/0.23〜0.33/0.02〜0.1となる量比とすることが最も好ましい。ここで、上記n1〜n4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
上記ポリウレタンウレア樹脂(I成分)においては、末端には反応性の基を有さないことが好ましい。特に、末端にイソシアネート基が残存しないように不活性化させることが好ましい。そのため、製造時には、n2=n1+n3+n4となるような配合割合で製造することが好ましい。n2よりもn1、n3、及びn4の合計モル数(n1+n3+n4)が大きい場合には、再沈殿等により、未反応のA1、B、C成分を除去してやればよい。
上記A1成分、A2成分、B成分、及び、必要に応じてC成分を反応させて、本発明のポリウレタンウレア樹脂(I成分)を得る方法としては、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が上記範囲を満足する様に反応させればよく、所謂ワンショット法又はプレポリマー法のいずれの方法も採用することができる。しかしながら、多分散度を制御し効率良くポリウレタンウレア樹脂を得るという観点から、プレポリマー法が好ましい。特に後述する製造方法によれば、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が上記範囲を満足するポリウレタンウレア樹脂を簡便に製造することが可能である。
<ポリウレタンウレア樹脂の製造方法>
<ウレタンプレポリマー(A)の製造方法>
本発明のフォトクロミック組成物に用いるポリウレタンウレア樹脂は、一般にウレタンプレポリマーとジアミン等のポリアミンとの反応によって製造することができるが、ウレタンプレポリマー(A成分)は、上記ポリオール化合物(A1成分)と、上記ジイソシアネート化合物(A2成分)とを反応(以下、「プレポリマー反応」ともいう)させることによって製造することができる。
A1成分とA2成分を反応させる際の添加順序は特に制限されず、必要に応じて反応途中に適宜、A1成分及びA2成分を追加添加することも可能である。
A1成分とA2成分との反応は、有機溶媒の存在下または非存在下で両者を、好ましくは窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中で、反応温度70〜130℃で反応させればよい。反応温度が70℃未満の場合には反応が完結せず、また130℃を超える場合にはA1成分の一部が分解してしまい、所望の物性のウレタンウレア樹脂を得られなくなってしまう。反応時間は、A1成分とA2成分の仕込み比、及び反応温度によっても変化するが、0.5〜24時間の範囲で反応させればよい。
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。これらの有機溶媒は、2種類以上混合して使用することも出来る。
有機溶媒を使用する場合には、その使用量はA1成分とA2成分の合計量を100質量部とした際に、200質量部以下であることが好ましい。有機溶媒の使用量が200質量部を超える場合には、A1成分とA2成分の反応時間が長くなり、A1成分の一部が分解するおそれがある。
反応に際しては、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を用いてもよい。触媒を使用する際の添加量としては、A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
<ポリウレタンウレア樹脂の製造方法>
ポリウレタンウレア樹脂は、一般にウレタンプレポリマーとジアミン等のポリアミンとの反応によって製造することができるが、ウレタンプレポリマー(A成分)と、ポリアミン化合物(B成分)とを反応させる際に、A成分とB成分との完全混合時間(θM)が30秒以下、好ましくは15秒以下にすることにより、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂を得ることができる。
完全混合時間(θM)とは、撹拌槽(反応容器など)における混合特性を表わす指標であり、n・θM(nは撹拌翼の回転数(1/秒))とRe(レイノルズ数;液の乱れ状態を表す指標)との関係を示す「n・θM−Re曲線」から求められる。完全混合時間(θM)及びn・θM−Re曲線については、例えば、「住友重機械工業 技報 vol.35 No.104 1987年8月 p74−78」、特開昭61−200842号公報、特開平6−312122号公報などに記載されている。
完全混合時間(θM)を、30秒以下にするための手段としては、任意の適切な方法を採用すれば良いが、撹拌槽(反応容器など)内に邪魔板等を設置し乱流を発生させる方法や、任意の適切な撹拌翼を用いる方法などが挙げられる。適切な撹拌翼としては、マックスブレンド翼、フルゾーン翼などが挙げられる。
また、前記の方法にてウレタンプレポリマーを製造した場合には、上記プレポリマー化反応後の反応液にB成分を添加し、連続的にポリウレタンウレア樹脂の製造を行っても良い。
上記のポリウレタンウレア樹脂の製造方法における他の反応条件については、製造設備等を勘案して適宜決定すれば良いが、多分散度が狭い範囲にあるポリウレタンウレア樹脂が得られるという観点から、有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中で、反応温度−20〜40℃の範囲で、より好ましくは、−10〜20℃の範囲で反応させればよい。反応温度が−20℃未満の場合には、鎖延長反応後半で粘度が上昇し撹拌不足となるため、また、反応温度が40℃を超える場合には、ウレア結合の形成反応が速く、A成分とB成分が接触直後に反応することによって不均一な反応となりやすく、多分散度が広がる傾向にある。上記反応温度における反応時間は0.5〜3時間程度で十分である。
上記本発明の製造方法における有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルなどのアルコール系有機溶媒も使用できる。これらの有機溶媒は、2種類以上混合して使用することも出来る。
上記有機溶媒の使用量は、効率的に反応を行うとの観点や、残留する有機溶媒の影響等の観点から、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂の合計量を100質量部とした際に、130〜800質量部の範囲であることが好ましく、150〜500質量部の範囲であることがより好ましい。
反応に際しては、反応系中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び有機溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を新たに加えても良いし、プレポリマー反応で使用した場合には除去することなくそのまま使用してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、ポリウレタンウレア樹脂の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
本発明のポリウレタンウレア樹脂(I成分)を合成する際に、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物(C成分)を併用することも可能である。このC成分を使用することにより、分子鎖の末端がキャッピングされたポリウレタンウレア樹脂となる。
上記、分子鎖の末端がキャッピングされたポリウレタンウレア樹脂を得る方法(以下、「末端修飾反応」とも言う)は、前述のA成分とB成分の反応が終了し、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンウレア樹脂が有機溶剤に溶解している反応液に、必要に応じて有機溶剤で希釈したC成分を滴下して加える方法が好適である。また、前述のA成分とB成分の反応の際に添加したアルコール系有機溶剤をC成分として末端修飾反応に使用する場合には、新たにC成分を添加しなくても良い。
上記の末端修飾反応は、有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中で実施すれば良い。反応温度は、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基の場合には、前述のA成分とB成分の反応の時と同様な温度−20〜30℃で反応させればよい。しかしながら、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基以外の場合には、イソシアネート基との反応速度が遅いため、30℃を超え130℃以下で反応させることが好ましい。
反応時間は、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基の場合には0.5〜3時間程度で、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基以外の場合には1時間〜24時間程度反応させればよい。
有機溶媒としては、前述のプレポリマー反応、及びA成分とB成分の反応に使用した有機溶剤を使用できる。また、当然のことながら、前述のプレポリマー反応、及びA成分とB成分の反応で使用した有機溶剤を含んだ状態で、末端修飾反応を実施しても構わない。
末端修飾反応における有機溶媒の使用量は、最終的に得られるA成分の合計量を100質量部とした際に、130〜800質量部の範囲であることが好ましい。
反応に際しては、反応系中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び有機溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を新たに加えても良いし、プレポリマー反応までに触媒を使用した場合には除去することなくそのまま使用してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
次に、本発明のII成分であるフォトクロミック化合物について説明する。
<II成分:フォトクロミック化合物>
本発明のフォトクロミック組成物でII成分として用いるフォトクロミック化合物をとしては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
これら他のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ(2,1−f)ナフト(2,1−b)ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるため好適である。
本発明において特に好適に使用できるフォトクロミック化合物を具体的に例示すると、以下のものが挙げられる。
本発明のフォトクロミック組成物におけるII成分の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、I成分100質量部に対して0.1〜20.0質量部とすることが好適である。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向があり、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、フォトクロミック組成物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との接着性を十分に保持するためには、II成分の添加量はI成分100質量部に対して0.5〜10.0質量部、特に1.0〜7.0質量部とすることがより好ましい。ただし、本発明のフォトクロミック組成物にIII成分を配合する場合には、II成分の添加量は、I成分とIII成分の合計量100質量部に対して0.1〜20.0質量部とすることが好ましく、0.5〜10.0質量部とすることがより好ましく、1.0〜7.0質量部とすることがさらに好ましい。
<III成分:分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物>
本発明のフォトクロミック組成物において、前記ポリウレタンウレア樹脂(I成分)と、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(III成分)とを反応させて得られる生成物を含むことにより、後述する光学物品の接着(密着)強度をより向上させることができるため好ましい。III成分の分子内に、2つ以上のイソシアネート基を有することにより、フォトクロミック性接着層を形成する際に、I成分と反応し、橋架け構造を有するポリウレタンウレア樹脂を生成することができる。この橋架け構造がI成分中に形成されたことによって、ポリウレタンウレア樹脂の耐熱性が向上するとともに、凝集破壊が起こりにくくなったため、接着性向上の効果が高くなると考えられる。ただし、操作性、得られるフォトクロミック組成物の粘度、保存安定性等を考慮すると、イソシアネート基の数は2〜3であることが好ましい。その中でも、2級炭素に結合したイソシアネート基を有する化合物を使用することが好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記III成分として具体的には、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物や、イソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。
本発明のフォトクロミック組成物において、III成分の分子量は、特に制限されるものではないが、1000未満であることが好ましい。該III成分の分子量が1000以上の場合、得られるフォトクロミック性接着層の耐熱性、および膜強度が低下する傾向がある。これは、分子量が大きいIII成分を用いると、イソシアネート基間の結合数が増える傾向にあり、たとえ橋架け構造を形成したとしても架橋点間の距離が長くなり、耐熱性があまり向上しないために接着性も十分に向上しないと考えられる。よって、III成分の分子量は、1000未満であることが好ましく、より好ましくは800以下、最も好ましくは500以下である。このIII成分は、前記の通り、ポリマーではない方が好ましい。そのため、III成分の分子量は、III成分そのものの分子量を指す。III成分の分子量の下限は、その単体化合物の分子量であり、特に制限されるものではないが、100である。
本発明のフォトクロミック組成物におけるIII成分の配合量は、接着性、耐熱性、耐汗性、及びフォトクロミック特性の観点から、I成分100質量部に対して4.0〜20.0質量部とすることが好適である。III成分の配合量がこの範囲を満足することにより、得られるフォトクロミック組成物が優れた効果を発揮する。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な接着性、及び耐熱性の向上効果が得られず、多すぎる場合には、該フォトクロミック組成物から得られる接着層の白濁、接着性の低下、フォトクロミック化合物の耐久性低下などが起こる傾向がある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との接着性を向上させるためには、III成分の配合量は、I成分100質量部に対して6.0〜17.5質量部、特に7.0〜15.0質量部とすることが好ましい。この際、III成分のイソシアネート基の割合は、I成分100質量部に対して1.0〜10.0質量部、より好ましくは1.5〜6.0質量部、もっとも好ましくは2.0〜5.0質量部である。ここで、イソシアネート基の量は、III成分の分子量、1分子当たりのイソシアネート基の数、及びイソシアネート基の分子量から求めることができる。
I成分とIII成分との反応生成物は、本発明のフォトクロミック組成物を用いて樹脂製シート又はフィルムどうしを貼付して得られる積層体の物性、得られた積層体を用いて曲げ加工や射出成型により成型体を製造する際の加工安定性の観点、及びそれら積層体の接着性の観点、さらにはこれら積層シート又は成型体の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点から、通常60〜200℃、特に80〜150℃の耐熱性を有していることが好ましい。なお、ここでいう耐熱性とは、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した軟化点を意味する。
〔測定条件〕 昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブ。
<その他の成分>
さらに、本発明で使用するフォトクロミック組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、I成分を溶解できる溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
例えば、I成分を溶解できる溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、フォトクロミック組成物への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン性界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、さらにはシリコーン系やフッ素系の界面活性剤等を挙げることができる。
界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、I成分100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの添加剤の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、I成分100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。但し、これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネート樹脂製の樹脂製シート又はフィルムなどへのフォトクロミック組成物の接着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
<フォトクロミック組成物の製造方法>
本発明のフォトクロミック組成物は、上記I成分、II成分、及びその他の成分を混合することにより製造することができる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではない。
例えば、各成分を溶融混練してフォトクロミック組成物としペレット化することも可能であり、そのままシート成型することも可能である。また、ジメチルホルムアミドのような有機溶媒を使用する場合には、各成分を有機溶剤に溶かすことでフォトクロミック組成物を得ることができる。
このようにして得られた本発明のフォトクロミック組成物は、フォトクロミック性接着剤、特にポリカーボネート樹脂製の樹脂製シート又はフィルムどうしを接合するためのフォトクロミック性接着剤として好適に使用できる。そして、本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して樹脂製シート又はフィルムを互いに接合することにより、積層体を得ることができる。
以上のような製造方法の中でも、本発明のフォトクロミック組成物は、一般的な有機溶媒に溶解しない成分を含むため、次のような方法で製造することが好ましい。
すなわち、
(I)ポリウレタンウレア樹脂、(II)フォトクロミック化合物、必要に応じて、(III)ポリイソシアネート化合物、および、有機溶媒を所定の配合量で混合した後、乾燥して有機溶媒を除去すると共に、前記(I)ポリウレタンウレア樹脂と前記(III)ポリイソシアネート化合物とを反応させることにより、フォトクロミック組成物を製造する方法である。この方法では、I成分、II成分、III成分、及び有機溶媒を含む組成物から有機溶媒を除去する工程を経ることで本発明のフォトクロミック組成物を得ることができるため、以下、I成分、II成分、III成分、及び有機溶媒を含む組成物を前駆体組成物とする場合もある。この前記前駆体組成物には、上記した「その他成分」を配合することも可能である。
前駆体組成物からフォトクロミック組成物を製造するためには、例えば、前駆体組成物を基材上に塗布した後、乾燥して有機溶媒を除去する際に、I成分とIII成分とを反応させることが好ましい。先ず、有機溶媒について説明する。
<有機溶媒>
上記の製造方法において有機溶媒を使用することにより、ポリウレタンウレア樹脂(I成分)、ポリイソシアネート化合物(III成分)、及びフォトクロミック化合物(II成分)、さらには、必要に応じて添加されるその他の成分が混合しやすくなり、前駆体組成物の均一性を向上させることができる。また、前駆体組成物の粘度を適度に調整することができ、樹脂製シート又はフィルムに前駆体組成物を塗布するときの操作性および塗布層厚の均一性を高くすることもできる。なお、樹脂製シート又はフィルムとして有機溶媒に侵され易い材質のものを使用した場合には、外観不良が生じたり、フォトクロミック特性が低下したりするという問題が発生することが懸念されるが、このような問題は、後述する方法を採用することにより回避することが出来る。また、前駆体組成物においては、後述するように、様々な種類の溶媒が使用できるので、溶媒として樹脂製シート又はフィルムを侵し難い溶媒を選択して使用することによっても上記問題の発生を防止することができる。
好適に使用できる有機溶媒を例示すれば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、t−ペンチルアルコール2,2,2−トリフルオロエタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、n−ブチルメチルケトンなどのケトン類;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート類;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタン及びこれらの組み合せを挙げることができる。
これらの中から、使用するI成分の種類や樹脂製シート又はフィルムの材質に応じて適宜選定して使用すればよいが、前駆体組成物にはポリイソシアネート化合物(III成分)が含まれるため、イソシアネート基と反応する基を含まない有機溶剤を使用することがより好ましい。よって、より好適なD成分としては、I成分の溶解性、及びIII成分への非反応性の観点から、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、n−ブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート類;DMF;DMSO;THF;シクロペンタノン、シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタンなどが挙げられる。
また、外観良好に塗工し、短時間で有機溶媒を揮発するためには、固形分濃度を高くし、さらには粘度を低くすることが重要である。溶解性を向上させるためには、上記のような有機溶媒を使用することが好ましいが、粘度を低下させるためには、アルコールなどのプロトン性有機溶媒を使用することが好ましい。その中でも、ポリイソシアネート化合物(III成分)のイソシアネート基との反応性を考慮すれば、2級及び3級アルコールが好ましく、3級アルコールであることがより好ましい。好適な2級アルコールとしてはi−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテルなど、3級アルコールとしてはt−ブタノール、t−ペンチルアルコールなどが挙げられる。これら2級、または3級アルコールは、単独で使用することもできるし、2種類以上を混合して使用することもできる。
しかしながら、本発明のフォトクロミック組成物に用いるポリウレタンウレア樹脂(I成分)の種類によっては、上記2級、または3級アルコールに溶け難い場合がある。よって、上述のケトン類などの良溶媒と、2級、または3級アルコールを組み合わせることが好ましい。良溶媒のケトン類と、2級または3級アルコールを組み合わせて使用することにより、I成分の溶解性を維持しながら、前駆体組成物の粘度を低下させることが可能となる。また、これら2種類以上の有機溶剤を組み合わせる場合には、良溶媒の沸点が、2級、または3級アルコールの沸点よりも高い温度となるように組み合わせることが好ましい。
用いる有機溶媒における2級、または3級アルコールの配合比率は、良溶媒のケトン類に対して質量比((2級、または3級アルコールの質量)/(ケトン類の質量))が0.10〜1.50であることが好ましく、0.15〜1.00であることがより好ましく、0.20〜0.70であることが最も好ましい。なお、複数種類のアルコールを使用した場合には、上記配合割合はアルコールの合計量を基準にしても算出したものである。2級、または3級アルコールの配合比率が0.10〜1.50の範囲を満足することにより、I成分の溶解性が高く、有機溶媒とIII成分のイソシアネート基の反応を抑制し、前駆体組成物の粘度を低下させることができる。
また、樹脂製シート又はフィルムなどの基材上に前駆体組成物を塗布したときの塗布層、或いは後述する方法を採用した場合におけるフォトクロミック接着性シートの平滑性を保持しながら、有機溶媒が残りにくく、乾燥速度を速めることができるという理由から、90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶媒を混合して用いることが好適である。沸点が90℃未満、90℃以上の有機溶媒の配合割合は、使用する他の成分に応じて適宜決定すればよい。中でも、優れた効果を発揮するためには、全有機溶媒量を100質量%としたとき、沸点が90℃未満の有機溶媒が20〜80質量%、沸点が90℃以上の有機溶媒が80〜20質量%とすることが好ましい。
また、有機溶媒の配合量は、前記したような配合により得られる効果の観点から、I成分100質量部に対して130〜800質量部であることが好ましく、150〜500質量部であることがより好ましい。
本発明においては、前記前駆体組成物からフォトクロミック組成物を製造することが好ましい。そのため、効率よくI成分とIII成分とを反応させるためには、前駆体組成物には水を配合することもできる。
次に、水について説明する。
<水>
上記前駆体組成物には水を配合することもできる。特に、前駆体組成物にポリイソシアネート化合物であるIII成分を含む場合には、水を配合することにより、III成分に含まれるイソシアネート基を効率的に加水分解する(反応させる)ことができる。この水は、前駆体組成物に最初から配合することもできる。ただし、前駆体組成物の保存安定性を考慮すると、前駆体組成物の使用時、つまり、該組成物により塗膜を形成し、樹脂製シートを張り合わせる際に配合することが好ましい。また、この水は、下記に詳述するが、フォトクロミック性接着シートを形成する場合に、その雰囲気下に存在する湿気で代用することもできる。III成分に含まれるイソシアネート基の加水分解は、前駆体組成物を樹脂製シートにコートして塗膜を形成した後に、その環境下の水分(湿気)と接触することによっても進行する。
水の配合量は、特に制限されるものではなく、下記に詳述する、その環境下の湿気でも対応できる。好ましい配合量を記載すれば、III成分に含まれるイソシアネート基のモル数に対して、0.01倍モル〜5倍モル、好ましくは0.05倍モル〜3倍モル、より好ましくは0.1倍モル〜2倍モルの範囲であることが好ましい。
本発明のフォトクロミック組成物は、前記前駆体組成物を準備し、該前駆体組成物を基材上に塗布し、有機溶媒を除去すると共に、I成分とIII成分とを反応させることにより製造することができる。
以上のような方法、及び前駆体組成物を使用した方法により得られる本発明のフォトクロミック組成物は、フォトクロミック性接着剤、特にポリカーボネート樹脂製の樹脂製シート又はフィルムどうしを接合するためのフォトクロミック性接着剤として好適に使用できる。そして、本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して樹脂製シート又はフィルムを互いに接合することにより、積層体を得ることができる。以下、本発明における積層体及びその製造方法について説明する。
<積層体>
本発明の積層体は、互いに対向する2枚の樹脂製シート又はフィルムが本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる。このような積層体としては、上記積層構造のみからなる積層シート又はフィルム(以下、単に、本発明の積層体ともいう。);上記積層構造を形成する際に、フォトクロミック組成物からなる接着層の両側に別の接着層を介して2枚の樹脂製シート又はフィルムを接合してなる積層シート又はフィルム;これら積層シート又はフィルムに光学シート又はフィルムを更に積層したり、表面にハードコート層などのコート層を形成したりした複合積層シート又はフィルムなどを挙げることができる。
本発明の積層体においては、上記のようにフォトクロミック組成物からなる接着層(以下、第1接着層ともいう。)の両側に、別の接着層(以下、第2接着層ともいう。)を積層し、該第2接着層を介して2枚の樹脂製シート又はフィルムを接合してなる積層シート又はフィルムを作製することも可能である。
第2接着層を積層することにより、本発明の積層体の接着性をより向上させることができる。該第2接着層を積層することにより、本発明の積層体の接着性が向上する要因としては、以下の2点が挙げられる。
1つ目は、フォトクロミック化合物などの光酸化劣化しやすい化合物を有する層を光学シート又は光学フィルムに直接接触させないことが挙げられる。これについては理由が定かではないが、光酸化劣化などにより分解して低分子量化したフォトクロミック化合物などが、接着層と樹脂製シート又は光学フィルムの界面に移行することにより、両者の接着性を低下させると推察している。
2つ目は、特に熱可塑性樹脂からなる樹脂製シート又は光学フィルムに対して効果を発揮するが、硬化前、もしくは有機溶剤に溶解しているなど液体で流動性がある接着剤を直接樹脂製シート又はフィルムに塗布することにより、樹脂製シート又はフィルムを接着剤で侵しながら、また浸透することができるため、より密着力が向上すると考えられる。
よって、本発明で使用される第2接着層は、フォトクロミック化合物を含有しないことが好ましく、更には液体で流動性がある接着剤の状態で直接樹脂製シート又はフィルムに塗布されることがより好ましい。
本発明の第2接着層に用いられる成分としては、I成分と同様なポリウレタンウレア樹脂を採用することが好ましい。特に、後述する軟化点、多分散度などを制御したポリウレタンウレア樹脂を使用することにより、本発明のフォトクロミック化合物を有する第1接着層、及び樹脂製シート又はフィルムとより強固な密着力が得られる。以下に、第2接着層に使用されるポリウレタンウレア樹脂(I’成分)について説明する。
<I’成分:第2接着層用ポリウレタンウレア樹脂>
本発明のI’成分は、I成分と同様に多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6〜2.4の範囲であるポリウレタンウレア樹脂を用いることが好ましい。このように狭い範囲の多分散度を有することによって、I’成分を第2接着層に用いた場合に、第1接着層、及び樹脂製シート又はフィルムとの強固な密着性と、耐熱性、及び耐汗性を有することが可能になる。良好な接着力、耐熱性の観点から、I’成分に用いるポリウレタンウレア樹脂の多分散度は、1.8〜2.2の範囲であることがより好ましい。
本発明のI’成分は、前記I成分と同様なポリウレタンウレア樹脂であり、I成分の構成要素として記載したA1成分、A2成分、B成分、及び必要に応じてC成分を使用することができる。合成方法に関しても、前述のI成分と同様にして実施することができる。
I’成分に使用される好適なA1成分としては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの低分子ポリオール類を原料に用いた、数平均分子量が600〜1200であるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
I’成分に使用される好適なA2成分としては、脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましく、具体的には、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物が挙げられる。
I’成分に使用される好適なB成分としては、ジアミン化合物が好ましく、具体的には、イソホロンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミンなどが挙げられる。
I’成分に使用される好適なC成分としては、前記一般式(2)で示される化合物を使用することが好ましく、具体的には、ノルマルブチルアミンのようなアルキルアミンが挙げられる。
各成分の配合割合は適宜決定すればよいが、得られるI’成分の耐熱性、及び接着強度のバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。なお、n1、n2、n3、及びn4の定義は、前述の通りである。好ましい配合割合の範囲は、n1:n2:n3:n4=0.30〜0.89/1/0.10〜0.69/0.00〜0.20である。さらに、得られるV成分がより優れた密着性を発揮するためには、より好ましくは、n1:n2:n3:n4=0.40〜0.80/1/0.15〜0.58/0.00〜0.15、最も好ましくは、n1:n2:n3:n4=0.51〜0.68/1/0.30〜0.48/0.01〜0.10である。中でも、n2=n1+n3+n4とすることが好ましく、長期の安定性を考慮すると末端を不活性化させることが好ましい。
I’成分は、以上のような配合割合でI成分の合成方法にならって製造できる。
また、その他のI’成分の特徴としては、耐熱性、接着強度などの観点から、I’成分の数平均分子量は、1万〜12万であることが好ましく、特に4万〜10万であることが最も好ましい。なお、この分子量は、上述したI成分と同様の条件で測定した値である。
また、I’成分は、樹脂製シート又はフィルムどうしを貼付して得られる積層体の物性、得られた積層体を用いて曲げ加工や射出成型により成型体を製造する際の加工安定性の観点、及びそれら積層シートの接着性の観点、さらにはこれら積層体又は成型体の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点から、通常80〜200℃、特に100〜180℃の耐熱性を有していることが好ましい。なお、ここでいう耐熱性とは、前記III成分の項目でI成分とIII成分とから得られる反応生成物を測定したものと同様の方法で測定した値である。
<第2接着層の厚み、形成方法>
第2接着層の膜厚は、2〜40μmの範囲であることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。膜厚が2μmより薄い場合には接着性が低下する傾向にあり、膜厚が40μmを越える場合には、有機溶剤が残存しやすくなる。また、フォトクロミック化合物の耐候性(耐久性)が低下する傾向にある。
第2接着層を形成する接着剤(I’成分を含む組成物)は、必要に応じて第1接着層(上記フォトクロミック組成物)で使用されるような有機溶剤を含んでいても良い。しかしながら、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を樹脂製シート又はフィルムとして使用する場合においては、第2接着層を形成する接着剤に使用する有機溶剤は熱可塑性樹脂に対して、低溶解性であることが好ましい。熱可塑性樹脂への溶解性が高いと、過剰に熱可塑性樹脂を溶解してしまい、外観不良(白濁)、接着性低下、及び第1接着層の積層時にフォトクロミック特性の低下を引き起こしてしまうおそれがある。また、熱可塑性樹脂への溶解性が低すぎると、樹脂製シート又はフィルムが溶解せず、第2接着層との接着性が十分に発揮されない。以上のことから、第2接着層に使用する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコールを主溶剤として用いることが好ましい。
更には、積層体の接着(密着)強度をより向上させるために、第1接着層に使用される前記III成分を含んでいてもよい。また、製膜性や耐候性を向上させるために、第1接着層に使用される界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、染料などを含んでいても良い。
次に、本発明の積層体を構成する材料或いは部材について説明する。
<樹脂製シート又はフィルム>
本発明において、樹脂製シート又はフィルムとしては、光透過性を有するシート又はフィルムが特に制限なく使用できるが、入手の容易性および加工のし易さなどの観点から樹脂製のものを使用することが好適である。樹脂製シート又はフィルムの原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。その中でも、接着性が良好で射出成形法に対する適用性が高いという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、偏光フィルム(ポリビニルアルコール偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)、偏光シート(ポリビニルアルコール偏光フィルムをポリカーボネートシートではさんだもの)、染色されたフィルム、染色されたシートも、本発明の樹脂製シート又はフィルムとして使用することが可能である。なお、染色した樹脂製シート又はフィルムを使用する場合には、元々、染色されたものを使用することもできるし、本発明の積層シートを作製した後、表面の樹脂製シート又はフィルムを染色してもよい。
上記偏光フィルム、偏光シート、染色フィルム、及び染色シートを用いて光学物品を得る場合には、第1接着層の方が該偏光フィルム等よりも上側(太陽光や紫外線が照射される側)に積層されていることが好ましい。
本発明において使用する樹脂製シート又はフィルムの好適な厚みとしては、100〜1500μmが好ましく、200〜1000μmがより好ましい。また、これらの樹脂製シート又はフィルムは、異なる厚みを組み合わせて使用することも可能である。
また、本発明の樹脂製シート及びフィルムの表面(上面および下面)には、下記のような塗膜層が形成されていてもよい。塗膜層は、水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散アクリル樹脂、水分散ポリウレタン・アクリル樹脂などの水分散性ポリマー;前記水分散性ポリマーの内、カルボニル基を有するポリマーとヒドラジド化合物との架橋体;ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの架橋体;(メタ)アクリル基を有する重合性モノマー、及び/またはエポキシ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、アミノ基、及びメルカプト基などから選ばれる基を有する加水分解性有機ケイ素化合物の組成物;シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂の組成物;プロペニルエーテル基含有化合物、ポリエン化合物及びチオール化合物とを含むエン/チオール系組成物、オキセタン化合物などを含む光硬化性組成物などの、樹脂、架橋体、組成物から形成されればよい。該塗膜層を特に最表面(フォトクロミック接着性シートが存在しない側)に形成することにより、(メタ)アクリレート系モノマー組成物、アリル系モノマー組成物、チオウレタン系モノマー組成物、ウレタン系モノマー組成物、チオエポキシ系モノマー組成物などの熱硬化性樹脂(光学基材)を形成するモノマー組成物中に、馴染みよく、本発明の積層体を埋設することができる。その結果、該熱硬化性樹脂(光学基材)と該積層シートとの密着性が良好な、該熱硬化性樹脂(光学基材)中に該積層体が埋設した光学物品を得ることもできる。
<本発明の積層体の製造方法>
本発明の積層体は、互いに対向する2枚の樹脂製シート又はフィルムを本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合させることにより製造される。なお、上記第1接着層の厚さは、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5〜100μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。また、第2接着層を使用する場合には、その膜厚は、前述の通り2〜40μmの範囲であることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。得られる光学物品の厚みとしては、光学物品の製造の容易さや、後述する加工の加工性の観点から、500〜3000μmが好ましい。
上記第1接着層は、用いるフォトクロミック組成物の性状に応じて、次のような方法により得ることができる。すなわち、溶媒を配合することなどにより本発明のフォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)が適度の粘度に調整されている場合には、一方の樹脂製シート又はフィルム上に本発明のフォトクロミック組成物を塗布し、必要に応じて(加熱)乾燥を行った後、他の樹脂製シート又はフィルムを(加熱)圧着すればよい。本発明のフォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)の好適な動粘度は、25℃において、2,000〜50,000cStであり、より好ましくは、5,000〜40,000cStであり、さらに好ましくは8,000〜30,000cStである。フォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)が2,000〜60,000cStであることにより、フォトクロミック接着性シートの平滑性を高め、ロール to ロールでの塗工により、縦筋や横筋のような外観不良の発生を抑制することができる。
このとき、フォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)の塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップ−スピンコート法、ドライラミネート法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。また、本発明で使用する樹脂製シート又はフィルムは、あらかじめメタノールなどの有機溶剤で洗浄・脱脂してもよい。さらに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、やUVオゾン処理などを施しておくことも可能である。また、塗工に用いる塗工機としては、ナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、バーコーターなど、一般的な塗工機を何ら制限なく用いられる。中でも、塗工液粘度の許容範囲が比較的広いナイフコーター、ダイコーターが好適に用いられる。
また、有機溶媒を含む本発明のフォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)を使用する場合には、平滑な基材上に本発明のフォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)を延展せしめた後に乾燥することにより有機溶媒を除去し、その後、基材を剥がして、I成分(又はI成分、及びIII成分)と、I成分(又はI成分、及びIII成分)中に分散したII成分とを含んでなるフォトクロミック性接着シートを作製する。次いで互いに対向する2枚の樹脂製シート又はフィルムの間に上記フォトクロミック性接着シートを介在させて該2枚の樹脂製シート又はフィルムを接合することにより、本発明の積層体を製造することもできる。なお、前駆体組成物を使用した場合には、この積層体を製造する過程においてフォトクロミック組成物(フォトクロミック性接着シート:第1接着層)を形成することとなる。
上記平滑な基材の材質としては、本発明で使用する溶剤に耐性があるもの、またフォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)が剥離しやすいものが好ましく、具体的に例示すれば、ガラス、ステンレス、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、さらにはシリコン系やフッ素系などの剥離性を向上させるコート層を積層させたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
このような方法を採用した場合には、溶媒の種類及び樹脂製シート又はフィルムの種類によらず、溶媒の使用に起因する悪影響を排除することが可能である。
上記フォトクロミック組成物(又は前駆体組成物)の塗布、さらに乾燥は、室温〜130℃の温度で、10〜100%RHの湿度下で実施されることが好ましい。有機溶媒は、乾燥後のフォトクロミック接着性シートに残存することで、フォトクロミック特性に悪影響を及ぼす場合があり、乾燥後の有機溶媒の質量は、フォトクロミック接着性シートに対して0.1%以下にすることが好ましい。また、前駆体組成物を使用する場合、該前駆体組成物には、III成分としてイソシアネート化合物が配合されているため、湿度が存在する中で塗布、及び乾燥などの操作を実施することにより、III成分の加水分解反応を促進し、より強固な密着力が得られる。上記のような湿度(水分の存在下)下で乾燥を行うことにより、前駆体組成物に水を配合しなくとも、優れた性能を発揮するフォトクロミック性接着シートとすることができる。また、水を配合した場合には、乾燥条件下で該シートを形成することもできる。
前記樹脂製シート又はフィルムを接合する工程で得られた積層体は、そのまま使用することもできるが、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することもできる。具体的には、接合したばかりの積層体を20℃以上60℃以下の温度で4時間以上静置し、脱気することが好ましい。静置する時間の上限は、特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。また、静置に際しては、常圧で静置することも可能であるし、真空下で静置することも可能である。さらに、この静置した積層体を60℃以上130℃以下の温度下、30分以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱処理とする)。この加熱処理を実施することにより、III成分のイソシアネート基の一部が、反応に供されるものと考える。その結果、このイソシアネート基がI成分のウレタン結合、又はウレア結合に結合し、アロファネート結合、又はビュレット結合を形成することを推進するものと考えられる。そして、この加熱処理して得られた積層シートは、その状態が非常に安定なものとなる。
また、III成分を配合した前駆体組成物を用いた場合には、室温〜100℃の温度、及び30〜100%RHの湿度下で加湿処理されることが好ましい。この加湿処理を実施することにより、III成分によるI成分どうしの橋架け構造を完結させるとともに、積層シート中に存在するIII成分由来のイソシアネート基を完全に消失させることができ、フォトクロミック特性、及び接着性をより安定化させることが可能となる。
さらには、加湿処理後に、常圧下、もしくは真空下において、40〜130℃で静置することにより、積層体中に存在する過剰の水分を除去することができる。よって、前駆体組成物から、フォトクロミック積層体を作製後、1)脱気、2)加熱処理、3)加湿処理、4)水分除去の順に後処理を実施することが好ましく、塗布後の第1接着層中でI成分とIII成分を反応させることが好ましい。
また、前述の第2接着層を有する積層シートを製造する方法としては、第1接着層と、樹脂製シート又は光学フィルムの間に第2接着層を積層する形態になっていれば、その製造方法は特に制限されない。
製造方法としては、
1)あらかじめ樹脂製シート又はフィルム上に第2接着層を積層させ、この第2接着層を有する2枚の樹脂製シート又はフィルムで、第1接着層を挟みこむ方法、
2)第1接着層の両面に第2接着層を塗布しておき、その両面に樹脂製シート又はフィルムを貼り付ける方法、
3)樹脂製シート又はフィルム上に、第1接着層、第2接着層、第1接着層、さらには樹脂製シート又はフィルムとなるように順次積層していく方法、
などが挙げられるが、製造効率などの観点から、1)の方法を採用することが最も好ましい。
本発明の第2接着層の塗布方法、及び乾燥方法としては、第1接着層と同様な方法で実施することができる。
さらに、溶媒を含まない場合においては、前駆体組成物とポリイソシアネート化合物(III成分)の混合物を、共押し出し成型等によって積層体に加工することもできる。
<積層体を用いた物品>
本発明のフォトクロミック組成物は、得られた積層体は優れた接着性、特に高温における優れた接着性を示し、得られた積層体は、耐汗性も高い。すなわち、人工汗と接触させた後であっても、優れた接着性を示す。さらに、本発明の積層体は、太陽光照射時における高い発色濃度、及び太陽光未照射時における高い退色速度を有し、しかも発退色による繰り返し耐久性が高い。従って、本発明の積層体は前述のプラスチックサングラス以外にも、遮光窓材、ディスプレイ材料、農業用フィルム、玩具、衣服、傘等の物品にフォトクロ物性を発現させるための積層体として用いることができる。
本発明においては、前記積層体をプラスチックレンズなどの光学基材と一体化する場合における光学基材としては、ポリカーボネート樹脂が好ましい。一体化する方法としては、前記積層体を金型内に装着し、ポリカーボネート樹脂などの光学基材を構成するための熱可塑性樹脂を射出成型する方法が挙げられる。また、本発明の積層体は光学基材と一体化する前に、曲げ加工を実施することにより、レンズ状の球面形状に加工することもできる。前記積層シートを曲げ加工する方法としては、例えば、熱プレス加工、加圧加工、減圧吸引加工などが挙げられる。曲げ加工する際の温度は、前記積層シートに使用している樹脂製シート又はフィルムの種類によって適宜、決定すれば良いが、120℃から200℃で実施することが好ましい。又、他の樹脂製シート又は及びガラスなどと一体化させることで、遮光窓材や農業用フィルムとすることができる。また、液晶表示パネル、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、及びプラズマディスプレイなどのディスプレイと組み合わせることで、ディスプレイ材料とすることができる。さらに、金属、ガラス、木、紙、及び綿、麻、及び絹などの布地などの部材と組み合わせることで、フォトクロ性を有する玩具や衣服類、傘などを得ることができる。
具体的には、本発明の積層体の両面に珪酸塩ガラスを貼り合わせることにより、遮光窓材として有用な成型体を得ることができる。このような成形体は、貼り合わせた積層体の密着性が高く、耐久性に優れた窓材として期待できる。また、液晶パネルの背面に、本発明の積層体を貼り合わせることにより、屋外でのコントラストに優れたディスプレイ材料を得ることができる。このディスプレイ材料は、種々の形状に加工することが容易であり、特にヘッドアップディスプレイとして有用である。あるいは、本発明の積層体は密着性が高い大型の積層体を得ることができるため、プラズマディスプレイパネルの背面に、本発明の積層体を貼り合わせることにより、屋外でのコントラストに優れたディスプレイ材料、特に屋外ディスプレイとして長期の使用に耐えうる成型体を得ることができる。
さらに、本発明の積層体は種々の形状に加工することが容易であることからの片側にポリプロピレンフィルムを貼り合わせることにより、農業用フィルムとして長期の使用に耐えうる成型体を得ることができる。また、ポリプロピレンフィルムの代わりに、布地(綿、麻など)、樹脂材料、金属などを本発明の積層体に貼り合わせることで、長期の使用に耐えうる、玩具、及び衣服などの材料として使用できる。
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で各成分として使用した化合物等の略号を纏める。
A1成分;ポリオール化合物
PL1:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
PL2:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)。
A2成分;ジイソシアネート化合物
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
NCO2:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物。
B成分;ポリアミン化合物
CE1:イソホロンジアミン。
CE2:ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン。
C成分;分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物
HA1:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン。
HA2:ノルマルブチルアミン。
有機溶媒
D1:イソプロピルアルコール。
D2:プロピレングリコール−モノメチルエーテル。
D3:トルエン。
D4:ジエチルケトン。
D5:t−ブチルアルコール。
II成分;フォトクロミック化合物
PC1:下記式で示される化合物
PC2:下記式で示される化合物
PC3:下記式で示される化合物
III成分:ポリイソシアネート化合物
CA1:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物(分子量262)
その他の成分
L1:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)。
L2:DOW CORNING TORAY L−7001(東レ・ダウコーニング株式会社製、界面活性剤)。
製造例1(ポリウレタンウレア樹脂の製造)
(ウレタンプレポリマーの製造)
翼径135mmのマックスブレンド翼、邪魔板を備える内径260mm、高さ280mm、仕込用量10Lの反応容器に、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を接続した。マックスブレンド翼は100rpmで撹拌した。
この反応容器に、数平均分子量800のポリカーボネートジオール1770g、イソホロンジイソシアネート700g、トルエン500gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で7時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
(ポリウレタンウレア樹脂(U1)の製造)
ウレタンプレポリマー反応終了後、反応液を0℃付近まで冷却し、イソプロピルアルコール1430g、ジエチルケトン2670gに溶解させた後、液温を0℃に保持した。次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン171gとジエチルケトン145gの混合溶液を30分以内に滴下し、0℃で1時間反応させた。その後さらに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン42gを滴下し、0℃で1時間反応させることにより、ポリウレタンウレア樹脂のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂は、数平均分子量が19,000であり、重量平均分子量が41,000であり、多分散度が2.16であり、軟化点が105℃(軟化開始温度;約80℃)であり、動粘度が15,000cStであった。
なお、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時の反応液の粘度が0.06kg/m・s、密度が900kg/m3、マックスブレンド翼の回転数が100rpmであり、レイノルズ数(Re)が456となり、マックスブレンド翼におけるn・θM−Re曲線より、混合時間数(n・θM)が14であることから、完全混合時間(θM)が8秒であった。
<評価方法>
上記ウレタンウレア樹脂の、数平均分子量、重量平均分子量、多分散度、軟化点、及び動粘度については以下の方法によって測定した。
(数平均分子量、重量平均分子量、及び多分散度)
数平均分子量、重量平均分子量、及び多分散度に関しては、本文中に記載の方法に分析を実施した。
すなわち、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタンウレア樹脂試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定し、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いて算出した。また、多分散度は、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、上記方法によって求められた数平均分子量、及び重量平均分子量より算出した。
(軟化点)
ポリウレタンウレア樹脂溶液を、ステンレスの容器に流し込み、40℃で10時間、60℃で10時間、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間乾燥させることにより、厚み1mmの試験片を作製した。得られた試験片を、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用い、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブの条件にて軟化点を測定した。
(動粘度)
ポリウレタン樹脂溶液約10gを、キャノンフェンスケ粘度計(#600)に入れ、このキャノンフェンスケ粘度計(柴田科学株式会社製)を25℃±0.1℃に制御した恒温水槽に15分浸した後、動粘度を測定した。
製造例2〜17
表1に示すポリオール化合物(A1成分)、ジイソシアネート化合物(A2成分)、ポリアミン化合物(B成分)、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物(C成分)及び有機溶媒を用い、表1、及び表2に示す反応条件を用いた以外は、U1の合成方法と同様にして、U2〜17のポリウレタンウレア樹脂を合成した。評価結果を表2に示す。なお、完全混合時間(θM)は、ポリアミン化合物(B成分)を滴下開始する際のウレタンプレポリマー(A成分)の反応液の粘度、密度、及びマックスブレンド翼の回転数からレイノルズ数(Re)を算出し、その後マックスブレンド翼におけるn・θM−Re曲線から導きだされるn・θMより算出した。
実施例1
(前駆体組成物の調製)
ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g、フォトクロミック化合物12.1g(PC1/PC2/PC3=8.7/2.0/1.4g)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物 43.2g、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート] 3.6g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、前駆体組成物を得た。
(第2接着層用接着剤の調整)
ポリウレタンウレア樹脂(U4)の溶液1000gに、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.7gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、第2接着層用接着剤を得た。
(積層シートの作製)
コーター(テスター産業製)を用いて、積層シートを作製した。第2接着層用接着剤を厚み300μmのポリカーボネートシート上に、塗工速度0.5m/minで塗工し、乾燥温度110℃で3分間乾燥させることにより、膜厚8μmの第2接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
上記前駆体組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)上に、塗工速度0.3m/minで塗工し、乾燥温度100℃で5分間乾燥させ、厚み約40μmのフォトクロミック性接着層を得て、第2接着層を有するポリカーボネートシートを0.1MPaの圧力で張り合わせた。
次いで、上記前駆体組成物を塗布したPET製フィルムと第2接着層を有するポリカーボネートシートを張り合わせた積層体のPET製フィルムを剥離し、剥離した面と第2接着層を有するポリカーボネートシートを0.1MPaの圧力で張り合わせ、積層シートを得た。積層シートは、フォトクロミック性接着層である第1接着層の両面に第2接着層を有し、さらに第2接着層の外面(第1接着層が積層していない面)にポリカーボネートシートが積層した構成であった。得られた積層シートを40℃、真空下で24時間静置した後、110℃で60分加熱処理し、次いで60℃、100%RHで24時間の加湿処理を行い、最後に40℃、真空下で24時間静置することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層シートを得た。残存溶剤量を測定したところ、0.01%であった。なお、最終的に得られたフォトクロミック性接着シートをポリカーボネートシートから剥離し、赤外吸収スペクトルを確認したところ、該フォトクロミック性接着シート中にイソシアネート基のピークは検出されなかった。
得られた積層シートのフォトクロミック特性としての発色濃度は1.0であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は初期が200N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が140N/25mm、が150℃雰囲気下での剥離強度が40N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は1200時間であった。
なお、これらの評価は以下のようにして行った。
〔フォトクロミック特性〕
得られた積層シートを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層シート表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、積層シートのフォトクロミック特性を測定した。
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
4)耐久性(%)=〔(A96/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層シートをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により96時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A96)を測定し、〔(A96)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
〔剥離強度〕
得られた積層シートを、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験雰囲気温度が設定可能な恒温槽を備えた試験機(オートグラフAGS−500NX、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、それぞれ下記1)〜3)の剥離強度を測定した。
1)初期の剥離強度は、上記の通り試験を実施した。
2)70℃雰囲気下での剥離強度は、上記サイズに切り出した試験片を、70℃に設定した恒温槽内で10分加熱した後、上記のようにして測定した。
3)150℃雰囲気下での剥離強度は、上記にサイズに切り出した試験片を、150℃に設定した恒温槽内で10分加熱した後、上記のようにして測定した。
〔耐汗試験〕
得られた積層シートを、直径50mmの円形に切り出し、この試験片の外周をリング状のステンレス製治具で締め付けた。別途、蓋付きのプラスチック容器に人工汗(10%の食塩、及び5%の乳酸を添加した蒸留水)を用意し、この人工汗中に前記試験片を浸漬した。この試験片、及び人工汗が入ったプラスチック容器を70℃で保管し、24時間毎に試験片端部の剥離有無を目視評価した。評価結果の数値は、安定した接着性を示した時間(剥離が生じる直前までの時間)である。
実施例2
(前駆体組成物の調整)
前駆体組成物は実施例1と同様の方法で得た。
(積層シートの作製)
コーター(テスター産業製)を用いて、積層シートを作製した。上記前駆体組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)上に、塗工速度0.3m/minで塗工し、乾燥温度100℃で5分間乾燥させ、厚み約40μmのフォトクロミック性接着層を得て、ポリカーボネートシートを0.1MPaの圧力で張り合わせた。
次いで、上記前駆体組成物を塗布したPET製フィルムとポリカーボネートシートを張り合わせた積層体のPET製フィルムを剥離し、剥離した面とポリカーボネートシートを0.1MPaの圧力で張り合わせ、積層シートを得た。積層シートは、フォトクロミック性接着層である第1接着層の両面にポリカーボネートシートが積層した構成であった。得られた積層シートを40℃、真空下で24時間静置した後、110℃で60分加熱処理し、次いで60℃、100%RHで24時間の加湿処理を行い、最後に40℃、真空下で24時間静置することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層シートを得た。残存溶剤量を測定したところ、0.01%であった。なお、最終的に得られたフォトクロミック性接着シートをポリカーボネートシートから剥離し、赤外吸収スペクトルを確認したところ、該フォトクロミック性接着シート中にイソシアネート基のピークは検出されなかった。
得られた積層シートのフォトクロミック特性としての発色濃度は1.0であり、退色速度は47秒であり、耐久性は92%であった。また、剥離強度は初期が150N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が100N/25mm、が150℃雰囲気下での剥離強度が20N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は400時間であった。
なお、これらの評価は実施例1と同様の方法により実施した。
実施例3〜9、11〜16、比較例1
表3に示すポリウレタンウレア樹脂(I成分)、フォトクロミック化合物(II成分)、ポリイソシアネート化合物(III成分)、有機溶媒、その他の成分、第2接着層を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層シートを得た。得られた各種積層シートの評価結果を表4に示した。
実施例10、比較例2
表3に示すポリウレタンウレア樹脂(I成分)、フォトクロミック化合物(II成分)、ポリイソシアネート化合物(III成分)、有機溶媒、その他の成分、を用いた以外は実施例2と同様の方法で積層シートを得た。得られた各種積層シートの評価結果を表4に示した
上記実施例1〜16から明らかなように、多分散度が狭いウレタンウレア樹脂を用いた、本発明の積層シートは良好な密着性を有していることが分かる。特に、高温下における密着性に優れている。
一方、比較例1、及び2に示すように、多分散度が広いウレタンウレア樹脂を用いた積層シートは十分な密着性を得ることができなかった。