JP6593684B2 - 4倍体ポプラの作出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高バイオマス性を有する4倍体ポプラの作出方法に関するものである。
近年、植物バイオマスの資源化が進められている。植物バイオマスの資源化を実現する上で、原料となる植物バイオマスを効率的に生産する技術開発は極めて重要である。植物バイオマスの中でも、食糧資源と拮抗せず、大規模原料供給が可能な木本系バイオマスとしてポプラやユーカリが注目されている。ここで、ポプラ(poplar)とは、ヤナギ科(Salicaceae family)のヤマナラシ属またはポプラ属に属する樹木(広葉樹)の慣用名であり、成長が早く活着が良く、並木や街路樹、防風林として植生されているものである。
そこで、生産するポプラやユーカリの地上部器官を巨大化して生産量を向上させる方法が考えられる。この点、地球上の被子植物の内、約70%の被子植物はDNA倍加により細胞を肥大化させ、器官サイズを大きくしている。ところが、バイオマス生産の原料として注目されているポプラやユーカリではDNA倍加が起こらないと言われている。
一方で、ユーカリ属について、生産性の向上した個体を短期間に作成できるユーカリ属4倍体の作成方法が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1のユーカリ属4倍体の作成方法は、2倍体であるユーカリ属の組織切片について染色体の倍加処理を行い、次いでこの組織切片を培養することにより染色体が倍加した組織を発生させ、この組織から個体を再生して、ユーカリ属4倍体を作成するものである。
しかし、バイオマス生産の原料としてはユーカリ属だけではなくポプラ等も有用であるが、特許文献1に開示された方法は、パルプ材として有用なユーカリ属について4倍体を作成するものに過ぎない。
また、特許文献1の明細書段落0012によると、DNA倍加処理方法として、シュートをコルヒチン等の溶液中に浸漬することにより行うことが、最も一般的としており、実施例においても、コルヒチン水溶液に24時間浸漬することで倍加処理を行っている。ここで、シュートとは、茎とその上にできる多数の葉からなる単位をいう。
しかしながら、染色体の倍加処理を行う際、ユーカリ属のシュート切片をコルヒチン等の溶液に浸漬して倍加処理を行う方法では、培養のための培地以外に、倍加処理を行うための大規模な装置が必要であり、煩雑であった。
さらに、倍加処理後に、植物ホルモンとしてBAPもしくはカイネチン、ショ糖、ゲランガムもしくは寒天を含有する培地或はそれらを改変した培地により組織培養を行わなければならない方法であったため、かかる点においても簡便な方法とはいえなかった。
また、ウリ科植物の分裂組織につきアミプロホスメチルを用いて染色体の倍加処理を行う染色体倍加方法が知られている(特許文献2を参照)。特許文献2のウリ科植物の染色体倍加方法は、コルヒチン等の倍加誘発剤を用いずにアミプロホスメチルを用いて倍加処理を行うものであり、倍加効率が高いとされている。
しかし、アミプロホスメチルは、通常、除草剤として用いられているため、植物体に薬害を発生させる危険性があるという問題があった。
また、特許文献2に開示されたウリ科植物の染色体倍加方法においても、染色体の倍加処理を行う際、ウリ科植物のシュート切片をアミプロホスメチル水溶液に浸漬して倍加処理を行っているが、特許文献1と同様、かかる方法は煩雑であり、簡便な方法とはいえなかった。
さらに、倍加処理後に組織培養を介する方法であるため、かかる点においても簡便な方法とはいえなかった。
なお、特許文献2の明細書段落0003には、温室で栽培中のメロンの腋芽に脱脂綿を乗せコルヒチンを滴下し処理する方法も試みたが倍加シュートは得られなかったと記載されており、従来は、植物の腋芽にコルヒチンを滴下する程度では倍加シュートは得られないのが常識とされていた。ここで、腋芽とは、葉の付け根から出る芽のことをいう。
特開2001-320994号公報 特開平6-237657号公報
上述した特許文献1及び2におけるDNA倍加方法は、何れもポプラを対象としたものではない。また、特許文献1及び2におけるDNA倍加方法では、何れも倍加処理方法が煩雑であり、かつ、倍加処理後に組織培養を介する方法であるため、簡便な方法ともいえなかった。
かかる状況に鑑みて、本発明は、簡便な方法によりポプラのDNA倍加処理を行い、かつ、組織培養を介さずに、2倍体ポプラから4倍体ポプラを安定的に作出する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者は、DNA倍加処理方法につき鋭意検討した結果、コルヒチン溶液にシュート切片を浸漬するのではなく、シュートの腋芽(葉の付け根から出る芽のこと、脇芽或は側芽とも呼ばれる。)にコルヒチン溶液の雫を乗せることで、簡易にDNA倍加処理が行えることを知見した。また、培養方法としては植え継ぎを行うことで簡易に培養が行えることを知見した。
すなわち、本発明の4倍体ポプラの作出方法は、2倍体ポプラのシュートの腋芽に対してコルヒチン溶液を滴下して培養し、出てきた側枝を植え継いで4倍体ポプラを作出することを特徴とする。
コルヒチン処理の対象としては、ポプラを用いる。ここで、コルヒチン処理とは、微小管(紡錘体)の形成を阻害することで、細胞分裂を阻害し、その結果、細胞分裂がなされずに染色体を倍加させるものである。
また、コルヒチン処理の方法としては、2倍体ポプラのシュートの腋芽に対して行うものである。DNA倍加処理後は、植え継ぎを行うことで、細胞培養によらずに培養を行うことが可能である。
本発明の4倍体ポプラの作出方法に用いられるコルヒチン溶液の濃度は、0.002w/v%以上、0.1w/v%未満であることが好ましく、より好ましくは、0.005w/v%以上、0.05w/v%未満である。これは、低濃度とすることで、緩やかな倍加を行うためである。
ここで、0.002%未満であるとDNA倍加促進効果が弱く、また、0.1w/v%以上であると、微小管形成を高度に阻害することによる二次的影響が現れるので、上記濃度範囲に調製する。
本発明の4倍体ポプラの作出方法に用いられるコルヒチン溶液には、ゲル化剤が添加されたことが好ましい。これは、腋芽にコルヒチン溶液を乗せた場合に腋芽からコルヒチン溶液が流れ落ちることを防ぐため、添加されるものである。ゲル化剤としては、アガーが好適に用いられる。
本発明の4倍体ポプラの作出方法において、コルヒチン溶液の滴下は、植え継いで育成したシュートの下葉を残して主茎を切除したものの葉の根元の腋芽に対して行うことが好ましい。なお、コルヒチン処理は、1箇所だけではなく、各々の葉の腋芽に行う。
本発明の4倍体ポプラの作出方法において、コルヒチン溶液の滴下の頻度は、2回であることが好ましい。また、滴下間隔は1日であることが好ましい。
本発明の4倍体ポプラの作出方法において、腋芽に乗せるコルヒチン溶液量は、腋芽に雫の玉ができる量、かつ、腋芽から流れ落ちない量であることが好ましい。これは、本発明におけるコルヒチン処理は腋芽に乗せるという簡易な方法で行うため、腋芽に乗せるコルヒチン溶液量が多いと腋芽から流れ落ちてしまい、正常なコルヒチン処理がなされないこととなるからである。
本発明の4倍体ポプラの作出方法においては、コルヒチン溶液の滴下後、4倍体ポプラの倍数性が安定するまで、植え継ぎを繰り返すことが好ましい。植え継ぎを繰り返す回数としては、2〜4回が好ましく、より好ましくは3回である。
本発明の4倍体ポプラの作出方法は、コルヒチン溶液を用いた4倍体ポプラの作出方法であって、下記1)〜5)のステップから成る。
1)2倍体ポプラのシュートを培地へ植え継ぎ、植え継ぎから略28日後にシュートの下の葉を少なくとも1枚残して主茎を切除するコルヒチン処理準備ステップ
2)シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せ、略24時間培養を行った後、残った雫を除く第1のコルヒチン処理ステップ
3)第1のコルヒチン処理ステップの後、腋芽に新たにコルヒチン溶液を乗せ、さらに略24時間培養後、残っている雫を除き、滅菌水を乗せて洗浄する第2のコルヒチン処理ステップ
4)略1ヵ月培養し、出てきた側枝を新しい培地に植え継ぎ、側枝の下葉の倍数性を測定して、4倍体ポプラを作出状況を確認する作出状況確認ステップ
5)4倍体ポプラの倍数性が安定するまで、植え継ぎと倍数性の測定を繰り返す倍数性安定化ステップ
第2のコルヒチン処理ステップは、第1のコルヒチン処理ステップのみでは、紡錘体の形成(細胞分裂)を十分に阻害できないために行うものである。すなわち、コルヒチンは細胞周期の内の紡錘体の形成(細胞分裂)を開始する時期(M期)を阻害するが、細胞周期が1周するのに約1日かかることから、すべての細胞がM期に到達してからコルヒチンの作用を受けるようにするため、このように24時間後に再び第2のコルヒチン処理を行う。第2のコルヒチン処理ステップにおいて、洗浄作業は、数回繰り返し、5〜10分間行う。本発明の4倍体ポプラの作出方法を用いた場合でも、すべてのシュートにつき4倍体ポプラを作出することができるわけではなく、その確率は総ライン数に対して5〜7%である。
本発明の4倍体ポプラの作出方法によれば、簡便なDNA倍加処理により、4倍体のポプラを安定的に作出することができるといった効果がある。
実施例1の4倍体ポプラの作出方法のフロー図 実施例1の4倍体ポプラの作出手順の説明図 実施例1の4倍体ポプラの作出方法のDNA倍数性解析結果の比較グラフ、(1)コルヒチン処理を行っていない2倍体ポプラ、(2)コルヒチン処理を行った2倍体と4倍体のキメラのポプラ、(3)コルヒチン処理を行った4倍体ポプラ、(4)コルヒチン処理を行った4倍体と8倍体のキメラのポプラ。 実施例1の4倍体ポプラの作出方法におけるシュートの倍加状況、(1)初代が4倍体のポプラの継代による倍数性の変化、(2)初代が4倍体と8倍体のキメラのポプラの継代による倍数性の変化、(3)初代が4倍体,8倍体及び16倍体のキメラのポプラの継代による倍数性の変化、(4)初代が8倍体のポプラの継代による倍数性の変化、(5)初代が8倍体と16倍体のキメラのポプラの継代による倍数性の変化。 実施例1の2倍体と4倍体ポプラの木部細胞面積及び木部細胞数の比較グラフ CO固定化に関する2倍体と4倍体ポプラの比較データ、(1)光合成有効放射量による比較、(2)葉内CO濃度による比較。 実施例1の2倍体と4倍体ポプラの下からの葉の枚数と葉面積の相関図、(1)2倍体ポプラ、(2)4倍体ポプラ。 実施例1の2倍体と4倍体ポプラのCO固定速度に関する比較グラフ、(1)総葉面積、(2)個体あたりのCO固定速度。 実施例1の2倍体と4倍体ポプラの茎についての比較グラフ、(1)茎の高さ、(2)茎の太さ、(3)茎の体積。 実施例1の2倍体と4倍体ポプラの重量についての比較グラフ、(1)生重量、(2)乾重量。 実施例2の4倍体ユーカリの作出方法のDNA倍数性解析結果の比較グラフ、(1)コルヒチン処理を行っていない2倍体ユーカリ、(2)コルヒチン処理を行った2倍体と4倍体のキメラのユーカリ、(3)コルヒチン処理を行った4倍体ユーカリ。
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
図1は、実施例1の4倍体ポプラの作出方法のフロー図を示している。
図1に示されるように、まず、2倍体ポプラのシュートの植え継ぎを行う(S01)。そして、28日経過後、下の葉を2〜4枚残し、主茎を切除する(S02)。次に、シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せる(S03)。かかる状態で24時間培養を行い、培養後、残った雫を除く(S04)。さらに、シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せる(S05)。かかる状態で24時間培養を行い、培養後、残った雫を除く(S06)。そして、滅菌水で腋芽を洗浄する(S07)。その後、4週間培養し(S08)、出てきた側枝を新しい培地に植え継ぎ、側枝の下葉の倍数性を測定する(S09)。このとき、DNA倍加が確認できた個体の主茎を、葉を4枚程度残すように切除し、新しい培地に植え継ぎ、28日間培養する(S10)。この植え継ぎを4倍体ポプラの倍数性パターン(Ploidy pattern)が安定するまで繰り返す(S11)。すなわち、植え継ぎに側枝を用いるのは、コルヒチン処理後だけであり、その後は、主茎の先端側を切除して植え継ぎに用いる。そして、その倍数性パターンが4倍体(4n)に収束する個体を選抜していく。
なお、1回の植え継ぎだけでは、倍数性パターンの安定化を確認できないので、少なくとも2回の植え継ぎが必要である。安定化のためには3回植え継ぎを行っても構わない。
実施例1の4倍体ポプラの作出手順について、図2を参照して説明する。
まず、コルヒチン処理準備ステップについて説明する。最初に、コルヒチン処理の対象となる2倍体ポプラのシュート1aをポット6の中に設けられた培地7に植え継ぐ。植え継ぎを行ってから28日後にシュート1a下の葉を3枚程度残して主茎を切除する。
図2(1)は、コルヒチン処理準備ステップが完了し、これから第1のコルヒチン処理ステップに移行する状態を示している。図2(1)に示されるように、2倍体ポプラのシュート1aは、ポット6の中に設けられた培地7に植え継がれている。シュート1aは、茎3と葉(4a,4b,4c)から成り、根5はシュート1aから伸びたものである。シュート1aは、下の葉を3枚程度残して主茎が切除されている。
次に、第1のコルヒチン処理ステップについて説明する。
コルヒチン処理は、葉4aの根元の腋芽8にピペット10を用いてコルヒチン溶液2を乗せることで行う。ここで用いたコルヒチン溶液は、コルヒチン濃度が0.01w/v%であり、これにゲル化剤としてアガーを添加している。アガーの濃度は0.2w/v%である。アガーは、腋芽8の上に乗せたコルヒチン溶液2が腋芽8から流れ落ちないように、安定的に留めるための粘性のゲル化剤として用いている。
図2(2)はコルヒチン溶液2が腋芽8の上に乗せられた状態を示している。図2(2)に示されるように、腋芽8に乗せるコルヒチン溶液2の量は、雫の球ができ、かつ、雫が流れ落ちないくらいの量にする。雫が流れ落ちないようにし、かかる状態で24時間培養を行う。24時間培養後、残ったコルヒチン溶液2の雫を除く。
次に、第2のコルヒチン処理ステップについて説明する。
第1のコルヒチン処理ステップにおいて、残ったコルヒチン溶液2の雫を除いた後、腋芽8に新たにコルヒチン溶液2を乗せる。さらに24時間培養後、残っている雫を除き、滅菌水(図示せず)を乗せて洗浄する作業を2回、繰り返し行う。
次に、作出状況確認ステップについて説明する。
図2(3)は、第2のコルヒチン処理ステップが完了後、4週間培養を行った状態を示している。図2(3)に示されるように、4週間シュート1aを培養したことにより側枝が伸びた状態となっている。出てきた側枝については切除し、シュート1bとして新しい培地に植え継ぎを行う。図2(4)は、切除した側枝を植え継ぎ培養を行った状態を示している。図2(4)に示されるように、切除した側枝はシュート1bとして新しい培地に植え継がれている。その際に、シュート1bの下葉の倍数性を測定し、作出状況を確認する。
次に、倍数性安定化ステップについて説明する。
作出状況確認後、4倍体ポプラの倍数性パターンが安定するまで、28日毎に主茎を植え継いで、倍数性を測定する。ここで、シュート1aから植え継がれたシュート1bだけではなく、コルヒチン処理した他の腋芽由来のシュートも含め、異なる腋芽から発生した個体の単位をラインと呼ぶ。1つのラインにつき複数回の植え継ぎを行い、その度に繰り返しシュートが得られることになる。
倍数性安定化ステップにおいて、個々のラインにおけるシュートの倍数性が安定しているかを判定するためには、各シュートの倍数性を測定する必要があるが、倍数性の測定は、フローサイトメトリーと呼ばれる分析方法により行う。フローサイトメトリーとは、試料の細胞や核などを蛍光性の色素で染色し、その蛍光強度をフローサイトメーターという分析装置で読み取り、相対的なDNA量を測定する分析方法である。すなわち、通常の2倍体の蛍光強度のピーク値を2Cとすると、蛍光強度のピーク値は、4倍体では2倍体のおよそ2倍(4C)、8倍体では2倍体のおよそ4倍(8C)と、倍数性に比例して大きくなることになる。
図3は、実施例1の4倍体ポプラの作出方法のDNA倍数性解析結果の比較グラフを示し、(1)はコルヒチン処理を行っていない2倍体ポプラ、(2)はコルヒチン処理を行った2倍体と4倍体のキメラのポプラ、(3)はコルヒチン処理を行った4倍体ポプラ、(4)はコルヒチン処理を行った4倍体と8倍体のキメラのポプラを示している。蛍光強度を示す横軸上に表示された点線は、蛍光強度のピーク値が現れている場合に倍数性が認められる基準となる蛍光強度(2C,4C,8C)を示し、蛍光強度(2C)は2倍体、蛍光強度(4C)は4倍体、蛍光強度(8C)は8倍体を示す基準となる。また、2nとは2倍体を示し、4nは4倍体、8nは8倍体、16nは16倍体をそれぞれ示す。なお、「2n,4n」とは2倍体と4倍体のキメラのポプラを示す。ここで、キメラとは、同一個体内に異なったDNA倍数性を持つ細胞が混じっていることをいう。
(1)のグラフでは、コルヒチン処理を行っていない2倍体ポプラを用い、ピーク値が現れている蛍光強度を、2倍体ポプラを示す基準となる蛍光強度(2C)として設定している。かかる基準を元に、4倍体ポプラを示す基準となる蛍光強度(4C)及び8倍体ポプラを示す基準となる蛍光強度(8C)を設定して測定を行う。
(2)のグラフでは、蛍光強度(2C,4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、2倍体と4倍体のキメラのポプラであることが測定できる。
(3)のグラフでは、蛍光強度(4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、4倍体ポプラであることが測定できる。
(4)のグラフでは、蛍光強度(4C,8C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、4倍体と8倍体のキメラのポプラであることが測定できる。
下記表1は、コルヒチン処理後のシュートの倍加状況を上記方法により解析した一覧を示している。コルヒチン処理後に発生した側枝を1回植え継いで測定したものであり、倍数性パターンは未だ安定していない段階である。
上記表1に示されるように、コルヒチン処理後、1回植え継ぎを行った結果、総ライン数361の内、4倍体ポプラが26作出されていることが確認できている。安定化前とはいえ、そもそもDNA倍加が起こり難いポプラにおいては、約7.20%(26/361)という数値は、非常に高い数値であるといえる。
図4は、実施例1の4倍体ポプラの作出方法におけるシュートの倍加状況を示し、(1)は初代が4倍体のポプラの継代による倍数性の変化、(2)は初代が4倍体と8倍体のキメラのポプラの継代による倍数性の変化、(3)は初代が4倍体,8倍体及び16倍体のキメラのポプラの継代による倍数性の変化、(4)は初代が8倍体のポプラの継代による倍数性の変化、(5)は初代が8倍体と16倍体のキメラのポプラの継代による倍数性の変化を示している。
ここでは、1回植え継ぎを行ったラインにおけるシュートを初代のシュートと呼んでいる。
図4(1)に示されるように、初代のシュートが4倍体のポプラとなっているライン数は26であるが、もう一度植え継ぎを行った2代目のシュートでは、2倍体ポプラが4、2倍体と4倍体のキメラのポプラが9に、4倍体ポプラが13になっている。2代目に4倍体ポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、2倍体と4倍体のキメラのポプラが1に、4倍体ポプラが10になっている。
図4(2)に示されるように、初代のシュートが4倍体と8倍体のキメラのポプラとなっているライン数は28であるが、もう一度植え継ぎを行った2代目のシュートでは、2倍体ポプラが7に、2倍体と4倍体のキメラのポプラが9に、4倍体ポプラが8に、4倍体と8倍体のキメラのポプラが3になっている。
また、2代目に4倍体ポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、4倍体ポプラが8になっている。2代目に4倍体と8倍体のキメラのポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、4倍体と8倍体のキメラのポプラが1になっている。
図4(3)に示されるように、初代のシュートが4倍体,8倍体及び16倍体のキメラのポプラとなっているライン数は7であるが、もう一度植え継ぎを行った2代目のシュートでは、2倍体ポプラが1に、2倍体と4倍体のキメラのポプラが5に、4倍体ポプラが1に、4倍体,8倍体及び16倍体のキメラのポプラが0になっている。2代目に4倍体ポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、2倍体と4倍体のキメラのポプラが1になっている。
図4(4)に示されるように、初代のシュートが8倍体のポプラとなっているライン数は4であるが、もう一度植え継ぎを行った2代目のシュートでは、2倍体ポプラが1に、8倍体ポプラが2になっている。2代目に8倍体ポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、8倍体ポプラが2になっている。
図4(5)に示されるように、初代のシュートが8倍体と16倍体のキメラのポプラとなっているライン数は2であるが、もう一度植え継ぎを行った2代目のシュートでは、4倍体ポプラが1になっている。
図5は、実施例1の2倍体と4倍体ポプラの木部細胞面積及び木部細胞数の比較グラフを示している。なお、2倍体を示す2nの後の#は各々の個体をナンバリングしたものである。
図5に示されるように、2倍体ポプラと4倍体ポプラでは、木部細胞面積については、2倍体ポプラが70〜85mmであるのに対し、4倍体ポプラは110〜145mmである。
また、木部細胞数については、2倍体ポプラと4倍体ポプラの何れについても5〜7個となっており、殆ど違いは無いことが分かる。
木部細胞数については殆ど違いが無いにもかかわらず、木部細胞面積については4倍体ポプラは2倍体ポプラより1.5倍以上広い面積を有しているので、4倍体ポプラの木部細胞は、2倍体ポプラより1.5倍以上大きいことが確認できた。
図6は、CO固定化に関する2倍体と4倍体ポプラの比較データを示し、(1)は光合成有効放射量による比較、(2)は葉内CO濃度による比較を示している。なお、グラフ縦軸を示すCO固定速度とは、単位時間・単位葉面積あたりのCO固定量のことである。
図6(1)に示されるように、丸印で示される2倍体ポプラ(2n),三角印で示される4倍体ポプラ(4n#13)及び四角印で示される4倍体ポプラ(4n#16)の葉につき、照射する光量を変化させた場合のCO固定速度については、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)のCO固定速度に有意差は認められなかった。
図6(2)に示されるように、丸印で示される2倍体ポプラ(2n),三角印で示される4倍体ポプラ(4n#13)及び四角印で示される4倍体ポプラ(4n#16)の葉につき、葉内のCO濃度を変化させた場合のCO固定速度については、大気中のCO濃度に近い400ppm以下では、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)のCO固定速度に有意差は認められなかった。
図7は、実施例1の2倍体と4倍体ポプラの下からの葉の枚数と葉面積の相関図を示し、(1)は2倍体ポプラ、(2)は4倍体ポプラを示している。
図7に示されるように、(1)の2倍体ポプラにおいては、葉面積は最大のものでも約30cmであるが、(2)の4倍体ポプラにおいては、葉面積は最大のものになると60cm以上であることが分かる。また、それ以外についても2倍体ポプラよりも4倍体ポプラの方が、葉面積が広い傾向にあることがわかる。
図8は、実施例1の2倍体と4倍体ポプラのCO固定速度に関する比較グラフを示し、(1)は総葉面積、(2)は個体あたりのCO固定速度を示している。
図8(1)に示されるように、2倍体ポプラの総葉面積は434cmであるのに対し、4倍体ポプラの総葉面積は683cmである。したがって、4倍体ポプラの総葉面積は2倍体ポプラの総葉面積の約1.6倍となっており、葉についても巨大化されていることが分かる。
また、図8(2)に示されるように、個体あたりのCO固定速度についても、2倍体ポプラの個体あたりのCO固定速度は16.9μmol CO/minであるのに対し、4倍体ポプラの個体あたりのCO固定速度は23.9μmol CO/minである。したがって、4倍体ポプラの個体あたりのCO固定速度は2倍体ポプラの個体あたりのCO固定速度の約1.4倍となっており、CO固定速度についても上昇していることが分かる。
図9は、実施例1の2倍体と4倍体ポプラの茎についての比較グラフを示し、(1)は茎の高さ、(2)は茎の太さ、(3)は茎の体積を示している。
図9に示されるように、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)では、(1)茎の高さ、(2)茎の太さ、(3)茎の体積の何れについても2倍体ポプラ(2n)よりも4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)の方が高い数値を示している。特に(3)茎の体積については、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#16)では2倍以上の差となっており、木部の巨大化に成功していることが分かる。
図10は、実施例1の2倍体と4倍体ポプラの重量についての比較グラフを示し、(1)は生重量、(2)は乾重量を示している。ここで、生重量は水分を含んだ状態であり、乾重量は水分を含まない状態である。
図10(1)及び(2)に示されるように、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)では、葉及び茎の総重量について、生重量と乾重量の何れにおいても4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)の方が高い数値を示している。2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13)では、特に、その差は顕著であり、約1.5倍以上の差となっている。このように重量の点からも、4倍体ポプラの作出方法では、木部の巨大化に成功していることがわかる。
ここで、2倍体ポプラではなく2倍体ユーカリを用いて、本発明のDNA倍加処理を行った結果を説明する。2倍体ユーカリを用いるという点以外は、上記の処理と同じ条件、やり方を行っている。
図11は、4倍体ユーカリの作出方法のDNA倍数性解析結果の比較グラフを示し、(1)はコルヒチン処理を行っていない2倍体ユーカリ、(2)はコルヒチン処理を行った2倍体と4倍体のキメラのユーカリ、(3)はコルヒチン処理を行った4倍体ユーカリを示している。倍数性の測定についても、同様に、フローサイトメトリーと呼ばれる分析方法により行う。
(1)のグラフでは、コルヒチン処理を行っていない2倍体ユーカリを用い、ピーク値が現れている蛍光強度を、2倍体ユーカリを示す基準となる蛍光強度(2C)として設定している。かかる基準を元に、4倍体ユーカリを示す基準となる蛍光強度(4C)を設定して測定を行う。
(2)のグラフでは、蛍光強度(2C,4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、2倍体と4倍体のキメラのユーカリであることが測定できる。
(3)のグラフでは、蛍光強度(4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、4倍体ユーカリであることが測定できる。
下記表2は実施例2の4倍体ユーカリの作出結果を示した表である。
上記表2に示されるように、コルヒチン処理後、1回植え継ぎを行った結果、総ライン数81の内、4倍体ユーカリが3個体、作出されていることがわかる。約3.70%(3/81)という割合は、4倍体ポプラの作出割合よりも低い値である。
本発明は、植物バイオマスの資源化に有用である。
1 シュート
2 コルヒチン溶液
3 茎
4 葉
5 根
6 ポット
7 培地
8 腋芽
10 ピペット

Claims (8)

  1. 2倍体ポプラのシュートの腋芽に対してコルヒチン溶液を滴下して培養し、出てきた側枝を切除し植え継いで、倍数性パターンが4倍体以上の個体を選抜して主茎を植え継ぎ、倍数性パターンが4倍体に収束するまで植え継ぎを繰り返し、4倍体ポプラを作出することを特徴とする4倍体ポプラの作出方法。
  2. 前記コルヒチン溶液の濃度は、0.002w/v%以上、0.1w/v%未満であることを特徴とする請求項1に記載の4倍体ポプラの作出方法。
  3. 前記コルヒチン溶液の濃度は、0.005w/v%以上、0.05w/v%未満であることを特徴とする請求項1に記載の4倍体ポプラの作出方法。
  4. コルヒチン溶液には、ゲル化剤が添加されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の4倍体ポプラの作出方法。
  5. コルヒチン溶液の滴下は、植え継いで育成したシュートの下葉を残して主茎を切除したものの葉の根元の腋芽に対して行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の4倍体ポプラの作出方法。
  6. コルヒチン溶液の滴下の頻度は、2回、滴下間隔は1日であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の4倍体ポプラの作出方法。
  7. コルヒチン溶液量は、腋芽に雫の玉ができる量、かつ、腋芽から流れ落ちない量であることを特徴とする請求項6に記載の4倍体ポプラの作出方法。
  8. 1)2倍体ポプラのシュートを培地へ植え継ぎ、植え継ぎから略28日後にシュートの下の葉を少なくとも1枚残して主茎を切除するコルヒチン処理準備ステップと、
    2)シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せ、略24時間培養を行った後、残った雫を除く第1のコルヒチン処理ステップと、
    3)第1のコルヒチン処理ステップの後、腋芽に新たにコルヒチン溶液を乗せ、さらに略24時間培養後、残っている雫を除き、滅菌水を乗せて洗浄する第2のコルヒチン処理ステップと、
    4)略1ヵ月培養し、出てきた側枝を切除し、新しい培地に植え継ぎ、側枝の下葉の倍数性を測定して、倍数性パターンが4倍体以上の個体を選抜して主茎を植え継ぎ、4倍体ポプラ作出状況を確認する作出状況確認ステップと、
    5)倍数性パターン4倍体に収束するまで、植え継ぎと倍数性パターンの測定を繰り返す倍数性安定化ステップ、
    から成ることを特徴とする4倍体ポプラの作出方法。
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