JP6733665B2 - 絶縁被膜付き電磁鋼板および水系表面処理剤 - Google Patents

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Description

本発明は、高温湿潤環境下での耐水性および防錆性に優れ、絶縁被膜の密着性、被膜外観にも優れた絶縁被膜付き電磁鋼板、該絶縁被膜付き電磁鋼板を有するモーター、および電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するために用いられる水系表面処理剤に関する。
モーターやトランス等の鉄芯に使用される電磁鋼板は、大気中の水分および酸素によって酸化されて腐食すると、金属強度や電磁性能が低下する。そのため、酸化により腐食しにくい電磁鋼板として、表面にクロメート被膜を有する電磁鋼板が使用されている。クロメート被膜としては、反応型クロメート処理法(クロム酸クロメート、リン酸クロメート等のクロムを含む表面処理剤を用いる方法)や、塗布型クロメート処理法(クロム酸塩またはクロム酸塩とシリカを含む表面処理剤を用いる方法)によって形成された被膜が挙げられる。
一方、近年では、電磁鋼板の渦電流損失を低減するために、その表面に電気絶縁性の被膜を有する電磁鋼板も提案されている。かかる電磁鋼板として、含フッ素重合体を含む絶縁被膜を表面に有する絶縁被膜付き電磁鋼板が提案されている(特許文献1および2参照。)。
特開2002−309379号公報 国際公開第2012/057168号パンフレット
しかし、特許文献1に記載の絶縁被膜は電磁鋼板との密着性が低く剥離し易く、結果として、高温湿潤環境下において絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性が劣る問題があった。
また、特許文献2に記載の絶縁被膜は耐水性が低く、特に、高温湿潤環境下において絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性が劣る問題があった。
さらに、絶縁被膜に関しては、その外観特性も優れることが求められる。
本発明の課題は、高温湿潤環境下での耐水性および防錆性に優れ、絶縁被膜の電磁鋼板への密着性に優れ、かつ、絶縁被膜の外観特性にも優れた絶縁被膜付き電磁鋼板を提供することである。
また、本発明の他の課題は、上記諸特性に優れた絶縁被膜付き電磁鋼板を有するモーター、および、かかる絶縁被膜を形成するために用いられる水系表面処理剤を提供することである。
本発明は、以下の要旨を有する。
(1)電磁鋼板と、上記電磁鋼板上に配置された、フルオロオレフィンに基づく単位を有する含フッ素重合体および金属塩を含む絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板であって、含フッ素重合体が、以下の要件1および要件2を満たすことを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板。
要件1:上記含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの水蒸気透過率が0.01〜5g/m・dayである。
要件2:上記含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの酸素透過率が0.2mol/m・s・Pa未満である。
(2)上記含フッ素重合体が、さらに、以下の要件3を満たす、(1)に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
要件3:上記含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率が0.1mol/m・s・Pa未満である。
(3)上記含フッ素重合体のフッ素原子含有量が、15〜30wt%である、(1)または(2)に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
(4)上記含フッ素重合体が、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく単位を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
(5)上記単量体Aに基づく単位の含有量が、上記含フッ素重合体の全(100mol%)に対して、5〜40mol%である、(4)に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
(6)上記含フッ素重合体が、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する単量体Bに基づく単位を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
(7)上記単量体Bに基づく単位の含有量が、上記含フッ素重合体の全(100mol%)に対して、5〜20mol%である、(6)に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
(8)上記含フッ素重合体が、架橋構造を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板を有するモーター。
(10)電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するために用いられる、水を含む水系表面処理剤であって、
フルオロオレフィンに基づく、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく、並びに、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する単量体Bに基づく単位を有する含フッ素重合体と、架橋剤と、金属塩と、を含むことを特徴とする水系表面処理剤。
(11)上記架橋剤が、イソシアネート基またはアミノ基を2個以上有する化合物である、(10)に記載の水系表面処理剤。
(12)上記金属塩が、リン酸、硝酸、炭酸、硫酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、およびヘキサフルオロジルコン酸から選ばれる少なくとも1種の無機酸の金属塩、または、蟻酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、マロン酸、および酒石酸から選ばれる少なくとも1種の有機酸の金属塩である、(10)または(11)に記載の水系表面処理剤。
(13)前記金属塩の金属が、Li、Al、Mg、Ca、Sr、Ti、Ni、Mn、Co、Zr、Fe、CuまたはAgである、(10)〜(12)のいずれか1項に記載の水系表面処理剤。
本発明によれば、高温湿潤環境下での耐水性および防錆性に優れ、絶縁被膜の電磁鋼板への密着性に優れ、かつ、絶縁被膜の外観特性にも優れる絶縁被膜付き電磁鋼板が提供される。
また、本発明によれば、上記優れた諸特性を有する絶縁被膜付き電磁鋼板を有するモーター、および、電磁鋼板の表面にかかる絶縁被膜を容易に形成できる水系表面処理剤が提供される。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
重合体を構成する「単位」とは、重合体中に存在して重合体を構成する、単量体に由来する部分を意味する。炭素−炭素不飽和二重結合を有する単量体の付加重合により生じる、該単量体に由来する単位は、該不飽和二重結合が開裂して生じた2価の単位である。また、ある単位の構造を重合体形成後に化学的に変換したものも単位という。なお、以下、場合により、個々の単量体に由来する単位をその単量体名に「単位」を付した名称で呼ぶ。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<電磁鋼板>
絶縁被膜付き電磁鋼板に含まれる電磁鋼板の種類は特に限定されず、公知の電磁鋼板を使用できる。たとえば、電磁鋼板の磁性は、方向性、無方向性、または2方向性のいずれであってもよい。また、1方向性電磁鋼板であれば、その表面にフォルステライト被膜や、張力を発生させるリン酸塩系被膜が存在していてもよい。
電磁鋼板の化学組成も特に限定されず、方向性電磁鋼板であれば、たとえば、Si:2〜4質量%、Mn:≦0.4質量%、Al:≦0.1質量%の化学組成が挙げられ、無方向性電磁鋼板であれば、たとえば、Si:≦4質量%、Mn:≦1.0質量%、Al:≦3.0質量%の化学組成が挙げられる。
電磁鋼板の板厚も、特に限定されず、たとえば、0.05〜1.0mm程度である。
<絶縁被膜>
絶縁被膜付き電磁鋼板が有する絶縁被膜は、電磁鋼板上に配置されるシート状(膜状)の層である。絶縁被膜の厚みは、通常0.3〜3.0μmが好ましく、0.5〜1.5μmがより好ましい。
絶縁被膜は、フルオロオレフィンに基づく単位を有する含フッ素重合体および金属塩を含む被膜である。以下、絶縁被膜に含まれる各成分について詳述する。
(含フッ素重合体)
絶縁被膜に含まれる含フッ素重合体は、所定の特性を示す。具体的には、まず、含フッ素重合体は、以下の要件1を満たす。つまり、絶縁被膜には、シート状とした際に所定の水蒸気透過率を示す含フッ素重合体が含まれる。
要件1:含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの水蒸気透過率が0.01〜5g/m・dayである。
水蒸気透過率は、特に、0.01〜2.5g/m・dayが好ましく、0.01〜1.9g/m・dayがより好ましい。
含フッ素重合体をシート状とする方法は特に限定されず、例えば、含フッ素重合体を含む溶液をシート状(膜状)に塗布し、必要に応じて、溶媒を除去する方法や、含フッ素重合体を溶融させて各種成形方法(例えば、押出し成形)によりシート状(膜状)とする方法等が挙げられる。なお、後述するように、水蒸気透過率を測定するために、含フッ素重合体シートとしては、膜厚60μmのシートが作製される。
また、絶縁被膜中の含フッ素重合体が架橋構造を有する場合、含フッ素重合体シートも架橋構造を有する。つまり、絶縁被膜を形成する際に、架橋性基を有する含フッ素重合体と、架橋剤(例えば、架橋性基と反応する基を2個以上有する架橋剤)とを用いる場合は、架橋性基を有する含フッ素重合体と架橋剤とを用いて作製された含フッ素重合体シートを用いて、水蒸気透過率を測定する。これは、酸素透過率および二酸化炭素透過率を測定するために用いられる含フッ素重合体シートに関しても、上記と同様である。
本明細書において、含フッ素重合体シートの水蒸気透過率とは、JIS Z 0208のB条件(温度 40℃±0.5℃、湿度 90%±2%)に準拠して測定される膜厚60μmの含フッ素重合体シートの水蒸気透過率の値を、膜厚1μmあたりに換算した値、つまり、膜厚60μmの含フッ素重合体シートの水蒸気透過率の値を60で除した値である。
また、含フッ素重合体は、以下の要件2を満たす。つまり、絶縁被膜には、シート状とした際に所定の酸素透過率を示す含フッ素重合体が含まれる。
要件2:含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの酸素透過率が0.2mol/m・s・Pa未満である。
酸素透過率は、特に、0.1mol/m・s・Pa以下が好ましく、0.05mol/m・s・Pa以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0.00mol/m・s・Pa超である。
含フッ素重合体シートの作製方法および定義は、上述の通りである。
本明細書において、含フッ素重合体シートの酸素透過率は、JIS K 7126−1に準拠して測定される膜厚60μmの含フッ素重合体シートの酸素透過率の値を、膜厚1μmあたりに換算した値、つまり、膜厚60μmの含フッ素重合体シートの酸素透過率の値を60で除した値である。
絶縁被膜は、電磁鋼板の腐食原因となる水と酸素以外の空気中の酸化成分、たとえば、二酸化炭素を透過させないことが好ましい。そのため、含フッ素重合体は、以下の要件3を満たすことが好ましい。
要件3:含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率が0.1mol/m・s・Pa未満である。
二酸化炭素透過率は、0.08mol/m・s・Pa以下が好ましく、0.05mol/m・s・Pa以下がより好ましい。下限は特に限定されず、0.00mol/m・s・Pa超である。
含フッ素重合体シートの作製方法および定義は、上述の通りである。
本明細書において、含フッ素重合体シートの二酸化炭素透過率は、JIS K 7126−1に準拠して測定される膜厚60μmの含フッ素重合体シートの二酸化炭素透過率の値を、膜厚1μmあたりに換算した値、つまり、膜厚60μmの含フッ素重合体シートの二酸化炭素透過率の値を60で除した値である。
以下、含フッ素重合体の好ましい態様に関して、詳細に記載する。
フルオロオレフィンは、炭化水素系オレフィン(一般式C2n)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。フルオロオレフィンの炭素数nは、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数は、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。
フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
含フッ素重合体中のフルオロオレフィンに基づく単位としては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、またはヘキサフルオロプロピレンに基づく単位が好ましく、後述する他の単量体との交互重合性の観点から、クロロトリフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレンが特に好ましい。
なお、含フッ素重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位以外の含フッ素単量体に基づく単位を有していてもよい。該含フッ素単量体の具体例としては、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ペンタフルオロプロビル、アクリル酸ペルフルオロシクロヘキシル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ペンタフルオロプロビル、メタクリル酸ペルフルオロシクロヘキシル等が挙げられる。
フルオロオレフィンに基づく単量体の含有量は、絶縁被膜における金属塩の分散性の観点から、含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対して、20〜80mol%が好ましく、30〜70mol%が特に好ましい。
また、含フッ素重合体のフッ素原子含有量は特に限定されないが、絶縁被膜における金属塩の分散性の観点から、15〜30wt%(質量%)が好ましい。
含フッ素重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位以外の「他の単位」を有していてもよい。
「他の単位」の第一の態様としては、フルオロオレフィンに基づく単位以外の単位であり、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく単位が好ましい。本発明者らの検討によれば、該単量体Aはフルオロオレフィンと良好な交互重合性を有し、かつ、該単位を有する含フッ素重合体を構成成分とする被膜は、水蒸気透過率が低く、電磁鋼板の絶縁被膜として特に優れた物性を示すことが確認された。
該単量体Aにおける脂環式アルキル基は、炭素数が好ましくは3〜20、より好ましくは4〜15の脂環式アルキル基が好ましい。該単量体Aの具体例としては、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、2−エチルヘキシルアリルエーテル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、2−エチルヘキサンカルボン酸ビニル等が挙げられる。
単量体Aに基づく単位の含有量は、水蒸気透過率の低い絶縁被膜を形成する観点から、含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対して、5〜40mol%が好ましく、10〜40mol%が特に好ましい。
「他の単位」の第二の態様としては、フルオロオレフィンに基づく単位と上記単量体Aに基づく単位以外の単位であり、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、架橋性基を有する単量体Bに基づく単位が好ましい。本発明者らの検討によれば、絶縁被膜中の含フッ素重合体が架橋構造を有する含フッ素重合体である場合には、水蒸気、酸素および二酸化炭素の透過率が低く、かつ、電磁鋼板との密着性にも優れた絶縁被膜が得られる。
架橋性基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基または加水分解性シリル基が好ましく、ヒドロキシ基が特に好ましい。
架橋性基を有する単量体Bの内、ヒドロキシ基を有する単量体の具体例としては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエステル、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる(これらの単量体におけるヒドロキシアルキル基は、鎖状であってもよく、環状であってもよい。)。より具体的には、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、式:X’−Y’−OHで表される単量体、式:X’−Z’−OHで表される単量体等が挙げられる。
ただし、X’−Y’−OH及びX’−Z’−OHX’中、X’はビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、アリルエーテル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基であり、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基であり、Z’は式−C2a−(OC2b−で表される基(aは1〜10の整数であり、bは1〜4の整数であり、cは2〜20の整数である。以下同様。)である。
単量体B(例えば、式:X’−Y’−OHの単量体と式:X’−Z’−OHの単量体)の他の具体例としては、下記化合物が挙げられる(ただし、下記式中の−cycloC10−は、1,4−シクロヘキシレン基を示す。)。
CH=CHOCH−cycloC10−CHOH、
CH=CHCHOCH−cycloC10−CHOH、
CH=CHOC18OH、
CH=CHCHOC18OH、
CH=CHO−C2a−(OC2b−OH、
CH=CHCHO−C2a−(OC2b−OH、
CH=CHOCH−cycloC10−C2a−(OC2b−OH。
単量体Bに基づく単位の含有量は、含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対して、5〜20mol%が好ましい。
なお、単量体Bに由来する架橋性基は、絶縁被膜中においては、他の成分と反応していてもよい。たとえば、架橋性基は、架橋性基と反応する基を2個以上有する架橋剤と反応して、絶縁被膜中に架橋構造が形成されていてもよい。
つまり、絶縁被膜中において、含フッ素重合体は架橋構造を有していてもよい。
「他の単位」の第三の態様としては、フルオロオレフィンに基づく単位と上記単量体Aに基づく単位と上記単量体Bに基づく単位以外の単位が挙げられる。該単位を形成する単量体の具体例としては、ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル、アルキルビニルエステル、アルキルアリルエステル、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
本発明における含フッ素重合体の具体例は、フルオロオレフィンに基づく単位と、単量体Aに基づく単位と、単量体Bに基づく単位とを有し、含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対する含有量が、好ましくは、順に、20〜80mol%、5〜40mol%、5〜30mol%であり、より好ましくは、順に、30〜60mol%、10〜30mol%、5〜20mol%である、架橋構造を有する含フッ素重合体が挙げられる。
(金属塩)
金属塩は、絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性を向上させる成分であれば、特に限定されず、リン酸、硝酸、炭酸、硫酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、およびヘキサフルオロジルコン酸から選ばれる少なくとも1種の無機酸の金属塩、または、蟻酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、マロン酸、および酒石酸から選ばれる少なくとも1種の有機酸の金属塩が好ましい。無機酸は、絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性の観点から、リン酸が好ましい。
金属塩の金属は、Li、Al、Mg、Ca、Sr、Ti、Ni、Mn、Co、Zr、Fe、CuまたはAgが好ましく、絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性の観点から、Alが特に好ましい。
金属塩は、電磁鋼板を腐食させうる酸化成分(通常、大気中の水分、酸素および二酸化炭素)を還元しうる還元性金属塩が好ましく、還元により電磁鋼板の表面に犠牲層を形成して電磁鋼板の腐食を抑制しうる還元性金属塩が特に好ましい。
絶縁被膜には、上述した含フッ素重合体および金属塩以外の他の成分が含まれていてもよく、たとえば、後述する水系表面処理剤に含まれていてもよい他の成分が挙げられる。
絶縁被膜中における含フッ素重合体の含有量は特に制限されないが、絶縁被膜全質量に対して、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.1〜18.0質量%が特に好ましい。
絶縁被膜中における金属塩の含有量は特に制限されないが、含フッ素重合体100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、10〜700質量部が特に好ましい。金属塩の含有量が、上記範囲の下限値以上であれば、絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性に優れ、上記範囲の上限値以下であれば、絶縁被膜の外観に優れる。
絶縁被膜の付着量は特に制限されないが、電磁鋼板の片面あたりの付着量として、0.1〜1000g/mが好ましく、0.5〜500g/mが特に好ましい。
<絶縁被膜の製造方法>
絶縁被膜の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、上述した含フッ素重合体および金属塩を含む組成物を電磁鋼板上に塗布して、絶縁被膜を製造する方法や、含フッ素重合体および金属塩を含む組成物を溶融させて各種成形方法(例えば、押出し成形法)により電磁鋼板上に絶縁被膜を製造する方法等が挙げられる。なかでも、本発明では、下記する水系表面処理剤を用いる方法が好ましい。以下、水系表面処理剤を用いる方法について詳述する。
(水系表面処理剤)
水系表面処理剤は、電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するために用いられる、水を含む表面処理剤であって、フルオロオレフィンに基づく単位、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく単位、および、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する単量体Bに基づく単位を有する含フッ素重合体と、架橋剤と、金属塩とを含む。
水系表面処理剤における含フッ素重合体を構成するそれぞれの単位(フルオロオレフィンに基づく単位、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく単位、および、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する単量体Bに基づく単位)およびその好ましい態様、並びに、それぞれの単位の含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対する含有量の好ましい範囲は、上述した絶縁被膜に含まれる含フッ素重合体の説明の通りである。
含フッ素重合体が、架橋性基としてヒドロキシ基を有する場合には、含フッ素重合体の水酸基価は20mgKOH/g以上が好ましく、40mgKOH/g以上が特に好ましい。この場合、含フッ素重合体の水酸基価が上記下限値以上であれば、架橋剤との反応によって、絶縁被膜の耐溶剤性等が格段に向上する。上記水酸基価は、特に限定されないが、200mgKOH/g以下が好ましい。
また、水系表面処理剤に含まれる金属塩の定義およびその好ましい態様も、上述した絶縁被膜に含まれる金属塩の説明の通りである。
水系表面処理剤に含まれる架橋剤は、含フッ素重合体の架橋性基と反応しうる基を2個以上有し、含フッ素重合体を架橋させる化合物であれば、特に限定されない。
架橋剤は、含フッ素重合体中の架橋性基を有する単位の種類によって、適宜選択される。たとえば、含フッ素重合体に含まれる架橋性基がヒドロキシ基である場合には、イソシアネート基を2個以上有する化合物が好ましく、含フッ素重合体に含まれる架橋性基がアミノ基である場合にはイソシアネート基を2個以上有する化合物が好ましく、含フッ素重合体に含まれる架橋性基がカルボキシ基である場合にはアミノ基を2個以上有する化合物が好ましい。
イソシアネート基を2個以上有する化合物としては、公知のイソシアネート系硬化剤、公知のブロック化イソシアネート系硬化剤などを使用できる。また、アミノ基を2個以上有する化合物としては、公知のアミノ樹脂を使用できる。なお、架橋剤は、自己架橋性を有する硬化剤であってもよい。
水系表面処理剤において、含フッ素重合体の固形分濃度は、0.1〜50.0質量%であるのが好ましく、0.2〜40.0質量%であるのが特に好ましい。固形分濃度が上記範囲の下限値以上であれば、歪取り焼鈍後の滑り性が優れる。固形分濃度が上記範囲の上限値以下であれば、絶縁被膜の電磁鋼板への密着性が優れる。
なお、後述するように、水系表面処理剤が含フッ素重合体以外の重合体(たとえば、アクリル樹脂等)を含む場合において、水系表面処理剤における含フッ素重合体と含フッ素重合体以外の重合体との合計の固形分濃度は上記した範囲内であるのが好ましい。
水系表面処理剤は、含フッ素重合体100質量部に対して、金属塩を1〜1000質量部含むのが好ましく、10〜700質量部含むのが特に好ましい。金属塩の含有量が、上記範囲の下限値以上であれば絶縁被膜付き電磁鋼板の防錆性に優れ、上記範囲の上限値以下であれば絶縁被膜の外観特性に優れる。
水系表面処理剤において、架橋剤の含有量は、含フッ素重合体100質量部に対して、0.1〜50.0質量部が好ましく、0.5〜30.0質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲の下限値以上であれば、絶縁被膜の耐水性に優れ、上記範囲の上限値以下であれば、絶縁被膜と電磁鋼板との密着性に優れる。
水系表面処理剤は、含フッ素重合体と架橋剤と金属塩以外の他の成分を、必要に応じて含んでいてもよい。
他の成分としては、有機溶媒、含フッ素重合体以外の重合体、乳化剤、無機系着色顔料、有機系着色顔料、体質顔料、硬化触媒、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、造膜助剤、増粘剤等が挙げられる。
なかでも、水系表面処理剤が造膜助剤を含む場合には、被膜外観、耐水性、電磁鋼板への密着性、防錆性等の物性により優れる絶縁被膜が得られる。造膜助剤としては、たとえば、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタジオールモノ(2−メチルポロピオネート)、ジエチルングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
有機溶媒の具体例としては、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ペンタノール等)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、第2級ブチルセロソルブ等)、プロピレングリコール誘導体(プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等)、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)が挙げられる。
(製造手順)
絶縁被膜付き電磁鋼板は、上記水系表面処理剤を電磁鋼板の表面に、ロールコータ等を用いた塗布法、スプレー法、ディップ法等の手段によって接触させた後、必要に応じて、加熱(焼き付け)処理して製造するのが好ましい。該処理を実施することにより、含フッ素重合体と架橋剤とが反応して、絶縁被膜中において架橋構造が形成される。
加熱温度は、たとえば、150〜400℃であり、加熱時間は、たとえば、15〜120秒間である。
<絶縁被膜付き電磁鋼板>
上記絶縁被膜付き電磁鋼板は高温湿潤環境下での耐水性および防錆性に優れ、絶縁被膜の電磁鋼板への密着性に優れ、かつ、絶縁被膜の外観特性にも優れる。
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、モーター(具体的には、モーターのステーターおよびローター)、トランスのEIコア等に好ましく適用でき、モーターが好ましい。
より具体的には、本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、発電所の発電機、超高圧変電所および一次、二次変電所の変圧器、工場の動力用モーターおよび変圧器、列車関係の電車用モーターおよび冷房用モーター、ビルの変圧器、冷房機、空調用モーター、道路照明の安定器、蛍光灯の安定器(トランスの一種)、洗濯機および脱水機用モーター、フロッピーディスクドライブ内のフロッピーを回転させるモーターおよびヘッドを動かすステッピングモーター、髭そりシェーバーのモーター、冷蔵庫およびエアコンのコンプレッサー用モーター、テレビの電源トランス、ハイブリッドカーのモーターの鉄芯等に使用できる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、以下の例における略号は以下のとおりである。
EVE:エチルビニルエーテル
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル
CM−EOVE:CH=CHOCH−cycloC10−CH(OCHCHOH(数平均分子量:830)
CHMVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHOH
CTFE:クロロトリフルオロエチレン
4−HBVE:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル
2−EHVE:2−エチルへキシルビニルエーテル
PVDF:ポリビニリデンフルオリド
(調製例1)
以下のようにして、含フッ素重合体(1)を含む水性液(1)を調製した。
内容積2500mLの撹拌機付きステンレス製オートクレーブ中に、水(1280g)、EVE(185g)、CHVE(244g)、CM−EOVE(47g)、CHMVE(194g)、イオン交換水(1280g)、炭酸カリウム(2.0g)、過硫酸アンモニウム(1.3g)、ノニオン性乳化剤(日本乳化剤社製、Newcol(登録商標)−2320)(33g)、および、アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)(1.4g)を仕込み、オートクレーブを氷で冷却して、窒素ガスでオートクレーブ内が0.4MPaGになるよう加圧し脱気した。この加圧脱気を2回繰り返した。次に、オートクレーブ内が0.095MPaGとなるまで脱気して溶存空気を除去した後、オートクレーブ中にCTFE(664g)を仕込み、50℃で24時間反応を行った。24時間反応を行った後、オートクレーブを水冷して反応を停止した。得られた反応液を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、固形分濃度50質量%の水性液(1)を得た。
水性液(1)に含まれる含フッ素重合体(1)の水酸基価は55mgKOH/gであり、含フッ素重合体(1)中の各単位の比はCTFE単位/CM−EOVE単位/CHMVE単位/EVE単位/CHVE単位=50/0.5/10/22.5/17(モル比)であり、含フッ素重合体(1)のフッ素原子含有量は24.3質量%であった。
なお、含フッ素重合体(1)中の各単位の比は、H−NMRや13C−NMRでの分析により求められる。また、含フッ素重合体(1)のフッ素原子含有量は、以下の手順によって測定した。
1)遠心分離により、水性液(1)から含フッ素重合体(1)を回収した。
2)含フッ素重合体(1)と炭酸カリウムとまぶした後に、るつぼ中で、600℃にて、1時間加熱分解させた。
3)生成したフッ化カリウムを水に溶解させた水溶液のフッ素物イオン強度をイオン電極法により測定した。
4)測定したフッ化物イオン強度と、フッ素濃度が既知であるポリテトラフルオロエチレン単独重合体のキャリブレーション値とから、含フッ素重合体(1)のフッ素原子含有量を算出した。
(調製例2)
以下のようにして、含フッ素重合体(2)を含む水性液(2)を調製した。
含フッ素重合体(旭硝子社製、ルミフロン(登録商標)フレーク、CTFE単位/EVE単位/CHVE単位/4−HBVE単位=50/15/15/20(モル比)、水酸基価:100mgKOH/g、質量平均分子量:7000)を、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させて固形分60質量%のワニスを得た。
このワニス(300g)に、無水こはく酸(4.8g)、および触媒としてトリエチルアミン(0.072g)を加え、70℃で6時間反応させエステル化した。反応液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、反応前に観測された無水酸の特性吸収(1850cm−1、1780cm−1)が反応後では消失しており、カルボン酸(1710cm−1)およびエステル(1735cm−1)の吸収が観測された。エステル化後の含フッ素重合体の水酸基価は85mg/KOH、酸価は15mgKOH/gであった。
次に、エステル化後の含フッ素重合体に、トリエチルアミン(4.9g)を加え室温で20分撹拌してカルボン酸を中和し、イオン交換水(180g)を徐々に加えた。
最後に、メチルエチルケトンを減圧留去した。その後、得られた固形物とイオン交換水とを混合し、固形分濃度50質量%の水性液(2)を得た。
水性液(2)に含まれる含フッ素重合体(2)の各単位の比は、CTFE単位/EVE単位/CHVE単位/4−HBVE単位/エステル化された4−HBVE単位=50/15/15/17/3(モル比)であった。エステル化された4−HBVE単位のうち、トリエチルアミンで中和された割合は70モル%であった。
なお、含フッ素重合体(2)中の各単位の比は、H−NMRや13C−NMRでの分析により求められ、調製例1と同様にして求めた含フッ素重合体(2)のフッ素原子含有量は25.6質量%であった。
(調製例3)
以下のようにして、含フッ素重合体(3)を含む水性液(3)を調製した。
内容積2500mLの撹拌機付きステンレス製オートクレーブ中に、水(1280g)、CHVE(415g)、2−EHVE(230g)、CM−EOVE(21g)、CHMVE(34g)、イオン交換水(1280g)、炭酸カリウム(3.0g)、過硫酸アンモニウム(5.4g)、ノニオン性乳化剤(日本乳化剤社製、Newcol(登録商標)−2320)(33g)、および、アニオン性乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)(1.4g)を仕込み、オートクレーブを氷で冷却して、窒素ガスでオートクレーブ内を0.4MPaGになるよう加圧し脱気した。この加圧脱気を2回繰り返した。次に、オートクレーブ内が0.095MPaGとなるまで脱気して溶存空気を除去した後、CTFE(580g)を仕込み、50℃で24時間反応を行った。24時間反応を行った後、オートクレーブを水冷して反応を停止した。得られた反応液を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、固形分濃度50質量%の水性液(3)を得た。
水性液(3)に含まれる含フッ素重合体(3)の水酸基価は10mgKOH/gであった。含フッ素重合体(3)中の各単位の比は、CTFE単位/CM−EOVE単位/CHMVE単位/CHVE単位/2−EHVE単位=50/0.25/2/33/14.75(モル比)であった。
なお、含フッ素重合体(3)中の各単位の比は、H−NMRや13C−NMRでの分析により求められ、調製例1と同様にして求めた含フッ素重合体(3)のフッ素原子含有量は22.2質量%であった。
(実施例1)
リン酸アルミニウム(10.0g)、調製例1で得た含フッ素重合体(1)の水性液(1)(5.0g)、造膜助剤であるジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル(0.4g)、増粘剤(アクゾノーベル社製、ベルモドール(登録商標)2150)(0.01g)、水分散型イソシアネート系硬化剤(住化バイエル社製、バイヒジュール(登録商標)3100)(0.6g)、および、イオン交換水(83.99g)を混合し、水系表面処理剤(1)を調製した。水系表面処理剤(1)中における含フッ素重合体(1)の固形分濃度は2.5質量%であった。
得られた水系表面処理剤(1)を板厚0.5mmの電磁鋼板の両面に、焼き付け後の絶縁被膜の付着量(片面あたりの付着量)が1.0g/mとなるようにロールコータで塗布し、その後、熱風炉で最高到達温度が270℃となるように、30秒間加熱して架橋構造を有する含フッ素重合体を含む絶縁被膜を電磁鋼板の両表面に形成した。
なお、別途作製した含フッ素重合体(1)のシートの膜厚1μmあたりの水蒸気透過率、膜厚1μmあたりの酸素透過率、および、膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率は、それぞれ、1.8g/m・day、0.02mol/m・s・Pa、および、0.02mol/m・s・Paであった。上記含フッ素重合体(1)のシートを作製する際には、含フッ素重合体(1)と水分散型イソシアネート系硬化剤(住化バイエル社製、バイヒジュール(登録商標)3100)とを用いた。含フッ素重合体(1)のシート中には架橋構造が含まれていた。含フッ素重合体(1)と水分散型イソシアネート系硬化剤との使用量比は、上記水系表面処理剤(1)中での使用量比と同じであった。
(実施例2)
水性液(1)を水性液(2)に変更し、含フッ素重合体(2)の固形分濃度を2.5質量%とした以外は、実施例1と同様にして水系表面処理剤(2)を調製し、それを用いて架橋構造を有する含フッ素重合体を含む絶縁被膜を電磁鋼板の両表面に形成した。
なお、別途作製した含フッ素重合体(2)のシートの膜厚1μmあたりの水蒸気透過率、膜厚1μmあたりの酸素透過率、および、膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率は、それぞれ、1.9g/m・day、0.03mol/m・s・Pa、および、0.03mol/m・s・Paであった。上記含フッ素重合体(2)のシートを作製する際には、含フッ素重合体(2)と水分散型イソシアネート系硬化剤(住化バイエル社製、バイヒジュール(登録商標)3100)とを用いた。含フッ素重合体(2)のシート中には架橋構造が含まれていた。含フッ素重合体(2)と水分散型イソシアネート系硬化剤との使用量比は、上記水系表面処理剤(2)中での使用量比と同じであった。
(比較例1)
調製例1の水性液(1)を、PVDFとアクリル樹脂を含む水性液(Arkema社製、製品名「Kynar(登録商標) Aquatec FMA−12」(PVDF/アクリル樹脂=50/50(質量比)、アクリル樹脂:メタクリル酸メチル単位/メタクリル酸エチル単位/メタクリル酸ブチル単位=60/20/20(モル比)、固形分濃度50質量%、PVDFのフッ素原子含有量:29.5wt%、CHVE単位:0.0モル%。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度(PVDFとアクリル樹脂の合計濃度)が2.5質量%の水系表面処理剤(3)を調製し、それを用いてPVDFとアクリル樹脂とを含む絶縁被膜を電磁鋼板の両表面に形成した。
なお、別途作製したPVDFのシート(PVDFからなるシート)の膜厚1μmあたりの水蒸気透過率、膜厚1μmあたりの酸素透過率、および、膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率は、それぞれ19.6g/m・day、0.5mol/m・s・Pa、および、0.6mol/m・s・Paであった。
(比較例2)
水性液(1)を水性液(3)に変更し、さらに、水分散型イソシアネート系硬化剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、水系表面処理剤(4)を調製し、それを用いて架橋構造を有しない含フッ素重合体を含む絶縁被膜を電磁鋼板の両表面に形成した。
なお、別途作製した含フッ素重合体(3)のシート(含フッ素重合体(3)からなるシート)の膜厚1μmあたりの水蒸気透過率、膜厚1μmあたりの酸素透過率、および、膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率は、それぞれ、1.0g/m・day、0.2mol/m・s・Pa、および、0.1mol/m・s・Paであった。
それぞれの例で得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の被膜外観、耐水性(耐白化性)、密着性、および、防錆性を以下の方法により評価した。それぞれの絶縁被膜に含まれる含フッ素重合体の物性を表1に、評価結果を表2に示す。
(評価方法)
(1)被膜外観
絶縁被膜付き電磁鋼板の試験片の絶縁被膜の外観を目視により観察して、下記の3段階で評価した。○が合格である。
○:全面的に透明で、ヘイズが全く見られない。
△:部分的に透明性の劣る部位がある。
×:全面的に透明性が劣る。
(2)耐水性(耐白化性)
50℃、98%RHに調整した恒温恒湿槽内に、絶縁被膜付き電磁鋼板の試験片を吊るし、72時間経過後の絶縁被膜表面の状態を目視により評価した。○が合格である。
○:白化なし ×:白化あり
(3)密着性
長さ50mm、幅25mmの絶縁被膜付き電磁鋼板の試験片を、直径5mmの鉄棒に巻き付け、巻き付けた外側の部分(絶縁被膜)についてテープ剥離試験を行って、電磁鋼板に残存した絶縁被膜の状況を目視により評価した。○が合格である。
○:被膜剥離なし ×:被膜剥離発生
(4)防錆性
絶縁被膜付き電磁鋼板の試験片を、50℃、95%RHに調整した恒温恒湿槽内に800時間暴露した後、表面錆の面積率を目視で判定した。○が合格である。
○:表面錆の面積率が10%以下 ×:表面錆の面積率が10%超
表1中、「架橋構造」欄は、絶縁被膜中における含フッ素重合体の架橋構造の有無を表す。表1中、「水蒸気透過率」、「酸素透過率」、および、「二酸化炭素透過率」は、各実施例および各比較例で作製した含フッ素重合体のシートの各測定値を表す。
Figure 0006733665
Figure 0006733665
上記表2に示すように、本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板においては、所望の効果が得られることが確認された。
一方、含フッ素重合体のシートの水蒸気透過率および酸素透過率が所定範囲外である比較例1、および、含フッ素重合体のシートの酸素透過率が所定範囲外である比較例2では、所望の効果が得られなかった。
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、種々の用途に適用でき、たとえば、発電所の発電機、超高圧変電所および一次、二次変電所の変圧器、工場の動力用モーターおよび変圧器、列車関係の電車用モーターおよび冷房用モーター、ビルの変圧器、冷房機、空調用モーター、道路照明の安定器、蛍光灯の安定器(トランスの一種)、洗濯機および脱水機用モーター、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ内のフロッピー(登録商標)を回転させるモーターおよびヘッドを動かすステッピングモーター、髭そりシェーバーのモーター、冷蔵庫およびエアコンのコンプレッサー用モーター、テレビの電源トランス、並びに、ハイブリッドカーのモーターの鉄芯等に使用できる。
なお、2015年4月20日に出願された日本特許出願2015−086248号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (10)

  1. 電磁鋼板と、
    前記電磁鋼板上に配置された、フルオロオレフィンに基づく単位を有する含フッ素重合体および金属塩を含む絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板であって、
    前記含フッ素重合体は、架橋構造を有し、
    前記金属塩は、リン酸、硝酸、炭酸、硫酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、およびヘキサフルオロジルコン酸から選ばれる少なくとも1種の無機酸の金属塩、または、蟻酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、マロン酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸の金属塩であり、かつ、前記金属塩の金属は、Li、Al、Mg、Ca、Sr、Ti、MnまたはZrであり、
    前記含フッ素重合体が、以下の要件1および要件2を満たすことを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板。
    要件1:前記含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの水蒸気透過率が0.01〜5g/m・dayである。
    要件2:前記含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの酸素透過率が0.2mol/m・s・Pa未満である。
  2. 前記含フッ素重合体が、さらに、以下の要件3を満たす、請求項1に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
    要件3:前記含フッ素重合体をシート状とした際、含フッ素重合体シートの膜厚1μmあたりの二酸化炭素透過率が0.1mol/m・s・Pa未満である。
  3. 前記含フッ素重合体のフッ素原子含有量が15〜30wt%である、請求項1または2に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  4. 前記含フッ素重合体が、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく単位を有する、請求項1〜3のいずれかに1項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  5. 前記単量体Aに基づく単位の含有量が、前記含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対して、5〜40mol%である、請求項4に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  6. 前記含フッ素重合体が、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する単量体Bに基づく単位を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  7. 前記単量体Bに基づく単位の含有量が、前記含フッ素重合体の全単位(100mol%)に対して、5〜20mol%である、請求項6に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板を有するモーター。
  9. 電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するために用いられる、水を含む水系表面処理剤であって、フルオロオレフィンに基づく単位、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、脂環式アルキル基を有する単量体Aに基づく単位、並びに、ビニルエーテル、アリルエーテルまたはカルボン酸ビニルであって、水酸基、カルボキシ基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する単量体Bに基づく単位を有する含フッ素重合体と、架橋剤と、金属塩と、を含み、
    前記金属塩は、リン酸、硝酸、炭酸、硫酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、およびヘキサフルオロジルコン酸から選ばれる少なくとも1種の無機酸の金属塩、または、蟻酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、マロン酸、および酒石酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸の金属塩であり、かつ、前記金属塩の金属は、Li、Al、Mg、Ca、Sr、Ti、MnまたはZrことを特徴とする水系表面処理剤。
  10. 前記架橋剤が、イソシアネート基またはアミノ基を2個以上有する化合物である、請求項に記載の水系表面処理剤。
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