JP6836264B2 - 生体状態推定装置、生体状態推定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体 - Google Patents

生体状態推定装置、生体状態推定方法、コンピュータプログラム及び記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、人の背部から得られる生体信号を用いて、生体の状態を推定する技術に関する。
本発明者らは、特許文献1〜2において、人の上体の中で背部の体表面に生じる振動を生体信号測定装置により検出し、人の状態を解析する技術を提案している。人の背部から検出される心臓と大動脈の運動から生じる生体信号は、心臓と大動脈の運動から生じる圧力振動であり、心室の収縮期及び拡張期の情報と、循環の補助ポンプとなる血管壁の弾力情報及び反射波の情報を含んでいる。すなわち、心臓と大動脈の運動から背部表面に生じる1Hz近傍の背部体表脈波(Aortic Pulse Wave(APW))を含む生体信号である。心拍変動に伴う信号波形は交感神経系及び副交感神経系の神経活動情報を含み、大動脈の揺動に伴う信号波形には交感神経活動の情報を含んでいる。
本出願人は、特許文献1において、APWの時系列データから周波数の時系列波形を求め、さらに、周波数傾きの時系列波形、周波数変動の時系列波形を求めてこれらを周波数解析する手段を有する装置を開示している。周波数解析の際には、予め定めた機能調整信号、疲労受容信号及び活動調整信号に相当する各周波数のパワースペクトルを求め、各パワースペクトルの時系列変化から人の状態を判定することも開示している。
また、本出願人は、特許文献2において、APWの時系列データを周波数解析し、対数パワースペクトル密度と対数周波数の関係において回帰直線を求め、この回帰直線の形から人の状態を判定する技術を開示している。
特開2011−167362号公報 特開2012−179202号公報
上記のうち、特許文献2は、APWの時系列データを周波数傾き時系列波形を求めずに人の状態を推定する手法を提案するものであり、APWのうち、人の恒常性を維持するゆらぎが含まれる0.001〜0.04Hzの周波数帯域の信号を解析対象としている。そして、上記のようにパワースペクトル密度の両対数軸表示から得られるゆらぎ波形をさらに複数の周波数帯域で区分し、この区分した周波数帯域のそれぞれについて回帰直線を求め、各区分の回帰直線の傾きに対して一定の基準でポイントを付与し、それらのポイントの合計点や、各区分の回帰直線間での折れ点の数などを考察して判定している。これは、特許文献2の状態の判定が、疲労状態、病気などの不調状態、機能回復過程の状態、アルコール摂取による酩酊状態、並びに、それらの状態の変化の推移など、様々な状態を判定するものであるため、広範囲の周波数帯域内を細かく分析している。
従って、特許文献2の技術は、人の状態を種々の面から総合的に判定できる点で優れているが、コンピュータの演算処理装置への負荷やメモリーの使用量が相対的に大きいという課題があった。
一方、例えば、外的刺激に対して痛みや不快感を伴っていながら治療中に意志を伝えにくい歯科診療などにおいて、患者がそれらの外的刺激に対する反応をどの程度感じているか、すなわち、外的刺激に対する触覚感度がどの程度であるかを客観的に把握することができれば、より患者の負担を軽減し、また、治療もより適切になることが期待される。もちろん外的刺激に対する痛みや不快感の客観的把握は、歯科診療に限らず、他の医療行為においても必要な場合もあり、また、スポーツや健康指導等において必要となる場合もある。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、外的刺激に対する触覚感度がどの程度であるかを推定することができ、しかも、コンピュータにかかる負荷を従来と比べて軽減することができる技術を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の生体状態推定装置は、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる生体信号を用いて、生体状態を推定する生体状態推定装置であって、前記生体信号の時系列データを周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力する周波数解析手段と、前記ゆらぎ波形について回帰直線を求めると共に、前記回帰直線の傾きを求める回帰直線解析手段と、前記回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を前記生体状態として推定する触覚感度推定手段とを有することを特徴とする。
予め測定した前記回帰直線の傾きと前記触覚感度との相関データを記憶する相関データ記憶部を備えており、前記触覚感度推定手段が、前記相関データ記憶部にアクセスして、前記回帰直線解析手段により得られた解析対象の前記回帰直線の傾きを照合し、前記触覚感度を推定する構成とすることが好ましい。
前記触覚感度推定手段は、前記外的刺激が付与される前の通常状態の前記回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部に記憶させておき、前記回帰直線解析手段により得られた解析対象の前記回帰直線の傾きを前記基準データと比較して、前記触覚感度を推定する構成とすることも好ましい。
前記生体信号測定装置が、診療用椅子の背もたれに設けられており、前記周波数解析手段が、前記診療用椅子に着座している患者の背部から得られる生体信号について周波数解析し、前記触覚感度推定手段により推定された前記患者の触覚感度を出力する表示モニタをさらに備える構成とすることが好ましい。
本発明の生体状態推定方法は、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる生体信号を用いて、生体状態を推定する生体状態推定方法であって、前記生体信号の時系列データを周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力し、前記ゆらぎ波形について回帰直線を求めると共に、前記回帰直線の傾きを求め、前記回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を前記生体状態として推定することを特徴とする。
予め測定した前記回帰直線の傾きと前記触覚感度との相関データを記憶する相関データ記憶部にアクセスし、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記相関データに照合し、前記触覚感度を推定することが好ましい。
前記外的刺激が付与される前の通常状態の前記回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部に記憶させておき、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記基準データと比較して、前記触覚感度を推定することも好ましい。
本発明のコンピュータプログラムは、生体状態推定装置としてのコンピュータに、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる生体信号を分析させ、生体状態を推定する手順を実行させるコンピュータプログラムであって、前記生体信号の時系列データを周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力する手順と、前記ゆらぎ波形について回帰直線を求めると共に、前記回帰直線の傾きを求める手順と、前記回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を前記生体状態として推定する手順とを実行させる。
前記触覚感度を推定する手順では、予め測定した前記回帰直線の傾きと前記触覚感度との相関データを記憶する相関データ記憶部にアクセスし、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記相関データに照合して前記触覚感度を推定することが好ましい。
前記触覚感度を推定する手順では、前記外的刺激が付与される前の通常状態の前記回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部に記憶させておき、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記基準データと比較して、前記触覚感度を推定することも好ましい。
また、本発明は、生体状態推定装置としてのコンピュータに、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる生体信号を分析させ、生体状態を推定する手順を実行させる請求項8〜10のいずれか1に記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
本発明は、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる生体信号(APW)を周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力し、このゆらぎ波形について回帰直線を求め、回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を推定する構成である。0.01〜0.2Hzの周波数帯域は、外的刺激に対して痛みや不快を感じて亢進する交感神経系の状態を反映しており、その周波数帯域に絞ることで、人が外的刺激に対して感じている触覚感度を知ることができる。従って、歯科診療等において、患者が治療行為に対してどの程度の痛みや不快感を感じているかを治療中に把握することができ、より適切な治療行為を期待できる。また、本発明は、このように解析対象の周波数帯域を触覚感度の推定に必要なものに限定しているため、コンピュータの演算処理装置への負荷が小さくメモリーの使用量も少なくて済む。また、ゆらぎ波形の判定にあたり、ゆらぎ波形に引かれる回帰直線を一つにし、その傾きを用いて判定するだけであるため、この点でも、従来の生体状態推定装置と比較して、コンピュータの負荷の軽減に大いに寄与でき、推定結果の出力も速くなる。
図1(a)は、本発明の一の実施形態において用いた背部体表脈波を測定する生体信号測定装置の一例を示した分解図であり、図1(b)は、その要部断面図である。 図2は、本発明の一の実施形態に係る生体状態推定装置の構成を模式的に示した図である。 図3は、実験例における治療強度と体動との関係を示した図である。 図4は、実験例における治療強度と交感神経活動との関係を示した図である。 図5は、実験例における治療強度と心拍変動スペクトル(ゆらぎ波形)の回帰直線の傾きとの関係を示した図である。 図6(a)は、実験例における被験者Aのゆらぎ波形と回帰直線の傾きを示した図であり、図6(b)は、実験例における被験者Bのゆらぎ波形と回帰直線の傾きを示した図である。 図7(a)〜(e)は、解析対象とする周波数帯域を異ならせて求めた全被験者の心拍変動波形の周波数スペクトル(ゆらぎ波形)の回帰直線の傾きの関係を示した図である。
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。本発明において採取する生体信号は、背部から採取される生体信号である。この生体信号は、人の上体背部から検出されるため、心臓と大動脈の運動から生じる音・振動情報であり、心室の収縮期及び拡張期の情報と、血液循環の補助ポンプとなる血管壁の弾性情報及び血圧による弾性情報並びに反射波の情報、すなわち、背部体表脈波(APW)や疑似心音情報を含んでいる。そして、外的刺激に対する触覚感度の変化、すなわち、痛みや不快感を感じると亢進する交感神経系の神経活動情報を含んでいる。
生体信号を採取するための生体信号測定装置は、例えば、圧力センサを用いることも可能であるが、好ましくは、(株)デルタツーリング製の居眠り運転警告装置(スリープバスター(登録商標))で使用されている生体信号測定装置1を用いる。図1は生体信号測定装置1の概略構成を示したものである。この生体信号測定装置1は、椅子の背もたれに組み込んで使用することができ、手指を拘束することなく生体信号を採取できる。
生体信号測定装置1を簡単に説明すると、図1(a),(b)に示したように、上層側から順に、第一層11、第二層12及び第三層13が積層された三層構造からなり、三次元立体編物等からなる第一層11を生体信号の検出対象である人体側に位置させて用いられる。従って、人体の体幹背部からの生体信号、特に、心室、心房、大血管の振動に伴って発生する生体音(体幹直接音ないしは生体音響信号)を含む心臓・血管系の音・振動情報(背部体表脈波(APWを含む))は、生体信号入力系である第一層11にまず伝播される。第二層12は、第一層11から伝播される生体信号、特に心臓・血管系の音・振動を共鳴現象又はうなり現象によって強調させる共鳴層として機能し、ビーズ発泡体等からなる筐体121、固有振動子の機能を果たす三次元立体編物122、膜振動を生じるフィルム123を有して構成される。第二層12内において、マイクロフォンセンサ14が配設され、音・振動情報を検出する。第三層13は、第二層12を介して第一層11の反対側に積層され、外部からの音・振動入力を低減する。
次に、本実施形態の生体状態推定装置100の構成について図2に基づいて説明する。生体状態推定装置100は、周波数解析手段200、回帰直線解析手段300及び触覚感度推定手段400を有して構成されている。生体状態推定装置100は、コンピュータ(マイクロコンピュータ等も含む)から構成され、コンピュータを、周波数解析手段200、回帰直線解析手段300及び触覚感度推定手段400等として機能させる手順を実行させるコンピュータプログラムが記憶部に記憶されている。また、生体状態推定装置100は、周波数解析手段200、回帰直線解析手段300及び触覚感度推定手段400等を、コンピュータプログラムにより所定の手順で動作する電子回路である周波数解析回路、回帰直線解析回路及び触覚感度推定回路等として構成することもできる。なお、以下の説明において、周波数解析手段200、回帰直線解析手段300及び触覚感度推定手段400以外で「手段」が付されて表現された構成も、電子回路部品として構成することが可能であることはもちろんである。
また、コンピュータプログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えば上記コンピュータに上記プログラムをインストールすることができる。ここで、上記プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。また、通信回線を通じて上記プログラムを上記コンピュータに伝送してインストールすることも可能である。
周波数解析手段200は、生体信号測定装置1のセンサ14から得られる背部音・振動情報をフィルタリング処理した1Hz近傍の背部体表脈波(APW)の時系列波形を周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力する。背部体表脈波(APW)は、中枢系である心臓の制御の様子を主として含む生体信号、すなわち、動脈の交感神経支配の様子、並びに、交感神経系と副交感神経系の出現情報を含む生体信号である。外的刺激に対する痛みや不快を感じると、交感神経活動の亢進が引き起こされることから、APWを用いることが好ましく、そのうち、0.01〜0.2Hzの周波数帯域を解析対象として、両対数軸表示することが好ましい。この周波数帯域は、後述の実験例のように、歯科の治療強度(通常、治療強度が高くなるほど、痛みや不快を強く感じ、触覚感度が上がる)との相関性が高く、外的刺激に対する触覚感度の推定に適している。一般に、これら痛みの感覚と関連する交感神経系及び副交感神経系の出現度合いは、0.01〜0.04Hzの範囲に含まれているといわれている。0.04Hz以上では、ノイズが多くなるからであるが、0.04Hz付近でもある程度のノイズが含まれる。従って、ばらつきを排除するためには、0.01〜0.03Hzの範囲に区切って解析することが望ましい。
その一方、歯科治療中に判定する場合などでは、短時間で、例えば5分程度かそれ以下で推定結果を出力することが望まれる。また、歯科治療中のように、睡眠時ではなく覚醒時における測定では、相対的に高い周波数帯にも自律神経系の情報が含まれている。この意味では、0.03Hzや0.04Hzを上限とするのではなく、0.01〜0.2Hzの範囲の周波数帯をゆらぎ波形を求めるための解析対象とすることが好ましい。また、生体状態のトレンドの大域的把握には、生体信号のデータを数秒間ずつ区切ってその区間の傾きを求め、その傾きをスライド計算によって順次求めて時系列のデータを構成するいわゆる傾き時系列波形を求める手法が適しているが、0.01〜0.2Hzの範囲の5分間のデータから求めたゆらぎ波形の傾きは、傾き時系列波形の約30分間の傾きに相当する。この点でも、本実施形態のように、APWの0.01〜0.2Hzの周波数帯域を解析対象とすることが、短時間でより正確な判定を行うために好ましい。
回帰直線解析手段300は、周波数解析手段200により得られたゆらぎ波形について最小二乗法により回帰直線を求め、次に、この回帰直線の傾きを求める。
触覚感度推定手段400は、回帰直線解析手段300により求めた回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を推定する。例えば、回帰直線の傾きが−1、すなわち1/fゆらぎの傾きとの比較で触覚感度を推定することが好ましい。具体的には、回帰直線の傾きが−1より小さい(絶対値で1より大きい)場合には、外的刺激に対する痛み等を強く感じしている、すなわち触覚感度が高い状態と推定し、回帰直線の傾きが−1より大きい(絶対値で1より小さい)場合には、外的刺激に対する痛み等をあまり感じておらず、すなわち触覚感度が低い状態と推定する。
回帰直線の傾きと触覚感度との相関については、例えば、予めそれらの関係に関するデータを複数集め、それをコンピュータの記憶部に形成した相関データ記憶部510に記憶させておく。例えば、上記のように、回帰直線の傾きが−1より大きい場合には、「触覚感度:高」、回帰直線の傾きが−1より小さい場合には、「触覚感度:低」といったように表形式によりデータベース化しておく。もちろん、データベースの構築方法は任意であり、回帰直線の傾き及び触覚感度をより細分化して対応させることもできる。そして、解析対象の回帰直線の傾きから状態を推定する際には、触覚感度推定手段400が、上記の相関データ記憶部510にアクセスして、当該回帰直線の傾きを対応する触覚感度を検出する。なお、相関データ記憶部510に予め記憶させる相関データは、異なる人の多数のデータであってもよいし、判定対象となっている人の個人データを複数蓄積したものであってもよい。
また、外的刺激が付与される前の通常状態の回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部520に記憶させておき、この基準データとの比較で触覚感度を推定する構成とすることもできる。例えば、歯科治療中の触覚感度を推定する場合、歯科治療を開始する前の通常状態の回帰直線の傾きを求め、それを基準データとして記憶させる。例えば、傾き−0.8を記憶させる。そして、その患者の触覚感度を推定する場合には、−0.8を基準として傾きの大小を判定し、触覚感度を推定する。このように、触覚感度を知りたい状況、例えば、歯科治療などの行為が存在する場合に、その直前の状態を基準とすることで、当該患者の痛みや不快のレベルをより正確に知ることができる。
本実施形態によれば、歯科治療用の椅子、その他、耳鼻科などで用いられる椅子等の診療用椅子の背もたれに生体信号測定装置1を取り付けることで、人が外的刺激に対して痛みや不快を感じているレベルに概略的に対応した指標(触覚感度)を知ることができる。特に、治療中に痛みを感じる頻度が比較的多い、歯科治療用の椅子に適しており、患者へのより適切な治療に貢献できる。
なお、生体状態推定装置100は、診療用椅子に付設されたテーブル等、医師の目が届く範囲に設置される表示モニタ110を備える構成とすることが好ましい。この場合、触覚感度推定手段400の推定結果は、表示モニタ110に表示させるためのコンピュータプログラムが起動し、当該表示モニタ110に触覚感度推定手段400の推定結果を出力させる。例えば、横軸に治療時間が示され、縦軸に触覚感度が「高、低」あるいは「1、2、3・・・」等の段階で表示され、医師は、その表示モニタ110を見て、患者が手を挙げるなどしてアピールすることなく、患者の感じている痛みや不快のレベルを容易に推察することができる。
また、本実施形態によれば、解析対象の周波数帯域を上記のように0.01〜0.2Hzと、触覚感度の推定に必要なものに限定している。そのため、コンピュータの演算処理装置への負荷が小さくメモリーの使用量も少なくて済む。また、回帰直線解析手段300によってゆらぎ波形に引かれる回帰直線が1本で、その傾きを判定するだけであるため、より広い周波数帯域を解析対象とする場合と比較して、コンピュータの負荷の軽減、演算処理速度の向上に寄与できる。
(実験例)
歯科診療において、痛みや不快を感じさせるレベルが低いと考えられる処置行為、高いと考えられる処置行為を治療強度として区分し、治療強度と生体状態推定装置100により求められる解析結果との比較を行った。
(1)測定方法
歯科医院に来院した患者を対象とし、歯科診療中のAPWの測定を行った。被験者は17名(男性14名、女性3名、平均年齢59歳±15.5歳)であった。被験者本人には医師から本実験の目的及び内容の説明を行い、同意を得た上で測定を行った。APWは、歯科診療用の椅子の背もたれに上記実施形態の生体信号測定装置1((株)デルタツーリング製の居眠り運転警告装置(スリープバスター(登録商標))を設置し、測定を行った。測定時間は診療開始から診療終了までである。
(2)解析方法
診療時における体動出現率、自律神経活動の出現度合い、心拍変動波形の周波数スペクトルをAPWから算出し、医師の考える治療強度との比較検討を行う。なお、治療強度は診療を行う医師が処置内容ごとに患者への負担を10段階で経験的に数値化したものである。
(3)結果と考察
図3は治療強度と体動出現率の関係を示す。治療強度が高い場合やスケーリング・歯面清掃を行う場合、体動出現率が高くなる傾向があった。歯科診療に対して不安が高い群と低い群の体動を比較すると、不安の高い群の方が手足における体動が多くなる。つまり、治療強度が高い場合、緊張、不安、恐怖といった精神的ストレスが高まり、体動が多くなる傾向があると考えられる。一方、治療強度が低いスケーリング・歯面清掃は、歯石除去やブラッシングといった高周波振動を伴う機械による処置の影響で体動が多くなったと考えられる。
図4に治療強度と診療時における交感神経の亢進割合の関係を示す。治療強度が高いと交感神経活動亢進率が高くなる傾向がみられる。治療強度が高い抜歯、切開、支台歯形成は身体的負担が大きいため、浸潤麻酔が用いられる。浸潤麻酔は歯科処置の中で最も疼痛や精神的ストレスを与えるため、治療強度が高いと交感神経系の活動が亢進すると考えられる。従って、疼痛やストレスのレベル(触覚感度)が高くなると、交感神経系の活動が亢進することが言える。
歯面清掃は患者をリラックスさせる効果がある。スケーリングは急性ストレスを与え、交感神経活動の亢進を引き起こすが、同時に体のバランスを保たせようと副交感神経活動を活性化させる。したがって、スケーリング・歯面清掃の交感神経活動の亢進率は1〜33%の広範囲に分布したものと考えられる。根管治療は比較的侵襲が少ないため、交感神経活動の亢進率が低くなったと考えられる。一方、補綴処置は治療強度は低いが、歯の切削や充填処置により不快を感じやすく、交感神経活動が亢進したものと推察される。これも痛みに近似した感覚として把握できる。
図5は、治療強度と体表脈波から算出した心拍変動波形の周波数スペクトルの傾き(ゆらぎ波形の傾き)の関係を自律神経系の状態別に区分けしたものである。図6は、スケーリング、歯磨き指導(治療強度1)を受けた被験者A(52歳男性)と抜歯(治療強度5)を受けた被験者B(59歳男性)の心拍変動波形の周波数スペクトルを示す。図中の太線はスペクトル(ゆらぎ波形)の回帰直線を示す。スペクトルの回帰直線の傾きは治療強度が高いと−1より小さくなり(絶対値が大きくなり)、治療強度が低いと−1より大きくなる(絶対値が小さくなる)傾向があった。すなわち、治療強度と回帰直線の傾きは1/fを境にして高い相関性が認められた(相関係数R=−0.59)。このことから、治療強度の低い痛みを感じるレベルが低い場合と、治療強度の高い痛みを感じるレベルの高い場合とを、この傾きによって判別できることがわかる。
なお、副交感優位状態とは診療時間の4割以上を副交感神経系の活性状態が占めている場合を示し、交感・副交感賦活状態は交感神経系の亢進と共に、副交感神経系も活性化している状態を示す。この区分けの中で、副交感優位状態のスペクトル(ゆらぎ波形)の回帰直線の傾きの平均値は−0.066±0.2となり、交感・副交感賦活状態では−0.88±0.26となった。t検定の結果、p=0.05と有意差は認められなかったものの、交感・副交感賦活状態の方がスペクトルの傾きは負の方向に大きくなる傾向がみられた。これは、副交感神経活動の抑制と共に心拍変動の1/fゆらぎの勾配は深くなるという知見と一致している。以上の結果から、心拍変動のゆらぎ特性を用いて、治療強度と自律神経活動状態との関係、すなわち、外部刺激に対する痛みや不快のレベルである触覚感度を推定できる可能性が示唆された。
図7(a)〜(e)は、周波数解析手段200において解析対象とする周波数帯域を異ならせて、治療強度と体表脈波から算出した心拍変動波形の周波数スペクトルの傾き(ゆらぎ波形の傾き)の関係を自律神経系の状態別に区分けして示したものである。この結果から、解析対象の周波数帯域を0.01〜0.2Hz(図7(b))に設定することが、最も相関性が高いことがわかる。
1 生体信号測定装置
11 コアパッド
12 スペーサパッド
13 センサ
100 生体状態推定装置
200 周波数解析手段
300 回帰直線解析手段
400 触覚感度推定手段
510 相関データ記憶部
520 基準データ記憶部

Claims (11)

  1. 人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる心臓・血管系の音・振動情報からなる生体信号を用いて、生体状態を推定する生体状態推定装置であって、
    前記生体信号の時系列データを周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力する周波数解析手段と、
    前記ゆらぎ波形について回帰直線を求めると共に、前記回帰直線の傾きを求める回帰直線解析手段と、
    前記回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を前記生体状態として推定する触覚感度推定手段と
    を有することを特徴とする生体状態推定装置。
  2. 予め測定した前記回帰直線の傾きと前記触覚感度との相関データを記憶する相関データ記憶部を備えており、
    前記触覚感度推定手段が、前記相関データ記憶部にアクセスして、前記回帰直線解析手段により得られた解析対象の前記回帰直線の傾きを照合し、前記触覚感度を推定する請求項1記載の生体状態推定装置。
  3. 前記触覚感度推定手段は、前記外的刺激が付与される前の通常状態の前記回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部に記憶させておき、前記回帰直線解析手段により得られた解析対象の前記回帰直線の傾きを前記基準データと比較して、前記触覚感度を推定する請求項1記載の生体状態推定装置。
  4. 前記生体信号測定装置が、診療用椅子の背もたれに設けられており、
    前記周波数解析手段が、前記診療用椅子に着座している患者の背部から得られる前記生体信号について周波数解析し、
    前記触覚感度推定手段により推定された前記患者の触覚感度を出力する表示モニタをさらに備える請求項1〜3のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
  5. 人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる心臓・血管系の音・振動情報からなる生体信号を用いて、生体状態を推定する生体状態推定方法であって、
    前記生体信号の時系列データを周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力し、
    前記ゆらぎ波形について回帰直線を求めると共に、前記回帰直線の傾きを求め、
    前記回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を前記生体状態として推定する
    ことを特徴とする生体状態推定方法。
  6. 予め測定した前記回帰直線の傾きと前記触覚感度との相関データを記憶する相関データ記憶部にアクセスし、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記相関データに照合し、前記触覚感度を推定する請求項5記載の生体状態推定方法。
  7. 前記外的刺激が付与される前の通常状態の前記回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部に記憶させておき、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記基準データと比較して、前記触覚感度を推定する請求項5記載の生体状態推定方法。
  8. 生体状態推定装置としてのコンピュータに、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる心臓・血管系の音・振動情報からなる生体信号を分析させ、生体状態を推定する手順を実行させるコンピュータプログラムであって、
    前記生体信号の時系列データを周波数解析し、0.01〜0.2Hzの対数パワースペクトル密度と対数周波数との関係を示すゆらぎ波形を出力する手順と、
    前記ゆらぎ波形について回帰直線を求めると共に、前記回帰直線の傾きを求める手順と、
    前記回帰直線の傾きにより、外的刺激に対する触覚感度を前記生体状態として推定する手順と
    を実行させるコンピュータプログラム。
  9. 前記触覚感度を推定する手順では、予め測定した前記回帰直線の傾きと前記触覚感度との相関データを記憶する相関データ記憶部にアクセスし、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記相関データに照合して前記触覚感度を推定する請求項8記載のコンピュータプログラム。
  10. 前記触覚感度を推定する手順では、前記外的刺激が付与される前の通常状態の前記回帰直線の傾きを基準データとして基準データ記憶部に記憶させておき、解析対象の前記回帰直線の傾きを前記基準データと比較して、前記触覚感度を推定する請求項8記載のコンピュータプログラム。
  11. 生体状態推定装置としてのコンピュータに、人の背部に当接される生体信号測定装置から得られる心臓・血管系の音・振動情報からなる生体信号を分析させ、生体状態を推定する手順を実行させる請求項8〜10のいずれか1に記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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