JP6847268B2 - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インダクタンスが回転子位置によって変化するインダクタンス交流分を有する回転機を、回転子位置を検出する位置センサを用いることなく回転子位置情報を得て制御する、回転機の制御装置に関する。
回転機の性能を十分に引き出して回転機を駆動するためには、回転子の位置情報が必要である。そのため、従来の回転機の制御装置は、回転機に取付けられた位置センサで検出される位置情報を用いている。しかしながら、回転機の製造コストのより一層の低減、回転機の小型化、及び回転機の信頼性の向上といった観点から、位置センサレスで回転機を駆動する技術が開発されてきた。回転機の位置センサレス制御方法には、高周波電圧を回転機に印加することによって回転子位置を推定する方法と、高周波電圧を印加せずに回転機の誘起電圧、鎖交磁束などから回転子位置を推定する方法とがある。
特許文献1には、高周波電圧を回転機に印加することによって回転子位置を推定する方法が開示されている。特許文献1に開示される位置センサレス制御方法では、高周波電圧を回転機に印加したときの回転機電流が検出され、高周波電圧と同じ周波数成分の高周波電流が抽出される。そして、回転機のインダクタンス、すなわち、高周波電流の振幅が回転子位置電気角に対して2倍の周波数で変化することを利用して、回転子位置が推定される。このような高周波電圧を利用する方式では、回転機が零速又は零速に近い低速でも、正確に回転子位置を推定できる一方で、重畳される高周波電圧によってトルク脈動又は騒音が発生する。また、高周波電圧を利用する方式では、回転機の巻線に印加される電圧と、回転機の巻線に流れる電流とに高周波電圧が重畳される分だけ、回転機の最大トルク又は回転機の回転速度が小さくなり、もしくはその両方が小さくなる。
特許文献2,3,4には、高周波電圧を印加せずに回転子位置を推定する方法が開示されている。高周波電圧を印加せずに回転子位置を推定する方法では、回転機の鎖交磁束から回転子のq軸又はd軸のインダクタンスと回転機電流との積を減算することで、鎖交磁束の内、回転子位置に同期して回転する成分を抽出する。当該成分には、d軸基準のActiveFluxと、q軸基準のActiveFluxとがそれぞれ含まれる。ここで、インダクタンスが最大になる回転子の方向をd軸とし、インダクタンスが最小になる方向をq軸とする。d軸は磁束軸と称される軸であり、q軸はトルク軸と称される軸である。特許文献2では、ActiveFluxをオブザーバで推定することによって回転子位置が推定される。特許文献3では、ActiveFluxによって発生する誘起電圧を用いて回転子位置が推定される。
特許文献2,3に開示される位置センサレス制御方法では、回転機電流のd軸成分又はq軸成分が零の場合、ActiveFluxが零となり、回転子位置を推定できない。すなわち、特許文献2,3に開示される位置センサレス制御方法では、回転機の通電方向によっては、回転子位置を推定できない。特許文献4に開示される位置センサレス制御方法では、d軸基準とq軸基準の両方のActiveFluxに、回転機電流又は鎖交磁束のd軸成分とq軸成分に基づいた重み付けを行い、回転子位置の推定に利用することによって、この問題を解決している。
特許第5069306号公報 特許第4644010号公報 特許第3571698号公報 欧州特許出願公開第2493067号明細書
しかしながら、特許文献4に開示される、回転機電流又は鎖交磁束のd軸成分とq軸成分に基づいた重み付けは、回転子位置推定の制御設計だけでなく制御処理を複雑にするという課題がある。そのため、特許文献4に開示される技術では、回転子位置を推定するための構成が複雑になるという課題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回転機の通電方向に依らず簡単な構成で回転子位置を推定することができる回転機の制御装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の回転機の制御装置は、インダクタンスが回転子位置によって変化するインダクタンス交流分を有する回転機を制御する回転機の制御装置であって、回転機に流れる回転機電流を検出する電流検出器を備える。回転機の制御装置は、回転子位置を推定する位置推定器と、回転機電流と回転子位置とに基づいて回転機を駆動するための回転機電圧指令を出力する制御器と、回転機電圧指令に基づいて回転機に電圧を印加する電圧印加器とを備える。位置推定器は、インダクタンス交流分と回転機電流とによって生成される鎖交磁束インダクタンス交流分から回転子位置を推定することを特徴とする。
本発明によれば、回転機の通電方向に依らず簡単な構成で回転子位置を推定することができる、という効果を奏する。
本発明の実施の形態1に係る回転機の制御装置の構成を示す図 図1に示す位置推定器の構成を示す図 本発明の実施の形態2に係る回転機の制御装置の構成を示す図 図3に示す位置推定器の構成を示す図 本発明の実施の形態3に係る回転機の制御装置の構成を示す図 図5に示す位置推定器の構成を示す図 図5に示す制御座標角度演算器の構成を示す図 本発明の実施の形態4に係る回転機の制御装置の構成を示す図 図8に示す位置推定器の構成を示す図 図9に示す適応推定器の構成を示す図 本発明の実施の形態5に係る回転機の制御装置の構成を示す図 図11に示す位置推定器の構成を示す図 本発明の実施の形態1から5に係る回転電機の制御装置の第1のハードウェア構成例を示す図 実施の形態1から5に係る回転電機の制御装置の第2のハードウェア構成例を示す図
以下に、本発明の実施の形態に係る回転機の制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る回転機の制御装置の構成を示す図である。実施の形態1に係る回転機の制御装置100は、回転機を駆動するための回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw に従って、交流電圧を回転機1に印加する電圧印加器5と、電圧印加器5から回転機1に供給される交流電流を検出し、検出した交流電流を回転機電流isu,isv,iswとして出力する電流検出器2とを備える。また回転機の制御装置100は、回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw と回転機電流isu,isv,iswとを用いて、電気角である推定回転子位置θ を演算する位置推定器3と、制御器4とを備える。推定回転子位置θ は、回転機1を構成する図示しない回転子の回転位置である回転子位置の推定値である。推定回転子位置θ は、電気角で表わされる。回転機の制御装置100によって制御される回転機1は同期リラクタンスモータである。同期リラクタンスモータは、インダクタンスが回転子位置によって変化するインダクタンス交流分を有するモータである。インダクタンスとは、固定子巻線の鎖交磁束を固定子電流値で除した値である。以下では回転機1を単に「回転機」と称する場合がある。電圧印加器5は、U,V,Wの3本の配線を介して、回転機に接続される。電流検出器2では、当該配線に流れる交流電流が検出される。以下では、インダクタンスが最大になる回転子の方向をd軸とし、インダクタンスが最小になる方向をq軸とし、回転子位置は回転子のd軸を基準とする。
制御器4は、電流指令演算器401、三相電流指令演算器402及び三相電流制御器403を備え、回転機がトルク指令値Tに対応した出力を発生するための回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw を演算する。
電流指令演算器401は、回転機がトルク指令値Tに対応した出力を発生するために必要な電流実効値指令Iph 及び通電角度指令φ を演算する。通電角度指令φ は、実際の回転子位置と回転機電流との成す角度を示す通電角の指令である。ここでは、電流実効値指令Iph と通電角度指令φ とは、トルクに対する電流実効値、すなわち回転機の銅損が最小になるように選定される。
三相電流指令演算器402は、下記(1)式に示すように、電流実効値指令Iph と通電角度指令φ と推定回転子位置θ とを用いて、三相電流指令isu ,isv ,isw を演算する。
Figure 0006847268
三相電流制御器403は、回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw を演算する。回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw は、三相座標上の回転機電流isu,isv,iswが三相電流指令isu ,isv ,isw となるように、回転機電流isu,isv,iswを例えば比例積分(Proportional Integral:PI)制御することで得られる。
図2は図1に示す位置推定器の構成を示す図である。図2に示すように位置推定器3は、三相−二相変換器301、三相−二相変換器302、鎖交磁束インダクタンス交流分演算器303、鎖交磁束インダクタンス交流分推定器304、回転子位置推定誤差演算器305及び回転子位置演算器306を備える。以下では、鎖交磁束インダクタンス交流分演算器303を「交流分演算器303」と称し、鎖交磁束インダクタンス交流分推定器304を「交流分推定器304」と称し、回転子位置推定誤差演算器305を「推定誤差演算器305」と称する場合がある。
三相−二相変換器301は、三相座標上の回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw を二相座標上の回転機電圧指令vsα ,vsβ に変換する。なお、以下では「vsα ,vsβ 」を「v αβ*」と表記する場合がある。実施の形態1では、三相−二相変換に下記(2)式の変換行列C32が利用される。
Figure 0006847268
同様に、三相−二相変換器302は、三相座標上の回転機電流isu,isv,iswを二相座標上の回転機電流isα,isβに変換する。なお、以下では「isα,isβ」を「i αβ*」と表記する場合がある。
次に、交流分演算器303の動作について説明する。まず、回転機の鎖交磁束Ψ αβは、下記(3)式により求められる。
Figure 0006847268
上記(3)式のv αβ*は二相座標での回転機電圧指令であり、回転機電流i αβは二相座標上の回転機電流であり、Rは巻線抵抗である。また上記(3)式の積分は、ラプラス変換におけるs領域において下記(4)式で表される。
Figure 0006847268
回転機の鎖交磁束Ψ αβを積分で演算する場合、通常は初期値が不明であるため、回転機の鎖交磁束Ψ αβの基本波周波数成分に対して十分にカットオフ周波数の低いハイパスフィルタ(High Pass Filter:HPF)を利用する。そのHPFの伝達関数は、カットオフ周波数をωhpfとして下記(5)式で表される。
Figure 0006847268
このHPFを上記(4)式に適用すると、鎖交磁束Ψshpf αβは下記(6)式で計算される。
Figure 0006847268
上記(6)式を変形すると下記(7)式となる。
Figure 0006847268
一方で、回転機の鎖交磁束Ψ αβは下記(8)式で表される。
Figure 0006847268
上記(8)式のLsdcは、回転子位置によって変化しないインダクタンス直流分であり、Lmacは回転子位置によって変化するインダクタンス交流分である。Lsac αβはインダクタンス交流分を表す。また、インダクタンスの変化は一般的に、電気角で表される回転子位置をθとすれば、2θの正弦関数又は余弦関数で表される。実施の形態1では、インダクタンス交流分と回転機電流i αβとによって生成される鎖交磁束を、鎖交磁束インダクタンス交流分とする。交流分演算器303は、上記(7)式で計算した鎖交磁束Ψshpf αβを用いて、下記(9)式により、鎖交磁束インダクタンス交流分Ψsac,calc αβを演算する。
Figure 0006847268
上記(9)式で演算される鎖交磁束インダクタンス交流分Ψsac,calc αβは、実施の形態1に係る回転機の制御装置100で演算される鎖交磁束インダクタンス交流分演算値である。
交流分推定器304は、下記(10)式に示すように、回転機電流i αβと推定回転子位置θ とを用いて、鎖交磁束インダクタンス交流分を推定する。
Figure 0006847268
上記(10)式で演算されるΨ sac αβは、実施の形態1に係る回転機の制御装置100で演算される鎖交磁束インダクタンス交流分推定値である。上記(10)式の「L sac αβ」は、「インダクタンス交流分推定値」である。
推定誤差演算器305は、鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と鎖交磁束インダクタンス交流分推定値とを用いて、回転子位置の推定誤差を演算する。鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と鎖交磁束インダクタンス交流分推定値との外積は、上記(9)式すなわち上記(8)式の第2項を演算した値と、上記(10)式とを用いて、下記(11)式で表される。
Figure 0006847268
ここで、回転子位置の推定値と真値がおよそ等しい、すなわちθ ≒θとすると、回転子位置の推定誤差は下記(12)式で演算できる。推定誤差演算器305は、演算した回転子位置の推定誤差を回転子位置演算器306へ出力する。
Figure 0006847268
回転子位置演算器306は、回転子位置の推定誤差をPI制御した後に積分して、推定回転子位置θ を演算する。
前述した特許文献2に開示される技術では、下記(13)式に示すように、回転機の鎖交磁束Ψ αβから、回転子のq軸インダクタンスLsqと回転機電流i αβとの積を減算することで、鎖交磁束のうち回転子位置に同期して回転する成分であるd軸基準のActiveFlux(ΨAFd αβ)が抽出される。
Figure 0006847268
上記(13)式に示す回転子のq軸インダクタンスLsqは、Lsq=Lsdc−Lmacで表すことができる。また、回転機電流i αβは下記(14)式で表される。
Figure 0006847268
上記(14)式のIphは電流実効値であり、φは通電角度、すなわち回転子位置と回転機電流との角度差である。
上記(8)式と上記(14)式とを上記(13)式の右辺へ代入すると、d軸基準のActiveFlux(ΨAFd αβ)は下記(15)式で表される。
Figure 0006847268
上記(15)式のLsdは、Lsd=Lsdc+Lmacで表すことができる。また、d−q軸電流isd,isqは、下記(16)式に示すように、α−β軸電流を回転子位置θを用いて回転座標変換して得られる。なお、以下ではd−q軸電流isd,isqを「回転機電流i dq」と称する場合がある。
Figure 0006847268
実施の形態1の回転座標変換には、上記(16)式の変換行列Cdqが利用される。上記(15)式のActiveFluxの方向は回転子d軸方向であるので、これをオブザーバ等を用いて推定することで、回転子位置を演算できる。前述した特許文献3に開示される技術では、d軸基準のActiveFluxによって発生する誘起電圧を用いて回転子位置の推定が行われている。また前述した特許文献2には、下記(17)式に示すように、回転機の鎖交磁束から回転子のd軸インダクタンスと回転機電流との積を減算した、q軸基準のActiveFluxについても記載されている。
Figure 0006847268
d軸基準の場合と同様に、上記(17)式の右辺に上記(8)式と上記(14)式を代入すると、q軸基準のActiveFlux(ΨAFq αβ)は下記(18)式で表される。
Figure 0006847268
q軸基準のActiveFluxは回転子q軸方向であるため、これをオブザーバ等を用いて推定することで、回転子位置を推定できる。しかしながら、d軸基準のActiveFluxは、通電方向が回転子q軸方向のみ場合、すなわちisd=0の場合には零となり、これを用いた回転子位置の推定ができない。同様に、q軸基準のActiveFluxは、通電方向が回転子d軸方向のみ場合、すなわちisq=0の場合には零となり、これを用いた回転子位置の推定ができない。このような問題に対して、前述した特許文献4に開示される位置センサレス制御方法は、d軸基準とq軸基準の両方のActiveFluxに、回転機電流又は鎖交磁束のd軸成分とq軸成分に基づいた重み付けを行い、回転子位置の推定に利用することによって、この問題を解決している。しかしながら、回転機電流又は鎖交磁束のd軸成分とq軸成分に基づいた重み付けは、回転子位置推定の制御設計だけでなく制御処理を複雑にする。
実施の形態1に係る回転機の制御装置100は、鎖交磁束インダクタンス交流分、すなわち上記(8)式の第2項と上記(10)式とを用いて回転子位置を推定する。この鎖交磁束インダクタンス交流分は二相両方の成分を持っており、この鎖交磁束インダクタンス交流分を用いることによって、電流の通電方向に依存せずに回転子位置の推定が可能である。また、実施の形態1に係る回転機の制御装置100では、通電方向によって重み付けを行う必要もない。従って実施の形態1に係る回転機の制御装置100は、回転機の通電方向に依らず簡単な構成で回転子位置を推定できる、という従来にない顕著な効果を奏する。
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係る回転機の制御装置の構成を示す図である。実施の形態1に係る回転機の制御装置100では、回転機のインダクタンスの変化が、回転子位置θとして2θの正弦関数又は余弦関数で表される。しかしながら実際のインダクタンスの変化は、正確には2θの正弦関数又は余弦関数とはならず、推定回転子位置に誤差が発生する。また実施の形態1に係る回転機の制御装置100は、上記(10)式の鎖交磁束インダクタンス交流分を推定するために2θの正弦関数と余弦関数が必要であり、制御演算量が多くなる。実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aは、少ない制御演算量で正確に回転子位置を推定できるように構成されている。実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aは、図1に示す位置推定器3及び制御器4の代わりに、位置推定器6及び制御器7を備える。その他の構成については、実施の形態1の構成と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
制御器7は、電流指令演算器701、d−q電流制御器702、回転座標逆変換器703、二相−三相変換器704、三相−二相変換器705及び回転座標変換器706を備え、回転機がトルク指令値Tに対応した出力を発生するための回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw を演算する。
電流指令演算器701は、回転機がトルク指令値Tに対応した出力を発生するために必要な回転座標上の電流指令isd ,isq を演算する。ここでは、回転座標上の電流指令isd ,isq は、トルクに対する電流実効値、すなわち回転機の銅損が最小になるように選定される。
d−q電流制御器702は、回転座標変換器706で回転座標変換されるd−q軸電流isd,isqが電流指令isd ,isq となるように制御を行い、回転座標上の回転機電圧指令vsd ,vsq を演算する。この電流制御には、例えば比例積分制御などを利用する。
回転座標逆変換器703は、下記(19)式に示すように、位置推定器6で演算された推定回転子位置θ を用いて、回転座標上の回転機電圧指令vsd ,vsq を二相座標上の回転機電圧指令vsα ,vsβ へ回転座標逆変換する。実施の形態2では、回転座標逆変換に下記(19)式の変換行列Cdq −1(θ )が利用される。
Figure 0006847268
二相−三相変換器704は、下記(20)式に示すように、二相座標上の回転機電圧指令vsα ,vsβ を三相座標上の回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw に変換する。実施の形態2では、二相−三相変換に下記(20)式の変換行列C23が利用される。
Figure 0006847268
三相−二相変換器705は、三相座標上の回転機電流isu,isv,iswを二相座標上の回転機電流isα,isβへ三相−二相変換する。回転座標変換器706は、推定回転子位置θ を用いて、二相座標上の回転機電流isα,isβを回転座標上のd−q軸電流isd,isqへ回転座標変換する。
図4は図3に示す位置推定器の構成を示す図である。図4に示すように位置推定器6は、三相−二相変換器601、三相−二相変換器602、回転座標変換器603、鎖交磁束インダクタンス交流分演算器604、鎖交磁束インダクタンス交流分推定器605、回転子位置推定誤差演算器606及び回転子位置演算器607を備える。位置推定器6では、三相−二相変換器602、鎖交磁束インダクタンス交流分演算器604及び鎖交磁束インダクタンス交流分推定器605の動作が実施の形態1と異なる。以下では、鎖交磁束インダクタンス交流分演算器604を「交流分演算器604」と称し、鎖交磁束インダクタンス交流分推定器605を「交流分推定器605」と称し、回転子位置推定誤差演算器606を「推定誤差演算器606」と称する場合がある。
三相−二相変換器601は、実施の形態1の三相−二相変換器301と同様に、三相座標上の回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw を二相座標上の回転機電圧指令vsα ,vsβ に変換する。三相−二相変換器602は、実施の形態1の三相−二相変換器302と同様に、三相座標上の回転機電流isu,isv,iswを二相座標上の回転機電流isα,isβに変換する。
回転機の鎖交磁束Ψ αβは二相座標上において上記(8)式で表されるが、下記(21)式で示される回転機の鎖交磁束Ψ dqは、制御座標角度θを用いて、回転機の鎖交磁束Ψ αβを回転座標変換したものである。下記(21)式の第2項は、インダクタンス交流分と回転機電流とによって生成される鎖交磁束インダクタンス交流分である。
Figure 0006847268
交流分演算器604は、まず実施の形態1と同様に上記(7)式を用いて、二相座標での鎖交磁束Ψshpf αβを演算する。さらに、交流分演算器604は、鎖交磁束Ψshpf αβを回転座標変換して、鎖交磁束Ψshpf dqとする。回転座標上での鎖交磁束インダクタンス交流分Ψsac,calc dqは、上記(21)式に従って、下記(22)式で演算される。下記(22)式で演算される鎖交磁束インダクタンス交流分Ψsac,calc dqは、以下では鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と称する。
Figure 0006847268
回転座標変換器603は、推定回転子位置θ を用いて、二相座標上の回転機電流isα,isβを回転座標上のd−q軸電流isd,isqへ回転座標変換する。
交流分推定器605は、下記(23)式に示すように、回転機電流i dqを用いて、鎖交磁束インダクタンス交流分を推定する。
Figure 0006847268
ここで、上記(23)式では、制御座標角度θとして推定回転子位置θ を用いているので、上記(23)式は下記(24)式に示すように簡略化される。
Figure 0006847268
上記(24)式のΨ sac dqは、実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aで演算される鎖交磁束インダクタンス交流分推定値である。
推定誤差演算器606は、実施の形態1の推定誤差演算器305と同様に、鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と鎖交磁束インダクタンス交流分推定値とを用いて、回転子位置の推定誤差を演算する。回転子位置演算器607は、実施の形態1の回転子位置演算器306と同様に、回転子位置の推定誤差をPI制御した後に積分して、推定回転子位置θ を演算する。
実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aは、回転子位置に同期した回転座標上で上記(22)式に示すように鎖交磁束インダクタンス交流分を演算し、さらに上記(24)式に示すように鎖交磁束インダクタンス交流分を推定している。この鎖交磁束インダクタンス交流分は二相両方の成分を持っており、この鎖交磁束インダクタンス交流分を用いることによって、電流の通電方向に依存せずに回転子位置の推定が可能である。また、実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aでは、通通電方向によって重み付けを行う必要もない。さらに、実施の形態2では、回転座標上での鎖交磁束インダクタンス交流分の演算式である上記(24)式において、回転座標上のd軸におけるインダクタンス値と、回転座標上のq軸におけるインダクタンス値とを使用しているため、回転子位置をθとしたときに、インダクタンスを2θの正弦関数又は余弦関数で表す必要がない。従って、実際の回転機のインダクタンスは正確には2θの正弦関数又は余弦関数とならないことによる回転子推定誤差が発生しない。また、実施の形態2では、鎖交磁束インダクタンス交流分の推定に、2θの正弦関数と余弦関数を必要としない。従って、実施の形態2に係る回転機の制御装置100Aは、少ない制御演算量で正確に回転子位置を推定できる、といった従来にない顕著な効果を奏する。
実施の形態3.
図5は本発明の実施の形態3に係る回転機の制御装置の構成を示す図である。実施の形態3に係る回転機の制御装置100Bは、より高応答かつ安定に回転子の回転速度と回転位置を推定できるように構成されている。回転機の制御装置100Bは、図3に示す実施の形態2に係る位置推定器6及び制御器7の代わりに位置推定器8及び制御器10を備える。さらに回転機の制御装置100Bは、制御座標角度演算器9を備える。以下では、制御座標角度演算器9を「角度演算器9」と称する場合がある。その他の構成については、実施の形態2の構成と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
制御器10は、速度演算器1001、電流指令演算器701、d−q電流制御器702、回転座標逆変換器1002、二相−三相変換器704、三相−二相変換器705及び回転座標変換器1003を備え、回転機が回転速度指令値ω に対応した回転速度を発生するための回転機電圧指令vsu ,vsv ,vsw を演算する。
速度演算器1001は、推定回転速度ω が回転速度指令値ω になるように、例えば比例積分制御を行って、トルク指令値Tを演算する。
回転座標逆変換器1002は、角度演算器9で演算された制御座標角度θを用いて、回転座標上の回転機電圧指令vsd ,vsq を二相座標上の回転機電圧指令vsα ,vsβ へ回転座標逆変換する。
回転座標変換器1003は、角度演算器9で演算された制御座標角度θを用いて、二相座標上の回転機電流isα,isβを回転座標上のd−q軸電流isd,isqへ回転座標変換する。
位置推定器8は、推定回転速度ω と推定回転子位置θ を演算する。図6は図5に示す位置推定器の構成を示す図である。図6に示すように位置推定器8は、三相−二相変換器601、三相−二相変換器602、回転座標変換器801、鎖交磁束インダクタンス交流分演算器802、鎖交磁束インダクタンス交流分推定器803、推定誤差演算器606及び回転子位置演算器804を備える。以下では鎖交磁束インダクタンス交流分演算器802を「交流分演算器802」と称し、鎖交磁束インダクタンス交流分推定器803を「交流分推定器803」と称する場合がある。
交流分演算器802は、実施の形態2と同様に、回転座標上での鎖交磁束インダクタンス交流分Ψsac,calc dq、すなわち鎖交磁束インダクタンス交流分演算値を計算する。ただし回転座標変換には、推定回転子位置θ の代わりに制御座標角度θが用いられる。
回転座標変換器801は、制御座標角度θを用いて、二相座標上の回転機電流isα,isβを回転座標上のd−q軸電流isd,isqへ回転座標変換する。
交流分推定器803は、上記(23)式に示すように、回転機電流i dqを用いて、鎖交磁束インダクタンス交流分を推定する。位置推定器8で演算される推定回転子位置θ が角度演算器9で演算される制御座標角度θとおよそ等しくなるように、位置推定器8が動作していると仮定した場合、鎖交磁束インダクタンス交流分の演算式である上記(23)式は、下記(25)式のように簡略化される。
Figure 0006847268
上記(25)式のΨ sac dqは、実施の形態3に係る回転機の制御装置100Bで演算される鎖交磁束インダクタンス交流分推定値である。
回転子位置演算器804は、回転子位置の推定誤差をPI制御して推定回転速度ω を演算する。さらに回転子位置演算器804は、推定回転速度ω を積分して、推定回転子位置θ を演算する。
図7は図5に示す制御座標角度演算器9の構成を示す図である。角度演算器9は、推定回転子位置θ と制御座標角度θとの誤差を、PI制御した後に積分して制御座標角度θを演算し、制御座標角度θを推定回転子位置θ に追従させる。その追従応答は、比例積分制御のゲインによって任意に調整可能である。
実施の形態3に係る回転機の制御装置100Bは、位置推定器8及び制御器10のそれぞれの回転座標変換に用いる角度として、推定回転子位置θ を直接用いるのではなく、これに任意の応答で追従する制御座標角度θを利用している。回転子位置及び回転速度をより高応答に推定する場合には、推定回転子位置θ の応答が振動的になる場合がある。この場合も、制御座標角度θの追従をその振動を除去できるように位置推定応答より遅い応答に設定すれば、回転子位置の推定を含む回転機の制御を安定に動作させることができる。従って、実施の形態3に係る回転機の制御装置100Bは、より高応答かつ安定に回転子の回転速度と回転位置を推定できる、といった従来にない顕著な効果を奏する。
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4に係る回転機の制御装置の構成を示す図である。実施の形態1,2,3に係る回転機の制御装置100,100A,100Bは、鎖交磁束インダクタンス交流分の演算値と推定値とを用いて回転子位置を推定する。これに対して実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cでは、適応オブザーバを用いて回転子位置を推定するように構成されている。適応オブザーバは、後述する(33)式の係数Hの演算式である(34)式に含まれる変数(回転子位置)を適応推定によって推定する場合のオブザーバ全体を示す。回転機の制御装置100Cは、図3に示す実施の形態2に係る位置推定器6の代わりに位置推定器11を備える。その他の構成については、実施の形態2の構成と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図9は図8に示す位置推定器の構成を示す図である。位置推定器11は、三相―二相変換器1101、三相―二相変換器1102、鎖交磁束インダクタンス演算器1103、回転座標変換器1104、適応オブザーバ1105及び適応推定器1106を備える。
三相―二相変換器1101は、三相座標上の回転機電圧指令を二相座標上の回転機電圧指令v αβ*へ座標変換する。三相―二相変換器1102は、三相座標上の回転機電流を二相座標上の回転機電流i αβへ座標変換する。鎖交磁束インダクタンス演算器1103は、実施の形態2と同様に、二相座標上の鎖交磁束Ψshpf αβを演算し、さらに推定回転子位置θ を用いて、二相座標上の鎖交磁束Ψshpf αβを回転座標上の鎖交磁束Ψ dqへ回転座標変換する。
一方、回転座標変換器1104は、二相座標上の回転機電圧指令v αβ*を回転座標上での回転機電圧指令v dq*に変換する。そして、適応オブザーバ1105は、回転座標上の回転機電圧指令v dq*と鎖交磁束Ψ dqとを用いて、推定回転子位置θ を演算する。
適応オブザーバ1105の動作について説明する。まず、回転機のモデルは二相座標上において下記(26)式及び(27)式で表される。
Figure 0006847268
Figure 0006847268
鎖交磁束を変数とすれば、上記(26)式及び(27)式のモデルは下記(28)式で表される。
Figure 0006847268
上記(26)式及び(27)式のモデルを、回転座標上では下記(29)式及び(30)式で表される。
Figure 0006847268
Figure 0006847268
鎖交磁束を変数とすれば、上記(29)式及び(30)式のモデルは下記(31)式で表される。下記(31)式は、鎖交磁束Ψ dqを推定するオブザーバである。
Figure 0006847268
さらに、上記(31)式のモデルは、回転子位置θと制御座標角度θがおよそ等しい、すなわちθ≒θとすれば下記(32)式で表される。
Figure 0006847268
回転子位置を推定するため、まずオブザーバを下記(33)式のように構成する。
Figure 0006847268
ここで、下記(34)式に示すように、オブザーバゲインHを適切に設計することで、オブザーバの推定鎖交磁束Ψ^dqは真値である応答ωcobsで収束する。なお、オブザーバゲインHの設計が下記(34)式の例に限定されるものではない。
Figure 0006847268
オブザーバにおいて、推定回転子位置θ に誤差がある場合、推定鎖交磁束Ψ^dqに誤差が表れる。適応推定器1106は、回転子位置の推定誤差によって生じる鎖交磁束インダクタンス交流分に関する鎖交磁束の推定誤差から、回転子位置を演算する。
図10は図9に示す適応推定器の構成を示す図である。図10に示すように適応推定器1106は、下記(35)式の適応則を用いて回転子の推定回転子位置θ を演算する。
Figure 0006847268
ここで、上記(35)式のkapを下記(36)式で演算される値とし、上記(35)式のωaiを下記(37)式で演算される値とし、回転子位置の推定応答はωcaとなる。上記(35)式のkapは適応推定比例ゲインを表し、上記(35)式のωaiは適応推定積分応答を表す。
Figure 0006847268
Figure 0006847268
また、適応推定器1106は、下記(38)式に示すe、すなわち上記(35)式に含まれる値によって、鎖交磁束インダクタンス交流分を利用して回転子位置の推定誤差を抽出している。下記(38)式のeは「適応推定誤差1」を表す。
Figure 0006847268
なお、回転子位置を推定する適応則の選び方は上記の方法に限定されず、例えば、以下の参考文献1に従って決めることができる。
(参考文献1)ヨアン・D・ランダウ、富塚誠義「適応制御システムの理論と実際」オーム社、1981
実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cは、上記(27)式から上記(32)式までに示すθに関する項に対応する鎖交磁束インダクタンス交流分に関する鎖交磁束の推定誤差を用いて、回転子位置を推定する。この鎖交磁束インダクタンス交流分は二相両方の成分を持っており、この鎖交磁束インダクタンス交流分を用いることによって、電流の通電方向に依存せずに回転子位置の推定が可能である。また、実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cでは、通電方向によって重み付けを行う必要もない。従って実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cは、回転機の通電方向に依らず簡単な構成で回転子位置を推定できる、といった従来にない顕著な効果を奏する。
実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cは、実施の形態2と同様に、回転子位置に同期した回転座標上で鎖交磁束を演算し、さらに鎖交磁束を推定している。従って、少ない制御演算量で正確に回転子位置を推定できる、といった従来にない顕著な効果を奏する。当然ながら、実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cによる回転子位置を推定は、上記(26)式から上記(28)式に基づいて、二相座標上で実施可能なことは自明なことである。
実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cでは、鎖交磁束の演算値と推定値とを用いて、上記(35)式を用いて回転子位置を演算している。ここで、鎖交磁束インダクタンス交流分推定値Ψ sac dqは、下記(39)式により演算できる。
Figure 0006847268
実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cは、実施の形態1,2,3と同様にして、上記(39)式により演算される鎖交磁束インダクタンス交流分推定値と鎖交磁束インダクタンス交流分演算値とを用いて、回転子位置を推定できることは言うまでもない。また実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cは、実施の形態3と同様に、位置推定器11及び制御器7のそれぞれの回転座標変換に用いる角度として、推定回転子位置θ を直接用いるのではなく、これに追従する制御座標角度θを利用できることは言うまでもない。
実施の形態5.
図11は本発明の実施の形態5に係る回転機の制御装置の構成を示す図である。実施の形態1,2,3に係る回転機の制御装置100,100A,100Bは、鎖交磁束インダクタンス交流分の演算値と推定値を用いて回転子位置を推定し、実施の形態4に係る回転機の制御装置100Cは、適応オブザーバを用いて回転子位置を推定する。実施の形態5に係る回転機の制御装置100Dは、鎖交磁束インダクタンス交流分の演算値と通電角度と回転子位置とを用いて、回転子位置の推定を行うように構成されている。回転機の制御装置100Dは、図1に示す位置推定器3の代わりに、位置推定器12を備える。その他の構成については、実施の形態1の構成と同一又は同等であり、同一又は同等の構成部には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図12は図11に示す位置推定器の構成を示す図である。図12に示すように位置推定器12は、三相−二相変換器301、三相−二相変換器302、交流分演算器303、鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定器1201、回転子位置推定誤差演算器1202及び回転子位置演算器306を備える。位置推定器12では、鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定器1201及び回転子位置推定誤差演算器1202の動作が実施の形態1と異なる。
まず、上記(8)式の第2項に示す鎖交磁束インダクタンス交流分を、上記(14)式の電流実効値指令Iphを用いて演算すると、下記(40)式に示すΨsac αβを演算できる。下記(40)式のΨsac αβは、二相座標上での鎖交磁束インダクタンス交流分を表す。
Figure 0006847268
上記(40)式より、鎖交磁束インダクタンス交流分は、回転子位置から回転機電流の通電角度を減じた位相で回転している。また、実施の形態5では、鎖交磁束インダクタンス交流分と同方向のベクトルである上記(40)式の「eΨsac αβ」を「鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル」と称する。
鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定器1201は、下記(41)式に示すように、通電角度指令φ と推定回転子位置θ とを用いて、鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定値e Ψsac αβを演算する。
Figure 0006847268
回転子位置推定誤差演算器1202は、鎖交磁束インダクタンス交流分演算値Ψsac,calc αβと鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定値e Ψsac αβとを用いて、回転子位置の推定誤差を演算する。鎖交磁束インダクタンス交流分演算値Ψsac,calc αβと鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定値e Ψsac αβとの外積は、通電角度φと通電角度指令φ とが等しいとすると、下記(42)式で表すことができる。なお、鎖交磁束インダクタンス交流分演算値Ψsac,calc αβは、上記(40)式を、回転機電圧指令と回転機電流とを用いて上記(9)式により演算したものである。
Figure 0006847268
ここで、回転子位置の推定値と真値がおよそ等しい、すなわちθ ≒θとすると、回転子位置の推定誤差は下記(43)式で演算できる。この回転子位置の推定誤差から、実施の形態1と同様にして、推定回転子位置が演算される。
Figure 0006847268
実施の形態5に係る回転機の制御装置100Dは、鎖交磁束インダクタンス交流分とこれと同方向のベクトルとを用いて、すなわち上記(40)式及び(41)式を用いて回転子位置を推定する。なお、この同方向のベクトルである鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトルは、通電角度指令と推定回転子位置とを用いて演算される。これらの鎖交磁束インダクタンス交流分と磁束インダクタンス交流分ベクトルは、二相両方の成分を持っており、鎖交磁束インダクタンス交流分と磁束インダクタンス交流分ベクトルを用いることによって、電流の通電方向に依存せずに回転子位置の推定が可能である。また、実施の形態5に係る回転機の制御装置100Dでは、通電方向によって重み付けを行う必要もない。従って実施の形態5に係る回転機の制御装置100Dは、回転機の通電方向に依らず簡単な構成で回転子位置を推定できる、といった従来にない顕著な効果を奏する。
実施の形態1から5に係る回転機の制御装置100,100A,100B,100C,100Dが備える各機能は処理回路を用いて実現することができる。各機能とは、電流検出器2、電圧印加器5、位置推定器3,6,8,11,12、制御器4,7,10及び角度演算器9である。
図13は本発明の実施の形態1から5に係る回転電機の制御装置の第1のハードウェア構成例を示す図である。図13には専用処理回路13のような専用のハードウェアにより上記の処理回路を実現する例が示される。図13に示すように専用のハードウェアを利用する場合、専用処理回路13は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。上記の各機能のそれぞれを、処理回路で実現してもよいし、まとめて処理回路で実現してもよい。
図14は実施の形態1から5に係る回転電機の制御装置の第2のハードウェア構成例を示す図である。図14にはプロセッサ14及び記憶装置15により上記の処理回路を実現する例が示される。図14に示すようにプロセッサ14及び記憶装置15を利用する場合、上記の各機能のそれぞれは、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの組合せにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、記憶装置15に記憶される。プロセッサ14は記憶装置15に記憶されたプログラムを読み出して実行する。またこれらのプログラムは、上記の各機能のそれぞれが実行する手順及び方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。記憶装置15は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、又はEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった半導体メモリが該当する。半導体メモリは不揮発性メモリでもよいし揮発性メモリでもよい。また記憶装置15は、半導体メモリ以外にも、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク又はDVD(Digital Versatile Disc)が該当する。
また上記の各機能のそれぞれは、一部をハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現してもよい。具体例としては、電流検出器2及び電圧印加器5は専用のハードウェアを用いてその機能が実現され、位置推定器3,6,8,11,12、制御器4,7,10及び角度演算器9はプロセッサ14及び記憶装置15を用いてその機能が実現される。
実施の形態1から5では、回転機のトルクに対する電流指令は、実効値すなわち回転機の銅損が最小になるように選定されたが、鎖交磁束すなわち回転機の誘起電圧を小さくして回転機をより高速まで運転できるように設定してもよいし、モータ損失を最小化するように設定してもよいことは言うまでもない。また実施の形態1から5では、電流検出器2が回転機に流れる相電流を検出する構成例を説明したが、回転機に流れる相電流は、電圧印加器5であるインバータに内蔵された電流センサ、シャント抵抗等により検出してもよい。また、実施の形態1から5では、説明を分かりやすくするため、制御器における回転機の電圧及び電流の座標変換と、位置推定器における回転機の電圧及び電流の座標変換とが重複して行われているが、これらの座標変換は制御器及び位置推定器に共通の機能で実施してもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 回転機、2 電流検出器、3,6,8,11,12 位置推定器、4,7,10 制御器、5 電圧印加器、9 制御座標角度演算器、13 専用処理回路、14 プロセッサ、15 記憶装置、100,100A,100B,100C,100D 制御装置、301,302,601,602,705,1101,1102 三相―二相変換器、303,304,604,802 鎖交磁束インダクタンス交流分演算器、305,606,1202 回転子位置推定誤差演算器、306,607,804 回転子位置演算器、401,701 電流指令演算器、402 三相電流指令演算器、403 三相電流制御器、603 回転座標変換器、706,801,1003,1104 回転座標変換器、605,803 鎖交磁束インダクタンス交流分推定器、702 d−q電流制御器、703,1002 回転座標逆変換器、704 二相−三相変換器、1001 速度演算器、1103 鎖交磁束インダクタンス演算器、1105 適応オブザーバ、1106 適応推定器、1201 鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトル推定器。

Claims (13)

  1. インダクタンスが回転子位置によって変化するインダクタンス交流分を有する回転機を制御する回転機の制御装置であって、
    前記回転機に流れる回転機電流を検出する電流検出器と、
    前記回転子位置を推定する位置推定器と、
    前記回転機電流と前記回転子位置とに基づいて前記回転機を駆動するための回転機電圧指令を出力する制御器と、
    前記回転機電圧指令に基づいて回転機に電圧を印加する電圧印加器とを備え、
    前記位置推定器は、
    前記インダクタンス交流分と前記回転機電流とによって生成される鎖交磁束インダクタンス交流分から前記回転子位置を推定することを特徴とする回転機の制御装置。
  2. 前記回転機のインダクタンスは、前記回転子位置によって変化しない第1の成分と、前記回転子位置に対して2倍の周波数で変化する第2の成分とから構成され、
    前記インダクタンス交流分は、前記第2の成分であることを特徴とする請求項1に記載の回転機の制御装置。
  3. 前記位置推定器は、
    前記回転機電圧指令及び前記回転機電流から演算された前記鎖交磁束インダクタンス交流分である鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と、前記回転機電流、前記インダクタンス交流分及び前記回転子位置から推定された前記鎖交磁束インダクタンス交流分である鎖交磁束インダクタンス交流分推定値とを用いて、前記回転子位置を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機の制御装置。
  4. 前記位置推定器は、
    前記鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と前記鎖交磁束インダクタンス交流分推定値の外積から前記回転子位置の推定誤差を演算することを特徴とする請求項3に記載の回転機の制御装置。
  5. 前記位置推定器は、
    前記鎖交磁束インダクタンス交流分を前記回転機の回転に同期した回転座標上で演算又は推定することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の回転機の制御装置。
  6. 前記位置推定器は、
    前記回転機電圧指令及び前記回転機電流から演算した鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と、前記回転機電流と前記回転子位置との角度差である通電角度と、前記回転子位置とを用いて、前記回転子位置の推定を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転機の制御装置。
  7. 前記位置推定器は、
    前記通電角度及び前記回転子位置から前記鎖交磁束インダクタンス交流分と同方向のベクトルである鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトルを推定し、
    前記鎖交磁束インダクタンス交流分演算値と、推定された前記鎖交磁束インダクタンス交流分ベクトルの推定値との外積から前記回転子位置の推定誤差を演算することを特徴とする請求項6に記載の回転機の制御装置。
  8. 前記位置推定器は、
    オブザーバを用いて鎖交磁束を推定し、推定された当該鎖交磁束インダクタンス交流分の推定誤差を用いて前記回転子位置を推定することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の回転機の制御装置。
  9. 前記位置推定器は、
    前記鎖交磁束を前記回転機の回転に同期した回転座標上で演算又は推定することを特徴とする請求項8に記載の回転機の制御装置。
  10. 適応推定誤差をeとし、回転座標上での前記鎖交磁束をΨ dqとし、回転座標上での前記鎖交磁束の推定値をΨ dqとしたとき、
    前記位置推定器は、回転座標上での前記鎖交磁束と、回転座標上での前記鎖交磁束の推定値とを含む下記(1)式によって、前記回転子位置を演算することを特徴とする請求項9に記載の回転機の制御装置。
    Figure 0006847268
  11. 推定した前記回転子位置に制御座標角度を追従させる制御座標角度演算器を備え、
    前記制御器は、
    前記回転機電流を前記制御座標角度で回転座標変換して、前記回転機電圧指令を演算することを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の回転機の制御装置。
  12. 推定した前記回転子位置に制御座標角度を追従させる制御座標角度演算器を備え、
    前記位置推定器は、
    前記鎖交磁束インダクタンス交流分を前記制御座標角度で変換した回転座標上で演算し、また前記鎖交磁束インダクタンス交流分を前記制御座標角度で変換した回転座標上で推定することを特徴とする請求項5、9又は11に記載の回転機の制御装置。
  13. 前記制御座標角度の追従応答は、前記回転子位置の推定応答よりも遅いことを特徴とする請求項11又は12に記載の回転機の制御装置。
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