JP6668024B2 - 溶射材料 - Google Patents
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Description
ここで、溶射材料は、下記の強い酸化作用および、浸食・腐食作用を有する薬液に対して高い耐性を備えたものであり得る。例えば、ここに開示される溶射材料に対して下記の薬液処理を施したとき、この溶射材料は薬液により全てが溶解されることなく、ろ過によりろ紙上に残渣として回収され得る。薬液処理は、以下のとおりである。
1.王水3mLおよびフッ酸0.5mLからなる薬液を用意する。
2.溶射材料の粉末1gと、上記薬液とを密閉容器に密閉状態で収容する。
3.上記密閉容器を、150℃で24時間保持する。
4.粒子保持能が2.2μmのろ紙を用いて密閉容器中の内容物をろ過する。
5.ろ過によりろ紙上に残った粉末を、純水にて水洗する。
かかる観点において、ここに開示される溶射材料は、溶射物である溶射皮膜のプラズマ耐性をより高く発現させ得るために、イットリウムの酸化物(酸化イットリウム:Y2O3)成分を実質的に含まない構成とすることが好ましい。なお、酸化イットリウム(Y2O3)からなる溶射粒子は、白色の溶射皮膜を形成し、従来より環境遮断性や一般的なプラズマに対する耐エロージョン特性を有する溶射皮膜を形成するために好ましい材料であり得る。しかしながら、ハロゲン系プラズマに対する高い耐エロージョン性を有する溶射皮膜を形成するためには、この溶射材料の粉末についてX線回折分析を行ったとき、酸化イットリウムに帰属される回折ピークは得られないことが好ましい態様であり得る。
なお、参考までに、各結晶相のメインピークは、Y2O3については29.157°付近に,YF3については27.881°付近に,YOFについては28.064°付近に,Y5O4F7については28.114°付近に検出される。
イットリウムオキシフッ化物が2種類以上存在したり、又は酸化イットリウム等の酸素を含む化合物が混在したりする場合は、例えば各化合物の割合を検量線法により定量することができる。具体的には、それぞれの化合物の含有割合を変化させたサンプルを数種類準備し、それぞれのサンプルについてX線回折分析を行い、メインピーク強度と各化合物の含有量との関係を示す検量線を作成する。そしてこの検量線を元に、測定したい溶射材料のXRDのイットリウムオキシフッ化物のメインピーク強度から含有量を定量する。
これに対し、フッ化イットリウムは、薬液処理により一部が王水により酸化されて酸化イットリウムに変化し得る。また、フッ化イットリウム(YF3)は、これ以上フッ化されないため、薬液処理後も一部はそのままフッ化イットリウムとして残存し得る。
イットリウムオキシフッ化物は、一部が王水により酸化されて酸化イットリウムに変化し得る。また、イットリウムオキシフッ化物は、一部がフッ酸によりフッ化されて、フッ化イットリウムに変化し得る。また、イットリウムオキシフッ化物は、一部がフッ酸によりフッ化されて、よりフッ素の割合の高いフッ化イットリウムに変化し得る。また、イットリウムオキシフッ化物は、耐食性に優れるため、薬液処理後も一部はそのまま残存し得る。
したがって、溶射材料の粉末の平均粒子径は特に制限されないが、薬液処理により浸食され難いとの観点から、比較的粗大な粒径であることが好ましい。溶射材料の平均粒子径は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。しかしながら、大きすぎる溶射粒子は溶射皮膜に気泡を形成し得る。したがって、溶射材料の平均粒子径は、60μm以下とすることが好ましく、55μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。
なお、本明細書において、破壊強度Ndは、微少圧縮試験機(島津製作所製、MCTE−500)にて測定した圧縮荷重Pと、溶射粒子の粒径dとから、次式:Nd=2.8×P/(πd2);に基づき算出される値である。溶射粒子の粒径dとしては、平均粒子径を用いることができる。
プラズマ溶射法とは、溶射材料を軟化または溶融するための溶射熱源としてプラズマ炎を利用する溶射方法である。電極間にアークを発生させ、かかるアークにより作動ガスをプラズマ化すると、かかるプラズマ流はノズルから高温高速のプラズマジェットとなって噴出する。プラズマ溶射法は、このプラズマジェットに溶射材料を投入し、加熱、加速して基材に堆積させることで溶射皮膜を得るコーティング手法一般を包含する。なお、プラズマ溶射法は、大気中で行う大気プラズマ溶射(APS:atmospheric plasma spraying)や、大気圧よりも低い気圧で溶射を行う減圧プラズマ溶射(LPS:low pressure plasma spraying)、大気圧より高い加圧容器内でプラズマ溶射を行う加圧プラズマ溶射(high pressure plasma spraying)等の態様であり得る。かかるプラズマ溶射によると、例えば、一例として、溶射材料を5000℃〜10000℃程度のプラズマジェットにより溶融および加速させることで、溶射材料を300m/s〜600m/s程度の速度にて基材へ衝突させて堆積させることができる。
HVOF溶射法とは、燃料と酸素とを混合して高圧で燃焼させた燃焼炎を溶射のための熱源として利用するフレーム溶射法の一種である。燃焼室の圧力を高めることにより、連続した燃焼炎でありながらノズルから高速(超音速であり得る。)の高温ガス流を噴出させる。HVOF溶射法は、このガス流中に溶射材料を投入し、加熱、加速して基材に堆積させることで溶射皮膜を得るコーティング手法一般を包含する。HVOF溶射法によると、例えば、一例として、溶射材料を2000℃〜3000℃の超音速燃焼炎のジェットに供給することで、溶射材料を軟化または溶融させて、500m/s〜1000m/sという高速度にて基材へ衝突させて堆積させることができる。高速フレーム溶射で使用する燃料は、アセチレン、エチレン、プロパン、プロピレンなどの炭化水素のガス燃料であってもよいし、灯油やエタノールなどの液体燃料であってもよい。また、溶射材料の融点が高いほど超音速燃焼炎の温度が高い方が好ましく、この観点では、ガス燃料を用いることが好ましい。
下記の表1の例1〜9に示す組成の粉末状の溶射材料を調製した。具体的には、平均粒子径が3μmの酸化イットリウム(Y2O3)粉末と、平均粒子径が3μmのフッ化イットリウム(YF3)粉末とを用い、これらの粉末の割合を目的の化合物の化学量論組成となるように様々に変化させて配合することで、出発原料とした。そしてこの出発原料を、適切な分散媒(例えば、水とエタノールとの混合分散媒)に分散させて噴霧液を用意した後、超音波噴霧機等により噴霧することで、出発原料を含む液滴を形成した。かかる液滴を、例えば、気流に載せて連続炉を通過させながら、乾燥させた後、非酸化性(Ar)雰囲気又は大気雰囲気のもと、表1に示す所定の温度で2時間程度加熱し、冷却させた。これにより、例1〜9の溶射材料を作製した。
表1中の「組成」欄には、各溶射材料を構成する溶射粒子(目的の化合物)の組成を示した。
表1中の「平均粒子径」欄には、各溶射材料の平均粒子径を測定した結果を示した。
表1中の「破壊強度」欄には、各溶射材料の破壊強度を測定した結果を示した。
表1中の「累積細孔容積」欄には、各溶射材料の細孔径が3μm以下の累積細孔容積を測定した結果を示した。
表1中の「粒子形態」欄には、各溶射材料をSEM観察したときの溶射粒子の形態を示した。同欄中の「顆粒」とは、1つの独立した粒子中に、原料として用いた酸化イットリウム粉末およびフッ化イットリウム粉末に起因すると思われるより微小な粒子の形態が明確に確認できたことを示している。「溶融粉」とは、原料として用いた粉末の形態をほぼ確認することができず、原料粉末が溶融して概ね滑らかな表面の1つの独立した粒子を形成していると判断されたことを示している。参考のために、例7の溶射粒子(溶融粉)のSEM像を図1に示した。
まず、被溶射材である基材としては、アルミニウム合金(Al6061)からなる板材(70mm×50mm×2.3mm)を用意し、褐色アルミナ研削材(A#40)によるブラスト処理を施して用いた。プラズマ溶射は、市販のプラズマ溶射装置(Praxair Surface Technologies社製,SG−100)を用いて行った。プラズマ発生条件は、プラズマ作動ガスとしてアルゴンガス50psi(0.34MPa)とヘリウムガス50psi(0.34MPa)とを用い、電圧37.0V,電流900Aの条件でプラズマを発生させた。なお、溶射装置への溶射用材料の供給には、粉末供給機(Praxair Surface Technologies社製,Model1264型)を用い、溶射用材料を溶射装置に20g/minの速度で供給し、厚さ200μmの溶射皮膜を形成した。なお、溶射ガンの移動速度は24m/min、溶射距離は90mmとした。
表2中の「耐プラズマエロージョン性」欄には、耐プラズマエロージョンレートが40nm/min以下の場合を「◎(優良)」、40nm/minを超えて50nm/min以下の場合を「○(良)」、50nm/minを超える場合を「×(不良)」として示した。
溶射皮膜のプラズマ暴露は、次のようにして行った。すなわち、まず、基材上に、20mm×20mmの溶射皮膜を形成し、溶射皮膜の表面を皮膜厚さが2mmとなるまで鏡面研磨したのち、溶射皮膜の四隅をマスキングテープでマスキングすることで試験片を用意した。そしてこの試験片を、平行平板型の半導体デバイス製造装置(ULVAC製、NLD−800)のチャンバー内のステージに設置された直径300mmのシリコンウエハ上に載置した。続いて、下記の表3に示す条件で、フッ素系プラズマと塩素系プラズマとを、所定のサイクルで繰り返し発生させることで、シリコンウエハおよび溶射皮膜の中央部分をプラズマエッチングした。上記プラズマによる暴露時間は、インターバル(クーリングサイクル時間)を含めて0.9時間とした。その後、溶射皮膜の厚みの減少量から、溶射皮膜がエッチングされた速度を算出した。なお、溶射皮膜の厚みの減少量は、表面粗さ測定機(ミツトヨ製、SV−3000CNC)にて、マスキングした部分と、プラズマ暴露面との、段差を計測することで求めた。
なお、例1〜4、6〜7の溶射材料は、イットリウムオキシフッ化物の単一相からなる粉末により構成されており、他の化合物は全く含まれていない。例えば、図2に示されるように、例7の溶射材料は、結晶性の良好なY5O4F7のみから構成されていることが確認された。また、例5の溶射材料は、イットリウムオキシフッ化物(Y5O4F7)とフッ化イットリウムとの混合粉末により構成されており、他の化合物は全く含まれていないことが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
Claims (7)
- イットリウムのフッ化物およびオキシフッ化物の少なくとも一方を含む粉末であって、
X線回折分析を行ったとき、酸化イットリウムに帰属される回折ピークは得られず、
破壊強度が10MPa以上の溶射粒子を含み、
前記粉末に対して、下記の薬液処理:
前記粉末1gと、王水3mLおよびフッ酸0.5mLからなる薬液とを密閉容器に密閉状態で収容し、150℃で24時間保持したのち、粒子保持能が2.2μmのろ紙を用いて前記密閉容器中の内容物をろ過し、純水にて水洗する;
を施したとき、前記粉末の少なくとも一部が、前記ろ紙上に回収される、溶射材料。 - 前記粉末はイットリウムのフッ化物とイットリウムオキシフッ化物とを含む、請求項1に記載の溶射材料。
- 前記薬液処理後に回収された前記粉末についてX線回折分析を行ったとき、フッ化イットリウム以外の化合物に帰属される回折ピークが得られる、請求項1または2に記載の溶射材料。
- 前記粉末は少なくともイットリウムオキシフッ化物を含み、
前記薬液処理後の前記粉末についてX線回折分析を行ったとき、少なくともイットリウムオキシフッ化物に帰属される回折ピークが得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶射材料。 - 前記粉末は少なくともイットリウムオキシフッ化物を含み、
前記イットリウムオキシフッ化物における、酸素に対するフッ素のモル比(F/O)は1より大きい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射材料。 - 平均粒子径は、5μm以上60μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶射材料。
- 前記粉末における細孔径が3μm以下の累積細孔容積は、0.02cm3/g以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶射材料。
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