以下、本発明の可変容量型オイルポンプの一実施例を図面に基づき説明する。
[第1の実施例]
(可変容量型オイルポンプの構成)
図1は、図示せぬ内燃機関のシリンダブロック等に設けられる可変容量型オイルポンプ1の分解斜視図を示している。
可変容量型オイルポンプ1は、ハウジング本体2と、カバー部材3と、駆動軸4と、ロータ5と、7つのベーン6と、カムリング7と、コイルばね8と、一対のリング部材9,9と、第1、第2シール手段10,11と、6つの固定手段12例えばボルトと、を備えている。
ハウジング本体2は、金属材料、例えばアルミ合金材料によって一体に形成されており、一端側が開口し内部に円柱形のポンプ収容室13を有するように断面U字状に形成されている。ハウジング本体2は、ポンプ収容室13の底面13aの中央位置に、駆動軸4の一端を回転可能に支持する第1軸受孔2a(図2参照)を有している。ハウジング本体2には、ポンプ収容室13の開口の外周側に、環状に連続した平坦な取付面2bが形成されている。ハウジング本体2の取付面2bには、各固定手段12が挿入される6つの固定手段貫通孔2cがそれぞれ形成されている。
カバー部材3は、ハウジング本体2と同様に金属材料、例えばアルミ合金材料によって形成されており、ハウジング本体2の開口を閉塞するように用いられる。カバー部材3は、平板状をなしており、ハウジング本体2の外形に対応した外形を有している。カバー部材3には、ハウジング本体2の第1軸受孔2aに対応した位置に、駆動軸4の他端を回転可能に支持する第2軸受孔3aが形成されている。さらに、カバー部材3の外周部には、ハウジング本体2の6つの固定手段貫通孔2cに対応した位置に、各固定手段12が挿入される6つの固定手段貫通孔3bがそれぞれ形成されている。
上記ハウジング本体2およびカバー部材3によって、ポンプ収容室13を仕切るハウジングが構成されている。
なお、上記可変容量型オイルポンプ1は、駆動軸4の支持がハウジング本体2の第1軸受孔2aとカバー部材3の第2軸受孔3aによる両持ち構造を示したが、ハウジング本体2に形成された第1軸受孔2aのみで支持される片持ち構造でもよく、その場合は、カバー部材3の第2軸受孔3aを形成する必要はない。
駆動軸4は、ポンプ収容室13の中心部を貫通して上記ハウジングに回転可能に支持されており、図示せぬクランクシャフトにより回転駆動される。
ロータ5は、円筒状をなしており、ポンプ収容室13内に回転可能に収容される。ロータ5の中心部は、駆動軸4に結合される。ロータ5には、ロータ5の内部中心側から径方向外側へ放射状に延びる7つのスリット5aが開口形成されている。さらに、ロータ5の両側面(図1には1つの側面のみが示されている)には、駆動軸4を中心に円形に窪んだ後述する円形凹部23が開口形成されている。
ベーン6は、金属により薄い板状に形成されており、ロータ5のスリット5aに出没可能に収容される。ベーン6がスリット5a内に収容された状態では、ベーン6とスリット5aとの間に多少の隙間が形成される。ベーン6は、先端面がカムリング7の内周面に摺動可能に接触するとともに、基端部の内端面がリング部材9の外周面に摺動可能に接触する。
なお、駆動軸4、ロータ5および各ベーン6がポンプ要素を構成している。
カムリング7は、焼結金属によって円筒状に一体に形成されている。
コイルばね8は、ハウジング本体2内に収容されており、ロータ5の回転中心に対するカムリング7の偏心量が増大する方向へカムリング7を常時付勢する。
リング部材9は、ロータ5の外径よりも小さな外径を有しており、ロータ5に設けられた円形凹部23内に摺動可能に配置される。
第1、第2シール手段10,11は、カムリング7に装着され、該カムリング7とハウジング本体2との間を仕切る。これにより、カムリング7の外周面とハウジング本体2の内周面との間に、後述する第1、第2制御油室24,25が形成される。第1、第2シール手段10,11は、シール部材15および弾性部材16をそれぞれ備えている。
図2は、図1の左側から可変容量型オイルポンプ1の軸方向に見たハウジング本体2の正面図を示している。
図2に示すように、ハウジング本体2のポンプ収容室13の底面13aの中央位置において、駆動軸4の一端を回転可能に支持する第1軸受孔2aが貫通している。また、ハウジング本体2の内周面となるポンプ収容室13の内周壁のカムの揺動支点となる位置には、図2に示すように、カムリング7を揺動可能に支持する棒状のピボットピン17(図5参照)が支持される円弧状の支持溝2dが形成されている。
ここで、説明の便宜上、第1軸受孔2aの中心Oとピボットピン17の中心17aとを結ぶ直線を「カムリング基準線M」と定義する。
ポンプ収容室13の内周壁には、カムリング基準線Mを挟んで両側に第1、第2シール接触面13b,13cが形成されており、これらシール接触面13b,13cに、カムリング7の外周部に設けられたシール部材15,15がそれぞれ摺動可能に接触する。第1シール接触面13bは、図2に示すように、ピボットピン17の中心17aから所定の半径R1によって構成された円弧面となっている。一方、第2シール接触面13cは、図2に示すように、ピボットピン17の中心17aから半径R1よりも小さい所定の半径R2によって構成された円弧面となっている。半径R1,R2は、カムリング7の偏心揺動範囲においてシール部材15,15が常時摺動可能に接触することができる周方向長さに設定されている。
また、ポンプ収容室13の底面13aには、図2に示すように、第1軸受孔2aの外周域に、円弧凹状の吸入部である吸入ポート18と、同じく円弧凹状の吐出部である吐出ポート19とが、第1軸受孔2aを挟んで対向するように切り欠かれている。吸入ポート18は、底面13aにおいて、支持溝2dと反対側に位置しており、一方、吐出ポート19は、支持溝2d側に位置している。吸入ポート18は、上記ポンプ要素のポンプ作用に伴って後述するポンプ室20(図5参照)の内部容積が増大する領域(吸入領域)に開口している。吸入ポート18には、その周方向の中間位置に、後述するばね収容室21側へ膨出するように、導入部22が吸入ポート18と一体に形成されている。導入部22と吸入ポート18の境界部には、ハウジング本体2の底壁を貫通して外部に開口する断面円形の吸入孔18aが設けられている。これにより、図示せぬ内燃機関のオイルパンに貯留された潤滑油が、ポンプ要素のポンプ作用に伴って発生する負圧に基づき吸入孔18aおよび吸入ポート18を介して吸入領域の後述する各ポンプ室20に吸入される。
吐出ポート19は、上記ポンプ要素のポンプ作用に伴ってポンプ室20の内部容積が減少する領域(吐出領域)に開口している。
吐出ポート19では、図示せぬ内燃機関と連通する断面円形の吐出孔19aが、図2の上部位置において、ハウジング本体2の底壁を貫通している。
また、ハウジング本体2内には、コイルばね8を収容するばね収容室21が、吸入孔18aと隣接した位置に設けられている。ばね収容室21の壁面には、図2に示すように、この壁面の一部がばね収容室21に向かって僅かに突出することによりストッパ面21aが形成されており、該ストッパ面21aは、コイルばね8によって付勢されたカムリング7の後述するアーム部7aを受ける。
さらに、第1軸受孔2aの内周面には、オイルを保持して駆動軸4を潤滑する油保持溝2eが形成されている。本実施例では、図2に示すように、油保持溝2eは、カムリング基準線Mよりも上側にあり、かつ第1軸受孔2aの内周面においてカムリング基準線Mと直交する位置に形成されている。
ポンプ収容室13の底面13aには、吐出ポート19からロータ5の後述する円形凹部23にオイルを導入する油導入溝2fが形成されている。
図3は、図2の線A−Aに沿って切断したハウジング本体2の断面図を示している。
図3に示すように、油保持溝2eは、ハウジング本体2の底壁の厚さの1/2を超える程度にポンプ収容室13の底面13aから底壁の厚さ方向に延びている。
図4は、図2の線B−Bに沿って切断したハウジング本体2の断面図を示している。
図4に示すように、ポンプ収容室13の底面13aには横断面台形の油導入溝2fが形成されている。油導入溝2fは、吐出ポート19と円形凹部23とを連通させる。図4の左右方向に沿った油導入溝2fの幅Wは、底面13a側が最も広くなっており、底面13aから離れるにつれて狭くなっている。油導入溝2fの幅Wは、図4に破線で示すベーン6の厚みTvよりも小さくなっている。なお、油導入溝2fは、断面正方形や断面長方形をなしていても良い。
ここで、説明の便宜上、駆動軸4に沿う方向を可変容量型オイルポンプ1の「軸方向」と定義し、この軸方向と直交する方向を可変容量型オイルポンプ1の「径方向」と定義する。
図5は、カバー部材3を取り外した状態の可変容量型オイルポンプ1の組立図である。
図5に示すように、ハウジング本体2のポンプ収容室13内に、カムリング7がピボットピン17を中心に揺動可能となるように支持されている。さらに、このカムリング7内に、駆動軸4に結合されたロータ5が配置されている。
ロータ5の両側面には、駆動軸4を中心に円形に窪んだ円形凹部23が軸方向に開口形成されており、この円形凹部23は、ポンプ収容室13の底面13aと平行な底壁23aと、この底壁23aの周囲を環状に囲む周囲壁23bと、を備えている。円形凹部23内には、この円形凹部23の周囲壁23bの内径よりも小さい外径を有したリング部材9が収容されている。従って、円形凹部23の周囲壁23bの内周面とリング部材9の外周面との間には、径方向隙間32が形成されている。
また、ベーン6が、ロータ5に形成されたスリット5a内に出没可能に配置されており、先端面がカムリング7の内周面に摺動可能に接触するとともに、基端部の内端面がリング部材9の外周面に摺動可能に接触している。
このように構成された可変容量型オイルポンプ1において、ロータ5の外周面と、隣接するベーン6,6の各内側面と、カムリング7の内周面と、ハウジング本体2のポンプ収容室13の底面13aおよびカバー部材3の内周面とによって、ポンプ室20が液密に画定される。
ロータ5の各スリット5aの内側基端部には、吐出ポート19に吐出された吐出油を導入する断面円形の背圧室5bがそれぞれ形成されている。背圧室5bは、円形凹部23に開口している。後述する第2制御油室25からの油が、吐出ポート19、油導入溝2fおよび円形凹部23を介して背圧室5bに流入する。従って、ロータ5のスリット5a内に出没可能に収容された各ベーン6が、ロータ5の回転に伴う遠心力と背圧室5bの油圧とによって外方へ押し出される。
また、上述したように、ベーン6は、基端部の内端面がリング部材9の外周面に摺動可能に接触しており、これにより、機関回転数が低く、上記遠心力や背圧室5bの油圧が小さいときでも、ベーン6がカムリング7の内周面に摺接可能となっている。
図5に示すように、カムリング7の外周部のカムの揺動支点となる位置に、上記支持溝2dと協働してピボットピン17を支持する円弧凹状のピボット溝7bが、軸方向に沿って形成されている。ピボット溝7bおよび支持溝2dによって支持されたピボットピン17は、カムリング7の偏心揺動支点となる。
また、カムリング7は、ピボット溝7bに対しカムリング7の中心を挟んで反対側の位置に、コイルばね8と連係するアーム部7aを備えている。このアーム部7aは、カムリング7の外周部から径方向に突出している。アーム部7aには、その移動(回動)方向の一側部に、円弧凸状の押圧突部7cが形成されており、この押圧突部7cがコイルばね8の先端部に常時接触することにより、アーム部7aとコイルばね8とが連係する。
さらに、カムリング7の外周部には、図5に示すように、第1、第2シール接触面13b,13cと対向する位置に、第1、第2シール面を有する横断面三角形状をなす第1、第2シール保持部7d,7eがそれぞれ突出している。ここで、第1、第2シール面は、それぞれピボットピン17の中心17aからこれに対応する各シール接触面13b,13cを構成する半径R1,R2(図2参照)よりも僅かに小さい所定の半径によって構成されている。各シール面と各シール接触面13b,13cとの間には、それぞれ微小なクリアランスが形成されている。また、各シール保持部7d,7eの各シール面に、断面U字状の第1、第2シール保持溝7f,7gが、カムリング7の軸方向に沿ってそれぞれ形成されている。第1、第2シール保持溝7f,7g内に、カムリング7の偏心揺動時に第1、第2シール接触面13b,13cに接触する第1、第2シール手段10,11がそれぞれ保持されている。
第1、第2シール手段10,11は、シール部材15および弾性部材16をそれぞれ備えている。シール部材15は、例えば低摩擦特性を有するフッ素系樹脂材により軸方向に沿って細長い板状に形成されている。また、弾性部材16は、例えばゴムにより軸方向に沿って細長い円柱状に形成されている。弾性部材16は、シール部材15とシール保持溝7f,7gの底部との間に設けられており、弾性部材16の弾性力によってシール接触面13b,13cに対しシール部材15を押し付ける。これにより、後述する第1、第2制御油室24,25の液密性が常時確保される。
ハウジング本体2内には、支持溝2dと反対側の位置に形成された吸入孔18aを介してポンプ収容室13と連通するようにばね収容室21が設けられており、このばね収容室21内にコイルばね8が収容されている。
コイルばね8は、吸入孔18aを横切るかたちでばね収容室21内まで延びるアーム部7aの先端部の押圧突部7cとばね収容室21の底面との間に、所定のセット荷重Wsをもって弾性的に保持されている。
従って、コイルばね8は、セット荷重Wsに基づく弾性力をもって、アーム部7aを介してカムリング7を、その偏心量が増大する方向(図5中の時計方向)へ常時付勢する。これにより、カムリング7は、非作動時にはコイルばね8のばね力によってアーム部7aの外面がばね収容室21の壁面に形成されたストッパ面21aに押し付けられた状態となり、ロータ5の回転中心に対するその偏心量が最大となる位置に保持されている。
そして、ポンプ吐出側となるピボット溝7b側におけるカムリング7の外周域には、図5に示すように、ハウジング本体2の内周面とカムリング7の外周面との間に、シール部材15およびピボットピン17により、ピボット溝7bを挟んだ両側に、第1制御油室24と第2制御油室25とがそれぞれ画定されている。
第1制御油室24には、吐出ポート19に吐出されたポンプ吐出圧が供給される。第1制御油室24に面するカムリング7の外周面によって構成された第1受圧面26が、コイルばね8の付勢力に抗して吐出ポート19からの油圧を受けて、カムリング7の偏心量を減少させる方向(図5中の反時計方向)へ揺動力(移動力)を付与する。
即ち、第1制御油室24は、第1受圧面26を介してカムリング7の中心がロータ5の回転中心と同心に近づく方向、つまり偏心量が減少する方向へカムリング7を常時作用することによって、カムリング7の同心方向の移動量制御に用いられている。
一方、第2制御油室25には、吐出孔19aから吐出された吐出圧が図示せぬ電磁切換弁のオン、オフ作動により適宜導入される。上記電磁切換弁は、内燃機関を制御するコントロールユニットからの励磁電流に基づき機関の運転状態に応じて作動する。
また、第2制御油室25に面するカムリング7の外周面には第2受圧面27が形成されており、この第2受圧面27に吐出圧を作用させることによって、コイルばね8の付勢力をアシストする方向へ作用する力が生じる。これにより、カムリング7に対してその偏心量を増大させる方向(図5中の時計方向)へ揺動力(移動力)が付与される。
ここで、図5に示すように、第1受圧面26の受圧面積は、第2受圧面27の受圧面積よりも大きくなっている。そして、第2制御油室25の内圧に基づく付勢力とコイルばね8の付勢力とによるカムリング7の偏心方向の付勢力と、第1制御油室24の内圧に基づく付勢力とが、所定の関係をもってバランスするように構成されている。なお、第2制御油室25内の油圧が、前述のように、コイルばね8の付勢力をアシストする。
図6は、図5の吐出ポート19のロータ回転方向後端側における可変容量型オイルポンプ1の部分的な拡大図を示している。図6は、ベーン6が油導入溝2fを通過し始めるときの可変容量型オイルポンプ1を示している。なお、図6では、油導入溝2fを破線で示し、吐出ポート19を二点鎖線で示してある。
油導入溝2fは、図6に示すように、ベーン6がロータ5のスリット5a内に収容される割合が大きくなる、吐出ポート19のロータ回転方向後端側に設けられている。油導入溝2fは、吐出ポート19のロータ回転方向後端側から円形凹部23の周囲壁23bの内周面とリング部材9の外周面との間の位置まで直線的に延びている。つまり、油導入溝2fの始端28は、吐出ポート19の終端部19bに位置しており、油導入溝2fの終端29は、始端28よりベーン6の回転上流側であって、ベーン6の基端部の内端面と円形凹部23の周囲壁23bの内周面との間の領域A内の位置まで延びる。図6に示すように、ベーン6と油導入溝2fとによって角度θが形成されている。角度θは、鋭角である。
図7は、リング部材9の斜視図を示している。
リング部材9は、その一方の側面9aに、リング部材9の内周面から外周面までリング部材9の径方向に延びる溝9bを備えている。図7に示すように、溝9bは、横断面U字状をなしている。
図8は、図5の線C−Cに沿って切断した可変容量型オイルポンプ1の断面図を示している。
図8に示すように、ロータ5の一方の側面(図8の右側の側面)に形成された円形凹部23がポンプ収容室13の底面13aに向かって開口しており、一方、ロータ5の他方の側面に形成された円形凹部23が、底面13aとは反対側つまりカバー部材3側に開口している。そして、ポンプ収容室13の底面13a側のリング部材9は、溝9bが底面13aに向かって開口する向きで円形凹部23内に配置されており、一方、カバー部材3側のリング部材9の溝9bは、カバー部材3に向かって開口する向きで円形凹部23内に配置されている。なお、ハウジング本体2の底面13a側およびカバー部材3側のリング部材9,9は、各底壁23aに向かって開口する向きで円形凹部23内にそれぞれ配置されても良い。
また、図8に示すように、円形凹部23の深さDは、リング部材9の厚みTrよりも大きくなるように形成されている。従って、ポンプ収容室13の底面13a側において、リング部材9の一方の側面9aと底面13aとの間に、軸方向隙間34が形成される。一方、カバー部材3側において、リング部材9の一方の側面9aとカバー部材3の裏面3d(図10参照)との間に、軸方向隙間34が形成される。
このような構成から、可変容量型オイルポンプ1では、油導入溝2fからの油が、軸方向隙間34およびリング部材9の溝9bを通してリング部材9の内周側に流入し、そして、油保持溝2eと、第1軸受孔2aと駆動軸4との間の隙間とに流入する。
図9は、図1の左側から可変容量型オイルポンプ1の軸方向に見たカバー部材3の正面図を示している。
上述したように、カバー部材3には、ハウジング本体2の第1軸受孔2aに対応した位置に、駆動軸4の他端を回転可能に支持する第2軸受孔3aが形成されている。
図10は、図9の線D−Dに沿って切断したカバー部材3の断面図を示している。
図10に示すように、板状のカバー部材3の第2軸受孔3aの周囲を部分的に肉厚にすることにより、凸部3eがカバー部材3に形成されている。
第2軸受孔3aの内周面には、オイルを保持して駆動軸4を潤滑する油保持溝3cが形成されている。図10に示すように、油保持溝3cは、凸部3eを含むカバー部材3の厚さの2/3を超える程度にカバー部材3の裏面3d(図10の右側の面)からカバー部材3の厚さ方向に延びている。油保持溝3cは、カバー部材3の裏面3dからカバー部材3の厚さ方向に先細りするように延びており、裏面3dに隣接した部分が段差状に形成されている。
[第1の実施例の効果]
図11は、上記特許文献1に記載の従来技術の可変容量型オイルポンプにおける軸受給油溝の横溝33およびその周囲を示したハウジング本体2等の断面図である。
従来技術の可変容量型オイルポンプでは、ハウジング本体2の底面13aに形成された軸受孔2aと吐出ポート19とが、同じく底面13aに形成された軸受給油溝の横溝33によって互いに連通している。
このような可変容量型オイルポンプにおいて、ベーン6が吐出ポート19からの吐出圧を受けることにより、図11に示すように、ベーン6が軸受孔2aの中心(中心線)Oに接近する方向に倒れていく。そして、ベーン6の内側端部の角部6aが軸受給油溝の横溝33内に入り込み、横溝33の側面の縁部33aと干渉する虞がある。これにより、フリクションが増加して、可変容量型オイルポンプのポンプ効率が低下するという問題があった。
図12は、第1の実施例における油導入溝2fおよびその周囲を示したハウジング本体2等の断面図である。
第1の実施例の可変容量型オイルポンプ1では、油導入溝2fが吐出ポート19から中心O側に延びているが、第1軸受孔2aまでは延びていない。つまり、油導入溝2fの終端29と第1軸受孔2aとの間には、底面13aが残存している。そして、図12に示すように、ベーン6の内側端部の角部6aが、底面13aに接触し支持されている。
従って、ベーン6が吐出ポート19からの吐出圧を受けても、ベーン6の内側端部の角部6aが底面13aによって支持されているため、ベーン6が第1軸受孔2aの中心Oに接近する方向に倒れて油導入溝2f内に入り込むことがなく、ベーン6の角部6aと油導入溝2fの縁部との干渉が抑制される。従って、フリクションが増加することがなく、可変容量型オイルポンプ1のポンプ効率の低下が抑制される。
また、上記従来技術の可変容量型オイルポンプでは、図11に示すように、ベーン6が軸受孔2aの中心Oに接近する方向に倒れた状態では、ベーン6の内側端部の角部6aと対角となる角部が、図示省略したカバー部材と干渉する虞がある。これにより、フリクションが増加して、可変容量型オイルポンプのポンプ効率が低下するという問題があった。
しかし、第1の実施例では、図12に示すようにベーン6の角部6aが底面13aによって支持されることで、第1軸受孔2aの中心Oに接近する方向へのベーン6の倒れが抑制されるので、ベーン6の角部6aと対角となる角部と図示省略したカバー部材との干渉が抑制される。従って、フリクションが増加することがなく、可変容量型オイルポンプ1のポンプ効率が向上する。
また、第1の実施例では、ポンプ収容室13を有し、駆動軸4が支持される第1軸受孔2aが形成されたハウジング本体2と、ポンプ収容室13に収容され、駆動軸4の中心に対して偏心可能なカムリング7と、駆動軸4により回転駆動され、複数のスリット5aが開口してなるロータ5と、複数のスリット5aに収容可能にそれぞれ設けられ、駆動軸4に対して径方向に出没可能な複数のベーン6と、ハウジング本体2に固定され、駆動軸4が支持される第2軸受孔3aが形成されたカバー部材3と、ロータ5の側面に駆動軸4を中心として形成された円形凹部23と、円形凹部23に収容され、ベーン6の内端に接触しベーン6の一部をロータ5の外周面から突出させるリング部材9と、ハウジング本体2またはカバー部材3の少なくとも一方に形成され、外部から流体を導入する吸入ポート18と導入した流体を外部に吐出する吐出ポート19と、始端28が吐出ポート19に開口し、終端29が円形凹部23と通過するベーン6の内端との間に対応する位置まで延びる油導入溝2fと、を備えた可変容量型オイルポンプ1において、油導入溝2fおよび円形凹部23を介して、オイルが第1軸受孔2aおよび第2軸受孔3aに導入される。
従って、ベーン6と油導入溝2fとの干渉を抑制し、可変容量型オイルポンプ1のポンプ効率を向上させることができる。
さらに、円形凹部23の深さDは、リング部材9の厚さTrよりも大きく形成されている。
従って、オイルが吐出ポート19から油導入溝2fおよび軸方向隙間34を介してリング部材9の内周側に流入し易くなり、駆動軸4へのオイルの供給が容易となる。
また、リング部材9の直径は、円形凹部23の直径よりも小さく形成されている。
従って、リング部材9の外周面と円形凹部23の周囲壁23bの内周面との間に径方向隙間32が形成され、これにより、径方向に見たときのベーン6の内端が、円形凹部23の周囲壁23bの内周面から径方向内側に常に突出するため、ベーン6が追従し易くなる。
さらに、リング部材9は、その側面に径方向に連通する溝9bを備えている。
従って、オイルが溝9bを通してリング部材9の内周側に流入し易くなり、駆動軸4へのオイルの供給が容易となる。
また、油導入溝2fの始端28は、吐出ポート19の終端部19bに形成されている。
これにより、終端部19bでは、ベーン6がロータ5のスリット5a内に収容される割合が大きくなっており、ロータ5の外周面から僅かに突出したベーン6がカムリング7の内周面に接触している。従って、ベーン6が吐出ポートからの吐出圧を受けて第1軸受孔2aの中心Oに接近する方向に倒れ難くなっており、ベーン6の角部6aと油導入溝2fの縁部との干渉が抑制される。
さらに、油導入溝2fの終端29は、油導入溝2fの始端28よりベーン6の回転上流側に形成されている。
従って、油導入溝2fとベーン6とによって、図6に示すように鋭角である角度θが形成されている。これにより、吐出ポート19の終端部19bにおいて、ベーン6全体が油導入溝2fと径方向に沿って重なることが抑制され、通過するベーン6が第1軸受孔2aの中心Oに対して倒れて油導入溝2f内に落ち込む虞がない。従って、ベーン6と油導入溝2fとの干渉が回避され、可変容量型オイルポンプ1のポンプ効率の低下が抑制される。
また、第1軸受孔2aおよび第2軸受孔3aには、円形凹部23に連通する油保持溝2e,3cが形成されている。
従って、オイルが各円形凹部23を通して油保持溝2e,3cに流入する。これにより、オイルは油保持溝2e,3c内で保持され、駆動軸4の潤滑が向上する。
さらに、油導入溝2fは、吐出ポート19から直線状に延びる。
これにより、吐出ポート19の終端部19bにおいて、通過するベーン6と油導入溝2fとの径方向に沿った重なり部分が低減し、ベーン6が第1軸受孔2aの中心Oに対して倒れて油導入溝2f内に落ち込み難くなっている。従って、可変容量型オイルポンプ1のポンプ効率の低下が抑制される。
なお、上記第1の実施例では、吐出ポート19および油導入溝2fがハウジング本体2に形成された例を開示したが、吐出ポート19および油導入溝2fは、カバー部材3に形成されても良い。この場合、形状が簡潔な板状のカバー部材3に吐出ポート19および油導入溝2fを形成すればよいから、これらをハウジング本体2に形成する場合と比べて加工性が向上する。
また、吐出ポート19および油導入溝2fは、ハウジング本体2およびカバー部材3の双方に形成されても良い。これにより、ハウジング本体2側およびカバー部材3側の双方から第1、第2軸受孔2a,3aへのオイルの潤滑を効率的に行うことができる。
[第2の実施例]
図13は、第2の実施例の油導入溝2gを有したハウジング本体2の正面図を示している。
図13に示すように、油導入溝2gは、吐出ポート19のロータ回転方向後端側から曲線状に延びている。油導入溝2gは、ベーン6が油導入溝2gを通過するときに径方向に沿ってベーン6と完全にオーバラップしないように曲線状に延びている。本実施例では、油導入溝2gは、吐出ポート19の終端部19bから図13の反時計方向に湾曲するように延びている。なお、油導入溝2gは、吐出ポート19の終端部19bから図13の時計方向に湾曲するように延びていても良い。
図14は、カバー部材3を取り外した状態の第2の実施例の可変容量型オイルポンプ1の組立図である。
図14に破線で示すように、油導入溝2gは、ベーン6がロータ5のスリット5a内に収容される割合が大きくなる、吐出ポート19のロータ回転方向後端側に設けられている。油導入溝2gは、吐出ポート19のロータ回転方向後端側から円形凹部23の周囲壁23bの内周面とリング部材9の外周面との間の領域A内の位置まで曲線状に延びている。つまり、油導入溝2gの始端30は、吐出ポート19の終端部19b(図13参照)に位置しており、油導入溝2gの終端31は、始端30よりベーン6の回転下流側であって、ベーン6の基端部の内端面と円形凹部23の周囲壁23bの内周面との間の領域A内の位置まで延びる。
[第2の実施例の効果]
第1の実施例の作用効果に加えて、第2の実施例は、以下の作用効果を有している。
第2の実施例では、油導入溝2gは、吐出ポート19から曲線状に延びることから、通過するベーン6と油導入溝2gとが径方向に沿って重なる部分が低減し、ベーン6が第1軸受孔2aの中心Oに対して倒れて油導入溝2g内に落ち込み難くなっている。従って、可変容量型オイルポンプ1のポンプ効率の低下が抑制される。
以上説明した実施例に基づく可変容量型オイルポンプとしては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
可変容量型オイルポンプは、その一つの態様において、ポンプ収容室を有し、駆動軸が支持される第1軸受孔が形成されたハウジング本体と、前記ポンプ収容室に収容され、前記駆動軸の中心に対して偏心可能なカムリングと、前記駆動軸により回転駆動され、複数のスリットが開口してなるロータと、前記複数のスリットに収容可能にそれぞれ設けられ、前記駆動軸に対して径方向に出没可能な複数のベーンと、前記ハウジング本体に固定され、前記駆動軸が支持される第2軸受孔が形成されたカバー部材と、前記ロータの側面に前記駆動軸を中心として形成された円形凹部と、前記円形凹部に収容され、前記ベーンの内端に接触し前記ベーンの一部を前記ロータの外周面から突出させるリング部材と、前記ハウジング本体または前記カバー部材の少なくとも一方に形成され、外部から流体を導入する吸入ポートと導入した流体を外部に吐出する吐出ポートと、始端が前記吐出ポートに開口し、終端が前記円形凹部と通過するベーンの内端との間に対応する位置まで延びる油導入溝と、を備えている。前記油導入溝および前記円形凹部を介して、オイルが前記第1軸受孔および前記第2軸受孔に導入される。
可変容量型オイルポンプの好ましい態様において、前記円形凹部の深さは、前記リング部材の厚さよりも大きく形成されている。
別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記リング部材の直径は、前記円形凹部の直径よりも小さく形成されている。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記リング部材は、その側面に径方向に連通する溝を備えている。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記油導入溝の始端は、前記吐出ポートの終端部に形成されている。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記油導入溝の終端は、前記油導入溝の始端より前記ベーンの回転上流側に形成されている。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記油導入溝は、前記吐出ポートから曲線状に延びる。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記第1軸受孔および前記第2軸受孔には、前記円形凹部に連通する油保持溝が形成されている。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記油導入溝は、前記吐出ポートから直線状に延びる。
さらに別の好ましい態様では、可変容量型オイルポンプの態様のいずれかにおいて、前記吐出ポートは、前記ハウジング本体および前記カバー部材に形成されており、各々の吐出ポートから油導入溝が形成されている。