JP6804846B2 - 樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱伝導性を有する樹脂成形体に関する。
従来、屋内外で使用する通信機器や、防犯カメラ又はスマートメータなどの電子機器の筐体には、金属板や、熱伝導性を有する樹脂成形体などが用いられている。
下記の特許文献1には、ピッチ系炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂成形体が開示されている。特許文献1では、上記樹脂成形体中において、上記ピッチ系炭素繊維がMD方向(射出成形時の樹脂流れ方向)に配向されている。また、厚み方向の熱伝導率λ1とMD方向の熱伝導率λ2との比(λ2/λ1)が10以上であることが記載されている。
また、下記の特許文献2には、熱伝導性樹脂組成物からなる樹脂成形体である放熱シャーシが開示されている。特許文献2では、熱伝導性樹脂組成物が、黒鉛、酸化マグネシウム及び窒化ホウ素のうちいずれか1種以上の熱伝導フィラーを含んでいることが記載されている。また、熱伝導フィラーの配合量が、樹脂100質量部に対し、10〜1000質量部であることが記載されている。
特開2015−120358号公報 特開2008−31359号公報
近年、屋内外における通信機器や、防犯カメラ又はスマートメータなどの電子機器の筐体においては、内部に通信用アンテナが配置されることがある。そのため、通信機器や電子機器の筐体には、電磁波透過性が求められることがある。
しかしながら、特許文献1や特許文献2の樹脂成形体は、電磁波透過性が十分でなかった。特許文献2においては、むしろ電磁波のシールド性に優れることが記載されており、電磁波透過性については記載されていない。また、特許文献1や特許文献2の樹脂成形体では、特に面方向における熱拡散性が十分でなかった。
本発明の目的は、熱拡散性及び電磁波透過性に優れる樹脂成形体を提供することにある。
本発明に係る樹脂成形体は、熱伝導性を有し、かつ主面を有する樹脂成形体であって、前記主面において、任意の方向をx方向及び該x方向に直交する方向をy方向とし、前記樹脂成形体の厚み方向をz方向としたときに、前記x方向の熱伝導率λx、前記y方向の熱伝導率λy及び前記z方向の熱伝導率λzが、min(λx,λy)/λz≧3を満たしており、かつ、KEC法に準拠して測定された周波数1GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下である。
本発明に係る樹脂成形体のある特定の局面では、前記主面が、平面又は曲面である。
本発明に係る樹脂成形体の別の特定の局面では、前記λx及び前記λyにおいて、λx/λyが、0.5以上、2以下を満たしている。
本発明に係る樹脂成形体の他の特定の局面では、前記λx及び前記λyが、max(λx,λy)≧1W/(m・K)を満たしている。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、樹脂と導電性熱伝導フィラーとを含む樹脂組成物の成形体である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記導電性熱伝導フィラーのアスペクト比が3以上である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記導電性熱伝導フィラーの含有量が、前記樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、50重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記導電性熱伝導フィラーが、炭素材料により構成されている。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記樹脂組成物が、絶縁性熱伝導フィラーをさらに含む。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記絶縁性熱伝導フィラーの含有量が、前記樹脂100重量部に対し、100重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記絶縁性熱伝導フィラーが、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素及び窒化アルミ二ウムからなる群から選択された少なくとも1種により構成されている。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記樹脂が、オレフィン系樹脂からなる第1の樹脂を含む。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記樹脂が、周波数1Hz及び歪み0.3%における動的粘弾性測定により測定される損失正接の最大値を示す温度が−10℃以下である第2の樹脂を含む。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記第2の樹脂の含有量が、前記樹脂100重量部に対し、5重量部以上、50重量部以下である。
本発明によれば、熱拡散性及び電磁波透過性に優れる樹脂成形体を提供することができる。
(a)は、実施例で得られた樹脂成形体の模式的平面図であり、(b)は、そのA−A線に沿う模式的断面図である。 実施例で得られた筐体の概略構成図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の樹脂成形体は、熱伝導性を有する熱伝導性樹脂成形体である。本発明の樹脂成形体は、主面を有している。本発明の樹脂成形体は、x方向の熱伝導率λx、y方向の熱伝導率λy及びz方向の熱伝導率λzが、min(λx,λy)/λz≧3を満たしている。また、本発明の樹脂成形体は、電磁波シールド性能が10dB以下である。
x方向は、上記主面に沿う任意の方向である。y方向は、上記主面に沿い、かつx方向に直交する方向である。また、z方向は、樹脂成形体の厚み方向である。樹脂成形体の厚み方向は、上記主面に直交する方向である。従って、z方向は、x方向及びy方向に直交する方向である。なお、上記主面は、平面であってもよく、曲面であってもよい。また、本明細書において主面とは、樹脂成形体の外表面において最も面積の大きい面をいうものとする。
上記x方向、y方向及びz方向の各方向における熱伝導率は、それぞれ、下記式(1)を用いて計算することができる。
熱伝導率(W/(m・K))=熱拡散率×比重×比熱 …(1)
式(1)において、上記x方向、y方向及びz方向の各方向における熱拡散率は、例えば、べテル社製、品番名:TA33を用いて測定することができる。
上記min(λx,λy)とは、λx及びλyのうち、熱伝導率が低い方の値を意味するものとする。従って、min(λx,λy)/λz≧3は、λx及びλyのうち、低い方の熱伝導率のλzに対する比が、3以上であることを意味している。
電磁波シールド性能は、周波数1GHzにおける電磁波シールド性能である。電磁波シールド性能は、KEC法に準拠して測定することができる。KEC法とは、一般社団法人KEC関西電子工業振興センターにより開発された電磁波シールド性能の測定方法である。なお、KEC法において、電磁波シールド性能は、例えば、電界シールド測定装置(マイクロウェーブファクトリー株式会社製、商品名「KEC法シールド効果測定装置」)を用いて測定することができる。
本発明の樹脂成形体は、min(λx,λy)/λz≧3であるので、面方向の熱伝導率が、厚み方向の熱伝導率より高くなっている。従って、本発明の樹脂成形体は、面方向における熱伝導性に優れている。また、本発明の樹脂成形体は、周波数1GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下であるので、電磁波透過性に優れている。
本発明の樹脂成形体は、熱拡散性に優れているので、屋内外における通信機器や、防犯カメラ又はスマートメータなどの電子機器の筐体に好適に用いることができる。特に、面方向における熱拡散性に優れているので、通信機器や電子機器の内部に太陽光などの熱が浸透するのを防止することができる。具体的には、例えば直射日光が当る部分の熱が影となっている面へ熱拡散することができる。また、筐体内部における発熱部品の熱を面方向に拡散させることで、通信機器や電子機器の温度が部分的に上昇することを抑制することもできる。さらに、筐体の一部が放熱フィンの形状を有せば、放熱効果を発揮することも可能である。例えば、CPUなどが高温になると、その動作能力が低減してしまうので、CPU付近の熱を広範囲に拡散させることができる。
本発明においては、面方向における熱伝導性をより一層高める観点から、好ましくはmin(λx,λy)/λz≧5であり、より好ましくはmin(λx,λy)/λz≧10である。なお、min(λx,λy)の上限値は、高ければ高いほど好ましいが、材料の性質上20程度とすることが望ましい。具体的には、フィラーのアスペクト比が寄与するが、フィラーの厚みが薄くなるとフィラー自身がコンポジット樹脂の中で丸まってしまい十分な熱伝導特性が得られないことがあるためである。
本発明においては、λx及びλyにおいて、λx/λyが、0.5以上、2以下であることが好ましい。この場合、面方向において、より一層均一に熱を拡散させることができる。特に、直射日光が当る部分(高温部)と影の部分(低温部)が必ずしも常に同じ面になるとは限らないため、どの水平方向にも熱拡散する形態が好ましい。よって、より好ましくはλx/λyが0.7以上、さらに好ましくはλx/λyが0.9以上、より好ましくはλx/λyが1.6以下、さらに好ましくはλx/λyが1.2以下である。
上記λx及び上記λyは、max(λx,λy)≧1W/(m・K)を満たしていることが好ましい。上記max(λx,λy)は、λx及びλyのうち、熱伝導率が高い方の値を意味するものとする。従って、max(λx,λy)≧1W/(m・K)は、λx及びλyのうち、熱伝導率が高い方の熱伝導率が1W/(m・K)以上であることを意味している。max(λx,λy)が上記範囲にある場合、熱拡散性をより一層高めることができる。熱拡散性をさらに一層高める観点から、より好ましくは上記λx及び上記λyが、max(λx,λy)≧3W/(m・K)であり、さらに好ましくはmax(λx,λy)≧10W/(m・K)である。なお、max(λx,λy)の上限値は、高ければ高いほど好ましいが、材料の性質上、20程度とすることが望ましい。本発明においては、λx及びλyの双方が、好ましくは1W/(m・K)以上、より好ましくは3W/(m・K)以上、さらに好ましくは10W/(m・K)以上である。
また、電磁波透過性をより一層高める観点から、好ましくは電磁波シールド性能が5dB以下であり、より好ましくは電磁波シールド性能が3dB以下である。
本発明の樹脂成形体は、樹脂と熱伝導フィラーとを含む樹脂組成物の成形体であることが好ましい。本発明の樹脂成形体は、上記樹脂組成物を、例えば、プレス加工、押出加工、押出ラミ加工、射出成形などの方法によって成形することで得ることができる。
以下、樹脂組成物の詳細について説明する。
(樹脂)
上記樹脂としては、特に限定されず、様々な公知の合成樹脂を用いることができる。好ましくは、上記合成樹脂が熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂を用いる場合、樹脂組成物の成形性をより一層高めることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、又はこれらのうち少なくとも2種の共重合体などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、弾性率の高い樹脂であることが好ましい。安価であり、加熱下の成形が容易であることから、ポリオレフィンがより好ましい。
上記ポリオレフィンとしては、特に限定されず、公知のポリオレフィンを用いることができる。ポリオレフィンの具体例としては、エチレン単独重合体であるポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体であるポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ブテン単独重合体であるポリブテン、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの単独重合体又は共重合体からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。耐熱性や弾性率をより一層高める観点から、上記ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンであることが好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂からなる第1の樹脂と、周波数1Hz、及び歪み0.3%における動的粘弾性測定により測定される損失正接の最大値を示す温度が−10℃以下である第2の樹脂とを含んでいることが好ましい。この場合、樹脂成形体の耐衝撃性をより一層高めることができる。
上記損失正接は、JIS K 7244−4に準拠して測定することにより求めることができる。具体的には、幅5mm×長さ24mm×厚み0.3mmの試験シートを作製する。作製した試験シートを歪み量0.3%、周波数1Hz及び昇温速度3℃/分の条件下で、動的粘弾性の温度分散測定を行うことにより求められる。動的粘弾性の温度分散測定は、例えば、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、商品名「RSA」)を用いて行うことができる。
第1の樹脂としては、上述したポリオレフィンを用いることができる。また、第2の樹脂としては、特に限定されないが、芳香族ビニルモノマーの重合体である芳香族ビニルブロックを有する共重合体であることが好ましい。上記芳香族ビニルブロックと、共役ジエンモノマーの重合体であるジエンブロックとを有するブロック共重合体であることがより好ましい。
上記芳香族ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレンなどが挙げられる。
また、上記共役ジエンモノマーとしては、特に限定されず、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、ジメチルブタジエンなどの炭素数が4〜12の共役ジエンが挙げられる。
このような芳香族ビニルブロックを有する共重合体として、スチレン系エラストマーが挙げられる。
上記スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SI)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(SEP)、及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)などの共重合体が挙げられる。これらの共重合体はブロック共重合体であってもよい。また、リニア型であっても、ラジアル型であってもよい。これらの共重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂成形体の耐衝撃性をより一層高める観点から、上記スチレン系エラストマーは、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)であることが好ましい。なお、本発明においては、上記損失正接が上記範囲を満たす限り、第2の樹脂として、ポリオレフィンなどの他のポリマーを用いてもよい。
上記第1の樹脂の含有量は、上記樹脂中において、すなわち上記樹脂100重量部に対し、好ましくは60重量部以上、より好ましくは80重量部以上、好ましくは95重量部以下、より好ましくは90重量部以下である。第1の樹脂の含有量が上記範囲内にある場合、樹脂成形体の弾性率や耐熱性をより一層高めることができる。
上記第2の樹脂の含有量は、上記樹脂中において、すなわち上記樹脂100重量部に対し、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。第2の樹脂の含有量が上記範囲内にある場合、樹脂成形体の耐衝撃性をより一層高めることができる。
(熱伝導フィラー)
熱伝導フィラーとしては、導電性及び絶縁性熱伝導フィラーを用いることができる。しかしながら、熱伝導フィラーとしては、比較的安価で且つ高熱伝導率を有する導電性フィラーを用いることが好ましく、炭素材料を用いることがより好ましく、グラフェン積層構造を有する炭素材料を用いることがさらに好ましい。グラフェン積層構造を有する炭素材料を用いる場合、樹脂成形体の熱伝導性をより一層高めることができる。
上記炭素材料としては、特に限定されないが、黒鉛、薄片化黒鉛又はグラフェンなどを用いることができる。熱拡散性をより一層高める観点から、好ましくは、黒鉛又は薄片化黒鉛であり、より好ましくは黒鉛である。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。上記薄片化黒鉛とは、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであり、元の黒鉛よりも薄いグラフェンシート積層体をいう。薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、元の黒鉛より少なければよい。
上記グラフェン積層構造を有する炭素材料において、グラフェンシートの積層数は、3000層以下であることが好ましく、より好ましくは2000層以下、さらに好ましくは1500層以下である。また、グラフェンシートの積層数は、100層以上が好ましく、より好ましくは500層以上、さらに好ましくは800層以上である。
なお、黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて黒鉛の厚みを測定し、グラフェンシートの厚み0.33nm/層で除すことで求めることができる。
また、薄片化黒鉛のグラフェンシートの積層数は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができ、各薄片化黒鉛の積層数の相加平均をいう。積層数が上記下限以上である場合、グラフェン構造を有する炭素材料のコストを抑えることができる。一方、フィラーとしての剛性補強効果の観点から、グラフェンシートの積層数の上限は、3500層程度である。
導電性熱伝導フィラーのアスペクト比は、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上である。導電性熱伝導フィラーのアスペクト比が、上記下限以上である場合、面方向における熱拡散性をより一層高めることができる。なお、アスペクト比が大きすぎると効果が飽和してそれ以上の効果が望めないことがあるから、導電性熱伝導フィラーのアスペクト比の上限は、20とすることが望ましい。また、本明細書において、アスペクト比とは、フィラーの厚みに対するフィラーの積層面方向における最大寸法の比をいう。
導電性熱伝導フィラーの含有量は、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。上記導電性熱伝導フィラーの含有量が上記下限以上である場合、樹脂成形体の面方向における熱拡散性をより一層高めることができる。また、上記導電性熱伝導フィラーの含有量が上記上限以下である場合、電磁波透過性や、耐衝撃性をより一層高めることができる。
熱伝導フィラーは、絶縁性熱伝導フィラーであってもよい。もっとも、熱伝導フィラーとして、導電性熱伝導フィラー及び絶縁性熱伝導フィラーの双方を用いることが好ましい。この場合、熱拡散性と電磁波透過性とをより一層高いレベルで両立することができる。
上記絶縁性熱伝導フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素及び窒化アルミ二ウムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。熱拡散性と電磁波透過性とをより一層高いレベルで両立させる観点から、上記絶縁性熱伝導フィラーはとして、酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素を用いることが好ましい。
絶縁性熱伝導フィラーの含有量としては、特に限定されないが、樹脂100重量部に対し、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは50重量部以上である。絶縁性熱伝導フィラーの含有量が上記下限以上である場合、樹脂成形体の電磁波透過性をより一層高めることができる。一方、絶縁性熱伝導フィラーの含有量は、100重量部以下が好ましく、より好ましくは70重量部以下である。絶縁性熱伝導フィラーの含有量が上記上限以下である場合、樹脂成形体の耐衝撃性を一層高めることができる。
熱伝導フィラーは、樹脂中に分散されていることが好ましい。熱伝導フィラーが、樹脂中に分散されている場合、樹脂成形体の面方向における熱拡散性をより一層高めることができる。より好ましくは、導電性熱伝導フィラーの周辺を絶縁性熱伝導フィラーが囲い込むように分散していることが望ましい。また、導電性熱伝導フィラーと絶縁性熱伝導フィラーが接触点を持つように分散していることが好ましい。導電性熱伝導フィラー同士が連なって存在する場合、電磁波透過性が低下する可能性があるためである。また、導電性熱伝導フィラーと絶縁性熱伝導フィラーとが接触点を持ち連なることで熱拡散性をさらに一層高めることができる。
上記熱伝導フィラーを、上記合成樹脂中に分散させる方法については、特に限定されないが、合成樹脂と、熱伝導フィラーとを混練することにより分散させることができる。
上記混練方法については、特に限定されないが、例えば、プラストミルなどの二軸スクリュー混練機、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールなどの混練装置を用いて、加熱下において混練する方法などが挙げられる。これらのなかでも、押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。
(他の添加剤)
樹脂組成物中には、任意成分として様々な添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系などの紫外線吸収剤;金属害防止剤;ヘキサブロモビフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテルなどのハロゲン化難燃剤;ポリリン酸アンモニウム、トリメチルフォスフェートなどの難燃剤;各種充填剤;帯電防止剤;安定剤;顔料などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
本発明においては、樹脂成形体を構成する樹脂組成物中における樹脂及び熱伝導フィラーの種類や、各成分の配合比率などを変更することによって、各方向における熱拡散性や、電磁波透過性などのさまざまな物性を適宜調整することができる。
このように本発明の樹脂成形体においては、目的とする用途に応じて、物性を適宜調整することができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
参考例1)
ポリプロピレン(PP、プライムポリマー社製、商品名「E−150GK」)95重量部と、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS、旭化成社製、商品名「H1062」)5重量部と、黒鉛(伊藤黒鉛社製、商品名「CNP7」、グラフェン積層数:1300層、平均粒径:7μm、厚み:420nm)5重量部とを、ラボプラストミル(東洋精機社製、品番「R100」)を用いて、200℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、縦6mm×横6mm×高さ5mmになるように調整してプレス板の上に配置し、温度が200℃になるまで加熱した。しかる後、圧力20MPa及び時間5分の条件で、プレス加工によりシート状に成形した。続いて、常温プレスすることで縦300mm×横300mm×厚み2mmの樹脂シートを得た。
次に、得られた樹脂シートを遠赤オーブンにて、表裏面の温度が200℃になるまで加熱溶融させた後、金型にて常温プレスすることで、箱状の樹脂成形体を得た。図1(a)に得られた樹脂成形体1の模式的平面図を、図1(b)にそのA−A線に沿う模式的断面図を示す。次に、同様の方法でもう一つの樹脂成形体1を用意し、図2に示すように一対の樹脂成形体1の周囲をクリップ2で挟みこみ完全に閉空間の箱状の筐体3を得た。
(実施例2)
黒鉛の添加量を10重量部とし、かつ酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名「LS−210B」)50重量部をさらに添加したこと以外は、参考例1と同様として筐体を得た。
(実施例3)
黒鉛の添加量を20重量部とし、かつ酸化アルミニウムの代わりに酸化マグネシウム(協和化学工業社製、商品名「パイロキスマ(登録商標)5301K」)50重量部を添加したこと以外は、実施例2と同様として筐体を得た。
参考例4)
ポリエチレン(PE、日本ポリエチレン株式会社製、商品名「ノバテック(登録商標)LJ803」)100重量部と、黒鉛(伊藤黒鉛社製、商品名「CNP7」、グラフェン積層数:1300層、平均粒径:7μm、厚み:420nm)5重量部とを、ラボプラストミル(東洋精機社製、品番「R100」)を用いて、140℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、縦6mm×横6mm×高さ5mmになるように調整してプレス板の上に配置し、温度が140℃になるまで加熱した。しかる後、圧力20MPa及び時間5分の条件で、プレス加工によりシート状に成形した。次に、常温プレスすることで、縦300mm×横300mm×厚み2mmの樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートを2mm×5mm×5mmのシートペレット状に調整し、そのシートペレット状の樹脂シートを160tの射出成形機(東芝機械社製、品番「EC160NP」)に投入した。続いて、樹脂温度が180℃になる条件下で金型に注入し、50℃に冷却して1分経過した後に取り出すことで、参考例1と同様の形状を有する箱状の樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体を参考例1と同様にして、周囲をクリップで挟みこみ完全に閉空間の箱状の筐体を得た。
(実施例5)
黒鉛の添加量を10重量部とし、かつ酸化マグネシウム(協和化学工業社製、商品名「パイロキスマ(登録商標)5301K」)50重量部をさらに添加したこと以外は、参考例4と同様として筐体を作製した。
(実施例6)
酸化マグネシウムの添加量を20重量部とし、かつ酸化アルミニウム(日本軽金属社製、商品名「LS−210B」)20重量部をさらに添加したこと以外は、実施例5と同様として筐体を得た。
(比較例1)
黒鉛を用いなかったこと以外は、参考例1と同様にして筐体を得た。
(比較例2)
黒鉛の添加量を5重量部とし、酸化アルミニウムの添加量を120重量部とし、酸化マグネシウムを用いなかったこと以外は、実施例6と同様にして筐体を得た。
参考例1、実施例2〜3、参考例4、実施例5〜6及び比較例1,2の組成の詳細を下記の表1に示す。
Figure 0006804846
(評価)
参考例1、実施例2〜3、参考例4、実施例5〜6及び比較例1,2で得られた樹脂成形体及び筐体について以下の評価を行った。結果を下記の表2に示す。
<評価方法>
熱伝導率の測定;
筐体の底面部分から100mm×100mmの大きさに試験片を切り出し、熱伝導率の測定に用いた。
筐体を構成する試験片の平面または曲面における任意の方向をx方向及び該x方向と直交する方向をy方向とし、試験片の厚み方向をz方向としたとき、x方向の熱伝導率λx、y方向の熱伝導率λy及びz方向の熱伝導率λzを、それぞれ以下の式を用いて測定した。
熱伝導率(W/(m・K))=熱拡散率×比重×比熱 …(1)
式(1)において、各方向における熱拡散率の測定は、ベテル社製、品番名「TA33」を用いて行った。上記のようにして得られたλx、λy及びλzを用い、min(λx,λy)/λz、λx/λy及びmax(λx,λy)を得た。
また、この測定方法にて評価を行なう場合、面内方向については、照射するキセノンフラッシュの放射熱を検出できない場合があるため、必要に応じて筐体から切り抜いた試験片を溶融加熱して冷却プレスすることで厚みを薄くして、検出可能なサンプル厚みに調整することを行なった。
なお、比重は、ALFAMIRAGE社製、商品名「MDS−300」を用いて測定した。
また、比熱は、セイコーインスツルメンツ製、商品名「DSC−6200」を用いて測定した。
電磁波シールド性能;
筐体の底面部分から150mm×150mmの大きさに試験片を切り出し、電磁波シールド性能の測定に用いた。電磁波シールド性能は、一般社団法人KEC関西電子工業振興センターにより開発されたKEC法に準拠して、周波数1GHzにおける電磁波シールド性能を測定し、電界の損失をみた。なお、KEC法において、電磁波シールド性能は、例えば、電界シールド測定装置(マイクロウェーブファクトリー社製、商品名「KEC法シールド効果測定装置」)を用いて測定した。
具体的には、信号発生装置より発生した電磁波とその電磁波を受信する受信装置が設けられたケースの中間位置に試験片を配置し、試験片がないときとの差異をみてシールド性能を評価する装置である。装置は100MHzから1GHzまで測定可能であるが、本発明では1GHzでのシールド性能を評価の値として用いることとした。また、この装置は電界と磁界のシールド性能を評価することが可能であるが、本発明は電界のシールド性が支配的な材料で構成されているため電界の減衰量を評価の値として用いることとした。
熱拡散性評価;
筐体の底面部分から100mm×100mmの大きさに試験片を切り出し、熱拡散性評価の測定に用いた。
熱拡散性評価は、試験片の下側中央部にヒーター(坂口電熱社製、品番「マイクロセラミックヒーターMS−5」)を配置し、試験片とヒーターとの間は熱伝導グリス(AINEX社製、品番「GS−04」、熱伝導率3.8W/(m・K))1gを均一に塗布することで接合した。また、ヒーターの真上に当たる試験片の上側には熱電対をテープで固定して、熱電対を用いて温度を測定した。なお、試験片厚みは、1.6mmであった。
ヒーターは、直流電源装置を用いて8Vの電圧で加熱させ、800秒後(ほぼ温度上昇が小さくなり、飽和温度に達している時間)に試験片の上側中央部の温度を測定する。この温度が低いほど熱の浸透性が低い、つまり熱を周囲に拡散しているので、熱拡散性において良好な筐体といえる。
結果を下記の表2に示す。
Figure 0006804846
1…樹脂成形体
2…クリップ
3…筐体

Claims (8)

  1. 熱伝導性を有し、かつ主面を有する樹脂成形体であって、
    前記樹脂成形体が、樹脂、導電性熱伝導フィラー、及び絶縁性熱伝導フィラーを含む樹脂組成物の成形体であり、
    前記樹脂100重量部に対し、前記導電性熱伝導フィラーの含有量が、10重量部以上、20重量部以下であり、
    前記樹脂100重量部に対し、前記絶縁性熱伝導フィラーの含有量が、10重量部以上、50重量部以下であり、
    前記主面において、任意の方向をx方向及び該x方向に直交する方向をy方向とし、前記樹脂成形体の厚み方向をz方向としたときに、
    前記x方向の熱伝導率λx、前記y方向の熱伝導率λy及び前記z方向の熱伝導率λzが、min(λx,λy)/λz≧3を満たしており、かつ、
    KEC法に準拠して測定された周波数1GHzにおける電磁波シールド性能が10dB以下であり、
    前記樹脂が、オレフィン系樹脂からなる第1の樹脂と、周波数1Hz及び歪み0.3%における動的粘弾性測定により測定される損失正接の最大値を示す温度が−10℃以下である第2の樹脂とを含む、樹脂成形体。
  2. 前記主面が、平面又は曲面である、請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 前記λx及び前記λyにおいて、λx/λyが、0.5以上、2以下を満たしている、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記λx及び前記λyが、max(λx,λy)≧1W/(m・K)を満たしている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  5. 前記導電性熱伝導フィラーのアスペクト比が3以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  6. 前記導電性熱伝導フィラーが、炭素材料により構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  7. 前記絶縁性熱伝導フィラーが、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素及び窒化アルミ二ウムからなる群から選択された少なくとも1種により構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  8. 前記第2の樹脂の含有量が、前記樹脂100重量部に対し、5重量部以上、50重量部以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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