JP6782923B2 - 測定装置の作動方法 - Google Patents

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Description

本発明は、頭蓋内圧推定方法に関する。
人間の頭部には、脳をはじめ多くの器官や神経が集中しており、この部位における生体情報を測定することは、健康管理、疾病予防の観点から大変意義深い。特に頭蓋内圧(ICP)は、生体恒常性によって常に一定に保たれており、頭蓋内圧が亢進、または低下してしまうと、場合によって生命に関わる重篤な疾病を引き起こすことが知られている。また、頭蓋内圧は、脳損傷、脳卒中、頭蓋内出血等の治療や診断を行う際の指標として使用されている。このため、頭蓋内圧測定方法の確立は、特に重要な意義が見出されている。
従来の頭蓋内圧測定方法としては、頭蓋骨の直下に圧電センサーを入れる方法(特許文献1、非特許文献1、2)と、側脳室に直接チューブを差し込んでそこから立ち上がる水柱の圧を測る方法(特許文献2、非特許文献3)が一般的に知られている。しかし、上記の手法はいずれも、頭蓋骨に穿孔し、内部にセンサーやチューブを設置する必要があり、被測定者の侵襲性が高く、また、測定中には絶対安静を要するものであった。また、頭蓋内圧は、一度の瞬間値のみによって測定、評価することが困難で、ある程度の時間をかけて連続値を測定することが一般的である。そうした際に、被測定者に菌の感染が起こる危険性があるため、これに対する対策についても考慮する必要があった。このため、被測定者の負担の少ない、即ち侵襲性の低い頭蓋内圧の測定技術が数多く研究されてきた。
これまで報告されてきた頭蓋内圧測定方法として、例えば、被測定者の頭蓋骨内に造影剤を注入し、NMR測定によって測定する技術について報告がある(特許文献3)。また、被測定者の頭蓋骨内に造影剤を注入し、その部位に微細な泡を発生させ、その低周波応答を取得し、共振周波数を解析する技術について報告がある(特許文献4)。また、被測定者の眼球に赤外線をあて、反射光のFT−IR分析を行うことで、頭蓋内圧測定を行う技術について報告がある(特許文献5〜7)。更に、脳周辺の部位から、生体情報を非侵襲的に検出する技術として、外耳道内脈波を測定する技術について報告がある(特許文献8〜15)。また、動脈血圧と中大脳動脈の血流について音響データを測定し、それらの非線形相関を取ることで頭蓋内圧の算出を行う報告がある(特許文献16)。また、医学的な動物実験では、猫の外耳道圧波、動脈圧波、頭蓋内圧波の同時記録から、血圧上昇時には外耳道圧の振幅が増大し、頭蓋内圧上昇時には動脈圧波から外耳道圧波への伝播時間が短くなること(非特許文献4)、犬の(外耳道内圧波の主成分である)動脈圧波と頭蓋内圧波の測定から、伝達関数上にノッチが現れ、それが脳内圧(脳脊髄液圧)変化の影響を受けていることが分かっている(非特許文献5)。
発明者らは、上記技術が有していた技術的課題に対応すべく、頸動脈脈波と外耳道内圧脈波を計測して、両者の振幅情報と波形情報に基づいて頭蓋内圧を推定する方法を提案した(特許文献17)。
特表2008−539811号公報 特開平5−300880号公報 特開2001−346767号公報 特開2006−230504号公報 特表2002−513310号公報 特開2007−301215号公報 特表2008−543352号公報 特開平8−84704号公報 特開2000−121467号公報 特表2004−528104号公報 特開2006−102163号公報 特表2006−505300号公報 特開2008−237847号公報 特開2010−17317号公報 特開2010−187928号公報 特表2006−526487号公報 特開2013−102784号公報
Neurosurgery. 2003 Mar;52(3):619-23; discussion 623. Korean J Cerebrovasc Dis. 2002 Mar;4(1):52-57. Korean. Neurologia medico-chirurgica 29(6), 484-489, 1989-06-15 慶応医学, Vol.72(6), pp.497-509, 1995. J. Neurosurg Pediatrics, Vol.2, pp.83-94, 2008.
非侵襲で簡易な構成での頭蓋内圧測定は、脳疾患等で意識障害をおこしている患者等の救急医療や重症患者管理において特にその重要性が認められる。それらの医療において頭蓋内圧測定を行う場合、測定に使用する装置は、可能な限り簡素な構成で、精度よく測定できる必要がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明によれば、非侵襲的であり、かつ簡易な装置を用いることによって、精度よく頭蓋内圧を推定することを可能にする頭蓋内圧推定方法を提供することができる。
[適用例1]
本適用例に係る頭蓋内圧推定方法は、外耳道内圧脈波の時系列データから頭蓋内圧を推定する頭蓋内圧推定方法であって、複数の被験者の頭蓋内圧と外耳道内圧脈波の時系列データを取得する取得工程と、取得した外耳道内圧脈波の時系列データを所定時間間隔で分割した各期間の外耳道内圧脈波データについて、複数の説明変数を算出する説明変数算出工程と、取得した頭蓋内圧データに基づいて、前記外耳道内圧脈波データを複数のグループに分割する分割工程と、前記グループ毎に、前記頭蓋内圧データを目的変数とし、前記説明変数について重回帰分析を行い、前記説明変数に対応する係数を算出する係数算出工程と、特定の被験者の外耳道内圧脈波データについて算出した前記説明変数に基づいて当該外耳道内圧脈波データを前記複数のグループのいずれかに分類し、当該説明変数と、分類したグループについて算出した前記係数とに基づいて、頭蓋内圧を推定する推定工程とを含む、頭蓋内圧推定方法である。
本適用例によれば、非侵襲的であり、かつ簡便な装置で測定できる外耳道内圧脈波に基づいて頭蓋内圧を推定できる。また、予め測定した複数の被験者の頭蓋内圧データと外耳道内圧脈波データを複数のグループに分割し、複数のグループ毎に重回帰分析を行って説明変数に対応する係数を算出しておき、特定の被験者の外耳道内圧脈波データについて算出した複数の説明変数に基づき外耳道内圧脈波データを複数のグループのいずれかに分類
し、説明変数と分類したグループについて算出した前記係数に基づいて頭蓋内圧を推定することで、精度よく頭蓋内圧を推定することを可能にする頭蓋内圧推定方法を実現できる。
[適用例2]
上述の頭蓋内圧推定方法において、前記分割工程において、前記頭蓋内圧データをロジット関数で正規化した値の度数分布に基づいて、前記外耳道内圧脈波データを前記複数のグループに分割し、前記説明変数に対応する正準判別関数係数を算出し、前記推定工程において、特定の被験者の外耳道内圧脈波データについて算出した前記説明変数と前記正準判別関数係数とに基づいて、当該外耳道内圧脈波データを前記複数のグループのいずれかに分類してもよい。
これによって、特定の被験者の外耳道内圧脈波データを適切にグループ分けすることができるので、精度よく頭蓋内圧を推定することを可能にする頭蓋内圧推定方法を実現できる。
[適用例3]
上述の頭蓋内圧推定方法において、前記説明変数のうち少なくとも1つは、前記各期間における、前記外耳道内圧脈波データのフォルマント周波数とQ値、自己回帰モデルにおける傾きと切片、ピークピーク値、波形率、正側波高率、負側波高率、波高率比、正側標準偏差値、負側標準偏差値、標準偏差比、正側標準偏差値の平均値に対する比、負側標準偏差値の平均値に対する比および平均値で正規化した標準偏差比、並びに、前記外耳道内圧脈波の微分関数に相当するデータの波形率、正側波高率、負側波高率および波高率比を含む群から選択されてもよい。
これによって、外耳道内圧脈波の交流成分から、直流成分である頭蓋内圧を推定できる頭蓋内圧推定方法を実現できる。
[適用例4]
上述の頭蓋内圧推定方法において、前記取得工程において、前記外耳道内圧脈波の時系列データを、音圧波形として取得してもよい。
これによって、簡易な構成の外耳道内圧脈波センサーで外耳道内圧脈波の時系列データを取得できるので、簡易な装置を用いることによって、精度よく頭蓋内圧を推定することを可能にする頭蓋内圧推定方法を実現できる。
頭蓋内圧と外耳道内圧脈波のデータを取得する測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。 外耳道内圧脈波センサーの構成例を示す図である。 頭蓋内圧と外耳道内圧脈波のデータを取得する測定装置の処理の流れを示すフローチャートである。 観測累積確率と予測累積確率との関係を表すグラフである。 頭蓋内圧の実測値のヒストグラムを表すグラフである。 ボディマス指数が負側である説明変数群について正準判別分析を行った結果得られる領域マップの一例を示す図である。 ボディマス指数が負側である説明変数群について正準判別分析を行った結果得られる正準判別関数係数の一例を示す図である。 ボディマス指数が正側である説明変数群について正準判別分析を行った結果得られる領域マップの一例を示す図である。 ボディマス指数が正側である説明変数群について正準判別分析を行った結果得られる正準判別関数係数の一例を示す図である。 グループ毎に重回帰分析を行った結果得られる回帰係数の一例を示す図である。 頭蓋内圧を推定する測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。 頭蓋内圧を推定する測定装置の処理の流れを示すフローチャートである。 26名の被験者における頭蓋内圧の推定値と実測値との関係を表すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
本実施形態に係る頭蓋内圧推定方法では、予め、複数の被験者の頭蓋内圧(ICP)と外耳道内圧脈波(ECP)のデータとを並行して取得し、取得したデータを複数のグループに分割し、重回帰分析を行ってグループ毎に回帰係数を算出しておく。
図1は、頭蓋内圧と外耳道内圧脈波のデータを取得する測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。測定装置1は、頭蓋内圧センサー110と、外耳道内圧脈波センサー120と、演算処理部(プロセッサー)及び記憶部を有する演算部130とを含む。
頭蓋内圧センサー110は、頭蓋内圧を検出する。頭蓋内圧センサー110が検出した頭蓋内圧は、AD変換器(図示省略)によりデジタルデータに変換され、演算部130に出力される。頭蓋内圧センサー110としては、ドレナージ圧センサーや硬膜下腔留置センサーを用いることができる。
外耳道内圧脈波センサー120は、外耳道内圧脈波を検出する。外耳道内圧脈波センサー120が検出した外耳道内圧脈波(外耳道脈波音圧レベル)は、AD変換器(図示省略)によりデジタルデータに変換され、演算部130に出力される。外耳道内圧脈波センサー120としては、音センサーや圧力センサーを用いることができる。
図2は、外耳道内圧脈波センサー120の構成例を示す図である。外耳道内圧脈波センサー120は、外耳道を密閉して密閉空間を形成する密閉部121と、密閉空間内の音圧レベルを外耳道脈波音圧レベルとして検出するマイクロフォン122と、を含んで構成されている。密閉部121は、略半球状に構成され、マイクロフォン122が有する音孔123と連通する音孔124が設けられている。外耳道内圧脈波を検出する際には、音孔124は、外耳道と連通するように取付けられる。また、マイクロフォン122の音孔123の先端が密閉部121の音孔124と連通するように、密閉部121とマイクロフォン122とは結合される。密閉部121としては、例えば、樹脂製のイヤーチップや、イヤーチップに可塑性の素材を組み合わせたものを採用してもよい。また、密閉部121に空気孔を設け、外耳道内への挿入が完了した際に密閉する構成としてもよい。マイクロフォン122としては、例えば、コンデンサーエレクトレットマイクロフォンを採用してもよい。
図1に戻り、演算部130は、外耳道内圧脈波センサー120で検出された外耳道内圧脈波の時系列データを所定時間間隔で分割した各期間の外耳道内圧脈波データについて複数の説明変数を算出し、頭蓋内圧センサー110で検出された頭蓋内圧の時系列データ(頭蓋内圧データ)に基づいて、前記外耳道内圧脈波データを複数のグループに分割し、グ
ループ毎に、頭蓋内圧データを目的変数とし、前記説明変数について重回帰分析を行い、前記説明変数に対応する係数を算出する。
測定装置1は、表示部140(ディスプレイ)を更に含んで構成されていてもよい。表示部140は、外耳道内圧脈波データや、頭蓋内圧データ、演算部130による演算結果等を表示する。
図3は、測定装置1の処理の流れを示すフローチャートである。まず、演算部130は、外耳道内圧脈波センサー120で検出された外耳道内圧脈波の時系列データを所定時間間隔(例えば、5秒間隔)で分割した各期間の外耳道内圧脈波データを取得する(ステップS10)。ここで、演算部130は、取得した外耳道内圧脈波データに対してデジタルフィルタ処理を適用することで、被験者の顎の動きや呼吸等に起因する体動音を除去するようにしてもよい。
ステップS10と並行して、演算部130は、頭蓋内圧センサー110で検出された頭蓋内圧データを所定時間間隔で取得する(ステップS11)。ここで、演算部130は、測定時点よりも過去の所定期間(例えば、20秒間)の頭蓋内圧の平均値を、頭蓋内圧データとして所定時間間隔(例えば、5秒間隔)で取得するようにしてもよい。並行して取得された各期間の外耳道内圧脈波データと各時点の頭蓋内圧データは、互いに対応付けられて記憶部に記憶される。
次に、演算部130は、複数の被験者から取得した各期間の外耳道内圧脈波データについて複数の説明変数を算出する(ステップS12)。より詳細には、演算部130は、外耳道内圧脈波データを波形解析することで、複数の説明変数として、外耳道内圧脈波データのフォルマント周波数とそのQ値、自己回帰モデル(ARモデル)における傾きと切片、ピークピーク値PP_dB、波形率FF_ln、正側波高率PCF_ln、負側波高率MCF_ln、波高率比RCF_ln、正側標準偏差値P_std_ln、負側標準偏差値M_std_ln、標準偏差比R_std_ln、正側標準偏差値の平均値に対する比P_std_m_ln、負側標準偏差値の平均値に対する比M_std_m_lnおよび平均値で正規化した標準偏差比R_std_m_ln、並びに、前記外耳道内圧脈波の微分関数に相当するデータの波形率dif1_FF_ln、dif2_FF_ln、正側波高率dif1_PCF_ln、dif2_PCF_ln、負側波高率dif1_MCF_ln、dif2_MCF_lnおよび波高率比dif1_RCF_ln、dif2_RCF_lnを算出する。
フォルマント周波数は、外耳道内圧脈波データを線形予測(LPC)分析し、周波数の低いものから順に第1フォルマント周波数F1、第2フォルマント周波数F2、第3フォルマント周波数F3、第4フォルマント周波数F4を求め、それぞれ自然対数分布に変換して、F1_ln、F2_ln、F3_ln、F4_lnとして算出する。また、各フォルマント周波数のQ値(帯域幅)の自然対数を、Q1_ln、Q2_ln、Q3_ln、Q4_lnとして算出する。
自己回帰モデルにおける傾きと切片は、外耳道内圧脈波データを自己回帰モデルにより解析し、8つの周波数帯域BW1〜BW8それぞれについて包絡線を求め、各包絡線の傾きをBW_1S〜BW_8S、各包絡線の切片をBW_1I〜BW_8Iとして算出する。周波数帯域BW1〜BW8は、それぞれ1オクターブに相当する帯域幅を有し、半オクターブ刻みでずれた周波数帯域となっている。
ピークピーク値PP_dBは、最大値と最小値の差であり、尖頭間振幅(Pa)を対数表示(dB表示)にして算出する。
波形率FF_lnは、実効値の平均値に対する比(実効値/平均値)の自然対数である。実効値(rms値)は、交流信号の時間波形の実質的なエネルギーの消費量を表す。また、平均値とは、正弦波の正負いずれかの半サイクルを平均化した値をいう。
正側波高率PCF_lnは、正側最大値の実効値に対する比(正側最大値/実効値)の自然対数であり、負側波高率MCF_lnは、負側最大値の実効値に対する比(負側最大値/実効値)の自然対数である。波高率比RCF_lnは、正側波高率の負側波高率に対する比(正側波高率/負側波高率)の自然対数である。
正側標準偏差値P_std_lnは、負側の値を全て0として算出した標準偏差値の自然対数であり、負側標準偏差値M_std_lnは、正側の値を全て0として算出した標準偏差値の自然対数である。標準偏差比R_std_lnは、正側標準偏差値の負側標準偏差値に対する比(正側標準偏差値/負側標準偏差値)の自然対数である。正側標準偏差値の平均値に対する比P_std_m_ln(正側標準偏差値/平均値)、負側標準偏差値の平均値に対する比M_std_m_ln(負側標準偏差値/平均値)、平均値で正規化した標準偏差比R_std_m_lnも、それぞれ自然対数として算出する。
波形率dif1_FF_lnは、外耳道内圧脈波データの一回差分(近似導関数)の波形率の自然対数であり、正側波高率dif1_PCF_lnは、一回差分の正側波高率の自然対数であり、負側波高率dif1_MCF_lnは、一回差分の負側波高率の自然対数であり、波高率比dif1_RCF_lnは、一回差分の波高率比の自然対数である。波形率dif2_FF_lnは、外耳道内圧脈波データの二回差分の波形率の自然対数であり、正側波高率dif2_PCF_lnは、二回差分の正側波高率の自然対数であり、負側波高率dif2_MCF_lnは、二回差分の負側波高率の自然対数であり、波高率比dif2_RCF_lnは、二回差分の波高率比の自然対数である。
演算部130は、各期間の外耳道内圧脈波データについて算出される上述した43要素の波形情報に加えて、図示しない入力部から入力される7要素の被験者情報(被験者の年齢Age、身長Height、体重Weight、ボディマス指数BMI、最大血圧SBP、最小血圧DBP、平均血圧MBP)を説明変数として取得し、計50個の説明変数を取得する。
次に、演算部130は、複数の被験者から取得した各時点の頭蓋内圧データに基づいて、各期間の外耳道内圧脈波データを複数のグループに分割する(ステップS13)。具体的には、まず、頭蓋内圧データをロジット関数で正規化する。ロジスティックモデルにおいて、頭蓋内圧の累積確率pは、以下の式(1)で表され、ロジットLogitは、累積確率pを用いて、以下の式(2)で定義される。
p=1/(1+exp(−(MICPdc−M)/S)) …(1)
Logit=ln(p/(1−p)) …(2)
式(1)において、MICPdcは実測した頭蓋内圧の直流成分である。また、Mは中央値(累積確率pが0.5となる値)であり、Sは広がりパラメータ(累積確率pが0.27から0.5まで、或いは0.5から0.73までとなる幅)である。
図4は、観測累積確率と予測累積確率との関係を表すグラフ(p−pプロット)である。本実施形態では、このp−pプロットにおいて直線状に分布している実測値MICPdcを正規分布に従っていると見做して分析対象とし、直線状に分布していない実測値MICPdcを正規分布に従っていないと見做して分析対象から排除する。
次に、分析対象とする実測値MICPdcを、基準値を20cmH2Oとして対数表示とし、対数表示とした実測値MICPdc_dBの度数分布(ヒストグラム)に基づいて、実測値(頭蓋内圧データ及び対応する外耳道内圧脈波データ)を複数のグループに分割する。
図5は、頭蓋内圧の実測値MICPdc_dBのヒストグラムを表すグラフである。図5に示される実測値は、26名の被験者における頭蓋内圧の実測値(有効数4551個)である。図5に示される実測値に基づいて、式(1)における中央値M=1.1706[dB]、広がりパラメータS=3.436[dB]とした。本実施形態では、このヒストグラムにおいて20%の区画で5グループに分割する。すなわち、下位20%の実測値を第1グループに、下位20〜40%の実測値を第2グループに、下位40〜60%の実測値を第3グループに、下位60〜80%の実測値を第4グループに、上位20%の実測値を第5グループに分ける。図5に示す例では、13.22cmH2O以下の実測値MICPdcが第1グループに、13.22cmH2Oより大きく19.47cmH2O以下の実測値MICPdcが第2グループに、19.47cmH2Oより大きく26.86cmH2O以下の実測値MICPdcが第3グループに、26.86cmH2Oより大きく39.60cmH2O以下の実測値MICPdcが第4グループに、39.60cmH2Oより大きい実測値MICPdcが第5グループに分けられる。
図3に戻り、演算部130は、5グループに分割された実測値(各期間の外耳道内圧脈波データについて算出される43個の説明変数、及び入力された7個の説明変数)について正準判別分析を行って、ステップワイズ法により選択された説明変数に対応する正準判別関数係数を算出する(ステップS14)。本実施形態では、正準判別分析(及び、後述する重回帰分析)に先立って、各説明変数をロジット関数で正規化しておく。また、正規化したボディマス指数BMIが負側(ボディマス指数BMIが平均以下)である実測値と、正規化したボディマス指数BMIが正側(ボディマス指数BMIが平均以上)である実測値とに分割し、分割したそれぞれについて正準判別関数を算出する。
図6、図7は、ボディマス指数BMIが負側である説明変数群について正準判別分析を行った結果得られる領域マップ(図6)と正準判別関数係数(図7)の一例を示す図である。図8、図9は、ボディマス指数BMIが正側である説明変数群について正準判別分析を行った結果得られる領域マップ(図8)と正準判別関数係数(図9)の一例を示す図である。図6、図7に示す正準判別関数係数と領域マップとを用いて、ボディマス指数BMIが負側である実測値をグループ分けしたところ、79.3%個の実測値が正しく分類され、図8、図9に示す正準判別関数係数と領域マップとを用いて、ボディマス指数BMIが正側である実測値をグループ分けしたところ、88.4%の実測値が正しく分類された。
図3に戻り、演算部130は、グループ毎に、頭蓋内圧の実測値MICPdcを目的変数とし、正規化した50個の説明変数について重回帰分析を行って、ステップワイズ法により選択された説明変数に対応する係数(回帰係数)を算出する(ステップS15)。図10は、グループ毎に重回帰分析を行った結果得られるグループ毎の回帰係数の一例を示す図である。
本実施形態に係る頭蓋内圧推定方法では、測定装置1で算出された正準判別関数係数とグループ毎の係数(回帰係数)とを用いて、特定の被験者の外耳道内圧脈波データから頭蓋内圧を推定する。
図11は、頭蓋内圧を推定する測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。測定装置2は、外耳道内圧脈波センサー220と、演算処理部(プロセッサー)及び記憶部を有
する演算部230とを含む。外耳道内圧脈波センサー220は、測定装置1の外耳道内圧脈波センサー120と同様の構成を有する。
演算部230の記憶部には、測定装置1で算出された正準判別関数係数、領域マップ及びグループ毎の回帰係数に関する情報が記憶されている。演算部230は、外耳道内圧脈波センサー220で検出された外耳道内圧脈波の時系列データを所定時間間隔で分割した各期間の外耳道内圧脈波データについて複数の説明変数を算出し、算出した説明変数に基づいて当該外耳道内圧脈波データを複数のグループのいずれかに分類し、当該説明変数と、分類したグループについて算出された回帰係数とに基づいて頭蓋内圧を推定する処理を行う。
測定装置2は、表示部240(ディスプレイ)を更に含んで構成されていてもよい。表示部240は、外耳道内圧脈波データや、演算部230によるグループの分類結果、頭蓋内圧の推定結果等を表示する。
図12は、測定装置2の処理の流れを示すフローチャートである。まず、演算部230は、外耳道内圧脈波センサー220で検出された外耳道内圧脈波の時系列データを所定時間間隔(例えば、5秒間隔)で分割した各期間の外耳道内圧脈波データを取得する(ステップS20)。ここで、演算部230は、取得した外耳道内圧脈波データに対してデジタルフィルタ処理を適用することで、被験者の顎の動きや呼吸等に起因する体動音を除去するようにしてもよい。
次に、演算部230は、取得した外耳道内圧脈波データについて複数の説明変数(上述した43個の説明変数)を算出する(ステップS21)。また、演算部230は、図示しない入力部から入力される複数の説明変数(上述した7要素の被験者情報)を取得する。また、演算部230は、算出・取得した50個の説明変数をロジット関数で正規化する。
次に、演算部230は、正規化した説明変数と、記憶部に記憶された正準判別関数係数及び領域マップとに基づいて、取得した外耳道内圧脈波データを複数のグループ(第1〜第5のグループ)のいずれかに分類する(ステップS22)。すなわち、演算部230は、正規化した説明変数と正準判別関数係数とに基づき判別関数値を算出し、算出した判別関数値に基づき領域マップ(判別空間)における位置(座標)を求めることで、取得した外耳道内圧脈波データが属するグループを決定する。なお、正規化したボディマス指数BMIが負側である場合には、図6に示す領域マップと図7に示す正準判別関数係数を用いてグループを決定し、正規化したボディマス指数BMIが正側である場合には、図8に示す領域マップと図9に示す正準判別関数係数を用いてグループを決定する。
ここで、図6に示す領域マップでは、第1グループの領域と第5グループの領域とが隣接している。このような場合には、予め、第1グループに分けられる実測値と第5グループに分けられる実測値(第2〜第4グループに分けられる実測値を排除した実測値)について正準判別分析を行って、第1グループと第5グループを判別するための正基準判別関数係数を算出しておき、ステップS22において、取得した外耳道内圧脈波データが、ボディマス指数BMIが負側あって、且つ第1グループ或いは第5グループに分類された場合に、第1グループと第5グループを判別するための正基準判別関数係数に基づき判別関数値を算出して、取得した外耳道内圧脈波データを第1グループと第5グループのいずれかに分類する処理を行う(グループ分けを2段階に分けて行う)ようにしてもよい。このようにすると、第1グループに分類されるべきデータが第5グループに分類されたり、第5グループに分類されるべきデータが第1グループに分類されたりすることを抑制して、頭蓋内圧の推定値に大きな誤差が生じることを極力抑制することができる。
次に、演算部230は、正規化した説明変数と、記憶部に記憶された回帰係数のうち分類したグループについて算出された回帰係数とに基づき目的変数を算出することで、頭蓋内圧を推定する(ステップS23)。例えば、取得した外耳道内圧脈波データが第1グループに分類された場合には、第1グループについて算出された回帰係数に基づく重回帰式を計算して目的変数を算出する。
本実施形態に係る頭蓋内圧推定方法を用いて、26名の被験者における外耳道内圧脈波の実測値から頭蓋内圧の推定値PICPdcを求めた。図13は、26名の被験者における頭蓋内圧の推定値PICPdcと実測値MICPdcとの関係を表すグラフである。実測値MICPdcに対する推定値PICPdcの当てはまり度を表す決定係数R2(相関係数の二乗)は0.994となり、高い相関を示した。
本実施形態に係る頭蓋内圧推定方法によれば、非侵襲的であり、かつ簡便な装置で測定できる外耳道内圧脈波に基づいて頭蓋内圧を推定できる。また、本実施形態に係る頭蓋内圧推定方法によれば、頭蓋内圧の実測値に基づき分類されるグループ毎に回帰係数を算出しておき、特定の被験者の外耳道内圧脈波データについて算出した複数の説明変数に基づき外耳道内圧脈波データを複数のグループのいずれかに分類し、複数の説明変数と分類したグループについて算出した回帰係数とに基づき頭蓋内圧の推定値を算出することで、精度よく頭蓋内圧を推定することができる。
以上、本実施形態あるいは変形例について説明したが、本発明はこれら本実施形態あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…測定装置、2…測定装置、110…頭蓋内圧センサー、120…外耳道内圧脈波センサー、121…密閉部、122…マイクロフォン、123…音孔、124…音孔、130…演算部、140…表示部、220…外耳道内圧脈波センサー、230…演算部、240…表示部

Claims (4)

  1. 取得部と、説明変数算出部と、分割部と、係数算出部と、推定部とを含み、外耳道内圧脈波の時系列データから頭蓋内圧を推定する測定装置の作動方法であって、
    前記取得部が、複数の被験者の頭蓋内圧と外耳道内圧脈波の時系列データを取得する取得工程と、
    前記説明変数算出部が、取得された外耳道内圧脈波の時系列データを所定時間間隔で分割した各期間の外耳道内圧脈波データについて、複数の説明変数を算出する説明変数算出工程と、
    前記分割部が、取得された頭蓋内圧データに基づいて、前記外耳道内圧脈波データを複数のグループに分割する分割工程と、
    前記係数算出部が、前記グループ毎に、前記頭蓋内圧データを目的変数とし、前記説明変数について重回帰分析を行い、前記説明変数に対応する係数を算出する係数算出工程と、
    前記推定部が、特定の被験者の外耳道内圧脈波データについて算出した前記説明変数に基づいて当該外耳道内圧脈波データを前記複数のグループのいずれかに分類し、当該説明変数と、分類したグループについて算出した前記係数とに基づいて、頭蓋内圧を推定する推定工程とを含む、測定装置の作動方法。
  2. 請求項1に記載の測定装置の作動方法において、
    前記分割工程において、前記分割部が、前記頭蓋内圧データをロジット関数で正規化した値の度数分布に基づいて、前記外耳道内圧脈波データを前記複数のグループに分割し、前記説明変数に対応する正準判別関数係数を算出し、
    前記推定工程において、前記推定部が、特定の被験者の外耳道内圧脈波データについて算出した前記説明変数と前記正準判別関数係数とに基づいて、当該外耳道内圧脈波データを前記複数のグループのいずれかに分類する、測定装置の作動方法。
  3. 請求項1又は2に記載の測定装置の作動方法において、
    前記説明変数のうち少なくとも1つは、
    前記各期間における、前記外耳道内圧脈波データのフォルマント周波数とQ値、自己回帰モデルにおける傾きと切片、ピークピーク値、波形率、正側波高率、負側波高率、波高率比、正側標準偏差値、負側標準偏差値、標準偏差比、正側標準偏差値の平均値に対する比、負側標準偏差値の平均値に対する比および平均値で正規化した標準偏差比、並びに、前記外耳道内圧脈波の微分関数に相当するデータの波形率、正側波高率、負側波高率および波高率比を含む群から選択されている、測定装置の作動方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置の作動方法において、
    前記取得工程において、前記取得部が、前記外耳道内圧脈波の時系列データを、音圧波形として取得する、測定装置の作動方法。
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