JP6863076B2 - 多結晶ダイヤモンドおよびその製造方法、スクライブツール、スクライブホイール、ドレッサー、回転工具、伸線ダイス、切削工具、電極ならびに多結晶ダイヤモンドを用いた加工方法 - Google Patents
多結晶ダイヤモンドおよびその製造方法、スクライブツール、スクライブホイール、ドレッサー、回転工具、伸線ダイス、切削工具、電極ならびに多結晶ダイヤモンドを用いた加工方法 Download PDFInfo
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Description
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。ここで、本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。また、本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるべきではない。
本実施形態にかかる多結晶ダイヤモンドは、ダイヤモンド単相を基本組成とし、複数の結晶粒により構成される。さらに、多結晶ダイヤモンドは、ホウ素と、ホウ素化合物と、水素と、酸素とを含み、残部が炭素および微量不純物である。ホウ素は、結晶粒中に原子レベルで分散し、かつその90原子%以上が孤立置換型として存在する。ホウ素化合物、水素および酸素は、結晶粒中に孤立置換型または侵入型(ホウ素化合物の場合は、クラスターとして部分的に格子を置換するクラスター置換型またはクラスターとして侵入するクラスター侵入型を含む。)で含まれる。ホウ素化合物は、酸素を含有するホウ素化合物(以下、酸素含有ホウ素化合物ともいう)を含む。結晶粒は、その粒径が500nm以下である。多結晶ダイヤモンドは、その表面が保護膜で被覆されている。
測定装置: 商品名(品番)「X’pert」、PANalytical社製
X線光源: Cu−Kα線(波長は1.54185Å)
走査軸: 2θ
走査範囲: 20°〜120°
電圧: 40kV
電流: 30mA
スキャンスピード: 1°/min
半値幅は、ピークフィッティングの上、Scherrer式(D=Kλ/Bcosθ)から求めた。ここで、Dはダイヤモンドの結晶粒の粒径、Bは回折線幅、λはX線の波長、θはブラッグ角、KはSEM像との相関から定まる補正係数(0.9)を用いる。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドにおいては、ホウ素が原子レベルで分散しかつ全体の90原子%以上が孤立置換型で存在するとともに、ホウ素化合物、水素および酸素が孤立置換型または侵入型で存在する。ここで、ホウ素化合物の場合は、クラスターとして部分的に格子を置換するクラスター置換型またはクラスターとして侵入するクラスター侵入型で存在する場合を含む。これらのことから、多結晶ダイヤモンドの内部からその表面に露出したホウ素、ホウ素化合物、水素および酸素の少なくともいずれかとの反応、あるいはこれらの元素および化合物の少なくともいずれかと大気中の酸素との反応などにより酸化膜が形成されて、その酸化膜が保護膜として多結晶ダイヤモンドの表面を被覆する。かかる保護膜により、多結晶ダイヤモンドの耐酸化性が高くなるとともに、摩擦係数が低減するため、摺動特性および耐摩耗性が高くなる。本実施形態の多結晶ダイヤモンドにおいて、保護膜は、多結晶ダイヤモンドの内部からその表面に析出することにより形成される析出物を含んでいてもよい。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドにおいて、その表面に好適な保護膜として酸化膜を形成する観点から、ホウ素(原子レベルで分散しているホウ素、以下同じ。)およびホウ素化合物中のホウ素の合計の原子濃度は、1×1014cm-3以上1×1022cm-3以下が好ましく、1×1014cm-3以上1×1021cm-3以下がより好ましい。ホウ素の原子濃度のより好ましい範囲は、好ましい範囲に比べて、保護膜の不良率が激減し、歩留が30%以上から90%以上に向上する。ここで、多結晶ダイヤモンドの表面により好適な保護膜として酸化膜を形成する観点から、ホウ素の原子濃度とホウ素化合物中のホウ素の原子濃度との比は、100:1から100:10までの範囲が好ましい。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドにおいて、結晶中に酸素を安定して含むことができるとともに、硬度の低下および結晶粒径の増大を抑制できる観点から、水素の原子濃度は、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下が好ましく、1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下がより好ましい。しかしながら、たとえ硬度が低下しても、ヌープ硬度が50GPa程度の立方晶型窒化ホウ素、90GPa程度の工業用Ib型ダイヤモンド単結晶よりも高い硬度を有するため、耐摩耗性特性を活かす用途(たとえば、線引きダイス用、摺動部品用など)では十分に有用である。結晶中に水素がない場合は、酸素は多結晶ダイヤモンド中の炭素と反応して酸化炭素(COx)系ガスとなり高温で抜けやすく多結晶ダイヤモンドの結晶内への酸素の添加が困難である。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドにおいて、表面における酸化膜である保護膜の形成が促進され耐酸化性が向上し摩擦係数が低下するとともに、硬度の低下および結晶粒径の増大を抑制できる観点から、酸素の原子濃度は、1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下が好ましく、1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下がより好ましい。
多結晶ダイヤモンドに含まれる微量不純物とは、多結晶ダイヤモンドの製造上、微量に含まれる可能性がある化合物の総称をいう。微量不純物として含まれる各化合物の含有量(原子濃度)は、それぞれ0cm-3以上1×1016cm-3以下であり、各化合物の総和(すなわち微量不純物の含有量(原子濃度))は0cm-3以上1×1017cm-3以下である。したがって、微量不純物は多結晶ダイヤモンドに含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。微量不純物としては、B4Cなどを含む。これら以外の微量不純物には遷移金属元素に分類される金属元素を含む化合物などが挙げられる。
図1は、本実施形態の多結晶ダイヤモンドのSIMSの結果の一例を示すグラフである。図1に示す多結晶ダイヤモンドは、後述の液相法により形成されたホウ素、ホウ素化合物、水素および酸素を含む黒鉛を16GPaかつ2100℃の条件で直接ダイヤモンドに変換したものである。また、SIMSの測定条件は、以下のとおりである。
測定装置: 商品名(品番):「IMS−7f」、AMETEK社製
一次イオン種: セシウム(Cs+)
一次加速電圧: 15kV
検出領域: 30(μmφ)
測定精度: ±40%(2σ)。
図2は、本実施形態の多結晶ダイヤモンドの表面のTOF−SIMSの結果の一例を示すグラフである。図2に示す多結晶ダイヤモンドは、図1に示すSIMSに用いた多結晶ダイヤモンドである。また、TOF−SIMSの測定条件は以下のとおりである。
測定装置: TOF−SIMS質量分析計(飛行時間二次イオン質量分析計)
一次イオン源: ビスマス(Bi)
一次加速電圧: 25kV。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドは、ラマンスペクトル測定において、1575cm-1±30cm-1を中心として半値幅が20cm-1以下となるピークの面積が、1300cm-1±30cm-1を中心として半値幅が60cm-1以下となるピークの面積の1%未満が好ましく、0.2%未満がより好ましい。かかる多結晶ダイヤモンドはアモルファス炭素またはグラファイト炭素(SP2炭素)に由来する1575cm-1±30cm-1を中心として半値幅が20cm-1以下となるピークの面積が、ダイヤモンド炭素(SP3炭素)に由来する1300cm-1±30cm-1を中心として半値幅が60cm-1以下となるピークの面積の1%未満であることから、グラファイト炭素はほぼ完全に(具体的には99原子%以上が)ダイヤモンド炭素に変換されているため、高い硬度を有する。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドは、その表面の動摩擦係数が、0.06以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.04以下がさらに好ましく、0.03以下が特に好ましく、0.02以下が最も好ましい。かかる多結晶ダイヤモンドは、大気中における動摩擦係数が0.06以下と低いことから、摺動特性が高く、耐摩耗性が高い。
本実施形態の多結晶ダイヤモンドにおいて、その表面を保護する保護膜として形成される酸化膜は、BOxクラスターと、炭素の酸素終端となるOおよびOHの少なくともいずれかと、を含むことが好ましい。BOxクラスターは表面に露出したB(ホウ素)が大気中の酸素および結晶中の酸素(真空中または不活性ガス中では結晶中の酸素)と反応することにより得られるものと考えられ、炭素の酸素終端となるOおよびOHは表面に露出した炭素が大気中の酸素および結晶中の酸素(真空中または不活性ガス中では結晶中の酸素)と反応することにより得られたものと考えられ、いずれも摺動性が高く摩擦係数が小さいため、耐摩耗性が高くなる。
本実施形態の多結晶ダイヤモンド(ホウ素原子濃度(ホウ素およびホウ素化合物中のホウ素の合計の原子濃度をいう、以下同じ。)6.8×1020cm-3、水素原子濃度6.0×1018cm-3、酸素原子濃度3.0×1018cm-3)の表面のAES(オージェ電子分光法)による化学分析により、表面から深さ0.5nm程度までの表層に酸素が検出されることから、室温(たとえば25℃)においても表面に保護膜としての酸化膜が形成されていることが分かる。
図4は、本実施形態の多結晶ダイヤモンドのピン・オン・ディスク摺動試験による動摩擦係数測定の結果の一例を示すグラフである。ピン・オン・ディスク摺動試験は、以下の条件により行なう。
ボール材質: SUS
荷重: 10N
回転数: 400rpm
摺動半径: 1.25mm
試験時間: 100分
温度: 室温雰囲気: 大気(25℃で相対湿度30%)。
図5は、本実施形態の多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度測定の結果の一例を示すグラフである。ヌープ硬度測定は、JIS Z2251:2009に準拠して、測定における荷重は4.9Nとする。図5を参照して、無添加の多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度に対して、ホウ素およびホウ素化合物を含む多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は、ホウ素原子濃度の増大とともに幾分か低下し、ホウ素、ホウ素化合物、水素および酸素を含む多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は、ホウ素原子濃度、水素原子濃度および酸素原子濃度の増大とともにさらに幾分か低下する。多結晶ダイヤモンドに含まれるホウ素、ホウ素化合物、水素および酸素が塑性変形の起点となり、硬度を幾分か低下させているものと考えられる。しかしながら、ホウ素の合計の原子濃度4.0×1020cm-3、水素原子濃度1.0×1019cm-3および酸素原子濃度1.0×1019cm-3の多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は、通常の合成単結晶ダイヤモンド(Ib型単結晶ダイヤモンド、孤立置換型の窒素原子濃度が1.7×1019cm-3)のヌープ硬度と同等以上である。
多結晶ダイヤモンドを、直径φ1mm×高さ2mmの円柱形状に加工して、番号#800のメタルボンドダイヤモンドホイール(アライドマテリアル社製)を用いた、多結晶ダイヤモンドの摩耗試験(荷重が2.5kgf/mm2、摺動速度が200mm/min)によると、ホウ素およびホウ素化合物(ホウ素の合計の原子濃度が2.5×1019cm-3〜4.0×1020cm-3)、水素(原子濃度が2.2×1018cm-3〜3.5×1019cm-3)および酸素(原子濃度が2.2×1018cm-3〜2.2×1019cm-3)を含む多結晶ダイヤモンドは、その摩耗速度が2.5〜3mm3/hであることから、摩耗速度が10mm3/hである無添加の多結晶ダイヤモンドに比べて、耐摩耗性が3〜4倍に向上する。
図7を参照して、本実施形態にかかる多結晶ダイヤモンドの製造方法は、炭素と、上記炭素の結晶粒中に原子レベルで分散し、かつその90原子%以上が孤立置換型として存在するホウ素と、ホウ素化合物と、水素と、酸素と、を含む黒鉛を準備する第1工程S10と、上記黒鉛を不活性ガス雰囲気下で容器へ充填する第2工程と、上記容器内で、上記黒鉛を加圧熱処理によりダイヤモンドに変換する第3工程と、を含み、上記ホウ素化合物は、酸素含有ホウ素化合物を含む。本実施形態にかかる多結晶ダイヤモンドの製造方法は、内部の高硬度のダイヤモンド構造を維持するともに、表面を保護するための保護膜として酸化膜を形成することができるため、耐摩耗性が高い多結晶ダイヤモンドを製造することができる。
第1工程S10は、炭素と、上記炭素の結晶粒中に原子レベルで分散し、かつその90原子%以上が孤立置換型として存在するホウ素と、ホウ素化合物と、水素と、酸素と、を含む黒鉛を効率よく製造する観点から、第1サブ工程と第2サブ工程とを含むことが好ましい。また、第1工程S10は、上記黒鉛に水素および酸素を含まれる観点から、第3サブ工程をさらに含むこともできる。ここで、第1サブ工程においては、互いに方法の異なる2種類の第1サブ工程のいずれかを選択できる。
第1サブ工程として選択される第1の方法である第1αサブ工程は、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、および炭素の六員環を含む有機化合物の少なくともいずれかと、ホウ素、水素および酸素を含む液状の第1有機化合物と、水素および酸素を含む液状の第2有機化合物と、を混合することにより混合物を得るサブ工程である。第1αサブ工程は、上記黒鉛の収率が高い点で有利である。
第2サブ工程は、上記混合物を、1500℃以上1800℃以下で熱分解することにより上記黒鉛を形成するサブ工程である。かかるサブ工程により、上記混合物から効率的に上記黒鉛が得られる。上記黒鉛の形成を促進するとともに上記黒鉛からの水素および酸素の抜けを抑制する観点から、上記混合物の熱分解の条件は、不活性ガス雰囲気下が好ましく、0.1気圧以上2気圧以下が好ましく、1500℃以上1800℃以下が好ましい。ここで、不活性ガスとは、上記黒鉛の形成および上記黒鉛から多結晶ダイヤモンドへ変換する際に、上記の有機化合物および上記黒鉛と反応しないガスをいい、たとえば、Ar(アルゴン)ガス、He(ヘリウム)ガス、Xe(キセノン)ガスなどが好適である。
本実施形態にかかる多結晶ダイヤモンドの製造方法は、上記第1工程の後であって、後述する第2工程の前に、第4工程をさらに含むことが好ましい。第4工程は、A工程とB工程とC工程とをこの順に複数回繰り返す工程である。A工程は、上記黒鉛を粉砕体に粉砕する工程であり、B工程は、上記粉砕体を成形体に成形する工程であり、C工程は、上記成形体を1500〜1800℃で熱分解することにより、上記黒鉛を再度準備する工程である。これにより、B4Cなどの微量不純物の混入を極力避けることが可能となる。上記黒鉛にB4Cが混入しているか否かは、たとえばX線回折装置を用いたB4C由来のピークの有無により確認することができる。
第2工程S20は、上記黒鉛を不活性ガス雰囲気下で容器内に入れる工程である。上記黒鉛を不活性ガス雰囲気下で所定の容器(高圧プレス用セル)に入れることにより、上記黒鉛および形成される多結晶ダイヤモンドに微量不純物が混入することを抑制することができる。ここで、不活性ガスは、上記黒鉛および形成される多結晶ダイヤモンドへの微量不純物の混入を抑制できるガスであれば特に制限はなく、Ar(アルゴン)ガス、Kr(クリプトン)ガス、He(ヘリウム)ガスなどが挙げられる。
第3工程S30は、容器内で上記黒鉛を加圧熱処理によりダイヤモンドに変換する工程である。第3工程S30において、上記黒鉛を上記多結晶ダイヤモンドに変換する際は、形成される多結晶ダイヤモンドへの微量不純物の混入を抑制する観点から、上記黒鉛に直接熱処理を行なうことにより、直接変換(すなわち、焼結助剤および/または触媒などを添加することなく変換)することが好ましい。
本実施形態にかかるスクライブツールは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態のスクライブツールは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかるスクライブホイールは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態のスクライブホイールは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかるドレッサーは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態のドレッサーは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかる回転工具は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態の回転工具は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかる伸線ダイスは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態の伸線ダイスは、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかる切削工具は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態の切削工具は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかる電極は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成することができる。本実施形態にかかる電極は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたものであるため、耐摩耗性が高い。
本実施形態にかかる加工方法は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて対象物を加工することができる。本実施形態にかかる加工方法は、実施形態1の多結晶ダイヤモンドを用いて対象物を加工するため、効率よく低コストで対象物を加工できる。
1.黒鉛の準備
実施例1〜5においては、以下の第1工程により、ホウ素、ホウ素化合物(具体的には、酸化ホウ素およびホウ酸)、水素および酸素を含む黒鉛を準備した。まず、市販のフラスコ(容量:100mL)中を脱気し、アルゴン雰囲気中に置換した後、液状の第1有機化合物としてホウ酸トリメチルおよび液状の第2有機化合物としてメタノールをそれぞれ1:0.1、1:0.05、1:0.01、1:0.005および1:0.001の体積比率で混合することにより、第1混合物を得た。第1混合物に、4N以上の高純度黒鉛(純度:99.995質量%)または酸化グラフェンを加えて、60℃に保持して、24時間撹拌することにより、第2混合物を得た。次に、第2混合物を上記フラスコから回収し、真空脱気し、アルゴン雰囲気下で、いずれも1800℃かつ13kPaの条件で熱分解することにより、実施例1〜5の最大粒径が1μm以下の上記黒鉛を得た。
上記黒鉛を、タブレット形状に加工した後、容器(高圧プレス用セル:直径φ10mm×高さ10mmの円柱形状)内にArガスで封入した。
上記黒鉛を封入した容器を加圧熱装置内に入れて、16GPaおよび2100℃の条件で加圧熱処理することにより、上記黒鉛を多結晶ダイヤモンドに直接変換した。得られた比較例1〜3および実施例1〜5の多結晶ダイヤモンドについて、ホウ素が原子レベルで分散しかつ全体の90%以上が孤立置換型で含まれることをTEM、電気抵抗の温度依存性およびTOF−SIMSで確認した。また、得られた実施例1〜5の多結晶ダイヤモンドについて、ホウ素化合物、水素および酸素が孤立置換型または侵入型で含まれていることをTEM、NEXAFS(吸収端近傍X線吸収微細構造)およびTOF−SIMSで確認した。さらに、実施例1〜5の多結晶ダイヤモンドの表面に保護膜として酸化膜が形成されていることを、TOF−SIMSで確認した。また、比較例1〜3および実施例1〜5の多結晶ダイヤモンドついて、それらのホウ素原子濃度、水素原子濃度および酸素原子濃度をSIMSにより測定し、それらの酸素含有ホウ素化合物(酸化ホウ素およびホウ酸)、BC5およびB4Cの濃度をX線回折測定により測定し、それらの結果を表1にまとめた。表1において、酸素の原子濃度の検出限界は1×1016cm-3未満であり、水素の原子濃度の検出限界は1×1017cm-3未満であった。
SIMSによる添加元素の孤立置換型または侵入型の確認条件、ならびに濃度の測定条件は以下のとおりであった。
測定装置: CAMECA IMS−7f
一次イオン種: Cs+
一次加速電圧: 15.0kV
検出領域: 30(μmφ)
測定精度: ±40%(2σ)。
測定装置: TOF−SIMS質量分析計(飛行時間二次イオン質量分析計)
一次イオン源: ビスマス(Bi)
一次加速電圧: 25kV。
特性X線: Cu−Kα線
管電圧: 30kV
管電流: 20mA
X線回折法: θ−2θ法
X線照射方法: ピンホールコリメーターを使用してX線を照射。
実施例Iの比較例2の多結晶ダイヤモンドを用いて、先端が4ポイント(四角形平面状)のスクライブツールを作成した。作成されたスクライブツールを用いて、サファイア基板に負荷20gfで長さ50mmのスクライブ溝を200本形成した。その後、そのスクライブツールの先端部分の多結晶ダイヤモンの摩耗量は、電子顕微鏡により観察したところ、Ib型単結晶ダイヤモンド製スクライブツールに比べて0.2倍と少なかった。さらに、実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて上記と同様にしてスクライブツールを作成し、同様の実験を行ったところ、その摩耗量は、Ib型単結晶ダイヤモンド製スクライブツールに比べて0.02倍、比較例2の多結晶ダイヤモンド製スクライブツールに比べて0.1倍と極めて少なかった。さらに、実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて作成したスクライブツールの表面に保護膜として酸化膜が形成されていることを、TOF−SIMSで確認した。なお、実施例Iの比較例2および実施例2の多結晶ダイヤモンドをそれぞれ用いて作成した上記スクライブツールを含むスクライブホイールについても同様の効果が確認された。
実施例Iの比較例2の多結晶ダイヤモンドを用いて、先端がシングルポイント(円錐状)のドレッサーを作成した。作成されたドレッサーを、WA(ホフイトアルミナ)砥石を用いて、湿式で、砥石の周速が30m/secの低速で、切り込み量が0.05mmの条件で、磨耗した。その後、そのドレッサーの磨耗量は、高さゲージ計により測定したところ、Ib型単結晶ダイヤモンド製ドレッサーに比べて、0.3倍と少なくなった。さらに、実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて上記と同様にしてドレッサーを作成し、同様の実験を行ったところ、その摩耗量は、Ib型単結晶ダイヤモンド製ドレッサーに比べて0.03倍、比較例2の多結晶ダイヤモンド製ドレッサーに比べて0.1倍と極めて少なかった。さらに、実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて作成したドレッサーの表面に保護膜として酸化膜が形成されていることを、TOF−SIMSで確認した。
実施例Iの比較例2の多結晶ダイヤモンドを用いて、直径φ1mm、刃長3mmのドリルを作成した。作成されたドリルを用いて、回転数4000rpm、送り2μm/回転の条件で、厚さ1.0mmの超硬合金(WC−Co)製板に孔をあけた。そのドリルが磨耗または破損するまでにあけることができた孔の数は、Ib型単結晶ダイヤモンド製ドリルに比べて5倍と多かった。さらに、実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて上記と同様にしてドリルを作成し、同様の実験を行ったところ、そのドリルが磨耗または破損するまでにあけることができた孔の数は、Ib型単結晶ダイヤモンド製ドリルに比べて50倍、比較例2の多結晶ダイヤモンド製ドレッサーに比べて10倍と極めて多かった。さらに、実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて作成した回転工具であるドリルの表面に保護膜として酸化膜が形成されていることを、TOF−SIMSで確認した。
実施例Iの実施例1〜5と同じ方法を用いることにより、かさ密度が2.0g/cm3、ICP−MSにより測定されたホウ酸の原子濃度が1×1021cm-3で、SIMSにより測定された酸素の原子濃度が1×1018cm-3で水素の原子濃度が2.5×1018cm-3の黒鉛を準備した。この黒鉛を、等方的高圧発生装置を用いて、15GPaおよび2200℃の条件で加圧熱処理することにより、多結晶ダイヤモンドに直接変換した。得られた多結晶ダイヤモンドの粒径は各々10nm〜100nmであった。
・工具形状:コーナーR0.4mm、逃げ角11°、すくい角0°
・被削材:材質−アルミニウム合金 A390
・切削液:水溶性エマルジョン
・切削条件:切削速度Vc=800m/min、切込みap=0.2mm、送り速度f=0.1mm/回転
・切削距離:10km。
実施例Iの実施例1〜5と同じ方法を用いることにより、かさ密度が2.0g/cm3、ICP−MSにより測定されたホウ酸の原子濃度が1×1019cm-3で、SIMSにより測定された酸素の原子濃度が1×1018cm-3で水素の原子濃度が2.5×1018cm-3の黒鉛を準備した。この黒鉛を、等方的高圧発生装置を用いて、15GPaおよび2200℃の条件で加圧熱処理することにより、多結晶ダイヤモンドに直接変換した。多結晶ダイヤモンドの粒径は、各々10nm〜100nmであった。
実施例Iの実施例1〜5と同じ方法を用いることにより、かさ密度が1.9g/cm3、ICP−MSにより測定されたホウ酸の原子濃度が1×1021cm-3で、SIMSにより測定された酸素の原子濃度が1×1018cm-3で水素の原子濃度が2.5×1018cm-3の黒鉛を準備した。この黒鉛を、等方的高圧発生装置を用い、15GPaおよび2200℃の条件で加圧熱処理することにより、多結晶ダイヤモンドに直接変換した。得られた多結晶ダイヤモンドの粒径は各々10nm〜100nmであった。この多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は120GPaであった。本多結晶ダイヤモンドから3mm×1mm角の試験片を切り出し、電気抵抗を測定したところ、10Ωであった。
・工具形状:直径φ0.5mm、2枚刃、ボールエンドミル
・被削材:材質−STAVAX超硬合金(WC−12%Co)
・切削液:白灯油
・切削条件:工具回転速度420000rpm、切込みap=0.003mm
送り速度f=120mm/min。
実施例Iの比較例2および実施例2の多結晶ダイヤモンドをそれぞれ用いて、口径φ0.5mmの伸線ダイスを作成した。伸線速度1km/minで伸線したときに口径φ0.48mmまで摩耗するまでの時間を寿命とした。実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて作成した伸線ダイスの寿命は、実施例Iの比較例2の多結晶ダイヤモンドを用いて作成した伸線ダイスの寿命の10倍であった。
実施例Iの比較例2および実施例2の多結晶ダイヤモンドをそれぞれ用いて、長さ9mm×幅5mm×厚さ1.0mmの電極用基板を作成した。実施例Iの実施例2の多結晶ダイヤモンドを用いて作成した電極用基板は、抵抗率が10mΩ・cmと低く良好な導電性を示し、0.1MのKOH溶液中において電位窓は3Vの範囲であり化学電極として高性能であることが分かった。実施例Iの比較例1の多結晶ダイヤモンドを用いて作成した電極用基板は、抵抗率が10MΩ・cmと高く電極として使用できないことが分かった。
S20 第2工程
S30 第3工程
Claims (29)
- ダイヤモンド単相を基本組成とする多結晶ダイヤモンドであって、
前記多結晶ダイヤモンドは、複数の結晶粒により構成され、
前記多結晶ダイヤモンドは、ホウ素と、ホウ素化合物と、水素と、酸素と、を含み、残部が炭素および微量不純物であり、
前記ホウ素は、前記結晶粒中に原子レベルで分散し、かつその90原子%以上が孤立置換型として存在し、
前記ホウ素化合物、前記水素および前記酸素は、前記結晶粒中に孤立置換型または侵入型として存在し、
前記ホウ素化合物は、酸素を含有するホウ素化合物を含み、
前記結晶粒は、その粒径が500nm以下であり、
前記多結晶ダイヤモンドは、その表面が保護膜で被覆され、
前記保護膜は、BO x クラスターと、前記炭素の酸素終端となるOおよびOHの少なくともいずれかと、を含む、多結晶ダイヤモンド。 - 前記ホウ素は、その99原子%以上が孤立置換型として前記結晶粒中に存在する、請求項1に記載の多結晶ダイヤモンド。
- 前記ホウ素および前記ホウ素化合物中のホウ素は、それらの合計の原子濃度が1×1014cm-3以上1×1022cm-3以下である、請求項1または請求項2に記載の多結晶ダイヤモンド。
- 前記水素は、その原子濃度が1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンド。
- 前記酸素は、その原子濃度が1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンド。
- 前記多結晶ダイヤモンドは、その表面の動摩擦係数が0.06以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンド。
- 前記多結晶ダイヤモンドは、その表面の動摩擦係数が0.05以下である、請求項1から請求項6いずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンド。
- 前記保護膜は、前記結晶粒中から析出した析出物を含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンド。
- ダイヤモンド単相を基本組成とする多結晶ダイヤモンドであって、
前記多結晶ダイヤモンドは、複数の結晶粒により構成され、
前記多結晶ダイヤモンドは、ホウ素と、ホウ素化合物と、水素と、酸素と、を含み、残部が炭素および微量不純物であり、
前記ホウ素は、前記結晶粒中に原子レベルで分散し、かつその99原子%以上が孤立置換型として存在し、
前記ホウ素化合物、前記水素および前記酸素は、前記結晶粒中に孤立置換型または侵入型として存在し、
前記ホウ素化合物は、酸素を含有するホウ素化合物を含み、
前記結晶粒は、その粒径が500nm以下であり、
前記多結晶ダイヤモンドは、その表面が保護膜で被覆され、
前記ホウ素および前記ホウ素化合物中のホウ素は、それらの合計の原子濃度が1×1014cm-3以上1×1022cm-3以下であり、
前記水素は、その原子濃度が1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下であり、
前記酸素は、その原子濃度が1×1017cm-3以上1×1020cm-3以下であり、
前記多結晶ダイヤモンドは、その表面の動摩擦係数が0.05以下であり、
前記保護膜は、BOxクラスターと、前記炭素の酸素終端となるOおよびOHの少なくともいずれかと、を含み、
前記保護膜は、前記結晶粒中から析出した析出物を含む、多結晶ダイヤモンド。 - 炭素と、前記炭素の結晶粒中に原子レベルで分散し、かつその90原子%以上が孤立置換型として存在するホウ素と、ホウ素化合物と、水素と、酸素と、を含む黒鉛を準備する第1工程と、
前記黒鉛を不活性ガス雰囲気下で容器へ充填する第2工程と、
前記容器内で、前記黒鉛を加圧熱処理によりダイヤモンドに変換する第3工程と、を含み、
前記ホウ素化合物は、酸素を含有するホウ素化合物を含む、多結晶ダイヤモンドの製造方法。 - 前記第1工程は、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、および炭素の六員環を含む有機化合物の少なくともいずれかと、ホウ素、水素および酸素を含む液状の第1有機化合物と、水素および酸素を含む液状の第2有機化合物と、を混合することにより混合物を得る第1αサブ工程を含む、請求項10に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記第1工程は、ホウ素、水素および酸素を含む液状の第1有機化合物およびホウ素を含む液状の第3有機化合物の少なくともいずれかと、水素および酸素を含む液状の第2有機化合物と、を混合することにより混合物を得る第1βサブ工程を含む、請求項10に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記第1有機化合物は、ホウ酸トリメチルおよびホウ酸トリエチルの少なくともいずれかである、請求項11または請求項12に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記第2有機化合物がアルコール類である、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記第1工程は、前記混合物を、1500℃以上1800℃以下で熱分解することにより前記黒鉛を形成する第2サブ工程をさらに含む、請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記第1工程の後であって、前記第2工程の前に、第4工程をさらに含み、
前記第4工程は、A工程とB工程とC工程とをこの順に複数回繰り返す工程であり、
前記A工程は、前記黒鉛を粉砕体に粉砕する工程であり、
前記B工程は、前記粉砕体を成形体に成形する工程であり、
前記C工程は、前記成形体を1500〜1800℃で熱分解することにより、前記黒鉛を再度準備する工程である、請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。 - 前記第3工程は、加圧熱装置内で、前記黒鉛に直接加圧熱処理を行なう、請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記加圧熱処理は、6GPa以上かつ1200℃以上の条件で行なわれる、請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 前記加圧熱処理は、8GPa以上30GPa以下かつ1500℃以上2300℃以下の条件で行なわれる、請求項10から請求項18のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドの製造方法。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたスクライブツール。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたスクライブホイール。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成されたドレッサー。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成された回転工具。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成された伸線ダイス。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成された切削工具。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて形成された電極。
- 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の多結晶ダイヤモンドを用いて対象物を加工する、加工方法。
- 前記対象物は、絶縁体である、請求項27に記載の加工方法。
- 前記絶縁体は、100kΩ・cm以上の抵抗率を有する、請求項28に記載の加工方法。
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