JP6658077B2 - つまずきリスクの評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、歩行時の最小つま先クリアランスからつまずきリスクを評価する方法とそのための装置に関する。
歩行において、片方の足の踵着地からその足の次の踵着地までは1歩行周期と言われ、つま先離地からその足の次の踵着地までは遊脚期と言われる。この遊脚期におけるつま先と地面との距離がつま先クリアランスであり、遊脚中期におけるつま先クリアランスの最小値が最小つま先クリアランスである。最小つま先クリアランスを測定することにより歩行中のつまずきリスクを評価することができる。
従来、つま先クリアランスの測定はモーションキャプチャシステムを用いて行なわれているが、モーションキャプチャシステムは高価であり、測定方法が煩雑である。これに対し、床反力計で測定される左右方向、前後方向、鉛直方向の床反力データを説明変数とし、身長で正規化した最小つま先クリアランスを目的変数として重回帰分析することにより回帰式を得、その回帰式を用いて任意の被験者について床反力データから最小つま先クリアランスを推定し、その推定値を所定の閾値と対比することにより、あるいは推定値のばらつきの大小により、つまずきリスクを評価する方法が提案されている(特許文献1)。
一方、背屈力が低下すると、遊脚期につま先が垂れてつまずきが誘発されることから、腰に加速度計を装着し、一方の足の蹴り出しから他方の足のみで立脚する立脚中期までの腰部における前後方向の平均加速度を求め、その平均加速度と背屈力との関係を得ておき、その関係を用いて任意の被験者について腰部の加速度から背屈力を推定し、つまずきに対して対策を講じることが提案されている(特許文献2)
特開2013−138783号公報 特開2007−125368号公報
特許文献1に記載の方法では、被験者の歩行の床反力データを得るために、歩行特徴の検査会場などで被験者に床反力計上を歩行してもらうことが必要となる。しかしながら、そうして得た床反力データが、被験者の日常的な歩行特徴を表しているとは限らない。そのため、この方法では、被験者の日常のつまずきリスクを評価することが難しい。
特許文献2に記載の方法では、背屈力を推定するにあたり、腰に装着した加速度計で腰の加速度を測定するので、被験者の日常的な歩行における加速度を測定することができる。しかしながら、この方法は、最小つま先クリアランスを直接的に推定するものはなく、低下によりつまずきが誘発される背屈力を推定する方法であるため、つまずきリスクの評価精度が劣る。
これに対し、本発明の課題は、腰に装着した加速度計を用いて最小つま先クリアランスを正確に推定し、つまずきリスクを評価できるようにすることにある。
本発明者は、腰に装着した加速度計で測定される加速度から導出される加速度パラメータを説明変数として最小つま先クリアランスを重回帰分析により推定するにあたり、1歩行周期内の特定の期間の加速度が最小つま先クリアランスとの関連が強いのではないかとの着想をもとに、測定された加速度の1歩行周期を時間分割し、時間分割した加速度から最小つま先クリアランスと相関の高いものを加速度パラメータとして使用すると、最小つま先クリアランスの推定精度が顕著に向上することを見出し、本発明を想到した。
即ち、本発明は、最小つま先クリアランスを目的変数とし、歩行における腰部の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度から導出される加速度パラメータを説明変数に含む回帰式を使用して、被験者の右足又は左足について最小つま先クリアランスを算出し、つまずきリスクを評価するつまずきリスクの評価方法であって、
加速度パラメータとして、最小つま先クリアランスを推定する足について、1歩行周期における立脚期中期の加速度、中期両足支持期の加速度、遊脚期前半の加速度、及び遊脚期後半の加速度から選ばれる加速度を使用するつまずきリスクの評価方法を提供する。
特に本発明は、上述のつまずきリスクの評価方法において、加速度パラメータとして、1歩行周期における立脚期中期の左右方向の加速度、中期両足支持期の前後方向の加速度、遊脚期前半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度、並びに遊脚期後半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度を使用する方法や、加速度パラメータとして、さらに、最小つま先クリアランスを推定する足についての踵着地から次の踵着地までの1歩行周期における所定時間間隔の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度の主成分分析により算出される主成分得点であって、実測された最小つま先クリアランスと相関の高い主成分得点を使用する方法を提供する。
また、本発明は、歩行中の被験者の腰部の加速度から最小つま先クリアランスを推定する最小つま先クリアランスの推定装置であって、
被験者に携帯される加速度センサ、及び加速度センサで計測された加速度を用いて最小つま先クリアランスを算出し出力する演算装置を有し、
加速度センサは、歩行中の被験者の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度を測定可能であり、
演算装置は、上述の回帰式を記憶する機能、
最小つま先クリアランスを推定する足について、踵着地から次の踵着までの1歩行周期の加速度を時間分割して所定の時間間隔の加速度を取得する機能、
該所定時間間隔の加速度から、前記回帰式の加速度パラメータである立脚期中期の加速度、中期両足支持期の加速度、遊脚期前半の加速度、及び遊脚期後半の加速度から選ばれる加速度を抽出する機能、
抽出した加速度を前記回帰式で使用して最小つま先クリアランスを算出する機能、
を有する最小つま先クリアランスの推定装置を提供する。
本発明のつまずきリスクの評価方法によれば、歩行における腰の加速度を用いて、簡便に且つ正確に最小つま先クリアランスを推定することができ、推定した最小つま先クリアランスに基づいてつまずきリスクを的確に評価することができる。
また、本発明のつま先クリアランスの推定装置によれば、腰に装着する加速度センサを用いて、本発明のつまずきリスクの評価方法が使用する最小つま先クリアランスの算出方法により最小つま先クリアランスを算出し、出力することができる。
したがって、本発明は、日常生活におけるつまずきリスクを知り、また、つまずき防止策を講じる上で有用となる。
図1は、1歩行周期の説明図である。 図2は、第21主成分得点と最小つま先クリアランスとの関係図である。 図3は、第24主成分得点と最小つま先クリアランスとの関係図である。 図4は、最小つま先クリアランスの測定値と推定値との関係図である。 図5は、比較例による最小つま先クリアランスの測定値と推定値との関係図である。 図6は、実施例のモデル構築群における最小つま先クリアランスの測定値と推定値との関係図である。 図7は、実施例のモデル評価群における最小つま先クリアランスの測定値と推定値との関係図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
<概要>
本発明のつまずきリスクの評価方法では、概略、最小つま先クリアランスを目的変数とし、歩行における腰部の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度から導出される加速度パラメータを説明変数に含む回帰式を使用して、任意の被験者の最小つま先クリアランスを算出し、つまずきリスクを評価する。
ここで、最小つま先クリアランスとは、遊脚中期において最もつま先と地面との距離が近づく際の距離をいう。この最小つま先クリアランスには、その物理量のみならず、身長若しくは体重により、又はその双方の値を用いて標準化したものも含まれる。最小つま先クリアランスは、遊脚中期におけるつま先の高さであるため、身体の質量の影響を受けることが考えられる。そこで最小つま先クリアランスを体重で標準化すると、回帰式による最小つま先クリアランスの推定精度が高めることができる。
<回帰式>
本発明で使用する回帰式としては最小つま先クリアランスを目的変数とし、加速度パラメータを説明変数に使用して重回帰分析することにより得たものを使用することが好ましい。
この回帰式で使用する加速度パラメータは、複数の被験者について測定した、歩行における腰部の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度から導出される。加速度の測定は、各被験者の腰部に装着した3軸加速度センサにより測定することができる。一方、最小つま先クリアランスはモーションキャプチャにより測定することができ、左右の1方向周期ごとに測定される。
加速度パラメータには、少なくとも、(a)最小つま先クリアランスを推定する足について、1歩行周期における立脚期中期の加速度、中期両足支持期の加速度、遊脚期前半の前後方向の加速度、及び遊脚期後半の加速度から選ばれる加速度を含める。
この他、加速度パラメータとしては、(b)測定された加速度を時間分割して得られる所定時間間隔の加速度を主成分分析して得られる主成分得点であって、最小つま先クリアランスとの相関性が高いものを併用することが好ましい。(a)及び(b)の2種の加速度パラメータを使用することにより、最小つまずきリスクの推定精度を顕著に高めることができる。
このうち(a)の加速度パラメータとしては、次の(a1)〜(a6)から選択される加速度を使用することが好ましく、特に(a1)〜(a6)の全てを使用することが好ましい。
(a1)踵着地から次の踵着地までの1歩行周期における立脚期中期の左右方向の加速度、好ましくは、図1に示すように1歩行周期を100%としたときの時間率(以下、単に時間率という)が20〜30%の左右方向の加速度。
(a2)1歩行周期における中期両足支持期の前後方向の加速度、好ましくは時間率50〜60%の前後方向の加速度。
(a3)1歩行周期における遊脚期前半の前後方向の加速度、好ましくは時間率70〜75%の前後方向の加速度。
(a4)1歩行周期における遊脚期前半の左右方向の加速度、好ましくは時間率75〜80%の左右方向の加速度。
(a5)1歩行周期における遊脚期後半の前後方向の加速度、好ましくは時間率90〜95%の前後方向の加速度。
(a6)1歩行周期における遊脚期後半の前後方向の加速度、好ましくは時間率92〜100%の左右方向の加速度。
これら(a1)〜(a6)の加速度は、例えば、右足の最小つま先クリアランスと加速度とを関連づける場合、加速度センサで測定された腰部の前後方向、左右方向又は鉛直方向の加速度において右足の着床に伴う鉛直方向の加速度の極値に基づいて1歩行周期を切り出し、その右足の1歩行周期の加速度を時間分割して所定時間間隔の加速度とし、所定時間間隔の加速度とその1歩行周期における最小つま先クリアランスとの相関係数を多数の被験者から求めた場合に、相関係数が好ましくは0.25以上、より好ましくは0.4以上となる時間率の加速度である。
なお、(a1)〜(a6)の加速度を定めるにあたり、1歩行周期を時間分割した所定時間間隔の加速度とその1歩行周期における最小つま先クリアランスとの相関性を調べるときに、各被験者の歩行から1歩行周期を所定数切り出して各歩行周期の所定時間間隔の加速度と最小つま先クリアランスとの相関係数を算出してもよく、切り出した複数の1歩行周期の加速度から平均化した1歩行周期の加速度と平均化した最小つま先クリアランスを算出し、平均化した1歩行周期の加速度を時間分割した所定時間間隔の加速度と平均化した最小つま先クリアランスとの相関係数を算出してもよい。最小つま先クリアランスのばらつきを重視する点からは前者が好ましい。
1歩行周期の加速度データの時間分割においては、その分割の間隔が長すぎると最小つま先クリアランスの推定精度が低下し、短すぎると計算量が増大するので5m秒以上15m秒以下の所定間隔で分割することが好ましい。
また、(a1)〜(a6)の加速度としては、それぞれの時間率の範囲の加速度のいずれかを代表値として使用してもよく、その時間率の範囲の加速度の平均を使用してもよい。
(a)の加速度パラメータとして、(a1)〜(a6)の時間率の範囲の、左右方向の加速度、前後方向の加速度、鉛直方向の加速度を合成したものを使用してもよい。
(a)の加速度パラメータとして、(a1)〜(a6)の時間率の範囲の左右方向の加速度、前後方向の加速度、鉛直方向の加速度又はこれらを合成したの加速度を、身長、体重又は身長と体重の双方により標準化した加速度を使用してもよい。
一方、(b)の主成分得点からなる加速度パラメータとしては、前記複数の被験者について測定した前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度を時間分割し、それにより得られる前後方向、左右方向及び鉛直方向の所定時間間隔の加速度を主成分分析して主成分得点を算出し、各主成分得点と、最小つま先クリアランスを推定する側の足の最小つま先クリアランスの測定値との相関性を調べ、相関係数の高い主成分得点を使用する。好ましくは、最小つま先クリアランスの測定値に対して相関係数が0.25以上の主成分得点を1又は複数個使用する。
(b)の主成分得点からなる加速度パラメータを得るにあたり、所定時間間隔の加速度は、(a)の加速度パラメータを得る場合と同様に1歩行周期の加速度データを切り出し、それを時間分割することにより得ることができる。
本発明においては、最小つま先クリアランスを推定する回帰式の説明変数として、上述の(a)の加速度パラメータ、好ましくは(a)及び(b)の加速度パラメータに加えて、被験者の年齢、性別、身長、体重、BMI、等から選ばれる属性パラメータを使用することがより好ましい。言い換えると、本発明で使用する回帰式は、上述の(a)及び(b)の加速度パラメータと、必要に応じて属性パラメータを説明変数とし、最小つま先クリアランスを目的変数として重回帰分析することにより得たものが好ましい。重回帰分析では、説明変数とする(a)及び(b)の加速度パラメータ、並びに属性パラメータをステップワイズ法により選択することが好ましい。
<回帰式を用いた最小つま先クリアランスの算出>
任意の被験者の最小つま先クリアランスは、その被験者の歩行における腰部の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度を測定し、回帰式の説明変数である加速度パラメータを得、その加速度パラメータを上述の回帰式で用いることにより算出する。こうして算出した最小つま先クリアランスを被験者の最小つま先クリアランスの推定値とする。
より具体的には、例えば右足の最小つま先クリアランスを算出する場合、測定された腰部の加速度から1歩行周期を、右足の着床に伴う鉛直方向の加速度の極値により切り出し、1歩行周期毎にそれを時間分割して所定時間間隔の加速度を求め、所定時間間隔の加速度から少なくとも(a)の加速度パラメータ、好ましくは(a)及び(b)の加速度パラメータを求め、1歩行周期毎の最小つま先クリアランスを算出することが好ましい。これにより最小つま先クリアランスのばらつきをみることができる。
一方、(a)及び(b)の加速度パラメータを求めるにあたり、切り出した複数の1歩行周期の加速度から平均化した1歩行周期の加速度を求め、その平均化した1歩行周囲の加速度を時間分割して所定時間間隔の加速度を求め、所定時間間隔の加速度から(a)及び(b)の加速度パラメータを求めてもよい。こうして得た加速度パラメータを用いて回帰式から算出した最小つま先クリアランスは、複数の歩行周期における最小つま先クリアランスの平均といえる。最小つま先クリアランスのばらつきを重視する点からは、切り出した1歩行周期ごとに最小つま先クリアランスを求めることが好ましい。
こうして得た最小つま先クリアランスの推定値は、それを算出する回帰式の説明変数として少なくとも(a)の加速度パラメータが使用されているので最小つま先クリアランスの推定精度が高く、特に(a)及び(b)の2種の加速度パラメータを使用した場合には、(a)、(b)いずれかの加速度パラメータが説明変数である場合に比して、最小つま先クリアランスの推定精度が顕著に向上し、最小つま先クリアランスの推定値と実測値との相関の程度を表す決定係数を0.4以上とすることができる。
したがって、本発明によれば、最小つま先クリアランスの推定値に基づいてつまずきリスクを評価することができる。
<つまずきリスクの評価>
最小つま先クリアランスに基づいてつまずきリスクを評価する方法の具体的な態様としては、例えば、最小つま先クリアランスとつまずき易さとの関係を予め調べ、つまずき易さを段階的に評価する場合の最小つま先クリアランスの閾値を設定し、その閾値に対して任意の被験者の最小つま先クリアランスの推定値を比較することによりその被験者のつまずき易さを段階的に評価することができる。
所定の時間帯ごとに、最小つま先クリアランスの平均を算出し、時間帯毎につまずきリスクを対比できるようにしてもよい。最小つま先クリアランスの平均として、当該時間帯の歩行の1歩行周期ごとの最小つま先クリアランスの積算値を当該時間帯の歩行のストライド数(即ち、歩数)で割ったものを使用することができる。
また、最小つま先クリアランスのばらつきが大きいとつまずき易いことが知られていることから、所定の時間帯ごとに最小つま先クリアランスのばらつきを算出し、そのばらつきに基づいてつまずきリスクを評価してもよい。このばらつきとしては、標準偏差、分散などを使用することができる。
所定の時間帯ごとに最小つま先クリアランス又はそのばらつきがわかることにより、例えば、被験者に歩き方のアドバイスをする者が、被験者に1日のうちの時間帯に応じたアドバイスを提供することが可能となる。
<最小つま先クリアランスの推定装置>
任意の被験者について、腰部の加速度の測定から最小つま先クリアランスを推定する最小つま先クリアランスの推定装置としては、日常の歩行における最小つま先クリアランスを推定できるように、日常生活において携帯可能な装置であることが好ましい。
そこで、本発明の最小つま先クリアランスの推定装置は、被験者に携帯される加速度センサ、及び加速度センサで計測された加速度を用いて最小つま先クリアランスを算出し出力する演算装置を備え、さらに必要に応じて算出したつま先クリアランスを表示するディスプレイを備える。なお、演算装置が算出した最小つま先クリアランスは、携帯電話、プリンタ等に出力できるようにしてもよい。
この装置において加速度センサとしては、歩行中の被験者の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度を測定可能なものを使用する。このような加速度センサとしては、XYZの3軸の加速度波形を抽出することのできる携帯端末をあげることができる。
演算装置は、最小つま先クリアランスを算出する前述の回帰式を記憶する機能、
左右の足のうち最小つま先クリアランスを推定する足について、踵着地から次の踵着までの1歩行周期の加速度を時間分割して所定の時間間隔の加速度を取得する機能、
該所定時間間隔の加速度から、前記回帰式の加速度パラメータである所定の時間率の範囲
の加速度を抽出する機能、
抽出した加速度と算出した主成分得点を前記回帰式で使用して最小つま先クリアランスを算出し、最小つま先クリアランスの推定値として出力する機能を有する。
これらの機能に加えて、演算装置は、所定の時間率の願意の所定方向の加速度を抽出する機能と、所定時間間隔の加速度を用いて回帰式の加速度パラメータである主成分得点を算出する機能も有することが好ましい。
このうち、所定の時間間隔の加速度を取得する機能の具体的態様としては、加速度センサで測定された前後方向、左右方向又は鉛直方向のそれぞれの加速度から1歩行周期の加速度を複数切り出し、切り出した各歩行周期ごとに加速度を時間分割して所定時間間隔の加速度を取得するものが好ましい。また、複数の歩行周期の加速度から平均化した1歩行周期の加速度を算出し、平均化した1歩行周期の加速度から所定時間間隔の加速度を取得できるようにしてもよい。
また、前後方向、左右方向及び鉛直方向という成分ごとの加速度ではなく、3方向を一括してベクトルとし、そのベクトルの大きさを加速度パラメータとして使用できるようにしてもよい
演算装置に、所定の時間帯における歩行の最小つま先クリアランスの平均やばらつきを算出する機能をもうけ、それらが出力されるようにしてもよい。
また、演算装置に、回帰式を用いて算出した最小つま先クリアランス、最小つま先クリアランスの平均、又は最小つま先クリアランスのばらつきに基づいてつまずきリスクを評価する機能をもたせ、評価結果が出力されるようにしてもよい。即ち、この機能により、前述のつまずきリスクの評価方法が実施されるようにしてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
(1)回帰式の取得
歩行時に痛みがない自力で歩行可能な20歳から73歳の男女133名(男性74名、女性59名)を被験者とした。被験者には、前日の過度な運動と飲酒を控えるように指示した。
被験者の腰の前後方向、左右方向、及び鉛直方向の加速度を測定するために、被験者の腰に反射マーカを取り付け、各時間帯の歩行におけるマーカの位置をモーションキャプチャシステム(Vicon社製のVicon MXシステム、Vicon Nexus)で計測することにより、腰の位置情報をもとに加速度を算出した。
回帰式を得るモデル構築のための前処理は以下の手順で行った。
1)計測された全被験者のマーカ座標の生データに4次のButterworthローパスフィルタをかけノイズを除去した。カットオフ周波数は10Hzとした。
2)腰(仙骨部)の3軸の加速度を抽出した。加速度は、マーカ座標を2回微分することで取得した。
測定した3軸方向の加速度から1歩行周期を右足の着床に伴う鉛直方向の加速度の極値により切り出し、その1歩行周期の加速度を101等分(約10m秒間隔)に分割することで合計303(時間率0〜100%)の加速度成分を得た。3軸方向の加速度成分について多変量解析手法の一つである分散共分散行列を用いた主成分分析を行うことで、合計26の加速度主成分を抽出し、加速度主成分ごとに加速度の数値と主成分得点係数を掛け合わせ、それらの和をとることにより主成分得点を算出した。
また、同じ被験者の右足の第1中足骨に反射マーカを取り付け、各時間帯の歩行におけるマーカの位置をモーションキャプチャシステム(Vicon社製のVicon MXシステム、Vicon Nexus)で計測することにより、1歩行周期の最小つま先クリアランスを測定した。
各加速度主成分の主成分得点と、最小つま先クリアランスとの相関性を調べ、相関性の高い第21主成分と第24主成分を抽出した。図2に、第21主成分得点と最小つま先クリアランスとの関係を示し、図3に第24主成分得点と最小つま先クリアランスとの関係を示す。
一方、303の加速度成分のそれぞれについて、最小つま先クリアランスの測定値との相関性を調べ、相関係数が0.25以上となる時間率の加速度成分を選択した。
また、各被験者の性別に、平均0、分散1となる標準化した数値を与えた。
最小つま先クリアランスを目的変数とし、各被験者の性別、上述の相関係数が0.25以上の加速度成分、第21主成分得点及び第24主成分得点を説明変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行い、次の回帰式を得た。式中、Xt%は左右方向の時間率t%の加速度を表し、Yt%は前後方向の時間率t%の加速度を表す。
最小つま先クリアランス(cm)
=4.464+(性別)×0.367+(X24%)×(-0.018)+(Y53%)×(-0.018)+(Y71%)×(-0.017)+(X77%)×(-0.042)+(Y94%)×(0.007)+(X95%)×(-0.019)+(第21主成分得点)×(0.056)+(第24主成分得点)×(-0.054)
この回帰式より算出された最小つま先クリアランスの推定値と最小つま先クリアランスの測定値との関係を図4に示す。これらの相関の程度を示す決定係数R2は0.421であり、この回帰式による最小つま先クリアランスの推定精度が高いことがわかる。
(2)時間帯毎の最小つま先クリアランスの推定
回帰式の取得に関わらなかった自力で歩行が可能な28歳の男性を被験者とし、この被験者の日常生活での0時〜3時、3時〜6時、6時〜9時、9時〜12時、12時〜15時、15時〜18時、18時〜21時、21時〜24時の時間帯ごとに加速度の計測が可能であったストライド数の歩行について、X(左右方向)、Y(前後方向)、Z(鉛直方向)の加速度を測定した。なお、0時〜3時は、0時以降3時前までを意味する。他の時間帯についても同様である。
時間帯ごとに、測定した加速度から1歩行周期を切り出し、各歩行周期を101等分して時間率0〜100%の加速度成分を求め、その加速度成分を使用して上述の回帰式から最小つま先クリアランス(MTC)を算出し、時間帯ごとのストライド数における積算値を求め、積算値を時間帯ごとのストライド数で割ることにより最小つま先クリアランス(MTC)の平均値を求めた。また、時間帯ごとの最小つま先クリアランスのばらつきをみるため、最小つま先クリアランス(MTC)の標準偏差を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0006658077
表1の結果から、時間帯ごとに最小つま先クリアランスの推定値が異なり、つまずきリスクが異なることから、時間帯毎につまずき予防のためのアドバイスを変えることの有用性がわかる。例えば、今回加速度計測を行った被験者は6時から9時の間と、18時から21時の間で最小つま先クリアランスの推定値が日中よりも高い値となった。これは、出勤、帰宅時において通常よりも速歩で歩いているためであると考えられる。一方で、帰宅時である18時から21時の間では最も最小つま先クリアランスの標準偏差が高い。これは帰宅時に最もつまずきリスクが増加していることを意味しており、この時間帯でのつまずきリスクを予防する施策を提示することが重要である。
(3)個別の被験者における最小つま先クリアランスの推定精度
(2)の被験者の最小つま先クリアランスを(1)と同様にして12時から15時に測定した。その結果、(2)の推定値は3.70cmであったのに対し、日常生活における最小つま先クリアランスの実測値は3.73cmであり、推定精度の高いことが確認できた。
比較例1
(1)の重回帰分析において、説明変数として、主成分得点を使用せず、各被験者の性別及び相関係数が0.25以上の加速度成分だけを使用する以外は実施例1と同様にして次の回帰式を求めた。式中、Xt%は左右方向の時間率t%の加速度を表し、Yt%は前後方向の時間率t%の加速度を表し、Zt%は鉛直方向の時間率t%の加速度を表す。
最小つま先クリアランス(cm)
=4.617+(性別)×0.331+(Z58%)×(0.009)+(Y64%)×(-0.067)+(Y65%)×(0.173)+(Y66%)×(-0.104)+(X84%)×(-0.021)+(X85%)×(0.04)+(Y92%)×(-0.092)+(Y93%)×(0.205)+(Y94%)×(-0.1)+(X95%)×(-0.29)+(X96%)×(0.521)+(X97%)×(-0.272)
この回帰式より算出された最小つま先クリアランスの推定値と最小つま先クリアランスの測定値との関係を図5に示す。これらの相関の程度を表す決定係数R2は0.336であり、実施例1に比して比較例1の回帰式による最小つま先クリアランスの推定精度が低いことがわかる。
実施例2
(1)回帰式の取得
歩行時に痛みがない自力で歩行可能な20歳から77歳の健常成人120名分(男性63名、女性57名)を被験者とした。被験者らは歩行動作に影響を与えるような傷害歴や疾病歴などを負っていない健常成人であり、計測時には痛みなどを訴えることなく歩行補助具や装具などを用いずに2足で歩行できる者であった。
10mほどの直線歩行が可能な、タイルカーペットが敷かれた実験室で次のように歩行計測を行った。
モーションキャプチャシステム(Vicon社製のVicon MXシステム、Vicon Nexus)を用いて、被験者体表面に貼付した計57点のマーカ座標を200Hzで計測した。マーカの貼付位置はHelen Hayesマーカセットを基準とした。被験者らは、歩行路を裸足で端から端までまっすぐ歩行した。歩行時の速度や歩幅、視線などに関しては特に規定せず、普段通り歩行するよう指示した。各試行の開始は実験者が口頭で合図した。計測は、被験者の疲労を考慮しつつ、最低5試行計測した。
回帰式を得るモデル構築のための前処理として、ノイズ除去と、腰(仙骨部)の3軸の加速度の抽出を実施例1と同様に行った。また、マーカ座標から取得した腰の3軸の加速度に重力の成分を加えることにより加速度ベクトルの大きさを算出した。
算出された加速度ベクトルの大きさの波形から一歩行周期分のデータを切り出し、一歩行周期を100等分(時間率0〜100%)することで時間正規化した。また、加速度に関しては、正規化していない加速度成分101個、体重で正規化した加速度成分101個、身長で正規化した加速度成分101個の計303個の成分をあらかじめ算出した。以上のことから1試行分のデータとして、最小つま先クリアランスの測定値一個と、腰の加速度ベクトルの大きさ303個を得た。
健常成人120名×5試行分、計600試行分のデータを用いて腰の加速度ベクトルの大きさから最小つま先クリアランスを推定するモデルを構築した。その際120名の被験者を、年齢や性別が等質となるように2群(A群60名とB群60名)とし、「モデル構築群」と「モデル評価群」として分類した。最小つま先クリアランスは、遊脚中期におけるつま先の高さであるため、身体の質量の影響を受けることが考えられる。一方、骨盤は身体の重心が近いこともあり、腰の加速度は身体の質量の影響を受けにくいと考えられる。そこで最小つま先クリアランスについては体重で正規化し、体重の影響を取り除いた。
「モデル構築群」における最小つま先クリアランスを目的変数とし、説明変数として、上述したベクトル303成分を用いて重回帰分析(ステップワイズ法)を利用し、次の回帰式を得た。式中、t%は時間率t%の加速度ベクトルの大きさを表す。
最小つま先クリアランス(cm)
=0.055+(24%:身長で正規化)×(-0.009)+(51%:正規化せず)×(-0.007)+(99%:正規化せず)×(0.002)+ (77%:体重で正規化)×(0.421)+(94%:正規化せず)×(0.005)
この回帰式より算出されたモデル構築群における最小つま先クリアランスの推定値と最小つま先クリアランスの測定値との関係を図6に示す。これらの相関の程度を示す決定係数R2は0.561であり、この回帰式による最小つま先クリアランスの推定精度が高いことがわかる。
一方、この回帰式により算出されたモデル評価群における最小つま先クリアランスの推定値と最小つま先クリアランスの測定値との関係を図7に示す。相関係数rは0.512となり、回帰式の推定精度の高さがわかる。

Claims (17)

  1. 最小つま先クリアランスを目的変数とし、歩行における腰部の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度から導出される加速度パラメータを説明変数に含む回帰式を使用して、験者の右足又は左足について最小つま先クリアランスを算出し、つまずきリスクを評価するつまずきリスクの評価方法であって、
    加速度パラメータとして、最小つま先クリアランスを推定する足について、1歩行周期における立脚期中期の加速度、中期両足支持期の加速度、遊脚期前半の加速度、及び遊脚期後半の加速度から選ばれる加速度を使用するつまずきリスクの評価方法。
  2. 加速度パラメータとして、1歩行周期における立脚期中期の左右方向の加速度、中期両足支持期の前後方向の加速度、遊脚期前半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度、並びに遊脚期後半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度を使用する請求項1記載のつまずきリスクの評価方法。
  3. 加速度パラメータとして、さらに、最小つま先クリアランスを推定する足についての踵着地から次の踵着地までの1歩行周期における所定時間間隔の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度の主成分分析により算出される主成分得点であって、測定された最小つま先クリアランスと相関の高い主成分得点を使用する請求項1又は2記載のつまずきリスクの評価方法。
  4. 前記主成分得点が、最小つま先クリアランスとの相関係数が0.25以上である請求項3記載のつまずきリスクの評価方法。
  5. 加速度パラメータとして、身長又は体重で標準化した加速度を使用する請求項1〜4のいずれかに記載のつまずきリスクの評価方法。
  6. 最小つま先クリアランスが体重で標準化されている請求項1〜5のいずれかに記載のつまずきリスクの評価方法。
  7. 最小つま先クリアランスを1歩行周期ごとに算出する請求項1〜6のいずれかに記載のつまずきリスクの評価方法。
  8. 所定時間帯の歩行の最小つま先クリアランスの平均を算出する請求項1〜7のいずれかに記載のつまずきリスクの評価方法。
  9. 所定時間帯の歩行の最小つま先クリアランスのばらつきを算出する請求項1〜8のいずれかに記載のつまずきリスクの評価方法。
  10. 回帰式が、複数の被験者について、歩行における腰部の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度と、最小つま先クリアランスを測定し、最小つま先クリアランスを目的変数とし、測定した加速度から導出した加速度パラメータを説明変数に含む重回帰分析により導出されたものである請求項1〜9のいずれかに記載のつまずきリスクの評価方法。
  11. 歩行中の被験者の腰部の加速度から最小つま先クリアランスを推定する最小つま先クリアランスの推定装置であって、
    被験者に携帯される加速度センサ、及び加速度センサで計測された加速度を用いて最小つま先クリアランスを算出し出力する演算装置を有し、
    加速度センサは、歩行中の被験者の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度を測定可能であり、
    演算装置は、請求項1記載の回帰式を記憶する機能、
    最小つま先クリアランスを推定する足について、踵着地から次の踵着までの1歩行周期の加速度を時間分割して所定の時間間隔の加速度を取得する機能、
    該所定時間間隔の加速度から、前記回帰式の加速度パラメータである立脚期中期の加速度、中期両足支持期の加速度、遊脚期前半の加速度、及び遊脚期後半の加速度から選ばれる加速度を抽出する機能、
    抽出した加速度を前記回帰式で使用して最小つま先クリアランスを算出する機能、
    を有する最小つま先クリアランスの推定装置。
  12. 演算装置が記憶している回帰式が、加速度パラメータとして、1歩行周期における立脚期中期の左右方向の加速度、中期両足支持期の前後方向の加速度、遊脚期前半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度、及び遊脚期後半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度を含み、
    演算装置が、1歩行周期における所定時間間隔の加速度から、加速度パラメータである立脚期中期の左右方向の加速度、中期両足支持期の前後方向の加速度、遊脚期前半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度、並びに遊脚期後半の前後方向の加速度及び左右方向の加速度を抽出する機能、及び
    抽出した加速度を前記回帰式で使用して最小つま先クリアランスを算出する機能、
    を有する請求項11記載の最小つま先クリアランスの推定装置。
  13. 演算装置が記憶している回帰式が、加速度パラメータとして、1歩行周期における所定時間間隔の前後方向、左右方向及び鉛直方向の加速度の主成分分析により算出される主成分得点であって、最小つま先クリアランスと相関の高い主成分得点を含み、
    演算装置が、被験者の1歩行周期における所定時間間隔の加速度から、加速度パラメータである主成分得点を算出する機能、及び
    抽出した加速度と算出した主成分得点を回帰式で使用して最小つま先クリアランスを算出する機能、
    を有する請求項11又は12記載の最小つま先クリアランスの推定装置。
  14. 演算装置が、1歩行周期ごとに最小つま先クリアランスを算出する請求項11〜13のいずれかに記載の最小つま先クリアランスの推定装置。
  15. 演算装置が、所定の時間帯における歩行の最小つま先クリアランスの平均を算出する機能を有する請求項11〜14のいずれかに記載の最小つま先クリアランスの推定装置。
  16. 演算装置が、所定の時間帯における歩行の最小つま先クリアランスのばらつきを算出する機能を有する請求項11〜15のいずれかに記載の最小つま先クリアランスの推定装置。
  17. 演算装置が、回帰式を用いて算出した最小つま先クリアランスに基づいてつまずきリスクを評価する機能、又は所定時間帯における最小つま先クリアランスの平均を算出し、該平均に基づいてつまずきリスクを評価する機能、又は所定時間帯における最小つま先クリアランスのばらつきを算出し、該ばらつきに基づいてつまずきリスクを評価する機能を有する請求項11〜13のいずれかに記載の最小つま先クリアランスの推定装置。
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