JP6593684B2 - 4倍体ポプラの作出方法 - Google Patents
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Description
そこで、生産するポプラやユーカリの地上部器官を巨大化して生産量を向上させる方法が考えられる。この点、地球上の被子植物の内、約70%の被子植物はDNA倍加により細胞を肥大化させ、器官サイズを大きくしている。ところが、バイオマス生産の原料として注目されているポプラやユーカリではDNA倍加が起こらないと言われている。
しかし、バイオマス生産の原料としてはユーカリ属だけではなくポプラ等も有用であるが、特許文献1に開示された方法は、パルプ材として有用なユーカリ属について4倍体を作成するものに過ぎない。
また、特許文献1の明細書段落0012によると、DNA倍加処理方法として、シュートをコルヒチン等の溶液中に浸漬することにより行うことが、最も一般的としており、実施例においても、コルヒチン水溶液に24時間浸漬することで倍加処理を行っている。ここで、シュートとは、茎とその上にできる多数の葉からなる単位をいう。
しかしながら、染色体の倍加処理を行う際、ユーカリ属のシュート切片をコルヒチン等の溶液に浸漬して倍加処理を行う方法では、培養のための培地以外に、倍加処理を行うための大規模な装置が必要であり、煩雑であった。
さらに、倍加処理後に、植物ホルモンとしてBAPもしくはカイネチン、ショ糖、ゲランガムもしくは寒天を含有する培地或はそれらを改変した培地により組織培養を行わなければならない方法であったため、かかる点においても簡便な方法とはいえなかった。
しかし、アミプロホスメチルは、通常、除草剤として用いられているため、植物体に薬害を発生させる危険性があるという問題があった。
また、特許文献2に開示されたウリ科植物の染色体倍加方法においても、染色体の倍加処理を行う際、ウリ科植物のシュート切片をアミプロホスメチル水溶液に浸漬して倍加処理を行っているが、特許文献1と同様、かかる方法は煩雑であり、簡便な方法とはいえなかった。
さらに、倍加処理後に組織培養を介する方法であるため、かかる点においても簡便な方法とはいえなかった。
なお、特許文献2の明細書段落0003には、温室で栽培中のメロンの腋芽に脱脂綿を乗せコルヒチンを滴下し処理する方法も試みたが倍加シュートは得られなかったと記載されており、従来は、植物の腋芽にコルヒチンを滴下する程度では倍加シュートは得られないのが常識とされていた。ここで、腋芽とは、葉の付け根から出る芽のことをいう。
かかる状況に鑑みて、本発明は、簡便な方法によりポプラのDNA倍加処理を行い、かつ、組織培養を介さずに、2倍体ポプラから4倍体ポプラを安定的に作出する方法を提供することを目的とする。
コルヒチン処理の対象としては、ポプラを用いる。ここで、コルヒチン処理とは、微小管(紡錘体)の形成を阻害することで、細胞分裂を阻害し、その結果、細胞分裂がなされずに染色体を倍加させるものである。
また、コルヒチン処理の方法としては、2倍体ポプラのシュートの腋芽に対して行うものである。DNA倍加処理後は、植え継ぎを行うことで、細胞培養によらずに培養を行うことが可能である。
ここで、0.002%未満であるとDNA倍加促進効果が弱く、また、0.1w/v%以上であると、微小管形成を高度に阻害することによる二次的影響が現れるので、上記濃度範囲に調製する。
1)2倍体ポプラのシュートを培地へ植え継ぎ、植え継ぎから略28日後にシュートの下の葉を少なくとも1枚残して主茎を切除するコルヒチン処理準備ステップ
2)シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せ、略24時間培養を行った後、残った雫を除く第1のコルヒチン処理ステップ
3)第1のコルヒチン処理ステップの後、腋芽に新たにコルヒチン溶液を乗せ、さらに略24時間培養後、残っている雫を除き、滅菌水を乗せて洗浄する第2のコルヒチン処理ステップ
4)略1ヵ月培養し、出てきた側枝を新しい培地に植え継ぎ、側枝の下葉の倍数性を測定して、4倍体ポプラを作出状況を確認する作出状況確認ステップ
5)4倍体ポプラの倍数性が安定するまで、植え継ぎと倍数性の測定を繰り返す倍数性安定化ステップ
図1に示されるように、まず、2倍体ポプラのシュートの植え継ぎを行う(S01)。そして、28日経過後、下の葉を2〜4枚残し、主茎を切除する(S02)。次に、シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せる(S03)。かかる状態で24時間培養を行い、培養後、残った雫を除く(S04)。さらに、シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せる(S05)。かかる状態で24時間培養を行い、培養後、残った雫を除く(S06)。そして、滅菌水で腋芽を洗浄する(S07)。その後、4週間培養し(S08)、出てきた側枝を新しい培地に植え継ぎ、側枝の下葉の倍数性を測定する(S09)。このとき、DNA倍加が確認できた個体の主茎を、葉を4枚程度残すように切除し、新しい培地に植え継ぎ、28日間培養する(S10)。この植え継ぎを4倍体ポプラの倍数性パターン(Ploidy pattern)が安定するまで繰り返す(S11)。すなわち、植え継ぎに側枝を用いるのは、コルヒチン処理後だけであり、その後は、主茎の先端側を切除して植え継ぎに用いる。そして、その倍数性パターンが4倍体(4n)に収束する個体を選抜していく。
なお、1回の植え継ぎだけでは、倍数性パターンの安定化を確認できないので、少なくとも2回の植え継ぎが必要である。安定化のためには3回植え継ぎを行っても構わない。
まず、コルヒチン処理準備ステップについて説明する。最初に、コルヒチン処理の対象となる2倍体ポプラのシュート1aをポット6の中に設けられた培地7に植え継ぐ。植え継ぎを行ってから28日後にシュート1a下の葉を3枚程度残して主茎を切除する。
図2(1)は、コルヒチン処理準備ステップが完了し、これから第1のコルヒチン処理ステップに移行する状態を示している。図2(1)に示されるように、2倍体ポプラのシュート1aは、ポット6の中に設けられた培地7に植え継がれている。シュート1aは、茎3と葉(4a,4b,4c)から成り、根5はシュート1aから伸びたものである。シュート1aは、下の葉を3枚程度残して主茎が切除されている。
コルヒチン処理は、葉4aの根元の腋芽8にピペット10を用いてコルヒチン溶液2を乗せることで行う。ここで用いたコルヒチン溶液は、コルヒチン濃度が0.01w/v%であり、これにゲル化剤としてアガーを添加している。アガーの濃度は0.2w/v%である。アガーは、腋芽8の上に乗せたコルヒチン溶液2が腋芽8から流れ落ちないように、安定的に留めるための粘性のゲル化剤として用いている。
図2(2)はコルヒチン溶液2が腋芽8の上に乗せられた状態を示している。図2(2)に示されるように、腋芽8に乗せるコルヒチン溶液2の量は、雫の球ができ、かつ、雫が流れ落ちないくらいの量にする。雫が流れ落ちないようにし、かかる状態で24時間培養を行う。24時間培養後、残ったコルヒチン溶液2の雫を除く。
第1のコルヒチン処理ステップにおいて、残ったコルヒチン溶液2の雫を除いた後、腋芽8に新たにコルヒチン溶液2を乗せる。さらに24時間培養後、残っている雫を除き、滅菌水(図示せず)を乗せて洗浄する作業を2回、繰り返し行う。
図2(3)は、第2のコルヒチン処理ステップが完了後、4週間培養を行った状態を示している。図2(3)に示されるように、4週間シュート1aを培養したことにより側枝が伸びた状態となっている。出てきた側枝については切除し、シュート1bとして新しい培地に植え継ぎを行う。図2(4)は、切除した側枝を植え継ぎ培養を行った状態を示している。図2(4)に示されるように、切除した側枝はシュート1bとして新しい培地に植え継がれている。その際に、シュート1bの下葉の倍数性を測定し、作出状況を確認する。
作出状況確認後、4倍体ポプラの倍数性パターンが安定するまで、28日毎に主茎を植え継いで、倍数性を測定する。ここで、シュート1aから植え継がれたシュート1bだけではなく、コルヒチン処理した他の腋芽由来のシュートも含め、異なる腋芽から発生した個体の単位をラインと呼ぶ。1つのラインにつき複数回の植え継ぎを行い、その度に繰り返しシュートが得られることになる。
(2)のグラフでは、蛍光強度(2C,4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、2倍体と4倍体のキメラのポプラであることが測定できる。
(3)のグラフでは、蛍光強度(4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、4倍体ポプラであることが測定できる。
(4)のグラフでは、蛍光強度(4C,8C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、4倍体と8倍体のキメラのポプラであることが測定できる。
ここでは、1回植え継ぎを行ったラインにおけるシュートを初代のシュートと呼んでいる。
また、2代目に4倍体ポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、4倍体ポプラが8になっている。2代目に4倍体と8倍体のキメラのポプラとなったシュートをさらに植え継いだ3代目のシュートでは、4倍体と8倍体のキメラのポプラが1になっている。
図5に示されるように、2倍体ポプラと4倍体ポプラでは、木部細胞面積については、2倍体ポプラが70〜85mm2であるのに対し、4倍体ポプラは110〜145mm2である。
また、木部細胞数については、2倍体ポプラと4倍体ポプラの何れについても5〜7個となっており、殆ど違いは無いことが分かる。
木部細胞数については殆ど違いが無いにもかかわらず、木部細胞面積については4倍体ポプラは2倍体ポプラより1.5倍以上広い面積を有しているので、4倍体ポプラの木部細胞は、2倍体ポプラより1.5倍以上大きいことが確認できた。
図6(1)に示されるように、丸印で示される2倍体ポプラ(2n),三角印で示される4倍体ポプラ(4n#13)及び四角印で示される4倍体ポプラ(4n#16)の葉につき、照射する光量を変化させた場合のCO2固定速度については、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)のCO2固定速度に有意差は認められなかった。
図6(2)に示されるように、丸印で示される2倍体ポプラ(2n),三角印で示される4倍体ポプラ(4n#13)及び四角印で示される4倍体ポプラ(4n#16)の葉につき、葉内のCO2濃度を変化させた場合のCO2固定速度については、大気中のCO2濃度に近い400ppm以下では、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)のCO2固定速度に有意差は認められなかった。
図7に示されるように、(1)の2倍体ポプラにおいては、葉面積は最大のものでも約30cm2であるが、(2)の4倍体ポプラにおいては、葉面積は最大のものになると60cm2以上であることが分かる。また、それ以外についても2倍体ポプラよりも4倍体ポプラの方が、葉面積が広い傾向にあることがわかる。
図8(1)に示されるように、2倍体ポプラの総葉面積は434cm2であるのに対し、4倍体ポプラの総葉面積は683cm2である。したがって、4倍体ポプラの総葉面積は2倍体ポプラの総葉面積の約1.6倍となっており、葉についても巨大化されていることが分かる。
また、図8(2)に示されるように、個体あたりのCO2固定速度についても、2倍体ポプラの個体あたりのCO2固定速度は16.9μmol CO2/minであるのに対し、4倍体ポプラの個体あたりのCO2固定速度は23.9μmol CO2/minである。したがって、4倍体ポプラの個体あたりのCO2固定速度は2倍体ポプラの個体あたりのCO2固定速度の約1.4倍となっており、CO2固定速度についても上昇していることが分かる。
図9に示されるように、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)では、(1)茎の高さ、(2)茎の太さ、(3)茎の体積の何れについても2倍体ポプラ(2n)よりも4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)の方が高い数値を示している。特に(3)茎の体積については、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#16)では2倍以上の差となっており、木部の巨大化に成功していることが分かる。
図10(1)及び(2)に示されるように、2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)では、葉及び茎の総重量について、生重量と乾重量の何れにおいても4倍体ポプラ(4n#13,4n#16)の方が高い数値を示している。2倍体ポプラ(2n)と4倍体ポプラ(4n#13)では、特に、その差は顕著であり、約1.5倍以上の差となっている。このように重量の点からも、4倍体ポプラの作出方法では、木部の巨大化に成功していることがわかる。
図11は、4倍体ユーカリの作出方法のDNA倍数性解析結果の比較グラフを示し、(1)はコルヒチン処理を行っていない2倍体ユーカリ、(2)はコルヒチン処理を行った2倍体と4倍体のキメラのユーカリ、(3)はコルヒチン処理を行った4倍体ユーカリを示している。倍数性の測定についても、同様に、フローサイトメトリーと呼ばれる分析方法により行う。
(2)のグラフでは、蛍光強度(2C,4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、2倍体と4倍体のキメラのユーカリであることが測定できる。
(3)のグラフでは、蛍光強度(4C)付近に蛍光強度のピーク値が現れているため、4倍体ユーカリであることが測定できる。
下記表2は実施例2の4倍体ユーカリの作出結果を示した表である。
2 コルヒチン溶液
3 茎
4 葉
5 根
6 ポット
7 培地
8 腋芽
10 ピペット
Claims (8)
- 2倍体ポプラのシュートの腋芽に対してコルヒチン溶液を滴下して培養し、出てきた側枝を切除し植え継いで、倍数性パターンが4倍体以上の個体を選抜して主茎を植え継ぎ、倍数性パターンが4倍体に収束するまで植え継ぎを繰り返し、4倍体ポプラを作出することを特徴とする4倍体ポプラの作出方法。
- 前記コルヒチン溶液の濃度は、0.002w/v%以上、0.1w/v%未満であることを特徴とする請求項1に記載の4倍体ポプラの作出方法。
- 前記コルヒチン溶液の濃度は、0.005w/v%以上、0.05w/v%未満であることを特徴とする請求項1に記載の4倍体ポプラの作出方法。
- コルヒチン溶液には、ゲル化剤が添加されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の4倍体ポプラの作出方法。
- コルヒチン溶液の滴下は、植え継いで育成したシュートの下葉を残して主茎を切除したものの葉の根元の腋芽に対して行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の4倍体ポプラの作出方法。
- コルヒチン溶液の滴下の頻度は、2回、滴下間隔は1日であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の4倍体ポプラの作出方法。
- コルヒチン溶液量は、腋芽に雫の玉ができる量、かつ、腋芽から流れ落ちない量であることを特徴とする請求項6に記載の4倍体ポプラの作出方法。
- 1)2倍体ポプラのシュートを培地へ植え継ぎ、植え継ぎから略28日後にシュートの下の葉を少なくとも1枚残して主茎を切除するコルヒチン処理準備ステップと、
2)シュートの腋芽にコルヒチン溶液を乗せ、略24時間培養を行った後、残った雫を除く第1のコルヒチン処理ステップと、
3)第1のコルヒチン処理ステップの後、腋芽に新たにコルヒチン溶液を乗せ、さらに略24時間培養後、残っている雫を除き、滅菌水を乗せて洗浄する第2のコルヒチン処理ステップと、
4)略1ヵ月培養し、出てきた側枝を切除し、新しい培地に植え継ぎ、側枝の下葉の倍数性を測定して、倍数性パターンが4倍体以上の個体を選抜して主茎を植え継ぎ、4倍体ポプラの作出状況を確認する作出状況確認ステップと、
5)倍数性パターンが4倍体に収束するまで、植え継ぎと倍数性パターンの測定を繰り返す倍数性安定化ステップ、
から成ることを特徴とする4倍体ポプラの作出方法。
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