JP6800636B2 - 圧電体成膜用基板およびその製造方法、圧電体基板、ならびに液体吐出ヘッド - Google Patents

圧電体成膜用基板およびその製造方法、圧電体基板、ならびに液体吐出ヘッド Download PDF

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Description

本発明は、圧電体成膜用基板およびその製造方法、圧電体基板、ならびに液体吐出ヘッドに関する。
圧電体成膜用基板において下地基板と圧電体素子の下部電極の密着性を向上させるため、その層間にTi中間層を有する層構成がしばしば取られる(特許文献1参照)。
また、圧電体素子の圧電特性を向上させるため、圧電体薄膜、特にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の(100)配向度を向上させることが提案されている。特許文献2には下部電極層と圧電体薄膜層間に、Ti核100%膜を3〜7nm有している層構成を開示している。また、非特許文献1では下部電極層と圧電体薄膜層との間に配向を制御するPbTiO層を有しており、そのPbO量が豊富(TiO量が欠乏)な組成で圧電層が(100)面配向優位になるとの示唆を開示している。PbTiO層については特許文献1にも、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の下地としてPbTiO層の原料化合物(前駆体)を塗布、乾燥し、その上にPZTの原料化合物を塗布、乾燥し、最後に焼成することが開示されている。
特開平10−126204号公報 特開2003−298136号公報(特許第3956134号)
P. Muralt, J.Appl.Phys. 100, 051605 (2006)
上記特許文献2および非特許文献1では、高い(100)配向度を有する圧電体薄膜が得られることが開示されている。しかし、特許文献2ではZrO膜上に少なくともIr層を有する下部電極を形成し、その上にTi核100%膜を形成するもので、本発明で提供する層構成とは異なっている。
特許文献1や非特許文献1のようなPbTiO層の形成は、下地電極層から下の構成を無視できる可能性がある。しかしながら、PbTiO層の形成条件、特に特許文献1のようなPbTiO前駆体上に圧電体薄膜を形成する場合、非特許文献1に示唆されるPbO量が豊富な組成であっても、圧電体薄膜の(100)配向度が十分に向上しない場合があることを本発明者らは見出した。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。つまり、本発明は、圧電体薄膜の(100)面の配向の割合が高く、ひいては高い圧電特性を備える圧電体素子を提供できる圧電体成膜用基板およびその製造方法を提供する。また本発明は、該圧電体成膜用基板を用いた圧電体基板、ならびに該圧電体基板を含む圧電体素子を備えた液体吐出ヘッドを提供する。
一実施形態は、
少なくともSiO 表面に含む下地基板層と、
該下地基板層上のTiを含む中間層と、
該中間層の上のPtを含む電極層と、
該電極層上の配向制御層と
を有し、
該配向制御層形成前の該電極層の表面は、元素定量分析法によるTiが検出されず、
該配向制御層はPb、OおよびTiを含み、該配向制御層の表面におけるPb、O、Ti元素中の該Tiが13.87原子%以上14.88原子%以下であることを特徴とする圧電体成膜用基板に関する。
上記実施形態の圧電体成膜用基板を用いることで、圧電体薄膜の(100)面の配向の割合が高く、ひいては高い圧電特性を備える圧電体基板を提供できる。また、この圧電体基板を用いることで優れた吐出液滴性能を有する液体吐出ヘッドを提供する。
一実施形態の圧電体薄膜を示す縦断面模式図である。 一実施形態の圧電体薄膜を示す縦断面模式図である。 一実施形態の液体吐出ヘッドを示す模式的斜視図である。 一実施形態の液体吐出ヘッドを示す模式的斜視断面図である。 一実施形態の液体吐出ヘッドを示す模式的断面図である。 実施例1における基板の(5)の位置におけるX線回折パターンを示す図である。 実施例および比較例における基板上のX線回折測定箇所を示す模式図である。 (a)は実施例1の圧電体成膜用基板のPt電極表面での全結合エネルギー領域に対するXPSスペクトルを示す図、(b)は該スペクトルのTi2p軌道領域を示す拡大図である。 比較例1の圧電体成膜用基板のPt電極表面でのTi2p軌道領域に対するXPSスペクトルを示す図である。 圧電体成膜用基板の配向制御層表面でのTi量比に対する、その上に積層したPZT圧電体薄膜の(100)面配向度を示す図である。
以下に、本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるわけではない。
ここで圧電体薄膜の(100)面の配向の割合が高いと、高い圧電特性を引き起こす機構について説明する。ゾルゲル法により形成され圧電体薄膜の結晶配向は、(100)面の配向割合が他の面の配向((111)面、(110)面等)の配向に比べて高くなるほど、分極モーメントの方向が圧電体の変形方向に近づく。従って、(100)面の配向割合が多い圧電体薄膜ほど変形量が大きくなり、液体吐出ヘッドなどのアクチュエーターとして好適に用いることができる。
1.圧電体成膜用基板
図1、2は、一実施形態の圧電体成膜用基板の縦断面模式図である。図1は下地基板層1、中間層2、電極層3の積層からなる第1の実施形態に係る圧電体成膜用基板を示している。また、図2の縦断面模式図は、図1の構成の圧電体成膜用基板に配向制御層4を積層した第2の実施形態に係る圧電体成膜用基板を示している。
下地基板層1は少なくともSiOまたはSiNを表面に含むが、その他の材料としてはその上に形成する各層の形成過程で実施され得る熱処理において変形、溶融しない材料が好ましい。また、下地基板層1は表面が平滑であり、熱処理時の元素の拡散も防止でき、かつ機械的強度も十分であることが好ましい。また、本実施形態により得られる圧電体基板を用いて液体吐出ヘッドを製造する際には、下地基板層1が圧力室を形成するための圧力室基板を兼ねていても良い。例えば、このような目的では、下地基板層1の材料はシリコン(Si)等からなる半導体基板やタングステン(W)や耐熱ステンレス(SUS)等の金属基板を好ましく用いることができるが、ジルコニアやアルミナ、シリカなどのセラミック基板を用いても構わない。また、これらの基板材料を複数種類、組み合わせても良いし、積層して多層構成として用いても良い。これらの材料の表面にSiOまたはSiNを形成して下地基板層1とする。例えば、Si基板を酸化又は窒化して表面をSiOまたはSiNを含む層に改質することができる。
中間層2は、下地基板層1と電極層3の密着性を向上するために挿入する層である。このため、中間層2の材料としてはTiおよびTiOの少なくとも一方を含む。Ti層とTiO層の積層とすることもできる。また、中間層2は2nm以上50nm以下の層厚である事が好ましい。なぜならば、中間層2の層厚が2nm以上であれば、密着性を発現するための十分な層厚が確保でき、50nm以下であれば、材料の無駄な消費を抑制できる。
電極層3の材料は、Ptを含む圧電体素子に通常用いるものであれば良く、例えば、Pt金属膜やPtを含む酸化膜、さらにはTi、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni等の金属、およびこれらの酸化物を含んでいてもよい。電極層3は、1層からなるものであっても、あるいはこれらの2層以上を積層したものであっても良い。これらの金属、酸化物は、基板上にゾルゲル法などにより塗布、焼成して形成しても良いし、スパッタ、蒸着などにより形成しても良い。また、所望の形状にパターニングして用いても良い。電極層3は40nm以上1000nm以下の層厚を有する事が好ましい。第1の実施形態では、熱履歴の比較的少ないスパッタ法が好適である。
スパッタされた表面の数原子層はイオンによって乱され、照射イオンの残留や非結晶層の形成が起こるため、これらを除去、安定化するために、スパッタリング後に熱処理を行う事がある。この熱処理はスパッタ装置内で行ってもよく、スパッタ装置から取り出して行ってもよい。
このような層構成の圧電体成膜用基板上に圧電体薄膜を形成すると、熱処理条件によって圧電体薄膜の(100)面の配向度がばらつくという現象が観測された。この原因について圧電体薄膜成膜前の圧電体成膜用基板上、すなわち、電極層3の表面状態を検討したところ、電極表面にTiの存在が確認された時に配向度が低下し、Tiの存在が確認されない場合には高い配向度が得られることを見出した。従来、圧電体薄膜の(100)面配向度が高くなる圧電体成膜用基板のTiに対する詳細構成はこれまで未解明あった。
したがって、本発明の第1の実施形態に係る圧電体成膜用基板は、少なくともSiOまたはSiNを表面に含む下地基板層と、該下地基板層上のTiおよびTiOの少なくとも一方を含む中間層と、該中間層の上のPtを含む電極層とを有し、該電極層の表面は、元素定量分析法によるTiが検出されないことを特徴とする。
Ti層からのTi移動(マイグレーション)を抑制するため、Ti層表面を不動態化することが知られている。しかしながら、Ptスパッタリング後の熱処理の温度や時間によっては僅かながらもTiマイグレーションが起こる。したがって、本実施形態では電極層形成時や電極層形成後の熱処理の温度や時間を制御することによってTiマイグレーションを抑制する条件を選定する。このような熱処理条件の選定は実験的に行うことができる。例えば、電極層をスパッタ法で形成する場合のスパッタリング後の熱処理としては、280℃以下の温度であることが好ましい。また、残留照射イオンの除去や結晶化などのスパッタリング後の熱処理の目的を達成するためには、100℃以上であることが好ましく、150℃以上がより好ましい。また、熱処理時間は温度条件によって異なるが、5分以下が好ましく、1分程度でもスパッタリング後の熱処理の目的を達成することができる。
配向制御層4は、その上部に積層する圧電体薄膜層の配向を制御する層であり、Pb、OおよびTiを構成原子として含む。配向制御層4の材料は特に限定されないが、少なくともPbおよび、若しくはTiを含む有機金属酸化物が含まれることが好ましい。特にPbとTiの複合有機金属酸化物であることがより好ましい。この配向制御層4は、上部にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を圧電体薄膜として積層する場合、成膜時の温度負荷でPbが下部へ拡散することを抑制する効果も果たす。更に、下方にある中間層のTiが温度負荷により上部の圧電体薄膜層内へ拡散する事を抑制する効果も併せ持つ。
配向制御層4の製法としては、有機金属気相成長法(MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法)、ゾルゲル法などを挙げることができる。中でもゾルゲル法はもっとも安価、簡便に配向制御層を成膜できる点で好ましい。ゾルゲル法ではまず、原料となる各成分金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、またはその部分重縮合性化合物(配向制御層材料)を含有する塗工液を調製する。調製された塗工液を基板上に塗工し、その塗工液を乾燥して形成する。
配向制御層材料を生成する原料としては、有機金属化合物を挙げることができる。例えば、鉛またはチタンのアルコキシド、有機酸塩、β−ジケトン錯体などの金属錯体が代表例である。金属錯体についてはアミン錯体をはじめとして、各種の他の錯体を利用できる。β−ジケトン錯体を形成するためのβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン(=2,4−ペンタンジオン)、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン(=1−(ヘプタフルオロプロピル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン)、ジピバロイルメタン(=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等を挙げることができる。
鉛化合物としては、酢酸鉛等の有機酸塩およびジイソプロポキシ鉛等の有機金属アルコキシドを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン、ジメトキシジイソプロポキシチタン等の有機金属アルコキシドが好ましいが、有機酸塩または有機金属錯体も使用できる。
塗工液は、上記のような各原料有機金属化合物を適当な有機溶剤に溶解または分散させて、例えば、加熱処理し、さらに加水分解して、配向制御層材料であるチタン酸鉛の前駆体化合物、例えばPbとTiの複合有機金属酸化物を含有するものを調製する。複合有機金属酸化物は、Pbを含有する有機物、Tiを含有する有機物を含む。配向制御層材料におけるPbとTiとの割合は、Pb/Tiが1/1以上1.8/1以下が好ましく、1.2/1以上1.5/1以下であることがより好ましい。
また、塗工液の調製に用いる有機溶剤は分散性、塗布性を考慮して、公知の各種溶剤から適宜、選択される。塗工液の調製に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン系などのアミド系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤を挙げることができる。これらの中では、アルコール系溶剤を用いるのが好ましい。
塗工液中の有機溶剤の量は特に制限されないが、金属固形分濃度が15質量%以上30質量%以下となるように有機溶剤の量を調整するのが好ましい。
塗工液の塗工方法としては、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコートなど公知の塗工方法を用いることができる。また、基板上に塗工液を塗工する際、基板の塗工液を塗工する面は水平方向(鉛直方向に直交する方向)に配置されていることが好ましい。これにより、均一な膜厚および配向制御層材料の均一な分布を有する塗工層を得ることができる。塗工液は1回だけ塗工しても、複数回、塗工しても良い。
塗工層の形成工程の後の乾燥工程では、無風環境下で塗工層から有機溶剤を蒸発させて、配向制御層を得る。この工程は使用する有機溶剤に適した乾燥温度であればよく、通常、50℃以上の温度であり、100℃以上の温度で行うことが好ましい。また、乾燥温度は450℃以下であり、300℃以下であることが好ましい。また、乾燥時間は30分未満であることが好ましい。特に本実施形態では後述する式(1)を満足する条件で実施される。この工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に基板を入れる、または基板を乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源と直接、接触させることにより行うことができる。これらの中でも、加熱温度の均一性の点から、基板の裏面から加熱するホットプレートが好ましい。
配向制御層(乾燥塗工層)の形成工程は、基板の塗工液を塗工した面(塗工面)が無風環境下となるように行う。具体的には、塗工面に温風、熱風の給気を行う給気口、あるいは排気を行うための排気口を設けない。また、給気口および排気口を設ける場合には、基板上で気化した有機溶剤や熱風の流れが生じないようにする。これにより、基板上の塗工液を塗工した面上、20cmの位置で気体の流速が0.05m/s以下となるようにする。
このように乾燥した後の配向制御層4の膜厚は、10nm以上100nm以下が好ましい。10nm以上であれば、上記の配向を制御する効果と拡散を抑制する効果が十分に得られ、100nm以下であれば、圧電体薄膜の特性に悪影響を及ぼすことがない。
本発明者らの検討によれば、配向制御層を形成するための乾燥条件によって配向制御層の表面状態が変わり、同じ組成比の原料を用いたとしてもその上に形成する圧電体薄膜の(100)面の配向度が変わることを見出した。特に配向制御層の表面におけるPb、O、Ti元素中の該Tiが14.88原子%以下で圧電体薄膜の(100)面の高い配向度が得られることを見出した。配向制御層の表面のTi元素比は14.8原子%以下であることがより好ましい。
また、第2の実施形態に係る圧電体成膜用基板の製造方法は、少なくともSiOまたはSiNを表面に含む下地基板層上にTiおよびTiOの少なくとも一方を含む中間層を形成する工程と、該中間層上にPtを含む電極層を形成する工程と、該電極の表面にPbとTiを含む配向制御層を形成する工程とを少なくとも含み、該配向制御層を形成する工程時に前記圧電体用基板にかかる温度T(℃)と時間t(分)が下記式(1)を満たすことを特徴とする圧電体成膜用の基板の製造方法に関する。
Figure 0006800636
(但し 50≦T≦450, 0<t<30 )
上記式(1)を満足することで配向制御層の表面におけるPb、O、Ti元素中の該Tiを14.88原子%以下とすることができる。
2.圧電体基板
次に、本発明の第3の実施形態に係る圧電体基板について説明する。本実施形態の圧電体基板は、図1に示す電極層3上、または図2に示す配向制御層4上に圧電体薄膜を形成したものである。なお、配向制御層は圧電体薄膜の焼成時にチタン酸鉛となり、圧電体薄膜の一部として機能する。圧電体基板には、圧電体薄膜を介して電極層3(下部電極ともいう)に対向する電極(上部電極ともいう)を設けることで圧電体素子となる。圧電体素子は圧電効果により圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する素子となるが、本発明では特に電圧を力に変換する素子(アクチュエーター)として使用することが好ましい。上部電極は圧電体薄膜の全面に形成してもよく、一部に形成してもよい。また、上部電極は圧電体基板に一体として形成してもよく、着脱可能としてもよい。上部電極の材料は、圧電体薄膜に電圧を印加できる導電材料であれば特に制限なく使用でき、下部電極の材料と同様の材料を使用することができる。
また、圧電体基板上には、圧電体素子の上下電極への各配線層を形成してもよく、例えば、下部電極材料を用いて下部電極と同層に各配線層を形成することができる。この場合、上部電極はスルーホールや引き出し電極等を介して配線層に接続できる。
圧電体薄膜の材料は特に限定されないが、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含むことが好ましい。PZTとしては、一般式Pb(1.00〜1.20)(ZrTi1−x)O(xが0.4〜0.6)で表されるペロブスカイト型結晶が好ましい。ZrとTiの組成を上記の範囲にすることで、高い圧電性を有するペロブスカイト結晶を得ることができる。
なお、圧電体薄膜中に、Pb、Zr、Ti以外の微量の元素をドーピングしても良い。ドーピングを行う場合にドーパントとして用いることのできる元素の具体的な例としてはLa、Ca、Sr、Ba、Sn、Th、Y、Sm、Ce、Bi、Sb、Nb、Ta、W、Mo、Cr、Co、Ni、Fe、Cu、Si、Ge、Sc、Mg、Mn等の元素を挙げることができる。添加量は、Pb(1.00〜1.20)(ZrTi1−x)O(xが0.4〜0.6)の0.1質量%から2質量%が好ましい。
この圧電体薄膜の製法としては、スパッタリング法、有機金属気相成長法(MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法)、ゾルゲル法などを挙げることができる。中でもゾルゲル法はもっとも安価、簡便に圧電体薄膜を成膜できる点で好ましい。ゾルゲル法ではまず、原料となる各成分金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、またはその部分重縮合性化合物(圧電体前駆体)を含有する塗工液を調製する。ドーピング元素もこれらの元素を含む化合物を塗工液の調製時に添加すればよい。調製された塗工液を基板上に塗工し、その塗工液を乾燥して塗工層を形成する。この後、空気中で、この塗工層を加熱し、さらにその結晶化温度以上で焼成して結晶化させることにより圧電体の薄膜を成膜する。
ゾルゲル法に類似の方法として、有機金属分解法(MOD(Metal Organic Deposition)法)がある。MOD法では、圧電体前駆体として、熱分解性の有機金属化合物(金属錯体および金属有機酸塩)、たとえば、金属のβ−ジケトン錯体やカルボン酸塩を含有する塗工液を基板上に塗工する。次に、例えば、空気中あるいは酸素中で塗工液を加熱して、塗工液中の溶媒の蒸発および有機金属化合物の熱分解を生じさせ、更にこれの結晶化温度以上での焼成により結晶化させて圧電体薄膜を成膜する方法である。
本明細書では、上記のゾルゲル法、MOD法、およびこれらを組み合わせた方法をあわせて「ゾルゲル法」と称する。
3.圧電体薄膜の製造方法
次に、本実施形態の圧電体薄膜の製造方法について以下に説明する。本実施形態の製造方法は、塗工層の形成工程と、乾燥塗工層の形成工程と、乾燥塗工層の加熱工程を有する。以下、各工程について説明する。
なお、本明細書において、「塗工層」とは、有機溶剤が蒸発する前の、基板上に塗工された塗工液により構成される層を表す。また、「乾燥塗工層」とは、有機溶剤が蒸発後の塗工層を表す。
(1)塗工層の形成工程
塗工層の形成工程では、圧電体薄膜成膜用基板上に有機溶剤と圧電体前駆体を含む塗工液を塗工する。このようにして、有機溶剤と圧電体前駆体とを含む塗工層が形成された基板を用意する。圧電体前駆体の例としては、各成分金属の加水分解性化合物、その部分加水分解性化合物、その部分重縮合性化合物、熱分解性化合物、またはこれらの化合物の原料を挙げることができる。これらの化合物を生成する原料としては、有機金属化合物を挙げることができる。例えば、上記金属のアルコキシド、有機酸塩、β−ジケトン錯体などの金属錯体が代表例である。金属錯体についてはアミン錯体をはじめとして、各種の他の錯体を利用できる。β−ジケトン錯体を形成するためのβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン(=2,4−ペンタンジオン)、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン(=1−(ヘプタフルオロプロピル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン)、ジピバロイルメタン(=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等を挙げることができる。
原料として好適な有機金属化合物の具体例を示すと、鉛化合物としては、酢酸鉛等の有機酸塩およびジイソプロポキシ鉛等の有機金属アルコキシドを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン、ジメトキシジイソプロポキシチタン等の有機金属アルコキシドが好ましいが、有機酸塩または有機金属錯体も使用できる。ジルコニウム化合物については、上記鉛化合物やチタン化合物と同様にジルコニウムの有機金属アルコキシド、有機酸塩、有機金属錯体が使用できる。他の金属化合物についても上記と同様のものを使用できるが、これらに限定されるものではない。また、上記金属化合物は組み合わせて用いても良い。なお、有機金属化合物は、上述したような1種類の金属を含有する化合物の他に、2種以上の成分金属を含有する複合化した有機金属化合物であっても良い。
塗工液は、上記のような各原料有機金属化合物を適当な有機溶剤に溶解または分散させて、例えば、加熱処理し、さらに加水分解して、圧電体前駆体である複合有機金属酸化物(2種以上の成分金属を含有する)を含有するものを調製する。
また、塗工液の調製に用いる有機溶剤は分散性、塗布性を考慮して、公知の各種溶剤から適宜、選択される。塗工液の調製に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン系などのアミド系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤を挙げることができる。これらの中では、アルコール系溶剤を用いるのが好ましい。
塗工液中の有機溶剤の量は特に制限されないが、金属固形分濃度が15質量%以上30質量%以下となるように有機溶剤の量を調整するのが好ましい。塗工液中の有機溶剤の量がこれらの範囲内であることによって、1回の塗工における圧電体薄膜の層厚を150nm以上400nm以下とすることが容易となる。
複数の有機金属化合物を用いる場合における、塗工液中の各有機金属化合物の割合は、製造予定の圧電体薄膜の材料、例えば、Pb(1.00〜1.20)(ZrTi1−x)O(xが0.4〜0.6)の組成比とほぼ同じ割合とするのが良い。なお、Pb(1.00〜1.20)(ZrTi1−x)O(xが0.4〜0.6)からなる圧電体薄膜を形成する場合、一般に鉛化合物は揮発性が高く、後述する熱処理工程中に、蒸発によって鉛の欠損が起こることがある。このため、この欠損を見越して、鉛をやや過剰に、例えば、組成比上、必要な鉛の量に対して2モル%以上40モル%以下、過剰に鉛を存在させても良い。鉛の欠損の程度は、鉛化合物の種類や成膜条件によって異なり、実験により求めることができる。
塗工液中には、安定化剤として、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、「DBU」と表すことがある)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(以下、「DBN」と表すことがある)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(以下、「DABCO」と表すことがある)を添加できる。また、他の安定化剤として従来から用いられている、β−ジケトン類(例えば、アセチルアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等)、ケトン酸類(例えば、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等)、これらのケトン酸のエチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類、オキシ酸類(例えば、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等)、これらのオキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類(例えば、ジアセトンアルコール、アセトイン等)、α−アミノ酸類(例えば、グリシン、アラニン等)、アルカノールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン)等を併用しても良い。
塗工液中の安定化剤の量は、金属原子の総モル数に対し、0.05倍モル以上5倍モル以下であることが好ましく、0.1倍モル以上1.5倍モル以下であることがより好ましい。
塗工工程では例えば、表面に電極を有する基板の電極上に塗工液を塗工する。塗工液の塗工方法としては、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコートなど公知の塗工方法を用いることができる。また、基板上に塗工液を塗工する際、基板の塗工液を塗工する面は水平方向(鉛直方向に直交する方向)に配置されていることが好ましい。これにより、均一な膜厚および圧電体前駆体の均一な分布を有する塗工層を得ることができる。塗工液は1回だけ塗工しても、複数回、塗工しても良い。
1回の塗工液の塗工により得られた圧電体薄膜(製造後の圧電体薄膜)の膜厚は特に限定されないが、150nm以上400nm以下が好ましい。圧電体薄膜の膜厚が150nm以上であることにより、少ない塗工回数で優れた圧電特性を有する圧電体薄膜を製造することができる。また、圧電体薄膜の膜厚が400nm以下であることにより、層厚方向のエピタキシャルな結晶成長を効果的に行わせることができる。
圧電体薄膜の膜厚は、塗工液中の圧電体前駆体の濃度と塗工条件を変化させることで、制御することが可能であり、この条件は実験より求めることができる。例えば、2000rpmのスピンコート法で、固形分濃度が20質量%以上25質量%以下の塗工液を塗工し、塗工液の乾燥および圧電体前駆体の熱処理を行う。これにより、一回の塗工ごとに200nm以上330nm以下の膜厚の圧電体薄膜を形成できる。最終的に形成される圧電体(配向制御層を含む)の膜厚は、4μm以下とすることが好ましい。
(2)乾燥塗工層の形成工程
塗工層の形成工程の後の乾燥塗工層の形成工程では、無風環境下で塗工層から有機溶剤を蒸発させて、圧電体前駆体を含む乾燥塗工層を得る。この工程は使用する有機溶剤に適した乾燥温度であればよく、通常、50℃以上の温度であり、100℃以上450℃以下の温度で行うことが好ましい。この工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に基板を入れる、または基板を乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源と直接、接触させることにより行うことができる。これらの中でも、加熱温度の均一性の点から、基板の裏面から加熱するホットプレートが好ましい。
乾燥塗工層の形成工程は、基板の塗工液を塗工した面(塗工面)が無風環境下となるように行う。具体的には、塗工面に温風、熱風の給気を行う給気口、あるいは排気を行うための排気口を設けない。また、給気口および排気口を設ける場合には、基板上で有機溶剤や熱風の流れが生じないようにする。これにより、基板上の塗工液を塗工した面上、20cmの位置で気体の流速が0.05m/s以下となるようにする。
(3)乾燥塗工層の加熱工程
乾燥塗工層の形成後、乾燥塗工層の加熱工程では、乾燥塗工層を加熱して、乾燥塗工層に含まれる圧電体前駆体から圧電体の薄膜を形成する。この工程は、乾燥機、ホットプレート、管状炉、電気炉などの熱源内に基板を入れる、またはこれらの熱源を基板に接触させることにより行うことができる。この際、加熱は、500℃以上800℃以下で行うことが好ましい。乾燥塗工層の加熱工程は複数回に分けて行っても良いし、1回だけでも良い。好ましくは、仮焼成により乾燥塗工層を加熱し、さらにその結晶化温度以上で焼成して結晶化させることにより、圧電体薄膜を成膜するのが良い。
4.圧電体薄膜の製造装置
圧電体薄膜の製造装置は、塗工手段、乾燥手段、加熱手段を有する。塗工手段は、基板上に、有機溶剤と圧電体前駆体とを含む塗工液を塗工して、塗工層を形成することが可能となっている。基板は、載置部に載置されるようになっている。乾燥手段は、無風環境下で塗工層から有機溶剤を蒸発させて、圧電体前駆体を含む乾燥塗工層を得ることが可能となっている。加熱手段は、乾燥塗工層を加熱して、乾燥塗工層に含まれる圧電体前駆体から圧電体薄膜を形成することが可能となっている。
5.配向評価法
次に、圧電体薄膜の(100)面の配向の評価方法について説明する。圧電体薄膜の(100)面の配向状態は、結晶薄膜について一般に用いられる、波長にCu Kα線を用いた2θ/θ法によるX線回折測定における回折ピークの検出角度と強度から容易に確認できる。例えば、図6に示すように、本実施形態の圧電体薄膜から得られた回折チャートでは、(100)面は22°付近にピーク強度を有し、(110)面は31°付近に、(111)面は38°付近にそれぞれピーク強度を有する。(100)面のピーク強度を(100)面、(110)面、(111)面の各ピーク強度の和で除することによって、(100)面の強度の割合を求めることができる。
良好な圧電性が得られることから、(100)面、(110)面、および(111)面の各ピーク強度の和に対する(100)面の強度の割合は、基板の各部において80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。また、基板の主面と圧電体薄膜の(100)面は平行にあるのが好ましい。
6.元素定量分析法
次に、薄膜表面の元素定量分析方法について説明する。本発明ではアルバックファイ株式会社製Auantera SXMのX線光電子分光(XPS)分析装置を用いており、解析用ソフトウェア(MultiPak Version9.3.0.3)を使用し、特開平7−35711号公報に記載のある相対感度係数法を用いて元素量(原子%)を算出している。
(測定条件)
X線源:単色化AlKα
X線出力:25W15kV
X線ビーム径:100μm
光電子取り出し角:45°
なお、薄膜表面の元素定量分析方法としては、XPSに限定するものではなく、XPS以外に例えば蛍光X線(XRF)分析や高周波グロー放電発光表面分析(GDS)等の分析手法を用いることが出来る。
本明細書において、「元素定量分析法によるTiが検出されないこと」とは、例えば、XPSで結合エネルギーが450nm以上470nm未満の領域にTi2pピークが検出されないことを意味する。また、「配向制御層の表面におけるPb、O、Ti元素中の該Tiが14.88原子%以下である」とは、例えば、XPSによる元素定量分析によって得られたTiの元素量をPb、O、Tiの元素量の総和で除した値が14.88%以下であることを意味する。ここで配向制御層の表面におけるTiの元素量はXPSのTi2p軌道に相当するスペクトルから、Pbの元素量はPb4f軌道に相当するスペクトルから、Oの元素量はO1s軌道に相当するスペクトルから算出する事が出来る。
7.液体吐出ヘッド
図3〜図5は、圧電体基板を用いた、一実施形態による液体吐出ヘッドを示すものである。この液体吐出ヘッドMは、液体吐出ヘッド用基板21と、複数の液体吐出口22と、複数の圧力室23と、各圧力室23にそれぞれ対応するように配設されたアクチュエーター25とから構成されている。各圧力室23はそれぞれ、各液体吐出口22に対応して設けられ、液体吐出口22に連通している。アクチュエーター25はその振動により、圧力室23内のインクの容積変化を生じさせて、液体吐出口22からインクなどの液滴を吐出させる。液体吐出口22は、ノズルプレート24に所定の間隔をもって形成され、圧力室23は液体吐出ヘッド用基板21に、液体吐出口22にそれぞれ対応するように並列して形成されている。なお、本実施形態では、液体吐出口22がアクチュエーター25による圧力発生面の対向面に設けられているが、アクチュエーター25による圧力発生面の対向面以外に設けることもできる。各アクチュエーター25は、振動板26と圧電体素子30で構成され、圧電体素子30は圧電体薄膜27と一対の電極(下部電極28および上部電極29)とから構成されている。液体吐出ヘッド用基板21の上面には各圧力室23にそれぞれ対応した開口部21Aが形成され、その開口部をふさぐように各アクチュエーター25が配置されている。図5では開口部に振動板26が露出する構成を示しているが、アクチュエーター25で発生する振動によって圧力室23内の液体に液体吐出口22からの吐出が可能であれば、吐出液体吐出ヘッド用基板21の一部が残っていても良い。なお、図3では説明のために、ノズルプレート24を液体吐出ヘッド用基板21から分離展開した状態を示しており、実際にはノズルプレート24は図4に示すように液体吐出ヘッド用基板21に接合されている。
振動板26の材料は特に限定されないが、上記下地基板層の材料として例示したSiなどの半導体、金属、金属酸化物、ガラスなどが好ましい。液体吐出ヘッド用基板21と振動板26は接合や接着により形成されても良いし、液体吐出ヘッド用基板21上に振動板26を直接、形成しても良い。また、振動板26を設けずに下部電極28および圧電体薄膜30を液体吐出ヘッド用基板21に直接、形成しても良い。その場合、
本発明を適用したアクチュエーターでは、振動板26が下地基板に相当し、表面にSiOまたはSiNを含む下地基板層2が形成され、下地基板層上に中間層3が形成される。中間層が導電性を有する場合、下部電極28の一部を構成することとなる。また、配向制御層を下部電極上に形成し、その上に圧電体薄膜を形成する場合、圧電体薄膜形成の最終段階で配向制御層も焼成されて圧電体薄膜の一部を構成することとなる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
(チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)塗工液の製造)
圧電体薄膜を形成するための塗工液として、金属組成がPb/Zr/Ti=1.2/0.52/0.48で表されるPZT塗工液を以下の通りに調製した。
酢酸鉛水和物1.2molを加熱で脱水し、これに安定化剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.2molおよび1−メトキシ−2−プロパノール(9.0mol)を混合し加熱撹拌することで反応させる。その後、テトラn−ブトキシジルコニウム0.52mol、テトライソプロポキシチタン0.48molを加えて更に加熱し反応させ、金属化合物を互いに複合化させた。次に、水(5.0mol)、エタノール(5.0mol)を添加し、加水分解反応を行い、有機金属酸化物からなる圧電体前駆体を得た。その際、酢酸(3.8mol)とアセチルアセトン(0.6mol)を加えた。その後、沸点100℃以下の溶媒をロータリーエバポレーターで完全に取り除き、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(有機溶剤)を添加して上記組成式に換算した金属酸化物の濃度が23質量%になるように濃度を調節し、PZT塗工液を調製した。
[実施例1]
直径6インチ(15cm)のシリコン基板の表面に、下地基板層1として熱酸化によりシリカ(SiO)層を500nm設け、さらにスパッタリングにより、中間層2としてTiを50nm、電極層3としてPtを200nm、形成して本実施例で用いる圧電体成膜用基板とした(図1参照)。スパッタリング後のアニールとして、以下の方法で熱処理を行った。
上記の圧電体成膜用基板を、150℃に加熱したホットプレート(アズワン株式会社製「シャマルホットプレートHHP−411」、盤面の温度ムラは150℃±1℃)上に、1分間載せ、基板の加熱を行った。この時、ホットプレートは無風環境下(風速0m/s)(基板上2cmの位置で測定;風速計 CEM社製 DT−8880を使用)に設置し、遮蔽板などは設けなかった。
[実施例2、比較例1〜3]
実施例1において、ホットプレートの盤面温度と加熱時間を表1に示す条件に変更する以外は、同様の工程で圧電体成膜用基板を作製した。
実施例1〜2および比較例1〜3で作製した圧電体成膜用基板上を以下の通り評価した。圧電体成膜用基板を、図7のように9枚に分割し、それぞれの圧電体成膜用基板のPt電極表面のTi検出と検出する場合はその量比を、XPS分析にて測定した。ここでTi量比は、Ti2p軌道に相当するピークから算出する原子%をPt4f軌道に相当するピークから算出する原子%とTi2p軌道に相当するピークから算出する原子%の和で除することで算出でき、XPSの三回測定平均の値である。図7において、(5)は基板の中心から半径3cmまでの部分、(1)、(2)、(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(9)は基板の中心から半径が3cm以上6cm以下の部分を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例1の全結合エネルギー領域におけるXPSスペクトルを図8(a)に、Ti2pピークが非検出であったTi2p領域(450nmから470nm)のみのXPSスペクトルを図8(b)に示す。さらに、比較例1で作製した圧電体成膜用基板のTi2pピークが検出されたXPSスペクトルを図9に示す。
次に、前述のようにして調製したPZT塗工液を、スピンコーター(4000rpm15秒)により基板のPt面に塗工した(塗工層の形成工程)。次に、280℃に加熱したホットプレート(アズワン株式会社製 「シャマルホットプレートHHP−411」、盤面の温度ムラは280℃±1℃)を準備した。このホットプレート上に、PZT塗工液を塗工した基板を5分間載せ、PZT塗工液中の有機溶剤を蒸発させた(乾燥塗工層の形成工程)。この時、ホットプレートは無風環境下(風速0m/s)(基板上2cmの位置で測定;風速計 CEM社製 DT−8880を使用)に設置し、遮蔽板などは設けなかった。上記の圧電体成膜用基板を650℃の電気炉に10分間入れて、圧電体前駆体を、Pb1.2(Zr0.52Ti0.48)Oからなる圧電体薄膜とした。なお、上記の650℃の電気炉で10分間の熱処理工程が、乾燥塗工層の加熱工程に相当する。その後、それぞれの圧電体薄膜のX線回折(2θ/θ法)をX線回折装置(株式会社リガク製 RINT2100)で測定した。図6は、実施例1の(5)のX線回折パターンを示したものであるが、図中40°付近に見られるピークは基板に設けたPtの(111)面のピークである。
図6より、圧電体薄膜の(100)面のピーク強度値を、(100)面、(110)面、(111)面のピーク強度値の和で除して(100)面の強度の割合(配向度)とした。44°付近に見られる(200)面のピークは、(100)面と等価な結晶面であるため、(100)面の強度の割合には含めない。実施例1、2、比較例1〜3の(100)面における配向度を表1に示す。
Figure 0006800636
表1に示すように、Pt電極上にTiが検出されない場合、90%以上の高い(100)面配向度が得られることが明らかとなった。特に圧電体薄膜の配向を制御する層の形成無しに高い(100)面配向度の圧電体薄膜の形成が可能となった。
[実施例3]
(配向制御層塗工液の製造)
金属組成がPb/Ti=1.2/1.0で表される配向制御層の塗工液を以下の通りに調製した。
酢酸鉛水和物1.2molを加熱で脱水し、これに安定化剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.2molおよび1−メトキシ−2−プロパノール(9.0mol)を混合し加熱撹拌することで反応させる。その後、テトライソプロポキシチタン1.0molを加えて更に加熱し反応させ、金属化合物を互いに複合化させた。次に、水(5.0mol)、エタノール(5.0mol)を添加し、加水分解反応を行い、有機金属酸化物からなる配向制御層材料を得た。その際、酢酸(3.8mol)とアセチルアセトン(0.6mol)を加えた。その後、沸点100℃以下の溶媒をロータリーエバポレーターで取り除き、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(有機溶剤)を添加して上記金属組成のチタン酸鉛に換算した濃度が1.0質量%になるように固形分濃度を調節し、配向制御層の塗工液を調製した。
上記のようにして調製した配向制御層の塗工液を、スピンコーター(2000rpm)により前記圧電体成膜用基板のPt面に15秒間で塗工した(塗工層の形成工程)。次に、130℃に加熱したホットプレート(アズワン株式会社製 「シャマルホットプレートHHP−411」、盤面の温度ムラは130℃±1℃)を準備した。このホットプレート上に、塗工液を塗工した基板を1分間載せ、塗工液中の有機溶剤を蒸発させた(乾燥塗工層の形成工程)。この時、ホットプレートは無風環境下(風速0m/s)(基板上2cmの位置で測定;風速計 CEM社製 DT−8880を使用)に設置し、遮蔽板などは設けなかった。
[実施例4〜11,比較例4〜9]
実施例3において、乾燥塗工層の形成工程を表2に示す乾燥温度、乾燥時間とする以外は同様の工程で圧電体成膜用基板を作製した。
実施例3〜11および比較例4〜9で作製した圧電体成膜用基板上を以下の通り評価した。圧電体成膜用基板を、図7のように9枚に分割し、それぞれの配向制御層表面のTi量比を、XPSを用いて測定した。ここでTi量比(原子%)は、Ti2p軌道に相当するピークから算出する元素量をPb4f軌道に相当するピークから算出する元素量とTi2p軌道に相当するピークから算出する元素量とO1s軌道に相当するピークから算出する元素量の和で除することで算出でき、XPSの三回測定平均の値である。その結果を表2に示す。
次に、それぞれの配向制御層表面に前述のようにして調製したPZT塗工液を、実施例1、2、比較例1〜3と同様に塗工、乾燥し、それぞれの圧電体薄膜のX線回折(2θ/θ法)をX線回折装置(株式会社リガク製 RINT2100)で測定する事で(100)面の配向度を導出した(表2参照)。ここで、ホットプレート上の無風や遮蔽板などの環境は実施例1、2、比較例1〜3と同様である。原子%でのTi量比と前述の手法で導出したPZTの(100)面配向度(%)の関係を図10に示す。配向制御層表面のTi量比が14.88原子%で臨界的にPZTの(100)面配向度が変化しており、14.88原子%以下でPZTの(100)面配向度が高いことが判明した。
Figure 0006800636
(配向制御層の形成時における加熱工程条件)
圧電体薄膜の(100)面配向度は、配向制御層を形成する際の加熱工程条件(乾燥温度と乾燥時間)によって変動し、熱負荷が少ない程(100)面の配向度は向上する(表2参照)。図10および表2から、好ましい配向制御層の乾燥温度T(℃)と乾燥時間t(分)は下記式(1)で定義することができる。
Figure 0006800636
(但し 50≦T≦450, 0<t<30 )
式(1)は、配向度の実験データ点(T=200,280℃、t=1,5,10分)から、温度に関しては10℃刻み、時間に関しては1分刻みで等差数列と仮定して各温度・時間条件の配向度を算出する。図10に示す配向度の臨界点を85%とし、その境界条件(温度、時間)点を導出する。温度と時間の関係式を
T=A×t^(−B)+C
と選定し、上記で求めた境界条件点とこの関係式の最小二乗法フィッテイングによりA、B,Cの係数を算出して導出した。
ここで、圧電体薄膜の高(100)面配向度を示す実施例3〜11の配向制御層の乾燥温度と乾燥時間条件は式(1)を満たしている。比較例4〜8はいずれも式(1)を満たしていない。式(1)を満たすことで配向制御層表面のTi量比を14.88原子%以下にできることが確認された。
1 下地基板
2 中間層
3 電極層
4 配向制御層
21 液体吐出ヘッド用基板
21A 開口部
22 インク吐出口
23 圧力室
24 ノズルプレート
25 アクチュエーター
26 振動板
27 圧電体薄膜
28 下部電極
29 上部電極
30 圧電体素子

Claims (8)

  1. 少なくともSiO 表面に含む下地基板層と、
    該下地基板層上のTiを含む中間層と、
    該中間層の上のPtを含む電極層と、
    該電極層上の配向制御層と
    を有し、
    該配向制御層形成前の該電極層の表面は、元素定量分析法によるTiが検出されず、
    該配向制御層はPb、OおよびTiを含み、該配向制御層の表面におけるPb、O、Ti元素中の該Tiが13.87原子%以上14.88原子%以下であることを特徴とする圧電体成膜用基板。
  2. 前記配向制御層は、Pbを含有する有機物を含む請求項記載の圧電体成膜用基板。
  3. 前記配向制御層は、Tiを含有する有機物を含む請求項1または2記載の圧電体成膜用基板。
  4. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電体成膜用基板と、前記圧電体成膜用基板の表面に設けられた圧電体と、を有する圧電体基板。
  5. 前記圧電体は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である請求項記載の圧電体基板。
  6. 請求項4または5記載の圧電体基板を有する液体吐出ヘッド。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電体成膜用基板の表面に圧電体前駆体と有機溶剤とを含む塗工液を塗工し、該塗工液を乾燥して塗工層を形成する工程と、該塗工層を乾燥して乾燥塗工層を形成する工程と、該乾燥塗工層を焼成して圧電体の薄膜を形成する工程と、を有することを特徴とする圧電体基板の製造方法。
  8. 前記圧電体前駆体は、Pbを含む有機金属化合物、Zrを含む有機金属化合物およびTiを含む有機金属化合物から調製される熱分解性の複合有機金属酸化物である請求項7に記載の圧電体基板の製造方法。
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