本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、車両等に搭載され、車両の旋回による角速度を導出する角速度算出装置に関する。角速度算出装置は、角速度センサからの出力電圧に対して、オフセット値と感度係数とを使用しながら、角速度を導出する。前述のごとく、角速度センサのオフセット値は、温度の変動の影響を受ける。また、オフセット値の誤差は、感度係数の算出精度に影響を与える。従来、角速度センサのオフセット値は、角速度が「0」になる車両停止時や直進走行時の角速度センサからの出力電圧を用いて補正される。車両の走行状態は、車速センサや加速度センサ、角速度センサの出力値の組合せから判断されるが、正確に走行状態を判断することが困難である場合がある。例えば、微速で移動している場合には、所定期間における車速センサの出力が「0」、かつ、加速度センサと角速度センサの出力変化が非常に小さいため停止と判断される場合があり、このときに角速度センサのオフセット値を補正すると補正誤差が含まれる可能性がある。
前述のごとく、オフセット値が正常な変化の範囲内で急激に変化した場合、真のオフセット値に追随するのに時間を要する可能性がある。例えば、角速度センサの出力にはホワイトノイズが含まれるが、それ以外にも、不規則なステップ状のシフトが存在する場合がある。出力値がステップ状に変化すると、平均化処理等では真のオフセット値への追随が困難となり、補正するまでに時間を要するようになる。不規則なステップ状のシフトが存在するような状況であっても角速度の導出精度を高めるためには、角速度センサのオフセット値を短期間で高精度に導出することが要求される。これに対応するために、本実施例に係る角速度算出装置は、次の処理を実行する。
角速度算出装置は、車両に搭載された角速度センサから出力電圧を入力するとともに、車両に搭載されたGPS受信機から測位データを入力する。ここで、角速度センサからの出力電圧が、車両の角速度に相当する。また、測位データには、車両の方位、車両の速度、車両の高度等が含まれる。角速度算出装置は、測位データと出力電圧とをもとに、車両の走行状態を推定する。走行状態として、例えば、停止状態、直進走行状態、非直進走行状態のいずれかが特定される。また、角速度算出装置は、走行状態に応じた導出方法にて仮のオフセット値を逐次導出する。さらに、角速度算出装置は、逐次導出した仮のオフセット値に対して、ローパスフィルタによるフィルタ処理を実行する。ここで、角速度算出装置は、時間経過に対する仮のオフセット値の変化の傾きが大きくなるほど、現在の仮のオフセット値の影響が大きくなるように忘却係数を制御する。これにより、仮のオフセット値のステップ状の変化に追随するようなフィルタ処理が実行される。フィルタ処理の結果がオフセット値である。
図1は、本発明の実施例に係る角速度センサからの出力信号の一例を示す。横軸は、時間を示し、縦軸は、角速度センサのオフセット値を示す。0[sec]から200[sec]の全体として、オフセット値は、温度変化の影響を受けて緩やかに上昇している。しかしながら、80[sec]付近から130[sec]付近において、オフセット値ではステップ状のシフトが発生している。
図2は、本発明の実施例に係る角速度算出装置100の構成を示す。角速度算出装置100は、測定部10、パラメータ演算部12、角速度変換部14、制御部16を含む。また、測定部10は、GPS測位部20、有効性判定部22、角速度センサ24を含み、パラメータ演算部12は、オフセット値演算部26、感度係数演算部28を含む。さらに信号として、GPS測位データ200、出力信号202、オフセット値204、感度係数206が含まれる。
GPS測位部20は、図示しないGPS衛星からの信号を受信して、GPS測位データ200を算出する。GPS測位データ200には、経緯度、車両の高度であるGPS高度、移動速度であるGPS速度、車両の方位であるGPS方位、PDOP(Position Dilution Precision)、捕捉衛星数等が含まれる。ここで、PDOPは、GPS測位データ200におけるGPS衛星位置の誤差が受信点位置にどのように反映されるかの指標であり、測位誤差に相当する。なお、GPS測位データ200には、これら以外の値が含まれていてもよい。また、GPS測位データ200の算出は、公知の技術によってなされればよいので、ここでは説明を省略する。また、GPS測位部20は、GPS測位データ200をサンプリング間隔ごとに、つまり周期的に算出する。GPS測位部20は、GPS測位データ200を有効性判定部22へ逐次出力する。
有効性判定部22は、GPS測位部20からのGPS測位データ200を逐次入力する。有効性判定部22は、GPS測位データ200から、GPS測位データ200それぞれの有効性を判定する。例えば、有効性判定部22は、PDOPの値が第1のしきい値以下であり、かつGPS速度が第2のしきい値以上である場合に、それらに対応したGPS方位が有効であると判定する。また、有効性判定部22は、上記の条件が満たされない場合に、対応したGPS方位が無効であると判定する。これは、一般的にPDOPの値が大きい場合やGPS速度が小さい場合に、GPS方位の精度が低くなる傾向があるからである。さらに具体的に説明すると、PDOPの値が6以下であり、かつGPS速度が20km/h以上である場合に、有効性判定部22は、GPS方位の有効性をフラグで表す。
また、有効性判定部22は、GPS速度が第3のしきい値以上である場合に、当該GPS速度が有効であると判定する。ここで、第3のしきい値は、第2のしきい値と同じでもよい。このような処理の結果、有効性判定部22は、GPS測位データ200に含まれたGPS方位等の各値に対して、有効あるいは無効が示されたフラグを付加する(以下、フラグが付加されたGPS測位データ200もまた「GPS測位データ200」という)。有効性判定部22は、オフセット値演算部26、感度係数演算部28へGPS測位データ200を逐次出力する。
角速度センサ24は、例えば、振動ジャイロ等のジャイロ装置に相当し、車両の進行方向の変化を車両の相対的な角度変化として検出する。つまり、角速度センサ24は、車両の旋回角速度を検出する。検出された角速度は、例えば、0V〜5Vのアナログ信号として出力される。その際、時計回りの旋回に対応した正の角速度は5V側への2.5Vからの偏差電圧として出力され、反時計回りの旋回に対応した負の角速度は0V側への2.5Vからの偏差電圧として出力される。また、2.5Vは、角速度のオフセット値、つまり零点であり、温度等の影響を受けドリフトする。
また、2.5Vからの角速度の偏差程度である感度係数(mV/deg/sec)は、水平な状態において許容誤差内に収まる所定の値として定められている。この許容誤差原因は、ジャイロ装置の個体差や経年変化、温度による影響等である。ジャイロ装置の電圧値は、図示しないAD(Analog to Digital)変換装置によって、例えば、サンプリング間隔100msecでAD変換され、その結果のデジタル信号が出力される。当該デジタル信号は、前述の出力電圧に相当し、以下では、出力信号202という用語を使用する。なお、ジャイロ装置として、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。角速度センサ24は、角速度変換部14、オフセット値演算部26、感度係数演算部28へ出力信号202を出力する。この出力信号202がオフセット値204において取得した角速度に相当する。ここで、オフセット値演算部26、感度係数演算部28は、有効性判定部22からのGPS測位データ200と、角速度センサ24からの出力信号202とを取得するので、これらは「取得部」であるといえる。
オフセット値演算部26は、有効性判定部22からのGPS測位データ200、角速度センサ24からの出力信号202を入力する。また、オフセット値演算部26は、感度係数演算部28から感度係数206も入力する。オフセット値演算部26は、GPS測位データ200、出力信号202、感度係数206をもとに、角速度センサ24のオフセット値(以下、「オフセット値204」という)を算出する。なお、オフセット値演算部26での処理の詳細は後述する。オフセット値演算部26は、オフセット値204を感度係数演算部28、角速度変換部14へ出力する。
感度係数演算部28は、有効性判定部22からのGPS測位データ200、角速度センサ24からの出力信号202を入力する。また、感度係数演算部28は、オフセット値演算部26からオフセット値204も入力する。感度係数演算部28は、所定期間、例えば10秒間にわたって入力された、GPS測位データ200、出力信号202、オフセット値204をもとに、角速度センサ24の感度係数(以下、前述の「感度係数206」という)を算出する。なお、感度係数の演算には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。感度係数演算部28は、感度係数206をオフセット値演算部26、角速度変換部14へ出力する。
角速度変換部14は、角速度センサ24からの出力信号202、オフセット値演算部26からのオフセット値204、感度係数演算部28からの感度係数206を入力する。角速度変換部14は、出力信号202、オフセット値204、感度係数206をもとに、前述の式(1)を計算することによって、車両の角速度ωを算出する。角速度変換部14は、角速度ωを出力する。制御部16は、角速度算出装置100全体の動作を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図3は、オフセット値演算部26の構成を示す。オフセット値演算部26は、状態推定部30、状態別オフセット値導出部32、オフセット値補正部34を含む。また、状態推定部30は、停止推定部40、直進走行推定部42、非直進走行推定部44を含み、状態別オフセット値導出部32は、停止時オフセット値導出部46、直進走行時オフセット値導出部48、非直進走行時オフセット値導出部50を含む。さらに信号として、仮オフセット値210が含まれる。
状態推定部30は、GPS測位データ200、出力信号202を入力する。状態推定部30は、停止推定部40、直進走行推定部42、非直進走行推定部44において、車両の走行状態を推定する。ここでは、車両の走行状態として、車両が停止あるいは直進している状態であるか、残りの状態、つまり非直進走行している状態であるかを推定する。
停止推定部40は、図示しない有効性判定部22において有効であると判定されたGPS測位データ200を取得する。また、停止推定部40は、GPS測位データ200からGPS速度を抽出し、GPS速度が「0」であるかを確認する。一方、停止推定部40は、所定期間内における出力信号202の分散値を計算し、分散値と第4のしきい値とを比較する。停止推定部40は、GPS速度が0であり、かつ分散値が第4のしきい値よりも小さい場合に、車両が停止状態であると判定する。前述のごとく、GPS速度が小さい場合、その精度は低くなる傾向があるが、停止推定部40は、出力信号202の分散値を併せて使用することによって停止と判断する。ここで、所定期間は、例えば、GPS速度のサンプリング間隔である1secとされる。所定期間において、出力信号202の分散値が小さいときは、車両の揺れ等がない安定した状態であると推定される。停止推定部40は、停止状態ではないと判定した場合、その旨を非直進走行推定部44へ出力する。
直進走行推定部42は、図示しない有効性判定部22において有効であると判定されたGPS測位データ200を取得する。また、直進走行推定部42は、GPS測位データ200からGPS方位を抽出し、GPS方位の所定期間にわたる変化(以下、「GPS方位変化」という)を導出する。さらに、直進走行推定部42は、GPS方位変化が「0」であるかを確認する。また、直進走行推定部42は、所定期間における出力信号202の分散値を計算し、分散値と第5のしきい値とを比較する。なお、第5のしきい値は、第4のしきい値と同一であってもよい。ここで、所定期間は、例えば、GPS方位変化が連続して0であるような期間に設定される。
直進走行推定部42は、GPS方位変化が0であり、かつ分散値が第5のしきい値よりも小さい場合に、車両が直進走行状態であると判定する。所定期間において、出力信号202の分散値が小さいときは、微妙な蛇行等の影響がない直進走行状態であると推定される。なお、ドライバの運転状況や道路形状によるが、例えば、市街地等において、直進走行状態の検出頻度は、一般的に、停止推定部40による停止状態の判定よりも少なく、その期間は数秒間程度である。直進走行推定部42は、直進走行状態ではないと判定した場合、その旨を非直進走行推定部44へ出力する。非直進走行推定部44は、停止推定部40から、停止状態ではない旨を入力し、かつ直進走行推定部42から、直進走行状態ではない旨を入力した場合、車両が非直進走行状態であると判定する。
状態別オフセット値導出部32は、GPS測位データ200、出力信号202、感度係数206を入力する。状態別オフセット値導出部32は、状態推定部30において推定した車両の走行状態に応じて、角速度センサ24の仮オフセット値210を逐次導出する。ここで、停止推定部40において停止状態と判定された場合、停止時オフセット値導出部46が出力信号202をもとに仮オフセット値210を逐次導出する。また、直進走行推定部42において直進走行状態と判定された場合、直進走行時オフセット値導出部48が出力信号202をもとに仮オフセット値210を逐次導出する。
また、直進走行時オフセット値導出部48において非直進走行状態と判定された場合、非直進走行時オフセット値導出部50がGPS測位データ200、出力信号202、感度係数206をもとに仮オフセット値210を逐次導出する。つまり、車両の走行状態に応じて停止時オフセット値導出部46から非直進走行時オフセット値導出部50は、GPS測位データ200、出力信号202、感度係数206の組合せを変更しながら、仮オフセット値210を導出する。そのため、停止時オフセット値導出部46、直進走行時オフセット値導出部48、非直進走行時オフセット値導出部50を含んだ状態別オフセット値導出部32がオフセット値導出部であるといえる。
停止時オフセット値導出部46は、停止状態と判定された場合に、出力信号202をもとに、角速度センサ24の仮オフセット値210を逐次導出する。具体的に説明すると、停止時オフセット値導出部46は、停止時に車両の旋回角速度が「0」になることを利用し、出力信号202の平均値を仮オフセット値210として算出する。直進走行時オフセット値導出部48は、直進走行状態と判定された場合に、出力信号202をもとに、角速度センサ24の仮オフセット値210を逐次導出する。具体的に説明すると、ここでも車両の旋回角速度が0であるので、直進走行時オフセット値導出部48は、出力信号202の平均値を仮オフセット値210として算出する。
非直進走行時オフセット値導出部50は、非直進走行状態であると判定された場合に、GPS測位データ200中のGPS方位、出力信号202、感度係数206とをもとに、例えば、GPS方位のサンプリング間隔における仮オフセット値210を逐次導出する。仮オフセット値210は、次のように導出される。
Goffset=1/n・ΣGout−Δθ・Gsensitivity・・・(2)
ここで、nは、GPS方位のサンプリング間隔における出力信号202のサンプル数であり、ΣGout(mV)は、GPS方位のサンプリング間隔における出力信号202の合計値である。また、Δθ(deg)は、GPS方位変化量であり、Gsensitivity(mV/deg/sec)は、感度係数206である。
感度係数206は、通常、図示しない感度係数演算部28から入力されるが、角速度算出装置100の起動直後などのような状態において、感度係数206が未だ算出されていないこともありえる。そのような場合、非直進走行時オフセット値導出部50は、図示しないジャイロ装置の仕様によって決定される感度係数206を初期値として使用する。また、非直進走行時オフセット値導出部50は、前回の走行終了時に感度係数演算部28からの感度係数206を記憶しておき、初期値として使用してもよい。
オフセット値補正部34は、状態別オフセット値導出部32において逐次導出した仮オフセット値210を入力する。オフセット値補正部34は、仮オフセット値210の時間に対する変化を検出するとともに、検出結果にもとづいて統計処理を実行することによって、角速度センサ24のオフセット値204を導出する。以下では、図4を使用しながら、オフセット値補正部34での処理を説明する。
図4は、オフセット値補正部34の構成を示す。オフセット値補正部34は、平均値算出部60、差分絶対値算出部62、傾き絶対値算出部64、オフセット値フィルタ処理部66を含む。また、信号として、差分絶対値212、傾き絶対値214が含まれる。
平均値算出部60は、仮オフセット値210を入力する。平均値算出部60は、入力した仮オフセット値210に対する期間Taでの移動平均を計算することによって、仮オフセット値210の平均値を算出する。期間Taとは、例えば、5[秒]等であり、車両に取り付けられた角速度算出装置100内の温度の変化が大きくなく、角速度センサ24のオフセットの温度による変動が微小であるような期間が設定される。平均値算出部60は、算出した平均値Va[V]を差分絶対値算出部62へ逐次出力する。
差分絶対値算出部62は、平均値算出部60から平均値Va[V]を逐次入力する。差分絶対値算出部62は、逐次入力した平均値Va[V]の差分の絶対値を算出する。具体的に説明すると、差分絶対値算出部62は、平均値を少なくとも期間Taにわたって保持し、入力した平均値と期間Ta以前に入力した平均値との差分の絶対値を算出する。差分絶対値算出部62は、算出した絶対値|Va’−Va|[V](以下、「差分絶対値212」ともいう)をオフセット値フィルタ処理部66へ逐次出力する。なお、Va’は以前の平均値を示す。
傾き絶対値算出部64は、仮オフセット値210を入力する。また、傾き絶対値算出部64は、入力した仮オフセット値210と、図示しないマイクロコンピュータ等に備わっている計時機能から取得される起動後の経過時間とを関連付けて、期間Tsにわたってリングバッファ等に記憶する。期間Tsとは、期間Taよりも大きい値であり、例えば、10秒等である。傾き絶対値算出部64は、時間と仮オフセット値210に対し関数近似し、仮オフセット値210の傾きを算出する。傾き絶対値算出部64は、例えば、時間をX軸、仮オフセット値をY軸として、最小二乗法を用いて一次関数で近似する。最小二乗法を適用すると、仮オフセット値210の傾きγn(V/sec)は次のように算出される。
ここで、mは仮オフセット値210のサンプル数、t[sec]は時間、Ofs[V]は仮オフセット値210である。傾き絶対値算出部64は、算出した仮オフセット値210の傾きの絶対値|γn|(V/sec)(以下、「差分絶対値212」ともいう)をオフセット値フィルタ処理部66へ逐次出力する。
オフセット値フィルタ処理部66は、仮オフセット値210、差分絶対値212、傾き絶対値214を入力する。オフセット値フィルタ処理部66は、仮オフセット値210に対して統計処理を実行することによって、角速度センサ24から出力された角速度を補正するためのオフセット値204を導出する。その際、オフセット値フィルタ処理部66は、差分絶対値212、傾き絶対値214をもとに、統計処理において使用する忘却係数を導出する。オフセット値フィルタ処理部66の構成を説明するために、ここでは図5を使用する。
図5は、オフセット値フィルタ処理部66の構成を示す。オフセット値フィルタ処理部66は、αi乗算部70、加算部72、1−αi乗算部74、忘却係数制御部76を含む。図示のごとく、オフセット値フィルタ処理部66は、IIR(Infinite Impulse Responce)フィルタを含むように構成されており、IIRフィルタによってローパスフィルタを構成する。αi乗算部70は、仮オフセット値210に忘却係数「αi」を乗算する。ここで、「i」は、1あるいは2である。そのため、忘却係数「αi」は、α1、α2の総称である。なお、α1およびα2については後述する。αi乗算部70は、乗算結果を加算部72へ出力する。
加算部72は、αi乗算部70からの乗算結果と、1−αi乗算部74からの乗算結果とを逐次加算する。加算部72は、加算結果をオフセット値204として逐次出力する。1−αi乗算部74は、オフセット値204に係数「1−αi」を乗算する。なお、係数「1−αi」のうちの「αi」は、αi乗算部70でのαiと同様であるので、ここでは説明を省略する。1−αi乗算部74は、加算部72へ乗算結果をフィードバックする。
忘却係数制御部76は、差分絶対値算出部62からの差分絶対値212と、傾き絶対値算出部64から傾き絶対値214とを入力する。また、忘却係数制御部76は、差分絶対値212と傾き絶対値214に応じて、忘却係数「αi」の値を決定する。さらに、忘却係数制御部76は、決定した忘却係数「αi」をαi乗算部70および1−αi乗算部74へ設定する。ここでは、忘却係数「αi」の値を決定するための処理を詳細に説明する。忘却係数制御部76は、テーブルを保持しており、当該テーブルを参照することによって忘却係数「αi」の値を決定する。
図6は、忘却係数制御部76において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、絶対値条件欄500、傾き条件欄502、忘却係数欄504が含まれる。絶対値条件欄500には、忘却係数を決定するための差分絶対値212に対する条件として、「Vth以上」、「Vth未満」が示されている。ここで、「Vth」は差分絶対値212に対するしきい値であり、これには、仮オフセット値210に含まれるノイズによる変動幅以上の値が設定される。また、傾き条件欄502には、忘却係数を決定するための傾き絶対値214に対する条件として、「γth以上」、「γth未満」が示されている。ここで、「γth」は傾き絶対値214に対するしきい値であり、これには、例えば、あらかじめ測定した、角速度算出装置100の起動後数秒間の温度変動に対する仮オフセット値210の傾きの絶対値以上の値が設定される。忘却係数欄504には、各条件に対応した忘却係数「αi」を記憶する。「α1>α2」である。また、差分絶対値212に対する条件が「Vth以上」である場合、忘却係数は「ゼロ」に設定される。図5に戻る。
このように忘却係数制御部76は、時間経過に対する角速度センサ24の仮オフセット値210の変化の傾きである傾き絶対値214が大きくなるほど大きくなるような忘却係数を統計処理のために設定する。特に、忘却係数制御部76は、テーブルを参照しながら、忘却係数「α1」あるいは「α2」を選択する。また、忘却係数制御部76は、傾き絶対値214を導出するための第1期間Tsよりも短い第2期間Taにおいて、角速度センサ24の仮オフセット値210の変化の絶対値である差分絶対値212がしきい値以上である場合に、忘却係数をゼロに設定する。
図7を使用しながらオフセット値補正部34に入力される仮オフセット値210に対する差分の絶対値と傾きの絶対値を説明する。図7は、オフセット値補正部34による処理の概要を示す。図示のごとく、オフセット値補正部34に入力される仮オフセット値210においてステップ状のシフトが発生している。ここでは、時間A[秒]付近において、仮オフセット値がステップ状にシフトしている。平均値算出部60は、時間A[秒]前後の期間Taにおける仮オフセット値210の平均値V1と平均値V2を算出する。また、差分絶対値算出部62は、絶対値|V1−V2|を算出する。さらに、傾き絶対値算出部64は、期間Tsにおける仮オフセット値210の傾きを算出する。オフセット値補正部34は、絶対値|V1−V2|が「Vth」未満、かつ、傾きの絶対値が「γth」以上であった場合に、仮オフセット値210に発生したステップ状のシフトを検出する。このとき、忘却係数制御部76は、忘却係数「α1」を選択し、現在の仮オフセット値210の重みを大きくするので、シフトした後の真のオフセット値に追随することができる。
以上の構成による角速度算出装置100の動作を説明する。図8は、角速度算出装置100によるオフセット値の導出手順を示すフローチャートである。差分絶対値212がVthよりも小さく(S10のY)、傾き絶対値214がγth以上である場合(S12のY)、忘却係数制御部76は、忘却係数にα1を設定する(S14)。傾き絶対値214がγth以上でない場合(S12のN)、忘却係数制御部76は、忘却係数にα2を設定する(S16)。差分絶対値212がVthよりも小さくない場合(S10のN)、忘却係数制御部76は、忘却係数にゼロを設定する(S18)。
本発明の実施例によれば、角速度センサの仮のオフセット値の変化の傾きが大きくなるほど大きくなるような忘却係数を統計処理のために設定するので、仮のオフセット値の変化の傾きが大きい場合に現在の仮のオフセット値の影響を大きくできる。また、仮のオフセット値の変化の傾きが大きい場合に現在の仮のオフセット値の影響が大きくなるので、オフセット値の変動に追従できる。また、オフセット値の変動に追従するので、角速度センサのオフセット値が急激に変化する場合でも角速度の導出精度の低下を抑制できる。
また、角速度センサの仮のオフセット値の変化の傾きが大きくなるほど大きくなるような忘却係数を統計処理のために設定するので、仮のオフセット値の変化の傾きが小さい場合に過去の仮のオフセット値の影響を大きくできる。また、仮のオフセット値の変化の傾きが小さい場合に過去の仮のオフセット値の影響が大きくなるので、雑音の影響を低減できる。また、雑音の影響が低減するので、角速度の導出精度の低下を抑制できる。
また、忘却係数を変化させるので、角速度センサの変動に適合したフィルタ処理を実現できる。また、角速度センサの変動に適合したフィルタ処理が実現されるので、角速度の導出精度を向上できる。また、短期間の仮のオフセット値の変化の絶対値がしきい値以上である場合に、忘却係数をゼロに設定するので、想定していない変化を無視できる。また、想定していない変化が無視されるので、角速度の導出精度の低下を抑制できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、有効性判定部22は、GPS測位データ200の有効性を判定するために、PDOPを使用している。しかしながらこれに限らず例えば、有効性判定部22は、GDOP(Geometric Dilution Of Precision)、HDOP(Horizontal Dilution Of Precision)等や、これらの組合せを使用してもよい。本変形例によれば、さまざまなパラメータを判定に使用できる。
本発明の実施例において、オフセット値フィルタ処理部66は、IIRフィルタを含むように形成されている。しかしながらこれに限らず例えば、オフセット値フィルタ処理部66は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを含むように形成されていてもよい。その際、忘却係数は、タップ係数として設定される。本変形例によれば、フィルタ構成の自由度を向上できる。
本発明の実施例において、忘却係数制御部76は、忘却係数としてゼロ以外に2種類の値を設定する。しかしながらこれに限らず例えば、忘却係数制御部76は、忘却係数としてゼロ以外に3種類以上の値を設定してもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。