JP6907478B2 - イソプレンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イソプレンの製造方法に関する。
ポリイソプレンゴムの原料であるイソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)の工業的製造方法としては、ナフサを熱分解した際に副生するC5留分から抽出できることが知られている。しかし、上記副生成物から製造されるイソプレンは供給量が必ずしも十分ではなく、又、原料となる石油価格の変動の影響を受け易いことから、近年ではイソプレンの安定的な確保のために、非石油資源由来のイソプレンの製造方法の開発、具体的には動物細胞、又は植物細胞等にイソプレン合成酵素遺伝子を組み込むことにより得られる形質転換体を用いて、イソプレンを製造する方法の開発が進められてきた。
上記形質転換体としては、例えば、特許文献1には、「(a)イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、(b)5−ホスホメバロン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチド、及び、(c)ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチド、からなる群より選択される少なくとも1種で形質転換され、且つ、有用部分の生産性が高められた、形質転換植物。」が記載され、具体例として、イソプレン合成酵素遺伝子を発現させたシロイヌナズナが記載されている。
特開2008−035831号公報
本発明者らは、特許文献1に記載された、イソプレン合成酵素遺伝子を発現させたシロイヌナズナを用いてイソプレンの製造を試みたところ、生成されたイソプレンの回収が煩雑であり、低効率であることを知見した。また、シロイヌナズナの栽培には所定の容積を要し、単位容積当たりのイソプレン収率が悪いことも、また、知見した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、生成したイソプレンの回収が容易であり、かつ、単位容積あたりの収率の高いイソプレンの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類を用いることによれば上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
[1] 液体培地と、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類と、を容器内に収容する工程Aと、藻類を液体培地中で培養して、培養液を得る工程Bと、容器内の気相からイソプレンを採取する工程Cと、を含有するイソプレンの製造方法。
[2] 藻類が珪藻である、[1]に記載のイソプレンの製造方法。
[3] 工程Bにおける培養温度が、10〜40℃である、[1]又は[2]に記載のイソプレンの製造方法。
本発明によれば、生成したイソプレンの回収が容易であり、かつ、単位容積あたりの収率の高いイソプレンの製造方法を提供することができる。
以下、本発明について、実施態様に基づき、詳細に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様に基づいてなされるもので、本発明はそのような実施態様に限定されない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[イソプレンの製造方法]
上記実施態様に係るイソプレンの製造方法は、
・工程A:液体培地と、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類と、を容器内に収容する工程
・工程B:藻類を液体培地中で培養して、培養液を得る工程
・工程C:容器内の気相からイソプレンを採取する工程
とを含有する。
上記イソプレンの製造方法においては、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類を容器内で培養し、上記容器内の気相部分(例えば、ヘッドスペース等が挙げられる)から、イソプレンを採取する。
藻類は、シロイヌナズナ等の陸生植物と比較し、単位容積あたりの培養効率が高いため、効率的にイソプレンを製造することができる。
また、藻類は雰囲気中の炭酸ガスを固定する能力が高く、後述するジメチルアリルピロリン酸を光合成により、効率よく生成することができるため、効率的にイソプレンを製造することができる。
また、藻類は閉鎖系の容器内で培養することができるため、生成したイソプレンを容器内の気相から容易に採取することができる。
上記の相乗効果により、上記実施態様に係るイソプレンの製造方法は所望の効果を得ることができたものと推測される。
以下では、それぞれの工程について、その態様を説明する。
〔工程A〕
工程Aは、液体培地と、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類と、を容器内に収容する工程である。
<液体培地>
工程Aにおいて使用される液体培地としては特に制限されず、公知の液体培地を用いることができる。
液体培地としては、例えば、海水を含む液体培地が挙げられる。
液体培地としては、例えば、窒素源、リン、マグネシウム、ケイ素、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びビタミン類等を含有する培地が挙げられる。
上記液体培地の具体例としては、例えば、海塩及び所定量のNaSiOを補充したダイゴIMK培養培地等が挙げられる。
<イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類>
工程Aにおいて使用されるイソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類としては特に制限されず、公知の方法で形質転換された藻類を用いることができる。
(イソプレン合成酵素)
本明細書において、イソプレン合成酵素とは、イソプレン合成活性を有するタンパク質を意図し、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)が酸化的に脱リン酸される反応を触媒する酵素である。
イソプレン合成酵素としては、イソプレン合成酵素を生産するあらゆる種に由来するものが挙げられるが、その中でも、例えば、高等植物又はシダ植物に由来のものが好ましく、特に、広葉樹、シダ類、及び、針葉樹等のイソプレンの放出量が多い種に由来するものが好ましい。特に、イソプレンの放出量が多いヤナギ科(例えば、ポプラ)、フトモモ科(例えば、ユーカリ)、ブナ科(例えば、コナラ属クヌギ、コナラ属ナラガシワ)、オシダ科(例えば、オシダ)等が好ましい。
イソプレン合成酵素の具体例としては、例えば、ヤナギ科のポプラ(Populus alba)のイソプレン合成酵素(Genbankアクセッション番号:BAD98243)等が挙げられる。
イソプレン合成酵素は、上記具体例に係るイソプレン合成酵素のアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは約90%以上、より好ましくは93%、より好ましくは約96%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するイソプレン合成酵素が含まれる。
(イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチド)
イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドとしては、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドであれば特に制限されず、公知のポリヌクレオチドを用いることができる。
イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、ポプラのイソプレン合成酵素遺伝子の塩基配列(Genbankアクセッション番号:AB198180)、及び、クズのイソプレン合成酵素遺伝子の塩基配列(Genbankアクセッション番号:AY316691)等が挙げられる。
イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドは、上記塩基配列と約80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは約90%以上、より好ましくは93%、より好ましくは約96%以上、さらに好ましくは約98%以上の同一性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。
(藻類)
藻類としては珪藻綱、ハプト藻綱、ピンギオ藻綱、及び黄金色藻綱等に属する藻類等が挙げられる。なかでも、珪藻網に属する藻類(以下、単に「珪藻」という。)が好ましい。珪藻としては、キートセラス属(Chaetoceros)、ファエオダクチラム属(Phaeoductylum)、シクロテラ属(Cyclotella)、スケルトネマ属(Skeletonema)、オドンテラ属(Odontella)、及びニッチア属(Nitzschia)等に分類される珪藻が挙げられ、なかでもキートセラス属(Chaetoceros)が好ましく、ツノケイソウがより好ましく、Chaetoceros gracilisが更に好ましい。なお、上記珪藻は、変異体であってもよい。
(イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類の製造方法)
イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された藻類の製造方法としては特に制限されず、公知の形質転換の方法を用いることができる。
なかでも、上記ポリヌクレオチドを発現ベクターへ連結した発現プラスミドとして藻類細胞に導入する方法が好ましい。
発現ベクターとしては、藻類細胞へ導入され得るものであれば特に制限されず、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、及びコスミドベクター等が挙げられる。なかでもプラスミドベクターが好ましい。
特に宿主において自律複製可能又は染色体中への組み込みが可能で、ポリヌクレオチドの転写を可能にする位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。PCRによって増幅されたポリヌクレオチドの5’末端は、直接又は適当な配列(例えば、制限酵素認識部位)を介してin−frameでプロモーターの3’末端へ連結される。発現ベクターは、さらに、植物細胞用エンハンサー(例えば、EL2エンハンサー、CaMV35Sエンハンサー等)、選択マーカー遺伝子、標識タグ等を含有してもよい。終止コドンは、必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に配置されることが好ましい。また、アミノ酸配列を参考にして、ポリヌクレオチドをin−frameで発現プロモーター、エンハンサー、開始コドン等と連結することができる。各種塩基配列及びアミノ酸配列は、Genbank、EMBL等の検索システムから入手できる。また、アミノ酸配列は、塩基配列に基づきアミノ酸配列を推定するシステム、N末端分析、C末端分析等の常法によっても決定することができる。
プロモーターとしては、藻類細胞中でイソプレン合成酵素の発現を促進すれば、特に制限されず、公知のプロモーターを用いることができる。
プロモーターとしては例えば、EL2プロモーター、CaMV35Sプロモーター、Cabプロモーター、RuBisCoプロモーター、PR1プロモーター、NRプロモータ、及び、ユビキチンプロモーター、並びに、これらを改変したもの等が挙げられる。
また、上記ベクターは、一般的なベクターに含まれるその他の配列を含んでもよい。例えば、イソプレン合成酵素遺伝子の発現を調整するオペレーター、ターミネーター、及びエンハンサー等のいわゆる調整配列を含んでもよい。更に、上記とは異なるプロモーターやそれに制御される遺伝子(例えば薬剤体制遺伝子)等を含んでもよい。
上記ベクターは、当業者に周知の方法によって作成することができる。例えば、適切な制限酵素部位を設けたプライマーを用いて上記プロモーター配列を増幅し、制限酵素で切断したドナーベクターに挿入することによって得られる。あるいは「In−Fusion(登録商標)」反応を用いる方法によっても作成することができる。
上記プロモーター配列は、その下流にターミネーター配列が組み込まれた発現カセットとしてドナーベクターに導入してもよい。プロモーター配列とターミネーター配列の聞にイソプレン合成酵素遺伝子が組み込まれていてもよい。イソプレン合成酵素遺伝子を挿入するために、フロモーター配列とターミネーター配列の聞には、制限酵素の切断部位が複数存在する多重クローニング部位が存在することが好ましい。
ターミネーター配列としては、藻類細胞で機能するものであれば特に限定されないが、例えばCglhcr14(Genbankアクセション番号:AB981623)のターミネーター配列:CgLhcr14terが挙げられる。
藻類へのポリヌクレオチド又はそれを含む発現プラスミドの導入方法としては、特に制限されず公知の方法を用いることができる。
上記導入方法としては、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、アグロ
バクテリウム法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、リン酸カルシウム法、プロトプラス
ト法、並びに、Gene,17,107(1982)、Molecular & General Genetics,168,111(1979)及びMolecular Cloning 2nd ed.(Sambrook,J., Fritsch,E.F., Maniatis,T. Cold Spring Harvor Laboratory Press 1989)、Photosynth Res. 123: 203−211. doi: 10.1007/s11120−014−0048−y.、及び、Plant Molecular Biology Manual (Stanton B. Gelvin and Robert A. Schilperoort. Kluwer Academic Publishers 1988)等の文献(これらは、本書においてその全体が援用される)に記載の方法等を好適に用いることができる。
さらに、通常、発現プラスミドが導入されている個体を選択する。発現プラスミドが導入されている個体の選択は、常法、例えば、薬物含有培地による選択、ホルモン含有培地による選択、栄養要求性による選択により行なうことができる。さらに、ゲノムPCR、RT−PCR、ノザンハイブリダイゼーション、ウェスタン解析等の常法を用いて、植物細胞染色体への上記ポリヌクレオチドの組み込み等を確認することができる。
ここで、形質転換とは、一般的に、ある細胞から単離したDNAが他の細胞に取り込まれ、細胞染色体と組換えを起こす遺伝現象をいうが(東京化学同人 生化学辞典 第2版、416〜417ページ)、現在では、プラスミドやそれに結合した遺伝子なども含めてDNA分子を直接細胞に導入することを意味する(岩波 生物学辞典 第4版、380ページ〜381ページ)。明細書において、形質転換とは、ポリヌクレオチド(例えば、DNA、mRNA)を細胞に導入することを意味し、このときポリヌクレオチドが細胞染色体との組換えを起こしてもよいし起こさなくてもよい。表現型及び遺伝型を安定して発現させるには、オリゴヌクレオチドが細胞染色体との組換えを起こすことが望ましく、さらに、その細胞染色体との組換えがホモ接合型であることが望ましい。
<容器>
上記液体培地、及び、形質転換された藻類を収容するための容器としては、特に制限されず、公知の容器を用いることができる。
上記容器としては、例えば、平板培養容器、管型培養容器、エアドーム型培養容器、及び中空のシリンダー型容器等が挙げられる。上記容器は、密閉容器であってもよい。
〔工程B〕
工程Bは、藻類を液体培地中で培養して、培養液を得る工程である。
藻類を液体培地中で培養する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
培養方法としては、藻類をバッチ培養法、流加培養法、及び、連続培養法等の公知の発酵方法を用いて培養する方法が挙げられる。
バッチ培養法は、培地に藻類を加え、培養条件の制御を行いながら培養を行う方法である。バッチ培養法では、藻類は、穏やかな誘導期から対数増殖期を経て最終的に成長速度が減少又は停止する定常期に至る。イソプレンは、対数増殖期及び/又は定常期の形質転換体によって産出されることが多い。
流加培養法は、上述したバッチ法に加えて、発酵プロセスが進行するに従い徐々に炭素源を添加する方法である。流加培養法は、カタボライト抑制により藻類の代謝が抑制される傾向があり、培地中の炭素源の量を制限することが好ましいときに有効である。
連続培養法は、一定の速度でバイオリアクターに所定量の培地を連続的に供給しながら、同時に同量の培養液を抜き取る培養法である。連続培養法では培養物を一定の高密度に保つことができ、培養液中の藻類は主に対数増殖期にある。
適宜、培地の一部又は全部を入れ換えることにより、栄養素の補給を行うことができ、藻類の生育に悪影響を及ぼす可能性のある代謝副産物、及び死細胞の蓄積を防ぐ
ことができる。
藻類の培養条件としては、イソプレン合成酵素遺伝子の発現が可能な条件であれば、特に限定されず、標準的な細胞培養条件を用いることができる。培養温度としては、例えば、10〜40℃が好ましく、20〜25℃がより好ましい。
また、ガス組成としては、CO濃度が0.04〜10%であることが好ましく、pHが、4〜10であることが好ましい。
なかでも、藻類として珪藻を用いる場合、培養温度としては、15〜35℃が好ましく、20〜25℃がより好ましい。また、ガス組成としては、CO濃度が0.04〜5%であることが好ましく、pHが、7〜9であることが好ましい。形質転換された珪藻を上記の培養温度で培養することにより、イソプレン合成酵素遺伝子の発現がより促進される。
〔工程C〕
工程Cは、容器内の気相からイソプレンを採取する工程である。上記の方法により生成したイソプレンを採取する方法としては、ガスストリッピング、分留、固相に吸着させたイソプレンモノマーの熱、又は真空による固相からの脱着、及び、溶媒による抽出等が挙げられる。
例えば、ガスストリッピングでは、アウトガスから連続的にイソプレンガスを除去する。このようなイソプレンガスの除去は種々の方法で行うことができ、固相への吸着、液相への分離、又はイソプレンガスを直接凝縮させる方法が挙げられる。
上記イソプレンの製造方法によれば、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)からイソプレンを効率的に製造することができる。上記イソプレンの製造方法では、DMAPPは、藻類により、培地中の炭素源から効率的に供給される。藻類は、培地中の炭素源から、イソプレンを主にアウトガスとして生産するため、藻類から発生するイソプレンを採取することができる。なお、イソプレン合成酵素の基質であるDMAPPは、培地中の炭素源を素に、宿主内のメバロン酸経路又はメチルエリスリトールリン酸経路で合成される。
藻類(なかでも珪藻)は集光能力及びCO固定能力が高いため、上記DMAPPを効率よく生産することができるため、イソプレンの生成効率が高まる。
また、藻類は上記のとおり容器内で大量に培養することができるため、シロイヌナズナ等を用いる場合と比較して、単位容積あたりのイソプレン生産量が高い。
また、藻類は上記のとおり閉鎖系の容器内で培養することができるため、生成したイソプレンは、上記閉鎖系の容器のヘッドスペースから簡単に回収することができる。
上記のとおり、本発明の実施態様に係るイソプレンの製造方法によれば、生成したイソプレンの回収が容易である。また、上記イソプレンの製造方法は、単位容積あたりの収率の高い。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[ギンドロ由来イソプレン合成酵素遺伝子のクローニング]
〔植物材料及び生育条件〕
イソプレン合成酵素遺伝子は、ポプラ属樹木のギンドロ(Populus alba)から、イソプレン合成酵素遺伝子配列を利用したPCRにてクローニングした。
(Populus alba)は、900mLセルカルチャーフラスコに、Linsmaier−Skoog寒天培地(1%、質量/容量)に3%のショ糖を添加したもの(pH5.7)を加えて、培養を行った。培養条件は25℃、長日条件(16時間明期(120μmol/ms)、8時間暗期)であった。
〔Populus albaからのtotal RNAの抽出〕
Total RNAの抽出は、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen,Valencia,CA,USA)のプロトコールに従って行った。試料はP.alba(約5cm草丈)緑葉130mgをサンプリングし、液体窒素で凍結したものを用いた。
〔P.alba total RNAを用いた逆転写反応〕
Total RNA 2.5μgをSuperScript III RNase H reverse transcriptase Kit(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて逆転写反応に供した。
Total RNA(2.5μg)12μl(RNase free水でメスアップ)
50μM oligo(dT)20 1μl
10mM dNTP Mix 1μl
合計 14μl
上記の反応液を65℃で5分間加熱後、氷上に移し、5 x First−Strand Buffer 4μl,0.1M DTT1μl,RNaseOUT TM RNase inhibitor 1μl,SuperScript TM III reverse transcriptase 1μlを加え50℃で60分間インキュベートして逆転写反応を行った。その際、反応液をまず湯浴にて一気に温め、反応液の蒸発を防ぐためにエアインキュベーターに移し、反応を行った。その後ヒートブロック(70℃)で15分間加熱し酵素を失活させた。室温に戻した後、反応液にRNase H 1μlを加え、37℃で20分間インキュベートしてテンプレートのRNAを分解した。この逆転写反応産物をテンプレートとしてポジティブコントロールであるβ−actin(ベータ−アクチン)が増幅することを確認した。
〔RT−PCRによるP.albaイソプレン合成酵素(PaIspS)遺伝子の単離〕
Hybrid poplar(P.tremula x P.alba)イソプレン合成酵素遺伝子の配列を基に設計したプライマーペア(Fw.1,Rv.1)を用いて、上記逆転写産物をテンプレートとして、KOD−Plus−DNA polymerase(TOYOBO,Osaka,Japan)によりRT−PCRを行った。
Fw.1: 5’-ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcatggcaactgaattattgtgcttgc -3’
Rv.1: 5’-ggggaccactttgtacaagaaagctgggtcttatctctcaaagggtagaataggctctg -3’
(アンダーラインの配列はサブクローニングのためのGATEWAY systemのa
ttBサイトの配列)
10 x KOD plus buffer 5μl
2mM dNTP 5μl
25mM MgSO 2μl
50μM プライマー(Fw.1、Rv.1) 各1μlずつ
RTproduct 1μl
1U/μlKOD−Plus−DNA polymerase 1μl
上記をHOで50μlまでメスアップ

PCR program
#1:95℃ 4min
#2:95℃ 1min
53℃ 30sec
68℃ 2min
(30cycles)
#3:68℃ 5min
#4:4℃ ∞

アガロース電気泳動により目的の大きさのバンドが増幅したことを確認した後、GAT
EWAY TM system(Invitrogen)を用いてBPrecombinationにより、pDONR221にサブクローニングした後、シーケンスにより配列を確認した。得られたコンストラクトをpDONR221−PaIspS(Genbankアクセッション番号:AB198180)とした(以下、「PaIspS遺伝子」という。)。
[発現ベクターの作製]
以下の方法により、各発現ベクターを作製した。
〔L4fPaISベクターの作製〕
葉緑体移行配列を含めた全長タンパク質をコードするPaIspS遺伝子を、pCgLhcf4p plasmidのBamHI−PstIサイトに挿入して、L4fPaISベクターを得た。なお、pCgLhcf4p plasmidは、pCgNRp plasmid(GenBankのアクセッション番号:AB981622)のNRプロモーター部分を、Fcp遺伝子(Cg_lhcf4)のプロモーター配列(GenBankのアクセッション番号:AB981630)に置き換えて得た。上記により得られた発現ベクターをL4fPaISベクター(配列番号1)とした。
〔L4fP31PaISベクターの作製〕
PaIspS遺伝子の有する本来の葉緑体移行配列を、珪藻のCgPsb31遺伝子(Genbankアクセッション番号:AB373992)の葉緑体移行配列に置き換えた融合タンパク質をコードする改変PaIspS遺伝子をIn_Fusion反応で作成し、pCgLhcf4p plasmidのBamHI−PstIサイトに挿入して、L4fP31PaISベクターを得た。上記により得られた発現ベクターをL4fP31PaISベクター(配列番号3)とした。
〔NRPOPaISベクターの作製〕
pCgNRp plasmid(GenBankのアクセッション番号:AB981622)を葉緑体移行シグナル付加型に改変した。C.gracilisゲノムDNAから、CgPsbO(Genbankアクセッション番号:AB373993)遺伝子の葉緑体移行配列をコードする領域をPCRで増幅し、pCgNRp ベクターのBamHI−XbaIサイトに挿入した。その結果として、得られたプラスミドをpCgNRp/PsbOtpベクターとした。
次に両末端にクローニングに必要な配列を付加したPaIspS遺伝子(葉緑体移行配列をコードする領域を除いた配列)をPCRで増幅し、pCgNRp/PsbOtp ベクター内にあらかじめ設計しておいたAflII−XbaI サイトにIn_Fusion反応で挿入した。これをNRPOPaISベクター(配列番号5)とした。
[発現ベクターの珪藻細胞への導入]
発現ベクターの珪藻細胞への導入は、「Ifuku K, Yan D, Miyahara M, Inoue−Kashino N, Yamamoto YY, Kashino Y. (2015) A stable and efficient nuclear transformation system for the diatom Chaetoceros gracilis. Photosynth Res. 123: 203−211. doi: 10.1007/s11120−014−0048−y.」に記載された方法を参照して行った。具体的には、以下の方法により行った。
まず、珪藻を対数増殖期(珪藻細胞を10%IMK培地中で23℃で培養し、約1.8×10cell/mlとなった状態を意図する。)まで育て、増殖した珪藻細胞を遠心分離(条件:7000g、4分)を用いて回収した。回収した珪藻細胞を0.77Mのマンニトール(10%IMK培地にて希釈)で洗浄した。洗浄後、上記回収した珪藻細胞を0.15mLのIMK培地に再懸濁したのち、5μgの直鎖状プラスミドDNA(上記の「L4fPaISベクター」「L4fP31PaISベクター」、及び、「NRPOPaISベクター」をHind IIIで切断して直鎖状にしたもの)したものと混合して混合液を得た。上記混合液をエレクトロポレーション用のキュベット(間隙 0.2cm)に入れた。次に、キュベットにいれた混合液に対し、ネッパジーンを用いて、以下の条件でエレクトロポレーションを行った。
300V(パルス幅 5msec; 9パルス; インターバル 50msec;10%減少速度)、次いで、トランスファーパルス 8V(パルス長 50msec; 40パルス;インターバル 50msec;40%減少速度)。
上記の操作は室温で行った。エレクトロポレーションの後、珪藻細胞は4mlのIMK培地に移し、セレクション圧のかからない培地でリカバリーを行った(20℃、16−20時間、通常光照射化)。
次に、珪藻細胞を遠心分離(条件:700g、4分間)を用いて回収し、0.2mlのIMK培地に再懸濁した。形質転換した細胞はIMKプレート(1% agar,400μg/ml nourseothricin)存在下で選抜をした。
<導入遺伝子の発現状況の分析>
コロニーPCRにより、薬剤耐性コロニーにおける導入遺伝子の存在を確認した。一部のクローンについて液体培養後、遠心分離により集藻してtotal RNAを単離し、RT−PCRによりmRNAの発現を確認した。
[実施例1]
L4fPaISベクターを用いて形質転換した珪藻を用いて、下記の方法によりイソプレンを製造した。
使用した培地の組成は以下のとおりである。
・sea salts 40 g (Sigma−Aldrich社製)
・ダイゴIMK培地 0.252 g (Wako社製)
・珪酸ナトリウム 56.2 μg(終濃度0.2 mM)
上記を蒸留水に溶解し、1Lとした。
形質転換された珪藻の培養と、イソプレンの回収は、以下の装置(リアクター)を用いて行った。装置としては、ポンプ、活性炭、容量300mLのフラスコ、フィルター、採集管をこの順にチューブで接続した装置を用いた。
形質転換された珪藻の培養は、上記培地5mLで前培養した形質転換された珪藻に、培地を加え、100mLとしたものを、容量300mLのフラスコに収容し、温度25℃、大気環境下で行った。
リアクターにおける各部は以下のものを使用した。
・ポンプ:non−noise S100((有)アーテム社製)
・活性炭:有機物除去管(活性炭入)(ジーエルサイエンス社製)
・フィルター:LABODISCRディスポーザブルメンブレンフィルターユニット
・採集管 パーキンエルマー社製、TurboMatrix用ステンレスチューブ(外径6.35mm、長さ89mm)
上記採集管に、2.6−Diphenyl−p−phenylene Oxideをベースにした弱極性のポーラスポリマービーズ(Tenax TA)及び非多孔質の活性炭(Carbopack B)を充填したもの。
上記採集管に採集したイソプレンガスの分析はPerkin−Elmer製ATD−400及び島津製作所製GCFID−GC17Aを用いて行った。分析条件は以下のとおりである。
・加熱脱離(Perkin−Elmer製ATD−400)分析条件
Desorption: 280℃,12mLHe/min,10min
Cold Trap Temp : −10℃
・GCFID(島津製作所製GCFID−GC17A)分析条件
Column: スペルコSPB−1(0.25mm×60m, 1um)
Carrier Gas: He, 2.0mL/min
Split Ratio: 5:1
Colum Temp.: 35℃(5min維持),5℃/minで200℃まで,200℃から10℃/minで250℃(10min維持)
以上の結果から、実施例1のイソプレンの製造方法では、100mlの珪藻培養液から1時間当たり最大約1.2ngのイソプレン生産が認められた。
[実施例2及び3]
発現ベクターとして、L4fP31PaISベクター(実施例2)、又は、NRPOPaISベクター(実施例3)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてイソプレンを製造したところ、それぞれ1.5ng、10ngのイソプレン生産が認められた以外は実施例1と同様に結果が得られた。

Claims (2)

  1. 液体培地と、イソプレン合成酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換された珪藻と、を容器内に収容する工程Aと、
    前記珪藻を前記液体培地中で培養して、培養液を得る工程Bと、
    前記容器内の気相からイソプレンを採取する工程Cと、を含有し、
    前記工程Bにおけるガス組成のうち、CO 濃度が0.04〜5%である、イソプレンの製造方法。
  2. 前記工程Bにおける培養温度が、10〜40℃である、請求項1に記載のイソプレンの製造方法。
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