JP6701977B2 - フィルター - Google Patents

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Description

本発明は、フィルターに関する。具体的には、本発明は、臭気発生物質等を吸着する機能を有するフィルターに関する。
消臭の原理は、目的とする臭気発生物質を吸着剤に吸着させることにある。臭気発生物質は主に気体(ガス)であり、吸着剤は固体であるため、消臭は固体表面へガスが吸着することによって行われる。従来使用されている吸着剤は種々あるが、例えば、活性炭、ゼオライト、セラミックス、金属微粒子等が知られている。中でも、活性炭や金属微粒子は代表的な吸着剤であり、このような吸着剤を担持した消臭材が使用されている。
消臭材としてはシート状の消臭シートも多用されており、このような消臭シートは、活性炭や金属ナノ粒子を表面に付着させた繊維や、活性炭や金属ナノ粒子を練り込んだ繊維をシート状にすることによって形成されている。例えば特許文献1では、アクリル繊維等の合成繊維に金属微粒子を担持させることにより、消臭機能を有する繊維を製造することが検討されている。
特開平9−241967号公報
活性炭は、優れた臭気発生物質吸着効果を発揮し得る物質として用いられているが、近年は金属微粒子を担持させた臭気発生物質吸着材も注目されている。また、近年は消臭機能や腐食性ガス除去機能を有するフィルターの需要も高まってきており、金属微粒子を有する繊維から構成されるフィルターの開発も進められている。このような背景の下、本発明者らは、臭気発生物質吸着効果を有するフィルターの開発を検討している。
しかしながら、このようなフィルターにおいては、さらなる臭気発生物質吸着効果の発揮が求められている。一方で、フィルターには、耐水性が求められる場合もある。
そこで本発明者らは、臭気発生物質吸着効果と耐水性のバランスに優れたフィルターを提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、イオン性置換基を有するパルプを主成分として、金属成分を担持させることにより、臭気発生物質吸着効果と耐水性のバランスに優れたフィルターが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] イオン性置換基を有するパルプを主成分として含み、金属成分をさらに含むフィルター。
[2] パルプが有するイオン性置換基の含有量が0.1mmol/g以上である[1]に記載のフィルター。
[3] 金属成分は、金属イオン及び金属微粒子から選択される少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載のフィルター。
[4] イオン性置換基は、カルボキシル基及びリン酸基から選択される少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルター。
[5] 坪量が25g/m2以上である[1]〜[4]のいずれかに記載のフィルター。
[6] 金属成分の含有量はフィルターの全質量に対して0.5質量%以上である[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルター。
[7] 水へ浸漬する前のフィルターの硫化水素ガス吸着率をA1とし、水へ浸漬した直後のフィルターの硫化水素ガス吸着率をA2とした場合、A2/A1の値が0.8以上である[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルター。
本発明によれば、臭気発生物質吸着効果と耐水性のバランスに優れたフィルターを得ることができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
(フィルター)
本発明は、イオン性置換基を有するパルプを主成分として含み、金属成分をさらに含むフィルターに関する。本発明のフィルターは、イオン性置換基を有するパルプを主成分として含むものであるから、金属成分の担持量が多い。このため、本発明のフィルターはより優れた臭気発生物質吸着効果を発揮することができる。さらに、本発明のフィルターは、耐水性にも優れている。すなわち、本発明のフィルターは、水に浸漬した後であっても優れた臭気発生物質吸着効果を発揮することができ、高湿度条件下における使用にも適している。このようなフィルターは、たとえば消臭フィルターや腐食性ガス除去フィルターなどとして用いることができる。
本発明のフィルターは湿式抄紙シートからなるフィルターであることが好ましい。具体的には、イオン性置換基を有するパルプと金属成分とを分散させたパルプスラリーを湿式抄紙法にて抄紙し、乾燥させることにより不織布シート状のフィルターとなる。本発明では、フィルターを湿式抄紙法により製造することにより、生産効率を高めることができ、製造コストを抑制することができる。
<パルプ>
本発明のフィルターはイオン性置換基を有するパルプを主成分として含む。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプを挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。パルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点から、セルロースを含む木材パルプや脱墨パルプを用いることが好ましい。
本発明で用いるイオン性置換基を有するパルプの繊維幅は1000nmよりも大きいものである。フィルターには、イオン性置換基を有するパルプが主成分として含まれる。ここで、イオン性置換基を有するパルプが主成分として含まれる状態とは、フィルターの全質量に対して、パルプの絶乾質量が50質量%以上であることをいう。パルプの含有量は、フィルターの全質量に対して、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
イオン性置換基を有するパルプはイオン性置換基を有するセルロースであることが好ましく、イオン性置換基を有するセルロースの繊維幅は1000nmよりも大きいものであることが好ましい。また、このようなセルロースの含有量(絶乾質量)は、フィルターの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
なお、本発明のフィルターには、繊維幅が1000nm以下の微細繊維状セルロースが含まれていてもよい。フィルターに微細繊維状セルロースが含まれる場合は、微細繊維状セルロースの含有量は、繊維原料の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。また、フィルターにイオン性置換基を有さないパルプが含まれる場合は、イオン性置換基を有さないパルプの含有量は、繊維原料の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
ここで、パルプの繊維幅は、電子顕微鏡観察によって以下の方法で測定することができる。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下のパルプ水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。この際、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。
パルプの平均繊維長は特に限定されないが、0.1mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。また、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。パルプの平均繊維長を上記範囲内とすることにより、フィルターの強度を高めることができる。
ここで、パルプの平均繊維長は、例えば、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用い、長さ加重平均繊維長を測定することにより求めることができる。また、繊維の長さに応じて走査型顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を用いて測定することもできる。
パルプはイオン性置換基を有する。イオン性置換基は、パルプが持つ水酸基の少なくとも一部を置換する。パルプがセルロース繊維である場合、セルロースが有する水酸基の少なくとも一部がイオン性置換基によって置換される。パルプは水酸基含有量が多いため、イオン性置換基の導入量を高めることができ、その結果イオン性置換基と結合し得る金属成分の担持量を多くすることができる。
イオン性置換基は、アニオン性置換基であることが好ましい。アニオン性置換基としては、例えば、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある。)、カルボキシル基又はカルボキシル基に由来する置換基(単にカルボキシル基ということもある。)、及び、スルホン基又はスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある。)から選択される少なくとも1種の置換基を挙げることができる。中でもアニオン性置換基は、カルボキシル基及びリン酸基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基であることがより好ましい。リン酸基は、金属成分との結合部位が他のイオン性置換基に比べて多くなるため、金属成分担持量を効果的に増やすことができる。
本明細書においては、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するパルプをリン酸化パルプと呼ぶことがある。また、カルボキシル基を有するパルプをカルボン酸化パルプと呼ぶことがある。すなわち、本発明で用いるパルプは、リン酸化パルプ及びカルボン酸化パルプから選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸化パルプであることがさらに好ましい。
カルボン酸化パルプにはTEMPOおよび次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤等で酸化することによって調製されるTEMPO酸化パルプが含まれる。また、カルボン酸化パルプには、ジカルボン酸エステル化パルプが含まれ、ジカルボン酸エステル化パルプとしては、無水マレイン酸への付加によって調製されるマレイン酸化パルプが挙げられる。
リン酸化パルプにおけるリン酸基はリン酸からヒドロキシル基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO32で表される基である。リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮重合した基、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれ、イオン性置換基であることが好ましい。
本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であってもよい。
Figure 0006701977
式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1以上n以下の整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。
パルプが有するイオン性置換基の含有量は、パルプ1g(質量)あたり0.1mmol/g以上であることが好ましく、0.2mmol/g以上であることがより好ましく、0.5mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.0mmol/g以上であることが特に好ましく、1.2mmol/g以上であることが最も好ましい。また、イオン性置換基の含有量は、3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.5mmol/g以下であることがより好ましく、3.0mmol/g以下であることがさらに好ましい。パルプが有するイオン性置換基の含有量を上記範囲内にすることにより、金属成分の担持量を増やすことができ、より優れた臭気発生物質吸着効果を発揮することができる。
パルプへのリン酸基の導入量は、TAPPI T237 cm−08(2008)を応用して算出できる。具体的には、パルプに導入された酸性基の導入量をより広範囲まで算出可能にするために、上記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液を、水酸化ナトリウム1.60gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液に変更し、さらに置換基導入前後の繊維における算出値の差を実質的な置換基導入量とする以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じて算出する。なお、当該酸性基導入量算出方法は、基本的には1価の酸性基(カルボキシ基)の導入量算出方法であることから、多価の酸性基であるリン酸基の導入量の算出については、1価の酸性基の導入量として得られた上記置換基導入量を、リン酸基の酸価数で除した数値を、リン酸の基の導入量とする。
また、パルプへのカルボキシル基の導入量は、以下の手法により評価できる。
乾燥重量を精秤したパルプから0.5〜1質量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式を用いて官能基量を決定する。該官能基量がカルボキシル基の量を示す。
官能基量(mmol/g)=V(ml)×0.05/パルプの質量(g)
<金属成分>
本発明のフィルターは、金属成分を含む。金属成分は金属イオン及び金属微粒子から選択される少なくとも1種であることが好ましい。金属成分は、スラリー中では、金属イオンとして存在することが好ましく、この場合、フィルター中では金属成分は、金属イオン及び/又は金属微粒子として存在する。金属イオンは、パルプが有するイオン性置換基とイオン結合や配位結合、水素結合を形成するため、フィルターからの脱落が少なく、金属成分の担持量を高く維持することができる。これにより、より優れた臭気発生物質吸着効果を発揮することができる。結合の状態は、たとえばX線光電子分光分析もしくは赤外光分析により解析できる。
金属種としては、例えば、Cu、Fe、Ni、Zn、Ag、Ti、Co、Al、Cr、Pb、Sn、In、Zr、Mo、Mn、Cd、Bi、Mgを挙げることができる。中でも、金属種は、Cu及びAgから選択される少なくとも1種であることが好ましく、Cuであることが特に好ましい。金属種としてCuを選択した場合、臭気発生物質吸着能が残存しているか否かを呈色により示すことが可能となる。例えば、Cuは臭気発生物質を吸着する前は、青色を呈しているが、硫化水素ガス、二酸化硫黄等の臭気発生物質を吸着した後には褐色に変色するため、フィルターの色味によって臭気発生物質吸着機能がどの程度残っているか判別することができ、フィルターの交換時期を使用者や管理者に知らせることもできる。
金属成分を担持させるためには、フィルターを抄紙する際にパルプスラリーに金属及び/又は金属の酸化物、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、リン酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、沃素酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩、タングステン酸塩、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、アンチモン酸塩、安息香酸塩、ジカルボン酸塩を添加する。金属塩は水和物であってもよい。中でも、金属又は金属塩を添加することが好ましく、金属塩は硫酸塩であることがより好ましい。
金属成分の含有量(金属成分担持量)はフィルターの全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、4質量%以上であることがよりさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。金属成分の含有量の上限値は特に制限されるものではないが、金属成分の脱落を防止する観点から、30質量%とすることができる。金属成分の含有量を上記範囲内とすることにより、より優れた臭気発生物質吸着効果を発揮することができる。
金属成分の含有量(金属成分担持量)は高周波誘導プラズマ発光法(ICP)を用いて測定することができる。具体的には以下の手順で測定することができる。
(1)前処理(フィルターの密閉式湿式分解)
まず、フィルターサンプルをセラミック製はさみで2mm以上5mm以下角のサイズに断裁し、断裁した試料から0.5gを正確に測りとり、525℃で4時間灰化する。これを密閉式フッ素樹脂加工容器に移し、硝酸5mlで湿式分解させる。その後、フッ素樹脂加工容器内の分解溶液を遠沈管に洗い移し、これを0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したのち、全量を蒸留水で洗い、フラスコ中で蒸留水を加えて50mlに定容とする。
(2)高周波誘導プラズマ発光法(ICP)による測定
前処理した試料溶液中の金属濃度を、ICP−OES(アメテック社製、型式:CIROS120)を用いて測定する。なお、定量に際しては予め、含有量既知の金属塩標準液を用いて検量線を作製しておき、含有量(質量%)を算出する。
<フィルターの物性>
本発明のフィルターの坪量は、25g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることがより好ましく、60g/m2以上であることがさらに好ましく、80g/m2以上であることがよりさらに好ましく、90g/m2以上であることが特に好ましい。また、フィルターの坪量は1000g/m2以下であることが好ましい。フィルターの坪量を上記範囲内とすることにより、フィルターとして臭気発生物質吸着効果を発揮しやすくなり、フィルターとして用いる際に必要とされる強度を確保することができる。
本発明のフィルターの厚みは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。また、フィルターの厚みは、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることがさらに好ましい。
本発明のフィルターの密度は、0.01g/cm3以上であることが好ましく、0.015g/cm3以上であることがより好ましく、0.02g/cm3以上であることがさらに好ましい。また、フィルターの密度は、1.0g/cm3以下であることが好ましい。
フィルターの厚み及び密度を上記範囲内とすることにより、フィルターとして臭気発生物質吸着効果を発揮しやすくなり、フィルターとして用いる際に必要とされる強度を確保することができる。
本発明のフィルターは臭気発生物質の吸着能が高い点に特徴がある。例えば、本発明のフィルターの硫化水素ガスの吸着率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。上記の硫化水素ガスの吸着率は以下のようにして算出した値である。
まず、10Lの2つ口コック付きガスバックに、フィルターを0.3g入れ、4ppm(初期濃度)に調整した硫化水素ガスを5L封入する。次いで、ガスバックの2つのコックと流量1.4mL/minのエアーポンプとを接続し、ガスバック内の硫化水素ガスを循環させる。循環を開始した点を試験の開始時(0分経過時)とし、この時点における硫化水素ガスの濃度(ppm)を測定する。そして、循環開始時から30分経過後の硫化水素ガス濃度(ppm)を検知管にて測定し、以下の式よりフィルターの硫化水素ガス吸着率A1を算出する。
吸着率A1(%)=[初期硫化水素ガス濃度(ppm)−試験開始時から30分後の硫化水素ガス濃度(ppm)]/初期硫化水素ガス濃度(ppm)×100
上記吸着率は、水へ浸漬する前のフィルターの硫化水素ガス吸着率A1である。本発明では、さらに、水へ浸漬した直後のフィルターの硫化水素ガス吸着率をA2とした場合に、A2/A1の値は0.8以上であることが好ましい。A2/A1の値は0.9以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。すなわち、本発明のフィルターにおいては、フィルターを水に浸漬した後であっても、浸漬をする前の吸着率と同等、もしくはそれ以上の吸着率を達成することができる。このように本発明のフィルターは耐水性に優れており、水浸漬後においても優れた吸着率を発揮することができる。
なお、水に浸漬した直後のフィルターの硫化水素ガス吸着率A2は、フィルター全体を水中に1分間浸漬し、余分な水分をろ紙でふき取った直後(10分以内)の吸着率であり、上記吸着率A1の測定と同様の方法で測定する。
本発明のフィルターにおいては、坪量を40g/m2以上とし、かつイオン性置換基をリン酸基とすることにより、フィルターの難燃性を高めることもできる。フィルターの難燃性は、JIS A 1322に拠って測定することができ、本発明のフィルターは防炎2級以上であることが好ましい。
(フィルターの製造方法)
本発明に係るフィルターの製造工程は、イオン性置換基をパルプに導入する工程と、パルプを用いてシートを形成する工程と、を含む。各工程について以下で詳細に説明する。
<イオン性置換基導入工程>
イオン性置換基をパルプに導入する工程は、化学的処理工程と呼ぶこともできる。化学的処理としては、例えば、酸処理、オゾン処理、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル)酸化処理、リン酸化処理、酵素処理、パルプ中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられる。
酸処理の一例としては、Otto van den Berg; Jeffrey R. Capadona; Christoph Weder;
Biomacromolecules 2007, 8, 1353-1357.に記載されている方法を挙げることができる。具体的には、硫酸や塩酸等によりパルプを加水分解処理する。
オゾン処理の一例としては、特開2010−254726号公報に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。
TEMPO酸化の一例としては、Saito T & al. Homogeneous suspensions of individualized microfibrils from TEMPO-catalyzed oxidation of native cellulose. Biomacromolecules 2006, 7 (6), 1687-91に記載されている方法を挙げることができる。
酵素処理の一例としては、WO2013/176033号公報(WO2013/176033号公報に記載の内容は全て本願明細書中に引用されるものとする)に記載の方法を挙げることができるが、特に限定されない。
パルプ中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理としては、国際公開WO2013/073652(PCT/JP2012/079743)に記載されている「構造中にリン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸またはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物」を使用する方法を挙げることができる。
なお、本発明のフィルターは、カルボキシル基及びリン酸基から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。このため、化学的処理の方法としては、カルボキシル基を有する化合物及び/又はその塩による処理(カルボキシル基導入工程)又はリン酸基を有する化合物及び/又はその塩による処理(リン酸基導入工程)を行うことが好ましい。
<リン酸基導入工程>
リン酸基導入工程では、パルプに対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(以下、「リン酸化剤」又は「化合物A」ともいう)を反応させることにより行うことができる。このようなリン酸化剤は、乾燥状態または湿潤状態のパルプ原料に粉末や水溶液の状態で混合してもよい。また別の例としては、パルプ原料のスラリーにリン酸化剤の粉末や水溶液を添加してもよい。すなわち、リン酸基導入工程は、少なくとも、パルプとリン酸化剤を混合する工程を含む。
リン酸基導入工程は、パルプにリン酸化剤を反応させることにより行うことができるが、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。
化合物Aを化合物Bの共存下でパルプに作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態のパルプに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を混合する方法が挙げられる。また別の例としては、パルプスラリーに化合物A及び化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態のパルプに化合物Aおよび化合物Bの水溶液を添加する方法、または湿潤状態のパルプに化合物Aおよび化合物Bの粉末や水溶液を添加する方法が好ましい。また、化合物Aと化合物Bは同時に添加してもよいし、別々に添加してもよい。また、初めに反応に供試する化合物Aと化合物Bを水溶液として添加して、圧搾により余剰の薬液を除いてもよい。パルプの形態は綿状や薄いシート状であることが好ましいが、特に限定されない。
リン酸化剤(化合物A)は、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種である。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩などが挙げられるが、特に限定されない。リン酸のリチウム塩としては、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、またはポリリン酸リチウムなどが挙げられる。リン酸のナトリウム塩としてはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはポリリン酸ナトリウムなどが挙げられる。リン酸のカリウム塩としてはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、またはポリリン酸カリウムなどが挙げられる。リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられる。中でも、リン酸、リン酸のナトリウム塩、またはリン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩は好ましく用いられる。
反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率がより高くなることからリン酸化剤(化合物A)は水溶液として用いることが好ましい。リン酸化剤(化合物A)の水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基の導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3以上pH7以下がさらに好ましい。化合物Aの水溶液のpHは例えば、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものとアルカリ性を示すものを併用し、その量比を変えて調整してもよい。リン酸化剤(化合物A)の水溶液のpHは、リン酸基を有する化合物のうち、酸性を示すものに無機アルカリまたは有機アルカリを添加すること等により調整してもよい。
パルプ原料に対するリン酸化剤(化合物A)の添加量は特に限定されないが、リン酸化剤(化合物A)の添加量をリン原子量に換算した場合、パルプ原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量は0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましく、2質量%以上30質量%以下が最も好ましい。パルプ原料に対するリン原子の添加量が上記範囲内であれば、リン酸化パルプの収率をより向上させることができる。パルプ原料に対するリン原子の添加量を100質量%以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。一方、パルプに対するリン原子の添加量を上記下限値以上とすることにより、収率を高めることができる。
本実施態様で使用する化合物Bとしては、尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、1−エチル尿素などが挙げられる。
化合物Bは化合物A同様に水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性が高まることから化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。パルプ(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましく、150質量%以上300質量%以下であることが特に好ましい。
化合物Aと化合物Bの他に、アミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、特にトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リン酸基導入工程は、さらに加熱をする工程(以下、加熱処理工程ともいう)を有することが好ましい。加熱処理工程における加熱処理温度は、パルプの熱分解や加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。
加熱処理の際、化合物Aを添加したパルプスラリーに水が含まれている間において、パルプを静置する時間が長くなると、乾燥に伴い水分子と溶存する化合物Aがパルプ原料表面に移動する。そのため、パルプ原料中の化合物Aの濃度にムラが生じる可能性があり、パルプ表面へのリン酸基の導入が均一に進行しない恐れがある。乾燥によるパルプ原料中の化合物Aの濃度ムラ発生を抑制するためには、ごく薄いシート状のパルプ原料を用いるか、ニーダー等でパルプ原料と化合物Aを混練又は撹拌しながら加熱乾燥又は減圧乾燥させる方法を採ればよい。
加熱処理に用いる加熱装置としては、スラリーが保持する水分及びリン酸基などの繊維の水酸基への付加反応で生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましく、例えば送風方式のオーブン等が好ましい。装置系内の水分を常に排出すれば、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、パルプ中の糖鎖の酸加水分解を抑制することができる。
加熱処理の時間は、加熱温度にも影響されるがパルプスラリーから実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本発明では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
<アルカリ処理工程>
リン酸基導入工程の後には、アルカリ処理工程を設けることが好ましい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、リン酸化パルプを浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、特に限定されないが、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよい。溶媒は、極性溶媒(水、またはアルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、水系溶媒であってもよい。また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が特に好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は特に限定されないが、5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上60℃以下がより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液への浸漬時間は特に限定されないが、5分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は特に限定されないが、リン酸化パルプの絶乾質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸化パルプを水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、アルカリ処理済みリン酸化パルプを水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
<カルボキシル基導入工程>
カルボキシル基導入工程では、カルボン酸由来の基を有する化合物を用いることで、カルボキシル基を導入することができる。また、Saito T & al. Homogeneous suspensions of individualized microfibrils from TEMPO-catalyzed oxidation of native cellulose. Biomacromolecules 2006, 7 (6), 1687-91に記載されている方法でTEMPO酸化を行うことも好ましい。
カルボキシル基導入工程の後には、上述したアルカリ処理工程を設けることが好ましい。
<シート形成工程>
パルプを用いてシートを形成する工程においては、シートの性質や形状などに応じて形成方法を適宜選択し得る。本実施形態においては、たとえば湿式抄紙法、乾式抄紙法などの方法を採用することが可能である。得られるシートとしては、たとえば紙、不織布、編織物、フェルトなどとすることができる。
本実施形態においては、たとえばシートを形成する前のパルプに金属成分を混合してもよく、形成されたシートに対して金属成分を添加してもよい。シートを形成する前のパルプに金属成分を混合する方法としては、たとえば湿式抄紙法に用いられるパルプスラリーに金属成分を添加する方法などが挙げられる。形成されたシートに対して金属成分を添加する方法としては、たとえば得られたシートを、金属成分を含む溶液中に浸漬させる方法などが挙げられる。
パルプを用いてシートを形成する工程は、湿式抄紙法によりシートを形成する工程であってもよい。以下では、湿式抄紙法によりシートを形成する場合の一例を説明する。
湿式抄紙工程では、上述した工程で得られたイオン性置換基を有するパルプにイオン交換水を添加して、パルプスラリーとする。湿式抄紙法を採用する場合は、このパルプスラリーに金属成分を撹拌しながら添加することが好ましい。ここで、添加する金属成分としては、上述した金属成分を挙げることができる。
金属成分は、固形分濃度が2.0質量%のパルプスラリーの全質量に対して、5質量%以上となるように添加されることが好ましく、10質量%以上となるように添加されることがより好ましく、30質量%以上となるように添加されることがさらに好ましく、50質量%以上となるように添加されることが特に好ましい。金属成分は、パルプスラリー中では金属イオンとなる成分であることが好ましく、この場合、金属成分は、パルプスラリー中の金属イオンの濃度が1質量%以上となるように添加されることが好ましく、3質量%以上となるように添加されることがより好ましく、5質量%以上となるように添加されることがより好ましい。
次いで、金属成分を含有するパルプスラリーは、湿式抄紙工程に供される。湿式抄紙工程で用いられる抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー型抄紙機、単網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。また、手抄き装置を用いて抄紙を行ってもよい。
本実施形態において、得られたシートは、たとえばプリーツ加工、ハニカム加工など、不織布や紙を加工する際に一般的に用いられる方法によって所望の形態に加工されてもよい。これにより、用途に応じた形態を有するフィルターが得られることとなる。
(用途)
本発明のフィルターは、主に、空気清浄用に使用される。例えば、車両用エアコン、家庭用・業務用エアコン等の空気取り入れ口に取り付けられるエアフィルター;自動車などの内燃機関のエンジン吸入部に取り付けられるエアフィルター;クリーンルームに使用されるエアフィルター;腐食性ガスが発生する化学工場、火山・温泉地域、バイオマス処理・ごみ処理施設、排水処理施設に使用されるエアフィルター;製紙工場や化学工場など、硫化水素による腐食トラブルが発生する電気室や事務所内の配電盤用フィルター等に好適に使用される。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、実施例5及び6はそれぞれ、参考例5及び6と読み替えるものとする。
(実施例1)
[リン酸化]
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。得られたリン酸化パルプ(絶乾質量)100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。得られたリン酸化パルプは、リン酸基の導入量が1.7mmol/gであった。
なお、リン酸基の導入量は、TAPPI T237 cm−08(2008)を応用して算出した。具体的には、リン酸化パルプに導入された酸性基の導入量をより広範囲まで算出可能にするために、上記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液を、水酸化ナトリウム1.60gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液に変更し、さらに置換基導入前後の繊維における算出値の差を実質的な置換基導入量とした以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じて算出した。なお、上記酸性基導入量算出方法は、1価の酸性基の導入量算出方法であることから、多価の酸性基であるリン酸基の導入量の算出については、1価の酸性基の導入量として得られた上記置換基導入量を、リン酸基の酸価数で除した数値を、リン酸の基の導入量とした。
[アルカリ処理及び洗浄]
次いで、リン酸基を導入したパルプ100gに5000mlのイオン交換水を加え、撹拌洗浄後、脱水した。脱水後のパルプを5000mlのイオン交換水で希釈し、撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが12以上13以下になるまで少しずつ添加して、パルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、5000mlのイオン交換水を加えて洗浄を行った。この脱水洗浄をさらに1回繰り返した。
[金属イオン担持及び有害物質吸着フィルターの作製]
洗浄脱水後に得られたパルプにイオン交換水を添加して、固形分濃度が2.0質量%のパルプスラリーとした。次いで、このパルプスラリーを300rpmで攪拌しながら、硫酸銅(5水和物)をパルプスラリーに含まれる固形分に対して63質量%となるように添加し、30分攪拌を行い、金属成分として銅イオンを担持したパルプを含むパルプスラリーを得た。なお、パルプスラリー中の銅イオン濃度はパルプスラリーに含まれる固形分に対して16質量%であった。このパルプスラリーを、角型手抄き装置を用いて目標坪量が100g/m2となるフィルターを作製した。なお、実際に得られたフィルターの坪量は表1の通りであった。
(実施例2)
実施例1において硫酸銅(5水和物)の添加率を31質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、パルプスラリー中の銅イオン濃度は8質量%であった。
(実施例3)
実施例1において、硫酸銅(5水和物)の添加率を16質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、パルプスラリー中の銅イオン濃度は4質量%であった。
(実施例4)
実施例1において、硫酸銅(5水和物)の添加率を8質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、パルプスラリー中の銅イオン濃度は2質量%であった。
(実施例5)
実施例1の目標坪量を30g/m2とした以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、実際に得られたフィルターの坪量は表1の通りであった。
(実施例6)
[酸化]
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプと2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)1.6質量部と、臭化ナトリウム10質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が3.5mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上11以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、パルプ中のセルロースにカルボキシル基を導入した。このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、カルボキシル基変性パルプを得た。得られたカルボキシル基変性パルプは、カルボキシル基の導入量が1.4mmol/gであった。これにより得られたカルボキシル基変性パルプを用いて、実施例1と同様に金属イオン担持以降の工程を実施して、フィルターを作製した。
なお、カルボキシル基の導入量は、以下の手法により測定した。まず、乾燥重量を精秤したパルプから0.5〜1質量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝導度測定を行った。測定はpHが約11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記式を用いて官能基量を決定した。該官能基量がカルボキシル基の量を示す。
官能基量(mmol/g)=V(ml)×0.05/パルプの質量(g)
(実施例7)
実施例1において、硫酸銅(5水和物)に代えて硝酸銀を用い、硝酸銀の添加率が25質量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、パルプスラリー中の銀イオン濃度は16質量%であった。
(比較例1)
リン酸化の工程と、アルカリ処理及び洗浄の工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、表1における汎用パルプとは、リン酸化反応といった化学的処理を行っていないパルプである。
(比較例2)
比較例1において、硫酸銅(5水和物)の添加率を126質量%に変更した以外は、比較例1と同様にしてフィルターを作製した。なお、パルプスラリー中の銅イオン濃度は32質量%であった。
(比較例3)
有害物質吸着剤として、株式会社ジェイエムエス社製の制御盤内清浄化ユニット(CFU−70)より採取した粒状活性炭をフィルターの代わりに用いた。
(比較例4)
有害物質吸着剤として、ボッシュ株式会社製の自動車エアコン用フィルター(アエリスト プレミアム)を活性炭シートとして用いた。
(評価及び分析)
(金属成分担持量)
以下の通り、前処理としてフィルターを湿式分解した後、高周波誘導プラズマ発光法(ICP)により、フィルター中に含有される金属の種類及びその量を定量した。
(1)前処理(フィルターの密閉式湿式分解)
まず、フィルターサンプルをセラミック製はさみで2mm以上5mm以下角のサイズに断裁し、断裁した試料から0.5gを正確に測りとり、525℃で4時間灰化した。これを密閉式フッ素樹脂加工容器に移し、硝酸5mlで湿式分解させた。その後、フッ素樹脂加工容器内の分解溶液を遠沈管に洗い移し、これを0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したのち、全量を蒸留水で洗い、フラスコ中で蒸留水を加えて50mlに定容とした。
(2)高周波誘導プラズマ発光法(ICP)による測定
前処理した試料溶液中の金属濃度を、ICP−OES(アメテック社製、型式:CIROS120)を用いて測定した。なお、定量に際しては予め、含有量既知の金属塩標準液を用いて検量線を作製しておき、含有量(質量%)を算出した。
(臭気発生物質吸着試験(吸着性評価))
10Lの2つ口コック付きガスバックに、実施例及び比較例で得たフィルター等を0.3g入れ、4ppm(初期濃度)に調整した硫化水素ガスを5L封入した。次いで、ガスバックの2つのコックと流量1.4L/minのエアーポンプとを接続し、ガスバック内の硫化水素ガスが循環する条件として試験を開始した。そして、試験開始時から30分後の硫化水素ガス濃度を検知管にて測定し、以下の式よりフィルターの硫化水素ガス吸着率A1を算出した。
吸着率A1(%)=[初期硫化水素ガス濃度(ppm)−試験開始時から30分後の硫化水素ガス濃度(ppm)]/初期硫化水素ガス濃度(ppm)×100
(難燃性)
フィルターの難燃性は、JIS A 1322に拠って測定し、下記基準で評価した。
防炎1級:炭化長5cm以下、加熱終了後の残炎なし、1分後に残じんなし
防炎2級:炭化長10cm以下、加熱終了後の残炎5秒以下、1分後に残じんなし
防炎3級:炭化長15cm以下、加熱終了後の残炎5秒以下、1分後に残じんなし
なし:防炎性なし(炭化長が15cmよりも長い、加熱終了後の残炎5秒よりも長い、もしくは1分後に残じんがある、のうち少なくとも1条件を満たす)
(試験後の変色)
臭気発生物質吸着試験前後のフィルターの変色の有無を以下の基準で目視評価した。
○:試験前後で明らかに変色した部分があった
△:試験前後でわずかに変色した部分があった
×:試験前後で変色は全くなかった
(耐水性評価)
上記吸着性評価は水へ浸漬する前のフィルターで行ったものであり、水浸漬前のフィルターの吸着率A1(%)とした。次いで、フィルターを水中に1分間浸漬し、余分な水分をろ紙でふき取った直後の吸着性評価を上記吸着性評価と同様の手法で行い、水浸漬後のフィルターの吸着率A2(%)とし、A2/A1の値を算出した。なお、A2/A1の値は0.8以上であれば耐水性に優れていると評価できる。
Figure 0006701977
表1からわかるように、実施例のフィルターは、活性炭と同レベルの臭気発生物質吸着効果を発揮していた。さらに、実施例のフィルターは、耐水性に優れており、水に浸漬した後であっても優れた臭気発生物質吸着効果を発揮していた。なお、銅イオンが担持されたフィルターにおいては、臭気発生物質吸着試験後の変色が確認でき、臭気発生物質吸着機能の残存を呈色により示すことができる。

Claims (5)

  1. リン酸基又はリン酸基に由来する置換基を有するパルプを主成分として含み、金属成分をさらに含むフィルターであって、
    前記金属成分は、銅及び銀から選択される少なくとも1種であり、
    坪量が40g/m以上である、フィルター。
  2. 前記パルプが有する前記リン酸基又はリン酸基に由来する置換基の含有量が0.1mmol/g以上である請求項1に記載のフィルター。
  3. 前記金属成分は、銅イオン、銀イオン、銅微粒子及び銀微粒子から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載のフィルター。
  4. 前記金属成分の含有量はフィルターの全質量に対して0.5質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルター。
  5. 水へ浸漬する前の前記フィルターの硫化水素ガス吸着率をAとし、水へ浸漬した直後の前記フィルターの硫化水素ガス吸着率をAとした場合、A/Aの値が0.8以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルター。
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