JP6728632B2 - 電動車両の制御方法、及び、制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電動車両の制御方法、及び、制御装置に関する。
電動機の回生制動力を任意に設定し得る設定手段を設け、設定手段によって設定された回生制動力で電動機の回生を行う電気自動車用の回生ブレーキ制御装置が知られている。
しかしながら、このような回生ブレーキ制御装置により制御される電気自動車では、モータから駆動輪にトルクが伝達されるトルク伝達系において、車輪特性に起因するモータにおける位相ずれやギアの不感帯などが存在することが知られている。そのため、アクセル開度や車速などから算出されたモータに対するトルク目標値をそのまま用いてモータを制御して電動車両を停車しようとしても、車両のトルク伝達系の固有振動周波数成分の振動が発生してしまうことがある。
これに対して、特許文献1には、制振制御のためにフィルタリング処理を行うFF(フィードフォワード)演算部を用いる技術が開示されている。この技術によれば、FF演算部は、車両のトルク伝達の固有振動周波数成分を低減する線形フィルタと、駆動軸ねじり角を演算するフィルタと、飽和関数(リミッタ)と、駆動軸ねじり角の車輪イナーシャとタイヤ摩擦力による位相ずれを補償するフィルタとにより構成される。このような飽和関数を含むFF演算部を用いることでギアのバックラッシュによる不感帯特性が考慮されるので、駆動軸に発生するねじり振動を抑制することができる。
特開2013−223373号公報
実際の電動車両においてはモータから駆動軸までのトルク伝達経路に機械損失が存在しており、この損失がトルク外乱として作用することがある。例えば、フィルタ処理における駆動軸捻り角などの車両状態量の算出結果に誤差が生じてしまい、駆動軸においてねじり振動が生じてしまう。しかしながら、特許文献1においては、トルク伝達経路の機械損失が考慮されていないため、駆動軸に発生するねじり振動を十分に抑制することができない。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、駆動軸に発生するねじり振動を抑制することができる電動車両の制御方法、及び、制御装置を提供することを目的とする。
本発明の電動車両の制御方法の一態様は、車両情報に基づいてモータに対する目標トルク指令値を設定し、該目標トルク指令値を用いて駆動輪につながるモータを制御する電動車両の制御方法であって、目標トルク指令値に対してモータから駆動軸までのトルク損失に応じた補正を行う補正ステップと、補正後の目標トルク指令値に対してモータのトルクが車両の駆動軸に伝達されない不感帯を有する車両の駆動力伝達系の固有振動周波数を低減するフィルタ処理を行うフィルタ処理ステップと、フィルタ処理後の目標トルク指令値に基づいてモータを制御するモータ制御ステップと、を有する。
本発明の一態様によれば、車両の駆動力伝達系の固有振動周波数を低減するフィルタ処理ステップ、及び、モータから駆動軸までのトルク損失分を考慮した補正ステップが実行される。フィルタ処理ステップに加えて補正ステップが行われることでトルク損失分を加味した制御系の車両状態量を正確に求める事ができるようになるので、トルク損失が存在する場合でも駆動軸トルクの振動を抑制することができる。
図1は、本発明の制御方法により制御される電動車両の概略構成図である。 図2は、モータコントローラによるモータ制御のフローチャートである。 図3は、アクセル開度とトルクとの関係を示すテーブルである。 図4は、制振制御演算処理のフローチャートである。 図5は、制振制御演算処理の制御ブロック図である。 図6は、電動車両の車両モデルを示す図である。 図7は、FF演算部の一例の制御ブロック図である。 図8は、FF演算部の他の一例の制御ブロック図である。 図9は、FB演算部の一例の制御ブロック図である。 図10は、FF演算部、及び、FB演算部の一例の制御ブロック図である。 図11は、H(s)の周波数特性を示す図である。 図12は、電動車両の状態の説明図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の制御方法により制御される電動車両を示す図である。
電動車両に搭載されるバッテリ1は、充放電可能な電池である。バッテリ1から放電される電力は、インバータ2を介してモータ3に供給される。また、モータ3にて回生電力が発生する時には、モータ3で生じる回生電力が、インバータ2を介してバッテリ1に充電される。なお、インバータ2とモータ3との間には、電流センサ4が設けられており、電流センサ4はインバータ2とモータ3との間の電流を測定する。
インバータ2は、複数の電子デバイスにより構成される回路であり、直流と交流との変換を行う。例えば、インバータ2は、各相で2個のスイッチング素子で構成されている。なお、例えば、スイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOS−FET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)等のパワー半導体素子が用いられる。
インバータ2においては、モータコントローラ5が生成するPWM信号に応じてスイッチング素子のON/OFFの切り替え操作が行われる。このような切り替え操作によって、バッテリ1からインバータ2に供給される直流の電流が交流に変換され、モータ3に所望の大きさの交流電流が印加される。なお、モータ3が回生制動を行う時には、モータ3にて発生する回生電力は交流電流として出力され、インバータ2によって直流に変換された後にバッテリ1に充電される。
モータコントローラ5は、モータ3の駆動トルクを制御するコントローラである。モータコントローラ5には、車速V、アクセル開度θ、モータ3の回転子位相α、モータ3に流れる電流I、直流電源ラインにおける直流電流値Vdc等の車両変数の信号がデジタル信号として入力される。
なお、モータコントローラ5に入力される回転子位相αは、モータ3に併設された回転センサ6(例えば、レゾルバやエンコーダ)により測定される。直流電流値Vdcは、バッテリ1を制御するバッテリコントローラ1aにより測定される。また、モータ3は三相交流モータであるため、電流センサ4は、モータ3に流れる電流iu、iv、iwを測定し、その測定した電流値をモータコントローラ5に出力する。
モータコントローラ5は、入力される車両変数に基づいてモータ3の回転制御に用いるPWM信号を生成する。そして、モータコントローラ5は、ドライブ回路(不図示)を用いて、PWM信号に応じたインバータ2の駆動信号を生成する。
モータ3は、インバータ2から供給される交流電流によって駆動トルクを発生させる。モータ3の駆動トルクは、減速機7及び駆動軸(ドライブシャフト)8を介して駆動輪9a、9bに駆動力を伝達する。また、モータ3は、車両の走行時に駆動輪に連れて回転し、回生制動力を発生させるとともに回生電力を発生させる。このようにして、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
図2は、モータコントローラ5により行われるモータ制御のフローチャートである。
ステップS201においては、入力処理が行われる。具体的には、モータ制御に必要な車両情報を示す信号(車両変数)が、センサ入力または他コントローラとの通信により取得される。
上述のように、モータ3に流れる三相電流iu、iv、iwは、電流センサ4により取得される。なお、三相の電流値の合計はゼロになることが知られているので、例えばiwをセンサ入力で取得するのではなく、iuとivとから計算で求めてもよい。
モータ3の回転子位相α(電気角)[rad]は、レゾルバやエンコーダなどの回転センサにより取得される。その回転子位相α(電気角)を微分することで、回転子角速度ω(電気角)[rad/s]が求められる。そして、モータ3の機械的な角速度であるモータ角速度ωm[rad/s]は、回転子角速度ω(電気角)をモータ3の極対数で除することで求められる。
車速V[km/h]は、以下のように算出することができる。まず、モータ角速度ωmにタイヤ動半径Rを乗じ、ファイナルギヤのギヤ比で除することにより、車両速度v[m/s]を求める。そして、車両速度v[m/s]に、[m/s]から[km/h]への単位変換係数(3600/1000)を乗ずることで、車速V[km/h]を求めることができる。なお、車速V[km/h]は、不図示のメータやブレーキコントローラ等の他のコントローラより通信にて取得してもよい。
アクセル開度θ[%]は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に応じた値である。アクセル開度θは、アクセル開度センサにより取得してもよいし、車両コントローラや他のコントローラより通信にて取得してもよい。
直流電圧値Vdc[V]は、バッテリコントローラ1aから出力される。なお、直流電圧値Vdc[V]は、直流電源ラインに設けられた電圧センサにより測定されてもよい。
ステップS202においては、基本目標トルク算出処理が行われる。モータコントローラ5は、図3に示されるアクセル開度とトルクとの関係を示すテーブルを用いて、アクセル開度θ及び車速Vに基づき、基本目標トルク指令値Tm *を設定する。
ここで、図3を参照すると、アクセル開度θの値に応じて、モータ3が回転数N[rpm]である時に、モータ3が発生すべきトルク[T・m]が示されている。モータコントローラ5は、このテーブルを用いてアクセル開度θ及びモータ角速度ωmから求められるトルクを、基本目標トルク指令値Tm *として設定する。なお、モータ3の回転数N[rpm]は、モータ角速度ωm[rad/s]から変換することができる。
ステップS203においては、制振制御演算処理が行われる。なお、この制振制御演算処理において制振制御が考慮された処理が行われることにより、駆動軸トルクの振動を抑制することができる。モータコントローラ5は、基本目標トルク指令値Tm *とモータ角速度ωmとに応じて、駆動軸トルクの応答を犠牲にすることなく、駆動力伝達系振動(駆動軸のねじり振動など)を抑制するように、最終トルク目標値Tm3 *を算出する。なお、制振制御演算処理の詳細については、後に、図4を用いて説明する。
ステップS204においては、電流指令値算出処理が行われる。モータコントローラ5は、S203にて算出された最終トルク目標値Tm3 *、モータ角速度ωm、直流電圧値Vdcから、モータ3に流すべき電流の目標値を同期回転座標で示したdq軸電流目標値id*、iq*を求める。具体的には、モータコントローラ5は、直流電圧値Vdc、モータ角速度ωm、及び、基本目標トルク指令値Tm *と、d軸電流目標値id*及びq軸電流目標値iq*との関係が示されたテーブルを予め記憶しており、このテーブルを用いて、dq軸電流目標値id*、iq*を求める。
ステップS205においては、電流制御演算処理が行われる。モータコントローラ5は、まず、三相電流値iu、iv、iwと、モータ3の回転子位相αとから、dq軸電流値id、iqを演算する。次に、S204で算出したdq軸電流目標値id*、iq*と、dq軸電流id、iqとの偏差を求め、その偏差に応じてdq軸電圧指令値vd、vqを演算する。なお、この部分には非干渉制御を加えてもよい。
そして、モータコントローラ5は、dq軸電圧指令値vd、vqとモータ3の回転子位相αとから三相電圧指令値vu、vv、vwを算出する。この三相電圧指令値vu、vv、vwと直流電圧Vdcとから、PWM信号(on duty)tu[%]、tv[%]、tw[%]を求める。
S201〜S205により求められPWM信号を用いて、インバータ2のスイッチング素子のON/OFFを操作する。このようにすることで、モータ3に所望の電力が供給されるので、モータ3はトルク指令値に応じたトルクで駆動することになる。
次に、図4、及び、図5を用いて、図2に示された制振制御演算処理(S203)の詳細について説明する。
図4は、モータコントローラ5により実行される制振制御演算処理のフローチャートである。
制振制御演算処理においては、損失考慮処理(S401)、FF(フィードフォワード)演算処理(S402)、FB(フィードバック)演算処理(S403)、補償値加算処理(S404)、及び、損失補償処理(S405)が行われる。
本実施形態においては、損失考慮処理(S401)によって、FF演算処理(S402)への入力値は、トルク損失に起因する減少分を考慮した有効な値に補正される。あわせて、補償値加算処理(S404)からの出力値に対して損失補償処理(S405)を行うことにより、トルク損失に起因する指令値に対する駆動トルクの減少分が補償される。
このように損失考慮処理(S401)、及び、損失補償処理(S405)を行うことで、FF演算処理(S402)、FB演算処理(S403)、及び、補償値加算処理(S404)のみによって電動車両の振動を抑制する場合と比較すると、トルク損失が考慮されるので、さらに制振性を高めることができる。
これらのS401〜S405までの処理の詳細について、図5を用いて説明する。
図5は、制振制御演算処理の制御ブロック図である。この図においては、損失考慮処理(S401)を実行する損失考慮部501と、FF演算処理(S402)を実行するFF演算部502と、FB演算処理(S403)を実行するFB演算部503と、補償値加算処理(S404)を行う補償値加算部504と、損失補償処理(S405)を行う損失補償部505と、が示されている。
損失考慮部501は、基本目標トルク指令値Tm *をモータ3から駆動軸8までのトルク損失によるトルクの目減りを考慮した値に補正する。具体的には、回転運動に寄与する有効トルク成分Tm1 *が、次式にて算出される。
Figure 0006728632
(1)式にて示されるように、トルク損失は、トランスミッションの伝達効率などに起因してトルクの大きさに比例する成分(ηTm1 *)と、静止摩擦力のようにトルクの大きさによらず略一定の大きさであるオフセット成分(Tf)とにより構成される。ただし、ηは、トルク伝達効率であり、0以上かつ1より小さい値である(0≦η<1)。また、オフセットトルクTfは回転方向の逆向きに作用するため、モータ3が正回転の場合は負の値となり、負回転の場合は正の値となる。なお、トルク伝達効率η、及び、オフセットトルクTfは、固定値としてもよいが、損失をより厳密に考慮するために、必要に応じてモータ角速度やモータトルク等の関連するパラメータに応じて変化させてもよい。
FF演算部502は、損失考慮部501から出力される有効トルク成分Tm1 *に対してFF演算処理(S402)を行い、FF演算部出力FFoutを出力する。なお、FF演算部502の詳細な構成は、後に図7を用いて説明する。
FB演算部503には、モータ3への指令値であるFF演算部出力FFoutと、モータ3の応答値であるモータ角速度ωmとが入力される。FB演算部503は、モータ3における指令値と応答値との偏差を求め、この偏差に応じてFB演算部出力FBoutを出力する。なお、FB演算部503の詳細な構成は、図7及び8にて説明する。
補償値加算部504は、FF演算部出力FFoutと、FB演算部出力FBoutとを加算して、制振制御後トルク指令値Tm2 *を生成する。
損失補償部505は、補償値加算部504から出力される制振制御後トルク指令値Tm2 *に対して、モータ3から駆動軸までのトルク損失を上乗せする。具体的には、次の式を用いて最終トルク目標値Tm3 *を算出する。
Figure 0006728632
なお、この(2)式においても、(1)式と同様に、ηはトルク伝達効率(0≦η<1)を示し、Tfはトルクオフセット成分を示している。なお、(2)式における制振制御後トルク指令値Tm2 *に対する最終トルク目標値Tm3 *の関係は、(1)式における基本目標トルク指令値Tm *に対する有効トルク成分Tm1 *の関係の逆の関係になる。これは、(1)式によってトルク損失分が考慮された有効値を求めるのに対して、(2)式によってトルク損失分が補償されるためである。
ここで、FF演算処理(S402)が行われるFF演算部502、及び、FB演算処理(S403)が行われるFB演算部503は、電動車両の駆動力伝達系をモデル化した車両モデルが用いて設計される。そこで、電動車両の駆動力伝達系を示す車両モデルについて説明する。
図6は、電動車両の駆動力伝達系をモデル化した図である。
ここで、駆動力伝達系に含まれるギアにて発生するバックラッシュによる不感帯を線形関数と飽和関数の差分で表現すると、車両の運動方程式は(3)〜(8)式で表される。
Figure 0006728632
Figure 0006728632
Figure 0006728632
Figure 0006728632
Figure 0006728632
Figure 0006728632
ただし、これらの式における各パラメータは下記の通りである。
m:モータイナーシャ
w:駆動軸イナーシャ(1軸分)
d:駆動軸のねじり剛性
t:タイヤと路面の摩擦に関する係数
al:オーバーオールギア比
r:タイヤ荷重半径
ωm:モータ角速度
ωw:駆動輪角速度
m:モータトルク
D:駆動軸トルク
F:駆動力(2軸分)
V:車体速度
θ:駆動軸のねじり角
また、(6)式におけるSt(θ)は、駆動軸ねじり角θを変数とする飽和関数であり、以下のように示される。
Figure 0006728632
なお、θBLはモータ3から駆動軸8までのオーバーオールでのギアバックラッシュ量である。
(3)〜(8)式により、モータトルクTmから駆動軸ねじり角θまでの伝達特性は次式のように求められる。
Figure 0006728632
なお、Gt(s)、Fs(s)は、次の式で示される伝達関数である。
Figure 0006728632
Figure 0006728632
ただし、これらの式における各パラメータは下記の通りである。
Figure 0006728632
なお、ζpは駆動トルク伝達系の減衰係数であり、ωpは駆動トルク伝達系の固有振動周波数である。
駆動軸トルクTdは、(6)、(10)式より、次のように表すことができる。
Figure 0006728632
ここで、駆動軸トルクの規範応答は、次式のように示される。
Figure 0006728632
ただし、Gtm(s)は、次の式で示される伝達関数である。
Figure 0006728632
なお、ζmは理想モデルの減衰係数であり、ωmは理想モデルの固有振動周波数である。
ここで、Td=Tdmとなるようなトルク指令値Tmを求めると、次式となる。
Figure 0006728632
ただし、GINVは、次の式で示される伝達関数である。
Figure 0006728632
ここで、上述の、式(10)、(16)を用いることでFF演算部502を設計することができる。
図7は、FF演算部502の制御ブロック図の一例である。
この図においては、FF演算部502においては、入力された有効トルク成分Tm1 *に対してFF演算処理が行われ、FF演算部出力FFoutとして出力される。また、FF演算部502は、GINV(s)のフィルタ処理を行うブロック701と、Gt(s)のフィルタ処理を行うブロック702と、(9)式に示された飽和関数であるブロック703と、(12)式に示されたFs(s)のフィルタ処理を行うブロック704とにより構成されている。
なお、線形フィルタGINV(s)は、車両のトルク伝達の固有振動周波数成分を低減するフィルタとなる。フィルタGtm(s)は、駆動軸捻り角を演算するフィルタとなる。また、フィルタFs(s)は、駆動軸捻り角の車輪イナーシャとタイヤ摩擦力による位相ずれを補償するフィルタとなる。
ここで、式(10)は、以下のように理解することができる。まず、モータトルクTmと、駆動軸捻り角θを用いて示される飽和関数St(θ)に対してフィルタFs(s)の処理を行ったものとが加算される。そして、その加算値に対して、トルク指令値から駆動軸捻り角を演算するフィルタGt(s)を処理することで、駆動軸捻り角θが求められる。
ここで、出力値であるモータトルクTmは、FF演算部出力FFoutに相当する。したがって、図7に示されるように、フィルタGt(s)であるブロック702の前段において、FF演算部出力FFoutと、飽和関数であるブロック703からの出力に対してブロック704のフィルタFs(s)の処理を行うことで求められるSt(θ)・Fs(s)とが加算される。そして、その加算値がフィードバックされてブロック702においてフィルタGt(s)の処理が行われることで、駆動軸捻り角θが求められる。
また、式(16)は、以下のように理解することができる。まず、有効トルク成分Tm1 *と、Fs(s)・St(θ)とが加算される。そして、その加算値に対してGINV(s)の処理が行われる。そして、GINV(s)の処理後の加算値から、Fs(s)・St(θ)を減ずることで、モータトルクTm(FF演算部出力FFoutに相当する)が求められる。
図7を参照すると、ブロック704からの出力は、Fs(s)・St(θ)である。したがって、GINV(s)であるブロック701の前段において、有効トルク成分Tm1 *と、ブロック704からの出力値であるFs(s)・St(θ)とが加算される。そして、その加算値がブロック701に入力されて、Ginv(s)の処理が行われる。そして、GINV(s)であるブロック701からの出力値から、ブロック704から出力されるFs(s)・St(θ)を減ずることで、FF演算部出力FFoutが求める。
また、FF演算部502は、図7に示された構成に限られず、他の構成であってもよい。
図8は、FF演算部502の制御ブロック図の他の一例である。このブロック図においては、FF演算部502の構成として、フィルタGt(s)ではなく、駆動軸捻り角の理想応答を演算するフィルタGtm(s)を用いて構成されている。
まず、式(10)に式(16)を代入すると、次の式に等価変換できる。
Figure 0006728632
式(18)を、図7の構成を導いた式(10)と比較すると、図7のフィルタGt(s)にはFF演算部出力FFoutであるモータトルクTmが入力されているのに対して、図8のフィルタGtm(s)には有効トルク成分Tm1 *が入力されている点が異なる。
ここで、図8の構成と図7の構成とを比較すると、図8においては、フィルタGt(s)であるブロック702の代わりにフィルタGtm(s)であるブロック801が用いられている。そして、ブロック801には、出力値であるFF補償器出力FFoutでなく、入力値である有効トルク成分Tm1 *が入力される。
次に、FB演算部503から出力されるFB演算部出力FBoutの算出方法について説明する。
(3)〜(8)式をラプラス変換して、モータトルクTmからモータ角速度ωmまでの伝達特性を求めると次式となる。
Figure 0006728632
なお、伝達関数Gp(s)、Gps(s)は、次の式で示される。
Figure 0006728632
Figure 0006728632
なお、Gp(s)は、電動車両へのモータトルク入力に対するモータ角速度ωmの伝達特性を示す線形プラントモデルであり、Gps(s)は、ギアバックラッシュ量に対してモータ角速度のバックラッシュ補償分を求める伝達関数である。
ただし、これらの式における各パラメータは次式の通りである。
Figure 0006728632
ここで、(20)式を整理すると、(22)式のように表すことができる。
Figure 0006728632
ただし、ζpは駆動ねじり振動系の減衰係数であり、ωpは駆動ねじり振動系の固有振動周波数である。
車両モデルが一般的な車両であることを前提として(22)式の伝達関数の極と零点を調べると、1つの極と1つの零点は極めて近い値を示す。これは、(22)式のαとβが極めて近い値を示すことに相当する。そこで、(22)式における極零相殺(α=βと近似する)を行うことにより、次の式に示すような(2次)/(3次)の伝達特性Gp(s)を構成することができる。
Figure 0006728632
ここで、フィードバックされるFB演算部出力FBoutにおいては、振動が低減されることが好ましい。そこで、FB演算部出力FBoutに対して、さらに、バンドパスフィルタH(s)を用いた処理を行う。
なお、バンドパスフィルタH(s)の詳細については、後に図11を用いて説明する。
このような、線形プラントモデルGp(s)、伝達関数Gps(s)、及び、フィルタH(s)を用いて、FB演算部503を構成することができる。
図9は、FB演算部503及び補償値加算部504の制御ブロック図である。
FB演算部503においては、モータ3への指令値に対応するモータ角速度推定値ωmeと、モータ3からの応答値であるモータ角速度ωmとの差に応じて、FB演算部出力FBoutが求められている。
(19)式は、以下のように理解することができる。モータトルクTmに対して伝達関数Gp(s)を処理したものと、駆動軸捻り角θを用いて示される飽和関数St(θ)に対して伝達関数Gps(s)を処理したものとが加算されて、モータ角速度ω(モータ角速度推定値ωme)が求められる。
図9を参照すると、線形プラントモデルGp(s)であるブロック905には制振制御後トルク指令値Tm2 *が入力される。一方、伝達関数Gps(s)であるブロック904には、飽和関数St(θ)が入力される。そして、ブロック904とブロック905とからの出力が加算されて、モータ角速度推定値ωmeが求められる。
また、飽和関数St(θ)に関連する処理はブロック901〜903である。これは、式(10)により導かれた図7のブロック702〜704と同様の構成である。図9においては、ブロック902から出力される飽和関数St(θ)が、ブロック904に入力されるように構成される。
そして、指令値であるモータ角速度推定値ωmeと、応答値であるモータ角速度ωmとの差分が算出される。その差分に対して、ブロック906の伝達関数H(s)/Gp(s)の処理を行うことで、FB演算部出力FBoutが求められる。そして、補償値加算部504がFF補償器出力FFoutとFB演算部出力FBoutとを加算することで、制振制御後トルク指令値Tm2 *が求められる。なお、伝達関数H(s)は分母次数と分子次数との差分が、伝達関数Gp(s)の分母次数と分子次数との差分以上となるように設定されるものとする。
また、FB演算部503は、図9のように構成されなくてもよい。例えば、図9のブロック901、902は、図7のブロック702、703に相当することに着目して、ブロック904に対して、ブロック902からでなく、ブロック703から駆動軸捻り角のリミット値St(θ)が入力されるように構成してもよい。このように構成されたFB演算部503が図10に示されている。
図10は、FF演算部502、FB演算部503、及び、補償値加算部504の他の一例のブロック図である。
この図においては、図9の構成と比較すると、FB演算部503にてブロック901〜903が削除されているとともに、FF演算部502のブロック703から出力される飽和関数St(θ)が、FB演算部503のブロック904に入力されている。このようにすることで、FF演算部502、及び、FB演算部503の構成を簡略化することができる。
ここで、バンドパスフィルタである伝達関数H(s)について説明する。
図11は、H(s)の特性の一例を示す図である。
この図を参照すると、H(s)は、ローパス側及びハイパス側の減衰特性が略一致し、かつ、駆動系のねじり共振周波数が、対数軸(logスケール)上で、通過帯域の中央部近傍となるような特性を有する。例えば、H(s)を1次のハイパスフィルタと1次のローパスフィルタで構成する場合には、周波数fpを駆動系のねじり共振周波数とすると、伝達関数H(s)は、kを任意の値として次の式のように構成することができる。
Figure 0006728632
ただし、各パラメータは以下の通りである。
Figure 0006728632
次に、図12を用いて電動車両の各状態を説明することで、本発明の効果を説明する。
図12は、電動車両の状態を示す図である。図12(a)には、基本目標トルク指令値Tm *が示され、図12(b)には、最終トルク目標値Tm3 *が示され、図12(c)には、電動車両の前後方向の加速度aが示されている。
この図においては、アクセルオフ(コースト)で減速している状態で、時刻t0において、アクセルが踏み込まれる。そして、時刻t1になると車両の加速度が一定になる。このような車両の状態における、基本目標トルク指令値Tm *、最終トルク目標値Tm3 *、車両前後加速度aが示されている。なお、点線が従来の制振制御が行われている場合(損失考慮処理、及び、損失補償処理が行われていない場合)を示し、実線が本願の制振制御が行われている場合を示している。
図12(a)の目標トルク指令値を参照すると、時刻t0まではアクセルペダルが踏まれていないため、モータ3は回生制動を行い車両が減速するように、基本目標トルク指令値Tm *は負の値となる。そしで、時刻t0にてアクセルペダルが踏まれると、モータ3にて駆動トルクが発生して車両が加速できるように、基本目標トルク指令値Tm *は正の値となる。
ここで、基本目標トルク指令値Tm *の符号が変わると、減速機7のモータ3側のギアが、駆動軸8側のギアとの間に存在するバックラッシュを通過する。
減速機7のギアの相対位置関係を誤認識してしまうと、このような誤認識に起因して、図9(b)にて点線で示すように、過剰なFBトルクが生成されてしまう。そして、車両前後加速度aが一定の値となる時刻t1までの間に最終トルク目標値Tmf *がオーバーシュートしてしまう。そのため、図9(c)にて点線で示すように、車両前後加速度aが滑らかに変化せず、ドライバにとって違和感のある車両挙動を誘発してしまうことになる。
本発明によれば、トルク損失による外乱が考慮されているため、減速機7のギアの相対位置関係の誤認識が生じにくくなる。そのため、図9(b)にて実線で示すように、時刻t1までの間に最終トルク目標値Tmf *がオーバーシュートしにくくなる。したがって、図9(c)にて実線で示すように、車両前後加速度aが滑らかに変化して、ドライバにとって違和感のある車両挙動がおこりにくくなる。
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の電動車両の制御方法によれば、FF演算処理(S402)の前段でトルク損失の影響を考慮した損失考慮処理(S401)を行うことで、制振性を向上させることができる。具体的には、図5に示したように、損失考慮部501においては、基本目標トルク指令値Tm*に対して、(1)式に示されたようなモータ3から駆動軸8までのトルク損失に応じた補正を行って有効トルク成分Tm1 *を算出する損失考慮処理(S401)が行われる。
そして、有効トルク成分Tm1 *に対して、モータ3のトルクが車両の駆動軸8に伝達されない不感帯をモデル化した飽和関数であるブロック703を有するFF演算部502によるFF演算処理(S402)、及び、車両の駆動力伝達系の固有振動周波数を低減するフィルタH(s)を有するFB演算部503によるFB演算処理(S403)が行われる。そして、補償値加算部504が、FF演算部502から出力されるFF演算部出力FFoutと、FB演算部503から出力されるFB演算部出力FBoutとを加算して、制振制御後トルク指令値Tm2 *を求める。そして、制振制御後トルク指令値Tm2 *に基づいてモータ3へ流す電流の制御処理(S205)が行われる。
ここで、実際の電動車両においては、モータ3にて発生するトルクから、駆動軸8までとの間にはトルク損失が存在する。そのため、FF演算処理(S401)に用いられる基本目標トルク指令値Tm *に対して、(1)式を用いて、トルク損失を考慮した実際に駆動輪にて働く有効成分を算出する補正を行う。このようにすることで、噛みあうギアの相対的な位置が正確に求められるので、車両を滑らかに加速及び減速することができる。
特に、図12に示されたように、減速している状態で再加速するような場合においては、最終トルク目標値Tm3 *のオーバーシュートが発生しないので、車両を滑らかに加速することができる。
また、本発明の電動車両の制御方法によれば、図5を参照すると、補償値加算部504は、FF演算部502から出力されるFF演算部出力FFoutと、FB演算部503から出力されるFB演算部出力FBoutとを加算して、制振制御後トルク指令値Tm2 *を求める。そして、損失補償部505は、制振制御後トルク指令値Tm2 *に対して、損失補償処理(S405)を行って最終トルク目標値Tm3 *を求める。
実際の電動車両においては、トルク損失が存在するためモータ3への指令値に対して出力値が目減りしてしまう。そこで、補償値加算部504から出力される制振制御後トルク指令値Tm2 *に対して、(2)式を用いてトルク損失を補償する。このようにすることで、モータ3の駆動トルクにおける目減り分が補償されるので、モータ3のトルク損失の影響を低減することができる。
なお、機械損失に起因するトルク外乱を抑制するために、FB演算部503を用いることで、周期的に継続するような駆動軸ねじり振動の収束を早めることができる。しかしながら、ギアバックラッシュを通過した直後の駆動軸トルクの応答にて発生するオーバーシュートや立ち上がりの遅れなどは、FB演算部503では抑制することができず、損失考慮部501を用いることで抑制することができる。
また、本発明の電動車両の制御方法によれば、(1)式、及び、(2)式に示すように、損失考慮処理(S401)においては、モータ3の駆動トルクの大きさに応じて変化する変動成分と、所定のオフ設定成分とのトルク損失が考慮されている。このように、実際のモータ3におけるトルク損失を正確にモデル化して、損失考慮処理(S401)、及び、損失補償処理(S405)が行われることで、車両の加速及び減速を滑らかに行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
1 バッテリ
2 インバータ
3 モータ
7 減速機
8 駆動軸(ドライブシャフト)
501 損失考慮部
502 FF演算部
503 FB演算部
504 補償値加算部
505 損失補償部

Claims (4)

  1. 車両情報に基づいてモータに対する目標トルク指令値を設定し、該目標トルク指令値を用いて駆動輪につながるモータを制御する電動車両の制御方法であって、
    前記目標トルク指令値に対して、前記モータから駆動軸までのトルク損失に応じた補正を行う、補正ステップと、
    前記補正後の前記目標トルク指令値に対して、前記モータのトルクが車両の駆動軸に伝達されない不感帯を有する車両の駆動力伝達系の固有振動周波数を低減するフィルタ処理を行うフィルタ処理ステップと、
    前記フィルタ処理ステップにおけるフィルタ処理後の前記目標トルク指令値に対して、前記トルク損失に応じた補償を行う補償ステップと、
    前記補償ステップにより補償された前記目標トルク指令値に基づいて前記モータを制御するモータ制御ステップと、を有する、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  2. 請求項1記載の電動車両の制御方法であって、
    前記トルク損失は、前記モータにて発生するトルクに応じた変動成分を含む、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  3. 請求項1または2に記載の電動車両の制御方法であって、
    前記トルク損失は、所定のオフセット成分を含む、
    ことを特徴とする電動車両の制御方法。
  4. 車両情報に基づいてモータに対する目標トルク指令値を設定し、該目標トルク指令値を用いて駆動輪につながるモータを制御する電動車両の制御装置であって、
    前記目標トルク指令値に対して、前記モータから駆動軸までのトルク損失に応じた補正を行う補正部と、
    前記補正後の前記目標トルク指令値に対して、前記モータのトルクが車両の駆動軸に伝達されない不感帯を有する車両の駆動力伝達系の固有振動周波数を低減するフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
    前記フィルタ処理部によるフィルタ処理後の前記目標トルク指令値に対して、前記トルク損失に応じた補償を行う補償部と、
    前記補償部により補償された前記目標トルク指令値に基づいて前記モータを制御するモータ制御部と、を有する、
    ことを特徴とする電動車両の制御装置。
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