JP6864706B2 - 多孔質銅およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、多孔質銅および、その製造方法に関するものである。
一般に、金属内部に多数の空隙を形成した多孔質の金属部材が知られている。このような多孔質の金属部材としては、例えば、2種類以上の金属が固溶した合金から、一部の金属が残存するように、残りの金属を、酸やアルカリで溶解して除去することによって製造することが行われている。
従来より、このような多孔質の金属部材としては、銅、ニッケル、クロム、金、白金などが知られている。このうち、多孔質の銅としては、銅とアルミニウムとを溶融混合した固溶体から、アルミニウムを除去することで多孔質のスポンジ銅を製造することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2018−53359号公報
しかし、上記従来の多孔質銅の場合、銅とアルミニウムとを固溶した合金からアルミニウムを除去して製造されるため、形成される細孔がミクロ孔や、小さいサイズのメソ孔などの小さな空隙を形成したものに限定されてしまうこととなり、細孔が小さくなり過ぎてしまうこととなる。したがって、表面の細孔が閉塞されてしまうと、内部の細孔が利用できなくなってしまい、多孔質構造が生かされないこととなってしまう。
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、マクロ孔を中心とした細孔のサイズが内部全体に形成された多孔質銅とその製造方法とを提供することを目的としている。
上記課題を解決するための本発明の多孔質銅の製造方法は、銅と鉄とを、銅:鉄=30:70〜50:50の容積比で混ぜ合わせた銅鉄合金を、鉄の溶解液に浸けて電圧を印加することで鉄を溶解処理し、鉄の溶解に要する電流が流れなくなるまで鉄を溶解処理するものである。
上記課題を解決するための本発明の多孔質銅は、上記の多孔質銅の製造方法によって得られる多孔質銅であって、窒素吸着測定において、P/P0=0.995における、1mm×0.5mm当たりの窒素吸着体積量が、0.023cm以上0.032cm以下である銅と鉄とを混ぜ合わせた銅鉄合金から、鉄が溶解処理され、当該鉄が存在していた部分にマクロ孔が空隙として形成されてなるものである。
上記課題を解決するための本発明の多孔質銅は、上記の多孔質銅の製造方法によって得られる多孔質銅であって、窒素吸着測定において、P/P0=0.975における実測点と、P/P0=0.2〜0.8の近似直線の延長上にある点との比が、4.26以上であってもよい。
多孔質銅の製造方法において、使用する銅および鉄としては、特に限定されるものではなく、例えば、純銅および純鉄を用いることができる。これら純銅および純鉄は、不活性ガス雰囲気下で加熱溶解して混合した後、冷却されることによって銅鉄合金とされる。この際、銅鉄合金は、冷却速度が速い程緻密になり、この冷却速度によって、互いの分子の混ざり具合の緻密さが決定されることとなるが、銅と鉄とは互いに固溶しないので、銅分子や鉄分子は、固溶した場合(例えば、銅とアルミニウム)のようにミクロの単位で混ざり合うことにはならない。したがって、銅と鉄との溶融金属を型に流し込んだ後、水中に投入して急速に冷却したとしても、マクロを中心とした単位で銅と鉄とが混ざり合った銅鉄合金が得られることとなる。
なお、上記した銅鉄合金の調製では、純銅と純鉄を用いることが好ましいが、特に純銅および純鉄に限定されるものではなく、銅としては、C1020(無酸素銅)、C1110(タフピッチ銅)、C1220(リン脱酸銅)のような99.9%以上の銅と、残部に他の元素とが含有されたものを使用するものであってもよい。他の元素としては、ケイ素、リン、リチウムなどの脱酸材が挙げられる。鉄としては、純度の高い方が好ましいが、炭素含有量が0.02%以下であるものを使用するものであってもよい。なお、銅または鉄に含有される他の元素は、銅と固溶可能で、しかもその量が多く、これら他の元素が銅と固溶してしまう量が多くなってしまうと、出来上がった多孔質銅に、ミクロ孔(2nm以下)が増えすぎてしまうこととなり、マクロ孔(50nm以上)の形成を阻害してしまうこととなる。したがって、銅や鉄としては、マクロ孔(50nm以上)の形成を阻害しない程度で他の元素が含有されたものを使用するのであれば、上記した純度の高いものに限定されなくてもよい。
また、上記した銅鉄合金の調製における銅と鉄との使用量としては、特に限定されるものではなく、銅:鉄=10:90〜90:10の容積比で使用することができ、何らかの形状を形成するのであれば、銅:鉄=30:70〜90:10の容積比、より好ましくは、銅:鉄=30:70〜70:30の容積比で使用される。銅が10vol%よりも少ないと、銅鉄合金の大半を占める鉄を溶かしてしまうので、得られる多孔質銅のコストが嵩むこととなってしまう。また、何らかの形状を形成するのであれば、銅が30vol%よりも少ないと、多孔質銅を形成した際に脆くなってしまい、その形状を維持できずに破壊されてしまう。一方、銅が90vol%よりも多いと、十分に多孔質な多孔質銅を形成することができなくなってしまう。
上記多孔質銅の製造方法において、鉄を溶解処理する工程は、上記銅鉄合金を、塩酸等の銅が溶解しない酸溶液に浸漬し、鉄を選択的に溶解することによって行うことができる。この際、鉄の溶解処理に使用する酸の濃度や、銅鉄合金を浸漬する処理時間としては、特に限定されるものではなく、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などを使用することができる。酸の濃度としては、例えば、0.01〜1.20モル/リットルで実施することができる。処理時間としては、240時間までの実施が確認できているが、反応の終端を見分けることが難しいので、電気化学測定装置を用いて、電流を終端のモニターとして実験を行うことができる。すなわち、これらの溶解処理の進行具合は、例えば、電気化学測定装置を用いて定量的に確認しながら行うものであってもよい。すなわち、電気化学測定装置よって、溶解中の銅鉄合金に電圧を印加してモニタリングし、電流が流れなくなったところで鉄が全て溶解したものと判断して鉄の溶解処理を進行させるものであってもよい。
このようにして構成される多孔質銅は、互いに固溶しない銅と鉄とを溶融固化した銅鉄合金から形成されているので、マクロ孔(50nm以上)を中心とした空隙が形成された連続気泡の多孔質銅となる。
この多孔質銅の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔を含む板状、筒状、線状、粉状、チップ状、立方体形状、直方体形状、球体形状、錐体形状、その他各種形状に賦形されたものであってもよい。ただし、この多孔質銅が環境雰囲気下の媒体と、より接触し易くするためには、立方体形状や球体形状のような中実部分が多くなる形状ではなく、箔のような薄い板状、同じく薄い筒状、細い線状、粉状、チップ状等のように、見かけの表面積が大きく形成された形状のものであることが好ましい。より好ましい形状としては、厚さ0.2mm以下の箔状の多孔質銅およびこれを各種形状に加工したもの、厚さ1mm未満の板状の多孔質銅およびこれを各種形状に加工したものが挙げられる。
このようにして構成される多孔質銅は、互いに固溶しない銅と鉄との銅鉄合金から、鉄を溶解処理して構成されているので、鉄が溶解した後には、マクロ孔(50nm以上)を中心とした多孔質孔を形成することができる。したがって、高表面積で熱電導性に優れた多孔質銅を得ることができる。このような多孔質銅は、気体や液体を媒体とした殺菌部材、抗菌部材として利用したり、触媒担持体として利用したり、電極集電体として利用したり、ガスセンサーとして利用したり、ヒートポンプ熱交換器の熱伝導部材として利用したりすることができる。
以上述べたように、本発明によると、多孔質銅は、互いに固溶しない銅と鉄とを、銅:鉄=30:70〜50:50の容積比で混ぜ合わせた銅鉄合金を、鉄の溶解液に浸けて電圧を印加することで鉄を溶解処理し、鉄の溶解に要する電流が流れなくなるまで鉄を溶解処理して得られるため、多孔質で高表面積の多孔質銅が得られることとなる。
本発明に係る多孔質銅の窒素吸着測定の結果であって、(a)は相対圧力の変化に対する窒素吸着量の変化を示すグラフ、(b)は同グラフの相対圧力0.8以上部分の部分拡大図である。 本発明に係る多孔質銅の殺菌効果の経時的変化を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
[実施例1−5、比較例1]
(銅鉄合金の調製)
それぞれCu:Fe=30:70(実施例1)、50:50(実施例2)、60:40(実施例3):70:30(実施例4)、90:10(実施例5)、100:0(比較例1)の容積比率となるように、比重を考慮して求めた所定の質量で、純銅と純鉄とを秤量し、各実施例の試料を用意した。
高周波誘導加熱炉を用いて、アルゴンガス雰囲気中で試料を加熱し、純銅と、純鉄とが完全に溶けて混ざり合った状態になったことを目視で確認した後に型に流し込んだ。その後、型に流し込んだ試料を、すぐに水中に投入して急冷し、銅鉄合金を得た。これを、それぞれの試料について行い、各銅鉄合金を得た。
(多孔質銅の調製)
得られた試料を、約φ20mm、厚さ0.5mmに切断し、この切断した試料から鉄を溶出させた。この鉄の溶出は、電気化学測定装置(電気化学計測器(VSP300 Biologic社製))を用いて行った。この際、作用電極には対象試料、対極には白金、参照電極にはAg/Ag参照電極(RE4A:ECフロンティア製)を使用した。それらをpHが1.0に調整された塩酸溶液に投入した。参照電極に対して−0.4Vになるように電圧を試料に印加した。そして、電流をモニタリングし、0Aとなったところを終端とみなした。終了後、エタノールとイオン交換水中で10分間超音波洗浄行い、多孔質銅を得た。これをそれぞれの試料について行い、鉄の容積部分が空隙となった空隙率70%(実施例1)、50%(実施例2)、40%(実施例3)、30%(実施例4)、空隙率10%(実施例5)の各多孔質銅と、空隙率0%(比較例1)の銅板を得た。
(窒素吸着法による細孔測定)
上記で得られた多孔質銅を、10mm×6mm×厚さ0.5mmのサイズに切断して試験片を用意した。この試験片を使用して窒素吸着測定を行った。この窒素吸着測定には、比表面積/細孔分布測定装置BELSORP-minII(マイクロトラックベル株式会社製)を使用した。得られた吸着等温曲線を、試験片の面積で除することで、単位面積当たりの吸着体積として評価の指針とした。結果を図1のグラフおよび表1に示す。
Figure 0006864706
図1のグラフおよび表1から、本発明に係る多孔質銅は、比較例1に係る銅100%のものと比較して高表面積に形成されていることが確認できる。銅が90vol%の実施例5に係る多孔質銅の場合でも、P/P0=0.995における、1mm×0.5mm当たりの窒素吸着体積量が、0.0008cmであり、これは同条件における比較例1に係る窒素吸着体積量の0.0001cmと比較しても高表面積に形成されていることが確認できる。また、銅が30vol%の実施例1に係る多孔質銅や銅が50vol%の実施例2に係る多孔質銅の場合、相対圧力が0付近の低い領域から、比較例1に係る銅100%のものと比較して、10倍以上の多くの窒素が吸着され、その後、相対圧力が上昇するにしたがってゆるやかな勾配で窒素が吸着されている(実施例1は相対圧力0.5で比較例1の33.3倍、相対圧力0.8で比較例1の69.7倍の吸着、実施例2は相対圧力0.5で比較例1の18.1倍、相対圧力0.8で比較例1の35.7倍の吸着)。このことから、銅が30vol%の実施例1に係る多孔質銅や銅が50vol%の実施例2に係る多孔質銅は、表面から深部にわたって、この多孔質銅が接触する媒体と高表面積で接触できていることがわかる。また、相対圧力が0.8を超えた当たりから、空隙に窒素が充填されて勾配が立ち上がって行き、相対圧力1付近で飽和状態になっている。このことから、銅が30vol%の実施例1に係る多孔質銅や銅が50vol%の実施例2に係る多孔質銅は、この多孔質銅が接触する媒体が通過できる十分な大きさの空隙が形成されていることが確認できる。
[実施例3、比較例2−5]
(殺菌試験)
実施例3の試料から得られた多孔質銅を10mm×10mm×厚さ0.5mmの大きさに切断し、見かけの表面積を220mmとしたものを試験片として用意した。比較する試験片として、表面積が約200mm(比較例2)、600mm(比較例3)、6200mm(比較例4)、22000mm(比較例5)となるように切断した厚さ10μmの純銅箔を用意した。イースト菌試験液(2.5×10CFU/ミリリットル)を試験片毎に4ミリリットル用意し、各イースト菌試験液に試験片を投入し、30℃の恒温槽で温度を保持した。2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後にそれぞれイースト菌試験液を100μlずつ取り出し、菌数を計測した。菌数の計測は、カビ・酵母測定用プレート(YMプレート:Type6407(3M社製ペトリフィルム(商品名))を用いて培養・測定を行った。結果を図2のグラフに示す。
図2のグラフから、本発明に係る多孔質銅は、殺菌能力に優れる。これは多孔質銅の高表面積に起因しているものと考えられる。また、本発明に係る多孔質銅に形成されている空隙がマクロ孔なので、空隙が閉塞されることなく液が浸透することも、優れた殺菌効果を生む要因の一つと考えられる。
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。

Claims (3)

  1. 銅と鉄とを、銅:鉄=30:70〜50:50の容積比で混ぜ合わせた銅鉄合金を、鉄の溶解液に浸けて電圧を印加することで鉄を溶解処理し、鉄の溶解に要する電流が流れなくなるまで鉄を溶解処理することを特徴とする多孔質銅の製造方法。
  2. 請求項1に記載の多孔質銅の製造方法によって得られる多孔質銅であって
    素吸着測定において、P/P0=0.995における、1mm×0.5mm当たりの窒素吸着体積量が、0.023cm以上0.032cm以下である多孔質銅。
  3. 請求項1に記載の多孔質銅の製造方法によって得られる多孔質銅であって
    素吸着測定において、P/P0=0.975における実測点と、P/P0=0.2〜0.8の近似直線の延長上にある点との比が、4.26以上である多孔質銅。
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