JP6860147B2 - 置換ピペラジン化合物及び酸性ガス用の吸収剤、吸収液 - Google Patents

置換ピペラジン化合物及び酸性ガス用の吸収剤、吸収液 Download PDF

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Description

本発明は、酸性ガスを含んだガスの処理に利用可能な置換ピペラジン化合物、及び、それを用いた吸収剤、吸収液に関する。
火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備では、石炭、重油、超重質油などの燃料を多量に使用しており、燃料の燃焼によって排出される硫黄酸化物、窒素酸化物、二酸化炭素などの酸性ガスは、大気汚染防止や地球環境保全の見地から放出に関する量的及び濃度的制限が必要とされている。又、二酸化炭素は、地球温暖化の主原因として問題視され、世界的にも排出を抑制する動きが活発化している。このため、燃焼排ガスやプロセス排ガス中の酸性ガスを分離又は除去するガス処理対策が進められており、二酸化炭素については、回収・貯蔵を可能とするための様々な研究も精力的に進められている。
二酸化炭素を分離又は回収する方法として、例えば、PSA(圧力スウィング)法、膜分離濃縮法や、塩基性化合物による反応吸収を利用する化学吸収法などが知られている。化学吸収法では、主にアルカノールアミン系の塩基性化合物を吸収剤として用いるアミン吸収法が一般的であるが、このような塩基性化合物は、二酸化炭素だけでなく、他の酸性ガスに対しても吸収性を発揮し、各種酸性ガス用吸収剤として利用可能である。化学吸収法による処理プロセスでは、概して、吸収剤を含む水性液を吸収液として用いて、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させた後に、吸収液を加熱して吸収された二酸化炭素を放出させて吸収液を再生する。再生後の吸収液は冷却し、吸収工程において再使用するようにして、これらの工程を交互に繰り返すように吸収液を循環させる(例えば、下記特許文献1参照)。
吸収液の性能に関連する項目として、二酸化炭素の吸収速度及び吸収容量、並びに、二酸化炭素との反応熱などがあり、二酸化炭素の分離回収に必要な設備費用や回収エネルギーを低減するために、これらの項目を考慮して吸収液に用いる吸収剤が決定される。一般的には、複数種のアミン系化合物を組み合わせて使用する。その理由は、上述の項目全てに優れたアミン系化合物を見出すのは事実上困難であるからであり、性質の異なる化合物を組み合わせて互いの性質を補完するように、数多くの吸収剤の組み合わせ及び組成について網羅的な調査及び検討がなされ、様々な組み合わせ及び組成が報告されている(例えば、下記特許文献2参照)。
特開2009−214089号公報 特開2008−13400号公報
しかし、上述のような網羅的な検討によって提案される吸収剤の組み合わせが全面的に優れた吸収液となる訳ではなく、実用的には更に改善を重ねることが必要となる。又、アミン系化合物の揮発性に起因して吸収液の組成が経時的に変動する問題があり、吸収液の定期的な品質管理及び調整が必要となる。
本発明の課題は、上述の問題を解決し、吸収液に調製して使用した際に経時的な組成変動を抑制可能で、定期的な品質管理及び調整による負担が低減される吸収液を提供可能な新規な化合物、及び、それを用いた酸性ガス処理用の吸収剤、吸収液を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、従来の吸収剤の分子構造及び吸収性能を参考としてアミン系化合物の分子設計を行うことによって、極めて有望な化合物が得られ、本発明を完成するに至った。
本発明の一態様によれば、置換ピペラジン化合物は、下記の一般式で表される。
Figure 0006860147
酸性ガスの吸収剤、及び、二酸化炭素の吸収剤は、上記の置換ピペラジン化合物を有効成分とする。酸性ガス処理用の吸収液、及び、二酸化炭素処理用の吸収液は、上記の置換ピペラジン化合物及び水を含有するように調製するとよい。
本発明によれば、揮発性が低く、酸性ガスの吸収性能に優れた置換ピペラジン化合物が提供され、それを酸性ガスの吸収剤として用いて、経時的な品質変動の抑制や定期的な品質管理及び調整に関する負担の軽減が可能な吸収液を提供が可能であるので、ガス処理における作業負担が軽減され、経済的に有利である。
置換ピペラジン化合物(trans-1)を吸収剤として用いた吸収液における二酸化炭素の吸収性能を示すグラフ。 置換ピペラジン化合物(trans-1)の粉末X線回折における回折強度を示すチャート。 置換ピペラジン化合物(cis-1)の粉末X線回折における回折強度を示すチャート。 置換ピペラジン化合物(cis-1)を吸収剤として用いた吸収液における二酸化炭素の吸収性能を、置換ピペラジン化合物(trans-1)の吸収性能と併せて示すグラフ。
二酸化炭素の回収において使用する吸収液の性能に関連する項目として、二酸化炭素の吸収速度及び吸収容量、並びに、二酸化炭素吸収時の反応熱などがある。二酸化炭素の分離回収に必要な操業費用や消費エネルギーを低減するためには、これらの項目を考慮して吸収液に用いる吸収剤を決定する。その際、複数種の吸収剤を選択して互いの性能を補完するように組み合わせて吸収液を調製するのが一般的である。例えば、環状アミノ化合物は、概して、二酸化炭素の吸収速度が速いが、水溶性が低い。他方、水酸基を有するアルカノールアミンは、水溶性を示すが、二酸化炭素の吸収速度が相対的に遅い。そこで、これらを組み合わせて相互に欠点を補完することによって、水溶性及び吸収速度において良好な吸収液が得られる。しかし、環状アミノ化合物は沸点が低く、蒸気圧が比較的高いので、吸収液の再生時に気化し易い。他方、アルカノールアミンの沸点は、環状アミノ化合物より高いが、それでも吸収液からの放散を無視できる程ではない。このため、吸収液の使用/再生を繰り返すことによって、吸収剤の放散による吸収液の組成変動が顕著になる。このような吸収液の経時的な組成変動の問題を解決するには、気化し難い吸収剤を使用することが重要になる。つまり、分子量が従来のものより大きく、良好な吸収性能を発揮する化合物を見出す必要がある。
本願発明者等は、従来の吸収剤の分子構造と吸収性能との関係を考慮しつつ、上述のような要件を満たす化合物の分子構造について検討し、分子量が大きい吸収剤の分子設計を試みた。その際、従来の吸収剤の様々な組み合わせを調査して、組み合わせを構成する2種類の吸収剤の分子構造を合体させて1つの分子構造に構成することを試みた。その結果、ピペラジンとN−メチルジエタノールアミン(以下、MDEAと略記する)とを結合させた分子構造を有する新規な置換ピペラジン化合物を実現するに至った。従って、本願では、新規な置換ピペラジン化合物を提案する。これは、二酸化炭素の吸収速度が速いピペラジンの利点を活かし、その揮発性の抑制及び水溶性の向上を意図して設計された化合物であり、吸収剤に適した構造を有する。
提案される置換ピペラジン化合物(1)は、下記の一般式で示すように、ピペラジンの複素環骨格を基盤として、これに置換基を導入することによって分子量を高めた分子構造を有し、置換基は、N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル基である。つまり、置換ピペラジン化合物(1)は、1分子のピペラジンと2分子のMDEAとを結合した構造を有する複合アミン化合物である。置換基が水酸基を有することによって、置換ピペラジン化合物(1)の水溶性は、ピペラジンに比べて向上する。
Figure 0006860147
MDEAの構造を有する置換基は、ピペラジンとMDEAとの混合系の吸収液における特有の反応連係及び有効性を考慮して採用されている。ピペラジンとMDEAとの混合系では、MDEAが水素を受容することによって、二酸化炭素とピペラジンとによるカルバメート形成反応の平衡がシフトして、重炭酸イオンの増加及び新たな二酸化炭素の取り込みが促進される。つまり、このような反応連係を1つの分子内で実現することを意図した設計である。置換ピペラジン化合物(1)には、2つの置換基が複素環骨格に導入されている。これは、混合系におけるピペラジンのアミノ基に対するMDEAのアミノ基の数が当量である時に二酸化炭素の吸収が最も効率的であることに基づいている。つまり、置換ピペラジン化合物(1)は、置換基のアミノ基による水素受容と、複素環のアミノ基によるカルバメート形成とが分子内で効率的に進行するように設計され、高い吸収性能が期待される。
置換ピペラジン化合物(1)の分子設計においては、新規物質の物性値を予測・算出する予測モデル(EPI suite:The Estimations Programs Interface for Windows、URLより入手可能。http://www.epa.gov/opptintr/exposure/rubs/episuitedl.htm)を用いて、設計された分子の揮発性を予測し、分子構造の評価に利用している。予測モデルによれば、置換ピペラジン化合物(1)の沸点及び蒸気圧(25℃)の推算値は、523.6℃及び3.19×10-12Paとなる。ピペラジン(沸点:146℃、蒸気圧(25℃):21.3Pa)の予測モデルによる沸点及び蒸気圧(25℃)の推算値が163.75℃及び94.9Paとなり、MDEA(沸点:247℃、蒸気圧(25℃):0.0267Pa)の推算値が233.46℃及び0.327Paとなることから、予測モデルによる推算値の依拠は妥当性がある。従って、置換ピペラジン化合物(1)の推算値によれば、置換ピペラジン化合物(1)は、吸収液における経時的変動の問題を解決するために満足な性質を実際に備えていると見なすことができる。
置換ピペラジン化合物(1)は、2,5−ジメチルピラジン(2)を出発原料とする下記のような合成ルートに従って、公知の合成手法によって調製することができる。或いは、この合成ルートにおいて2,5−ジメチルピラジン(2)の酸化によって生成される2,5−ピラジンジカルボン酸(3)は市販品として入手可能であるので、これを出発原料としても良い。合成ルートに従って、2,5−ピラジンジカルボン酸(3)は、水素による接触還元によって、ピペラジンジカルボン酸(4)に変換される。ピペラジンジカルボン酸(4)は、カルボキシ基をエステル化したエステル化合物(5)に変換して、ジエタノールアミン(6)との縮合反応を行うことによって、ジアミド化合物(7)が得られる。この化合物のアミド基を還元してカルボニル基をメチレン基に変換すると、ピペラジン環に結合する置換基は、ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル基になる。この還元反応を進行させるために、予め、ジアミド化合物(7)の水酸基を保護して保護アミド化合物(8)に変換した後に、カルボニル基を還元する。これによって得られる保護アミン化合物(9)は、水酸基が保護された置換ピペラジン化合物(1)であるので、保護アミン化合物(9)を脱保護することによって、置換ピペラジン化合物(1)が得られる。ジアミド化合物(7)の水酸基は、臭化ベンジルを用いたベンジル化によって好適に保護され、この時、ピペラジン環のアミノ基もベンジル化される。脱保護は、Pd/C触媒を用いた水素添加反応によって好適に進行し、水酸基及びピペラジン環のアミノ基の保護が共に外される。合成ルートにおける各反応工程の反応条件は、後述の実施例において記載する。
Figure 0006860147
上述の合成ルートにおける2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)から保護アミン化合物(9)までの中間化合物、及び、最終生成物である置換ピペラジン化合物(1)には、各々、複素環に対する置換基の結合に関してシス型及びトランス型の立体異性体が存在し、シス型及びトランス型の置換ピペラジン化合物(cis-1,trans-1)の各々は、シス型及びトランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4,trans-4)の各々から立体異性を保持して合成することができる。上記の合成ルートにおいては、トランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)からトランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)を生成するように記載されるが、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)も同様にして、シス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)から得られる。
接触還元反応によって得られる2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)は、シス型及びトランス型の異性体の1:1混合物であり、この混合物の異性体分離又は異性化を行うことによって、シス型又はトランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4又はtrans-4)を単体として得ることができる。
2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の異性化に関して、シス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)は、水酸化カリウム水溶液中で加熱することによってトランス型への異性化が可能である。従って、接触還元によって生成される2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)のシス型及びトランス型の混合物に異性化処理を施すことによって、trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)が得られる。
2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の異性体分離に関して、異性体間の溶解度差を利用して一方の異性体を析出させることによって、異性体混合物を各々の異性体に分離可能である。具体的には、接触還元反応後の反応液(2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の塩基性水溶液)をpH6.3程度に調整することによって、トランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)が水溶液から析出する。これを濾取することで、純粋なtrans-2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)が得られる。濾液においては、濾過時の刺激等によって両異性体の析出が生じるので、一旦pHを3.0程度以下に低下させて析出物を溶解する。これにより、cis-2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)が豊富な溶液を得られ、この溶液をpH4.3程度に調整することによって、cis-2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)が析出する。これを濾取することで、純粋なcis-2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)が得られる。この後、回収した濾液を塩基性(pH13程度)に調整して濾液の析出物を溶解すれば、上述の操作を繰り返すことによって、trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)及びcis-2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)を交互に析出し濾別することができる。
置換ピペラジン化合物(1)は、4つのアミノ基によって、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素等の酸性ガスに対する吸収剤としての機能を発揮する。その分子構造は、二酸化炭素の吸収に優れた性能を発揮するピペラジンとMDEAとの組み合わせを模倣して設計されているので、特に二酸化炭素に対する吸収性能が期待される。置換ピペラジン化合物(1)を吸収剤として用いた吸収液における二酸化炭素の吸収・放散性能は、図1から理解される。図1は、トランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)を吸収剤として用いた吸収液における二酸化炭素のローディング(吸収剤1モル当たりの吸収二酸化炭素モル数)を測定した結果を示し、比較のために、ピペラジン/MDEA(モル比=1:2)の吸収液における測定結果を合わせて記載している(尚、図1において、「PZ」はピペラジンを、「TEDAPz」は置換ピペラジン化合物(1)を示す)。
図1に示す測定結果から判るように、置換ピペラジン化合物(1)の吸収液は、温度が50℃(開始から60分まで)において二酸化炭素を吸収し、温度が80℃(60分以降)において二酸化炭素を放出する。従って、置換ピペラジン化合物(1)は二酸化炭素の吸収剤として機能し、これを有効成分として二酸化炭素処理用の吸収剤を構成することができる。ピペラジン/MDEAの混合吸収液と比較すると、トランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)の吸収液における二酸化炭素の吸収速度は小さいが、吸収液の加熱再生時に吸収剤の放散が抑制される点を活かして温度条件を最適化することによって、より多くの二酸化炭素のローディングが可能である。シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)についても、吸収剤として用いた吸収液は良好な吸収性能を示すことが、後述する図4の結果から明らかである。シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)は、トランス型のものよりも、ピペラジン/MDEAの混合吸収液に近い吸収挙動を示す。このように、置換ピペラジン化合物(1)は、シス型及びトランス型の何れも吸収剤として有用である。従って、置換ピペラジン化合物(1)は、シス型及びトランス型の混合状態で吸収剤として用いることも可能である。
置換ピペラジン化合物(1)を吸収剤として使用して吸収液を調製する際に、助剤の添加や溶媒組成の調整によって、吸収液の吸収・放散性能を改善することが可能である。助剤としては、ピペラジンとMDEAの組み合わせにおけるMDEAの役割をする化合物、つまり、置換ピペラジン化合物(1)に対して水素イオンの収受を行う水素イオン受容体として作用し得る化合物が使用可能である。従って、活性メチレン基を有する各種化合物から選定することができ、例えば、MDEAや2−(イソプロピルアミノ)エタノール(IPAE)などが挙げられるが、アミノ化合物に限定する必要はない。但し、吸収液中の置換ピペラジン化合物(1)が溶存安定性の点から、置換ピペラジン化合物(1)と親和性を有する水溶性の化合物が適している。置換ピペラジン化合物(1)より酸解離定数pKaが高い化合物であると、共存状態において水素イオン受容体として作用し易い。化合物のpKa値は、測定条件によって変化するが、同じ測定条件でのpKa値を用いた比較によって簡易的に選定することができる。例えば、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル等のオキソカルボン酸エステル及びマロン酸ジエステルは活性水素を有し、pKa値が高い(アセト酢酸エチル:11、マロン酸ジメチル:13)ので、このような構造を含んだ水溶性化合物を助剤として使用可能である。また、マロノニトリル、シアノ酢酸エチル等のシアノ化合物やメルドラム酸等も活性メチレン基を有する。
助剤として使用可能な、MDEA及びIPAE以外のアミノ化合物としては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(プロピルアミノ)エタノール(PAE)、N−エチル−2−アミノ−2−メチルプロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の鎖状アミノアルカノール類が挙げられる。実用的には、水溶性の観点では、炭素数が10以下、好ましくは5以下の鎖状脂肪族アミノアルコール類が好ましい。pKa値の高さでは、アミノ基数及び水酸基数の和が3以下である鎖状脂肪族アミノアルコールであると好ましく、概してpKa値が8.5程度以上であると好適である。
吸収剤として、他のアミノ化合物を置換ピペラジン化合物(1)と組み合わせて使用しても良い。但し、置換ピペラジン化合物(1)は、加熱再生時に気化し難い吸収剤として設計された化合物であるので、これと組み合わせて使用するには、同等に気化し難い吸収剤を選択することが望ましい。従って、分子量が大きいアミノ化合物が好ましく、例えば、ジグリコールアミン等のアミノポリオール類などが挙げられる。
一般的に、吸収液の吸収剤濃度は、処理対象とするガスに含まれる二酸化炭素等の酸性ガスの量や処理速度等に応じて適宜設定することができ、吸収液の流動性や消耗損失抑制などの点を考慮して、10〜50質量%程度の濃度が適用される。例えば、二酸化炭素含有量20%程度のガスの処理に対して、濃度30質量%程度の吸収液が好適に使用される。本発明においても、処理対象とするガスの酸性ガス含有量や処理速度等に応じて吸収剤の濃度を適宜設定することができ、吸収剤の濃度は、吸収液の10〜50質量%程度が好ましい。助剤として水素イオン受容性化合物を添加する場合は、吸収剤と助剤との総量として10〜50質量%程度の濃度が適用される。助剤の濃度は、吸収剤のヘテロ窒素(ピペリジン環のアミノ基)に対してモル当量の0.5〜1.2倍程度に相当するように設定するとよい。吸収剤と助剤とを組み合わせることによって、吸収液の二酸化炭素吸収速度が速まり、接触時間当たりの吸収量つまり吸収性能が向上する。
又、アルコール類、ポリオール類等のアルコール系溶剤は、置換ピペラジン化合物(1)の溶解安定性を高めるのに有効であるので、このような溶剤を含んだ水性液を溶媒として用いて吸収液を調製しても良い。溶剤の添加によって、吸収剤としての機能発現を安定化し得る。アルコール系溶剤を添加する場合、酸性ガスの溶解性等を考慮して水性液の溶剤濃度を設定すると好ましい。更に、必要に応じて、従来使用されている他の各種添加剤を吸収液に配合しても良い。
置換ピペラジン化合物(1)を吸収剤として含有する水性液を調製し、これを吸収液として用いて、ガスと吸収液とを気液接触させることにより、ガス中に含まれる酸性ガスが吸収液に吸収される。従って、硫黄酸化物、窒素酸化物、二酸化炭素、硫化水素、ハロゲン化水素等の酸性ガスを除去する酸性ガス処理用の吸収液に利用することができ、燃焼排ガス等のガス処理に適用できる。必要に応じて、ガスの吹き込みによるスクラバ洗浄や、充填材を通過させる形態など、様々な処理形態から適宜選択して処理を実施することができる。吸収液に吸収された酸性ガスは、熱平衡に従って放散し得るので、加熱によって吸収液は再生され、再度使用可能になる。概して、再生時の吸収液の加熱温度は沸点近傍に設定することができる。必要に応じて再生雰囲気の圧力を調整することによって、加熱温度を適宜調整することができる。
[置換ピペラジン化合物(1)の合成1]
前述の合成ルートに従って、以下の手順による置換ピペラジン化合物(1)の合成を行った。下記の合成では、トランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)を得た。
<2,5−ピラジンジカルボン酸(3)>
ピリジンと水の混合液(混合質量比:20/1)840mlに、54g(498mmol)の2,5−ジメチルピラジン(東京化成社製)、及び、224g(2.02mol)の二酸化セレンを加えて攪拌し、この混合物を48時間加熱還流した。反応液を常温まで冷却して濾過し、濾過残渣をピリジンと水の混合液(混合質量比:20/1)で洗浄して、濾液及び洗浄液を合わせて液体を留去し、固形物を得た。
得られた固形物を、抽出溶媒として用いた2Mジメチルアミン水溶液に分散させ、濾過によって残留固形物を抽出液から除去した。抽出液から溶媒を留去することにより、71g(収率85%)の2,5−ピラジンジカルボン酸(3)を得た。
<2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)>
9.35g(167mmol)の水酸化カリウム及び11g(65mmol)の2,5−ピラジンジカルボン酸(3)を水(200ml)に溶解した。この溶液に、反応基質に対して5mol%の割合で5%Pd/C触媒を添加し、50℃に加熱しながら水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を18時間行った。原料が消費され定量的に反応が進行していることをガスクロマトグラフで確認した。反応液を濾過して触媒を除去することにより、生成物の水溶液を得た。この生成物は、1H NMR測定で得られた測定結果が、参照文献(Witiak, D.T.; Nair, R.V.; Schmid, F.A., "Synthesis and antimetastatic properties of stereoisomeric tricyclic bis(dioxopiperazines) in the Lewis lung carcinoma model", J. Med. Chem. 1985, 28, 1228-1234)に記載される化学シフト値と一致したことによって、2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)であることを確認した。
<2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の異性体分離>
上述において生成物の水溶液として得た2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の水溶液に、3MHCl水溶液を添加してpHを6.3に調整したところ、水溶液から白色の固形物が析出した。水溶液の濾過によって固形物を分離し、これを乾燥して7gの固形物を得た。得られた固形物の1H NMR測定結果から、この固形物がトランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)である(収率63%)ことを前記参照文献によって確認した。
一方、上述の濾過で得られた濾液に3MHCl水溶液を添加してpHを3.0に調整し、濾過後の析出物を濾液に溶解させた。この水溶液に2MKOH水溶液を添加してpHを4.3に調整したところ、水溶液から白色の固形物が析出した。この水溶液の濾過によって固形物を分離し、これを乾燥して4gの固形物を得た。1H NMR測定結果から、この固形物がシス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)である(収率37%)ことを前記参照文献によって確認した。
<2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の異性化>
前述の水素添加反応によって得られた、シス:トランス混合物(1:1)である2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の水溶液をオートクレーブに投入し、200℃で16時間加熱した。得られた水溶液に含まれる生成物は、トランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸であり、シス型からトランス型への異性化が進行したことが、1H NMR測定により確認された。
<trans-エステル化合物(trans-5):trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジメチルエステル>
14g(78mmol)のtrans-2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)をメタノール(800ml)に溶解し、触媒として濃硫酸(80g、10eq)を加えて18時間加熱還流することによって脱水反応を進行させた。反応後、飽和炭酸ナトリウム水溶液及び塩化メチレンを加え、水相のpHを9.0に調整して有機相と水相とを分離した。有機相を取り出して塩化メチレン及び余剰のメタノールを留去して濃縮し、残留物にヘキサンを加えることによって、ヘキサンから析出物が生じた。この析出物を濾過によって分離して乾燥することにより、10.5gの生成物を得た。得られた生成物の1H NMR測定を行って、上述の参照文献における測定値との一致により、生成物はtrans-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジメチルエステルであることが確認された(収率69%)。
<trans-ジアミド化合物(trans-7):trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)アミド>
1.3g(6.3mmol)のtrans-エステル化合物(trans-5)と1.3g(13mmol)のジエタノールアミン(6)との混合物を80℃で2時間加熱して縮合反応を進行させた。反応液は固化し、この固化物をメタノールで洗浄して残留ジエタノールアミンを固化物から除去し、デカンテーションして、粗生成物として固化物2.3gを得た。得られた固化物の1H NMR測定によって、trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸の2つのカルボキシ基がジエタノールアミンによってアミド化されたtrans-ジアミド化合物(trans-7)であることが確認された(収率96%)。
(測定結果)
trans-ジアミド化合物(trans-7):白色固体、mp102.5−103.8℃(from AcOEt/Et2O)
1H NMR(399.78MHz,D2O):δ=3.76(dd,J=11.0, 3.0Hz,2H),3.66-3.38(m,14H),3.27(dt,J=13.6, 6.0Hz,2H)、3.04(dd,J=13.4,3.0Hz,2H),2.52(dd,J=13.4, 11.0Hz,2H),6H(-NH, -OH) was not observed
13C NMR(100.53MHz,D2O):δ=173.85(2C),59.39(2C),59.37(2C),54.98(2C),50.84(2C),48.66(2C),46.61(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C14H29N4O6[M+H]+ 349.2082, found 349.2082
<trans-ジアミド化合物(trans-7)の水酸基保護>
上述の生成方法によって得られた5.0g(13mmol)のtrans-ジアミド化合物(7)をN,N−ジメチルホルムアミド(15ml)に溶解して0℃に冷却し、2.2g(7eq)の水素化ナトリウムを加えた。これに1.6g(7eq)の臭化ベンジルを滴下した後、3時間攪拌して反応を進行させた。この後、反応液に水を加えて攪拌することによって反応を止め、溶媒を減圧留去して残渣物を得た。この残渣物に酢酸エチルを加えて有機相とし、この有機相を水及び食塩水を用いて順次洗浄した。洗浄後の有機相を取り出し、乾燥剤で乾燥した後に溶媒を源圧留去して濃縮した。この濃縮物を、エーテルを用いて結晶化することにより、10.7gの白色の固体が得られた。得られた白色固体の1H NMR測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、trans-ジアミド化合物(7)の4つの水酸基及び2つの環状アミノ基において水素がベンジル基に置換された保護アミド化合物(trans-8)であることが確認された(収率88%)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl3):δ=7.33-7.17(m,30H),4.38(s,4H)、4.17(dd,J=16.0,12.0Hz,4H),3.78-3.38(m,20H),3.08(d,J=12.8Hz,2H),2.84(d,J=11.2Hz,2H),2.50(t,J=11.2Hz,2H)
<保護アミド化合物(trans-8)の還元>
上述の生成方法によって得た9.5g(10mmol)の保護アミド化合物(trans-8)を脱水THF(100ml)に加えて溶解し、保護アミド化合物溶液を調製した。0.8g(2eq)のLiAlH4のTHF溶液を調製して、これを攪拌しながら、保護アミド化合物溶液を徐々に滴下して混合し、14時間加熱還流して反応を進行させた。この後、反応液を室温に冷却し、攪拌しながら、水(0.8ml)、15%水酸化ナトリウム水溶液(0.8ml)及び水(2.4ml)を順次ゆっくりと反応液に滴下した。セライトを用いて反応液を吸引濾過して反応液から沈殿物を除去し、濾過残渣をTHFで良く洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせてTHFを留去して、無色の油状生成物7.7gを得た。
得られた油状生成物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、置換ピペラジン化合物(trans-1)の水酸基及びアミノ基の水素がベンジル基に置換された保護アミン化合物(trans-9)であることが確認された(収率89%)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl3):δ=7.25-7.15(m,30H),4.32(s,8H)、4.09(d,J=13.6Hz,2H),3.33(m,8H),3.09(d,J=13.6Hz,2H),2.80(dd,J=14.4,12.4Hz,4H),2.57(t,J=6.2Hz,8H),2.37(m,4H),2.00(m,2H)
13C NMR(600.13MHz、CDCl3):δ=139.4(2C),138.5(4C),128.9(4C),128.3(8C),128.1(4C),127.6(8C),127.4(4C),126.6(2C),73.0(8C),68.9(4C),58.2(2C),58.1(2C),55.0(4C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C56H69N4O4[M+H]+ 861.5313, found 861.5307
<置換ピペラジン化合物(trans-1):trans-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン>
上述の生成方法によって得た1.35g(1.6mmol)の保護アミン化合物(trans-9)を99%エタノール(30ml)に加えて溶解し、この溶液に、反応基質に対して5mol%の割合で5%Pd/C触媒を添加し、攪拌しながら室温で水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を24時間行った。この反応液を、オートクレーブ中で80℃に加熱しながら、更に水素の供給を続けて、水素添加反応を24時間行った。ガスクロマトグラフによって、原料が消費され定量的に反応が進行していることを確認した。
反応液を濾過して触媒を除去することによって得た濾液からエタノールを減圧留去し、得られた固形物にHCl水溶液及びベンゼンを加えて溶解した後に分液して水相を取り出した。この水相を、NaOH水溶液を用いて塩基性に調整した後に、酢酸エチルを用いて分液し、有機相を取り出して酢酸エチルを留去することによって、白色固体状の生成物0.5gを得た。これをエタノール中での再結晶によって精製した。
精製した生成物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定、元素分析、及び、粉末X線回折を行った。測定結果は、以下の通りであり(DSS:3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム)、粉末X線回折における回折強度を示すチャートは図2に示す。この結果から、生成物は、trans-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン(精製物は、その二水和物)であることが確認された(収率99%、融点112.2−114.0℃(from EtOH))。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,D2O,内部標準:DSS):δ=3.63(m,8H),2.98(dd,J=16.0,2.8Hz,2H),2.68(m,10H),2.51(dd,J=16.0,4.4Hz,2H),2.43(dd,J=12.4,8,4Hz,2H),2.36(t,J=11.6Hz,2H)
13C NMR(600.13MHz、D2O,内部標準:DSS):δ=61.7(4C),60.3(2C),59.0(4C),55.4(2C),51.2(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C14H33N4O4[M+H]+ 321.2496, found 321.2497
元素分析:calcd for C14H32N4O4・2H2O:C,47.17;H,10.18;N,15.72, found:C,47.42;H,10.16;N,15.58
[置換ピペラジン化合物(1)の合成2]
下記の合成では、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)を得た。
<cis-エステル化合物(cis-5)>
上述の生成方法によって得た175mg(1mmol)のcis-2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)をメタノール10mlに溶解し、触媒として濃硫酸(0.46ml)を加えて18時間加熱還流することによって脱水反応を進行させた。反応後、飽和炭酸ナトリウム水溶液及び塩化メチレンを加え、水相のpHを9.0に調整して有機相と水相とを分離した。有機相を取り出して塩化メチレン及び余剰のメタノールを留去して濃縮し、残留物にヘキサンを加えることによって、ヘキサンから析出物が生じた。この析出物を濾過により分離して乾燥することにより、123mgの生成物を得た。得られた生成物の1H NMR測定により、生成物はcis-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジメチルエステルであることが、上述の参照文献の測定値との一致によって確認された(収率61%)。
<cis-ジアミド化合物(cis-7)及びその水酸基保護>
1.1g(5.2mmol)のcis-エステル化合物(cis-5)と1.1g(10mmol)のジエタノールアミンとの混合物を80℃で24時間加熱して縮合反応を進行させた。反応液を室温まで冷却して得られた固化物をアセトンで洗浄してデカンテーションによりアセトンを除去して、cis-ジアミド化合物(cis-7)の固形の粗生成物が得られた。得られた固形の粗生成物をそのまま使用して、以下の操作を行った。
上述のcis-ジアミド化合物(cis-7)の粗生成物を、N,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に溶解して0℃に冷却し、水素化ナトリウム(2.3g、10eq)を加えた。これに臭化ベンジル(6.2ml、7eq)を滴下した後、3時間攪拌して反応を進行させた。この後、反応液に水を加えて攪拌することによって反応を止め、溶媒を減圧留去して残渣物を得た。この残渣物に酢酸エチルを加えて有機相とし、この有機相を水及び食塩水を用いて順次洗浄した。洗浄後の有機相を取り出し、乾燥剤で乾燥した後に溶媒を減圧留去して濃縮することにより、無色の油状物が得られた。得られた油状物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-ジアミド化合物(cis-7)の4つの水酸基及び2つの環状アミノ基において水素がベンジル基に置換された保護アミド化合物(cis-8)であることが確認された(3.14g、cis-エステル化合物(cis-5)からの収率:68%)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl3):δ=7.33-7.17(m,30H),4.38(s,4H)、4.17(dd,J=16.0,12.0Hz,4H),3.78-3.38(m,20H),3.08(d,J=12.8Hz,2H),2.84(d,J=11.2Hz,2H),2.50(t,J=11.2Hz,2H)
13C NMR(100.53MHz、CDCl3):δ=171.2(2C),138.4(2C),138.2(2C),137.9(2C),128.7(4C),128.3(4C),128.3(4C),128.2(4C),127.6(2C),127.5(4C),127.5(2C),127.5(4C),126.9(2C),73.1(2C),73.0(2C),73.0(2C),68.3(2C),58.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),46.2(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C56H65N4O6[M+H]+ 889.4899, found 889.4894
<保護アミド化合物(cis-8)の還元>
上述の生成方法によって得た307mg(0.345mmol)の保護アミド化合物(cis-8)を脱水THF(30ml)に加えて溶解し、保護アミド化合物溶液を調製した。LiAlH4(59mg、4eq)を加え、18時間加熱還流した。原料の消失が確認され、反応液を室温に冷却し、攪拌しながら、水(60μl)、15%水酸化ナトリウム水溶液(210μl)及び水(60μl)を順次ゆっくりと反応液に滴下した。セライトを用いて反応液を吸引濾過して反応液から沈殿物を除去し、濾過残渣をTHFで良く洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせてTHFを留去して、無色の油状生成物(238mg)を得た。
得られた油状生成物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジンの水酸基及びアミノ基の水素がベンジル基に置換された保護アミン化合物(cis-9)であることが確認された(収率80%)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl3):δ=7.25-7.15(m,30H),4.30(s,8H)、3.92(d,J=13.6Hz,2H),3.33(m,8H),2.71-2.40(m,20H)
13C NMR(600.13MHz、CDCl3):δ=139.9(2C),138.5(4C),128.7(4C),128.3(8C),128.0(4C),127.5(8C),127.4(4C),126.6(2C),73.7(4C),73.0(4C),68.8(4C),58.5(2C),57.0(2C),54.9(2C),53.1(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C56H69N4O4[M+H]+ 861.5313, found 861.5314
<置換ピペラジン化合物(cis-1):cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン>
上述の生成方法によって得た231mg(0.269mmol)の保護アミン化合物(cis-9)を99%エタノール(15ml)に加えて溶解し、この溶液に、反応基質に対して5mol%の割合で5%Pd(OH)2/C触媒を添加し、攪拌しながら室温で水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を24時間行った。この反応液を、オートクレーブ中で80℃に加熱しながら、更に水素の供給を続けて、水素添加反応を24時間行った。ガスクロマトグラフによって、原料が消費され定量的に反応が進行していることを確認した。
反応液を濾過して触媒を除去することによって得た濾液からエタノールを減圧留去し、得られた濃縮物にHCl水溶液及びベンゼンを加えて溶解した後に分液して水相を取り出した。この水相を、NaOH水溶液を用いて塩基性に調整した後に、酢酸エチルを用いて分液し、有機相を取り出して酢酸エチルを留去することによって、固体状の生成物(77mg)を得た(収率89%)。
[置換ピペラジン化合物(1)の合成3]
下記の合成によって、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)を得た。
<cis-ジアミド化合物(cis-7)及びその水酸基保護>
3.0g(15mmol)のcis-エステル化合物(cis-5)と3.3g(32mmol)のジエタノールアミンとの混合物を80℃で24時間加熱して縮合反応を進行させた。反応液を室温まで冷却して得られた固化物をアセトンで洗浄してデカンテーションによりアセトンを除去して、cis-ジアミド化合物(cis-7)の固形の粗生成物が得られた。得られた固形の粗生成物をそのまま使用して、以下の操作を行った。
上述のcis-ジアミド化合物(cis-7)の粗生成物を、N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)に溶解して0℃に冷却し、水素化ナトリウム(5.0g、10eq)を加えた。これに臭化ベンジル(18ml、10eq)を滴下した後、4時間攪拌して反応を進行させた。この後、反応液に水を加えて攪拌することによって反応を止め、溶媒を減圧留去して残渣物を得た。この残渣物に酢酸エチルを加えて有機相とし、この有機相を水及び食塩水を用いて順次洗浄した。洗浄後の有機相を取り出し、乾燥剤で乾燥した後に溶媒を減圧留去して濃縮することにより、無色の油状物が得られた。得られた油状物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-ジアミド化合物(cis-7)の4つの水酸基及び2つの環状アミノ基において水素がベンジル基に置換された保護アミド化合物(cis-8)であることが確認された(8.07g、cis-エステル化合物(cis-5)からの収率:60%)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl3):δ=7.28-7.17(m,30H),4.40(s,4H)、4.31(s,4H),3.87(d,J=14.0Hz,2H),3.75-3.37(m,22H),2.50-2.48(m,2H)
13C NMR(100.53MHz、CDCl3):δ=171.2(2C),138.4(2C),138.2(2C),137.9(2C),128.7(4C),128.3(4C),128.3(4C),128.2(4C),127.6(2C),127.5(4C),127.5(2C),127.5(4C),126.9(2C),73.1(2C),73.0(2C),73.0(2C),68.3(2C),58.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),46.2(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C56H65N4O6[M+H]+ 889.4899, found 889.4894
<保護アミド化合物(cis-8)の還元>
上述の生成方法によって得た307mg(0.345mmol)の保護アミド化合物(cis-8)を脱水THF(30ml)に加えて溶解し、保護アミド化合物溶液を調製した。LiAlH4(59mg、4eq)を加え、18時間加熱還流した。原料の消失が確認され、反応液を室温に冷却し、攪拌しながら、水(60μl)、15%水酸化ナトリウム水溶液(210μl)及び水(60μl)を順次ゆっくりと反応液に滴下した。セライトを用いて反応液を吸引濾過して反応液から沈殿物を除去し、濾過残渣をTHFで良く洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせてTHFを留去して、無色の油状生成物(238mg)を得た。
得られた油状生成物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジンの水酸基及びアミノ基の水素がベンジル基に置換された保護アミン化合物(cis-9)であることが確認された(収率80%)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl3):δ=7.25-7.15(m,30H),4.30(s,8H)、3.92(d,J=13.6Hz,2H),3.30(m,8H),2.71-2.40(m,20H)
13C NMR(600.13MHz、CDCl3):δ=139.9(2C),138.5(4C),128.7(4C),128.3(8C),128.0(4C),127.5(8C),127.4(4C),126.6(2C),73.7(4C),73.0(4C),68.8(4C),58.5(2C),57.0(2C),54.9(2C),53.1(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C56H69N4O4[M+H]+ 861.5313, found 861.5314
<置換ピペラジン化合物(cis-1):cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン>
上述の生成方法によって得た1.04g(1.20mmol)の保護アミン化合物(cis-9)を99%エタノール(50ml)に加えて溶解し、この溶液に、反応基質に対して20mol%の割合で20%Pd(OH)2/C触媒を添加し、攪拌しながら室温で水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を24時間行った。この反応液を、オートクレーブ中で80℃に加熱しながら、更に水素の供給を続けて、水素添加反応を24時間行った。ガスクロマトグラフによって、原料が消費され定量的に反応が進行していることを確認した。
反応液を濾過して触媒を除去することによって得た濾液からエタノールを減圧留去し、得られた濃縮物にエーテルを加えたところ、白色固体が析出した。この固体を濾取し、固体状の生成物(331mg)を得た。
得られた生成物について、1H NMR測定及び13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定、元素分析、及び、粉末X線回折を行った。測定結果は、以下の通りであり、粉末X線回折における回折強度を示すチャートは図3に示す。この結果から、生成物は、置換ピペラジン化合物(cis-1)であることが確認された(収率86%、融点98.4−99.6℃)。
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,D2O,内部標準:DSS):δ=3.65(m,8H),2.89(m,4H)、2.70(m,12H)、2.50(dd,J=13.2, 4.4Hz,2H)
13C NMR(600.13MHz、D2O,内部標準:DSS):δ=61.7(4C),58.8(4C),58.3(2C),53.2(2C),47.1(2C)
HRMS(ESI+)m/z:calcd for C14H33N4O4[M+H]+ 321.2496, found 321.2495
元素分析:calcd for C14H32N4O4:C,52.48;H,10.07;N,17.49, found:C,52.43;H,9.68;N,16.72
[置換ピペラジン化合物(trans-1)の二酸化炭素に対する吸収・放散性能]
6.4g(20mmol)の置換ピペラジン化合物(trans-1)を吸収剤として水に溶解し、濃度が0.4mol/Lの水溶液50mlを調製し、これを吸収液として、以下のようにして二酸化炭素に対する吸収・放散性能を測定した。又、1.7gのピペラジン(20mmol)及び4.8gのMDEA(40mmol)を水に溶解して、ピペラジン濃度が0.4mol/L、MDEA濃度が0.8mol/Lの水溶液50mlを調製し、これを比較用の吸収液として、同様に吸収・放散性能を測定した。
吸収液50mLに二酸化炭素を140mL/分の速度で吹き込んで、二酸化炭素との気液接触時間を90分間に設定して二酸化炭素の吸収処理を行った。この間、0〜60分においては吸収液の温度を50℃に維持し、60分以降は温度を80℃に上昇させて、吸収液の13C−NMRスペクトルの測定によって、吸収液に含まれる二酸化炭素量の経時変化を調べた。得られた結果を、二酸化炭素のローディング(アミン当たりの二酸化炭素吸収量[mol-CO2/mol-アミン])の変化として示すと、図1のようになる。図1から判るように、何れの吸収液においても、温度が50℃である0〜60分においては、吸収液は二酸化炭素を吸収し、温度が80℃に上昇した60分以降においては二酸化炭素を放散し、吸収液として使用可能であることが明らかである。
比較用のピペラジン/MDEA吸収液においては、二酸化炭素を吸収するに従って、ピペラジン(PZ)が、PZ−モノカルバメートを経てPZ−ジカルバメートに変化し、これらを通じた二酸化炭素の溶解が、MDEAのプロトン受容体としての作用によって促進される。このような性質によって、比較用の吸収液における二酸化炭素のローディングが急速に増加した後に一定レベルに漸近することを考えると、置換ピペラジン化合物(trans-1)吸収液が、相対的に緩やかな増加が継続するローディング曲線を示すのは、ピペラジン環のアミノ基と置換基側のアミノ基との間での役割分担がさほど明確ではなく、協働性について互いの独立性を残していると考えられる。この点は、吸収液の溶媒組成、他の成分の共存によって改善し得ると考えられる。
[置換ピペラジン化合物(cis-1)の二酸化炭素に対する吸収・放散性能]
上述のトランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)の吸収・放散性能の測定と同じ条件で、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)の吸収・放散性能を測定した。測定結果を、二酸化炭素吸収量(吸収液の容積当たりの二酸化炭素吸収量[g/L])の経時変化、つまり、吸収液の二酸化炭素濃度の経時変化として、図4のグラフに示す。図4においては、トランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)による上述の結果も併せて記載する。
図4によると、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)による二酸化炭素の吸収量は、急速に増加した後に一定レベルに漸近し、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)の方が、トランス型のものよりも、ピペラジン/MDEAの吸収液に近い吸収挙動を示す。このことから、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)においては、ピペラジン環のアミノ基と置換基側のアミノ基との間での役割分担がなされ、置換基側のアミノ基が、MDEAと同様のプロトン受容体としての作用をすると考えられる。従って、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)は、ピペラジン/MDEA混合系に基づく分子設計から期待される性能を示す化合物であると言え、これを吸収剤として吸収液を構成すると、良好な吸収速度で二酸化炭素を吸収し得る。
本発明は、酸性ガス処理用の吸収液に調製して、火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備から排出される二酸化炭素等の酸性ガスを含む排ガスの処理等において好適に利用でき、その二酸化炭素放出量や、酸性ガスによって環境に与える影響などの軽減に有用である。二酸化炭素処理用の吸収液として、処理性能の向上や、対象となるガスへの対応力の向上に有用であり、環境保護への貢献が可能である。

Claims (5)

  1. 下記の一般式で表される置換ピペラジン化合物。
    Figure 0006860147
  2. 請求項1に記載の置換ピペラジン化合物を有効成分とする酸性ガスの吸収剤。
  3. 請求項1に記載の置換ピペラジン化合物を有効成分とする二酸化炭素の吸収剤。
  4. 請求項1に記載の置換ピペラジン化合物及び水を含有する、酸性ガス処理用の吸収液。
  5. 請求項1に記載の置換ピペラジン化合物及び水を含有する、二酸化炭素処理用の吸収液。
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