実施の形態1.
<電動機の構成>
本発明の実施の形態1の電動機100について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における電動機100の構成を示す断面図である。この電動機100は、回転子2に永久磁石25が埋め込まれた永久磁石埋込型電動機であり、例えばロータリ圧縮機500(図26参照)に用いられる。
電動機100は、インナーロータ型と呼ばれる電動機であり、固定子1と、固定子1の内側に回転可能に設けられた回転子2とを有する。固定子1と回転子2との間には、例えば0.3〜1.0mmのエアギャップが形成されている。なお、図1は、回転子2の回転軸(軸線C1)に直交する面における断面図である。
以下では、回転子2の回転軸である軸線C1の方向を、単に「軸方向」と称する。また。軸線C1を中心とする周方向を、単に「周方向」と称する。また、軸線C1を中心とする固定子1および回転子2の半径方向を、単に「径方向」と称する。他の図においても、矢印C1は軸方向を示し、矢印R1は周方向を示す。
固定子1は、固定子鉄心10と、固定子鉄心10に巻き付けられた巻線3とを有する。固定子鉄心10は、第1の鉄心10Aおよび第2の鉄心10B(図3)を有するが、これについては後述する。
固定子鉄心10は、軸線C1を中心とする環状のヨーク12と、ヨーク12から径方向内側(すなわち軸線C1に向かう方向)に延在する複数のティース11とを有している。ティース11の径方向内側の端部には、回転子2の外周面に対向するティース先端部13が形成されている。ティース先端部13は、幅(周方向の長さ)がティース11の他の部分よりも広く形成されている。すなわち、ティース先端部13は、周方向の両側に突出する突出部14を有している。
ここでは、9つのティース11が周方向に一定間隔で配置されているが、ティース11の数は2以上であればよい。周方向に隣り合うティース11の間には、巻線3を配置する空間であるスロットが形成される。
また、固定子鉄心10は、ティース11毎に複数(ここでは9つ)の分割コア5が周方向に連結された構成を有している。分割コア5は、ヨーク12の外周側の端部に設けられた連結部15で互いに連結されている。連結部15は、例えば、塑性変形可能な薄肉部で形成されている。
回転磁界を発生させる巻線3は、例えばマグネットワイヤを、絶縁部であるインシュレータ30(図2)を介してティース11に巻き付けたものである。巻線3の巻き数および直径(線径)は、要求される特性(回転数、トルク等)、印加電圧およびスロットの断面積に応じて決定される。巻線3は、集中巻きで巻かれ、Y結線により結線されている。
回転子2は、円筒状の回転子鉄心21と、回転子鉄心21に取り付けられた永久磁石25と、回転子鉄心21の中央部に配置されたシャフト60とを有する。シャフト60は、例えば、ロータリ圧縮機500(図26)のシャフトである。回転子鉄心21は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層し、その軸方向の両端部を固定部材41,42(図3)で締結したものである。回転子鉄心21を構成する電磁鋼板の厚さtrは、例えば0.1〜0.7mmである。
回転子鉄心21の外周面に沿って、永久磁石25が挿入される複数(ここでは6つ)の磁石挿入孔22が形成されている。磁石挿入孔22は、回転子鉄心21を軸方向に貫通する貫通孔である。磁石挿入孔22の数(すなわち磁極数)は6に限らず、2以上であればよい。隣り合う磁石挿入孔22の間は、極間となる。
永久磁石25は、軸方向に長い平板状の部材であり、回転子鉄心21の周方向に幅を有し、径方向に厚さを有している。永久磁石25の厚さは、例えば2mmである。永久磁石25は、例えば、ネオジウム(Nd)、鉄(Fe)およびボロン(B)を主成分とする希土類磁石で構成されている。永久磁石25は、厚さ方向に着磁されている。
ここでは、1つの磁石挿入孔22に1つの永久磁石25を配置しているが、1つの磁石挿入孔22に複数の永久磁石25を周方向に並べて配置してもよい。この場合、同じ磁石挿入孔22内の複数の永久磁石25は、互いに同一の極が径方向外側を向くように着磁される。
磁石挿入孔22の周方向両端部には、フラックスバリア(漏れ磁束抑制穴)23が形成されている。フラックスバリア23は、隣り合う永久磁石25の間の漏れ磁束を抑制するものである。フラックスバリア23と回転子鉄心21の外周との間の鉄心部分は、隣り合う永久磁石25の間の磁束の短絡を抑制するため、薄肉部となっている。薄肉部の厚さは、回転子鉄心21を構成する電磁鋼板の厚さと同じであることが望ましい。
図2は、電動機100の構成を示す、軸線C1を含む面における断面図である。固定子鉄心10は、電磁鋼板の積層体で構成される第1の鉄心10Aと、アモルファス金属またはナノ結晶金属の薄帯の積層体で構成される第2の鉄心10Bとを有している。第1の鉄心10Aおよび第2の鉄心10Bは、軸方向(軸線C1の方向)に交互に配置されている。特に、固定子鉄心10の少なくとも軸方向の両端部に、第1の鉄心10Aが配置されている。
ここでは、固定子鉄心10の軸方向の両端部と中央部に、第1の鉄心10Aがそれぞれ配置されている。そして、軸方向に隣り合う第1の鉄心10Aに挟み込まれるように、第2の鉄心10Bが配置されている。
固定子鉄心10の軸方向一端部(図2における上端部)に配置される第1の鉄心10Aの厚さ(軸方向の長さ)をL1とし、これに隣接する第2の鉄心10Bの厚さをL2とする。固定子鉄心10の軸方向中央に配置される第1の鉄心10Aの厚さをL3とし、これに隣接する第2の鉄心10Bの厚さをL4とし、固定子鉄心10の軸方向他端部(図3における下端部)に配置される第1の鉄心10Aの厚さをL5とする。
第1の鉄心10Aの厚さの合計(=L1+L3+L5)は、第2の鉄心10Bの厚さ(=L2+L4)の合計よりも小さい。回転子2の永久磁石25からの磁束が第2の鉄心10Bに流れやすくするためである。なお、第1の鉄心10Aの厚さと第2の鉄心10Bの厚さの合計L0は、ここでは回転子鉄心21の軸方向の長さL6と同じであるが、必ずしも同じである必要は無い(後述する図12参照)。
固定子鉄心10のうち、第1の鉄心10Aは、第2の鉄心10Bよりも径方向外側に突出している。第1の鉄心10Aは、電動機100の円筒状のフレーム6の内側に、焼き嵌め、圧入または溶接等によって組み込まれている。このフレーム6は、例えば、ロータリ圧縮機500(図26)の密閉容器の一部である。
図3は、第1の鉄心10Aを示す平面図である。第1の鉄心10Aは、厚さ(t1)が0.35〜1.00mmの電磁鋼板を軸方向に積層した積層体で構成される。電磁鋼板としては、例えば無方向性電磁鋼板が用いられるが、これに限定されるものではない。
第1の鉄心10Aは、周方向に延在するヨーク12A(第1のヨーク)と、ヨーク12Aから径方向内側に延在する複数のティース11A(第1のティース)とを有している。ヨーク12Aは、フレーム6(図2)の内周面に当接する外周面16Aを有している。ティース11Aの数は、ここでは9つである。
第1の鉄心10Aのうち、分割コア5に相当する部分(それぞれ1つのティース11Aを含む部分)を、第1の分割鉄心部5Aと称する。すなわち、第1の鉄心10Aは、周方向に複数(ここでは9つ)の第1の分割鉄心部5Aに分割されている。
ヨーク12Aの外周側の端部には、例えば薄肉部で構成された連結部15が形成されている。連結部15は、それぞれの第1の分割鉄心部5Aの周方向の一端部に配置されている。連結部15は、周方向に隣り合う第1の分割鉄心部5Aを互いに連結する部分である。
この構成により、第1の鉄心10Aを構成する複数の第1の分割鉄心部5Aは、連結部15を中心として回動可能に連結される。すなわち、第1の鉄心10Aを帯状に展開し(図8参照)、また環状に組み合わせることができる。連結部15は、ここでは、塑性変形可能な薄肉部であるが、薄肉部に限らず、例えば円形のカシメ部であってもよい。
図4は、第1の分割鉄心部5A(第1の鉄心10A)を示す平面図である。第1の分割鉄心部5Aでは、ヨーク12Aの周方向の中央部がティース11Aと連続している。ティース11Aの径方向内側には、回転子2の外周面に対向するティース先端部13Aが形成されている。ティース先端部13Aは、ティース11Aの他の部分よりも幅が広く、周方向の両側に突出部14A(第1の突出部)を有している。
また、第1の分割鉄心部5Aでは、ヨーク12Aが、周方向の一端をなす端面17Aと、周方向の他端をなす端面18Aとを有している。なお、上記の連結部15は、外周面16Aと端面18Aとの間に形成されている。端面17A,18Aは、分割面に相当する。
第1の鉄心10Aを図3に示したように環状に組み合わせると、第1の分割鉄心部5Aのヨーク12Aの端面17A,18Aは、それぞれ、周方向に隣接する第1の分割鉄心部5Aのヨーク12Aの端面18A,17Aに当接する。
端面17A,18Aは、ヨーク12Aの内周面から外周面16Aに向けて径方向外側に延在するが、外周面16Aには到達しない。端面18Aの終端(すなわち径方向外側の端部)には、穴105が形成されている。ヨーク12Aの穴105と外周面16Aとの間の薄肉部は塑性変形可能な部分であり、この薄肉部が連結部15を構成する。
ヨーク12Aの外周面16Aには、凹部(切り欠き部)19が形成されている。凹部19は、後述する巻線工程(図9)において、固定子1を治具でチャックする部分である。
ティース11Aの径方向の中央部には、カシメ部(ティースカシメ部)101が形成されている。ヨーク12Aの凹部19の周方向の両側には、カシメ部(ヨークカシメ部)102,103が形成されている。
ティース11のカシメ部101およびヨーク12のカシメ部102,103は、軸方向に隣り合う電磁鋼板を互いに固定するものである。ティース11のカシメ部101およびヨーク12のカシメ部102,103で電磁鋼板を固定することにより、第1の鉄心10A(ティース11Aおよびヨーク12A)の高い寸法精度および高い剛性が得られる。
なお、カシメ部101は、ティース11Aの中央部に限らず、例えば、ティース先端部13の周方向両端部、あるいはティース先端部13の周方向中央部に設けてもよい。
図5は、第2の鉄心10Bの構成を示す平面図である。第2の鉄心10Bは、アモルファス金属またはナノ結晶金属で構成されている。また、第2の鉄心10Bは、厚さが0.02mm〜0.05mmの薄帯を軸方向に積層した積層体で構成されている。第2の鉄心10Bは、接着剤または樹脂によって第1の鉄心10A(図3)に固定される。
アモルファス金属またはナノ結晶金属の薄帯を積層する場合には、電磁鋼板のようなカシメ部による固定は難しいため、積層する薄帯の間に接着剤を供給することで、複数の薄帯を互いに固定する。この場合、積層される薄帯の間に接着剤が介在するため、渦電流損を抑制する効果も得られる。
なお、第2の鉄心10Bを、アモルファス金属の薄帯の積層体によって形成する場合、成形時に生じた歪の除去と磁気特性の向上のため、第2の鉄心10Bを焼鈍してもよい。
また、第2の鉄心10Bは、アモルファス金属またはナノ結晶金属の薄帯の積層体に限らず、アモルファス金属またはナノ結晶金属の粉体の圧縮成形体(図12参照)で構成してもよい。
第2の鉄心10Bは、周方向に延在するヨーク12B(第2のヨーク)と、ヨーク12Bから径方向内側に延在する複数のティース11B(第2のティース)とを有している。ヨーク12Bは、フレーム6(図3)の内周面に対向する外周面16Bを有している。ティース11Bの数は、ここでは9つである。
第2の鉄心10Bのうち、分割コア5に対応する部分(それぞれ1つのティース11Bを含む部分)を、第2の分割鉄心部5Bと称する。すなわち、第2の鉄心10Bは、周方向に複数(ここでは9つ)の第2の分割鉄心部5Bに分割されている。周方向に隣り合う第2の分割鉄心部5Bは、0.1mm以下の空隙Gによって互いに隔てられている。
図6は、第2の分割鉄心部5B(第2の鉄心10B)を示す平面図である。第2の分割鉄心部5Bでは、ヨーク12Bの周方向の中央部がティース11Bと連続している。ティース11Bの径方向内側には、回転子2の外周面に対向するティース先端部13Bが形成されている。ティース先端部13Bは、ティース11Bの他の部分よりも幅が広く、周方向の両側に突出部14B(第2の突出部)を有している。
ヨーク12Bの外周面16Bは、ヨーク12Aの外周面16A(図4)よりも径方向内側に位置している。また、第2の分割鉄心部5Bにおけるヨーク12Bの周方向の端面17B,18Bは、第1の分割鉄心部5Aにおけるヨーク12Aの端面17A,18A(図4)よりも、それぞれ周方向内側に位置している。なお、第2の鉄心10Bのティース11Bおよびヨーク12Bには、第1の鉄心10Aのカシメ部101,102,103(図4(A))は設けられていない。
図7(A)は、分割コア5(第1の分割鉄心部5Aおよび第2の分割鉄心部5B)、インシュレータ30および巻線3を示す図である。図7(A)において、第1の分割鉄心部5Aのティース11Aの周方向の幅をT1とし、ヨーク12Aの径方向の幅をY1とする。また、第2の分割鉄心部5Bのティース11Bの周方向の幅をT2とし、ヨーク12Bの径方向の幅をY2とする。
この実施の形態の固定子鉄心10は、ティース11Aの幅T1がティース11Bの幅T2よりも小さく(T1<T2)、または、ヨーク12Aの幅Y1がヨーク12Bの幅Y2よりも小さく(Y1<Y2)、若しくはその両方が成立するように構成されている。すなわち、第1の鉄心10Aは、第2の鉄心10Bよりも、磁路が狭くなるように構成されている。
なお、図7(A)に示した例では、ティース11Aの幅T1がティース11Bの幅T2よりも小さく、なお且つ、ヨーク12Aの幅Y1がヨーク12Bの幅Y2よりも小さい(すなわち、T1<T2、且つY1<Y2)。
加えて、ティース11Aの周方向の突出部14Aの径方向の幅をP1とし、ティース11Bの周方向の突出部14Bの径方向の幅をP2とする。ここでは、ティース11Aの突出部14Aの径方向の幅P1が、ティース11Bの突出部14Bの径方向の幅P2よりも小さい(P1<P2)。
また、ヨーク12Bの外周面16Bは、ヨーク12Aの外周面16Aに対して径方向内側に位置している。言い換えると、軸線C1からヨーク12Aの外周面16Aまでの距離r1(図3)は、軸線C1からヨーク12Bの外周面16B(図5)までの距離r2よりも大きい(r1>r2)。
ティース先端部13Aの径方向内側の端面(回転子2に対向する端面)は、ティース先端部13Bの径方向値側の端面と同一面上に位置している。但し、このような構成に限定されるものではなく、ティース先端部13Aの端面の方が回転子2から離間していてもよい(図14参照)。
ティース11(ティース11Aおよびティース11B)には、インシュレータ30を介して、巻線3が巻き付けられている。インシュレータ30は、ティース11の周方向の両側面111(より具体的にはティース11Bの側面111B)に形成された周壁部31と、ヨーク12の内周面121(より具体的にはヨーク12Bの内周面121B)に形成された外側壁部32と、突出部14の径方向外側の面に形成された内側壁部33とを有している。
インシュレータ30の周壁部31と外側壁部32と内側壁部33とで囲まれた領域に、巻線3が配置される。また、インシュレータ30の周壁部31は、ティース11の軸方向における両端面にも形成されている(図2参照)。各ティース11には、インシュレータ30を介して、例えば直径1.0mmのマグネットワイヤが80ターン巻き付けられ、巻線3を構成する。
上述したように、ティース11Aの幅T1がティース11Bの幅T2よりも小さく、ヨーク12Aの幅Y1がヨーク12Bの幅Y2よりも小さいため、ティース11Aの側面111Aおよびヨーク12Aの内周面121Aとインシュレータ30との間には、空隙Sが形成される。
但し、図7(B)に示すように、ティース11Aの側面111Aおよびヨーク12Aの内周面121Aとインシュレータ30との間に、樹脂35を充填してもよい。このようにすれば、より強固にインシュレータ30を保持することができる。
上記の通り、ヨーク12Bの外周面16Bは、ヨーク12Aの外周面16Aに対して径方向内側に位置している。そのため、図2に示すように、ヨーク12Aの外周面16Aはフレーム6に当接するが、ヨーク12Bの外周面16Bはフレーム6から離間している。従って、第1の鉄心10Aにはフレーム6からの外力が作用するが、第2の鉄心10Bにはフレーム6からの外力は作用しない。
また、第2の分割鉄心部5Bにおけるヨーク12Bの端面17B,18B(図4)は、第1の分割鉄心部5Aにおけるヨーク12Aの端面17A,18A(図6)よりもそれぞれ周方向内側に位置している。そのため、周方向に隣り合う第2の分割鉄心部5Bの間には、空隙G(図5)が形成される。従って、第2の分割鉄心部5Bには、隣接する第2の分割鉄心部5Bからの外力が作用しない。
なお、第1の鉄心10Aは、ヨーク12Aの外周側の連結部15で連結された複数の第1の分割鉄心部5Aに分割されている。これに対し、第2の鉄心10Bは、空隙Gを介して互いに離間した複数の第2の分割鉄心部5Bに分割されている。
<電動機の製造工程>
次に、電動機100の製造工程について説明する。まず、電磁鋼板から、ティース11Aとヨーク12Aとを有する形状の複数の鋼板部分を打ち抜く。ここでは、図8に示したように帯状につながった鋼板部分が打ち抜かれる。次に、打ち抜かれた鋼板部分を軸方向に複数枚積層し、カシメ部101,102,103で互いに固定する。
また、アモルファス金属またはナノ結晶金属の薄帯から、ティース11Bとヨーク12Bとを有する形状の複数の薄帯部分を打ち抜く。次に、打ち抜かれた薄帯部分を軸方向に複数枚積層し、接着により互いに固定することにより、図6に示した第2の分割鉄心部5Bを形成する。そして、複数の第2の分割鉄心部5Bを、第1の鉄心10A(図8)に固定する。これにより、分割コア5を帯状に配列した固定子鉄心10が形成される。
次に、固定子鉄心10にインシュレータ30(図7)を形成する。インシュレータ30は、例えば、固定子鉄心10を金型内にセットして樹脂を充填することにより固定子鉄心10と一体に成形してもよく、あるいは、予め成型した樹脂成型体を固定子鉄心10に嵌め込んで形成してもよい。
固定子鉄心10にインシュレータ30を形成したのち、巻線を行う。図9(A)および(B)は、巻線工程を説明するための模式図である。まず、図9(B)に示すように、複数の分割コア5を帯状に配列した固定子鉄心10のうち、巻線を行う分割コア5を巻線位置に治具で固定し、その両側の分割コア5を、隣り合うティース11の間隔が広がるように、連結部15を中心として回動させる。これにより、巻線を行うティース11の周囲に広い空間を形成する。
この状態で、巻線位置に固定した分割コア5のティース11の周囲に、巻線装置の巻線ノズル7を用いて巻線3を巻き付ける。巻線ノズル7は、図9(B)に矢印R2で示すようにティース11の周囲を回転し、ティース11の周囲に巻線3を巻き付ける。
各ティース11に巻線3を巻き付けたのち、図9(A)に示すように、固定子鉄心10を環状に組み立てる。このとき、固定子鉄心10の両端の分割コア5の突き合わせ部(図1に符号Wで示す)を互いに突き合わせ、溶接する。
これにより、固定子鉄心10とインシュレータ30と巻線3とを備えた固定子1が完成する。その後、固定子1をフレーム6の内側に、焼き嵌め、圧入、または溶接によって組み込む。上述したように、固定子鉄心10のうち、第1の鉄心10Aはフレーム6に当接するが、第2の鉄心10Bはフレーム6に当接しない。
また、電磁鋼板から、磁石挿入孔22、フラックスバリア23および中心孔26を有する回転子鉄心21の形状を有する鋼板部分を打ち抜く。次に、打ち抜かれた鋼板部分を軸方向に複数枚積層し、固定部材41,42(図2)で軸方向両側から固定することにより、図2に示した回転子鉄心21を形成する。
さらに、回転子鉄心21の磁石挿入孔22に永久磁石25を挿入し、中心孔26にシャフト60を挿入することにより、回転子2を形成する。その後、回転子2を、フレーム6内に取り付けられた固定子1の内側に挿入する。これにより、図1に示した電動機100が完成する。
<固定子の作用>
図10は、この実施の形態の固定子1の作用を説明するための断面図である。上記の通り、固定子鉄心10のうち、電磁鋼板で構成された第1の鉄心10Aは、焼き嵌め、圧入または溶接等によって、フレーム6の内側に固定されている。一方、アモルファス金属またはナノ結晶金属で構成された第2の鉄心10Bは、フレーム6から離間している。
固定子鉄心10(第1の鉄心10Aおよび第2の鉄心10B)は、回転子2の外周面に対向している。回転子2の永久磁石25からの磁束は、ティース先端部13(図1)からティース11に流入し、ティース11内を径方向外側に向かって流れる。ティース11内を流れた磁束は、ヨーク12に流入し、さらにヨーク12内を周方向に流れる。このようにして、ティース11およびヨーク12を通る磁束の通路(磁路)が形成され、磁束と巻線3を流れる電流との作用により、回転子2を回転させるトルクが発生する。
ティース11を構成するティース11A,11Bのうち、ティース11Aの幅T1はティース11Bの幅T2よりも小さい(T1<T2)。また、ティース11Aの突出部14Aの幅P1は、ティース11Bの突出部14Bの幅P2よりも小さい(P1<P2)。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束は、ティース11Aよりもティース11Bに流入しやすい。
第2の鉄心10Bはアモルファス金属またはナノ結晶金属で構成されているが、アモルファス金属は原子が非晶質で方向性を持たず、ナノ結晶金属は結晶粒が10μmオーダーまで微細化されているため、いずれも磁気特性に優れ、磁気抵抗が小さい。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束がティース11Aよりもティース11Bに多く流れることで、鉄損が減少する。
また、ティース11を流れた磁束は、その外周側のヨーク12に流入する。ヨーク12を構成するヨーク12A,12Bのうち、ヨーク12Aの幅Y1は、ヨーク12Bの幅Y2よりも小さいため(Y1<Y2)、磁束はヨーク12Aよりもヨーク12Bに多く流れ、これにより鉄損が減少する。
加えて、第1の鉄心10Aの厚さの合計(図3に示したL1+L3+L5)は、第2の鉄心10Bの厚さの合計(L2+L4)よりも小さいため、ティース11Aが回転子2に対向する面積よりも、ティース11Bが回転子2に対向する面積の方が大きい。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束は、第1の鉄心10Aよりも第2の鉄心10Bに流れやすく、鉄損をさらに低減することができる。
さらに、第1の鉄心10Aを構成する電磁鋼板は、アモルファス金属ほど顕著ではないものの、圧縮応力を受けると磁気抵抗が増加する性質を有する。そのため、第1の鉄心10Aにフレーム6からの圧縮応力が加わると、回転子2の永久磁石25からの磁束が、第1の鉄心10Aには流れにくくなる。その結果、アモルファス金属またはナノ結晶金属で構成された(従って磁気抵抗が小さい)第2の鉄心10Bに流れる磁束が増加し、鉄損をさらに低減することができる。
第2の鉄心10Bを構成するアモルファス金属またはナノ結晶金属は、圧縮応力を受けた際の磁気抵抗の低下が、電磁鋼板よりも顕著である。しかしながら、第2の鉄心10Bは第1の鉄心10Aよりも外径が小さく、フレーム6に当接しないため、第2の鉄心10Bに加わる圧縮応力を抑制することができる。そのため、第2の鉄心10Bの磁気抵抗の増加を抑制することができる。
また、第2の鉄心10Bをアモルファス金属粉体の圧縮成形体で構成した場合には、第2の鉄心10Bの機械的強度が低下する可能性があるが、この実施の形態1では、第2の鉄心10Bがフレーム6に当接しないため、第2の鉄心10Bの損傷を抑制することができる。
さらに、電磁鋼板で構成された第1の鉄心10A(ティース11Aおよびヨーク12A)によって第2の鉄心10B(ティース11Bおよびヨーク12B)を保持することができるため、固定子1の剛性を高めることができる。
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、固定子鉄心10が、ティース11Aおよびヨーク12Aを有する第1の鉄心10Aと、ティース11Bおよびヨーク12Bを有する第2の鉄心10Bとを備える。第1の鉄心10Aは電磁鋼板の積層体で構成され、第2の鉄心10Bがアモルファス金属またはナノ結晶金属の薄帯の積層体、若しくはアモルファス金属の粉体またはナノ結晶金属の粉体の圧縮成形体で構成される。また、ティース11Aの幅T1、ティース11Bの幅T2、ヨーク12Aの幅Y1およびヨーク12Bの幅Y2の間に、T1<T2、Y1<Y2、またはその両方が成立する。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束が第2の鉄心10Bに流れやすくなり、鉄損を低減することができる。
また、第1の鉄心10A(ティース11Aおよびヨーク12A)によって第2の鉄心10B(ティース11Bおよびヨーク12B)を保持することができるため、固定子鉄心10の剛性を高めることができ、振動および騒音を抑制することができる。
さらに、ティース11Aの突出部14Aの幅P1がティース11Bの突出部14Bの幅P2よりも小さい(P1<P2)ため、回転子2の永久磁石25からの磁束は、ティース11Aよりもティース11Bに流入しやすい。そのため、鉄損を効果的に低減することができる。
また、アモルファス金属およびナノ結晶金属は、圧縮応力を受けると磁気抵抗が増加する性質を有するが、第2の鉄心10Bの外径が第1の鉄心10Aの外径よりも小さいため、固定子鉄心10をフレーム6に焼嵌め等によって組み込むと、フレーム6からの外力を第1の鉄心10Aで受けることができる。そのため、第2の鉄心10Bの磁気抵抗の増加を抑制することができ、鉄損を効果的に低減することができる。
また、第1の鉄心10Aの軸方向の長さ(厚さの合計)が、第2の鉄心10Bの軸方向の長さよりも小さいため、ティース11Aが回転子2に対向する面積よりも、ティース11Bが回転子2に対向する面積の方が大きくなる。その結果、回転子2の永久磁石25からの磁束が、固定子鉄心10のうち第2の鉄心10Bに流れやすくなり、鉄損を効果的に低減することができる。
また、第1の鉄心10Aが、固定子鉄心10の軸方向の両端部および中央部に配置されているため、固定子鉄心10の十分な強度を得ることができる。
また、第1の鉄心10Aは、隣り合うティース11Aの間に形成された分割面(17A,18A)で複数に分割され、ヨーク12Aの外周面側の連結部15で連結されている。そのため、巻線工程において、連結部15を中心として分割コア5を回動させ、ティース11の周囲に広い空間を形成することができ、巻線工程が簡単になる。また、スロットの断面積に対して高密度の巻線が可能になり、高効率の電動機100が得られる。
また、第2の鉄心10Bが、隣り合うティース11Bの間に形成された空隙Gを隔てて周方向に分割されているため、隣り合う第2の分割鉄心部5Bの間に外力が作用しない。そのため、鉄損の増加を抑制することができる。
また、第2の鉄心10Bが、複数の薄帯を積層した積層体、または粉体の圧縮成形体で構成されているため、第2の鉄心10Bの製造が容易になる。また、複数の薄帯の間に接着剤を介在させることで、第2の鉄心10Bをそれぞれ強固に一体化させ、また、渦電流損を低減することができる。また、アモルファス金属の薄帯の積層体を焼鈍することで、成形時に生じた歪を除去し、磁気特性を向上することができる。
第1の変形例.
図11は、実施の形態1の第1の変形例の電動機の構成を示す断面図である。実施の形態1の固定子鉄心10は、軸方向の両端部と中央部に第1の鉄心10Aを有していた(図2)。これに対し、この第1の変形例の固定子鉄心10は、軸方向の両端部のみに第1の鉄心10Aを有している。第2の鉄心10Bは、2つの第1の鉄心10Aの間に配置されている。
固定子鉄心10の第1の鉄心10Aの厚さをそれぞれL11,L13とし、回転子鉄心21の厚さをL12とすると、第1の鉄心10Aの厚さの合計(L11+L13)は、第2の鉄心10Bの厚さ(L12)よりも小さい。すなわち、回転子2の永久磁石25からの磁束は第2の鉄心10Bに流れやすい。
この第1の変形例では、固定子鉄心10の軸方向の両端部を除く部分が第2の鉄心10Bで構成されているため、回転子2の永久磁石25からの磁束が第2の鉄心10Bに流れやすい。そのため、鉄損をより効果的に低減することができる。また、固定子鉄心10の軸方向の両端部に第1の鉄心10Aが配置されているため、固定子鉄心10の十分な強度を得ることができる。
第2の変形例.
図12は、実施の形態1の第2の変形例の電動機の構成を示す断面図である。実施の形態1では、固定子鉄心10の軸方向の長さが、回転子鉄心21の軸方向の長さと同じであった(図3)。これに対し、この第2の変形例では、固定子鉄心10の軸方向の長さが、回転子鉄心21の軸方向の長さよりも長い。
すなわち、この第2の変形例では、固定子鉄心10の軸方向両端部の第1の鉄心10Aは、回転子鉄心21の軸方向両端部よりも軸方向外側に配置されている。そのため、回転子鉄心21と第2の鉄心10Bとが対向する面積は、実施の形態1よりも大きい。なお、第1の鉄心10Aの厚さの合計が第2の鉄心10Bの厚さの合計よりも小さい点は、実施の形態1と同様である。
なお、図12では、第2の鉄心10Bを、アモルファス金属またはナノ結晶金属の粉体を圧縮成形した成形体(圧縮成形体)で構成した例を示しているが、アモルファス金属またはナノ結晶金属の薄帯の積層体で構成してもよい。
この第2の変形例では、固定子鉄心10の軸方向両端部の第1の鉄心10Aが、回転子鉄心21の軸方向両端部よりも軸方向外側に配置されているため、回転子鉄心21と第2の鉄心10Bとの対向する面積を大きくすることができる。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束が第2の鉄心10Bに流れやすくなり、鉄損をより効果的に低減することができる。
図12では、固定子鉄心10の軸方向の両端部と中央部に第1の鉄心10Aを設けているが、第1の変形例(図11)と同様に、固定子鉄心10の軸方向の両端部のみに第1の鉄心10Aを設けてもよい。
実施の形態2.
図13は、実施の形態2の電動機の第2の鉄心10Cを示す平面図である。上述した実施の形態1では、第2の鉄心10Bがアモルファス金属またはナノ結晶金属で形成されていた。これに対し、この実施の形態2では、第2の鉄心10Cが電磁鋼板の積層体で構成されている。
第2の鉄心10Cを構成する電磁鋼板は、例えば、高純度な鉄(Fe)に3%〜6.5%のケイ素(Si)を添加した無方向性電磁鋼板である。第2の鉄心10Cを構成する電磁鋼板(第2の電磁鋼板とも称する)の厚さt2は、第1の鉄心10Aを構成する電磁鋼板(第1の電磁鋼板とも称する)の厚さt1以下である。具体的には、第2の鉄心10Cを構成する電磁鋼板の厚さt2は、0.1mm≦t2<0.35mmの範囲にある。
第2の鉄心10Cは、周方向に延在するヨーク12C(第2のヨーク)と、ヨーク12Cから径方向内側に延在する複数のティース11C(第2のティース)とを有している。ヨーク12Cは、フレーム6(図2)の内周面に当接する外周面16Cを有している。ティース11Cの数は、ここでは9つである。
第2の鉄心10Cのうち、分割コア5に対応する部分(それぞれ1つのティース11Cを含む部分)を、第2の分割鉄心部5Cと称する。すなわち、第2の鉄心10Cは、周方向に複数(ここでは9つ)の第2の分割鉄心部5Cに分割されている。第2の分割鉄心部5Cにおけるヨーク12Cの周方向の端面17C,18Cは、第2の鉄心10Cの分割面をなしている。
第2の鉄心10Cのそれぞれの第2の分割鉄心部5Cは、ヨーク12Cの外周部に設けられた連結部15Cによって互いに連結されている。連結部15Cは、実施の形態1の連結部15(図3)と同様、薄肉部で形成されている。第2の鉄心10Cは電磁鋼板で形成されているため、上記のように複数の第2の分割鉄心部5Cが連結部15Cで連結された構成を実現することができる。
第2の鉄心10Cのティース11Cおよびヨーク12Cには、第1の鉄心10Aと同様のカシメ部101,102,103が形成されている。カシメ部101,102,103は、軸方向に隣り合う電磁鋼板を互いに固定するものである。カシメ部101,102,103で電磁鋼板を固定することにより、第2の鉄心10Cの高い寸法精度および高い剛性が得られる。この実施の形態2では、第1の鉄心10Aと第2の鉄心10Cとをカシメ部101,102,103で固定できるため、第1の鉄心10Aと第2の鉄心10Cとの接着は不要である。
ティース11Bの周方向の幅T2は、ティース11Aの周方向の幅T1(図4)よりも大きい(T1<T2)。また、ヨーク12Bの径方向の幅Y2は、ヨーク12Aの径方向の幅Y1(図4)よりも大きい(Y1<Y2)。また、ティース11Bの突出部14Bの径方向の幅P2は、ティース11Aの突出部14Aの径方向の幅P1よりも大きい(P1<P2)。すなわち、第2の鉄心10Cは、第1の鉄心10Aよりも磁路が広くなるように構成されている。
なお、実施の形態2の電動機の構成は、第2の鉄心10Cを除き、実施の形態1の電動機と同様である。
第2の鉄心10Cを構成する電磁鋼板の厚さt2は、第1の鉄心10Aを構成する電磁鋼板の厚さt1以下であり、また、第2の鉄心10Cは第1の鉄心10Aよりも磁路が広いため、回転子2の永久磁石25からの磁束は、第1の鉄心10Aよりも第2の鉄心10Cに流れやすい。その結果、鉄損を低減することができる。
このように、本発明の実施の形態2によれば、固定子鉄心10が、ティース11Aおよびヨーク12Aを有する第1の鉄心10Aと、ティース11Bおよびヨーク12Bを有する第2の鉄心10Cとを備える。第1の鉄心10Aは、厚さt1の第1の電磁鋼板の積層体で構成され、第2の鉄心10Cは、厚さt2(<t1)の第2の電磁鋼板の積層体で構成される。また、ティース11Aの幅T1、ティース11Bの幅T2、ヨーク12Aの幅Y1およびヨーク12Bの幅Y2の間に、T1<T2、Y1<Y2、またはその両方が成立する。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束が第2の鉄心10Bに流れやすくなり、鉄損を低減することができる。
また、実施の形態2では、第2の鉄心10Cが電磁鋼板で構成されているため、アモルファス金属またはナノ結晶金属で構成した場合よりも高強度の固定子鉄心10を得ることができる。また、電磁鋼板は加工(例えばプレス加工)が容易であるため、生産性が向上し、製造コストを低減することができる。
なお、実施の形態2に、第1の変形例(図11)または第2の変形例(図12)で説明した第1の鉄心10Aの軸方向における配置を適用してもよい。
実施の形態3.
図14は、本発明の実施の形態3における電動機を示す、軸線C1に直交する面における断面図である。図15は、実施の形態3における電動機を示す、軸線C1を含む断面における断面図である。
上述した実施の形態1では、第1の鉄心10Aのティース先端部13Aの内周端面(径方向内側の端面)と第2の鉄心10Bのティース先端部13Bの内周端面とが、同一面状に位置していた(図7(A))。これに対し、この実施の形態3では、図14に示すように、ティース先端部13Aの内周端面が、ティース先端部13Bの内周端面よりも径方向外側に位置している。
すなわち、図15に示すように、回転子2の外周面200とティース先端部13Aの内周端面との隙間は、回転子2の外周面200とティース先端部13Bの内周端面との隙間よりも大きい。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束は、第1の鉄心10Aに流れにくく、第2の鉄心10Bに流れやすくなる。その結果、アモルファス金属またはナノ結晶金属で構成された第2の鉄心10Bに磁束が多く流れ、これにより鉄損を低減することができる。
実施の形態3の電動機の構成は、ティース先端部13A,13Bの構成を除き、実施の形態1の電動機と同様である。
この実施の形態3では、ティース先端部13Aの内周端面が、ティース先端部13Bの内周端面よりも径方向外側に位置しているため、回転子2の永久磁石25からの磁束は第1の鉄心10Aよりも第2の鉄心10Bに流れやすくなる。そのため、効果的に鉄損を低減することができる。
なお、実施の形態3に、第1の変形例(図11)または第2の変形例(図12)で説明した第1の鉄心10Aの軸方向における配置を適用してもよい。また、第2の鉄心10Bは、アモルファス金属またはナノ結晶金属(薄帯の積層体または粉体の圧縮成形体)で構成されているが、実施の形態2のように、第1の鉄心10Aの電磁鋼板よりも薄い電磁鋼板の積層体で構成してもよい。
実施の形態4.
図16(A)は、本発明の実施の形態4における電動機を示す、軸線C1を含む面における断面図である。実施の形態4では、回転子鉄心21が、軸方向に、第1の鉄心21Aと第2の鉄心21Bとを有している。第1の鉄心21Aは、固定子鉄心10の第1の鉄心10Aに対向し、第2の鉄心21Bは、固定子鉄心10の第2の鉄心10Bに対向する。
第1の鉄心21Aの外周面201は、第2の鉄心21Bの外周面202よりも径方向内側(固定子1から離れる側)に退避した位置に形成されている。すなわち、第1の鉄心21Aの外周面201と第1の鉄心10Aの内周面(すなわち、図4に示したティース先端部13Aの内周端面)との隙間は、第2の鉄心21Bの外周面202と第2の鉄心10Bの内周面(すなわち、図6に示したティース先端部13Bの内周端面)との隙間よりも広い。
図16(B)は、回転子2の第2の鉄心21Bにおける断面図である。図16(C)は、回転子2の第1の鉄心21Aにおける断面図である。図16(B)に示すように、第2の鉄心21Bの外周面202は、軸線C1を中心とする円周状に形成されている。これに対し、図16(C)に示すように、第1の鉄心21Aの外周面201は、極中心(永久磁石25の周方向における中心部)に対して、極間(永久磁石25の周方向における端部)が径方向外側に突出する形状を有している。
このように、回転子鉄心21の第1の鉄心21Aの外周面201と固定子鉄心10の内周面との隙間は、回転子鉄心21の第2の鉄心21Bの外周面202と固定子鉄心10の内周面との隙間よりも大きい。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束は、第1の鉄心10Aには流れにくく、第2の鉄心10Bには流れやすくなる。その結果、アモルファス金属またはナノ結晶金属で構成された第2の鉄心10Bに磁束が多く流れ、これにより鉄損を低減することができる。
実施の形態4の電動機の構成は、回転子鉄心21の構成を除き、実施の形態1の電動機と同様である。
この実施の形態4では、固定子鉄心10の第1の鉄心10Aに対向する回転子鉄心21の第1の鉄心21Aが、固定子鉄心10の第2の鉄心10Bに対向する回転子鉄心21の第2の鉄心21Bよりも径方向内側に退避している。そのため、回転子2の永久磁石25からの磁束は第1の鉄心10Aよりも第2の鉄心10Bに流れやすくなる。これにより、効果的に鉄損を低減することができる。
なお、実施の形態4に、第1の変形例(図11)または第2の変形例(図12)で説明した第1の鉄心10Aの軸方向における配置を適用してもよい。また、第2の鉄心10Bは、アモルファス金属またはナノ結晶金属(薄帯の積層体または粉体の圧縮成形体)で構成されているが、実施の形態2のように電磁鋼板で構成していてもよい。また、実施の形態3で説明したように、ティース先端部13Aの内周端面がティース先端部13Bの内周端面よりも径方向外側に位置している固定子鉄心10の構成(図14)と、実施の形態4の回転子鉄心21の構成とを組み合わせてもよい。
実施の形態5.
図17は、本発明の実施の形態5における固定子鉄心10の第1の鉄心10Aの第1の構成例を示す平面図である。なお、図17には、第1の分割鉄心部5Aに相当する第1の鉄心10Aを示している。
図17の構成例では、第1の鉄心10Aのティース先端部13Aに、長孔300(空隙部)が形成されている。長孔300は、周方向に延在する穴である。長孔300は、径方向外側および径方向内側においてそれぞれ円弧状に延在する端縁301,302と、これら端縁301,302の周方向両端に位置する一対の端縁303とを有している。
図18は、実施の形態5の第1の鉄心10Aの第2の構成例を示す平面図である。図18の構成例では、ティース先端部13Aに、図17に示した長孔300の代わりに、複数の孔310(空隙部)が形成されている。孔310は、例えば円形の穴であるが、円形に限定されるものではない。この複数の孔310は、ティース先端部13Aの内周端面に沿って周方向に配列されている。
図19は、実施の形態5の第1の鉄心10Aの第3の構成例を示す平面図である。図19の構成例では、ティース先端部13Aの内周端面に、溝320(空洞部)が形成されている。溝320は、周方向に延在する端縁321と、端縁321の両端に位置する一対の端縁322とを有している。
図20は、実施の形態5の第1の鉄心10Aの第4の構成例を示す平面図である。図20の構成例では、ティース先端部13Aの内周端面に、複数の溝330(空洞部)が形成されている。溝330は、例えば半円形状の溝であるが、半円形に限定されるものではない。これら複数の溝330は、ティース先端部13Aの内周端面に沿って周方向に配列されている。
実施の形態5の電動機の構成は、第1の鉄心10Aのティース先端部13Aに空洞部が形成されていることを除き、実施の形態1の電動機と同様である。
この実施の形態5では、図17〜図20に示したように、ティース先端部13Aに空洞部が形成されているため、第1の鉄心10Aの磁気抵抗が増加し、回転子2の永久磁石25の磁束が第1の鉄心10Aに流れにくくなる。その結果、回転子2の永久磁石25の磁束は、第2の鉄心10B(図2)により多く流れるようになり、鉄損を低減することができる。
また、第1の鉄心10Aの内径と第2の鉄心10Bの内径とを同じにできるため、第1の鉄心10Aと第2の鉄心10Bとを内径基準で組み立てることが可能となり、組み立て性および組立精度が向上する。
ティース先端部13Aの空洞部の形状は、図17〜図20に示された例に限らず、回転子2の永久磁石25の磁束をティース先端部13Aに流れにくくする形状であればよい。
なお、実施の形態5に、第1の変形例(図11)または第2の変形例(図12)で説明した第1の鉄心10Aの軸方向における配置を適用してもよい。また、第2の鉄心10Bは、アモルファス金属またはナノ結晶金属(薄帯の積層体または粉体の圧縮成形体)で構成されているが、実施の形態2のように電磁鋼板で構成していてもよい。また、実施の形態3で説明した固定子鉄心10の構成(図14)を適用しても良く、実施の形態4で説明した回転子鉄心21の構成(図16)を適用してもよい。
実施の形態6.
図21は、本発明の実施の形態6における固定子鉄心10の第1の鉄心10Aの第1の構成例を示す平面図である。なお、図21には、第1の分割鉄心部5Aに相当する第1の鉄心10Aを示している。
図21の構成例では、第1の鉄心10Aのティース11Aに、径方向に延在する3つの長孔340(空洞部)が形成されている。これら3つの長孔340は、周方向に間隔をあけて配列されている。
各長孔340は、径方向に延在する一対の端縁341と、周方向に延在する一対の端縁342とを有している。なお、長孔340の数は3つに限らず、1つ以上であればよい。長孔340は、ティース11Aの径方向の全域に亘って、すなわちティース先端部13Aからヨーク12Aに達するまで延在している。但し、長孔340の延在する範囲は、ティース11Aの磁気抵抗を増加させることができる範囲であればよい。
図22は、実施の形態6の第1の鉄心10Aの第2の構成例を示す平面図である。図22の構成例では、ティース11Aに、周方向に延在する4つの長孔350(空洞部)が形成されている。4つの長孔350は、径方向に間隔をあけて配列されている。
各長孔350は、周方向に延在する一対の端縁351と、径方向に延在する一対の端縁352とを有している。なお、長孔350の数は4つに限らず、1つ以上であればよい。長孔350は、ティース11Aの径方向の全域に亘って、すなわちティース先端部13Aからヨーク12Aに達する範囲に形成されている。但し、長孔350の形成される範囲は、ティース11Aの磁気抵抗を増加させることができる範囲であればよい。
図23は、実施の形態6の第1の鉄心10Aの第3の構成例を示す平面図である。図23の構成例では、ヨーク12Aに、径方向に延在する7つの長孔360(空洞部)が形成されている。7つの長孔360は、周方向に間隔をあけて配列されている。
各長孔360は、径方向に延在する一対の端縁361と、周方向に延在する一対の端縁362とを有している。なお、長孔360の数は7つに限らず、1つ以上であればよい。長孔360は、ヨーク12Aの周方向の全域に亘って形成されている。但し、長孔360の形成される範囲は、ヨーク12Aの磁気抵抗を増加させることができる範囲であればよい。
図24は、実施の形態6の第1の鉄心10Aの第4の構成例を示す平面図である。図24の構成例では、ヨーク12Aに、周方向に延在する2つの長孔370(空洞部)が形成されている。2つの長孔370は、径方向に間隔をあけて配列されている。
各長孔370は、周方向に延在する一対の端縁371と、径方向に延在する一対の端縁372とを有している。なお、長孔370の数は2つに限らず、1つ以上であればよい。長孔370は、ヨーク12Aの周方向の全域に亘って形成されている。但し、長孔370の形成される範囲は、ヨーク12Aの磁気抵抗を増加させることができる範囲であればよい。
図25は、実施の形態6の他の構成例を示す平面図である。図25の構成例では、ティース11Aからヨーク12Aに亘って、L字状の2つの長孔400(空洞部)およびT字状の1つの長孔410(空洞部)が形成されている。
長孔400は、ティース11A内で径方向に延在する第1部分401と、ヨーク12A内で周方向に延在する第2部分402とを有し、第1部分401と第2部分402とは端部でつながっている。第1部分401は、ティース11Aの側面111Aに沿って延在し、第2部分402は、ヨーク12Aの内周面121Aに沿って延在している。
長孔410は、ティース11A内を径方向に延在する第1部分411と、ヨーク12A内を周方向の両側に延在する第2部分412とを有し、第1部分411の端部は第2部分412の周方向中央部につながっている。
ティース11A内では、2つの長孔400の第1部分401の間に、長孔410の第1部分411が形成されている。ヨーク12A内では、長孔400の第2部分402よりも径方向外側に、長孔410の第2部分412が形成されている。
なお、ここでは合計3つの長孔(2つの長孔400と1つの長孔410)が設けられているが、長孔の数は1つ以上であればよい。また、長孔400,410の形成される範囲は、ティース11Aおよびヨーク12Aの磁気抵抗を増加させることができる範囲であればよい。
実施の形態6の電動機の構成は、第1の鉄心10Aのティース11Aおよびヨーク12Aのうちの少なくとも一方に空洞部が形成されていることを除き、実施の形態1の電動機と同様である。
この実施の形態6では、図21〜図25に示したように、ティース11Aおよびヨーク12Aのうちの少なくとも一方に空洞部が形成されているため、第1の鉄心10Aの磁気抵抗が増加し、回転子2の永久磁石25の磁束が第1の鉄心10Aに流れにくくなる。その結果、回転子2の永久磁石25の磁束は、第2の鉄心10B(図2)により多く流れるようになり、鉄損を低減することができる。
ティース11Aおよびヨーク12Aの空洞部の形状は、図21〜図25に示された例に限らず、回転子2の永久磁石25の磁束を第1の鉄心10Aに流れにくくする形状であればよい。
なお、実施の形態6に、第1の変形例(図11)または第2の変形例(図12)で説明した第1の鉄心10Aの軸方向における配置を適用してもよい。また、第2の鉄心10Bは、アモルファス金属またはナノ結晶金属(薄帯の積層体または粉体の圧縮成形体)で構成されているが、実施の形態2のように電磁鋼板で構成していてもよい。また、実施の形態3で説明した固定子鉄心10の構成(図14)を適用しても良く、実施の形態4で説明した回転子鉄心21の構成(図16)を適用してもよい。
<ロータリ圧縮機>
次に、上述した各実施の形態および各変形例の電動機100が適用可能なロータリ圧縮機500について説明する。図26は、ロータリ圧縮機500の構成を示す断面図である。ロータリ圧縮機500は、密閉容器507と、密閉容器507内に配設された圧縮要素501と、圧縮要素501を駆動する電動機100とを備えている。
圧縮要素501は、シリンダ室503を有するシリンダ502と、電動機100によって回転するシャフト60と、シャフト60に固定されたローリングピストン504と、シリンダ室503内を吸入側と圧縮側に分けるベーン(図示せず)と、シャフト60が挿入されてシリンダ室503の軸方向端面を閉鎖する上部フレーム505および下部フレーム506とを有する。上部フレーム505および下部フレーム506には、上部吐出マフラ508および下部吐出マフラ509がそれぞれ装着されている。
密閉容器507は、例えば厚さ3mmの鋼板を絞り加工して形成された円筒状の容器である。密閉容器507の底部には、圧縮要素501の各摺動部を潤滑する冷凍機油(図示せず)が貯留されている。シャフト60は、軸受部としての上部フレーム505および下部フレーム506によって回転可能に保持されている。
シリンダ502は、内部にシリンダ室503を備えており、ローリングピストン504は、シリンダ室503内で偏心回転する。シャフト60は偏心軸部を有しており、その偏心軸部にローリングピストン504が嵌合している。
密閉容器507は、円筒状のフレーム6を有している。電動機100の固定子1は、焼き嵌め、圧入または溶接等の方法により、フレーム6の内側に組み込まれている。固定子1の巻線3には、密閉容器507に固定されたガラス端子511から電力が供給される。シャフト60は、回転子2の回転子鉄心21(図1)の中央に形成された中心孔26に固定されている。
密閉容器507の外部には、冷媒ガスを貯蔵するアキュムレータ510が取り付けられている。密閉容器507には吸入パイプ513が固定され、この吸入パイプ513を介してアキュムレータ510からシリンダ502に冷媒ガスが供給される。また、密閉容器507の上部には、冷媒を外部に吐出する吐出パイプ512が設けられている。
冷媒としては、例えば、R410A、R407CまたはR22等を用いることができる。また、地球温暖化防止の観点からは、低GWP(地球温暖化係数)の冷媒を用いることが望ましい。
ロータリ圧縮機500の動作は、以下の通りである。アキュムレータ510から供給された冷媒ガスは、吸入パイプ513を通ってシリンダ502のシリンダ室503内に供給される。インバータの通電によって電動機100が駆動されて回転子2が回転すると、回転子2と共にシャフト60が回転する。そして、シャフト60に嵌合するローリングピストン504がシリンダ室503内で偏心回転し、シリンダ室503内で冷媒が圧縮される。シリンダ室503で圧縮された冷媒は、吐出マフラ508,509を通り、さらに回転子鉄心21に設けられた穴(図示せず)を通って密閉容器507内を上昇する。密閉容器507内を上昇した冷媒は、吐出パイプ512から吐出され、冷凍サイクルの高圧側に供給される。
なお、シリンダ室503で圧縮された冷媒には冷凍機油が混入しているが、回転子鉄心21に設けられた穴を通過する際に、冷媒と冷凍機油との分離が促進され、冷凍機油の吐出パイプ512への流入が防止される。
このロータリ圧縮機500は、各実施の形態および各変形例で説明した電動機100が適用可能であり、電動機100は鉄損が小さく十分な強度を有している。そのため、ロータリ圧縮機500のエネルギー効率および信頼性を向上することができる。
なお、各実施の形態および各変形例の電動機100は、ロータリ圧縮機500に限らず、他の種類の圧縮機にも利用することができる。
<冷凍空調装置>
次に、上述したロータリ圧縮機500を備えた冷凍空調装置600について説明する。図27は、冷凍空調装置600の構成を示す図である。図27に示した冷凍空調装置600は、圧縮機(ロータリ圧縮機)500と、四方弁601と、凝縮器602と、減圧装置(膨張器)603と、蒸発器604と、冷媒配管605と、制御部606とを備えている。圧縮機500、凝縮器602、減圧装置603および蒸発器604は、冷媒配管605によって連結され、冷凍サイクルを構成している。
冷凍空調装置600の動作は、次の通りである。圧縮機500は、吸入した冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒として送り出す。四方弁601は、冷媒の流れ方向を切り換えるものであるが、図27に示した状態では、圧縮機500から送り出された冷媒を凝縮器602に流す。凝縮器602は、圧縮機500から送り出された冷媒と空気(例えば、室外の空気)との熱交換を行い、冷媒を凝縮して液化させて送り出す。減圧装置603は、凝縮器602から送り出された液冷媒を膨張させて、低温低圧の液冷媒として送り出す。
蒸発器604は、減圧装置603から送り出された低温低圧の液冷媒と空気(例えば、室内の空気)との熱交換を行い、冷媒に空気の熱を奪わせて蒸発(気化)させ、ガス冷媒として送り出す。蒸発器604で熱が奪われた空気は、図示しない送風機により、対象空間(例えば室内)に供給される。なお、四方弁601および圧縮機500の動作は、制御部606によって制御される。
冷凍空調装置600の圧縮機500は、各実施の形態および各変形例で説明した電動機100が適用可能であり、電動機100は鉄損が小さく十分な強度を有している。そのため、冷凍空調装置600のエネルギー効率および信頼性を向上することができる。
なお、冷凍空調装置600における圧縮機500以外の構成要素は、上述した構成例に限定されるものではない。
以上、本発明の望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良または変形を行なうことができる。