以下、本発明に係る切断デバイス22、及びこの切断デバイス22を有する剥離システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
剥離システム10は、血管バイパス術(冠動脈バイパス術:CABG)を行う際のバイパス管として用いられる血管を採取するのに用いられるものであり、血管を周囲の組織(脂肪、結合組織等)に覆われた状態で採取することができる。剥離システム10を用いて採取する血管としては、バイパス管として用いることのできる血管であれば特に限定されず、例えば、内胸動脈、胃大網動脈、橈骨動脈、伏在静脈(大伏在静脈、小伏在静脈)等が挙げられる。
採取する血管としてはこれらの中でも伏在静脈であることが好ましい。剥離システム10を用いることで、前述したように、血管を周囲の組織に覆われた状態で採取することが容易となるため、剥離システム10を用いて伏在静脈を採取し、それをバイパス管として用いることで、術後の長期的な開存率が高くなると考えられる。
図1に示すように、剥離システム10は、複数のデバイスを一組として備えており、手技の手順(処置状況)に応じて、各デバイスを組み合わせて又は単独で使用する構成となっている。具体的には、剥離システム10は、ヘラデバイス12、撮像デバイス14、空間形成デバイス16、第1ホルダ18、第2ホルダ20及び切断デバイス22を有している。
以下では、剥離システム10の各デバイスの方向を示す場合に、図1(図2A〜図11Bも同じ)に記載の方向指示を基準に述べるものとする。すなわち、図1中の各デバイスにおいて、紙面斜め左側に向かう方向を前方向、紙面斜め右側に向かう方向を後方向、紙面上側に向かう方向を上方向、紙面下側に向かう方向を下方向、紙面斜め手前側に向かう方向を左方向、紙面斜め奥側に向かう方向を右方向という。デバイスの左右方向の指示は、手技時における術者の視点を基準としている。なお、これらの方向は、説明の便宜上のためであり、各デバイスは任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能なことは勿論である。
ヘラデバイス12は、血管を採取する際に、患者の体内に挿入されて、血管の周辺の組織(脂肪同士、脂肪と皮膚等)を剥離するための第1剥離デバイスである。このヘラデバイス12は、前後方向に長く幅方向に幅狭な板状のヘラ本体24と、ヘラ本体24の基端側に連結されている半円柱状の基端操作部26とを有する。
ヘラ本体24は、実際に患者の体内に挿入されて組織の剥離を行う部位である。ヘラ本体24の先端縁24a及び両側縁24bは、曲率が大きな断面円弧状に形成されており、組織に触れて直接剥離する部分にあたる。このヘラ本体24は、両側縁24bが幅方向中央部よりも下側に若干低くなることで浅い傘状を呈する。これにより、剥離の容易化と体内での抵抗力の低減を図っている。このヘラ本体24の幅方向中央部の下面には、撮像デバイス14を収容する図示しない収容空間が軸方向に沿って形成されている。
基端操作部26は、術者(ユーザ)がヘラデバイス12を把持操作する部位である。基端操作部26は、その上側がヘラ本体24よりも突出して大きな円弧状を呈し、その下側がヘラ本体24の両側縁24bと一致する高さの平坦状に切り欠かれている。基端操作部26は、基端面と収容空間とを連通する孔部26aと、上側の外周面に前後方向に沿って延びる溝部26bとを有する。孔部26a及び溝部26bは、撮像デバイス14を通すことが可能となっている。
撮像デバイス14は、手技時に、剥離システム10の他のデバイスと一緒に患者の体内に挿入され、他のデバイス及び組織の状態を撮像する、所謂、内視鏡として構成されている。撮像デバイス14には、図示しない表示装置が接続される。そして手技中には、この表示装置に撮像した体内の映像を表示し、術者はこの映像を確認しながら手技を行うことができる。撮像デバイス14は、前後方向に長い撮像シャフト部28と、撮像シャフト部28の基端に連結され術者が把持操作する基端操作部30とを有する。
撮像シャフト部28は、細長い円筒状に形成され、その前側には、例えば対物レンズ32及び照明部34が設けられている。また、撮像シャフト部28の内部には、対物レンズ32及び照明部34に電気的に接続される図示しない導線が配置されている。一方、基端操作部30は、対物レンズ32及び照明部34の前後位置や撮像角度等を術者が簡易に調整できるように、撮像シャフト部28よりも大径に形成されている。
空間形成デバイス16は、ヘラデバイス12による組織の剥離後に挿入される。空間形成デバイス16は、ヘラデバイス12が剥離した組織を広げて、空間形成デバイス16の内周面により囲われる空間を血管と組織の間に形成する第2剥離デバイスである。この空間形成デバイス16は、前後方向に長く形成され実際に患者の体内に挿入されるドーム部36と、ドーム部36の基端側に連結され術者が把持操作する基端操作部38とを有する。
ドーム部36は、図1、図2A及び図2Bに示すように、内側に空洞40を有する半円筒状を呈し、その下側には、空洞40に連通する開口42を備えている。空洞40は、ドーム部36の内周面により構成され、ドーム部36が挿入された体内では、この空洞40が空間を形成する。また、ドーム部36の前側は、空洞40を緩やかに閉じる先細り形状である。空洞40及び開口42は、ドーム部36の軸方向に沿って延び、剥離する血管に沿って空間を構築することが可能である。
空洞40は、後述する切断デバイス22の切断機構52を収容可能な容積に設定されている。空洞40を構成するドーム部36の内周面は、断面視で、滑らかな円弧状である。また、ドーム部36内の両側縁(空洞40)の幅は、ヘラデバイス12(ヘラ本体24)の両側縁24bの幅に一致している。さらに、ドーム部36の前端の下縁は、ヘラデバイス12の上面に沿う山形のガイド面44を有する。これによりドーム部36は、ヘラデバイス12の上面上を円滑に移動(摺動)することが可能である。
空間形成デバイス16の基端操作部38は、ドーム部36よりも一回り大きい半円筒状である。基端操作部38の内部には、空洞40に連通し、且つ第1ホルダ18及び第2ホルダ20を別個に装着可能な中空部38aが設けられている。また、基端操作部38の基端には、中空部38aに連通する基端開口38bが設けられている。
第1ホルダ18と第2ホルダ20は、手技の手順に応じて付け替えられるブロック状の部材である。第1ホルダ18は、半円柱状で、その幅方向中心部に撮像シャフト部28を挿通可能な挿通孔18aが貫通している。第2ホルダ20は、半円筒状で、その内周面の幅方向一方寄りに保持膨出部46が設けられている。そして、この保持膨出部46に撮像シャフト部28を挿通可能な挿通孔46aが貫通形成されている。第2ホルダ20の下面と保持膨出部46の側面(外周面)とで構成される空間は、切断デバイス22を貫通配置可能な配置空間48となっている。
そして、剥離システム10の切断デバイス22は、空間形成デバイス16の空洞40を通って体内に挿入され、剥離する血管に繋がる分岐血管を切断する器具として構成されている。この切断デバイス22は、シャフト部50と、シャフト部50の前側(先端部)に設けられる切断機構52とを有する。
シャフト部50は、術者が把持及び操作する把持部となっており、切断機構52を体内(空間形成デバイス16の空洞40)の所望位置に配置させる。シャフト部50は、軸方向に直線状に延在しており、切断機構52を空洞40の奥部まで届かせるため、空間形成デバイス16の全長よりも長い。その一方で、シャフト部50は、撮像デバイス14の撮像シャフト部28よりも多少短い(又は同程度)。シャフト部50は、撮像デバイス14の基端操作部30と空間形成デバイス16の基端操作部38との間で、術者が切断デバイス22を操作できるように構成される。シャフト部50の全長は、例えば300〜700mm程度に設定されるとよい。このシャフト部50は、軸方向に沿って長く延在する管体54と、この管体54から前方向に向かって突出する棒体56とを含んで構成される。
管体54は、第2ホルダ20の配置空間48を配置及び移動可能な外径で直線状に延在し、その内部には軸方向に沿って貫通孔54aが設けられている。この管体54の貫通孔54aに、棒体56が挿入固定される。貫通孔54aは、棒体56の外径よりも充分に大きな直径を有し、棒体56の固定状態で充分な余裕(隙間)を持っている。この貫通孔54aには、棒体56の他に、切断機構52に電気的に接続される一対の導線(第1導線58、第2導線59)が収容される。この第1導線58及び第2導線59は、シャフト部50の基端側から延びて図示しない電源に電気的に接続されている。
図3に示すように、棒体56は、貫通孔54aを構成する管体54の内面に適宜の固着手段(融着や接着等)により固定される。棒体56は、中実状円柱状で、管体54よりも短く突出している。棒体56の先端側の外周面に切断機構52が固着されている。管体54と棒体56は、相互の軸心が平行に延び、管体54の基端部分を術者が把持操作することで、管体54、棒体56及び切断機構52を一体に動作させる。
棒体56の下側には、管体54の貫通孔54aから露出された第1導線58及び第2導線59が延び、この第1導線58及び第2導線59は棒体56の切断機構52の設置箇所に至っている。なお、棒体56は、管体54の外周面に固定されていてもよく、また管体54と棒体56は一体成形されてもよい。
切断機構52は、適宜の固着手段(融着や接着等)により棒体56の外周面に固着される。切断機構52は、シャフト部50の延在方向と直交する方向に突出する1以上の突出構造部60によって構成されている。本実施形態において、突出構造部60は、板状片部で、シャフト部50に一対で(第1片部70、第2片部80として)設けられている。
第1片部70及び第2片部80は、脂肪に容易に刺し込むことができるように、それぞれ薄い肉厚に形成されている。また、第1片部70及び第2片部80は、断面視(図2B参照)で、棒体56から外周面の接線方向に直線状にある程度延びた後、途中位置から所定の曲率で湾曲している。第1片部70及び第2片部80の突出方向長さは、空間形成デバイス16のドーム部36の幅方向中央部から下端までの円弧状の周長よりも短く設定されている。これにより、第1片部70及び第2片部80は、ドーム部36の空洞40を軸方向に移動する際に、その下端部(突出角部75、85)を開口42から露出することなく、良好に移動することができる。
詳細には、第1片部70は、棒体56の前寄り(概ね前端側)に固定されて、図3中の下方向に延びつつ、図3中の紙面手前方向に滑らかに湾曲している。第2片部80は、棒体56上で第1片部70よりも後側に固定され、第1片部70と同様に、下方向に延びつつ、滑らかに湾曲している。第1片部70及び第2片部80は、湾曲部分の相互の曲率が同じであるが、棒体56の外周面に対して互いに周方向の位相がずれて固定されることで、非接触となっている。
第1片部70は、棒体56に連結固定される基部72と、基部72の先端側に連なる返し部74(barb member)とを備える。第1片部70の基部72は、板面に対向する側面視(図4A参照)で、概ね台形状である。具体的には、前側の縁部72aが下方向に直線状に延びる一方で、後側が下方向に途中位置まで直線状に延びる縁部72bと、この縁部72bから下方向且つ縁部72aに向かって所定角度(例えば、30〜60°程度)傾斜した縁部72cとを有する。
返し部74は、縁部72aと縁部72cの間で幅狭となった基部72の下端に連なり、面方向に湾曲しつつ下方向に突出している。この返し部74は、側面視で、基部72よりも狭い幅を有する。返し部74は、下方向且つ基端方向に斜めに短く突出し、この突出角部75から上方向且つ基端方向に曲がって突出するV字状を呈している。第1片部70の突出方向に対する返し部74の角度(屈曲度)は、特に限定されないが、例えば、突出方向に対し90°(シャフト部50の延在方向に平行)〜0°(第1片部70のシャフト部50の固定側に向かって傾斜する角度)の範囲に設定されるとよい。突出角部75よりも返し部74は幅が狭くても良い。
返し部74の外側は、基部72の縁部72aに連なりこの縁部72aに対し所定角度(例えば、45°)で屈曲する縁部74aと、縁部74aに連なりこの縁部74aに対し所定角度(例えば、90°)で屈曲する縁部74bと、縁部74bに連なりこの縁部74bに対し所定角度(例えば、135°)で屈曲する縁部74cとで構成されている。返し部74の内側は、基部72の縁部72cに連なりこの縁部72cに対し所定角度(例えば、90°)で屈曲する縁部74dと、縁部74dに連なりこの縁部74dに対し所定角度(例えば、90°)で屈曲する縁部74eと、縁部74eに連なりこの縁部74eに対し所定角度(例えば、135°)で連なる縁部74fとで構成されている。
縁部74aと縁部74d、縁部74bと縁部74eは、互いに平行に延びており、返し部74の幅を一定としている。外側の縁部74aと縁部74bは、下端角部74gを形成している。外側の縁部74cと内側の縁部74fは返し部74の延出端部76を構成し、直角に交わっている。
返し部74は、返し部74自体の板厚と、縁部74a、74bと、下端角部74gとによって切断機構52の下方向の変位時に生体組織に刺入していく刺入部77を構成している。また、返し部74は、下端方向に対して閉じていることで、基部72の縁部72cと返し部74の縁部74d、74e、74fとが分岐血管を保持可能な保持空間78を内側に有する。縁部72cと縁部74eが互いに平行に延在していることで、保持空間78は、延出端部76から縁部74dに向かって一定の幅を有している。保持空間78の陽極端子79aから陰極端子79bの間の幅は、保持空間78の陰極端子79bの後側の幅よりも狭くても良い。また、返し部74は、湾曲して形成される谷部であってもよい。また、図示しない突起が、保持空間78内の縁部74e上で、かつ陰極端子79bよりも縁部74f側に設けられてもよい。これにより、一度保持空間78に保持された分岐血管102の保持空間からの抜けを防止することができる。
さらに、第1片部70の一方面(本実施形態では、湾曲方向内側)には、バイポーラ電極による切断部79(処理部)を構成するため、陽極端子79aと陰極端子79bが設けられている。陽極端子79aと陰極端子79bは、第1片部70上で互いに離間した位置で電気的に絶縁している。例えば、陽極端子79aは、返し部74の内側の縁部74dに接する位置に配置されており、陰極端子79bは、返し部74の内側の縁部74eに接する位置に配置されている。
またさらに、第1片部70の一方面には、陽極端子79aに電気的に導通する陽極配線79cと、陰極端子79bに電気的に導通する陰極配線79dとが、絶縁状態で互いに平行に設けられている。陽極配線79cは、棒体56に沿って軸方向に延びる第1導線58に電気的に接続され、陰極配線79dは、同様に棒体56に沿って軸方向に延びる第2導線59に電気的に接続される。
一方、第2片部80は、第1片部70と同様に板状に形成され、返し部84及び保持空間88を第1片部70の返し部74及び保持空間78に向き合わせるように設けられる。すなわち、第2片部80は、図4A中の切断機構52の軸方向中間線Lを基点に、第1片部70と線対称に形成されている。より具体的に、第2片部80は、縁部82a、82b、82cによって構成される基部82と、縁部84a〜84fによって構成される返し部84とを有する。
この場合、返し部84の外側の縁部84a、84b、下端角部84gが刺入部87を構成し、返し部84の内側の縁部84d〜84fが基部82の縁部82cと共に保持空間88を有する。
そして、切断機構52は、側面視(図4A参照)で、相互の返し部74、84の延出端部76、86同士が重なると共に、基部72、82の一部分が重なるように設けられる。そのため、第1片部70の保持空間78と第2片部80の保持空間88は、相互が連通して1つの山形空間90を形成している。換言すれば、第1片部70の返し部74と第2片部80の返し部84は相互に重なることにより、側面視で、W字状を有している。保持空間78と、保持空間88の縁部74f側の端部は、側面視(図4A参照)で、一致しても良い。
一方で、第1片部70と第2片部80は、正面視(図4B参照)で、互いが非接触となるように設けられる。詳細には、第2片部80は、第1片部70よりも湾曲方向の内側に配置される。そして、第1片部70の延出端部76と第2片部80の延出端部86は、正面視で相互に離れ、側面視で重なることで、その間の挟まれた箇所に空間92を形成している。空間92は、切断機構52の外側と山形空間90を連通している。空間92のサイズ(第1片部70と第2片部80の重なっている箇所の間隔)は、分岐血管が通過可能に設定されていることが好ましく、例えば0.5mm〜5.0mm程度であるとよい。
また、第1片部70の縁部74bと第2片部80の縁部84bは、側面視で、幅方向中央部に向かって谷状に傾斜することにより、分岐血管を空間92に案内する受容空間94を有している。そして、山形空間90と受容空間94は、延出端部76、86が形成する空間92を介して連通している。
さらに、第2片部80の一方面(第1片部70の一方面と同一面)には、バイポーラ電極による切断部89(処理部)を構成するため、陽極端子89aと陰極端子89bが設けられている。これら陽極端子89aと陰極端子89bも、第1片部70と対称的な位置に配置され、第2片部80上で互いに離間し電気的に絶縁している。
また、第2片部80の一方面には、陽極端子89aに電気的に導通する陽極配線89cと、陰極端子89bに電気的に導通する陰極配線89dが設けられている。陽極配線89cは、棒体56に沿って軸方向に延びる第1導線58の途中位置の端子89eに電気的に接続されており、陰極配線89dは、同様に棒体56に沿って軸方向に延びる第2導線59の途中位置の端子89fに電気的に接続されている。なお、第1片部70及び第2片部80は、陽極端子79a、89a及び陰極端子79b、89b、陽極配線79c、89c及び陰極配線79d、89dの設置位置について特に限定されるものではない。例えば、陽極端子79a(陽極配線79c)と陰極端子79b(陰極配線79d)の位置が逆であってもよい。
第1片部70及び第2片部80を構成する材料は、組織に刺入可能な硬質性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼等の金属材料、硬質樹脂材料、ガラス等があげられる。
本実施形態に係る剥離システム10及び切断デバイス22は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
血管採取方法は、剥離システム10を用いて血管100を周囲の脂肪(組織)に覆われた状態で剥離する剥離ステップ(第1ステップ)と、剥離する血管100に繋がる分岐血管102を切断する切断ステップ(第2ステップ)とを適宜繰り返す。そして、目的の血管100が周辺の組織から分離すると、この血管100を周囲の脂肪に覆われた状態で生体から摘出する摘出ステップ(第3ステップ)を行う。なお、本例では、下肢にある伏在静脈を採取する場合を説明する。
剥離ステップでは、まず、採取する血管100の位置を確認し、その位置に基づいて例えば図5のように患者の皮膚104を切開する。皮膚104を切開したら、術者は、血管100が見えるまで(血管100又は伏在筋膜が露出するまで)その切開部106及び脂肪を剥離する。
次に、術者は、ヘラデバイス12及び撮像デバイス14を用意し、ヘラデバイス12の下側の孔部26aに撮像デバイス14の撮像シャフト部28を挿入及び保持することで、両デバイスを一体的に取扱可能な第1組立体95とする。術者は、この第1組立体95を切開部106から挿入し、ヘラ本体24の下側が血管に対向するように撮像デバイス14で体内を観察しながら、血管100に沿ってヘラ本体24を進入させていく。この進入時に、第1組立体95は、図6に示すように、ヘラ本体24の先端縁24a及び両側縁24bによって血管100の周囲の脂肪を剥離する。術者は、撮像デバイス14が血管100の近くを撮像することで、剥離箇所を確認しつつヘラ本体24の進出を行い、ヘラ本体24を必要長さ(採取したい長さ)だけ押し進める。
ヘラ本体24により所望の位置まで剥離を行うと、剥離ステップを一旦終了させて、撮像デバイス14等によって目的の血管100に分岐血管102が繋がっていることを確認すると、切断ステップを実施する。この切断ステップを実施する際には、ヘラデバイス12と相対的に撮像デバイス14を後退させて、ヘラ本体24のみを体内に残して撮像デバイス14を引き抜く。なお、切断ステップを実施しない場合には、第1組立体95を引き抜き、血管100に対し第1組立体95の挿入角度(周方向の位相)を変えて第1組立体95を再び挿入する。
切断ステップでは、空間形成デバイス16及び第1ホルダ18を用意し、引き抜いた撮像デバイス14の撮像シャフト部28を第1ホルダ18の挿通孔18aに挿入及び保持して、空間形成デバイス16の基端操作部38の中空部38aに第1ホルダ18を挿入固定する。つまり、図7に示すように、空間形成デバイス16、第1ホルダ18、撮像デバイス14からなる第2組立体96を構築する。この第2組立体96は、ドーム部36の空洞40の幅方向中心部に撮像シャフト部28を配置し、撮像シャフト部28を空洞40の軸方向に延出させている。
次に、術者は、体外に露出しているヘラデバイス12の基端操作部26に対して、第2組立体96の空間形成デバイス16のドーム部36を被せる。そして、空間形成デバイス16をヘラ本体24の上面に沿うように進出(摺動)させ、切開部106から体内に挿入していく。ドーム部36は、前端のガイド面44がヘラ本体24の上面の形状に一致しており、また幅方向両側の側辺がヘラ本体24の両側縁24bを内側に収容することで、体内を比較的容易に進出する。この際、撮像デバイス14は、ヘラ本体24とドーム部36を撮像することで、両者の位置を術者に確認させる。なお、空間形成デバイス16を挿入する際には、第2組立体96を構築せずに(すなわち、第1ホルダ18及び撮像デバイス14を用いずに)、空間形成デバイス16のみをヘラデバイス12に沿って進出させてもよい。
空間形成デバイス16の進出時には、ドーム部36前側の先細り部分が脂肪を押し上げる。さらに、空間形成デバイス16のドーム部36は、ヘラ本体24に対して上方向に突出する半円状に形成されていることで、体内において、剥離部分(ヘラ本体24を間に挟んだ血管100と脂肪)を上下に一層分離して剥離を促す。
そして、第2組立体96を体内の所望の位置まで挿入すると、術者は、空間形成デバイス16の基端操作部38に差し込んでいた第1ホルダ18を取り外して、第1ホルダ18及び撮像デバイス14を空間形成デバイス16と相対的に後退させる。さらに、第1ホルダ18及び撮像デバイス14の離脱後は、空間形成デバイス16と相対的にヘラデバイス12を後退させて体外に抜去する。これにより、体内には空間形成デバイス16のみが残る。
次に、術者は、図8に示すように、第2ホルダ20及び切断デバイス22を用意して、第2ホルダ20の挿通孔46aに抜去した撮像シャフト部28を挿入及び保持する。そして、体外に露出している空間形成デバイス16の基端操作部38の基端開口38bから、撮像デバイス14及び第2ホルダ20を挿入していくことで、基端操作部38に第2ホルダ20を装着する。さらに、第2ホルダ20の挿入と同時(又は第2ホルダ20の装着後)に、空間形成デバイス16の基端操作部38から第2ホルダ20の配置空間48を通して切断デバイス22を挿入し、ドーム部36の空洞40にシャフト部50及び切断機構52を進入させる。すなわち、空間形成デバイス16、第2ホルダ20、切断デバイス22によって第3組立体97を構築する。
そして、術者は、切断デバイス22のシャフト部50を把持操作して、切断機構52をドーム部36の空洞40内を先端方向に向けて進出させ、剥離している血管100に繋がる分岐血管102に切断機構52を対向させる。切断デバイス22の操作時には、撮像デバイス14により空洞40内を撮像しており、血管100及び脂肪に対する切断機構52の相対位置を確認することができる。従って、術者は、分岐血管102に切断機構52を効率的に対向させることができる。
切断機構52を分岐血管102に対向させた後、図9Aに示すように、術者は、切断デバイス22を動作させる。すなわち、シャフト部50を下方向に(分岐血管102に向けて)に動作させることで、切断機構52(第1片部70及び第2片部80)の刺入部77、87を開口42から突出させる。これにより、刺入部77、87が血管100の周辺の脂肪に刺入及び挿入されていく。
切断デバイス22の操作時には、図10に示すように、空間形成デバイス16のドーム部36の内周面及び第2ホルダ20の配置空間48の内周面に沿わせて、シャフト部50を移動させることができる。これにより、切断機構52(第1片部70及び第2片部80)は、血管の周囲で円弧を描くように移動して、血管100の周辺の脂肪にスムーズに挿入される。また、切断機構52が、図10の左方向にずれて、第1片部70及び第2片部80が分岐血管102を確保できなくなることを抑制する。
第1片部70及び第2片部80の刺入時には、対向している分岐血管102が受容空間94に入り込み、返し部74、84の縁部74b、84bによって受容空間94の頂部に分岐血管102を案内する。さらに刺入部77、87の刺入動作(分岐血管102への移動)を続けると、第1片部70及び第2片部80の間の空間92を分岐血管102が通過する。すなわち、図9Bに示すように、分岐血管102は、返し部74、84に接触することで、返し部74、84の形状に合わせて全体的にS字状に変形する。このようにS字状に変形することで、分岐血管102は、第1片部70の延出端部76を後側に避けつつ、第2片部80の延出端部86を前側に避けるようにして空間92を通ることができ、受容空間94から山形空間90に移動する。
山形空間90に移動した分岐血管102は、第1片部70及び第2片部80の返し部74、84により山形空間90からの抜けが防止される、つまり切断機構52に捕捉される。切断デバイス22の組織への刺入は、シャフト部50が開口42から露出しない位置で停止される。
返し部74、84により分岐血管102を捕捉した後、術者は、切断デバイス22を元に戻すため、シャフト部50をドーム部36の内周面に沿って刺入方向と逆方向(上方向)に移動させる。この際、山形空間90に配置されている分岐血管102は、返し部74、84により抜けが防止されているので、第1片部70及び第2片部80と共に上方向に引き出される。
その結果、分岐血管102は、図11Aに示すように、切断機構52の戻り時に、例えば、第1片部70側の縁部74dに向かって山形空間90内を移動する。ここで、山形空間90が一対の保持空間78、88により構成されていることで、分岐血管102は、保持空間78の奥側又は保持空間88の奥側のいずれにも移動可能となっている。すなわち、分岐血管102の存在位置によっては、第1片部70側の奥部に分岐血管102を移動させると、分岐血管102を無理に引っ張る可能性があるが、第2片部80側にも分岐血管102が移動可能となっていることで、分岐血管102の負担を減らすことができる。
切断機構52が空洞40に概ね戻った段階では、細くされている分岐血管102が撮像デバイス14により撮像されて、図示しない表示装置に分岐血管102が映し出される。これにより術者は、分岐血管102を視認した状態で、電源を操作して切断部79、89への通電を行うことで分岐血管102を切断する。
切断機構52は、刺入箇所から空洞40に戻った段階において、分岐血管102を縁部74d(又は縁部84d)に接触しており、陽極端子79a(又は陽極端子89a)と陰極端子79b(又は陰極端子89b)の間に分岐血管102を挟んでいる。そのため、図11Bに示すように、陽極端子79a及び陰極端子79bを通電することで、分岐血管102を焼灼(熱凝固)して止血することができる。分岐血管102の焼灼後は、焼灼部分が脆くなると共に第1又は第2片部70、80が薄板となっていることで、分岐血管102が縁部74dにより簡単に切断される。
以上のように切断ステップにおいて、切断デバイス22は、分岐血管102を良好に切断することができる。なお、血管100の軸方向上に複数の分岐血管102が繋がっている場合には、上記の切断ステップを複数回繰り返す。また、剥離ステップ及び切断ステップは、摘出する血管100及び脂肪を周方向に切り抜くため、周方向の位相を変えて複数回(例えば、血管100の四方を切断するため、剥離ステップを4回)繰り返すことで、血管100を引き出し可能とする。
そして、術者は、剥離する血管100の周方向の組織を分離した後、摘出ステップにおいて、切開部106を介して脂肪付きの血管100を体外に取り出す。
以上のように、本実施形態に係る剥離システム10及び切断デバイス22は、第1片部70及び第2片部80が返し部74、84、刺入部77、87及び切断部79、89を有する。これにより、血管100とその周辺の組織の剥離時に、刺入部77、87を組織に刺入しつつ、分岐血管102を返し部74、84が形成する保持空間78、88に導いて、保持空間78、88により分岐血管102を保持することができる。そのため、第1片部70及び第2片部80を刺入箇所から後退させた際に、保持空間78、88に保持した分岐血管102を持ち上げて、切断機構52が分岐血管102を確実に捕捉していることを確認してから、切断部79、89により分岐血管102を切断することができる。従って、術者は、剥離中の血管100に繋がる分岐血管102の切断不良や組織の不要な切断を回避して、分岐血管102を良好に切断することが可能となり、血管100及びその周辺の組織を効率的に摘出させることができる。
この際、切断機構52が板状の第1片部70及び第2片部80によって構成されていることで、刺入部77、87を組織に容易に刺入させることができる。また、分岐血管102は、第1片部70及び第2片部80に接触することで適切に変形し、第1片部70及び第2片部80の移動に伴い保持空間78、88に円滑に導かれることになる。また、第1片部70及び第2片部80が、突出方向先端に向かって湾曲形成されていることで、刺入時に、血管100の周辺を回りこむように第1片部70及び第2片部80を変位させる。そのため、分岐血管102をより良好に捕捉及び切断することができる。さらに、第1片部70及び第2片部80の返し部74、84は、側面視で、突出方向に対し直角又は鋭角を形成する方向に延出していることで、保持空間78、88に分岐血管102をより確実に保持させ、保持空間78、88から抜けることを抑制することができる。
そして、切断デバイス22は、シャフト部50に沿って第1片部70及び第2片部80の返し部74、84が対向するように設けられることで、血管100の軸方向の長い範囲にわたって切断機構52を対向させることができる。よって、分岐血管102をより確実に捕捉することができ、手技を効率的に行うことが可能となる。
また、第1片部70及び第2片部80の返し部74、84が空間92を介して非接触に配置されていることで、切断デバイス22は、空間92を通して分岐血管102を保持空間78、88に導くことができる。この分岐血管102は、側面視で返し部74、84が重なっていることで脱落がより確実に抑制される。さらに、返し部74、84は、谷状に窪む受容空間94を構成していることで、受容空間94に分岐血管102を入り込ませて、分岐血管102を一層円滑に導くことができる。
またさらに、剥離システム10は、空間形成デバイス16を用いることで、ドーム部36の空洞40を通して切断デバイス22を体内に容易に挿入することができる。そして、空間形成デバイス16の開口42から切断デバイス22の切断機構52を組織に向けて刺入し、分岐血管102を保持することができ、分岐血管102の切断を確実に行うことが可能となる。また、切断デバイス22の第1片部70及び第2片部80が空間形成デバイス16の空洞40の内周面に略一致して湾曲していることで、術者が切断デバイス22を組織に刺入する際に、ドーム部36の内周面に沿って突出構造部60を精度よく案内することができる。そのため、第1片部70及び第2片部80を組織にスムーズに刺入することができ、また剥離する血管100付近で分岐血管102を捕捉することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、本実施形態において第1片部70及び第2片部80により切断機構52を構成したが、切断機構52は、種々の構成を取り得る。一例として、切断機構52は、1つの片部のみにより構成してもよく、3以上の片部により構成してもよい。第1片部70の返し部74と第2片部80の返し部84は、重なっていなくてもよく、シャフト部50の軸方向に空間を有するように配置されてもよい。