<第1の実施形態>
本発明の第1実施形態に係る車両用カーテンエアバッグ装置10について図1〜図4に基づいて説明する。なお、この第1実施形態は、参考例とする。また、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印OUTは、それぞれ車両用カーテンエアバッグ装置10が適用された自動車(車両)12の前方向(進行方向)、上方向、及び幅方向の外方を示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
(車両用カーテンエアバッグ装置10の全体構成)
図1〜図4に示されるように、本実施形態に係る車両用カーテンエアバッグ装置10は、セダンタイプの自動車12に搭載されており、カーテンエアバッグ30と、インフレータ70と、制御装置72とを備えている。なお、図1及び図4では、実際の乗員の代わりに衝突試験用のダミーPが自動車12の後席14に着座している。このダミーPは、例えば国際統一側面衝突ダミー(World Side Impact Dummy:WorldSID)のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)である。このダミーPは、側面衝突試験法に規定される着座方法で車両用シート14に着座している。また、このダミーPは、後席14に設けられた図示しない3点式シートベルト装置のシートベルトを装着している。以下、このダミーPを「後席乗員P」と称する。
図1に示されるように、カーテンエアバッグ30は、車室側部に設けられたフロントサイドガラス16、Bピラー18、及びリヤサイドガラス20に沿ってカーテン状に膨張展開するように形成されている。このカーテンエアバッグ30の上縁部からは、複数の固定タブ60が延出されている。これらの固定タブ60は、車室側部の上端部であるルーフサイド部22に配設されており、図示しないAピラー及びルーフサイドレール24に固定されている。このカーテンエアバッグ30の構成については、後で詳述する。
インフレータ70は、カーテンエアバッグ30内にガスを供給するためのガス発生装置であり、カーテンエアバッグ30の前後方向中間部付近に配置され、図示しないブラケットを介してルーフサイドレール24に固定されている。このインフレータ70のガス噴出部は、カーテンエアバッグ30の長手方向中間部に設けられた接続通路37に接続されている。このインフレータ70が作動されると、上記のガス噴出部から噴出するガスがカーテンエアバッグ30の内部に供給されるようになっている。
なお、図1及び図4では、自動車12の車室後部における右側部分を図示しているが、上記のカーテンエアバッグ30及びインフレータ70は、自動車12の左右両側にそれぞれ設けられている。つまり、車両用カーテンエアバッグ装置10は、左右一対のカーテンエアバッグ30及び左右一対のインフレータ70を含んで構成されている。左右のインフレータ70は、図1に示されるECU(Electronic Control Unit)73と電気的に接続されている。このECU73には、側突センサ74、ロールオーバセンサ76及び斜突センサ78が電気的に接続されている。これらのECU73、側突センサ74、ロールオーバセンサ76及び斜突センサ78(何れも図1以外では図示省略)は、制御装置72を構成している。
側突センサ74は、自動車12の側面衝突を検知又は予知してECU73に側突信号を出力するように構成されている。ロールオーバセンサ76は、自動車12のロールオーバを検知又は予知してECU73にロールオーバ信号を出力するように構成されている。また、斜突センサ78は、自動車12の斜め衝突を検知又は予知してECU73に斜突信号を出力するように構成されている。
ECU73は、側突信号又は斜突信号が入力されると、側面衝突側又は斜め衝突側(何れもニアサイド)のインフレータ70を作動させる構成になっている。これにより、ニアサイドのカーテンエアバッグ30がガス供給を受けて膨張展開するようになっている。また、ECU73は、ロールオーバ信号が入力されると、車両幅方向両側のインフレータ70を作動させる構成になっている。なお、ECU73は、側面衝突後又は斜め衝突後にロールオーバ信号が入力されると、すでに作動されているニアサイドとは反対側(ファーサイド)のインフレータ70を作動させるようになっている。
(カーテンエアバッグ30の構成)
上述したカーテンエアバッグ30は、例えばOPWと略称されるワンピースウーブン(One Piece Woven)方式によって一体に袋織りされている。OPW方式では、ジャガード織機を用いて、二枚の布を同時に製織しながら、必要な個所を多重織りすることで、無縫製の袋体を形成する。なお、カーテンエアバッグ30の製造方法は、上記に限るものではない。例えばナイロン系又はポリエステル系の布材を切り出して形成された1枚又は複数枚の基布を袋状に縫製することによりカーテンエアバッグ30を製造してもよい。
このカーテンエアバッグ30は、図2に示されるように、前席側突チャンバ32と、後席側突チャンバ34と、前席側突チャンバ32の前方側に設けられた前席斜突チャンバ31と、前席側突チャンバ32と後席側突チャンバ34とを相互に連通させたガス供給通路36と、前席側突チャンバ32と後席側突チャンバ34との間に設けられたロールオーバチャンバ38と、を備えている。このカーテンエアバッグ30の外周縁部には、外周非膨張部40が設けられている。この外周非膨張部40は、カーテンエアバッグ30の上縁部、下縁部、前縁部及び後縁部を構成している。また、このカーテンエアバッグ30には、上記各チャンバやガス供給通路36を区画するための複数の非膨張部42、44、46、48が設けられている。
前席側突チャンバ32は、図示しない前席乗員の頭部と車体側部(フロントサイドガラス16)との間に膨張展開し、側面衝突の際に前席乗員の頭部を拘束(保護;以下同じ)する。前席斜突チャンバ31は、前席側突チャンバ32の前方に膨張展開し、斜め衝突及びロールオーバの際に前席乗員の頭部を拘束する。この前席斜突チャンバ31は、カーテンエアバッグ30の上下方向に延びる非膨張部42によって前席側突チャンバ32と仕切られている。非膨張部42とカーテンエアバッグ30の上縁部との間、及び非膨張部42とカーテンエアバッグ30の下縁部との間には、絞り流路50、52がそれぞれ形成されており、これらの絞り流路50、52を介して前席斜突チャンバ31と前席側突チャンバ32とが相互に連通されている。
後席側突チャンバ34は、後席乗員Pの頭部Hと車体側部(リヤサイドガラス20)との間に膨張展開し、側面衝突の際に後席乗員Pの頭部Hを拘束する。この後席側突チャンバ34の車両幅方向の膨張幅は、カーテンエアバッグ30の膨張展開完了状態において、後席乗員Pの頭部Hの重心よりも車両後方側で最大になるように設定されている。なお、上記の膨張幅と頭部Hの重心との位置関係は、例えば通常時に空気ポンプ等によりカーテンエアバッグ30内に空気を供給してカーテンエアバッグ82を膨張させ、前席側突チャンバ32、前席斜突チャンバ31、後席側突チャンバ34及びロールオーバチャンバ38の各内圧を均衡させた状態で確認することができる。
ガス供給通路36は、カーテンエアバッグ30の上部に設けられており、前席側突チャンバ32の上部と後席側突チャンバ34の上部とを相互に連通させている。このガス供給通路36の上端部からは、前述した接続通路37が上方側かつ後方側へ向けて延出されている。
ロールオーバチャンバ38は、前席側突チャンバ32と後席側突チャンバ34との間に膨張展開し、斜め衝突及びロールオーバの際に後席乗員Pの頭部Hを拘束する。このロールオーバチャンバ38は、カーテンエアバッグ30の前後方向に延びる非膨張部44によってガス供給通路36と仕切られている。また、このロールオーバチャンバ38は、非膨張部44の前後方向中間部からカーテンエアバッグ30の下縁部側へ延びるクランク形状の非膨張部46によって上チャンバ38Aと下チャンバ38Bとに仕切られている。非膨張部46の下端部は、カーテンエアバッグ30の下縁部において外周非膨張部40に接続されている。非膨張部44の後端部と非膨張部46の後端部との間には、絞り流路54が形成されており、当該絞り流路54を介して上チャンバ38Aと後席側突チャンバ34とが相互に連通されている。このロールオーバチャンバ38は、ロールオーバー試験(FMVSS226規格)において後席乗員Pの頭部Hに相当するインパクタを当てる試験ポイント(インパクタ打撃点又は打点)のうち、最も前側の試験ポイントをカバーするように設けられている。
また、下チャンバ38Bは、カーテンエアバッグ30の上下方向に延びる膨張部48によって前席側突チャンバ32と仕切られている。この非膨張部48は、カーテンエアバッグ30の下縁部において外周非膨張部40から延出されている。この非膨張部48の上端部と非膨張部44の前端部との間には、絞り流路56が形成されており、当該絞り流路56を介して下チャンバ38Bと前席側突チャンバ32とが相互に連通されている。
上記構成のカーテンエアバッグ30は、前述したように、上縁部から延出された複数の固定タブ60を有している。これらの固定タブ60は、カーテンエアバッグ30の基布と同様の基布が切り出されて形成されたものであり、カーテンエアバッグ30の上縁部において外周非膨張部40と縫製(結合)されている。これらの固定タブ60は、締結具62(例えばクリップやボルト及びナット)によって図示しないAピラー及びルーフサイドレール24に固定されている。なお、複数の固定タブ60が、カーテンエアバッグ30の上縁部において外周非膨張部40から一体に延出された構成にしてもよい。
このカーテンエアバッグ30は、図4に示されるように、車両上下方向に折り畳まれて長尺状にされた上で、インフレータ70と共にルーフサイド部22に収納される構成になっている。このカーテンエアバッグ30の折り畳み方は、例えばロール折り及び蛇腹折りの少なくとも一方を含む所定の折り畳み方とされている。このカーテンエアバッグ30の収納状態では、カーテンエアバッグ30がAピラーからルーフサイド部22に亘ってCピラー26まで延在し、カーテンエアバッグ30及びインフレータ70が図示しないAピラーガーニッシュ、ルーフヘッドライニング28(図4以外では符号省略)及びCピラーガーニッシュ26Aによって車室内側から覆われる。このカーテンエアバッグ30において、Cピラーガーニッシュ26Aによって覆われる部位には、後席側突チャンバ34の後端側が含まれている。
上記構成の車両用カーテンエアバッグ装置10では、インフレータ70が作動されると、インフレータ70からのガスが接続通路37及びガス供給通路36を通って前席側突チャンバ32及び後席側突チャンバ34に供給される(図2の矢印G参照)。これにより、前席側突チャンバ32が前席乗員の頭部とフロントサイドガラス16との間に膨張展開し、後席側突チャンバ34が後席乗員Pの頭部Hとリヤサイドガラス20との間に膨張展開する。また、前席側突チャンバ32に供給されたガスの一部は、絞り流路50、52を通って前席斜突チャンバ31に供給されると共に、絞り流路56を通ってロールオーバチャンバ38の下チャンバ38Bに供給される。さらに、後席側突チャンバ34に供給されたガスの一部は、絞り流路54を通ってロールオーバチャンバ38の上チャンバ38Aに供給される。これにより、前席斜突チャンバ31及びロールオーバチャンバ38が前席側突チャンバ32及び後席側突チャンバ34に遅れて膨張し始める。これは、斜め衝突及びロールオーバの際には、側面衝突の際と比較して、前席乗員の頭部及び後席乗員Pの頭部Hがカーテンエアバッグ30と接触するタイミングが遅れるためである。
このため、側面衝突時には、前席斜突チャンバ31及びロールオーバチャンバ38の膨張が完了する前に、前席乗員の頭部及び後席乗員Pの頭部Hが前席側突チャンバ32及び後席側突チャンバ34に拘束される(接触する)構成になっている。つまり、前席乗員の頭部及び後席乗員Pの頭部Hが前席側突チャンバ32及び後席側突チャンバ34に拘束されるタイミングでは、前席側突チャンバ32及び後席側突チャンバ34の内圧が、前席斜突チャンバ31及びロールオーバチャンバ38の内圧よりも高くなり、各チャンバに内圧の不均衡が生じるように構成されている。なお、図2においては、上記のタイミングで高圧になる箇所にドットを付している。この図2に示されるように、ドットが付されていない箇所である前席斜突チャンバ31及びロールオーバチャンバ38は、上記のタイミングで相対的に低圧になる箇所である。そして、図2において矢印LPで示される車両前後方向の領域(ロールオーバチャンバ38が設けられた領域)は、上記のタイミングで相対的に剛性が低くなる領域とされている。
ここで、本実施形態では、図1〜図4に示されるように、カーテンエアバッグ30の上縁部に設けられた複数の固定タブ60のうち、最も車両後方側に位置する固定タブ60(以下、「最後方タブ60R」と称する)が、後席側突チャンバ34の上縁部から延出されている。この最後方タブ60Rは、本発明における「固定タブ」に相当する。そして、この最後方タブ60Rが車両後方側へ延長されることにより、揺動抑制部としてのタブ延長部60R2が形成されている。具体的には、上記の最後方タブ60Rは、車両前後方向の寸法が他の固定タブ60と同等に設定されたタブ本体部60R1と、当該タブ本体部60R1の後縁部から車両後方側へ一体に延出されたタブ延長部60R2とによって構成されている。なお、図3(膨張展開前の後席側突チャンバ34における上縁部周辺の構成を示す図)においては、タブ本体部60R1とタブ延長部60R2との境界に二点鎖線を記載している。
タブ本体部60R1は、車両幅方向視で矩形状に形成されており、後席側突チャンバ34の上縁部における車両前後方向中間部に配置されている。このタブ本体部60R1の上部側には、前述した締結具62が挿通される挿通孔64が形成されている。なお、以下の説明では、タブ本体部60R1の挿通孔64に挿通された締結具62を「締結具62R」と称する。
タブ延長部60R2は、後席側突チャンバ34におけるルーフサイドレール24への固定位置(締結具62Rの位置)よりも車両後方側に位置しており、後席側突チャンバ34の後端(カーテンエアバッグ30の後端)まで延びている。このタブ延長部60R2は、車幅方向視で車両前後方向を長手とする略直角三角形状に形成されており、車両後方側へ向かうほど車両上下方向の寸法が縮小している。
上記構成の最後方タブ60Rは、下縁部が後席側突チャンバ34の上縁部と縫製(結合)されることにより、後席側突チャンバ34の後部(後端部34Rを含む)の上縁部と繋がっている。具体的には、最後方タブ60Rの下縁部と、外周非膨張部40のうち後席側突チャンバ34の上縁部を構成する部位とが重ね合わされており、当該重ね合わされた箇所が複数(ここでは3つ)の縫製部S(図3以外では図示省略)において縫製されている。3つの縫製部Sは、タブ本体部60R1(最後方タブ60Rの前端部)の下縁部、タブ延長部60R2の前後方向中間部の下縁部、及びタブ延長部60R2の後端部(最後方タブ60Rの後端部)の下縁部に設定されており、車両前後方向に等間隔に並んでいる。なお、本実施形態では、上記3つの縫製部Sが車両前後方向に分割されているが、これに限らず、上記3つの縫製部Sが車両前後方向に繋がった構成(縫製部Sが1つとされた構成)にしてもよい。
上記のように後席側突チャンバ34の上縁部に縫製された最後方タブ60Rは、後席側突チャンバ34が膨張展開することにより、図1及び図2に示されるように車両上方側かつ車両後方側へ凸をなして湾曲する。この状態では、タブ延長部60R2が長手方向に伸張され、タブ延長部60R2に張力が作用することにより、後席側突チャンバ34の後端部34Rに対して車両上方向きの力F1が作用する。この力F1は、後席側突チャンバ34が、ルーフサイドレール24への固定位置(締結具62Rの位置)を中心として車両前方側への揺動しようとすることにより大きくなる。これにより、膨張展開した後席側突チャンバ34が車両前方側へ揺動することが抑制される構成になっている。
(作用及び効果)
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用カーテンエアバッグ装置10では、側突センサ74によって自動車12の側面衝突が検知又は予知されると、ECU73によってインフレータ70が作動される。これにより、前席側突チャンバ32が前席乗員の頭部とフロントサイドガラス16との間に膨張展開し、後席側突チャンバ34が後席乗員Pの頭部Hとリヤサイドガラス20との間に膨張展開すると共に、前席斜突チャンバ及びロールオーバチャンバ38が前席側突チャンバ32及び後席側突チャンバ34に遅れて膨張し始める。そして、ロールオーバチャンバ38の膨張が完了する前に、後席乗員Pの頭部Hが後席側突チャンバ34に拘束される(接触する)。
ここで、本実施形態では、後席側突チャンバ34の上縁部から延出されてルーフサイドレール24に固定された最後方タブ60Rは、車両後方側へ延長されたタブ延長部60R2を有している。このタブ延長部60R2は、後席側突チャンバ34におけるルーフサイドレール24への固定位置(締結具62Rの位置)よりも車両後方側において、後席側突チャンバ34の後端部34Rの上縁部と繋がっている。このため、膨張展開した後席側突チャンバ34が車両前方側へ揺動しようとした際には、タブ延長部60R2が伸長され、タブ延長部60R2に張力が作用する。これにより、膨張展開した後席側突チャンバ34の後端部34Rに対して車両上方向きの力F1が作用するので、膨張展開した後席側突チャンバ34が車両前方側へ揺動することが抑制される。その結果、後席側突チャンバ34が後席乗員Pの頭部Hを設計通りの位置で拘束することが可能となるので、後席側突チャンバ34の拘束性能を安定させることができる。
上記の効果について、図5及び図6に示される車両用カーテンエアバッグ装置100(以下、「比較例100」と称する)を用いて詳細に説明する。この比較例100では、最後方タブ60Rが上記のタブ延長部60R2を有していないが、それ以外の構成は本実施形態と同様とされている。なお、図5及び図6では、本実施形態と同様の構成に同符号を付している。この比較例100では、本実施形態と同様に、側面衝突時に後席乗員Pの頭部Hが後席側突チャンバ34に拘束されるタイミングは、ロールオーバチャンバ38の膨張が完了する前のタイミングとされている。
上記のタイミングでは、ロールオーバチャンバ38の内圧が後席側突チャンバ34の内圧よりも低いため、低圧のロールオーバチャンバ38が高圧の後席側突チャンバ34に押されて車両前後方向中間部で折れ曲がり、車両前後方向に圧縮される(図5参照)。その結果、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動が許容されると、後席乗員Pの頭部Hが設計通りの位置で後席側突チャンバ34に拘束されなくなり、後席側突チャンバ34の拘束性能が安定しなくなる。
また、後席側突チャンバ34が、図6に二点鎖線で示されるように車両前方側へ揺動(変位)すると、後席側突チャンバ34において車両幅方向の膨張幅が最大の箇所が、後席乗員Pの頭部Hの重心よりも車両前方側へ変位する。その結果、後席側突チャンバ34は、頭部Hの重心に対して車両幅方向に対向する拘束面が、車両前方側へ向かうほど車両幅方向内側へ向かうように湾曲する(図6の接線L2参照)。この状態で頭部Hが後席側突チャンバ34に突入し、車両幅方向中央側へリバウンドすると、頭部Hのリバウンド方向(跳ね返り方向)が車両幅方向に対して車両後方側に傾斜する(図6の矢印RB2参照)。このため、リバウンドした頭部Hがシートバック14Bと接触して摩擦力を受けることにより、頭部Hに対して首部Nの軸線回りの回転力(図6の矢印RO2参照)が作用する。その結果、頭部回転傷害(Brain Rotational Injury Criterion;所謂BrIC)が発生する可能性がある。
これに対し、本実施形態では、前述したように後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動が抑制されるので、後席側突チャンバ34が後席乗員Pの頭部Hに対して設計通りの位置に配置される(図6に実線で示される後席側突チャンバ34参照)。この状態では、後席側突チャンバ34の拘束面が車両前方側へ向かうほど車両幅方向外側へ向かうように湾曲する(図6の接線L1参照)。この状態で頭部Hが後席側突チャンバ34に突入すると、頭部Hのリバウンド方向が車両幅方向に対して車両前方側に傾斜し易くなり(図6の矢印RB1参照)、リバウンドした頭部Hが後席14のシートバック14Bやヘッドレスト14Hと接触し難くなる。
また、後席乗員Pが3点式のシートベルトによって拘束されている場合、図6の矢印RB1方向へリバウンドした頭部Hは、後席乗員Pがシートベルトから受ける車両後方側への拘束力によって、車両後方寄りに移動方向を変更される(図6の矢印RB11参照)。その結果、頭部Hが後席14のシートバック14Bと接触するとしても、接触のタイミングが遅くなる(図6の矢印D参照)。これにより、頭部Hが減速されるので、接触時に頭部Hに作用する回転力(図6の矢印RO1参照)が減少する。以上のことから、本実施形態によれば、側面衝突時における後席乗員Pの頭部回転傷害を防止又は効果的に抑制できる。
しかも、本実施形態では、最後方タブ60Rを車両後方側に延長してタブ延長部60R2を形成しただけの極めて簡素な構成により、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動を抑制することができる。なお、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動は、後席側突チャンバ34の後端部34Rの上縁部(最後方タブ60Rよりも車両後方側)に固定タブ60を追加することによっても抑制できる。しかしながら、上記のように固定タブ60を追加すると、カーテンエアバッグ30の膨張展開時に、後席側突チャンバ34がCピラーガーニッシュ26Aの車室内側へ引き出され難くなり、後席側突チャンバ34の展開性能が低下する可能性があるが、本実施形態ではこれを回避することができる。
また、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動は、例えば後席側突チャンバ34の後端下部とCピラー26とをストラップ等によって連結することによっても抑制できる。しかしながら、上記のストラップ等を適用する場合、カーテンエアバッグ30の膨張展開時にCピラーガーニッシュ26Aからストラップ等を引き出すための設計的な配慮が必要となり、Cピラーガーニッシュ26A周辺の意匠が制約される。また、Cピラーガーニッシュ26Aの割れや飛散を防止するための対策も必要となる。このため、ストラップ等の配設領域が限定されることとなり、ストラップ等の適用が困難な場合がある。この点、本実施形態では、上記のような設計的な配慮が不要となる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
<第2の実施形態>
図7には、本発明の第2実施形態に係る車両用カーテンエアバッグ装置80におけるカーテンエアバッグ82の膨張展開途中の状態が図1に対応した側面図にて示されている。このカーテンエアバッグ82では、第1実施形態に係るタブ延長部60R2が省略されている。その代わりに、このカーテンエアバッグ82は、後席側突チャンバ34の後端部34Rから延出された延長チャンバ84(揺動抑制部)を備えている。
延長チャンバ84は、後席側突チャンバ34の後端部34Rの下部側から車両後方側へ延出されており、カーテンエアバッグ82の後端部を構成している。この延長チャンバ84と後席側突チャンバ34とは、相互に連通されており、インフレータ70からのガスが後席側突チャンバ34を経由して延長チャンバ84に供給される。これにより、延長チャンバ84が後席側突チャンバ34の車両後方に膨張展開する構成になっている。この延長チャンバ84は、図7に示されるように、膨張展開状態を車両幅方向視で見た場合に、略矩形状をなすように形成されている。この延長チャンバ84の車両上下方向の膨張幅h1は、後席側突チャンバ34の車両上下方向の膨張幅h2よりも小さく(本実施形態では、半分程度に)設定されている。これにより、図8に示されるように、延長チャンバ84の車両幅方向の膨張幅w1が、後席側突チャンバ34の車両幅方向の膨張幅w2よりも小さく設定されている。この延長チャンバ84の内容量(内容積)は、後席側突チャンバ34の内容量(内容積)よりも十分に小さく設定されている。
なお、上記各膨張幅は、例えば通常時に空気ポンプ等によりカーテンエアバッグ82内に空気を供給してカーテンエアバッグ82を膨張させることにより比較することができる。また、後席14のヘッドレスト14Hは、後席14のシートバック14Bに対して上下位置を調整可能に連結されている。そして、本実施形態では、ヘッドレスト14Hがシートバック14Bに対する上下位置の調整範囲の上端(アッパモスト位置)及び下端(ロアモスト位置)の何れに位置する状態でも、膨張展開状態の延長チャンバ84とヘッドレスト14Hとが車両幅方向視で重なるように構成されている。また、本実施形態では、膨張展開した延長チャンバ84の後端が、車両前後方向において、ヘッドレスト14Hの後端よりも車両後方側に位置するように構成されている。
上記の延長チャンバ84は、膨張展開した際に、下面がシートバック14Bの上面と当接するように構成されている。このため、膨張展開した後席側突チャンバ34が車両前方側へ揺動しようとした際には、後席側突チャンバ34の後端部34Rが延長チャンバ84を介してシートバック14Bの上面から車両上方向きの力(反力)F2を受ける構成になっている。また、後席側突チャンバ34が上記のように揺動しようとした際には、後席側突チャンバ34が延長チャンバ84を介してシートバック14の上面から車両後方向きの摩擦力F3を受ける構成になっている。
さらに、この延長チャンバ84は、図8及び図9に示されるように、車両幅方向においてヘッドレスト14HとCピラーガーニッシュ26Aとの間に膨張展開し、ヘッドレスト14HとCピラーガーニッシュ26Aとの間に若干圧縮された状態で挟まる構成になっている。つまり、膨張展開した延長チャンバ84は、ヘッドレスト14H及びCピラーガーニッシュ26Aの各側面に対して当接(圧接)するように形成されている。このため、後席側突チャンバ34が上記のように揺動しようとした際には、後席側突チャンバ34が延長チャンバ84を介してヘッドレスト14H及びCピラーガーニッシュ26Aの各側面から車両後方向きの摩擦力F3を受ける構成になっている。なお、図8及び図9において矢印IPは、延長チャンバ84の内圧を示している。この実施形態では、上記以外の構成は、第1実施形態と同様とされている。
この実施形態では、膨張展開した後席側突チャンバ34が車両前方側へ揺動しようとした際には、後席側突チャンバ34の後端部34Rが延長チャンバ84を介してシートバック14Bの上面から車両上方向きの反力F2を受ける。さらに、後席側突チャンバ34が延長チャンバ84を介してシートバック14Bの上面から車両後方向きの摩擦力F3を受ける。これにより、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動を簡素な構成で抑制することができる。したがって、この実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
しかも、この実施形態では、膨張展開した延長チャンバ84が、ヘッドレスト14HとCピラーガーニッシュ26との間に挟まる。このため、膨張展開した後席側突チャンバ34が車両前方側へ揺動しようとした際には、延長チャンバ84に対して上記の反力F2及び摩擦力F3に加えて、ヘッドレスト14H及びCピラーガーニッシュ26の各側面から車両後方向きの摩擦力が加わる。これにより、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動をより効果的に抑制することができる。
さらに、この実施形態では、側面衝突の衝撃によって車両幅方向外側へ慣性移動する後席乗員Pの頭部Hが後席側突チャンバ34に突入し、その反動で後席乗員Pの頭部H及び後席側突チャンバ34が車両幅方向中央側へリバウンドしようとした際には、延長チャンバ84とヘッドレスト14Hとの干渉によって、後席側突チャンバ34の車両幅方向中央側へのリバウンドが抑制(規制)される。これにより、前述した頭部回転傷害を一層効果的に抑制することができる。
すなわち、例えば図5に示される比較例100のように、カーテンエアバッグ30が延長チャンバ84を備えていない場合、図10に示されるように、頭部Hが後席側突チャンバ34からリバウンド過程において、後席側突チャンバ34が頭部Hとともに車両幅方向中央側へリバウンド(スウィング)する(図10の矢印SW参照)。その結果、後席側突チャンバ34が頭部Hを車両幅方向中央側へ押し続けて加速させる場合がある(図10の矢印A参照)。加速された頭部Hがシートバック14Bと接触すると、頭部Hに作用する回転力が大きくなる。この点、本実施形態では、後席側突チャンバ34の車両幅方向中央側へのスウィングがヘッドレスト14Hを用いて抑制(規制)されるので、頭部Hが後席側突チャンバ34に押されて加速することを防止又は抑制できる。
<実施形態の補足説明>
なお、上記第2実施形態では、カーテンエアバッグ82の最後方タブ60Rがタブ延長部60R2を備えていない構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、図11に示される第1変形例のように、カーテンエアバッグ82の最後方タブ60Rがタブ延長部60R2を備えた構成にしてもよい。これにより、後席側突チャンバ34の車両前方側への揺動を抑制する効果を一層向上させることができる。また、この第1変形例のように、後席側突チャンバ34と延長チャンバ84との間に非膨張部86を設定し、延長チャンバ84をディレイチャンバとしてもよい。
この非膨張部86は、延長チャンバ84の前端かつ上端において外周非膨張部40からカーテンエアバッグ82の下端側へ向けて延出されている。この非膨張部86の下端は、延長チャンバ84の上下方向中央部付近に位置しており、非膨張部86の下端と延長チャンバ84の上縁部との間には、絞り流路88が形成されている。この絞り流路88は、カーテンエアバッグ82の下端部に形成されており、後席側突チャンバ34と延長チャンバ84とを相互に連通させている。これにより、インフレータ50から噴出されて後席側突チャンバ34に供給されるガスの一部が、上記の絞り流路88を通って延長チャンバ84に供給される構成になっている(図11の矢印G参照)。
この第1変形例では、上記のように構成されているので、後席側突チャンバ34の膨張展開によって延長チャンバ84がCピラーガーニッシュ26Aの車室内側へ引き出された後で、延長チャンバ84を膨張させることができる。これにより、延長チャンバ84がCピラーガーニッシュ26Aの車室内側へ引き出される際にCピラーガーニッシュ26Aが受ける負荷を低減することができるので、Cピラーガーニッシュ26Aの割れや飛散を防止することが容易になる。また、ヘッドレスト14HとCピラーガーニッシュ26Aとの間の隙間に延長チャンバ84を膨張展開させることが容易になる。
なお、上記第1変形例では、延長チャンバ84をディレイチャンバとするための非膨張部86が、延長チャンバ84の前端かつ上端において外周非膨張部40からカーテンエアバッグ30の下端側へ向けて延出された構成にしたが、これに限るものではない。すなわち、例えば図12〜図14に示される第2〜第4変形例のように構成してもよい。なお、図12〜図14では、固定タブ60の図示を省略している。図12に示される第2変形例では、延長チャンバ84の前端部における上下方向中間部に、円形の非膨張部90が設定されている。そして、この非膨張部90に対するカーテンエアバッグ82の上下両側には、それぞれ絞り流路92、94が形成されており、これらの絞り流路92、94を介して後席側突チャンバ34と延長チャンバ84とが相互に連通されている。
また、図13に示される第3変形例では、非膨張部96が、延長チャンバ84の前端かつ下端において外周非膨張部40からカーテンエアバッグ30の上端側へ向けて延出されている。そして、この非膨張部96の上端と延長チャンバ84の上縁部との間には、絞り流路97が形成されている。この絞り流路97を介して後席側突チャンバ34と延長チャンバ84とが相互に連通させている。また、図14に示される第4変形例では、延長チャンバ84の上下方向中間部に、カーテンエアバッグ82の前後方向に延びる非膨張部98が設定されている。これにより、延長チャンバ84が上部84Aと下部84Bとに仕切られている。上部84Aと下部84Bは、それぞれ後席側突チャンバ34と連通されている。上記第1〜第4変形例のように非膨張部86、90、96、98の形状を変更することにより、延長チャンバ84の膨張展開完了のタイミングや延長チャンバ84の車両幅方向の膨張幅を任意に変更することができる。
また、前記第2実施形態に係る延長チャンバ84は、膨張展開状態を車両幅方向視で見た場合に略矩形状をなすように形成されたが、本発明はこれに限らず、延長チャンバ84の形状は適宜変更可能である。
また、前記各実施形態では、カーテンエアバッグ30、82がロールオーバチャンバ38を備えた構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明は、ガス供給通路36の下側でかつ前席側突チャンバ32と後席側突チャンバ34との間に基布のみからなる非膨張部が設けられたタイプのカーテンエアバッグや、ガス供給通路36の下側でかつ前席側突チャンバ32と後席側突チャンバ34との間に何も設けられていない(上記の非膨張部やロールオーバチャンバ38が設けられていない)タイプのカーテンエアバッグに対しても適用可能である。
さらに、前記各実施形態では、車両用カーテンエアバッグ装置10、80がセダンタイプの自動車12(車両)に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明に係る車両用カーテンエアバッグ装置はハッチバックタイプの車両や、3列シートの車両に対しても適用可能である。その場合、最も車両後方側の座席が本発明に係る後席となる。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が前記各実施形態に限定されないことは勿論である。