まず、本発明の完成に至った経緯を述べる。本発明者らは、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合物からなるエッチングストッパー膜が有している技術的課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、酸化アルミニウムは、酸化ハフニウムに比べて酸素欠損を起こしやすいことが判明した。また、酸化アルミニウムの酸素欠損が、特にArF露光光に対する透過率の低下に影響していることを突き止めた。さらに、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合物からなるエッチングストッパー膜の場合、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合比率によっては、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりもArF露光光に対する透過率が低くなることがあることも判明した。さらに、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合物によってエッチングストッパー膜を形成する場合、そのエッチングストッパー膜の酸素欠損率が6.4%以下であれば、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりもArF露光光に対する透過率を高くすることができることを突き止めた。
酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合物からなるエッチングストッパー膜が、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりもArF露光光に対する透過率が低くなる現象が生じるのは、以下のメカニズムによるものと推測される。なお、以下の考察は、出願時点における本発明者らの推測に基づくものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
従来、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜は、スパッタリング法によって形成される。ターゲットが酸化ハフニウムで形成されていても、アルゴン等の貴ガスのプラズマがターゲットに衝突してターゲットからスパッタ粒子が飛び出すときに、酸化ハフニウムのほとんどは、酸素との結合を解かれ、ハフニウムの粒子と酸素の粒子の状態でターゲットから飛び出す。そして、ハフニウムの粒子は、スパッタ室内を飛翔している間に周囲の酸素の粒子と再度結合し、透光性基板上に堆積してエッチングストッパー膜を構成する。しかし、スパッタ室内のガスは絶えず入れ替わっていることもあり、一部の酸化ハフニウムは、ハフニウムの粒子が酸素と化学量論的に安定な結合(HfO2の結合)ができないまま、透光性基板上に堆積してしまい、残った酸素がスパッタ室から排出されてしまうことが生じる。これが、スパッタリング法で形成される酸化ハフニウム膜に酸素欠損率が生じる主な原因と思われる。同様の理由で、酸化アルミニウムからなるエッチングストッパー膜をスパッタリング法によって形成した場合も、酸化アルミニウム膜に酸素欠損率が生じると思われる。
酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合物からなるエッチングストッパー膜をスパッタリング法によって形成する場合、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムで形成されているターゲット(酸化ハフニウムからなるターゲットと酸化アルミニウムからなるターゲットの2つのターゲットがスパッタ室内に配置されている場合と、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合ターゲットがスパッタ室内に配置されている場合を含む。)に、貴ガスのプラズマがターゲットに衝突し、ターゲットからスパッタ粒子が飛び出す。このとき、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムのほとんどは、酸素との結合を解かれ、ハフニウムの粒子、アルミニウムの粒子、酸素の粒子(主にラジカルの状態)の状態でターゲットから飛び出している。
上記のとおり、スパッタ室内ではガスは絶えず入れ替わっており、一部の酸素の粒子がハフニウムとアルミニウムのいずれとも結合しないまま、スパッタ室から排出される。このため、スパッタ室内のハフニウムの粒子とアルミニウムの粒子は、酸素を取り合う状況になる。ハフニウムはアルミニウムよりも酸素と結合しやすい傾向があり、HfO2の結合の酸化ハフニウムが透光性基板上に堆積しやすい。また、この影響によって酸化が不十分(化学量論的に安定なAl2O3の結合ではない。)な酸化アルミニウムが透光性基板上に堆積しやすい。ハフニウムおよびアルミニウムは、ともに酸素との結合数が増える(酸化度が上がる)につれて消衰係数kが低下する。HfO2の酸化ハフニウムは、Al2O3の結合の酸化アルミニウムに比べて消衰係数kが大きい。このため、酸化ハフニウムに酸化アルミニウムを混合させたエッチングストッパー膜は、酸化ハフニウムよりも消衰係数kが小さくなるはずである。しかし、スパッタ室内でのハフニウムの粒子に対するアルミニウムの粒子の比率が大幅に小さい場合、多くのハフニウムの粒子がHfO2の結合を取ってしまい、アルミニウムの粒子がAl2O3の結合を取りにくくなってしまう。
Al2O3の結合の存在比率が少ない酸化アルミニウムは、HfO2の酸化ハフニウムよりも消衰係数kが大きい傾向がある。このため、エッチングストッパー膜中のハフニウムとアルミニウムの合計含有量に対するアルミニウムの含有量の比率が小さい範囲(すなわち、ハフニウムとアルミニウムの合計含有量に対するハフニウムの含有量の比率が大きい範囲。)では、そのエッチングストッパー膜に存在する酸化ハフニウム中のHfO2の結合の存在比率が上昇することに起因するエッチングストッパー膜の消衰係数kを下げる作用よりも、そのエッチングストッパー膜に存在する酸化アルミニウム中のAl2O3の結合の存在比率が低下することに起因するエッチングストッパー膜の消衰係数kを上げる作用の方が上回り、そのエッチングストッパー膜の消衰係数kが酸化ハフニウムのみからなるエッチングストッパー膜の消衰係数kよりも大きくなると思われる。そしてこの現象は、エッチングストッパー膜中のハフニウムとアルミニウムの合計含有量に対するアルミニウムの含有量の比率が大きくなる(すなわち、ハフニウムとアルミニウムの合計含有量に対するハフニウムの含有量の比率が小さくなる。)に従い、酸素と結合しやすいハフニウムの粒子が少なくなることで、アルミニウムの粒子がAl2O3の結合を取りにくくなる状況は改善されていくため、そのエッチングストッパー膜の消衰係数kは、酸化ハフニウムのみからなるエッチングストッパー膜の消衰係数kよりも小さくなるものと思われる。
以上のメカニズムによって、エッチングストッパー膜中のハフニウムとアルミニウムの合計含有量に対するアルミニウムの含有量の比率が小さい範囲では、エッチングストッパー膜の消衰係数kが、酸化ハフニウムのみからなるエッチングストッパー膜の消衰係数kよりも大きくなる(すなわち、エッチングストッパー膜のArF露光光に対する透過率が、酸化ハフニウムのみからなるエッチングストッパー膜のArF露光光に対する透過率よりも低くなる)現象が生じるものと推測される。
以上の鋭意検討の結果、酸化ハフニウムと酸化アルミニウムの混合物からなるエッチングストッパー膜が有している技術的課題を解決するために、本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、エッチングストッパー膜とパターン形成用の薄膜がこの順に積層された構造を備えるマスクブランクであって、前記薄膜は、ケイ素を含有する材料からなり、前記エッチングストッパー膜は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、前記エッチングストッパー膜の酸素欠損率は、6.4%以下であることを特徴としている。ここで、酸素欠損率[%]は、前記エッチングストッパー膜中の酸素含有量をO R、前記エッチングストッパー膜中に存在する全てのハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態(すなわち、膜中のハフニウムとアルミニウムがHfO2とAl2O3の酸化物でのみ存在する状態。)にあるときの酸素含有量をOIとしたとき、100×[OI−OR]/OIで算出される。次に、本発明の各実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクは、パターン形成用薄膜を露光光に対して所定の透過率と位相差を付与する膜である位相シフト膜としたものであり、位相シフトマスク(転写用マスク)を製造するために用いられるものである。図1に、この第1の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第1の実施形態に係るマスクブランク100は、透光性基板1の主表面上に、エッチングストッパー膜2、位相シフト膜(パターン形成用薄膜)3、遮光膜4、ハードマスク膜5を備えている。
透光性基板1は、露光光に対して高い透過率を有するものであれば、特に制限されない。本発明では、合成石英ガラス基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。これらの基板の中でも特に合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザーまたはそれよりも短波長の領域で透過率が高いので、高精細の転写パターン形成に用いられる本発明のマスクブランクの基板として好適である。ただし、これらのガラス基板は、いずれもフッ素系ガスによるドライエッチングに対してエッチングされやすい材料である。このため、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を設ける意義は大きい。
エッチングストッパー膜2は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成される。このエッチングストッパー膜2は、位相シフトマスク200が完成した段階において、少なくとも転写パターン形成領域の全面で除去されずに残されるものである(図2参照)。すなわち、位相シフトパターンの位相シフト膜3がない領域である透光部にもエッチングストッパー膜2が残存した形態をとる。このため、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間に他の膜を介さず、透光性基板1の主表面に接して形成されていることが好ましい。
この第1の実施形態のエッチングストッパー膜2は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成され、エッチングストッパー膜2の酸素欠損率は、6.4%以下である。図10は、透光性基板上に2nm又は3nmの膜厚のエッチングストッパー膜を異なる酸素欠損率で成膜したものに対し、それぞれArF露光光に対する透過率(合成石英ガラスからなる透光性基板の透過率を100%としたときの相対透過率。)を測定した結果をプロットしたものである。なお、ここではエッチングストッパー膜の酸素欠損率は、エッチングストッパー膜のハフニウムとアルミニウムの混合比を調整することによって変えている。図10の結果から、エッチングストッパー膜の酸素欠損率が6.4%以下であれば、いずれの膜厚のエッチングストッパー膜においても、酸化ハフニウムのみで形成したエッチングストッパー膜(図10における酸素欠損率が8.70%の膜。)よりも透過率が高くなる(膜厚が3nmの場合でも、透過率が85%以上になる。)ことがわかる。
そして、いずれの膜厚においても、酸化ハフニウムのみで形成したエッチングストッパー膜よりも、フッ素系ガスに対するドライエッチング耐性を高めることできていた。このため、位相シフト膜3に対してオーバーエッチングを行っても、エッチングストッパー膜2が消失するようなことはなく、高バイアスエッチングで生じやすいマイクロトレンチも抑制できる。なお、エッチングストッパー膜2の酸素欠損率は、4.2%以下であるとより好ましい。この場合、エッチングストッパー膜の膜厚を3nmにしてもArF露光光に対する透過率を90%以上とすることができる。
エッチングストッパー膜2は、露光光に対する透過率が高いほど好ましいが、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間でフッ素系ガスに対する十分なエッチング選択性も同時に求められるため、露光光に対する透過率を透光性基板1と同じ透過率とすることは難しい(すなわち、露光光に対する透光性基板1(合成石英ガラス)の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、100%未満となる。)。露光光に対する透光性基板1の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が60原子%以上であることが好ましく、61.5%以上であることがより好ましく、62原子%以下であることがさらに好ましい。露光光に対する透過率を上記の数値以上とするには、酸素欠損率を下げることのほかに、エッチングストッパー膜2中に酸素を多く含有させることが求められるためである。他方、エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が66原子%以下であることが好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ハフニウムおよびアルミニウムの合計含有量に対するハフニウムの含有量の原子%による比率(以下、Hf/[Hf+Al]比率と表記することもある。)が、0.85以下であることが好ましい。この場合、エッチングストッパー膜2の酸素欠損率を6.4%以下にすることができる。また、エッチングストッパー膜2におけるHf/[Hf+Al]比率は、0.75以下であるとより好ましい。この場合、エッチングストッパー膜2の酸素欠損率を4.2%以下にすることができる。
一方、薬液洗浄(特に、アンモニア過水やTMAH等のアルカリ洗浄)に対する耐性の観点から、エッチングストッパー膜2は、Hf/[Hf+Al]比率が、0.40以上であることが好ましい。また、SC−1洗浄と称されるアンモニア水、過酸化水素水および脱イオン水の混合液を用いた薬液洗浄の観点からは、エッチングストッパー膜2は、Hf/[Hf+Al]比率が、0.60以上であることがより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、アルミニウム及びハフニウム以外の金属の含有量を2原子%以下とすることが好ましく、1原子%以下とするとより好ましく、X線光電子分光法による組成分析を行った時に検出下限値以下であるとさらに好ましい。エッチングストッパー膜2がアルミニウム及びハフニウム以外の金属を含有していると、露光光に対する透過率が低下する要因となるためである。また、エッチングストッパー膜2は、アルミニウム、ハフニウムおよび酸素以外の元素の合計含有量が5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、1原子%以下であるとさらに好ましい。換言すると、エッチングストッパー膜2は、アルミニウム、ハフニウムおよび酸素の合計含有量が95原子%以上であることが好ましく、97原子%以上であるとより好ましく、99原子%以上であるとさらに好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなる材料で形成するとよい。ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなる材料とは、これらの構成元素のほか、スパッタ法で成膜する際、エッチングストッパー膜2に含有されることが不可避な元素(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガス、水素(H)、炭素(C)等)のみを含有する材料のことをいう。エッチングストッパー膜2中にハフニウムやアルミニウムと結合する他の元素の存在を極小にすることにより、エッチングストッパー膜2中におけるハフニウムおよび酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合の比率を大幅に高めることができる。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング耐性をより高くし、薬液洗浄に対する耐性をより高め、露光光に対する透過率をより高めることができる。エッチングストッパー膜2は、アモルファス構造とすることが好ましい。より具体的には、エッチングストッパー膜2は、ハフニウムおよび酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合を含む状態のアモルファス構造であることが好ましい。エッチングストッパー膜2の表面粗さを良好なものとすることができつつ、露光光に対する透過率を高めることができる。
エッチングストッパー膜2は、厚さが2nm以上であることが好ましい。マスクブランクから転写用マスクを製造するまでに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングによる影響、薬液洗浄による影響を考慮すると、エッチングストッパー膜2の厚さは3nm以上あることがより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、露光光に対する透過率が高い材料を適用してはいるが、厚さが厚くなるにつれて透過率は低下する。また、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1を形成する材料よりも屈折率が高く、エッチングストッパー膜2の厚さが厚くなるほど、位相シフト膜3に実際に形成するマスクパターン(Bias補正やOPCやSRAF等を付与したパターン)を設計する際に与える影響が大きくなる。これらの点を考慮すると、エッチングストッパー膜2は、10nm以下であることが望まれ、8nm以下であると好ましく、6nm以下であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する屈折率n(以下、単に屈折率nという。)が2.90以下であると好ましく、2.86以下であるとより好ましい。位相シフト膜3に実際に形成するマスクパターンを設計する際に与える影響を小さくするためである。エッチングストッパー膜2は、ハフニウムとアルミニウムを含有する材料で形成されるため、透光性基板1と同じ屈折率nとすることができない。エッチングストッパー膜2は、屈折率nが2.10以上であると好ましく、2.20以上であるとより好ましい。一方、エッチングストッパー膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する消衰係数k(以下、単に消衰係数kという。)が0.30以下であると好ましく、0.29以下であるとより好ましい。エッチングストッパー膜2の露光光に対する透過率を高くするためである。エッチングストッパー膜2は、消衰係数kが0.06以上であることが好ましい。
エッチングストッパー膜2は、厚さ方向で組成の均一性が高い(厚さ方向における各構成元素の含有量の差が5原子%以内の変動幅に収まっている。)ことが好ましい。他方、エッチングストッパー膜2は、厚さ方向で組成傾斜した膜構造であってもよい。この場合、エッチングストッパー膜2の透光性基板1側のHf/[Hf+Al]比率を位相シフト膜3側のHf/[Hf+Al]比率よりも低くなるような組成傾斜とすることが好ましい。エッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3側の方に薬液耐性が高いことが優先的に望まれる反面、透光性基板1側の方に露光光に対する透過率が高いことが望まれるためである。
透光性基板1とエッチングストッパー膜2の間に他の膜を介在させてもよい。この場合、前記他の膜は、エッチングストッパー膜2よりも露光光に対する透過率が高く、屈折率nが小さい材料を適用することが求められる。マスクブランクから位相シフトマスクが製造されたとき、その位相シフトマスクにおける位相シフト膜3のパターンがない領域の透光部には、前記他の膜とエッチングストッパー膜2との積層構造が存在することになる。透光部は露光光に対する高い透過率が求められ、この積層構造の全体での露光光に対する透過率を高くする必要があるためである。前記他の膜の材料は、例えば、ケイ素と酸素からなる材料、あるいはこれらにハフニウム、ジルコニウム、チタン、バナジウムおよびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。前記他の膜を、ハフニウムとアルミニウムおよび酸素を含有する材料であり、エッチングストッパー膜2よりもHf/[Hf+Al]比率が低い材料で形成してもよい。
位相シフト膜3は、ケイ素を含有する材料からなる。位相シフト膜3は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能(透過率)と、位相シフト膜3を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜3の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有することが好ましい。また、位相シフト膜3の透過率は、2%以上であるとより好ましい。位相シフト膜3の透過率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であるとより好ましい。
位相シフト膜3の厚さは80nm以下であることが好ましく、70nm以下であるとより好ましい。また、上記の位相シフトパターンのパターン線幅によるベストフォーカスの変動幅を小さくするには、位相シフト膜3の厚さは65nm以下とすることが特に好ましい。位相シフト膜3の厚さは50nm以上とすることが好ましい。アモルファスの材料で位相シフト膜3を形成しつつ、位相シフト膜3の位相差を150度以上とするためには50nm以上は必要なためである。
位相シフト膜3において、前記の光学特性と膜の厚さに係る諸条件を満たすため、位相シフト膜の露光光(ArF露光光)に対する屈折率nは、1.9以上であると好ましく、2.0以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の屈折率nは、3.1以下であると好ましく、2.7以下であるとより好ましい。位相シフト膜3のArF露光光に対する消衰係数kは、0.26以上であると好ましく、0.29以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の消衰係数kは、0.62以下であると好ましく、0.54以下であるとより好ましい。
他方、位相シフト膜3を露光光に対する透過率が相対的に低い材料で形成した低透過層と露光光に対する透過率が相対的に高い材料で形成した高透過層を1組以上積層した構造とする場合もある。この場合、低透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5未満(好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下)であり、かつ消衰係数kが1.0以上(好ましくは1.1以上、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.6以上)である材料で形成されていることが好ましい。また、高透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5以上(好ましくは2.6以上)であり、消衰係数kが1.0未満(好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.4以下)である材料で形成されていることが好ましい。
なお、位相シフト膜3を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する時の諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。位相シフト膜3を、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することが有効であるが、それだけに限られることではない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板1との間の距離等の位置関係など多岐に渡る。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される位相シフト膜3が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
一般に、ケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜3は、フッ素系ガスによるドライエッチングでパターニングされる。ガラス材料からなる透光性基板1は、フッ素系ガスによるドライエッチングでエッチングされやすく、特に炭素を含有するフッ素系ガスに対しては耐性が低い。このため、位相シフト膜3をパターニングする際には、炭素を含有しないフッ素系ガス(SF6等)をエッチングガスとするドライエッチングが適用されることが多い。フッ素系ガスによるドライエッチングの場合、比較的エッチングの異方性を高めやすい。しかし、レジストパターン等のエッチングマスクパターンをマスクとして、位相シフト膜3をフッ素系ガスによるドライエッチングでパターニングするとき、ドライエッチングを位相シフト膜3の下端に最初に到達した段階(これをジャストエッチングといい、エッチング開始からジャストエッチングの段階までに要した時間をジャストエッチングタイムという。)でやめてしまうと、位相シフトパターンの側壁の垂直性は低く、位相シフトマスクとしての露光転写性能に影響がある。また、位相シフト膜3に形成するパターンは、マスクブランクの面内で疎密差があり、パターンが比較的密な部分はドライエッチングの進行が遅くなる。
これらの事情から、位相シフト膜3のドライエッチング時、ジャストエッチングの段階まで到達しても、さらに追加のエッチングを継続(オーバーエッチング)し、位相シフトパターンの側壁の垂直性を高め、面内での位相シフトパターンのCD均一性を高めることが行われる(ジャストエッチング終了からオーバーエッチング終了までの時間をオーバーエッチングタイムという。)。透光性基板1と位相シフト膜3の間にエッチングストッパー膜2がない場合、位相シフト膜3に対してオーバーエッチングを行うと、位相シフト膜3のパターン側壁にエッチングが進むのと同時に透光性基板1の表面のエッチングが進んでしまうため、あまり長い時間のオーバーエッチングをすることはできず(透光性基板が表面から4nm程度掘り込まれる程度まででやめていた。)、位相シフトパターンの垂直性を高めるには限界があった。
位相シフトパターンの側壁の垂直性をより高めることを目的に、位相シフト膜3のドライエッチング時に掛けるバイアス電圧を従来よりも高くする(以下、「高バイアスエッチング」という。)ことが行われている。この高バイアスエッチングにおいて、位相シフトパターンの側壁近傍の透光性基板1が局所的にエッチングで掘り込まれる現象、いわゆるマイクロトレンチが発生することが問題となっている。このマイクロトレンチの発生は、透光性基板1にバイアス電圧を掛けることで生じるチャージアップにより、イオン化したエッチングガスが透光性基板1よりも抵抗値の低い位相シフトパターンの側壁側へ回り込むことに起因していると考えられている。
位相シフト膜3は、ケイ素および窒素を含有する材料で形成することができる。ケイ素に窒素を含有させることで、ケイ素のみからなる材料よりも屈折率nを大きく(より薄い厚さで大きな位相差が得られる。)、かつ消衰係数kを小さく(透過率を高くすることができる。)することができ、位相シフト膜として好ましい光学特性を得ることができる。
位相シフト膜3は、ケイ素と窒素からなる材料、または半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素からなる材料(以下、これらの材料を総称して「窒化ケイ素系材料」という。)で形成することができる。窒化ケイ素系材料の位相シフト膜3には、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると、位相シフト膜3をスパッタリング法で成膜するときにターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
窒化ケイ素系材料の位相シフト膜3には、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスを含有させてもよい。窒化ケイ素系材料の位相シフト膜3には、酸素を含有させてもよい。酸素を含有させた窒化ケイ素系材料の位相シフト膜3は、ArFエキシマレーザーの露光光に対して20%以上の透過率を有する機能と、上記範囲の位相差を有する機能を両立させやすい。
窒化ケイ素系材料の位相シフト膜3は、酸化が避けられない表層(酸化層)を除き、単層で構成してもよく、また複数層の積層で構成してもよい。複数層の積層構造の位相シフト膜3の場合、窒化ケイ素系材料(SiN、SiON等)の層に、酸化ケイ素系材料(SiO2等)の層を組み合わせた積層構造としてもよい。
窒化ケイ素系材料の位相シフト膜3は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
EB欠陥修正のエッチング終点検出は、黒欠陥に対して電子線を照射した時に、照射を受けた部分から放出されるオージェ電子、2次電子、特性X線、後方散乱電子の少なくともいずれか1つを検出することによって行われている。例えば、電子線の照射を受けた部分から放出されるオージェ電子を検出する場合には、オージェ電子分光法(AES)によって、主に材料組成の変化を見ている。また、2次電子を検出する場合には、SEM像から主に表面形状の変化を見ている。さらに、特性X線を検出する場合には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や波長分散X線分光法(WDX)によって、主に材料組成の変化を見ている。後方散乱電子を検出する場合には、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって、主に材料の組成や結晶状態の変化を見ている。
ガラス材料からなる透光性基板1の主表面に接してケイ素系材料の位相シフト膜(単層膜、多層膜とも)3が設けられた構成のマスクブランクは、位相シフト膜3がケイ素、窒素および酸素がほとんどの成分であるのに対し、透光性基板1がケイ素と酸素がほとんどの成分であり、両者の差は実質的に小さい。このため、EB欠陥修正のエッチング修正の検出が難しい組み合わせであった。これに対し、エッチングストッパー膜2の表面に接して位相シフト膜3が設けられた構成の場合、位相シフト膜3がケイ素と窒素がほとんどの成分であるのに対し、エッチングストッパー膜2がハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含んでいる。このため、EB欠陥修正のエッチング修正では、アルミニウムまたはハフニウムの検出を目安にすればよく、終点検出が比較的容易となる。
一方、位相シフト膜3は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成することができる。この場合の遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)等のうちいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。位相シフト膜3の材料には、前記の元素に加え、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)およびホウ素(B)等の元素が含まれてもよい。また、位相シフト膜3の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。EB欠陥修正のエッチング終点の検出のことを考慮すると、この位相シフト膜3には、アルミニウムおよびハフニウムを含有させないことが好ましい。
位相シフト膜3は、膜中の遷移金属(M)の含有量[原子%]を、遷移金属(M)とケイ素(Si)との合計含有量[原子%]で除して算出した比率(以下、M/[M+Si]比率という。)が、0.15以下であることが求められる。この位相シフト膜3は、遷移金属の含有量が多くなるに従い、炭素を含有しないフッ素系ガス(SF6等)によるドライエッチングのエッチングレートが速くなり、透光性基板1との間でのエッチング選択性が得られやすくなるが、それでも十分とは言い難い。また、位相シフト膜3のM/[M+Si]比率がこれよりも多くなると、所望の透過率を得るために酸素を多く含有させる必要が生じ、位相シフト膜3の厚さが厚くなる恐れがあり、好ましくない。
他方、位相シフト膜3におけるM/[M+Si]比率は、0.01以上とすることが好ましい。マスクブランク100から位相シフトマスク200を作製する際、位相シフト膜3のパターンに存在する黒欠陥に対して電子線照射とXeF2等の非励起ガスによる欠陥修正を適用するときに、位相シフト膜3のシート抵抗が低い方が好ましいためである。
一方、透光性基板1の主表面に接して、エッチングストッパー膜2を設け、さらにエッチングストッパー膜2の上面に接して位相シフト膜3を設け、さらに、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3の条件を調整することによって、ArF露光光に対する裏面反射率(透光性基板側から入射したArF露光光に対する反射率。)を高くする(例えば、20%以上)ことができる。例えば、以下の条件に調整すればよい。エッチングストッパー膜2は、ArF露光光に対する屈折率nを2.3以上2.9以下、消衰係数kを0.06以上0.30以下とし、膜厚を2nm以上6nm以下とする。位相シフト膜3は、単層構造の場合はその全体、2層以上の構造の場合はエッチングストッパー膜2に接する側の層について、ArF露光光に対する屈折率nを2.0以上3.1以下、消衰係数kを0.26以上0.54以下とし、膜厚を50nm以上とする。また、エッチングストッパー膜2は、酸素欠損率は、6.4%以下とし、膜厚を2nm以上6nm以下としてもよい。さらに、エッチングストッパー膜2は、Hf/[Hf+Al]比率を0.50以上0.86以下とし、酸素含有量を61.5原子%以上とし、膜厚を2nm以上6nm以下としてもよい。
上記の構成を備えるマスクブランク100は、ArF露光光に対する裏面反射率が従来よりも高くなる。このマスクブランク100から製造された位相シフトマスク200は、その位相シフトマスク200を露光装置にセットされ、ArF露光光を透光性基板1側から照射されたときに生じる位相シフト膜3の発熱による温度上昇を低減することができる。これにより、位相シフト膜3の熱がエッチングストッパー膜2および透光性基板1に伝導することでエッチングストッパー膜2および透光性基板1が熱膨張し、位相シフト膜3のパターンが移動する現象を抑制することができる。また、位相シフト膜3のArF露光光の照射に対する耐性(ArF耐光性)を高められる。
遮光膜4は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
図1に記載のマスクブランク100は、位相シフト膜3の上に、他の膜を介さずに遮光膜4を積層した構成となっている。この構成の場合の遮光膜4では、位相シフト膜3にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。
この場合の遮光膜4は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。遮光膜4を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属の他、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)およびフッ素(F)から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が挙げられる。
なお、本発明のマスクブランクは、図1に示したものに限定されるものではなく、位相シフト膜3と遮光膜4の間に別の膜(エッチングマスク兼ストッパー膜)を介するように構成してもよい。この場合においては、前記のクロムを含有する材料でエッチングマスク兼ストッパー膜を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜4を形成する構成とすることが好ましい。
遮光膜4を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。遮光膜4に形成されるパターンは、基本的に外周領域の遮光帯パターンであり、転写用パターン領域に比べてArF露光光の積算照射量が少ないことや、この外周領域に微細パターンが配置されていることは稀であり、ArF耐光性が低くても実質的な問題が生じにくいためである。また、遮光膜4に遷移金属を含有させると、含有させない場合に比べて遮光性能が大きく向上し、遮光膜4の厚さを薄くすることが可能となるためである。遮光膜4に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
遮光膜4は、位相シフトマスク200の完成後において、位相シフト膜3との積層構造で遮光帯等を形成する。このため、遮光膜4は、位相シフト膜3との積層構造で、2.0よりも大きい光学濃度(OD)を確保することが求められ、2.8以上のODであると好ましく、3.0以上のODがあるとより好ましい。
本実施形態では、遮光膜4上に積層したハードマスク膜5を、遮光膜4をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成している。これにより、以下に述べるように、レジスト膜を遮光膜4のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の厚さを大幅に薄くすることができる。
遮光膜4は、上記のとおり、所定の光学濃度を確保して十分な遮光機能を有する必要があるため、その厚さの低減には限界がある。一方、ハードマスク膜5は、その直下の遮光膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜厚があれば十分であり、基本的に光学面での制限を受けない。このため、ハードマスク膜5の厚さは、遮光膜4の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜5にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜厚があれば十分であるので、レジスト膜を遮光膜4のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の膜厚を大幅に薄くすることができる。このようにレジスト膜を薄膜化できるため、レジスト解像度を向上できるとともに、形成されるパターンの倒壊を防止することができる。
このように、遮光膜4上に積層したハードマスク膜5を上述の材料で形成することが好ましいが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、マスクブランク100において、ハードマスク膜5を形成せずに、遮光膜4上にレジストパターンを直接形成し、そのレジストパターンをマスクにして遮光膜4のエッチングを直接行うようにしてもよい。
このハードマスク膜5は、遮光膜4がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。ここで、この場合のハードマスク膜5は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜5の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜5は、SiO2、SiN、SiON等で形成されるとより好ましい。
また、遮光膜4がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜5の材料として、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属の他、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。
マスクブランク100において、ハードマスク膜5の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。
エッチングストッパー膜2、位相シフト膜3、遮光膜4、ハードマスク膜5は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用するとより好ましい。
エッチングストッパー膜2の成膜方法に関しては、成膜室内にハフニウムおよび酸素の混合ターゲットとアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットの2つのターゲットを配置し、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を形成することが好ましい。具体的には、その成膜室内の基板ステージに透光性基板1を配置し、アルゴンガス等の貴ガス雰囲気下(あるいは、酸素ガスまたは酸素を含有するガスとの混合ガス雰囲気)で、2つのターゲットのそれぞれに所定の電圧を印加する(この場合、RF電源が好ましい。)。これにより、プラズマ化した貴ガス粒子が2つのターゲットに衝突してそれぞれスパッタ現象が起こり、透光性基板1の表面にハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2が形成される。なお、この場合の2つのターゲットにHfO2ターゲットとAl2O3ターゲットを適用するとより好ましい。
このほか、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素の混合ターゲット(好ましくは、HfO2とAl2O3の混合ターゲット、以下同様。)のみでエッチングストッパー膜2を形成してもよい。また、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素の混合ターゲットとハフニウムターゲット、あるいはハフニウムおよび酸素の混合ターゲットとアルミニウムターゲットの2つのターゲットを同時放電させ、エッチングストッパー膜2を形成してもよい。さらに、貴ガスと酸素ガスまたは酸素を含有するガスとの混合ガス雰囲気下で、ハフニウムターゲットとアルミニウムターゲットの2つのターゲットを同時放電させてエッチングストッパー膜2を形成してもよい。
以上のように、この第1の実施形態のマスクブランク100は、透光性基板1とパターン形成用薄膜である位相シフト膜3の間に、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2を備え、エッチングストッパー膜2の酸素欠損率が、6.4%以下であるようにしている。そして、このエッチングストッパー膜2は、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりも、位相シフト膜3にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、露光光に対する透過率も高いという特性を同時に満たす。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで位相シフト膜3に転写パターンを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができるため、パターン側壁の垂直性を高めること、またパターンの面内のCD均一性を高めることができる。
一方、この第1の実施形態のマスクブランク100から転写用マスク(位相シフトマスク)200を製造した場合、このエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高いため、位相シフト膜3が除去された領域である透光部の透過率が向上する。これにより、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3のパターンを透過した露光光と、エッチングストッパー膜2のみを透過した露光光との間で生じる位相シフト効果が向上する。このため、この転写用マスクを用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性を得ることができる。
[転写用マスク(位相シフトマスク)とその製造]
この第1の実施形態に係る転写用マスク(位相シフトマスク)200(図2参照)は、マスクブランク100のエッチングストッパー膜2は透光性基板1の主表面上の全面で残され、位相シフト膜3に転写用パターン(位相シフトパターン3a)が形成され、遮光膜4に遮光帯を含むパターン(遮光パターン4b:遮光帯、遮光パッチ等)が形成されていることを特徴としている。マスクブランク100にハードマスク膜5が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク200の作製途上でハードマスク膜5は除去される。
すなわち、この第1の実施形態に係る転写用マスク(位相シフトマスク)200は、透光性基板1の主表面上に、エッチングストッパー膜2と、転写パターンを有する位相シフト膜である位相シフトパターン3aとがこの順に積層された構造を備え、位相シフトパターン3aは、ケイ素を含有する材料からなり、エッチングストッパー膜の酸素欠損率は、6.4%以下であることを特徴とするものである。ここで、酸素欠損率[%]は、前記エッチングストッパー膜中の酸素含有量をOR、前記エッチングストッパー膜中に存在する全てのハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの酸素含有量をOIとしたとき、100×[OI−OR]/OIで算出される。また、この位相シフトマスク200は、位相シフトパターン3a上に遮光帯を含むパターンを有する遮光膜である遮光パターン4bを備えるものである。
この第1の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランク100を用いるものであり、ドライエッチングにより遮光膜4に転写用パターンを形成する工程と、転写用パターンを有する遮光膜4をマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより位相シフト膜3に転写用パターンを形成する工程と、ドライエッチングにより遮光膜4に遮光帯を含むパターン(遮光帯、遮光パッチ等)を形成する工程とを備えることを特徴としている。以下、図3に示す製造工程にしたがって、この第1の実施形態に係る位相シフトマスク200の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜4の上にハードマスク膜5が積層したマスクブランク100を用いた位相シフトマスク200の製造方法について説明する。また、遮光膜4にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜5にはケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜5に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべき転写用パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン6aを形成する(図3(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン6aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第1のパターン(ハードマスクパターン5a)を形成する(図3(b)参照)。
次に、レジストパターン6aを除去してから、ハードマスクパターン5aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第1のパターン(遮光パターン4a)を形成する(図3(c)参照)。続いて、遮光パターン4aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に第1のパターン(位相シフトパターン3a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン5aも除去する(図3(d)参照)。
この位相シフト膜3のフッ素系ガスによるドライエッチングの際、位相シフトパターン3aのパターン側壁の垂直性を高めるため、また位相シフトパターン3aの面内のCD均一性を高めるために追加のエッチング(オーバーエッチング)を行っている。そのオーバーエッチング後においても、エッチングストッパー膜2の表面は微小にエッチングされた程度であり、位相シフトパターン3aの透光部において透光性基板1の表面は露出していない。
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。その後、レジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン7bを形成する(図3(e)参照)。ここで、第2のパターンは比較的大きなパターンなので、電子線を用いた描画に換えて、スループットの高いレーザー描画装置によるレーザー光を用いた露光描画とすることも可能である。
続いて、第2のレジストパターン7bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第2のパターン(遮光パターン4b)を形成する。さらに、第2のレジストパターン7bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得る(図3(f)参照)。洗浄工程において、上記のSC−1洗浄を用いたが、後述する実施例及び比較例に示されるように、酸素欠損率(100×[OI−OR]/OI)によってエッチングストッパー膜2の減膜量に差が生じた。
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、塩素(Cl)が含まれていれば特に制限はない。例えば、Cl2、SiCl2、CHCl3、CH2Cl2、BCl 3等が挙げられる。また、マスクブランク100は、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を備えているため、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスは、フッ素(F)が含まれていれば特に制限はない。例えば、CHF3、CF4、C2F6、C4F8、SF6等が挙げられる。
この第1の実施形態の位相シフトマスク200は、前記のマスクブランク100を用いて作製されたものである。エッチングストッパー膜2は、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりも、位相シフト膜3にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、露光光に対する透過率も高いという特性を同時に満たしている。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで位相シフト膜3に位相シフトパターン(転写パターン)3aを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができる。このため、この第1の実施形態の位相シフトマスク200は、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3aの面内のCD均一性も高い。
一方、この第1の実施形態の位相シフトマスク200のエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高いため、位相シフト膜3が除去された領域である透光部の透過率が向上する。これにより、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3のパターンを透過した露光光と、エッチングストッパー膜2のみを透過した露光光との間で生じる位相シフト効果が向上する。このため、この位相シフトマスク200を用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性を得ることができる。
[半導体デバイスの製造]
第1の実施形態の半導体デバイスの製造方法は、第1の実施形態の転写用マスク(位相シフトマスク)200または第1の実施形態のマスクブランク100を用いて製造された転写用マスク(位相シフトマスク)200を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写する工程を備えることを特徴としている。第1の実施形態の位相シフトマスク200は、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3aの面内のCD均一性も高い。このため、第1の実施形態の位相シフトマスク200を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、第1の実施形態の位相シフトマスク200のエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高いため、位相シフト膜3が除去された領域である透光部の透過率が向上する。これにより、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3のパターンを透過した露光光と、エッチングストッパー膜2のみを透過した露光光との間で生じる位相シフト効果が向上する。このため、この位相シフトマスク200を用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性が得られる。そして、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
<第2の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第2の実施形態に係るマスクブランクは、パターン形成用薄膜を所定の光学濃度を有する遮光膜としたものであり、バイナリマスク(転写用マスク)を製造するために用いられるものである。図4に、この第2の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第2の実施形態のマスクブランク110は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、遮光膜(パターン形成用薄膜)8、ハードマスク膜9が順に積層した構造からなるものである。なお、第1の実施形態のマスクブランクと同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。
遮光膜8は、マスクブランク110からバイナリマスク210が製造されたときに、転写パターンが形成されるパターン形成用薄膜である。バイナリマスクにおいては、遮光膜8のパターンに高い遮光性能が求められる。遮光膜8のみで露光光に対するODが2.8以上であることが求められ、3.0以上のODがあるとより好ましい。遮光膜8は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
遮光膜8は、フッ素系ガスによるドライエッチングで転写パターンをパターニング可能な材料で形成される。このような特性を有する材料としては、ケイ素を含有する材料のほか、遷移金属およびケイ素を含有する材料が挙げられる。遷移金属およびケイ素を含有する材料は、遷移金属を含有しないケイ素を含有する材料に比べて遮光性能が高く、遮光膜8の厚さを薄くすることが可能となる。遮光膜8に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
ケイ素を含有する材料で遮光膜8を形成する場合、遷移金属以外の金属(スズ(Sn)インジウム(In)、ガリウム(Ga)等)を含有させてもよい。ただし、ケイ素を含有する材料にアルミニウムおよびハフニウムを含有させると、エッチングストッパー膜2との間におけるフッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング選択性が低下する場合があること、遮光膜8に対してEB欠陥修正を行ったときにエッチング終点を検出しづらくなることがある。
遮光膜8は、ケイ素と窒素からなる材料、または半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素からなる材料で形成することができる。この場合の遮光膜8には、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると、遮光膜8をスパッタリング法で成膜するときにターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
遮光膜8は、下層と上層を含む積層構造である場合、下層をケイ素からなる材料またはケイ素に炭素、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成し、上層をケイ素と窒素からなる材料またはケイ素と窒素からなる材料に半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成することができる。
遮光膜8を形成する材料には、光学濃度が大きく低下しない範囲であれば、酸素、窒素、炭素、ホウ素、水素から選ばれる1以上の元素を含有させてもよい。遮光膜8の透光性基板1とは反対側の表面における露光光に対する反射率を低減させるために、その透光性基板1とは反対側の表層(下層と上層の2層構造の場合は上層。)に酸素や窒素を多く含有させてもよい。
遮光膜8は、タンタルを含有する材料で形成してもよい。この場合、遮光膜8のケイ素の含有量は、5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、実質的に含有していないとさらに好ましい。これらのタンタルを含有する材料は、フッ素系ガスによるドライエッチングで転写パターンをパターニング可能な材料である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属の他、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
この第2の実施形態のマスクブランクにおいても、遮光膜8上にハードマスク膜9を備えている。このハードマスク膜9は、遮光膜8をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成する必要がある。これにより、レジスト膜を遮光膜8のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の厚さを大幅に薄くすることができる。
このハードマスク膜9は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。また、ハードマスク膜9は、クロムのほかに、窒素、酸素、炭素、水素およびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料で形成するとより好ましい。ハードマスク膜9は、これらのクロムを含有する材料に、インジウム(In)、スズ(Sn)およびモリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(以下、これらの金属元素を「インジウム等金属元素」という。)を含有させた材料で形成してもよい。
このマスクブランク110において、ハードマスク膜9の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。
以上のように、この第2の実施形態のマスクブランク110は、透光性基板1とパターン形成用薄膜である遮光膜8の間に、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2を備え、このエッチングストッパー膜2の酸素欠損率が、6.4%以下であるようにしている。そして、このエッチングストッパー膜2は、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりも、遮光膜8にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、露光光に対する透過率も高いという特性を同時に満たす。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで遮光膜8に転写パターンを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができるため、パターン側壁の垂直性を高めること、またパターンの面内のCD均一性を高めることができる。
一方、この第2の実施形態のマスクブランク110から転写用マスク(バイナリマスク)210を製造した場合、このエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高いため、遮光膜8が除去された領域である透光部の透過率が向上する。これにより、遮光膜8のパターンで露光光が遮光される遮光部とエッチングストッパー膜2を露光光が透過する透光部との間のコントラストが向上する。このため、この転写用マスクを用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性を得ることができる。なお、この第2の実施形態のマスクブランク110は、掘り込みレベンソン型位相シフトマスク、CPL(Chromeless Phase Lithography)マスクを製造するためのマスクブランクとしても適用することが可能である。
[転写用マスクとその製造]
この第2の実施形態に係る転写用マスク210(図5参照)は、マスクブランク110のエッチングストッパー膜2は透光性基板1の主表面上の全面で残され、遮光膜8に転写パターン(遮光パターン8a)が形成されていることを特徴としている。マスクブランク110にハードマスク膜9が設けられている構成の場合、この転写用マスク210の作製途上でハードマスク膜9は除去される。
すなわち、この第2の実施形態に係る転写用マスク210は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2と、転写パターン(遮光パターン8a)を有する遮光膜である薄膜がこの順に積層された構造を備え、遮光パターン8aは、ケイ素を含有する材料からなり、エッチングストッパー膜2は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、このエッチングストッパー膜2の酸素欠損率は、6.4%以下であることを特徴とするものである。ここで、酸素欠損率[%]は、エッチングストッパー膜2中の酸素含有量をOR、エッチングストッパー膜2中に存在する全てのハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの酸素含有量をOIとしたとき、100×[OI−OR]/OIで算出される。
この第2の実施形態に係る転写用マスク(バイナリマスク)210の製造方法は、前記のマスクブランク110を用いるものであり、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより遮光膜8に転写用パターンを形成する工程を備えることを特徴としている。以下、図6に示す製造工程にしたがって、この第2の実施形態に係る転写用マスク210の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜8の上にハードマスク膜9が積層したマスクブランク110を用いた転写用マスク210の製造方法について説明する。また、遮光膜8には遷移金属およびケイ素を含有する材料を適用し、ハードマスク膜9にはクロムを含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク110におけるハードマスク膜9に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜8に形成すべき転写パターン(遮光パターン)を電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有するレジストパターン10aを形成する(図6(a)参照)。続いて、レジストパターン10aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜9に転写パターン(ハードマスクパターン9a)を形成する(図6(b)参照)。
次に、レジストパターン10aを除去してから、ハードマスクパターン9aをマスクとして、フッ素ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜8に転写パターン(遮光パターン8a)を形成する(図6(c)参照)。この遮光膜8のフッ素系ガスによるドライエッチングの際、遮光パターン8aのパターン側壁の垂直性を高めるため、また遮光パターン8aの面内のCD均一性を高めるために追加のエッチング(オーバーエッチング)を行っている。そのオーバーエッチング後においても、エッチングストッパー膜2の表面は微小にエッチングされた程度であり、遮光パターン8aの透光部においても透光性基板1の表面は露出していない。
さらに、残存するハードマスクパターン9aを塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングで除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク210を得る(図6(d)参照)。洗浄工程において、上記SC−1洗浄を用いたが、後述する実施例及び比較例に示されるように、酸素欠損率(100×[OI−OR]/OI)によってエッチングストッパー膜2の減膜量に差が生じた。なお、前記のドライエッチングで使用されている塩素系ガスおよびフッ素系ガスは、第1の実施形態で使用されているものと同様である。
この第2の実施形態の転写用マスク210は、前記のマスクブランク110を用いて作製されたものである。エッチングストッパー膜2は、酸化ハフニウムからなるエッチングストッパー膜よりも、遮光膜8にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、露光光に対する透過率も高いという特性を同時に満たしている。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで遮光膜8に遮光パターン(転写パターン)8aを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができる。このため、この第2の実施形態の転写用マスク210は、遮光パターン8aの側壁の垂直性が高く、遮光パターン8aの面内のCD均一性も高い。
一方、この第2の実施形態の転写用マスク210のエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高いため、遮光膜8が除去された領域である透光部の透過率が向上する。これにより、遮光膜8のパターンで露光光が遮光される遮光部とエッチングストッパー膜2を露光光が透過する透光部との間のコントラストが向上する。このため、この転写用マスクを用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性を得ることができる。
[半導体デバイスの製造]
第2の実施形態の半導体デバイスの製造方法は、第2の実施形態の転写用マスク210または第2の実施形態のマスクブランク110を用いて製造された転写用マスク210を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。第2の実施形態の転写用マスク200は、遮光パターン8aの側壁の垂直性が高く、遮光パターン8aの面内のCD均一性も高い。このため、第2の実施形態の転写用マスク210を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、第2の実施形態の転写用マスク210のエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高いため、遮光膜8が除去された領域である透光部の透過率が向上する。これにより、遮光膜8のパターンで露光光が遮光される遮光部とエッチングストッパー膜2を露光光が透過する透光部との間のコントラストが向上する。このため、この転写用マスクを用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性を得ることができる。このため、この転写用マスク210を用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性が得られる。そして、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
<第3の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第3の実施形態に係るマスクブランク120(図7参照)は、第1の実施形態で説明したマスクブランク構造において、位相シフト膜3と遮光膜4の間にハードマスク膜11を設け、遮光膜4の上にハードマスク膜12を設けたものである。この実施形態における遮光膜4は、ケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有した膜とし、ハードマスク膜11、12はクロムを含有した膜としている。この第3の実施形態に係るマスクブランク120は、特にCPL(Chromeless Phase Lithography)マスクを製造する用途で好適である。なお、この第3の実施形態のマスクブランク120がCPLマスクを製造する用途とされる場合、位相シフト膜3の露光光に対する透過率は、90%以上であることが好ましく、92%以上であるとより好ましい。
この第3の実施形態の位相シフト膜3は、ケイ素および酸素を含有する材料で形成されることが好ましい。この位相シフト膜3は、ケイ素および酸素の合計含有量が95原子%以上であることが好ましい。また、この位相シフト膜3は、酸素の含有量は60原子%以上であると好ましい。この位相シフト膜3の厚さは210nm以下であることが好ましく、200nm以下であるとより好ましく、190nm以下であるとより好ましい。また、この位相シフト膜3の厚さは150nm以上であることが好ましく、160nm以上であるとより好ましい。この位相シフト膜3のArF露光光に対する屈折率nは、1.52以上であると好ましく、1.54以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の屈折率nは、1.68以下であると好ましく、1.63以下であるとより好ましい。位相シフト膜3のArFエキシマレーザー露光光に対する消衰係数kは、0.02以下であると好ましく、0に近いことがより好ましい。
一方、この位相シフト膜3は、ケイ素、酸素および窒素を含有する材料で形成してもよい。この場合、位相シフト膜3の露光光に対する透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であるとより好ましい。位相シフト膜3は、ケイ素、酸素および窒素の合計含有量が95原子%以上であることが好ましい。この位相シフト膜3は、酸素の含有量は40原子%以上であると好ましい。この位相シフト膜3は、酸素の含有量は60原子%以下であると好ましい。この位相シフト膜3は、窒素の含有量は7原子%以上であると好ましい。この位相シフト膜3は、窒素の含有量は20原子%以下であると好ましい。
この場合の位相シフト膜3の厚さは150nm以下であることが好ましく、140nm以下であるとより好ましい。また、この位相シフト膜3の厚さは100nm以上であることが好ましく、110nm以上であるとより好ましい。この位相シフト膜3のArF露光光に対する屈折率nは、1.70以上であると好ましく、1.75以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の屈折率nは、2.00以下であると好ましく、1.95以下であるとより好ましい。位相シフト膜3のArFエキシマレーザー露光光に対する消衰係数kは、0.05以下であると好ましく、0.03以下であるとより好ましい。
[転写用マスクとその製造]
この第3の実施形態に係る転写用マスク220(図8参照)は、位相シフトマスクの一種であるCPLマスクであり、マスクブランク120のエッチングストッパー膜2は透光性基板1の主表面上の全面で残され、位相シフト膜3に位相シフトパターン3eが形成され、ハードマスク膜11にハードマスクパターン11fが形成され、遮光膜4に遮光パターン4fが形成されていることを特徴としている。この転写用マスク220の作製途上で、ハードマスク膜12は除去される(図9参照)。
すなわち、この第3の実施形態に係る転写用マスク220は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、位相シフトパターン3e、ハードマスクパターン11fおよび遮光パターン4fがこの順に積層された構造を備え、位相シフトパターン3eはケイ素および酸素を含有する材料からなり、ハードマスクパターン11fはクロムを含有する材料からなり、遮光膜4はケイ素およびタンタルから選ばれる少なくとも1以上の元素を含有する材料からなる。
この第3の実施形態に係る転写用マスク220の製造方法は、前記のマスクブランク120を用いるものであり、塩素系ガスを用いるドライエッチングによりハードマスク膜12に遮光パターンを形成する工程と、遮光パターンを有するハードマスク膜(ハードマスクパターン)12fをマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより、遮光膜4に遮光パターン4fを形成する工程と、塩素系ガスを用いるドライエッチングによりハードマスク膜11に位相シフトパターンを形成する工程と、位相シフトパターンを有するハードマスク膜(ハードマスクパターン)11eをマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより位相シフト膜3に位相シフトパターン3eを形成する工程と、遮光パターン4fをマスクとし、塩素系ガスを用いるドライエッチングによりハードマスク膜11にハードマスクパターン11fを形成する工程と、を備えることを特徴としている(図9参照)。
以下、図9に示す製造工程にしたがって、この第3の実施形態に係る転写用マスク220の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜4にケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク120におけるハードマスク膜12に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき遮光パターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによってレジストパターン17fを形成する(図9(a)参照)。続いて、レジストパターン17fをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜12にハードマスクパターン12fを形成する(図9(b)参照)。
次に、レジストパターン17fを除去してから、ハードマスクパターン12fをマスクとして、CF4等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に遮光パターン4fを形成する(図9(c)参照)。
続いて、レジスト膜をスピン塗布法によって形成し、その後、レジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべき位相シフトパターンを電子線で描画して、さらに現像処理等の所定の処理を行うことによってレジストパターン18eを形成する(図9(d)参照)。
その後、レジストパターン18eをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜11にハードマスクパターン11eを形成する(図9(e)参照)。次に、レジストパターン18eを除去してから、CF4等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に位相シフトパターン3eを形成する(図9(f)参照)。
続いて、遮光パターン4fをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスクパターン11fを形成する。このとき、ハードマスクパターン12fは同時に除去される。
その後、洗浄工程を行って、必要に応じてマスク欠陥検査を行う。さらに、欠陥検査の結果によっては必要に応じて欠陥修正を行なって、転写用マスク220が製造される。洗浄工程において、SC−1洗浄を用いたが、後述する実施例及び比較例に示されるように、酸素欠損率(100×[OI−OR]/OI)によってエッチングストッパー膜2の減膜量に差が生じた。
この第3の実施形態の転写用マスク(CPLマスク)220は、前記のマスクブランク120を用いて作製されたものである。このため、この第3の実施形態の転写用マスク220は、位相シフトパターン3eの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3eの面内のCD均一性も高い。位相シフトパターン3eとエッチングストッパー膜2の底面とからなる各構造体は、面内における高さ方向(厚さ方向)の均一性も大幅に高い。このため、この転写用マスク220は、面内での位相シフト効果の均一性が高い。
一方、この第3の実施形態のCPLマスク220のエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高い。このため、位相シフト膜3が残存する領域である位相シフト部と位相シフト膜3が除去された領域である透光部の各透過率がともに向上する。これにより、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3のパターンを透過した露光光と、エッチングストッパー膜2のみを透過した露光光との間で生じる位相シフト効果が向上する。このため、このCPLマスク220を用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性を得ることができる。
[半導体デバイスの製造]
第3の実施形態の半導体デバイスの製造方法は、第3の実施形態の転写用マスク(CPLマスク)220または第3の実施形態のマスクブランク120を用いて製造された転写用マスク(CPLマスク)220を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。第3の実施形態の転写用マスク220は、位相シフトパターン3eの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3eの面内のCD均一性も高く、面内での位相シフト効果の均一性も高い。このため、第3の実施形態の転写用マスク220を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、第3の実施形態の転写用マスク220のエッチングストッパー膜2は従来のエッチングストッパー膜よりも露光光に対する透過率が高い。このため、位相シフト膜3が残存する領域である位相シフト部と位相シフト膜3が除去された領域である透光部の各透過率がともに向上する。これにより、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3のパターンを透過した露光光と、エッチングストッパー膜2のみを透過した露光光との間で生じる位相シフト効果が向上する。このため、転写用マスク220を用いて半導体基板上のレジスト膜に対して露光転写を行ったときに、高いパターン解像性が得られる。そして、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
一方、本発明のエッチングストッパー膜2を構成する材料は、極端紫外(Extreme Ultra Violet:以下、EUVという)光を露光光源とするEUVリソグラフィー用の反射型マスクを製造するための別の形態のマスクブランクに設けられる保護膜を構成する材料としても適用可能である。すなわち、この別の形態のマスクブランクは、基板上に、多層反射膜、保護膜、および吸収体膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、前記保護膜は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、前記保護膜の酸素欠損率は、6.4%以下であることを特徴とするものである。なお、EUV光とは、軟X線領域または真空紫外領域の波長帯の光を指し、具体的には、波長が0.2〜100nm程度の光のことをいう。
この別の形態のマスクブランクにおける保護膜の構成に関しては、上記の本発明のエッチングストッパー膜2の構成を適用できる。このような保護膜は、フッ素系ガスによるドライエッチング、および塩素系ガスによるドライエッチングのいずれに対しても高い耐性を有する。このため、吸収体膜には、タンタルを含有する材料だけではなく、多岐にわたる材料が適用可能である。前記吸収体膜には、例えば、クロムを含有する材料、ケイ素を含有する材料、遷移金属を含有する材料のいずれも用いることができる。
基板は、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2−TiO2ガラス等)、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、単結晶シリコンおよびSiC等の材料が適用可能である。
多層反射膜は、EUV光に対する屈折率が低い低屈折率材料からなる低屈折率層と、EUV光に対する屈折率が高い高屈折率材料からなる高屈折率層の積層を1周期とし、これを複数周期積層した多層膜である。通常、低屈折率層は軽元素またはその化合物で形成され、高屈折率層は重元素またはその化合物で形成される。多層反射膜の周期数は、20〜60周期であることが好ましく、30〜50周期であることがより好ましい。波長13〜14nmのEUV光が露光光として適用される場合、多層反射膜としては、Mo層とSi層とを交互に20〜60周期積層させた多層膜を好適に用いることができる。また、その他に、EUV光に適用可能な多層反射膜としては、Si/Ru周期多層膜、Be/Mo周期多層膜、Si化合物/Mo化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜およびSi/Ru/Mo/Ru周期多層膜等が挙げられる。適用されるEUV光の波長帯に応じて、材質および各層の膜厚を適宜選定することができる。多層反射膜は、スパッタリング法(DCスパッタ法、RFスパッタ法およびイオンビームスパッタ法等)で成膜することが望ましい。特に、膜厚制御が容易なイオンビームスパッタ法を適用することが望ましい。
この別の形態のマスクブランクから反射型マスクを製造することが可能である。すなわち、この別の形態の反射型マスクは、基板上に、多層反射膜、保護膜、および吸収体膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、前記吸収体膜は、転写パターンを備え、前記保護膜は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、前記保護膜の酸素欠損率は、6.4%以下であることを特徴とするものである。
以下、実施例により、本発明の実施形態を図7〜図9を参照しながら、さらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さ以下(二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
次に、透光性基板1の表面に接して、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなるエッチングストッパー膜2(HfAlO膜)を3nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、Al2O3ターゲットとHfO2ターゲットを同時放電させ、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、エッチングストッパー膜2を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Hf:Al:O=32.8:5.6:61.6(原子%比)であった。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=29.2:5.0:65.8(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2において、OR:OI=61.6:65.8(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、6.38であった。
また、このエッチングストッパー膜2のHf/[Hf+Al]は、0.85である。なお、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこのエッチングストッパー膜の各光学特性を測定したところ、波長193nmの光において屈折率nが2.851、消衰係数kが0.278であった。
次に、エッチングストッパー膜2の表面に接して、ケイ素および酸素からなる位相シフト膜(SiO2膜)3を177nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内にエッチングストッパー膜2が形成された後の透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO2)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)によって、位相シフト膜3を形成した。
別の透光性基板上に同条件で形成し、加熱処理を施した後の位相シフト膜に対し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いて位相シフト膜の各光学特性を測定したところ、波長193nmの光において屈折率nが1.563、消衰係数kが0.000(測定下限)であった。
次に、位相シフト膜3の表面に接して、クロムおよび窒素からなるハードマスク膜(CrN膜)11を5nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に加熱処理後の透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、ハードマスク膜11を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成した遮光ハードマスク膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Cr:N=75:25(原子%比)であった。
次に、ハードマスク膜11の表面に接して、ケイ素および窒素からなる遮光膜(SiN膜)4を48nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に加熱処理後の透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)によって、遮光膜4を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成した遮光膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Si:N:O=75.5:23.2:1.3(原子%比)であった。なお、位相シフト膜3、ハードマスク膜11、および遮光膜4の積層構造において、ArFエキシマレーザーの波長(193nm)の光学濃度は2.8以上であった。
次に、遮光膜4の表面に接して、クロムおよび窒素からなるハードマスク膜(CrN膜)5を5nmの厚さで形成した。ハードマスク膜12の具体的な構成および製法については、上記ハードマスク膜11と同じとした。以上の手順で、実施例1のマスクブランク120を製造した。
なお、別の透光性基板に形成された膜厚3nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が85.1%であり、この実施例1のエッチングストッパー膜を設けることによって生じる透過率の低下の影響は小さいことがわかった。また、別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が90.5%であった。また、そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、SC−1洗浄と称されるアンモニア水、過酸化水素水、および脱イオン水の混合液の洗浄液を用いて、以下のようなスピン洗浄を行った。スピン洗浄法によるSC−1洗浄では、最初に、低速で回転させたマスクブランク100の回転中心部近傍に洗浄液を滴下し、回転による塗り拡げでマスクブランク100の表面全面にSC−1洗浄液を盛る。その後も洗浄終了時間まで洗浄液を供給し続けながらマスクブランク100を低速で回転して洗浄を続け、洗浄時間終了後に純水を供給して洗浄液を純水に置換し、最後にスピン乾燥を行う。この洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.34nmであった。この結果から、この実施例1のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.53nmであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク120を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク(CPLマスク)220を作製した。最初に、スピン塗布法によって、ハードマスク膜12の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべき遮光帯を含む遮光パターンを電子線描画し、所定の現像処理を行い、遮光パターンを有するレジストパターン17fを形成した(図9(a)参照)。
次に、レジストパターン17fをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl2:O2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜12にパターン(ハードマスクパターン12f)を形成した(図9(b)参照)。
次に、レジストパターン17fをTMAHにより除去した。続いて、ハードマスクパターン12fをマスクとし、フッ素系ガス(SF6+He)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に遮光帯を含むパターン(遮光パターン4f)を形成した(図9(c)参照)。
次に、遮光パターン4fおよびハードマスク膜11上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべきパターンである転写パターンを描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、転写パターンを有するレジストパターン18eを形成した(図9(d)参照)。
続いて、レジストパターン18eをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比
Cl2:O2=15:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜11に転写パターン(ハードマスクパターン11e)を形成した(図9(e)参照)。次に、レジストパターン18eをTMAHにより除去してから、ハードマスクパターン11eをマスクとし、フッ素系ガス(SF6+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に転写パターン(位相シフトパターン3e)を形成した(図9(f)参照)。このフッ素系ガスによるドライエッチングでは、位相シフト膜3のエッチングの開始からエッチングが位相シフト膜3の厚さ方向に進行してエッチングストッパー膜2の表面が露出し始めるまでのエッチング時間(ジャストエッチングタイム)に加え、そのジャストエッチングタイムの20%の時間(オーバーエッチングタイム)だけ追加のエッチング(オーバーエッチング)を行った。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは25Wの電力でバイアスを掛けており、いわゆる高バイアスエッチングの条件で行われた。
続いて、遮光パターン4fをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl 2:O2=4:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜11にパターン(ハードマスクパターン11f)を形成した。このとき、ハードマスクパターン12fは同時に除去された。さらに、SC−1洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク220を得た(図9(g)参照)。
別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)で観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜の堀込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
実施例1の位相シフトマスク(CPLマスク)220に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。この結果から、実施例1の位相シフトマスク220を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
この実施例2のマスクブランク120は、エッチングストッパー膜2を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。以下、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
この実施例2のエッチングストッパー膜2には、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなるHfAlO膜(Hf:Al:O=28.0:9.5:62.5(原子%比))を適用し、透光性基板1の表面に接して、3nmの厚さで形成した。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=26.0:8.8:65.2(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2において、OR:OI=62.5:65.2(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、4.14であった。また、このエッチングストッパー膜2のHf/[Hf+Al]は、0.75である。また、このエッチングストッパー膜2の波長193nmの光における屈折率nは2.630、消衰係数kは0.181である。
別の透光性基板に形成された膜厚3nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が90.3%であり、この実施例2のエッチングストッパー膜を設けることによって生じる透過率の低下の影響は小さいことがわかった。別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が94.0%であった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、実施例1で述べたSC−1洗浄液による洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.60nmであった。この結果から、この実施例2のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを実施例1の場合と同条件で行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.44nmであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例2のマスクブランク120を用い、実施例1と同様の手順で実施例2の位相シフトマスク220を作製した。別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜への堀込は1nm程度と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
実施例2の位相シフトマスク(CPLマスク)220に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。この結果から、実施例2の位相シフトマスク220を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(実施例3)
[マスクブランクの製造]
この実施例3のマスクブランク120は、エッチングストッパー膜2を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。この実施例3のエッチングストッパー膜2には、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなるHfAlO膜(Hf:Al:O=24.3:13.0:62.7(原子%比))を適用し、透光性基板1の表面に接して、3nmの厚さで形成した。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=23.1:12.3:64.6(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2において、OR:OI=62.7:64.6(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、2.94であった。また、このエッチングストッパー膜2のHf/[Hf+Al]は、0.65である。また、このエッチングストッパー膜2の波長193nmの光における屈折率nは2.434、消衰係数kは0.094である。
別の透光性基板に形成された膜厚3nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が94.0%であり、この実施例3のエッチングストッパー膜を設けることによって生じる透過率の低下の影響は小さいことがわかった。別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が96.4%であった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、実施例1で述べたSC−1洗浄による洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.76nmであった。この結果から、この実施例3のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを実施例1の場合と同条件で行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.35nmであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例3のマスクブランク120を用い、実施例1と同様の手順で実施例3の位相シフトマスク220を作製した。別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜への堀込は1nm程度と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
実施例3の位相シフトマスク(CPLマスク)220に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。この結果から、実施例3の位相シフトマスク220を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(実施例4)
[マスクブランクの製造]
この実施例4のマスクブランク120は、エッチングストッパー膜2を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。この実施例4のエッチングストッパー膜2には、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなるHfAlO膜(Hf:Al:O=22.5:14.6:62.9(原子%比))を適用し、透光性基板1の表面に接して、3nmの厚さで形成した。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=21.7:14.0:64.3(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2において、OR:OI=62.9:64.3(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、2.18であった。また、このエッチングストッパー膜2のHf/[Hf+Al]は、0.61である。また、このエッチングストッパー膜2の波長193nmの光における屈折率nは2.366、消衰係数kは0.070である。
別の透光性基板に形成された膜厚3nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が95.1%であり、この実施例3のエッチングストッパー膜を設けることによって生じる透過率の低下の影響は小さいことがわかった。別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が97.1%であった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、実施例1で述べたSC−1洗浄による洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.95nmであった。この結果から、この実施例4のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを実施例1の場合と同条件で行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.32nmであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例4のマスクブランク120を用い、実施例1と同様の手順で実施例4の位相シフトマスク220を作製した。別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜への堀込は1nm程度と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
実施例4の位相シフトマスク(CPLマスク)220に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。この結果から、実施例4の位相シフトマスク220を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(実施例5)
[マスクブランクの製造]
この実施例5のマスクブランク120は、エッチングストッパー膜2を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。この実施例5のエッチングストッパー膜2には、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなるエッチングストッパー膜2(HfAlO膜 Hf:Al:O=19.9:16.9:63.2(原子%比))を適用し、透光性基板1の表面に接して3nmの厚さで形成した。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=19.5:16.6:63.9(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2において、OR:OI=63.2:63.9(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、1.10であった。また、このエッチングストッパー膜2のHf/[Hf+Al]は、0.54である。また、このエッチングストッパー膜2の波長193nmの光における屈折率nは2.324、消衰係数kは0.069である。
別の透光性基板に形成された膜厚3nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が96.3%であり、この実施例5のエッチングストッパー膜を設けることによって生じる透過率の低下の影響は小さいことがわかった。別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が97.9%であった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、実施例1で述べたSC−1洗浄による洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、1.10nmであった。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを実施例1の場合と同条件で行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.27nmであった。
[転写用マスクの製造]
次に、この実施例5のマスクブランク120を用い、実施例1と同様の手順で実施例5の位相シフトマスク220を作製した。
別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、またエッチングストッパー膜への堀込は1nm程度と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
実施例5の位相シフトマスク(CPLマスク)220に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。この結果から、実施例5の位相シフトマスク220を露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、エッチングストッパー膜を除いて、実施例1のマスクブランクと同様の構成を備える。この比較例1のエッチングストッパー膜は、透光性基板の表面に接して、ハフニウムおよび酸素からなるエッチングストッパー膜(HfO膜)を3nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板を設置し、HfO2ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、エッチングストッパー膜を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Hf:Al:O=39.1:0.0:60.9(原子%比)であった。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=33.3:0.0:66.7(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜において、OR:OI=60.9:66.7(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、8.70であった。また、このエッチングストッパー膜のHf/[Hf+Al]は1.00である。また、このエッチングストッパー膜の波長193nmの光における屈折率nは2.949、消衰係数kは0.274である。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が84.2%であった。別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が89.9%であった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、実施例1で述べたSC−1洗浄による洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.10nmであった。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.66nmであり、影響を無視できないものであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で比較例1の位相シフトマスクを作製した。比較例1のハーフトーン型位相シフトマスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たすことができていなかった。エッチングストッパー膜の透過率が低いことに起因する解像性の低下が主な原因であった。この結果から、比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が多発することが予想される。
(比較例2)
[マスクブランクの製造]
比較例2のマスクブランクは、エッチングストッパー膜を除いて、実施例1のマスクブランクと同様の構成を備える。この比較例2のエッチングストッパー膜は、ハフニウム、アルミニウムおよび酸素からなるHfAlO膜(Hf:Al:O=35.1:3.6:61.3(原子%比))を適用し、透光性基板の表面に接して、3nmの厚さで形成した。また、このエッチングストッパー膜において、この膜中に存在するハフニウムとアルミニウムが化学量論的に安定な酸化物の状態にあるときの組成比は、Hf:Al:O=30.7:3.2:66.1(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜において、OR:OI=61.3:66.1(原子%比)であり、これらから算出された酸素欠損率[%]は、7.26であった。また、このエッチングストッパー膜のHf/[Hf+Al]は、0.91である。また、このエッチングストッパー膜の波長193nmの光における屈折率nは2.908、消衰係数kは0.309である。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が83.4%であった。別の透光性基板に形成された膜厚2nmのエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率が89.2%であった。そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、実施例1で述べたSC−1洗浄による洗浄工程を10回行った後のエッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.20nmであった。
別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜に対し、SF6とHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを行い、エッチングストッパー膜の減膜量を測定したところ、0.60nmであり、影響を無視できないものであった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例2のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で比較例2の位相シフトマスクを作製した。比較例2のハーフトーン型位相シフトマスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たすことができていなかった。エッチングストッパー膜の透過率が低いことに起因する解像性の低下が主な原因であった。この結果から、比較例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が多発することが予想される。