JP6814875B2 - 確率的配列決定プロセスのための塩基呼出 - Google Patents
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Description
特に明記されない限り、本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されているのと類似または等価の方法、装置、および材料が、開示技術の実施に使用できる。下記の用語は、頻繁に使用されている一定の用語の理解を促進するために提供されるのであって、本開示の範囲を制限するものではない。本明細書中で使用されている略語は、化学および生物学的分野の範囲内における慣用の意味を有する。
態様により、例えば配列決定プロセスの確率的性質を考慮し、核酸の配列の測定における改良された正確性が提供できる。一部の態様では、所与の配列決定セルに特別な時間ベースの測定(例えばヒストグラムの形成)を使用して、特定期間にわたって測定された塩基の配列を決定するための特注モデルを生成することができる。該モデルは、それぞれが異なる状態(例えばナノポアの異なる状態)に対応する確率関数を含みうる。そのような確率関数は、その特定セルについて得られた測定のヒストグラムにフィットさせることができるので、確率関数をその特定セルに合わせることにより、増大した正確性を提供できる。確率関数は、核酸の配列決定操作の間中更新できるので、配列決定セルの物理的性質のドリフトを考慮に入れることができる。
図1は、ナノポアセル150のアレイ140を有するナノポアセンサーチップ100の態様を示す上面図である。各ナノポアセル150は、ナノポアセンサーチップ100のシリコン基板上に集積された制御回路を含む。一部の態様において、側壁136がアレイ140に含まれてナノポアセル150のグループを分離し、各グループが特徴付けのための異なるサンプルを受け入れるようにすることもできる。各ナノポアセルは、核酸を配列決定するために使用できる。一部の態様において、ナノポアセンサーチップ100は、カバープレート130を含んでもよい。一部の態様において、ナノポアセンサーチップ100は、コンピュータプロセッサなどの他の回路とのインターフェースのために複数のピン110を含むこともできる。
ナノポアセンサーチップ100のナノポアセル150は、多様な方法で実施することができる。例えば、一部の態様において、異なるサイズおよび/または化学構造のタグを、配列決定される核酸分子の異なるヌクレオチドに付けることができる。一部の態様において、配列決定される核酸分子の鋳型に対する相補鎖は、異なるポリマータグ付きヌクレオチドを鋳型とハイブリダイズすることによって合成することができる。一部の実施において、核酸分子と付着タグは、どちらもナノポアを通って移動できるので、ナノポアを通るイオン電流は、ヌクレオチドに付けられたタグの特定のサイズおよび/または構造のために、ナノポア内にあるヌクレオチドを示すことができる。一部の実施においては、タグだけがナノポア内に移動できる。ナノポア中の異なるタグを検出するための多数の異なる方法もあるであろう。
図2に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの特徴付けに使用できる図1のナノポアセンサーチップ100中のナノポアセル150のような、ナノポアセンサーチップ中のナノポアセル200の態様を示す。ナノポアセル200は、誘電体層201および204から形成されたウェル205;ウェル205上に形成された脂質二重層214などの膜;および脂質二重層214上にあって脂質二重層214によりウェル205から分離されているサンプルチャンバ215を含みうる。ウェル205は、一定容量の電解質206を含有でき、サンプルチャンバ215は、ナノポアを含有するバルク電解質208、例えば可溶性タンパク質ナノポア膜貫通分子複合体(PNTMC)、および目的の被検体(例えば、配列決定される核酸分子)を保持できる。
ナノポアセンサーチップ100中のナノポアセル150のような、ナノポアセンサーチップ中のナノポアセルは、合成による単一分子ナノポアベースの配列決定(Nano−SBS)技術を用いる並行配列決定を可能にしうる。
図4に、ナノポアセル200のようなナノポアセル中の電気回路400(図2の電気回路222の部分を含みうる)の態様を示す。上記のように、一部の態様において、電気回路400は、ナノポアセンサーチップ中の複数のナノポアセルまたは全ナノポアセル間で共有できる、従って共通電極とも呼べる対電極410を含む。共通電極は、電圧源VLIQ420に接続することにより、ナノポアセル中の脂質二重層(例えば脂質二重層214)と接触しているバルク電解質(例えばバルク電解質208)に共通電位を印加するように構成できる。一部の態様においては、AC非ファラデーモードを利用して電圧VLIQをACシグナル(例えば矩形波)で変調し、それをナノポアセル中の脂質二重層と接触しているバルク電解質に印加することができる。一部の態様において、VLIQは±200〜250mVの振幅および例えば25〜400Hzの周波数を有する矩形波である。対電極410と脂質二重層(例えば脂質二重層214)間のバルク電解質は、例えば100μF以上の大型キャパシタ(図示せず)によってモデル化することができる。
核酸の配列決定を実施するためには、タグ付きヌクレオチドが核酸に付加されている間に積分キャパシタ(例えば積分キャパシタ408(ncap)またはキャパシタ426(CBilayer))の電圧レベルをサンプリングし、ADC(例えばADC435)によって変換すればよい。ヌクレオチドのタグは、例えば印加電圧がVPREよりVLIQが低いような場合、対電極および作用電極を通じて印加されるナノポア全体の電界によってナノポアの胴部に押し込まれうる。
通り抜け事象は、タグ付きヌクレオチドが鋳型(例えば核酸フラグメント)に結合し、タグがナノポアの胴部に入りそして出るときのことである。これは通り抜け事象中に何回も起こりうる。タグがナノポアの胴部にある場合、ナノポアの抵抗は高くなり、ナノポアを流れる電流は少なくなりうる。
ACサイクル中、積分キャパシタ上の電圧はADCによって何回もサンプリングされうる。例えば、一態様において、AC電圧シグナルはシステム全体に例えば約100Hzで印加され、ADCの取得速度はセルあたり約2000Hzでありうる。従って、ACサイクル(AC波形のサイクル)あたり捕捉される約20のデータ点(電圧測定値)がありうる。AC波形の1サイクルに対応するデータ点はセットと呼ぶことができる。ACサイクルに対するデータ点のセットには、例えば、VLIQがVPREより低い場合に捕捉されるサブセットがありうる。これはタグがナノポアの胴部に押し込まれている明モード(期間)に対応しうる。別のサブセットは、例えば、VLIQがVPREより高い場合に印加電界によってタグがナノポアの胴部から押し出された暗モード(期間)に対応しうる。
各データ点について、スイッチ401が開放されている場合、積分キャパシタ(例えば積分キャパシタ408(ncap)またはキャパシタ426(CBilayer))の電圧は、VLIQによる充電/放電の結果、例えばVLIQがVPREより高い場合、VPREからVLIQへの増加として、またはVLIQがVPREより低い場合、VPREからVLIQへの減少として、減衰様式で変化する。最終電圧値は、作用電極が充電するとVLIQから逸脱しうる。積分キャパシタ上の電圧レベルの変化速度は、ナノポアを含みうる、ひいてはナノポア内の分子(例えばタグ付きヌクレオチドのタグ)を含みうる二重層の抵抗の値に支配されうる。電圧レベルはスイッチ401の開放後、所定の時間に測定できる。
ナノポアセンサーチップの使用可能な各ナノポアについては、核酸の配列決定をするために実動モード(production mode)を実施することができる。配列決定中に捕捉されたADC出力データは、より高い正確性を提供するために正規化することができる。正規化は、サイクル形状、ゲインドリフト、電荷注入オフセット、およびベースラインシフトなどのオフセット効果に対処できる。一部の実施において、通り抜け事象に対応する明期間サイクルのシグナル値は、そのサイクルについて単一のシグナル値(例えば平均)が得られるようにまたはサイクル内減衰(一種のサイクル形状効果)を低減するために測定シグナルに対して調整が行えるように、平坦化することができる。ゲインドリフトは、一般的に、シグナル全体を拡大縮小し、数百から数千秒のオーダーで変化させる。例として、ゲインドリフトは、溶液(ポア抵抗)の変化または二重層キャパシタンスの変化によって誘発されうる。ベースラインシフトは、〜100msの時間スケールで発生し、作用電極における電圧オフセットに関連する。ベースラインシフトは、明期間から暗期間への配列決定セル中の電荷バランスを維持する必要性の結果、通り抜けによる有効整流比の変化によって推進されうる。
鋳型核酸の配列が所望されるが、配列の特定の塩基は、測定から推測される必要がある。システムの様々な物理的特性が、そのような決定を実施するのを困難にしうる。シグナルの測定(例えばADC層)から鋳型核酸(鋳型層)の配列を決定するプロセスにおいて、様々なデータ層は異なるレベルの推測に対応しうる。様々なデータ層は、鋳型層、酵素層、ポア層、および単一層を含む。様々なデータ層を議論する前に、ヌクレオチドの取込みおよびタグの通り抜けの様々な状態について説明する。
図6に、本発明の態様に従って、タグ付きヌクレオチドを用いる核酸配列決定のためのプロセス600の態様を示す。ステージAは、そのようなタグ付きヌクレオチドを用いてヌクレオチドの配列決定を実施しようとしている配列決定セルを示す。ナノポア601が膜602に形成されている。酵素603(例えばDNAポリメラーゼなどのポリメラーゼ)がナノポアに会合している。一部の場合、ポリメラーゼ603はナノポア601に共有結合されている。ポリメラーゼ603は、配列決定される核酸分子604と会合している。一部の態様において、核酸分子604は円形である。一部の場合、核酸分子604は線形である。一部の態様において、核酸プライマー605は核酸分子604の部分にハイブリダイズされている。ポリメラーゼ603は、1本鎖核酸分子604を鋳型として用いて、プライマー605上へのヌクレオチド606の取込みを触媒する。ヌクレオチド606はタグ種(“タグ”)607を含む。
図7に、本発明の態様に従って、配列決定セル700および対応データ層の簡略図を示す。鋳型核酸分子704が、膜714内のナノポア701を用いて、酵素703による合成によって配列決定されているところが示されている。図7は、ヌクレオチド706を鋳型核酸分子704に触媒するプロセスにおける酵素703を示している。従って、酵素703は、塩基Tに対応する結合状態にある。タグ707は、ナノポア701に入り込んでいないので、非通り抜け状態にある。ADC735は、非通り抜け状態(図示)および通り抜け状態のナノポア701の抵抗を測定して(例えば電圧または電流の測定により)、タグ707を識別することができる。これによってヌクレオチド706の識別が提供されることにより、鋳型核酸分子704の配列中の1個の塩基が得られる。
鋳型核酸分子704の配列は鋳型層の塩基に対応する。鋳型核酸分子704の配列は、鋳型核酸分子704に触媒されたヌクレオチドの触媒状態に対応するはずである。図7に、GAGTTTTATCGCTTCC(配列番号1)の配列例を示す。この配列は、測定シグナル値を用いてコンピュータシステムによって実施された塩基呼出手順の所望出力である。しかし、以下に説明するように、配列は直接測定されるわけではない。従って、鋳型層は隠れ層と見なすことができる。鋳型層は、それが実際の物理的分子に対応しているので、物理的状態の最高レベルの情報と見なすことができ、誤差ゼロと見なすことができる。
酵素層は、自由流動しているヌクレオチドと酵素703に関連する活性部位との結合事象の配列である。図7に、酵素層の例GAAGTTATATC−CTTCC(配列番号2)を示す。酵素層も直接測定されないので、隠れ層と見なすことができる。
通り抜け事象に対応するポア層は、理想化された酵素−タグ結合事象の下に示されている。図7に、ポア層の例:GGGGGGAAAAAAAAAAAAGGGGGGGTTTTTTTTAAAAAATTATCCCCCCCCCCCC−CCCCTTTCCCCCCCCCCC(配列番号3)を示す。ポア層も直接測定されないので、隠れ層と見なすことができる。
シグナル層は、電圧がADC735によって測定されると示される。これはスイッチが開放された後(例えばスイッチ401)、特定時間の後に行われた電圧測定値に対応する。電圧測定値は、積分キャパシタ408(ncap)における電圧に対応しうる。他のシグナル値も使用できる。
図9に、本発明の態様に従って、通り抜け状態にある図7の配列決定セル700と、ある層のサンプルデータの簡略図を示す。図9は、シグナル層910を観測層として示している。図9は、結合状態にあるヌクレオチド706と、通り抜け状態にあるタグ707を有する配列決定セル700を示している。タグ707のこのような通り抜けは、ナノポア701の抵抗を増大させるので、測定ADC値は低下する。
一つまたは複数の隠れ層(例えば、ポア層、酵素層、および鋳型層)を再構築するためのプロセスは、塩基呼出パイプライン(ハードウェアおよび/またはソフトウェアを含みうる)において進めることができる。そのような塩基呼出パイプラインは、コンピュータシステム、例えば図1のナノチップワークステーション120、図2のプロセッサ224、および/または図4のデジタルプロセッサ430を用いて実行できる。
様々な態様において、一つまたは複数のHMMをパイプラインの様々な時点で使用することができる。例えば、HMMの隠れ配列は、経時的な結合状態(事象)の配列でありうる。この隠れ配列の決定は、ACモードの使用によってさらに困難になりうる。DCモードでは、結合事象があるたびに、タグは多少の遅れの後通り抜ける。一連のパルスがあり、それぞれ結合事象に対応し、連続的な結合事象が異なる塩基に対するものである場合、おそらく異なるシグナルレベルを有する。しかし、ACモードが使用されると、そのようなパルスは、例えばACシグナルの明期間のようなより小さい観測に分断されてしまう。
図13に、隠れマルコフモデル(HMM)を用いて隠れ状態を決定するための時間トレース1300を示す。この例では、隠れ状態は、ポリメラーゼ(結合)状態またはポア(通り抜け)状態に対応しうる。トレース1300は、いくつかの離散した時間ステップ1310(例えば、タイムスタンプまたは時間インデックスによって識別される)を含む。例として、各時間ステップは、異なる測定シグナル値(すなわち連続した測定シグナルは同じ明期間からのものでありうる)に対応しうるか、またはACサイクル(例えば明期間あたり1点、これは通り抜け事象に対応すると識別されたシグナル値から決定できる)に対応しうる。様々な実施において、単一の値は、所与の明期間の通り抜けシグナル値の平均またはメジアンとして決定できる。明期間の通り抜けシグナル値は、開チャンネルと通り抜けチャンネル間を区別するカットオフ値(重み付きのハードカットオフまたはソフトカットオフ)に基づいて、非通り抜けシグナル(例えば、通り抜けが即時でない場合の明期間の開始時に起こりうるような)から区別することができる。
HMMプロセスの最初の部分で、可能性ある様々な状態について記載している。前述のように、一部の態様において、4種類の塩基に対する4つの結合状態(おそらくは1つの集合的結合状態に対応する)と1つの非結合状態に対応する5つの酵素状態がある。ポア状態に対しては様々な状態が定義できる。例えば、フィルタリング手順を用いて結合状態および非結合状態に対応する時間を識別する場合、通り抜けおよび非通り抜け(開チャンネル)の2つの状態が定義できる。この場合、二つの確率関数が決定できる(例えば混合分布モデルについて)。一つは通り抜け確率関数であり、一つは非通り抜け確率関数である。通り抜け状態を異なるタグごとに4つの通り抜け状態に分ける場合、5つのポア状態が定義できる。
状態が定義されたら、状態間の遷移確率が決定できる。そのようなペアワイズ遷移確率は遷移行列を形成する。遷移行列は正方行列である。従って、30の状態があると、遷移行列は30×30の行列となる。遷移行列は、これらの状態間の遷移の統計知識に基づいて、一つの状態から次の状態へ移動する配列決定セルの経時的な確率を記述する。
出力テーブルまたは関数は、所与の状態についての観測パラメーターに関する情報を提供する。例えば、各状態は、一般的に、観測パラメーター、例えばナノポアにある特定のタグに関連する電圧または電流について、特定範囲の値を有しうる。
図15Aに、各5つの状態について異なる範囲にある観測パラメーターの確率を含む出力テーブルの例を示す。行は5つの状態S0〜S4に対応する。例えば、1つの非結合状態および4つの結合状態に対応している。列Y0〜Y4は異なる範囲のシグナル値(例えば正規化されたシグナル値について)に対応する。例えば、Y0は(>0.9)に対応し;Y1は(0.9−0.67)に対応し;Y2は(0.45−0.67)に対応し;Y3は(0.23−0.45)に対応し;そしてY4は(0.0−0.23)に対応する。5つの範囲が示されているが、追加の範囲も使用できる。範囲は、所与の状態にある確率がゼロで無視される範囲間の値と重なり合わない。
出力関数(例えば確率密度関数、PDF)は、同じ範囲内の観測パラメーターのすべての値を同じ発生確率を有するとして扱うのとは対照的に、連続関数として確率を提供できる。PDFは、観測パラメーターの所与の値についてそれぞれの状態にある確率を提供することができる。
一部の態様において、ピークおよび/または谷の検出技術を実施すれば、ピークの位置を決定することができる。例えば、Daviesの谷検出法が、例えば、谷が負の方向でピークに変換でき、逆さ谷(inverted valley)の間の分離をピークと識別できる場合、使用できる。当業者には分かる通り、様々なピークおよび/または谷検出技術が使用できる。ヒストグラムは、例えばカーネル密度推定(KDE)を用いてビニングアーチファクト(binning artifacts)を平滑化することができるので、ピーク検出をより容易に実施することが可能となる。
状態が定義され、遷移確率および出力確率関数が決定されたら、隠れ状態を復号して鋳型核酸に結合された塩基を決定することができる。一部の態様において、遷移確率および出力確率関数は、隠れ状態が復号される前に、所与のセルについて配列決定の実行全体にわたって完全に決定されうる。
PDFおよび各時間ステップにおける測定シグナル値を用いて、観測テーブルが作成できる。各時間ステップについて、測定シグナル値を用いて各状態(例えば酵素状態)の確率を決定することができる。
遷移行列および観測テーブルを使用してトレリス線図(グラフ)を作成することができ、トレリスを通る最適経路は結合事象を提供する。トレリス線図を通る最適経路は、システムは無記憶であるというマルコフ性に基づいて決定できる。どの時点でも、その時間の状態を決定する際、前の列だけが考慮されうる。それより前の列は考慮されない。トレリス線図では、一つの時間ステップにおけるヌクレオチド状態は、ペアワイズ遷移確率に従って、次の時間ステップにおけるヌクレオチド状態に結びつけることができる。
塩基呼出を決定するための一態様において、すべての結合事象を塩基呼出と見なすことができる。そのような手順は、配列決定セルがつっかえず(stutter)、例えば、ヌクレオチドは取り込まれたが触媒されず、同じ種類の新しいヌクレオチドが取り込まれて、後で触媒されれば、正確でありうる。例えば、結合事象があるたびに、触媒される前に離れ落ちる機会が50%あると仮定する。結合事象のリストが分析できれば、塩基呼出の数を減らすことができる。例えば、同じ塩基について二つ以上の連続結合事象があるたびに、その数は半分にすることができる。二つ以上の場合とは対照的に、ヌクレオチドについて時には一つの結合事象しか並んでいないことに対処するために修正を行うことができる。
一部の態様において、塩基の品質スコアが提供できる。品質スコアは、単一分子観測に固有の確率的挙動を反映したものでありうる。塩基呼出の品質は時間または読み出し長さに伴って劣化することはないであろうが、所与の鋳型核酸上の異なる時点でランダムになされる異なる塩基呼出については異なる品質スコアがあるかもしれない。塩基呼出の品質スコアが高いほど、塩基呼出が正しいことの信頼度が大きいことを示しうる。例えば、PDFのピークに近いシグナル値は、PDFのピークから遠いシグナル値よりも、高い品質スコアを有する塩基呼出をもたらすことができる。ベースコーラー(basecaller)(例えばHMMを使用する)の出力の一つは、そのような品質スコアでありうる。
P(statei)は遷移確率から決定できる。
前述のように、混合分布モデル(または他のPDF)のパラメーターの初期値は、同様のポアおよびタグを使用する他の配列決定セルからの測定値に基づいて決定できる。PDFは最近の測定に基づいて更新でき、ポアごとに決定できる。一部の状態のPDFは実験ごとに非常に安定していることがある。そのような状態は特徴付けでき、出力関数の形状が決定できる。他の状態は、時間経過と共に変化しうるおよび/またはポアごとに異なりうる。
図18に、本発明の態様に従って、核酸の配列決定をするために、配列決定セルを使用して時間依存性確率関数を決定する方法1800のフローチャートを示す。方法1800の側面は、方法1000と同様に実施できる。
前述のように、初期確率関数は、配列決定実行全体のシグナル値を用いて決定することができる。これらの初期確率関数は時間非依存性PDFとして決定できる。ベースコーラー(例えばHMMを使用する)を、例えば方法1000の態様に記載されているのと同様に実施して、初期塩基呼出を決定することができる。時間非依存性PDFを用いるそのようなベースコーラーの初回パスは、特定のタグ/塩基を高度に示す(例えば関連塩基呼出に対するより高い確率および/または品質スコア)明白なシグナル値を識別できる。これらの高品質シグナル値は時間依存性PDFに対する更新を決定するために使用でき、それによって時間依存性PDFの決定からのノイズが削減される。
追加のポア状態の出力PDFは、例えば非結合タグが各PDFで表されている場合、変動しうる。例えば、非結合GタグのPDFは、結合GのPDFとは異なる位置にピークを有する形状を有しうる。部分積分状態の場合、タグが非通り抜け状態から通り抜け状態に進むので、PDFは開チャンネルからピークに至るまでより均一な分布を有しうる。従って、部分積分状態は、二つの状態、例えば開チャンネルとAとの間をつなぐであろう別個のPDFを有しうる。
ポリメラーゼを使用する態様において、ポリメラーゼは、4種類のヌクレオチドの一つと結合状態かまたは活性部位にヌクレオチドがない非結合状態でありうる。同じ手順(例えば本明細書中に記載のような)で全5つの結合状態を分類する代わりに、一部の態様では、測定されたシグナル値を結合状態または非結合状態に対応するとして分類する初期分類子を使用することができる。そのような2状態分類子は2つの隠れ状態を有するHMMでありうるが、他の2状態分類子も使用できる。
第一の分類子は、正規化または非正規化シグナル値に対して動作できる。タグおよびポアを用いる態様において、2状態分類子は、シグナル値が開チャンネル状態または通り抜け状態(タグがポア内にある)に対応しているかどうかを決定できる。正規化されたシグナル値の例として(例えばOC分率)、非結合状態のピークはおよそ1.0でありうるので、1.0より十分低い任意の値(例えば0.9未満)は結合状態に対応する。
図19に、本発明の態様に従って、2状態分類子と第二の分類子を用いて核酸の配列を決定するために配列決定セルを使用する方法1900のフローチャートを示す。方法1900の側面は、方法1000および/または方法1800と同様に実施できる。
ブロック1960で、核酸の配列が提供される。ブロック1960は、方法1800のブロック1870と同様に実施できる。
図20に、本発明の態様に従って、シグナルトレース2010、拡大トレース2020、正規化シグナル値2030、およびヒストグラム2040の例を示す。シグナルトレース2010についての本実施例で、HMM復号は、最も可能性の高い結合状態の配列を、ATAGCTAGCACAGAGAGCGACAGCATACTACTCACTGACGCAGAGCG(配列番号4)と識別している。拡大トレース2020は、開チャンネルおよび暗チャンネルの二つの暗バンドを示している。正規化シグナル値2030(暗チャンネル除去)は、正規化の結果、拡大トレース2020よりも平坦なデータを示している。ヒストグラム2040は、正規化シグナル値2030のプロットに表された時間間隔におけるシグナル値の組に対応している。
本明細書中に記載されたコンピュータシステムはいずれも、任意の適切な数のサブシステムを利用できる。そのようなサブシステムの例は図23のコンピュータシステム10に示されている。一部の態様において、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含み、サブシステムはコンピュータ装置のコンポーネントでありうる。他の態様では、コンピュータシステムは複数のコンピュータ装置を含み、それぞれが内部コンポーネントを有するサブシステムでありうる。コンピュータシステムは、デスクトップおよびラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話およびその他のモバイル機器を含みうる。
75 システムバス
100 ナノポアセンサーチップ
110 ピン
130 カバープレート
136 側壁
140 アレイ
150 ナノポアセル
200 ナノポアセル
300 ナノポアセル
340 遮断シグナル
400 電気回路
401 スイッチ
408 積分キャパシタ
422 電気モデル
510 電圧シグナル
522 データ点
600 核酸配列決定のプロセス
601 ナノポア
603 酵素
604 核酸分子
605 プライマー
606 ヌクレオチド
607 タグ
700 配列決定セル
701 ナノポア
703 酵素
704 核酸分子
706 ヌクレオチド
707 タグ
714 膜
800 酵素層
810 パルス
1100 正規化されたシグナル値のプロット
1150 ヒストグラム
1200 配列決定セル
1300 時間トレース
2010 シグナルトレース
2020 拡大トレース
2030 正規化シグナル値
2040 ヒストグラム
2140 中間図
2150 高ズーム図
Claims (17)
- コンピュータシステムに接続された配列決定セルを使用して核酸の配列を決定する方法であって、前記方法が:
−配列決定セルのための第一の時間間隔にわたって核酸から測定された第一の組のシグナル値を得ること、ここで第一の組のシグナル値は配列決定セルの4つのセル状態のそれぞれの測定値を含み、4つのセル状態は異なる種類のヌクレオチドに対応するものである;
−第一の組のシグナル値の第一のヒストグラムを作成すること、ここで第一のヒストグラムは複数のカウントを記憶するデータ構造であり、各カウントはビン内のシグナル値の数に対応するものであり、第一のヒストグラムの各ビンは異なる数値に対応するものである;
ここで、4つのセル状態の各セル状態に対して:
−そのセル状態にあることの出力確率を異なる数値に割り当てる確率関数を決定すること、ここで確率関数は第一のヒストグラムのビンに対する複数のカウントを使用して決定されるものである;
−核酸の4つのヌクレオチド状態間のペアワイズ遷移確率を提供する遷移行列を決定すること、ここで4つのヌクレオチド状態は異なる種類のヌクレオチドに対応するものである;
−T個の時間ステップにわたるトレリス線図を作成すること、ここで各時間ステップは第一の組のシグナル値の1つのシグナル値に対応するものであり、所与の時間ステップにおけるトレリス線図は4つのヌクレオチド状態を含むものであり、そのそれぞれが対応するセル状態の確率関数を用いて決定された出力確率を有するものであり、ある時間ステップでのヌクレオチド状態はペアワイズ遷移確率に従って次の時間ステップでのヌクレオチド状態に結びつけられるものである;および、
−各時間ステップにおけるヌクレオチド状態を識別するために、出力確率およびペアワイズ遷移確率に基づいてトレリス線図を通る最適経路を決定すること;
を含み、
−T個の時間ステップにおけるヌクレオチド状態を用いて核酸の配列を含む塩基を決定すること;ならびに、
−核酸の配列を提供すること、
を含む、前記方法。 - 配列決定セルがナノポアをさらに含み、配列決定セル全体に印加される電圧を有し、そして4つのセル状態がナノポアのポア状態に対応する、請求項1に記載の方法。
- 電圧が、参照電圧に対して第一の部分と第二の部分とを有する交流シグナルを含み、第一の組のシグナル値が交流シグナルの第一の部分の間に測定される、請求項2に記載の方法。
- 配列決定セルが核酸を配列決定するためのポリメラーゼを含み、ヌクレオチド状態がポリメラーゼの結合状態に対応し、第一の組のシグナル値がナノポアを通り抜けるヌクレオチドに結合されたタグ分子がないことに対応する配列決定セルの第五のセル状態に対する測定値であることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
- ヌクレオチド状態が、セル状態のサブ状態およびポリメラーゼの結合状態を含むシステム状態に対応し、システム状態はポリメラーゼに対する非結合状態とポア状態についての通り抜け状態との組合せを含む、請求項4に記載の方法。
- さらに、
−他の配列決定セルについての他の核酸から測定された他の組のシグナル値を得ることを含み、
そして、他の配列決定セルのそれぞれに対して:
−別の組のシグナル値から別のヒストグラムを作成すること、
−第一のヒストグラムを用いて配列決定セルに固有の確率関数を決定すること、および
−配列決定セルに固有の確率関数を用いて、配列決定セルにおける核酸の配列を含む塩基を決定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。 - 第一のヒストグラムを用いる確率関数の決定が、各確率関数を第一のヒストグラムのピークにフィッティングさせることを含む、請求項1に記載の方法。
- トレリス線図を通る最適経路が、ビタビ復号を用いて決定される、請求項1に記載の方法。
- さらに、
第二の時間間隔に対応する第二の確率関数を決定することを含み、
確率関数と第二の確率関数は時間依存性確率関数のセットを形成し、ここで第二の確率関数は、確率関数と、配列決定セルについての第二の時間間隔にわたって核酸から測定された第二の組のシグナル値から決定された第二のヒストグラムとを用いて決定され、核酸の配列を含む塩基は時間依存性確率関数のセットを用いて決定される、請求項1に記載の方法。 - 配列決定セルが核酸を配列決定するためのポリメラーゼを含み、第一の組のシグナル値は配列決定セルの5つの結合状態のそれぞれの測定値を含み、4つの結合状態は異なる種類のヌクレオチドに対応し、第五の結合状態はヌクレオチドがポリメラーゼの活性部位にないことに対応し、4つの結合状態はまとめて結合状態に対応し、第五の結合状態は非結合状態に対応する請求項1に記載の方法であって、前記方法がさらに、
−第一の組のシグナル値のそれぞれを第一の分類手順を用いて結合状態または非結合状態に対応するとして分類すること、ここで第一の分類手順は2状態分類子である;および、
−サブセットのシグナル値を結合状態に対応するとして識別すること、ここでトレリス線図を用いてサブセットのシグナル値に対応するヌクレオチド状態が決定される、
を含む、請求項1に記載の方法。 - 配列決定セルが核酸を配列決定するためにナノポアに結合されたポリメラーゼを含み、そして第一の組のシグナル値を得ることが配列決定セル全体に電圧を印加することを含み、
ここで前記電圧は参照電圧に対して第一の部分と第二の部分とを有する交流シグナルを含み、
ここで第一の組のシグナル値の少なくとも一部が、タグ分子が配列決定セルのナノポアを通り抜ける時に交流シグナルの第一の部分の間に測定され、前記タグ分子は特定のヌクレオチドに対応する、請求項1に記載の方法。 - コンピュータシステムに接続された配列決定セルを使用して核酸の配列を決定する方法であって、前記方法が:
−配列決定セルについての第一の時間間隔にわたって核酸から測定された第一の組のシグナル値を得ること、ここで第一の組のシグナル値は配列決定セルの4つのセル状態のそれぞれの測定値を含み、4つのセル状態は異なる種類のヌクレオチドに対応するものである;
−第一の組のシグナル値の第一のヒストグラムを作成すること、ここで第一のヒストグラムは複数のカウントを記憶するデータ構造であり、各カウントはビン内のシグナル値の数に対応するものであり、第一のヒストグラムの各ビンは異なる数値に対応するものである;
ここで、4つのセル状態の各セル状態に対して:
−そのセル状態にあることの出力確率を異なる数値に割り当てる初期確率関数を決定すること;および、
−初期確率関数と第一のヒストグラムを使用して、そのセル状態にあることの出力確率を異なる数値に割り当てる第一の確率関数を決定すること、ここで前記第一の確率関数は第一の時間間隔に対応するものである;
−第二の時間間隔に対応する第二の確率関数を決定すること、ここで第一の確率関数と第二の確率関数は時間依存性確率関数のセットを形成し、第二の確率関数は、第一の確率関数と、配列決定セルについての第二の時間間隔にわたって核酸から測定された第二の組のシグナル値から決定された第二のヒストグラムとを用いて決定されるものである;
−時間依存性確率関数のセットを用いて核酸の配列を含む塩基を決定すること;および、
−核酸の配列を提供すること、
を含む、前記方法。 - 初期確率関数が、一つまたは複数の他の配列決定セルから測定されたシグナル値を用いて決定される、請求項12に記載の方法。
- 初期確率関数が、第一の時間間隔より早い時間間隔から測定されたシグナル値を用いて決定される、請求項12に記載の方法。
- 初期確率関数が、核酸の配列決定における第一の時間間隔と他の時間間隔とを含むより長い時間間隔にわたって測定されたシグナル値を用いて決定される、請求項12に記載の方法。
- 第一の確率関数が、ベイズ統計を用いて事後分布として第二の確率関数を決定するために、事前分布として使用される、請求項12に記載の方法。
- 時間依存性確率関数のセットを使用する塩基の決定が、
−核酸の4つのヌクレオチド状態間のペアワイズ遷移確率を提供する遷移行列を決定すること、ここで4つのヌクレオチド状態は核酸の異なるヌクレオチドに対応するものである;
−T個の時間ステップにわたるトレリス線図を作成すること、ここで各時間ステップは第一の組のシグナル値の1つのシグナル値に対応するものであり、所与の時間ステップにおけるトレリス線図は4つのヌクレオチド状態を含むものであり、そのそれぞれが対応するセル状態の時間依存性確率関数を用いて決定された出力確率を有し、そして所与の時間ステップに対応するものであり、ある時間ステップでのヌクレオチド状態はペアワイズ遷移確率に従って次の時間ステップでのヌクレオチド状態に結びつけられるものである;および、
−各時間ステップにおける塩基呼出を識別するために、出力確率およびペアワイズ遷移確率に基づいてトレリス線図を通る最適経路を決定すること;
を含む、請求項12に記載の方法。
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