JP6931018B2 - エアロゾル形成用香料組成物の空間噴霧方法 - Google Patents

エアロゾル形成用香料組成物の空間噴霧方法 Download PDF

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Description

本発明は、エアロゾル形成用香料組成物の空間噴霧方法に関する。
従来、特定の限られた空間で人に芳香を知覚させるには、調合香料又はこれをエタノール、水等に溶解した芳香剤溶液を、電気-機械変換素子による振動圧、エアゾール等による気液二相噴流等を利用して微粒子化させたエアロゾルの形態で、目的とする空間内に放出させる方法が知られている。しかし、一般に複数の香料成分を含む調合香料や芳香剤溶液は、香料成分の構成比率や濃度によっては微粒子化が困難となり、創作できる香調が制限されるという問題があり、また、連続して微粒子化させると、揮発しやすい溶剤が先に揮発していくため香料濃度が次第に高くなり、途中から微粒子化できなくなる、あるいは、揮発しやすい香料成分がより早く揮発していくため香料の組成が次第に変化して香調が安定しない、等の問題があった。
香料を微粒子化させて空間に放出するための香料組成物に関する技術としては、微粒子化させるのに最適な特定の粘度、ClogP、及び表面張力を有する香料組成物を用いる技術(特許文献1)、振動板上で香料成分を微粒子化させる方法において、蒸気圧が0.008mmHgを超える香料成分を主成分とし、最も蒸気圧が低い香料成分を香料組成物全体の2%未満として、揮発せずに振動板上に残留する香料成分を最小限とする技術(特許文献2)、ピエゾジェット方式による香料の微粒子化装置と小型モーターファンを組合せて、ファンによる気流を水平より上方にむけるシステムにおいて、重量モル濃度による沸点の平均値が200℃未満となる香料組成物を用いる技術(特許文献3)などが知られている。
米国特許出願2015/250912号明細書 特表2005-517520号公報 国際公開第2018/191043号パンフレット
しかし、特許文献1〜3に記載の技術は、いずれも香料組成物が微粒子化しやすくなるように、香料成分を、香料の粘度、水-オクタノール分配係数(ClogP)、表面張力、沸点等の特定の物理化学的な値に基づいて分類し、特定の香料素材を組み合わせる技術であり、創作できる香調が制限される。さらに、特許文献1〜3に記載の技術は、空間に放出された香料成分が(特許文献2に記載されているように)、そのまま気流によって観察者の鼻まで運ばれるのではなく、いったん室内の床、壁、家具等の表面に付着し残留した後に、周囲の空間に芳香が放出されることを意図しており、一定の限られた空間で、特定の対象者だけに特定の香りを提示するための技術ではない。
その一方で、最近では、映画館、博物館等の映像提示施設や、バーチャルリアリティの技術を用いたアトラクション施設において、映像の視聴者が、見ている映像の1シーンに相応しい香りをその場で映像と連動して知覚できる技術が開発されており、特定の対象者だけが、特定の限られた空間内だけで香りを知覚できるように芳香空間を演出することは重要な技術課題となっている。
香料を微粒子(エアロゾル)として空間に噴霧することによる香りの提示は、揮発しやすい香料と揮発しにくい香料を同時に空間に放出でき、必要最小量の香料成分を用いて様々なシーンの香りをその場で直ぐに知覚できる点で優れている。しかしその一方で、微粒子化できる香調が制約されることや、いったん放出した香りが周囲の空間に拡散し、近接した空間で別の香りが放出された場合に香りが混じってしまい特定の対象者だけに特定の香りを提示することができない、といった問題は依然として解決されていない。
したがって本発明は、数メートル以内の距離で隣接して区切られた別々の空間内において、それぞれの空間で異なる香りをエアロゾル状態で吐出した場合に、互いの香りが混じり合って知覚されることなく、隣接した空間で様々な異なる香りのバリエーションを同時に提示することができるエアロゾル形成用香料組成物の空間噴霧方法に関する。
そこで発明者らは鋭意検討を行った結果、個々の香料化合物の空間濃度と匂いの感覚強度(Labeled Magnitude Scaleによる)との関係、そして、香料化合物の空間への揮発しやすさ(Kovats Index)とを考慮して香料化合物を分類し、かつ、それらの分類ごとの含有量を特定の範囲に調整することによって、エアロゾルを形成させて空間に吐出した際に、数メートル以内の近距離で接近した別々の空間内において、両者の香りが混じり合うことなく、同時に別々の香りを知覚させられることを見出した。
本発明は、香料組成物をエアロゾルとして空間に噴霧する方法であって、香料化合物を下記分類基準;
<分類基準>
吐出された香料化合物が吐出点から均一に空間に拡散する条件の下、香料化合物がエアロゾル状態で吐出された場合、式(3)で計算されるLabeled Magnitude Scaleによる感覚強度が、エアロゾルの吐出口から1m離れた地点において1.0未満となる最大の吐出量(μg)に基づいて、香料化合物を下記(A)〜(D)群に分類する。
Figure 0006931018
〔式中、p、q及びrは香料化合物ごとに決定された変数を示し、Kovatsは香料化合物のKovats Indexを示し、amountはエアロゾルとしての1回の吐出における香料化合物の空間吐出量(μg)を示し、distanceはエアロゾルの吐出口から香りを知覚する地点までの距離(m)を示す。〕
(A)群:前記最大の吐出量が0.08μg以上3μg以下である香料化合物
(B)群:前記最大の吐出量が3μg超10μg以下である香料化合物
(C)群:前記最大の吐出量が10μg超30μg以下である香料化合物
(D)群:前記最大の吐出量が30μg超である香料化合物
に基づいて分類した場合において、
前記香料組成物中における(A)群の香料化合物の含有量が0.035質量%以下、
前記香料組成物中における(B)群の香料化合物の含有量が0.23質量%以下、
前記香料組成物中における(C)群の香料化合物の含有量が0.8質量%以下、
前記香料組成物中における(D)群の香料化合物の含有量が9.7質量%以下、
香料組成物中における(A)〜(D)群からなる全香料化合物の合計量が0.5質量%以上、
となるように、各群のうち2群以上の香料化合物と希釈剤とを用いて調製された香料組成物をエアロゾルとして空間に噴霧する、香料噴霧方法を提供するものである。
本発明の香料噴霧方法によれば、香料組成物をエアロゾル状態で空間に吐出させた際に、数メートル以内の至近距離においてのみ香り立ちに優れ、かつ、吐出点から数メートル離れると、香りが知覚されなくなるため、数メートル以内の近距離で接近した別々の空間内において、両者の香りが混じり合うことなく、同時に別々の香りを知覚させることができる。
Labeled Magnitude Scale(LMS)を示す図である。
〔Labeled Magnitude Scale(LMS)について〕
Labeled Magnitude Scale(LMS)とは、B. G. Green(Chem. Senses., 1993, 18(6), 683-702)によって言語標識と対数尺度を組み合わせて開発された感覚強度尺度である。LMSは、測定対象による感覚強度の違いを直接的に、かつ、詳細に測ることが可能であり、味覚、嗅覚、触覚等の感覚強度の定量化・比較に利用されている。LMSは、図1に示すように0=「Barely detectable」、100=「Strongest Imaginable」で標識(ラベル)された0〜100の評価尺度内に示す感覚強度(「Barely Detectable」、「Weak」、「Moderate」、「Strong」、「Very Strong」)が標識されている。
LMSによる数値が意味する強度を以下に示す。
0〜1.4:ほとんど匂いがしない、1.5〜6.1:弱い匂い、6.2〜17.2:楽に感じる匂い、17.3〜35.4:強い匂い、35.5〜53.3:とても強い匂い、53.4〜100:非常に強い匂い
ただし、本発明においては、香料化合物を選定する際、1m離れた地点でのLMSによる各香料化合物の感覚強度の上限を1.0として、各香料化合物の最大吐出量を算出した。
〔Kovats Indexについて〕
Kovats Indexは、アルカンの保持時間を基準にして算出されるガスクロマトグラフィーにおける保持指標を示し、香料の揮発しやすさを示す指標でもある。本発明においてKovats Indexの値は、Kovats, E., Helv. Chim. Acta, 41, 1915(1958)に記載の方法で計算される。一般的な非極性相カラムは、例えばHP-1(Hewlett-Packard)、CP Sil 5 CB(Chrompack)、OV-1(Ohio Valley)及びRtx-1(Restek)のような各種商標で供給される100%ジメチルポリシロキサン、極性カラムとしては、DB-WAX(Agilent)のような100%ポリエチレングリコールが好ましい。
本発明においては、サーキュレーター等の強制対流による香料組成物の観察対象系外への散逸がなく、吐出された香料化合物が吐出点から均一に空間に拡散する条件の下、香料化合物がエアロゾル状態で吐出された場合、以下の式(3)で計算されるLabeled Magnitude Scale(LMS)による感覚強度がエアロゾルの吐出口からの距離1m地点において1.0未満となる最大の吐出量(μg)が少ない順に、以下の(A)群〜(D)群に分類する。
Figure 0006931018
〔式中、p、q及びrは香料化合物ごとに決定された変数を示し、Kovatsは香料化合物のKovats Indexを示し、amountはエアロゾルとしての1回の吐出における香料化合物の空間吐出量(μg)を示し、distanceはエアロゾルの吐出口から香りを知覚する地点までの距離(m)を示す。〕
(A)群:前記最大の吐出量が0.08μg以上3μg以下である香料化合物
(B)群:前記最大の吐出量が3μg超10μg以下である香料化合物
(C)群:前記最大の吐出量が10μg超30μg以下である香料化合物
(D)群:前記最大の吐出量が30μg超である香料化合物
本発明で使用する香料組成物は、数メートル以内の至近距離においてのみ知覚され、かつその距離においては香り立ちに優れるものとする観点から、(A)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(A)群の含有量が0.035質量%以下、(B)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(B)群の含有量が0.23質量%以下、(C)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(C)群の含有量が0.8質量%以下、(D)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(D)群の含有量が9.7質量%以下、(A)〜(D)群からなる全香料化合物の合計量が0.5質量%以上となるように、各群のうち2群以上の香料化合物と希釈剤とを用いて調製される。
すなわち、本発明で使用する香料組成物は、(A)群、(B)群、(C)群、(D)群のいずれにも分類されないその他群の香料化合物(前記最大の吐出量が0.08μg未満である香料化合物、例えば、2-メチル酪酸エチル)を含有しない。
〔(A)群:前記最大の吐出量が0.08μg以上3μg以下である香料化合物〕
(A)群に属する香料化合物としては、シス-3-ヘキセノール、リモネン、リナロール、ダマセノン、ローズオキサイド、ベンズアルデヒド、イソボルネオール、ジヒドロミルセノール等が挙げられる。
本発明で使用する香料組成物が(A)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(A)群の含有量は、数メートル以内の至近距離においてのみ知覚されるようにする観点から、0.05質量%以下であって、好ましくは0.045質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下、更に好ましくは0.035質量%以下であり、また、前記距離においては香り立ちに優れるものとする観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。
〔(B)群:前記最大の吐出量が3μg超10μg以下である香料化合物〕
(B)群に属する香料化合物としては、アルデヒド C-14ピーチ、シトラール、酢酸テルピニル、β-ダマスコン、酢酸 trans-2-ヘキセニル、オイゲノール、フローヒドラール、セレストリド、ヘキサン酸 cis-3-ヘキセニル、エバノール等が挙げられる。
本発明で使用する香料組成物が(B)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(B)群の含有量は、数メートル以内の至近距離においてのみ知覚されるようにする観点から、0.4質量%以下であって、好ましくは0.35質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下であり、また、前記距離においては香り立ちに優れるものとする観点から、好ましくは0.035質量%以上、より好ましくは0.04質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。
〔(C)群:前記最大の吐出量が10μg超30μg以下である香料化合物〕
(C)群に属する香料化合物としては、l-メントール、フルーテート、α-ダマスコン、エチルサフラネート、フラクトン、リナロールオキサイド、アミルシンナミックアルデヒド、酢酸シトロネリル、ジメチルオクテノン、フロラマット(登録商標)、l-カルボン、ヌートカトン、ヘリオナール、フェニルエチルアルコール、ローズフェノン、カンファー、アンブロキサン(登録商標)、クマリン等が挙げられる。
本発明で使用する香料組成物が(C)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(C)群の含有量は、数メートル以内の至近距離においてのみ知覚されるようにする観点から、1.0質量%以下であって、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.85質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下であり、また、前記距離においては香り立ちに優れるものとする観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。
〔(D)群:前記最大の吐出量が30μg超である香料化合物〕
(D)群に属する香料化合物としては、ゲラニオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、イソ・イー・スーパー、酢酸リナリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、マロン酸ジエチル、酢酸 o-tert-ブチルシクロヘキシル(o-t-B.C.H.アセテート)、トナリド(登録商標)、シクレマックス、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リラール(登録商標)、マイヨール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、安息香酸ベンジル、フルクタレート、ジヒドロテルピネオール、シトロネロール、リリアール、ネロール、酢酸フェニルエチル、酢酸 p-tert-ブチルシクロヘキシル(p-t-B.C.H.アセテート)、酢酸ベンジル、cis-ジャスモン、インドール、エストラゴール、フィルサントル(登録商標)、ジャバノール(登録商標)、レボサンドル(登録商標)、サンダルマイソールコア(登録商標)、セドリルメチルエーテル、エチルバニリン、エチレンブラシレート、ガラクソリド、ムセノン(登録商標)、ペンタライド(登録商標)、サンダルシンス、等が挙げられる。
本発明で使用する香料組成物が(D)群の香料化合物を含有する場合、香料組成物中における(D)群の含有量は、数メートル以内の至近距離においてのみ知覚されるようにする観点から、15質量%以下であって、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは9.7質量%以下であり、また、前記距離においては香り立ちに優れるものとする観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは3.5質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。
香料組成物中における(A)〜(D)群からなる全香料化合物の合計量は、数メートル以内の至近距離において優れた香り立ちとなるようにする観点から、0.5質量%以上であって、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、前記距離においてのみ知覚されるようにする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
本発明で使用する香料組成物は、前記(A)〜(D)群のうち2群以上と希釈剤を用いて、前記濃度となるよう調製される。希釈剤としては、エタノール、ジプロピレングリコール、グリセリン、フタル酸ジエチル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、水等が挙げられる。香料組成物中における希釈剤の含有量は、香料組成物から(A)〜(D)群からなる全香料化合物を除いた残量となる。
〔噴霧量〕
本発明において、以上説明した香料組成物をエアロゾルとして空間に噴霧する量としては、数メートル以内の至近距離においてのみ知覚されるようにする観点から、好ましくは1mg以上、より好ましくは3mg以上、更に好ましくは9mg以上であり、また、前記距離においては香り立ちに優れるものとする観点から、好ましくは45mg以下、より好ましくは30mg以下、更に好ましくは20mg以下である。
〔噴霧装置〕
本発明の香料噴霧方法に使用される噴霧装置としては、電気-機械変換素子による振動圧、電気-熱変換素子による加熱、エアゾール等による気液二相噴流等を利用して微粒子化させたエアロゾルの形態で、目的とする空間内に放出させることができるものであれば、いずれを使用することもできる。
試験例1(香料化合物の気化量の予測式の導出)
表1に示す香料組成物1を10質量%、20質量%及び30質量%のエタノール溶液とした。これらのエタノール溶液を圧電素子方式の芳香器を用いて9.53 mg噴霧し、噴霧された気体をフッ素樹脂バッグ(5L)で捕集した。捕集した気体のうち400mLをフッ素樹脂バッグ(1L)に移し、更に400mLの空気を入れて希釈した。Tenax-TA(GLサイエンス社製)とダイヤフラムポンプ(GLサイエンス社製、SP 208 Dual)を用いて気化した香料を捕集し、GC/MSにて定量分析を行った。
ガスクロマトグラフィー分析条件
吸着管:Tenax TA(GLサイエンス社製)
GC:6890N(アジレントテクノロジー社製)
カラム:DB-WAX 60.0m × 250μm × 0.25μm
キャリアガス:ヘリウム(116.5kPa、1.1mL/min)
カラム温度:40℃で3分保持後、70℃まで6℃/分、240℃まで4℃/分で昇温し、20分保持
MS:5975B(アジレントテクノロジー社製)
Figure 0006931018
この定量分析の結果から、芳香器から噴霧される香料化合物の放出量(気相濃度;μg/L air)の関係は、xm地点では次式(1)で表されることが分かった。
Figure 0006931018
〔式中、Kovatsは香料化合物のKovats Index、amountはデバイスから噴霧された香料化合物の重量(μg)、distanceはデバイスから対象までの距離(m)を示す。〕
試験例2(気相濃度に対応した各香料化合物の強度曲線の導出)
3Lポリエチレン製におい袋(アズワン社から購入)にそれぞれの香料化合物0.5mLを導入し、無臭の空気を導入した。一晩静置したにおい袋からヘッドスペースを回収し、別のフッ素樹脂バッグを用いて様々な濃度のにおい袋を準備した。
Tenax-TAとサンプリングポンプを用いてフッ素樹脂バッグ内に揮散した香料を捕集し、GC/MSでバッグ内のヘッドスペースを定量分析した。
濃度既知のフッ素樹脂バッグをにおい識別用希釈混合装置(島津社製)に接続し、装置から出される濃度ごとのニオイ強度を専門パネル14名がLMSを用いて評価した。
評価結果から、次式(2)で表される、香料化合物の気相濃度に対応する感覚強度が得られた。
Figure 0006931018
〔式中、p、q及びrは香料化合物ごとに決定された変数を示す。〕
なお、係数p、q及びrは、それぞれの香料化合物ごとに得られた気相濃度を式(2)に代入して算出された感覚強度の値が専門パネル14名の官能評価の平均値に近似するように、予測値と実測値間の残差の二乗和を最小とする(最小二乗法)ことで決定した。
決定には、表計算ソフトプログラムであるMicrosoft社のExcel 2010(ver14.0)のアドインプログラムであるソルバーを用いた。
式(2)に式(1)を代入した式(3)により、デバイスから噴霧された香料化合物の重量から、香料化合物の感覚強度が算出される。本式を用いて、0m地点で香りがわかり、任意の距離では香りがわからなくなる香料の量が計算可能となる。
Figure 0006931018
〔式中、p、q及びrは香料化合物ごとに決定された変数を示し、Kovatsは香料化合物のKovats Indexを示し、amountはエアロゾルとしての1回の吐出における香料化合物の空間吐出量(μg)を示し、distanceはエアロゾルの吐出口から香りを知覚する地点までの距離(m)を示す。〕
式(3)に基づき、0m地点では感覚強度が1.4以上(弱い匂いとして感じられる)となり、1m地点では感覚強度が1.0未満となる(LMS1.4を十分に下回り、ほとんど匂いが感じられない)香料化合物の噴霧量として以下に例示した。
Figure 0006931018
実施例1〜3、比較例1〜2
表3〜6に示す香料組成物をエタノールに5質量%含む香料溶液を準備した。香料溶液を圧電素子方式の芳香器を用いて9.53mg噴霧した。
これらの香料溶液について、芳香器の吐出口から0m、2m、3m及び7mの距離における香りの強さを下記の6段階評価尺度に従って評価した。この評価結果を表7に示した。
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:何のにおいであるかわかる弱いにおい
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:−
(B)群:0.230質量%
(C)群:0.555質量%
(D)群:4.215質量%
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:−
(B)群:0.105質量%
(C)群:0.200質量%
(D)群:4.695質量%
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:−
(B)群:0.185質量%
(C)群:0.725質量%
(D)群:4.090質量%
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
比較例1
(A)群 :−
(B)群 :0.183質量%
(C)群 :0.718質量%
(D)群 :4.049質量%
その他群:2-メチル酪酸エチル:0.05質量%
比較例2
(A)群 :−
(B)群 :0.167質量%
(C)群 :0.625質量%
(D)群 :3.681質量%
その他群:2-メチル酪酸エチル:0.5質量%
Figure 0006931018
*比較例1及び2に含有される2-メチル酪酸エチルは、Labeled Magnitude Scaleによる感覚強度が、エアロゾルの吐出口から1m離れた地点において1.0未満となる最大の吐出量(μg)が0.000021μgであり、(A)〜(D)群のいずれにも属さない香料である。そのような化合物を用いると、芳香器からの距離が3m以上離れていても香りを感知できてしまう。
処方例1〜4
表8〜11に示す香料組成物をエタノールに5質量%含む香料溶液を準備した。香料溶液を圧電素子方式の芳香器を用いて9.53mg噴霧することにより、0mでは香りがわかり、3mでは香りがわからなくなる香料処方を設計可能である。
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:0.035質量%
(B)群:0.175質量%
(C)群:0.800質量%
(D)群:3.990質量%
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:0.015質量%
(B)群:0.070質量%
(C)群:−
(D)群:4.915質量%
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:0.002質量%
(B)群:0.055質量%
(C)群:0.415質量%
(D)群:4.528質量%
Figure 0006931018
(5質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:−
(B)群:0.035質量%
(C)群:−
(D)群:4.965質量%
処方例5
表12に示す香料組成物をエタノールに10質量%含む香料溶液を準備した。香料溶液を圧電素子方式の芳香器を用いて9.53mg噴霧することにより、0mでは香りがわかり、3mでは香りがわからなくなる香料処方を設計可能である。
Figure 0006931018
(10質量%溶液中の各群の含有量)
(A)群:0.002質量%
(B)群:−
(C)群:0.300質量%
(D)群:9.638質量%
このように調整することによって、本発明で使用する香料組成物を、実際にエアロゾルを形成させて空間に噴霧する際に、数メートル以内、更には1m以内の限られた空間内において、数秒以内の短時間で香りの知覚を消失させ、続けて別の香りを同じ空間に噴霧することによって、知覚させる香りを容易に切り替えることができる。

Claims (1)

  1. 香料組成物をエアロゾルとして空間に噴霧する方法であって、香料化合物を下記分類基準;
    <分類基準>
    吐出された香料化合物が吐出点から均一に空間に拡散する条件の下、香料化合物がエアロゾル状態で吐出された場合、式(3)で計算されるLabeled Magnitude Scaleによる感覚強度が、エアロゾルの吐出口から1m離れた地点において1.0未満となる最大の吐出量(μg)に基づいて、香料化合物を下記(A)〜(D)群に分類する。
    Figure 0006931018
    〔式中、p、q及びrは香料化合物ごとに決定された変数を示し、Kovatsは香料化合物のKovats Indexを示し、amountはエアロゾルとしての1回の吐出における香料化合物の空間吐出量(μg)を示し、distanceはエアロゾルの吐出口から香りを知覚する地点までの距離(m)を示す。〕
    (A)群:前記最大の吐出量が0.08μg以上3μg以下である香料化合物
    (B)群:前記最大の吐出量が3μg超10μg以下である香料化合物
    (C)群:前記最大の吐出量が10μg超30μg以下である香料化合物
    (D)群:前記最大の吐出量が30μg超である香料化合物
    に基づいて分類した場合において、
    前記香料組成物中における(A)群の香料化合物の含有量が0.035質量%以下、
    前記香料組成物中における(B)群の香料化合物の含有量が0.23質量%以下、
    前記香料組成物中における(C)群の香料化合物の含有量が0.8質量%以下、
    前記香料組成物中における(D)群の香料化合物の含有量が9.7質量%以下、
    前記香料組成物中に前記最大の吐出量が0.08μg未満である香料化合物を含まず、
    前記香料組成物中における(A)〜(D)群からなる全香料化合物の合計量が0.5質量%以上、
    となるように、各群のうち2群以上の香料化合物とエタノールとを用いて調製された香料組成物を、電気-機械変換素子による振動圧、電気-熱変換素子による加熱、又はエアゾールによる気液二相噴流を利用して微粒子化させたエアロゾルの形態で空間内に放出させることができる噴霧装置を用いて、エアロゾルとして1mg以上45mg以下空間に噴霧する、香料噴霧方法。
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