JP6838176B2 - 鉄道車両の異常検出装置および方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両の異常検出装置および方法に関する。
鉄道事業者において、メンテナンス性向上の需要が高まっており、CBM(Condition Based Maintenance)を実現する技術が求められている。その一つとして、近年、鉄道車両において、車両の運用・保守コスト削減やリスク管理のために、例えば、運用中におけるシステムやサービスの停止している時間であるダウンタイム(down time)削減や保守コスト削減などを目的として、車両の振動快適性の異常の予兆、例えば、車両(車体)の振動を早期に検知し、その異常要因を診断、判定できる異常検出装置やモニタリングシステムが必要とされている。
異常検出方法および装置として、従来、例えば、特開2004−170080号公報(特許文献1)に記載された技術がある。
特開2004−170080号公報
特許文献1には、「車両の振動を検出し、検出した振動に基づいて車両及び該車両の軌道の異常を検出する車両の異常検出方法であって、車両の台車及び輪軸の振動を検出し、検出した台車の振動値と検出した輪軸の振動値とに基づいて、振動の原因が台車にあるか又は軌道にあるかを特定することを特徴とする車両の異常検出方法」との記載がある。つまり、車両の振動を検出し、検出した振動に基づき、鉄道車両および軌道の異常を検出する車両の異常検出方法が示されている。
即ち、特許文献1に記載の方法は、鉄道車両の台車および輪軸の両方の加速度を検出し、検出した台車の加速度と検出した輪軸の加速度をフィルタリングし、ノイズ処理後の加速度が、所定の閾値を超過しているか否かで振動の原因が台車にあるか、または軌道にあるかを特定するものである。
しかし、特許文献1に記載の方法では、異常要因が台車にあるか、または軌道にあるかを明確に区別できるときを対象としており、車両側の異常要因と軌道側の異常要因が複合して異常振動が起きる場合については、特に考慮されておらず、その異常要因を誤検出する可能性があった。
メンテナンス性向上には、異常予兆を検知したあと、短時間に異常要因を推定する必要がある。
その異常予兆を検知、推定するため、従来にあっては、異常が想定される個々の装置に対して専用のセンサが必要となるため、高コストとなる課題があった。
そこで、本発明では、車両の異常振動の発生時に、その振動が車両側の異常要因または軌道側の異常要因で生じている場合に加え、その両者の複合した異常要因で生じている場合をも検知、推定することができ、また、少ないセンサで、かつ短時間に異常要因を推定できる鉄道車両の異常検出技術を提供することを目的とする。
上記の目的を解決するために、代表的な本発明の鉄道車両の異常検出装置および方法の一つは、車両の振動データおよび運行データを取得し、当該取得した振動データおよび運行データを用いて、データ分析(例えば、相関分析)して異常要因要素を導出し、当該異常要因要素に基づき鉄道車両の異常振動要因を推定、または特定する機能を有する装置を備える。
例えば、軌道上を走行する鉄道車両の異常を検出する異常検出装置において、
前記鉄道車両の車両振動要因を推定する車両振動要因推定装置を備え、
前記車両振動要因推定装置は、
前記鉄道車両の振動データを検出するデータ検出部を含む振動データ検出装置および前記鉄道車両の運行データを検出するデータ検出部を含む運行データ検出装置にて検出した前記振動データおよび前記運行データを取得して分析し、前記鉄道車両の振動の異常要因要素を導出するデータ分析部と、
前記データ分析部により導出した振動の異常要因要素を、前記振動データと前記運行データに基づき推定する異常要因要素推定部と、
前記異常要因要素推定部により推定した異常要因要素に基づいて前記鉄道車両における振動の異常要因を推定する異常要因推定部を備えた
ことを特徴とする。
本発明によれば、鉄道車両の異常要因が車両側、もしくは軌道側にある場合のみならず、車両側の異常要因と軌道側の異常要因が複合した場合においても、少ないセンサで、かつ短時間にその異常要因を推定できる。
例えば、振動データおよび運行データを分析して異常要因要素を導出することにより、異常要因要素を絞り込むことができ、パラメータサーベイのケース数を減らし、短時間化を可能とする。また、導出した異常要因要素の特性の現状値を同定し、その現状値と正常値との比較結果に基づき、異常要因を決定する。この異常要因を決定するに際して、力学モデル、例えば、車両力学モデル(車両モデル)や軌道力学モデル(軌道モデル)などを用いることにより、測定していない物理量を推定可能とするものである。
図1は、本発明の実施例1を示す鉄道車両の異常検出装置のシステム構成図である。 図2は、実施例1の別形態を示す鉄道車両の異常検出装置のシステム構成図である。 図3は、実施例1のさらに別形態を示す鉄道車両の異常検出装置のシステム構成図である。 図4は、実施例1の鉄道車両の異常検出装置において、車両側の異常要因によって、編成車両Xの号車bに異常振動が生じた場合における車体左右振動加速度の時刻歴波形を示した図である。 図5は、実施例1の鉄道車両の異常検出装置において、データ分析部における処理手順を説明するフローチャートである。 図6は、実施例1の鉄道車両の異常検出装置において、パラメータ推定部における処理手順を示すフローチャートである。 図7は、実施例1のパラメータ推定部において、車体左右加速度PSDの実測値と、パラメータ推定前と推定後の車体左右加速度PSDの解析値を比較した結果を示した図である。 図8は、実施例1の鉄道車両の異常検出装置において、異常要因推定部における処理手順を示すフローチャートである。 図9は、実施例1の異常要因推定部において、異常要因推定結果を示した図である。 図10は、実施例1の鉄道車両の異常検出装置において、軌道側の異常要因によって、編成車両Xの各号車にて、異常振動が生じた場合における車体左右振動加速度の時刻歴波形を示した図である。 図11は、実施例1の異常要因推定部において、異常要因推定結果を示した図である。 図12は、本発明の実施例2を示す鉄道車両の異常検出装置のシステム構成図である。 図13は、実施例2の鉄道車両の異常検出装置において、車両側の異常要因と軌道側の異常要因が複合して、編成車両Bにて、異常振動が生じた場合における車体左右振動加速度の時刻歴波形を示した図である。 図14は、実施例2の異常要因推定部において、異常要因推定結果を示した図である。 図15は、本発明の実施例3を示す鉄道車両の異常検出装置のシステム構成図である。 図16は、実施例3の鉄道車両の異常検出装置について、パラメータ推定部における処理フロー図である。
以下、本発明の鉄道車両の異常検出装置について図面を参照して説明する。
はじめに、鉄道車両の異常検出装置の構成について図1〜図3を参照して説明する。
図1は、鉄道車両の異常検出装置のシステム構成を示す機能ブロック図、図2および図3は、その改良例を示す異常検出装置のブロック図である。
軌道(レール)20上を走行する鉄道車両は、車体1、台車16で構成されている。
車体1は、空気ばね8を介して台車16に搭載されている。車体1の床面上には、例えば、車体1の左右振動加速度を計測する車体加速度計(図示せず)を含む振動データ検出部60が設置されている。
車体加速度計は、車体加速度計の電圧を検出するものであって、車体加速度計の電圧は、振動データ検出部60によって、例えば、車体左右振動加速度信号を振動データとして検出される。
振動データ検出部60は、鉄道車両の振動を示す振動データを検出する振動データ検出部を含む振動データ検出手段61を備えている。
なお、振動データ検出手段61については、後述するが、加速度センサやジャイロセンサなどの振動データを取得できる手段であればなんでも良い。
また、振動データ検出手段61は、車体1に設置しているが、車体1のみでなく、台車枠11や軸箱体12などへ設置も可能である。本実施例では車体1に設置したものとして説明する。
振動データ検出手段61の振動取得方向は、鉄道車両の進行方向に対する前後、左右、および鉛直方向に対して、並進(前後並進・左右並進・上下並進)方向および回転(ロール・ピッチ・ヨー)方向のいずれにおいても適用可能である。本実施例では左右並進方向として説明する。
また、振動データ検出手段61は、1つの車両に対して複数台設置しても良いが、本実施例では1台として説明する。また、振動データ検出手段61の設置位置は、車体1の中央位置でも良いし、台車位置や車両機器室位置などの車体1の端部でも良い。
また、車体1は、例えば、運行データを管理する運行管理システムから運行データを検出する機能を有する運行データ検出部50を備えている。
運行データ検出部50は、例えば、走行速度、走行位置や乗車率などの運行データを検出する運行データ検出部を含む運行データ検出手段51を備えている。
なお、図1では、1つの車両のみに振動データ検出手段61と運行データ検出手段51を備えた例を示しているが、例えば、図2に示すように、1編成車両中の複数号車に備えても良いし、図3に示すように、複数編成車両の複数号車に備えても良い。
また、図1、図2および図3では、データ分析部100、パラメータ推定部120および異常要因推定部150をそれぞれ1つとしているが、各号車または各編成車両に1つずつ備えても良い。
台車16は、台車枠11、空気ばね8、ヨーダンパ4、軸箱体12、輪軸13、軸ばね装置14、輪軸13の軸受けハウジングとなる軸箱の軸箱支持ゴム15、などで構成されている。
輪軸13は、軸箱体12に対して回転可能に保持され、軸箱体12と台車枠11の間は、軸ばね装置14で鉛直方向に弾性支持されており、軸箱支持ゴム15で水平方向に弾性支持されている。車体1と台車枠11との間には、空気ばね8が配置されており、この空気ばね8により、車体1が台車枠11に弾性支持されている。
異常検出装置は、データ分析部100、パラメータ推定部120、異常要因推定部150、など有し、鉄道車両の異常振動の要因を推定する車両振動要因推定装置を構成する。
データ分析部100、パラメータ推定部120、異常要因推定部150は、例えば、内部に格納されたプログラムに従って後述する各処理を実行する演算装置から構成される。
データ分析部100は、振動データ検出手段61からの振動データおよび運行データ検出手段51からの運行データを取得し、鉄道車両が振動する異常要因要素(例えば、車輪形状、軸箱支持装置、ヨーダンパや通り狂い、軌間狂いなど)を分析、特定して出力する機能を有するものであり、主にデータ分析手段101で構成されている。
データ分析手段101は、振動データ検出手段61と運行データ検出手段51により検出された振動データと運行データが入力され、この振動データと運行データに基づき、異常振動の異常要因要素を導出するものであって、例えば、振動データ検出手段61にて検出した車体1の左右加速度の振動データをフィルタリングし、分析に有効なデータを抽出するフィルタリング機能、フィルタリングされた振動データ(左右加速度)および運行データを分析処理し、データの特徴量を抽出する分析機能、および抽出したデータの特徴量に基づく異常要因要素を導出する機能を有する装置である。
この異常要因要素とは、鉄道車両に異常な振動が発生した場合に、その異常の要因となっている可能性がある要素のことである。大別すると、車両側の異常要因要素と軌道側の異常要因要素の2つがある。
車両側の異常要因要素としては、例えば、鉄道車両に設置された軸箱支持装置の軸箱支持ゴム15やヨーダンパ4などの要素などがある。
軌道側の異常要因要素としては、輪軸13の車輪踏面などの車輪形状であり、例えば、軌道20の通り狂いや軌間狂いなどの軌道側の要素などがある。
通り狂い(alignment irregularity)とは、軌道側面の長さ方向の凹凸であり、軌間狂い(guage irregularity)とは、軌間(左右レール間隔)のひずみがない正常時の基本寸法(新幹線:1435mm、在来線:1067mm)に対するひずみが生じたときの狂い量(曲線部では、基本寸法にスラックを加えた量に対する狂い量)である。
なお、データ分析部100の具体的な処理フローについては後述する。
パラメータ推定部120は、データ分析部100のデータ分析手段101にて出力した異常要因要素から、当該異常要因要素と予め対応付けられた力学モデル(車両モデルや軌道モデル)および力学モデルのパラメータを選択し、当該選択した力学モデル、力学モデルのパラメータ、および振動データと運行データを受けて、前記鉄道車両の異常状態における前記力学モデルのパラメータを推定する機能を有する装置である。
パラメータ推定部120は、力学モデル選択手段121、力学モデルのパラメータ選択手段122およびパラメータ推定手段123により構成されている。
パラメータ推定部120の力学モデル選択手段121および力学モデルのパラメータ選択手段122は、それぞれデータ分析部100のデータ分析手段101により導出された異常要因要素を受け、例えば、データベース(図示せず)に記憶された異常要因要素と予め対応付けられた力学モデルと、力学モデルのパラメータを選択する。
この力学モデルとは、鉄道車両の振動特性を予測するためのモデル(車両モデルや軌道モデル)である。その一例としては、軌道20の通り狂いや軌間狂いといった軌道不整を模擬した仮想軌道上を、車体1、台車16や輪軸13を剛体で、軸箱支持ゴム15やヨーダンパ4などをばねやダンパで模して、各剛体をばねやダンパで接続した仮想車両が走行した場合の、車体左右振動を予測する車両左右系力学モデルや、車体上下振動を予測する車両上下系力学モデルなど、予測したい振動の種類などに応じて多様な力学モデルがある。
また、力学モデルのパラメータとは、この力学モデルに含まれる要因要素の特性値であり、車両側の車両モデルである軸箱支持ゴム15のばね定数、ヨーダンパ4の減衰係数、および軌道側の軌道モデルである輪軸13の車輪踏面勾配や、軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などにあたる。
パラメータ推定手段123は、力学モデル選択手段121からの力学モデル、力学モデルのパラメータ選択手段122からの力学モデルのパラメータが入力される。
また、この力学モデルと、力学モデルのパラメータに加えて、振動データ検出手段61と運行データ検出手段51で検出した振動データおよび運行データが入力される。
そして、振動データおよび運行データに基づき、異常状態での力学モデルのパラメータの推定値を導出する。
なお、パラメータ推定部120の具体的な処理フローについては後述する。
異常要因推定部150は、パラメータ推定部120にて推定した異常状態での力学モデルのパラメータと正常状態での力学モデルのパラメータを比較し、その比較結果に基づき、鉄道車両の振動の異常要因を推定する機能を有する装置である。
異常要因推定部150は、正常値記憶手段151、正常値比較手段152および異常要因推定手段153により構成されている。
正常値記憶手段151は、例えば、軸箱支持ゴム15のばね定数、ヨーダンパ4の減衰係数、および輪軸13の車輪踏面勾配や、軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などのパラメータ正常値を記憶する記憶部を含む装置である。
正常値比較手段152は、パラメータ推定部120のパラメータ推定手段123により導出された力学モデルのパラメータの推定値および正常値記憶手段151のパラメータ正常値が入力される。
異常要因推定部150の正常値比較手段152は、異常状態でのパラメータの推定値と、正常値記憶手段151に記憶されている正常状態でのパラメータの正常値に基づき、パラメータの推定値と正常値の比率を算出(正常値比較)する。この算出した比率に基づき、異常要因推定手段153により、異常要因、つまり、鉄道車両に振動データが発生したとき、軌道および車両の正常、異常、を推定する。
なお、異常要因推定部150の具体的な処理フローについては後述する。
判定結果出力手段200は、異常要因推定部150の異常要因推定手段153にて推定導出した異常要因の推定結果を、車体1の運転者および地上の運行管理者やメンテナンス員などに通知する機能を有する装置である。
図2および図3は、実施例1の改良例であって、図2は、一つの車体(号車a)に運行データ検出手段51を設置し、その他の車体(号車b、c)にそれぞれ1つの振動データ検出手段61を設置した例である。また、図3は、編成車両X、Y、Zのそれぞれの一つの車体(号車a)に1つの運行データ検出手段51と1つの振動データ検出手段61を設置し、その他の車体(号車b、c)にそれぞれ1つの振動データ検出手段61を設置した例である。
図2において、1つの編成車両の各号車a、b、cに設置された振動データ検出手段61および号車aに設置された運行データ検出手段51の各データは、データ分析部100のデータ分析手段101に供給される。また、図3において、複数の編成車両X、Y、Zの各号車に設置された振動データ検出手段61および各編成車両の1つの号車に設置された運行データ検出手段51の各データは、データ分析部100のデータ分析手段101に供給される。
図2および図3において、図1と同一部分には同一符号を付して、その説明は省略する。
次に、図4〜図9を用いて、本実施例の鉄道車両の異常検出装置における、データ分析、パラメータ推定、異常要因推定の各具体的な処理フローについて説明する。
図4は、編成車両Xの号車bにおいて、ヨーダンパ4(図1参照)の油漏れによるヨーダンパ4の減衰係数の低下を要因(車両力学モデル)として、鉄道車両に異常な振動が発生した場合(図4(B)参照))を模式的に示した図である。
なお、本実施例では振動データ検出手段61として、台車位置に設置した左右並進方向の加速度センサ62(以下、左右加速度センサ)を用いた場合として説明する。
図4において、横軸に距離[m]、縦軸に車体左右加速度[m/s]を示し、図4(A)は、号車aに設置した左右加速度センサ62により測定した車体左右加速度[m/s]の波形特性621を示す特性図、図4(B)は、号車bに設置した左右加速度センサ62により測定した車体左右加速度[m/s]の波形特性622を示す特性図、図4(C)は、号車cに設置した左右加速度センサ62により測定した車体左右加速度[m/s]の波形特性623を示す特性図である。
同図から、号車bが号車a、cに比べ、車体左右加速度の波形特性622の振幅が左右に大きく振動しており、車体1(号車b)に異常振動が発生している様子が分かる。
図5は、実施例1の鉄道車両の異常検出装置におけるデータ分析部の処理手順を説明するフローチャートである。
図5のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。本フローチャートでステップをSで表示する。
まず、S1において、左右加速度センサ62から、車体左右加速度を取得し、運行データ検出手段51から走行位置、走行速度や乗車率などの運行データを取得する。
S2からS5は、データ分析手段101における処理である。
次に、S2では、S1で取得した車体左右加速度[m/s]の中から異常振動を示す波形特性622(図4(B)参照)を周知のフィルタリング技術を用いてフィルタリングし、異常要因推定のために有効なデータの抽出を行う。
ここでは、車体左右加速度から、人間が感じ取りやすい周波数帯のみを抽出する処理や、特に振動が大きい走行区間のデータのみを抽出する処理など、S3で行う分析処理のための前処理が含まれる。
S3では、S1、S2で抽出した振動データおよび運行データの分析処理を行い、データの特徴量(要因要素の特性値)を抽出する。
ここでは、例えば、振動データの周波数分析により、特に振動が大きい周波数帯を抽出する処理や、振動データと運行データの統計分析を行い、振動波形と走行位置との依存性を抽出する処理などを行う。
また、図2や図3の実施形態のように、複数号車または複数編成車両に複数の振動データ検出手段61と運行データ検出手段51を備えている場合にあっては、号車間または編成車両間での振動波形の差異を抽出する処理などを行う。
なお、振動データ検出手段61では複数号車または複数編成車両などから多量のデータを検出し、運行データ検出手段51では走行速度、走行位置や乗車率だけでなく、車両の併結状態などの多種のデータを検出することで、より多種多様で高精度なデータの特徴量を得ることができる。また、データの特徴量の抽出方法としては、周知の統計分析技術などを用いても良いし、人工知能技術などを用いたビッグデータ分析でも良い。
本実施例の場合は、編成車両Xのうち号車bでのみに生じた異常な振動に対して、「号車差あり」が特徴量として抽出されたとする。
S4では、S3で抽出したデータの特徴量に基づき、異常要因要素の導出を行う。
本実施例の場合は、データの特徴量が「号車差あり」であることから、異常要因は軌道側でなく、車両側であると判断する。
この結果、車両側の要素から、軸箱支持ゴム15、ヨーダンパ4および輪軸13の車輪踏面などが異常要因要素として導出されたとする。そして、これらの異常要因要素を、S5において、パラメータ推定部120へ出力する。
次に、パラメータ推定部120の処理フローについて、図6を用いて説明する。図6のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
まず、S11において、データ分析部100のデータ分析手段101から異常要因要素として挙げられた軸箱支持ゴム15、ヨーダンパ4および輪軸13の車輪踏面などの情報を取得する。
S12では、S11で取得した異常要因要素に基づき、力学モデル選択手段121により、異常要因要素と予め対応付けられた力学モデルを選択する。
本実施例では、車体左右加速度を対象としているため、車両左右系力学モデルを選択したとする。
S13では、力学モデルのパラメータ選択手段122により、車両左右系力学モデルのパラメータの中から、異常要因要素に関連するパラメータを選択する。
本実施例では、異常要因要素が車両側の要素であるため、軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数、輪軸13の車輪踏面勾配などが選択されたとする。
通常、車両左右系力学モデルには、多量のパラメータが含まれるが、上述したように異常要因要素により、推定すべきパラメータを予め絞り込むことで、パラメータサーベイのケース数を減らし、異常要因推定を短時間化することができる。
S14からS19は、パラメータ推定手段123における処理である。
S14では、S13で選択したパラメータの初期値(初期推定値)を設定する。
本実施例では、軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数、輪軸13の車輪踏面勾配などの初期値を設定する。パラメータの初期値は、パラメータの正常値でも良いし、ランダムに生成した値でも良い。
S15では、S14の力学モデルと設定したパラメータの初期値に基づき、振動解析(車両運動解析)を実施し、設定したパラメータにおける車体左右加速度を算出する。
なお、振動解析を実施するにあたり、車両左右系力学モデルにおける軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などの仮想軌道のデータが必要となる。
本実施例では、軌道20については正常状態と判断するため、この仮想軌道のデータには、正常値記憶手段151における、例えば、予め用意した管理基準値や検測車両で測定した実測値などの正常値を用いる。
S16では、S15の解析で得られた車体左右加速度の解析値と実測値(正常値)を比較し、その誤差を算出する。例えば、解析値612と実測値611とが一致した場合、そのパラメータで異常要因要素を推定(特定)することが可能となる。
誤差の評価指標としては、誤差を評価(誤差比較)できるものであれば制約はないが、本実施例では、図7に示すように車体左右加速度PSD(Power Spectrum Density)の周波数ごとの実測値711と解析値712の差分を積算した値(以下、積算差分値)とする。
S17では、S16で算出した車体左右加速度PSDの積算差分値が、予め設定した閾値を越えていた場合、推定精度が不十分とみなし推定を継続し、閾値以下となった場合もしくは予め設定した更新回数を超過した場合には、推定を終了する。
推定が継続される場合、S18において、パラメータの更新を行う。パラメータの更新方法について制約はないが、例えば、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用いて、車体左右加速度PSDの積算差分値が最小となるように、繰り返しパラメータの更新を行う方法などがある。
本実施例では、軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数、輪軸13の車輪踏面勾配などのパラメータの更新を行い、図7に示すように、算出した車体左右加速度PSDの実測値711と解析値712が一致(図7(B)参照)するようなパラメータの推定値を得る。
図7は、横軸に周波数[Hz]、縦軸に車体左右加速度PSD[(m/s2)2/Hz]を示し、図7(A)は、推定前における実線で示す実測値711と点線で示す解析値712を示す特性図、図7(B)は、推定後における実測値711と解析値712を示す特性図である。
同図において、推定前では、異常振動が発生した一部の周波数帯において、実測値と解析値に大きな差が見られるが、推定後では、それらには差がほとんど見ることができない。
推定が終了される場合、S19において、このパラメータの推定値を、異常要因推定部150へ出力する。
以上のように、力学モデルを用いることで、直接センサで測定していない軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数、輪軸13の車輪踏面勾配などの物理量を推定、つまり、物理量を測定するセンサを必要とすることがないことから、少センサ化できるといった特徴がある。
なお、本実施例では、左右加速度センサ62を車体1に1台設置したものとしたが、車体1、台車16および軸箱体12などに複数設置されている場合は、それらから検出される複数の左右加速度の実測値と、解析値が一致するように、パラメータを更新することで、パラメータの推定を高精度化することができる。
次に、異常要因推定部150の処理フローについて、図8を用いて説明する。図8のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
まず、S21において、パラメータ推定部120からパラメータの推定値を取得する。
本実施例では、異常要因要素、つまり、異常状態における軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数、輪軸13の車輪踏面勾配の推定値を取得する。
次に、S22において、これらのパラメータの正常値を、異常要因推定部150における正常値記憶手段151から取得する。
正常値については、軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数については設計値や要素試験値、輪軸13の車輪踏面勾配については新製状態での値や保守時の管理値などが用いられる。
S23では、正常値比較手段152により、各パラメータの推定値と正常値の比率を計算する。
そして、S24において、異常要因推定手段153により、この比率と、予め設定した閾値を比較し、判定する。この比較判定は、所定回数繰り返す。
この比率が閾値以下のパラメータは、正常状態と近いといえるため正常状態と判定し、閾値を超過したパラメータは異常状態と判定される。そして、異常状態と判定されたパラメータを異常要因とし、判定結果出力手段200に出力する。
図9は、S24におけるパラメータの正常および異常の判定を模式的に示すものであり、横軸における軸箱支持ゴム15のばね剛性、ヨーダンパ4の減衰係数、車輪踏面勾配などの異常要因要素と縦軸におけるパラメータの推定値と正常値の比率、および閾値との関係を示した模式図である。
本実施例では、図示すように、推定値と正常値の比率が閾値91を超過しているヨーダンパ4の減衰係数が異常状態と判定される。そして、ヨーダンパ4の減衰係数の低下が異常要因として、判定結果出力手段200に出力される。判定結果出力手段200は、この異常要因の推定結果を、車上の運転者および地上の運行管理者やメンテナンス員などに周知の通信技術を用いて通知する。
以上のように、本実施例の鉄道車両の異常検出装置では、ヨーダンパ4の減衰係数の低下のような、車両側の異常要因を推定することができる。
次に、本実施例の鉄道車両の異常検出装置における、異常要因推定の別例として、軌道側の異常要因によって異常な振動が生じた場合を図10、図11を参照して説明する。
図10は、軌道20の一部において、軌間狂い量が管理基準値よりも増大したことを要因として、異常な振動が発生した場合を模式的に示した図である。基本的な処理フローは、図1から図9で述べた説明と同じであるため、異なる点のみを説明する。
まず、データ分析部100は、左右加速度センサ62から車体左右加速度を取得し、運行データ検出手段51から走行位置、走行速度や乗車率などの運行データを取得する。
データ分析部100では、上述したように取得した車体左右加速度および運行データからデータの特徴量を抽出する。
本実施例では、図10(A)、(B)、(C)に示すように、一部の区間620でのみ、全ての号車で生じた異常な車体左右振動(異常振動)に対して、「区間差あり」が特徴量として抽出されたとする。
データの特徴量が「区間差あり」であることから、異常要因は、車両側でなく、軌道側であると判断する。この結果、軌道側の要素から、軌道20の通り狂いや軌間狂いなどが異常要因要素として導出されたとする。
次に、パラメータ推定部120では、導出した異常要因要素から、力学モデルの選択と、力学モデルのパラメータの選択を行い、異常状態でのパラメータの推定を行う。
本実施例では、前述した図4の例と同様に、車体左右加速度を対象としているため、車両左右系力学モデルを選択したとする。さらに、車両左右系力学モデルのパラメータの中から、異常要因要素が軌道側の要素であるため、軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などが選択される。
次に、これらのパラメータの初期値を設定し、振動解析を実施し、設定したパラメータにおける車体左右加速度を算出する。
なお、振動解析を実施するにあたり、車両左右系力学モデルにおける軸箱支持ゴム15のばね定数やヨーダンパ4の減衰係数などの仮想車両のデータが必要となる。
本実施例では、車両については正常状態と判断するため、この仮想車両のデータには、例えば、設計値などの正常値を用いる。
そして、車体左右加速度の解析値と実測値の誤差が一致するような、軌道20の通り狂い量と軌間狂い量の推定値を得る。
次いで、異常要因推定部150では、各パラメータの推定値と正常値の比率を算出し、図11に示すように、予め設定した閾値111と比較する。
図11は、横軸における通り狂い量、軌間狂い量と縦軸におけるパラメータの推定値と正常値の比率および閾値との関係を示す模式図である。
パラメータの推定値と正常値の比率が閾値111を超過している軌間狂い量は、異常状態と判定され、軌道20の軌間狂い量の増大を異常要因として判定結果出力手段200に出力する。
判定結果出力手段200では、この異常要因の推定結果を、車上の運転者および地上の運行管理者やメンテナンス員などに通知する。
以上のように、本実施例の鉄道車両の異常検出装置により、軌道20の軌間狂い量の増大のような、軌道側の異常要因についても推定することができる。
つまり、本実施例の鉄道車両の異常検出装置では、異常な振動が発生した場合に、異常要因が車両側もしくは軌道側のどの要素にあるかを判定できる。
さらに、本実施例の鉄道車両の異常検出装置では、データ分析部100で予め異常要因要素を絞り込み、この絞り込んだ異常要因要素に対して、パラメータ推定部120で、異常要因要素と予め対応付けられた力学モデルと力学モデルのパラメータを選択した上で、そのパラメータを推定する。
これにより、パラメータサーベイのケース数を減らし、異常要因推定を短時間化することができる。
また、力学モデルを用いることで、直接センサで測定していない軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数、輪軸13の車輪踏面勾配のような車両側のパラメータや、軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などの軌道側のパラメータを推定することができ、少センサ化できるという特徴がある。
なお、本実施例では、振動データ検出手段61が車体1に備えられた例であるため、車両左右系力学モデルを用いたが、振動データ検出手段61が台車に備えられた場合においては、台車左右系力学モデルなどの車両要素の力学モデルを用いても良い。
図12は、本発明の他の鉄道車両の異常検出装置のシステム構成を示す図である。
本実施例は、異常検出装置の処理として、実施例1の車両側の異常要因(車両力学モデル)に加えて、軌道側の異常要因(軌道力学モデル)が複合することで異常な振動が発生した場合、つまり、異常要因要素が、軌道側および車両側の両者にあった場合における例である。
まず、異常検出装置の構成について説明する。
本実施例では、パラメータ推定部120として、パラメータ推定部120aとパラメータ推定部120bのようにパラメータ推定部を複数備え、パラメータ推定部120aにて、異常要因要素および振動データ、運行データを元に力学モデルAのパラメータを推定し、パラメータ推定部120bにて、力学モデルAのパラメータ推定値および振動データ、運行データを元に力学モデルBのパラメータを推定し、異常要因推定部150にて、力学モデルAおよびBのパラメータ推定値とパラメータ正常値とを元に推定値と正常値の差分値を求め、異常要因を特定するものである。
パラメータ推定部120aは、力学モデルA選択手段121a、力学モデルAのパラメータ選択手段122a、とパラメータ推定手段123a、を備え、パラメータ推定部120bは、力学モデルB選択手段121b、力学モデルBのパラメータ選択手段122b、とパラメータ推定手段123b、を備えている。
図13は、図13(B)に示すように編成車両Bにおいて、ヨーダンパ4の油漏れによるヨーダンパ4の減衰係数の低下が生じたことに加えて、軌道20の一部(編成車両Bの車体左右加速度の区間620’)において、軌間狂い量が管理基準値よりも増大したことを要因として、異常な振動が発生した場合を模式的に示した図である。
次に、本実施例の鉄道車両の異常検出装置における、異常要因推定の具体的な処理について説明するが、実施例1で説明した部材と同様の部材には、同一の符号を付し、その詳細な説明については省略し、実施例1から変更がある部分の動作のみを、以下説明する。
まず、データ分析部100は、振動データ検出手段61(例えば、左右加速度センサ62)と運行データ検出手段51から、車体左右加速度および、走行位置、走行速度や乗車率などの運行データを取得する。
データ分析部100では、取得した車体左右加速度および運行データからデータの特徴量を抽出する。
本実施例では、図13(B)に示すように、編成車両Bでのみ生じた異常な車体左右振動に対して、「編成差あり」が特徴量として抽出されたとする。さらに、軌道20の一部の区間でのみ生じた異常な車体左右振動に対して、「区間差あり」が特徴量として抽出されたとする。
データの特徴量が「編成差あり」であることから、異常要因は車両側であると判断する。
この結果、車両側の要素から、軸箱支持ゴム15、ヨーダンパ4および輪軸13の車輪踏面などが異常要因要素として導出されたとする。さらに、「区間差あり」が特徴量であることから、軌道側の要素から、軌道20の通り狂いや軌間狂いなどが異常要因要素として導出されたとする。
以上より、異常な振動が、車両側の異常要因と軌道側の異常要因の両者が複合して生じたと判断する。
次に、パラメータ推定部120aでは、データ分析部100にて導出した異常要因要素から、力学モデルA選択手段121aによる力学モデルAのパラメータ選択と、パラメータ選択手段122aによる力学モデルAのパラメータの選択を行い、さらに、振動データおよび運行データに基づいて、パラメータ推定手段123aによる異常状態でのパラメータの推定を行う。
また、パラメータ推定部120bでは、パラメータ推定部120aにて推定した力学モデルAのパラメータ推定値から、力学モデルB選択手段121bによる力学モデルBのパラメータ選択と、パラメータ選択手段122bによる力学モデルBのパラメータの選択を行い、さらに、振動データおよび運行データに基づいて、パラメータ推定手段123bによる異常状態でのパラメータの推定を行う。
異常要因推定部150は、パラメータ推定部120bにて推定した力学モデルAのパラメータ推定値およびパラメータ正常値を元に正常値比較手段152にて推定値と正常値の差分値を求め、異常要因推定手段153にて異常要因を推定する。
本実施例では、車両側と軌道側の両者に異常要因要素があるが、これらを同時に推定する場合、車両側および軌道側の両者の推定になること、および多量のパラメータの推定となることなどが原因で、パラメータの推定精度が低下する可能性がある。
そこで、本実施例に係る鉄道車両の異常検出装置では、車両側と軌道側の異常要因要素を切り分けて推定を行うことを特徴とする。
まず、車両側の異常要因要素について推定を行うパラメータ推定部120aについて説明する。
本実施例では、まず、実施例1と同様に、車体左右加速度を対象としているため、力学モデルA選択手段121aにおいて、車両左右系力学モデルを選択したとする。さらに、力学モデルAのパラメータ選択手段122aにおいて、車両左右系力学モデルのパラメータの中から、車両側の異常要因要素に基づき、軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数および輪軸13の車輪踏面勾配などが選択される。
次に、パラメータ推定部120aは、図6のS14からS19と同様の処理を実行する。
即ち、これらのパラメータの初期値を設定し、振動解析を実施し、設定したパラメータにおける車体左右加速度を算出して、車体左右加速度の解析値と実測値の誤差が一致するように、パラメータの更新を行う。
ここで、車体左右加速度の実測値には、異常な振動が発生している区間ではなく、異常な振動が発生していない別の区間で検出した車体左右加速度を用いることを特徴とする。
異常な振動が発生していない別の区間については、車両側のみ異常状態で、軌道側は正常状態の区間と判断できる。
そのため、振動解析を実施するにあたり、必要となる車両左右系力学モデルにおける軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などの仮想軌道のデータには、例えば、管理基準値や検測車両で測定した軌道の実測データなどの正常値を用いる。
このように車両側のみ異常状態で、軌道側は正常状態である区間の振動データを用いて推定を行うことで、車両側のパラメータを精度良く推定することができる。
本実施例では、最終的に、軸箱支持ゴム15のばね定数や、ヨーダンパ4の減衰係数および輪軸13の車輪踏面勾配の推定値が得られる。
次に、軌道側の異常要因要素について推定を行うパラメータ推定部120bについて説明する。
ここでは、前述と同様に、車体左右加速度を対象としているため、力学モデルB選択手段121bにおいて、前記車両左右系力学モデルを選択する。さらに、力学モデルBのパラメータB選択手段121bにおいて、車両左右系力学モデルのパラメータの中から、軌道側の異常要因要素に基づき、軌道20の通り狂い量や軌間狂い量などが選択される。
次に、パラメータ推定部120aは、図6のS14からS19と同様の処理を実行する。即ち、これらのパラメータの初期値を設定し、振動解析を実施し、設定したパラメータにおける車体左右加速度を算出して、車体左右加速度の解析値と実測値の誤差が一致するように、パラメータの更新を行う。
ここで、車体左右加速度の実測値には、異常な振動が発生している区間で検出した車体左右加速度を用いる。振動解析を実施するにあたり、車両左右系力学モデルにおける軸箱支持ゴム15のばね定数やヨーダンパ4の減衰係数などの仮想車両のデータが必要となるが、これらには先に推定した異常状態での車両側のパラメータの推定値を用いる。すでに、車両左右系力学モデルの車両側のパラメータについては推定が完了しているため、軌道側のパラメータを精度良く推定することができる。
本実施例では、最終的に、軌道20の通り狂い量や軌間狂い量の推定値が得られる。
そして、異常要因推定部150では、各パラメータの推定値と正常値の比率を計算し、図14に示すように、予め設定した閾値と比較する。
図14(A)は、横軸における軸箱支持ゴムばね定数、ヨーダンパ減衰係数、車輪踏面勾配におけるパラメータの推定値と正常値の比率および閾値との関係を示す図、図14(B)は、通り狂い量、軌間狂い量と縦軸におけるパラメータの推定値と正常値の比率および閾値との関係を示す図である。
パラメータの推定値と正常値車両側の要因のうち、閾値を超過したヨーダンパ4の減衰係数が異常状態と判定され、軌道側の要因のうち、閾値を超過した軌道20の軌間狂い量が異常状態と判定される。
その結果、異常要因として、ヨーダンパ4の減衰係数の低下と軌道20の軌間狂い量の増大が複合して生じたものと判定される。
以上のように、本実施例の鉄道車両の異常検出装置では、車両側の異常要因に加えて、軌道側の異常要因が複合することで異常な振動が発生した場合においても、異常要因が車両側および軌道側のどの要素にあるかを判定できるという特徴がある。
図15は、本発明の他の鉄道車両の異常検出装置のシステム構成を示す図である。
本実施例の異常検出装置は、実施例1の異常検出装置に対して、パラメータ推定部120において、パラメータの推定精度が不十分であった場合の処理として、異常要因要素判別手段161を含む異常要因要素判別部160を追加したものである。実施例1で説明した部材と同様の部材には、同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図16は、本実施例におけるパラメータ推定部120の処理手順を示すフローチャートである。実施例1と異なる点のみ、以下説明する。
本実施例では、実施例1と同様に、S15からS18において、車体左右加速度の実測値と解析値の誤差を算出し、この誤差が十分に小さくなるまでパラメータの更新を繰り返す。しかし、このS15からS18において、更新回数が予め設定した更新回数を超過しても、S17’において、車体左右加速度の実測値と解析値の誤差が、予め設定した閾値以下とならない場合は、推定精度が不十分と判断する。そして、その結果(推定不十分)を異常要因要素判別手段161に出力する。
異常要因要素判別手段161は、S30にて、データ分析部100ですでに得られている異常要因要素から異常要因が車両側にあるか、または軌道側にあるか、もしくは車両側と軌道側の両者にあるか、異常要因要素を判別し、その結果(軌道異常、車両異常)のみを出力する。
以上のように、本実施例の鉄道車両の異常検出装置では、パラメータ推定部120で、パラメータの推定精度が不十分であった場合においても、異常要因の判定を中断することなく、異常要因の判定結果を出力できる。
以上述べた実施例によれば、以下のような効果が期待できる。
(1)力学モデルを用いることで、直接測定しないパラメータを推定できるため、少センサ化できる。
(2)振動データと運行データの相関分析から、異常要因要素の絞込みを予め行うことで、パラメータサーベイのケース数を減らし、要因推定を短時間で行える。
(3)車両モデルだけでなく軌道モデルを活用することで、車両側の異常要因だけでなく、軌道側の異常要因も特定できる。
(4)車両側と軌道側の両方が要因となって、振動異常が発生した場合においても、異常要因を特定できる。
上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
さらに、各実施例の構成の一部について、その他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1 車体
4 ヨーダンパ
8 空気ばね
11 台車枠
12 軸箱体
13 輪軸
14 軸ばね装置
15 軸箱支持ゴム
16 台車
20 軌道
50 運行データ検出部
51 運行データ検出手段
60 振動データ検出部
61 振動データ検出手段
62 左右加速度センサ
100 データ分析部
101 データ分析手段
120、120a、120b パラメータ推定部
121 力学モデル選択手段
122 力学モデルのパラメータ選択手段
123 パラメータ推定手段
150 異常要因推定部
151 正常値記憶手段
152 正常値比較手段
153 異常要因推定手段
160 異常要因要素判別部
161 異常要因要素判別手段
200 判定結果出力手段

Claims (12)

  1. 軌道上を走行する鉄道車両の異常を検出する異常検出装置において、
    前記鉄道車両が振動する車両振動要因を推定する車両振動要因推定装置を備え、
    前記車両振動要因推定装置は、
    前記鉄道車両の振動を示す振動データを検出するデータ検出部を含む振動データ検出装置および前記鉄道車両の運行データを検出するデータ検出部を含む運行データ検出装置にて検出した前記振動データおよび前記運行データを取得して分析し、前記鉄道車両の振動の異常要因要素を導出するデータ分析部と、
    前記振動データと前記運行データに基づき前記データ分析部により導出した振動の異常要因要素を推定する異常要因要素推定部と、
    前記異常要因要素推定部により推定した異常要因要素に基づいて前記鉄道車両における振動の異常要因を推定する異常要因推定部を備えた
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  2. 請求項1に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    前記異常要因要素推定部は、車両側および軌道側の力学モデルのパラメータを推定するパラメータ推定部からなり、
    前記パラメータ推定部は、
    前記異常要因要素から、当該異常要因要素と予め対応付けられた力学モデルを選択する力学モデル選択手段と、
    前記力学モデルのパラメータを選択するパラメータ選択手段と、
    前記力学モデル、前記パラメータ、前記振動データ、前記運行データを受け、前記鉄道車両の異常状態におけるパラメータを推定するパラメータ推定手段を含み、
    前記異常要因推定部は、
    前記パラメータ推定部にて推定した異常状態でのパラメータの推定値と、正常状態でのパラメータの正常値を比較し、それらの比率を算出する正常値比較手段と、
    前記正常値比較手段の比較結果である比率に基づき、前記鉄道車両が異常振動する異常要因を推定する異常要因推定手段を含む、
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  3. 請求項2に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    前記パラメータ推定部は、第1、第2パラメータ推定部からなり、
    前記異常要因要素が車両側と軌道側の両者にある場合において、
    前記第1パラメータ推定部は、
    前記データ分析部からの異常要因要素および前記振動データ、前記運行データを元に、前記車両側の異常要因に基づく異常状態におけるパラメータを推定し、
    前記第2パラメータ推定部は、
    前記第1パラメータ推定部にて推定したパラメーおよび前記振動データ、前記運行データを元に、前記軌道側の異常要因に基づく異常状態におけるパラメータを推定し、
    前記異常要因推定部は、
    前記第1パラメータ推定部および前記第2パラメータ推定部により推定した異常状態でのパラメータの推定値と正常状態でのパラメータの正常値とに基づいて異常要因を推定する
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  4. 請求項2または3に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    さらに、異常要因要素判別部を備え、
    前記異常要因要素判別部は、
    前記パラメータ推定部において、前記パラメータの推定値の推定精度を判定し、当該推定精度が予め設定した閾値以下の場合は、推定精度が不十分と判断し、前記異常要因が前記車両側にあるか、または前記軌道側にあるか、もしくは前記車両側と前記軌道側の両者にあるか、のみを出力する
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    前記振動データ検出装置が、前記鉄道車両の車体、台車枠、あるいは軸箱体の振動を検出する振動データ検出部を含むことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  6. 請求項2〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    前記振動データ検出装置と前記運行データ検出装置を、1編成車両の複数号車、または複数編成車両に備えたことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  7. 請求項2〜6のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    前記力学モデルが、車両左右系力学モデルあるいは車両上下系力学モデルであることを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  8. 請求項2〜7のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常検出装置であって、
    前記パラメータ推定部のパラメータ推定手段は、遺伝的アルゴリズムを用いて前記異常要因要素におけるパラメータを推定することを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  9. 請求項1に記載の鉄道車両の異常検出装置において、
    前記データ分析部は、
    前記鉄道車両の振動データおよび前記鉄道車両の運行データを取得し、当該取得した振動データと運行データを分析し、前記鉄道車両の振動状態における異常要因要素を導出し、
    前記異常要因要素推定部は、
    前記データ分析部にて導出した前記振動データと運行データにおける異常要因要素の特性の現状値を、力学モデルに基づいて同定し、前記異常要因要素を推定し、
    前記異常要因を推定する推定部は、
    前記異常要因要素推定部により推定した異常要因要素の推定値と正常状態の正常値との比較し、当該比較した結果に基づいて前記鉄道車両の異常要因を推定する
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  10. 請求項9に記載された鉄道車両の異常検出装置において、
    前記異常要因要素推定部は、パラメータ推定部からなり、
    前記パラメータ推定部は、
    前記力学モデルを選択する力学モデル選択手段と、
    前記力学モデルのパラメータを選択するパラメータ選択手段と、
    前記力学モデル、前記パラメータおよび前記振動データ、前記運行データを元に前記異常要因要素のパラメータを推定し、当該パラメータの推定値を出力するパラメータ推定手段を含み、
    前記異常要因推定部は、
    前記正常状態でのパラメータの正常値を記憶する記憶手段と、
    前記パラメータ推定手段にて推定されたパラメータの推定値と前記記憶手段に予め記憶されているパラメータの正常値を比較する正常値比較手段と、
    前記パラメータの推定値と正常値の比率を元に前記鉄道車両の異常要因を推定する異常要因推定手段を含み、
    前記力学モデルは、車両力学モデル、軌道力学モデルである、
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出装置。
  11. 請求項1に記載された鉄道車両の異常検出装置における異常検出方法において、
    前記鉄道車両の振動データおよび前記鉄道車両の運行データを取得するステップと、
    前記取得した振動データと運行データを分析し、前記鉄道車両の振動状態における異常要因要素を導出するデータ分析ステップと、
    前記データ分析ステップにて導出した前記振動データと運行データにおける異常要因要素の特性の現状値を、力学モデルに基づいて同定し、異常要因要素を推定する異常要因要素推定ステップと、
    前記異常要因要素推定ステップにより推定した異常要因要素の推定値と正常状態の正常値との比較結果に基づいて前記鉄道車両の異常要因を推定する異常要因推定ステップを備えた
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出方法。
  12. 請求項11に記載の鉄道車両の異常検出方法において、
    前記異常要因要素推定ステップは、パラメータ推定ステップからなり、
    前記パラメータ推定ステップは、
    前記力学モデルを選択する力学モデル選択ステップと、
    前記力学モデルのパラメータを選択するパラメータ選択ステップと、
    前記力学モデル、前記パラメータおよび前記振動データ、前記運行データを元に前記異常要因要素のパラメータを推定し、当該パラメータの推定値を出力する推定ステップを含み、
    前記異常要因推定ステップは、
    前記パラメータ推定ステップにて推定されたパラメータの推定値と予め記憶部に記憶されているパラメータの正常値を比較する正常値比較ステップと、
    前記パラメータの推定値と正常値の比率を元に前記鉄道車両の異常要因を推定する推定ステップを含み、
    前記力学モデルは、車両力学モデル、軌道力学モデルである、
    ことを特徴とする鉄道車両の異常検出方法。
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