本発明法では、シート状電池の電解液としてpHが3〜10の範囲にある水溶液を使用する。水溶液系の電解液としては、例えば、アルカリ電池に使用されているような、水酸化カリウム水溶液などの強アルカリ性(pHが14程度)の水溶液が知られているが、このような電解液に比べて、pHが3〜10の範囲にある水溶液の場合には、シート状電池の廃棄時や使用時の破損などで人体に電解液が付着しても問題が生じ難く、高い安全性が確保できると共に、廃棄後の環境への負荷の低減を図ることができる。
また、本発明法では亜鉛合金粒子を含有する負極を使用するが、前記の通り、このような電池においては、特にpHが3〜10程度の水溶液を電解液に使用すると、亜鉛合金粒子の腐食や金属製の正極集電体の腐食が進みやすく、電池の放電特性や貯蔵特性が低下する虞がある。よって、本発明法においては、負極に係る亜鉛合金粒子に特定の粒度のものを使用し、かつ正極集電体にカーボン製の多孔質基材を使用することとし、電池内での亜鉛合金粒子や正極集電体の腐食を抑制して、放電特性および貯蔵特性を高く維持することを可能としている。
なお、本発明法によって製造されるシート状電池は、正極、負極、セパレータおよび電解液がシート状外装体内に収容されており、特定の粒度を有する亜鉛合金粒子を含有し、かつ負極ペーストをシート状外装体上に塗布されることによって形成された負極と、カーボン製の多孔性基材を集電体とする正極と、前記のpHを有する水溶液からなる電解液を備えたものであればよく、アルカリ電池(アルカリ一次電池、アルカリ二次電池)、マンガン電池(マンガン乾電池として知られる電池と同様に、マンガン酸化物を活物質とする正極と水溶液からなる電解液とを有する電池を意味している)、空気電池などの態様を取ることができる。
本発明法は、亜鉛合金粒子と増粘剤とを溶媒と混合して負極ペーストを調製する工程(負極ペースト調製工程)と、前記負極ペーストを、負極側に配置されるシート状外装体上に塗布し、負極を形成する工程(負極形成工程)とを有している。
負極ペースト調製工程で使用する亜鉛合金粒子は、シート状電池の負極の主要成分であり、この粒子中の亜鉛が負極活物質として作用する。
亜鉛合金粒子に係る亜鉛合金には、亜鉛合金粒子の腐食の進行を抑制する観点から、合金成分として、Inを0.005〜0.1質量%、Biを0.005〜0.1質量%、Alを0.005〜0.5質量%の割合で含有させることが好ましい〔この場合、亜鉛合金の残部は、例えば亜鉛(Zn)および不可避不純物である〕。
なお、電池の廃棄時の環境負荷の低減を考慮すると、亜鉛合金粒子に係る亜鉛合金は、水銀、カドミウム、鉛およびクロムの含有量が少ないことが好ましく、具体的な含有量が、水銀:0.1質量%以下、カドミウム:0.01質量%以下、鉛:0.1質量%以下、およびクロム:0.1質量%以下であることがより好ましい。
亜鉛合金粒子の粒度としては、亜鉛合金粒子の腐食が進行を抑制するために、粒径が15μm以下の粒子の全粒子中の割合を、50質量%以下とすればよく、30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましい。
また、負極ペーストの塗布性を向上させる観点からは、亜鉛合金粒子の全粒子中における粒径が200μm以上の粒子の割合が、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
更に、負極ペーストの塗布性をより一層向上させる観点からは、亜鉛合金粒子の全粒子中における粒径が100μm以上の粒子の割合が、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
本明細書でいう亜鉛合金粒子における粒度は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
負極ペーストの固形分(亜鉛合金粒子および後記の増粘剤、更には後記のバインダなどの、負極ペーストを構成する溶媒以外の成分)中の亜鉛合金粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
負極ペーストには増粘剤を含有させる。増粘剤の作用によって負極ペーストの粘度を高めることで、塗布時の塗膜の厚みの調整が容易となるため、負極の生産性が向上する。
増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース(CEC)などのセルロースの誘導体;ポリエチレングリコール(PEG)などのポリアルキレングリコール(ただし、分子量が1万以上のものが好ましい);ポリビニルピロリドン;ポリ酢酸ビニル;デンプン;グアーガム;キサンタンガム;アルギン酸ナトリウム;ヒアルロン酸;ゼラチン;ポリアクリル酸ナトリウム;などの各種合成高分子または天然高分子が挙げられる。増粘剤には、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、PEGなどのポリアルキレングリコールは、一般に分子量(平均分子量)を明示した状態で市販されており、本明細書でいうポリアルキレングリコールの分子量は、このような製造会社の公称値を意味している。
負極ペーストにおける増粘剤の含有量は、塗膜の形成に適した粘度を確保する観点から、負極ペーストの固形分中、例えば1〜10質量%であることが好ましい。
負極ペーストには、バインダを含有させることもできる。バインダとしては、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、ポリビニルブチラールなどが挙げられる。負極ペーストの固形分中のバインダの含有量は、例えば0.5〜5質量%であることが好ましい。
負極ペーストの溶媒には、通常、水が使用されるが、亜鉛合金粒子を均一に分散させたり、増粘剤を良好に溶解させたり、バインダを均一に溶解または分散させたり、界面張力を制御したりするなどの目的で、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)など水以外の溶媒を適宜加えることもできる。また、負極ペーストの溶媒として、電池の電解液として使用される電解質塩を含む水溶液を使用してもよい。
負極ペーストにおける固形分の含有量(全固形分の合計含有量)は、30〜90質量%であることが好ましい。
負極ペーストの調製方法については特に制限はなく、前記の各成分を常法に従って混合すればよい。
負極形成工程では、シート状外装体の電池の内面となる面上に負極ペーストを塗布して、負極を形成する。
シート状外装体は、例えば樹脂フィルムで構成することができ、このような樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど〕などが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは、20〜100μmであることが好ましい。
なお、シート状外装体の封止は、シート状外装体の上側の樹脂フィルムの端部と下側の樹脂フィルムの端部との熱融着によって行うことが一般的であるが、この熱融着をより容易にする目的で、前記例示の樹脂フィルムに熱融着樹脂層を積層してシート状外装体に用いてもよい。熱融着樹脂層を構成する熱融着樹脂としては、変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)、ポリプロピレンおよびその共重合体などが挙げられる。熱融着樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましい。
また、樹脂フィルムには金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウムフィルム(アルミニウム箔。アルミニウム合金箔を含む。)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔。)などにより構成することができる。金属層の厚みが10〜150μmであることが好ましい。
また、シート状外装体を構成する樹脂フィルムは、前記の熱融着樹脂層と前記の金属層とが積層された構成のフィルムであってもよい。
シート状外装体の形状は、平面視で多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)であってもよく、平面視で円形や楕円形であってもよい。
このようなシート状外装体の負極側の内面上、例えば、上側のシートと下側のシートとを貼り合わせてシート状外装体を構成する場合には、負極側のシートの内面上に、負極ペーストを塗布して負極を形成する。負極ペーストを塗布する方法については特に制限はなく、ドクターブレードを用いた基材引き上げ方式;ダイコータ、コンマコータ、ナイフコータなどを用いたコータ方式;スクリーン印刷、凸版印刷などの印刷方式:などの公知の塗布方法を採用することができる。
負極ペーストを塗布して形成した塗膜は、通常、乾燥させる。
負極ペーストの塗膜(乾燥後の塗膜)の厚みは、0.2〜1mmであることが好ましい。
負極ペーストを塗布するシート状外装体の表面には、通常、負極の集電体を形成しておく。負極の集電体は、シート状外装体を構成するシート(樹脂フィルム)の表面に銅などの金属製やカーボン製の網、シートなどを貼り付けたり、シート状外装体の表面にカーボンペーストを塗布したりすることで、形成することができる。また、シート状外装体を構成するシートに、樹脂フィルムに金属層を積層したものを使用する場合には、この金属層を露出させて集電体とすることもできる。
シート状外装体の表面にカーボンペーストを塗布して負極の集電体を形成する場合、カーボンペーストの塗布方法としては、負極ペーストの塗布方法として先に例示した各種方法と同じ方法が採用できる。また、カーボンペーストの塗布後は、必要に応じて乾燥させてもよい。カーボンペーストを塗布して負極の集電体を形成する場合、このカーボンペーストの層(乾燥後の層)の厚みは、50〜200μmであることが好ましい。
負極形成工程後は、例えば、シート状外装体内に、負極との間にセパレータを介在させて正極を収容し、更に電解液を注入した後にシート状外装体を封止して、シート状電池を得る。
シート状電池がアルカリ電池やマンガン電池の場合、その正極には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。
シート状電池がアルカリ電池の場合に使用可能な正極活物質としては、酸化銀(酸化第一銀、酸化第二銀など);二酸化マンガンなどのマンガン酸化物;オキシ水酸化ニッケル;銀とコバルト、ニッケルまたはビスマスとの複合酸化物;などが挙げられる。また、シート状電池がマンガン電池の場合の正極活物質には、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物が使用される。
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、アセチレンブラック;ケッチェンブラック;チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粒子類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることができる。
正極合剤層に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
正極合剤層中の組成としては、正極活物質の量が80〜98質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が1.5〜10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.5〜10質量%であることが好ましい。また、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30〜300μmであることが好ましい。
正極合剤層を有する正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを水またはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し、前記集電体の空孔内に充填させた後、乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
また、シート状電池が空気電池の場合の正極には、触媒層を有するもの、例えば、触媒層と集電体とを積層した構造のものを使用することができる。
触媒層には、触媒やバインダなどを含有させることができる。
触媒層に係る触媒としては、例えば、銀、白金族金属またはその合金、遷移金属、Pt/IrO2などの白金/金属酸化物、La1−xCaxCoO3などのペロブスカイト酸化物、WCなどの炭化物、Mn4Nなどの窒化物、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物、カーボン〔黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、木炭、活性炭など〕などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用される。
なお、触媒層は、電解液の成分を除く重金属の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。重金属の含有量が前記のように少ない触媒層を有する正極の場合、特別な処理などを経ずに廃棄しても環境負荷が小さい電池とすることができる。
本明細書でいう触媒層中の重金属の含有量は、蛍光X線分析により測定することができる。例えば、リガク社製「ZSX100e」を用い、励起源:Rh50kV、分析面積:φ10mmの条件で測定することができる。
よって、触媒層に係る触媒には、重金属を含有していないものが推奨され、前記の各種カーボンを使用することがより好ましい。
また、正極の反応性をより高める観点からは、触媒として使用するカーボンの比表面積は、200m2/g以上であることが好ましく、300m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることが更に好ましい。本明細書でいうカーボンの比表面積は、JIS K 6217に準じた、BET法によって求められる値であり、例えば、窒素吸着法による比表面積測定装置(Mountech社製「Macsorb HM modele−1201」など)を用いて測定することができる。なお、カーボンの比表面積の上限値は、通常、2000m2/g程度である。
触媒層における触媒の含有量は、20〜70質量%であることが好ましい。
触媒層に係るバインダとしては、PVDF、PTFE、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体〔フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−CTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−TFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−HFP−TFE)など〕などのフッ素樹脂バインダなどが挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレンの重合体(PTFE)または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層におけるバインダの含有量は、3〜50質量%であることが好ましい。
触媒層を有する正極の場合、例えば、前記触媒、バインダなどを水と混合してロールで圧延し、集電体と密着させることにより製造することができる。また前記の触媒や必要に応じて使用するバインダなどを、水や有機溶媒に分散させて調製した触媒層形成用組成物(スラリー、ペーストなど)を、集電体の表面に塗布し乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することもできる。
正極合剤層を有する正極や触媒層を有する正極に係る集電体には、電解液による腐食を防ぐために、カーボン製の多孔性基材が用いられる。具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトなどの、繊維状カーボンで構成された多孔性カーボンシートを好ましく用いることができる。これらのシートは、単層構造であってもよく、カーボンペーパー同士、カーボンクロス同士、カーボンフェルト同士が積層された多層構造であってもよく、カーボンペーパー、カーボンクロスおよびカーボンフェルトのうちの2種以上が積層された多層構造であってもよい。
前記シートを構成する繊維状カーボンの繊維径は、触媒機能や導電性を考慮すると、通常、2〜30μmとすることが好ましい。
繊維状カーボンで構成された前記シートの厚みは、0.5mm以下であることが好ましい。シート状空気電池は、薄型の形態とされることが多いが、正極を構成する前記シートが厚すぎると、正極全体の厚みも増加し、薄型の電池を形成し難くなる場合がある。繊維状カーボンで構成された前記シートの厚みの下限値は、取扱い性や入手の容易さ、正極での十分な電池反応や集電機能の確保などを考慮すると、通常、0.05mmである。
繊維状カーボンで構成された前記シートの空孔率は、良好な透気性と十分な強度とを確保する観点から、50%以上95%以下であることが好ましい。
繊維状カーボンで構成された前記シートには、市販品の中から前記の物性値を満たすものを選択して使用すればよい。
繊維状カーボンで構成された前記シートを多孔性カーボンシートとして正極を形成する場合には、これらのシートを所望の形状に打ち抜くなどするだけで正極を製造できるため、正極の生産性がより向上する。
なお、シート状電池が空気電池である場合に、正極の集電体としてカーボン製の多孔性基材を用いると、集電体自身が触媒としても機能し電池の放電特性の向上が期待できる。
シート状電池のセパレータとしては、樹脂製の多孔質膜(微多孔膜、不織布など)や、セロファンフィルムに代表される半透膜などの、各種電池で一般的に採用されているセパレータが挙げられる。なお、シート状電池の短絡防止および負荷特性を向上させる観点からは、半透膜をセパレータに使用することが好ましい。
樹脂製の多孔質膜からなるセパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが挙げられる。
樹脂製のセパレータの場合、空孔率は30〜80%であることが好ましく、また、厚みは10〜100μmであることが好ましい。
また、セロファンフィルムなどの半透膜をセパレータに使用する場合、半透膜のみでセパレータを構成してもよい。しかしながら、半透膜は強度が小さいため、電池組み立て時の破損などの問題が発生しやすい。よって、特定の重合体で構成されるグラフトフィルムと、半透膜とを積層した積層体でセパレータを構成することも推奨される。
グラフトフィルムを構成するグラフト重合体は、例えば、幹ポリマーであるポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)に、(メタ)アクリル酸またはその誘導体が、グラフト重合した形態を有するものである。ただし、グラフト重合体は前記の形態を有していればよく、ポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸やその誘導体をグラフト重合させる方法により製造されたものでなければならない訳ではない。
前記グラフト重合体を構成する(メタ)アクリル酸またはその誘導体とは、下記一般式(1)によって表されるものである。なお、下記一般式(1)のうち、R1はHまたはCH3であり、R2はHまたはNH4、Na、K、Rb、Csなどの親水性置換基を意味している。
前記のグラフトフィルムやセロファンフィルムは、これらのフィルムを構成する重合体自身が、電解液を吸収してイオンを透過する機能を有するものである。
前記グラフトフィルムを構成するグラフト重合体は、下記式(2)で定義されるグラフト率が、160%以上であることが好ましい。グラフト重合体のグラフト率とグラフトフィルムの電気抵抗には相関関係があるため、グラフト率が上記のような値のグラフト重合体を用いることで、グラフトフィルムの電気抵抗が、20〜120mΩ・in2の好適値となるように制御することができる。なお、グラフトフィルムの電気抵抗は交流式電圧降下法(1kHz)により得られる値である。雰囲気温度を20〜25℃とし、25±1℃の40%KOH(比重:1.400±0.005)水溶液中にフィルムを浸漬し、5〜15時間後に取り出して、電気抵抗を測定すればよい。
グラフト率(%)=100×(A−B)/B (2)
前記式(2)中、A:グラフト重合体の質量(g)、B:グラフト重合体中の幹ポリマーの質量(g)である。なお、前記式(2)の「B(グラフト重合体中の幹ポリマーの質量)」は、例えば、グラフト重合体を、幹ポリマーであるポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸やその誘導体をグラフト重合させる方法で形成する場合には、このグラフト重合に用いる幹ポリマーの質量を予め測定しておけばよい。また、前記グラフト重合体において、グラフト率が100%を超える場合があるのは、グラフト重合に用いるモノマー〔(メタ)アクリル酸やその誘導体〕同士が重合して、グラフト分子が長鎖となる場合があるからである。前記式(2)で定義されるグラフト重合体のグラフト率の上限値は、400%であることが好ましい。なお、前記の「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸とを纏めて表現したものである。
セロファンフィルムのみで構成されるセパレータの場合、その厚みは、例えば、15μm以上であることが好ましく、また、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
更に、グラフトフィルムとセロファンフィルムとの積層体で構成されるセパレータの場合、グラフトフィルムとセロファンフィルムとの合計厚みで、例えば、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、また、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
更に、グラフトフィルムとセロファンフィルムの積層体で構成されるセパレータの場合、グラフトフィルムの厚みは、例えば、15μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。
セパレータを構成するためのグラフトフィルムとセロファンフィルムとの積層体としては、例えば、株式会社ユアサメンブレンシステムから「YG9132」や「YG9122」、「YG2152」の名称で市販されているものが挙げられる。
また、セロファンフィルムや、セロファンフィルムおよびグラフトフィルムと、ビニロン−レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを組み合わせてセパレータを構成してもよい。このような吸液層の厚みは20〜500μmであることが好ましい。
シート状電池の電解液は、pHが、3以上、好ましくは5以上であって、10以下、好ましくは7未満の水溶液である。
電解液として使用される前記水溶液に溶解させる電解質塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムや塩化亜鉛などの塩化物;アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなど)、酢酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウムなど)、硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウムなど)、硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなど)、リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムなど)、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸マグネシウムなど)、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウムなど)、グルタミン酸塩(グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸マグネシウムなど);アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど);アルカリ金属の過炭酸塩(過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなど);フッ化物などのハロゲンを含む化合物;多価カルボン酸;などが挙げられ、前記水溶液は、これらの電解質塩のうちの1種または2種以上を含有していればよい。
なお、前記電解質塩として、塩酸、硫酸および硝酸より選択される強酸と、アンモニアや、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど金属元素の水酸化物に代表される弱塩基との塩が好ましく、アンモニウム塩または特定の金属元素の塩を使用することがより好ましい。具体的には、Cl−、SO4 2−、HSO4 −およびNO3 −より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩であることがより好ましく、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム〔(NH4)HSO4〕、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化水酸化マグネシウム〔MgCl(OH)〕、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)〔(NH4)2Fe(SO4)2〕、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)などの鉄塩;などが例示される。
前記例示の強酸と弱塩基との塩を含有する水溶液からなる電解液は、塩化ナトリウムなどの強酸と強塩基との塩を含有する電解液などに比べて、負極活物質である亜鉛合金粒子を腐食させる作用が比較的弱い。また、強酸の塩のうち、Al、MgおよびFeより選択される金属元素の塩またはアンモニウム塩を含有する電解液は、例えば塩化亜鉛水溶液などに比べて比較的高い導電率を有している。よって、強酸と弱塩基との塩として、Cl−、SO4 2−、HSO4 −およびNO3 −より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩を含有する水溶液からなる電解液を用いた場合には、シート状電池の放電特性をより高めることができる。
ただし、Cl−イオンとFe3+イオンとの塩〔塩化鉄(III)〕については、その他のイオンの組み合わせによる塩に比べて負極活物質である亜鉛合金粒子を腐食させる作用が強いため、塩化鉄(III)以外の塩を用いることが好ましく、負極活物質である亜鉛合金粒子を腐食させる作用がより弱いことから、アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
また、前記強酸と弱塩基との塩のうち、過塩素酸塩は、加熱や衝撃により燃焼や爆発の危険を生じることから、環境負荷や廃棄時の安全性の観点からは、前記水溶液に含有させないか、または含有しても過塩素酸イオンの量がわずか(100ppm未満が好ましく、10ppm未満がより好ましい)であることが好ましい。
また、前記強酸と弱塩基との塩のうち、塩化亜鉛や硫酸銅などに代表される重金属塩(鉄の塩を除く)は、有害であるものが多いため、環境負荷や廃棄時の安全性の観点からは、前記水溶液に含有させないか、または含有しても鉄イオンを除く重金属イオンの量がわずか(100ppm未満が好ましく、10ppm未満がより好ましい)であることが好ましい。
また、特にシート状電池が空気電池の場合には、前記水溶液は、沸点が150℃以上の水溶性高沸点溶媒を、水と共に溶媒として含有していることが好ましい。空気電池においては、放電を行い容量が減っていくと、それに従って電圧が低下していくが、容量が少なくなる放電後期では電圧の低下に加えてその変動が大きくなりやすい。しかしながら、前記水溶液が水溶性高沸点溶媒を含有している場合には、こうした放電後期の電圧の変動を抑えて、より良好な放電特性を有する空気電池とすることができる。
また、後述するように、空気電池は正極に空気を導入するための空気孔をシート状外装体に有しているが、電解液中の水が揮発し、シート状外装体の空気孔を通じて散逸するなどして電解液の組成変動が生じやすく、これにより放電特性が低下する虞がある。しかしながら、電解液として使用する前記水溶液が水溶性高沸点溶媒を含有している場合には、電解液からの水の揮発が抑制されるため、前記のような電解液の組成変動による放電特性の低下を抑制することができ、空気電池の貯蔵特性をより高めることも可能となる。
水溶性高沸点溶媒の沸点の上限値は、通常、320℃である。
空気電池であるシート状電池の放電特性をより良好に維持する観点からは、水溶性高沸点溶媒は、その表面張力や比誘電率が高いことが望ましい。空気電池においては、放電に際し正極(触媒層)が空気と触れる必要があるが、電解液中の水溶性高沸点溶媒の表面張力が低いと、正極の触媒含有層の表面のうちの、電解液で覆われて空気と触れ難くなる箇所の割合が大きくなりすぎて、放電特性が低下する虞があるが、表面張力が高い水溶性高沸点溶媒を使用することで、こうした問題を回避することができる。
また、有機溶媒は、通常、水よりも比誘電率が低いため、これを水と併用して電解液を調製すると、水のみを使用した場合よりもイオン伝導性が低下して、電池の放電特性を損なう虞があるが、比誘電率が高い水溶性高沸点溶媒を使用することで、こうした問題の発生を抑制することができる。
具体的には、水溶性高沸点溶媒の表面張力は、30mN/m以上であることが好ましい。また、水溶性高沸点溶媒の表面張力の上限値は、通常、70mN/mである。本明細書でいう水溶性高沸点溶媒の表面張力は、市販の装置(例えば、協和界面科学社製「CBVP−Z」)を使用して、Wilhelmy法によって測定される値である。
更に、水溶性高沸点溶媒の比誘電率は、30以上であることが好ましい。また、水溶性高沸点溶媒の比誘電率の上限値は、通常、65である。本明細書でいう水溶性高沸点溶媒の比誘電率は、HEWLETTPACKARD社製「プレジョンLCRメータ HP4284」などを用い測定される誘電率より求まる値である。
電解液に好適な水溶性高沸点溶媒の具体例としては、エチレングリコール(沸点197℃、表面張力48mN/m、比誘電率39)、プロピレングリコール(沸点188℃、表面張力36mN/m、比誘電率32)、グリセリン(沸点290℃、表面張力63mN/m、比誘電率43)などの多価アルコール;ポリエチレングリコール(PEG;例えば、沸点230℃、表面張力43mN/m、比誘電率35)などのポリアルキレングリコール(分子量が600以下のものが好ましい);などが挙げられる。電解液には、これらの水溶性高沸点溶媒のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、グリセリンを使用することがより好ましい。
水溶性高沸点溶媒を使用する場合、その使用による効果を良好に確保する観点から、前記水溶液の全溶媒中の水溶性高沸点溶媒の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、前記水溶液中の水溶性高沸点溶媒の量が多すぎると、前記水溶液のイオン伝導性が小さくなりすぎて、電池特性が低下する虞があることから、前記水溶液の全溶媒中の水溶性高沸点溶媒の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
前記水溶液における電解質塩の濃度は、例えば、前記水溶液の導電率を80〜700mS/cm程度に調整できる濃度であればよく、通常は、5〜50質量%である。
電解液として使用される前記水溶液には、その溶媒(水または水と水溶性高沸点溶媒との混合溶媒)中にインジウム化合物が溶解していることが好ましい。前記水溶液中にインジウム化合物が溶解している場合には、電池内での水素ガスの発生を良好に抑制することができる。
前記水溶液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
インジウム化合物の前記水溶液中の濃度は、質量基準で、0.005%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることが特に好ましく、また、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。
前記水溶液には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる亜鉛合金粒子の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。
また、電解液を構成する水溶液はゲル化されていてもよく、電解質塩を含有するpHが3以上10以下の水溶液(電解液として使用可能な前記の水溶液)と、増粘剤(例えば、負極ペースト用の増粘剤として先に例示したものと同じもの)とを配合してなる電解液(ゲル状電解質)を、電池の電解液として使用することもできる。特にシート状電池が空気電池の場合には、ゲル化した電解液を使用することで、放電後期の電圧の変動を抑えて空気電池の放電特性をより高めることができ、また、ゲル化した電解液からの水の揮発が抑制されるため、電解液の組成変動による放電特性の低下を抑制することができ、電池の貯蔵特性をより高めることも可能となる。
シート状電池の組み立ては、例えば以下の方法によって実施することができる。
例えば2枚のシートと貼り合わせてシート状外装体を形成する場合、負極を形成したシートの負極側にセパレータを配置し、その上に正極と他方のシートとを順次配置して、両シートの一部を残して端部同士を貼り合わる。そして、シート状外装体の端部のうち、貼り合わせずに残した部分から電解液を内部に注入した後、この部分を貼り合わせてシート状電池とすることができる。
また、1枚のシートを折り返してシート状外装体を形成する場合は、負極を形成した部分の負極上にセパレータを配置し、その上に正極を配置してからシートを折り返す。そして、折り返した上下のシートの端部同士を一部を残して貼り合わせ、貼り合わせずに残した部分から電解液を内部に注入した後に、この残りの部分を貼り合わせてシート状電池とすることができる。
シート状外装体における外周部分の貼り合わせは、前記の通り、シート状外装体を構成する樹脂フィルムや熱融着樹脂層の熱融着によって行うことができる。
図1および図2に、本発明法によって製造されるシート状電池の一例を模式的に示している。図1は平面図であり、図2は図1のI−I線断面図である。なお、図1および図2に示すシート状電池は、空気電池の例である。
図2に示すように、シート状電池1においては、正極20、セパレータ40および負極30と、電解液(図示しない)とが、シート状外装体60内に収容されている。なお、図1における点線は、シート状外装体60内に収容された正極20の大きさ(端子部を除く、幅の広い本体部の大きさ)を表している。
シート状外装体60の図1中上辺においては、上側のシートが下側のシートよりも短くなっており、正極20の端子部20aおよび負極30の端子部30aが、シート状電池1の外部に露出している。これらの端子部20a、30aは、シート状電池1と適用機器とを電気的に接続するための外部端子として使用される。
負極30は、負極ペーストによって形成された亜鉛合金粒子を含有する層(負極活物質層)31が、シート状外装体60の図中下側のシートの電池内面に形成された負極集電体32の表面に設けられている。そして、シート状電池1においては、負極の端子部30aは、集電体32の一部に負極活物質層31を設けない露出部を残すことで形成されている。
負極の端子部は、端子部を構成するためのリード体(タブ)などを負極に溶接するなどして接続することで設けてもよいが、負極の一部を利用して設けた場合には、リード体(タブ)などの溶接の必要がなくなることから、その生産性を高めることができ、ひいては、シート状電池の生産性を向上させることができる。
負極の一部を利用して端子部を設ける場合、負極活物質層の一部によって設けてもよく、図1および図2に示すように、負極の集電体の露出部によって設けてもよい。
また、正極の端子部20aも、端子部を構成するためのリード体(タブ)などを正極に接続することで設けてもよいが、正極の集電体の一部を利用して設けた場合には、リード体(タブ)などを接続する必要がなくなることから、その生産性を高めることができ、ひいては、シート状電池の生産性を向上させることができる。
そして、正極の一部を利用して端子部を設ける場合には、正極の集電体の露出部によって設けることができる。
なお、空気電池であるシート状電池1においては、シート状外装体60には、正極20が配置された側の片面に、正極に空気を取り込むための空気孔61が複数設けられており、正極20のシート状外装体60側には、空気孔61からの電解液の漏出を防止するための撥水膜50が配置されている。
シート状外装体に設ける空気孔の数については特に制限はなく、空気電池が良好に放電できる程度の空気を取り込み得るような数とすればよい。また、空気孔の形状についても特に制限はなく、平面視で円形の他、楕円形や多角形(三角形、四角形など)としてもよい。
また、シート状電池が空気電池の場合の撥水膜には、撥水性がある一方で空気を透過できる膜が使用される。このような撥水膜の具体例としては、PTFEなどのフッ素樹脂;PE、PPなどのポリオレフィン;などの樹脂で構成された膜などが挙げられる。撥水膜の厚みは、50〜250μmであることが好ましい。
また、シート状外装体と撥水膜との間に、シート状外装体内に取り込んだ空気を正極に供給するための空気拡散膜を配置してもよい。空気拡散膜には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜の厚みは、100〜250μmであることが好ましい。
シート状電池の厚み(図2中aの長さ)については特に制限はなく、シート状電池の用途に応じて適宜変更できる。なお、シート状電池は薄型にできることがその利点の一つであり、かかる観点からは、その厚みは、例えば1mm以下であることが好ましい。シート状電池が空気電池の場合には、特にこのような薄型のものの提供が容易となる。また、シート状電池の厚みは、一定の容量を確保するために、通常は0.2mm以上とすることが好ましい。
本発明のシート状電池は、前記の通り、環境負荷が小さく、また、破損などによって電解液が漏出して身体に付着しても、例えばpHが高い強アルカリ性の電解液に比べて問題が生じ難い。よって、本発明のシート状電池は、身体に装着可能なパッチ、特に、皮膚の表面に装着し、体温、脈拍、発汗量など身体の状況に関する測定を行うためのパッチなど、医療・健康用途の機器の電源として好適であり、また、従来から知られている空気電池やアルカリ電池などの水溶液系の電解液を有するシート状電池が採用されている用途と同じ用途にも適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<正極>
DBP吸油量495cm3/100g、比表面積1270m2/gのカーボン〔(ケッチェンブラックEC600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)〕:30質量部と、アクリル系分散剤:15質量部と、SBR:60質量部と、水:500質量部とを混合して触媒含有層形成用組成物を調製した。
多孔性導電基材として多孔性のカーボンペーパー〔厚み:0.25mm、空孔率:75%、透気度(ガーレー):70sec/100ml〕を用い、前記触媒含有層形成用組成物を、乾燥後の塗布量が10mg/cm2となるよう前記基材の表面にストライプ塗布し、乾燥することにより、触媒含有層が形成された部分と形成されていない部分とを有する多孔性導電基材を得た。この多孔性導電基材を、触媒含有層が形成された15mm×15mmの大きさの本体部と、触媒含有層が形成されていない5mm×10mmの大きさのリードとを有する形状に打ち抜いて、全体の厚みが0.27mmの正極(空気極)を作製した。
<撥水膜>
撥水膜には、厚みが200μmの多孔性のPTFE製シートを用いた。
<シート状外装体>
アルミニウム箔の外面にPETフィルムを有し、内面に熱融着樹脂層としてポリプロピレンフィルムを有するアルミラミネートフィルム(厚み:65μm)を2枚用いてシート状外装体とした。正極側の外装体は25mm×25mmの大きさとし、負極側の外装体は25mm×30mmの大きさとした。
正極側の外装体には、あらかじめ直径0.5mmの空気孔9個を縦4.5mm×横4.5mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は5mm)で規則的に形成し、更に、その内面側となる方に、ホットメルト樹脂を用いて前記撥水膜を熱溶着しておいた。また、負極側の外装体の内面側となる方には、正極および負極のリードが配置される部分に、外装体の辺と平行に、変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムを取り付けておいた。
<電解液>
電解液には、20質量%の硫酸アンモニウム水溶液(pH:5.3)を用いた。
<セパレータ>
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(1枚当たりの厚み:15μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置したもの(全体の厚み:50μm)を用いた。
<負極ペースト>
負極活物質として、In:0.05%、Bi:0.04%およびAl:0.001%を含有し、全粒子中における粒径が15μm以下の粒子の割合が2質量%であり、粒径が100μm以上の粒子の割合が10質量%である亜鉛合金粒子を用いた。
CMC:1質量部とポリアクリル酸ナトリウム:1質量部とを水に溶解させた水溶液に、前記亜鉛合金粒子:98質量部を混合して負極ペーストを調製した。
<電池の組み立て>
前記負極側の外装体の内面側に、15mm×15mmの大きさの本体部と、5mm×10mmの大きさのリードとを有する形状にカーボンペーストをスクリーン印刷し、負極の集電体を形成した。更に、前記集電体の本体部の上に、前記負極ペーストをスクリーン印刷し、前記外装体上に、15mm×15mmの大きさの活物質層を有する負極を形成した。
また、前記正極側の外装体の撥水膜の上に、前記正極および前記セパレータを順に積層し、更に、内面側に負極を形成した前記外装体を重ね、2枚のアルミラミネートフィルムの周囲3辺を互いに熱溶着して袋状にした。次に、袋状の外装体の開口部から前記電解液0.1mlを注入した後、前記開口部を熱溶着して封止して、図1および図2に示す構造のシート状空気電池を作製した。
実施例2
硫酸アンモニウム水溶液に代えて、塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウムの濃度:3.0mol/l、pH=7)を電解液に用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
比較例1
亜鉛合金粒子として、全粒子中における粒径が15μm以下の粒子の割合が80質量%である粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
比較例2
正極の集電体を、金属網(SUS304製の700メッシュで、線径:0.1mm、厚み:0.25mm)に変更した以外は、実施例2と同様にしてシート状空気電池を作製した。
参考例
前記電解液として、20質量%の水酸化カリウム水溶液(pH:14)を用いた以外は、比較例2と同様にしてシート状空気電池を作製した。
それぞれのシート状空気電池を組立ててから1時間放置した後、3.9kΩの抵抗を接続して放電を行い、0.5Vまで放電した時の放電容量を測定した。その結果を表1に示す。
正極集電体としてカーボンペーパーを用い、電解液としてpHが3〜10の範囲にある水溶液を用いた本発明のシート状空気電池は、正極の集電体として金属網を用い、電解液としてアルカリ電解液を用いた参考例で示される従来構成の空気電池と比較して、さほど遜色のない優れた放電特性を有する電池とすることができた。
一方、正極集電体として金属網を用い、電解液としてpHが3〜10の範囲にある水溶液を用いた比較例2の空気電池では、正極集電体の腐食のため、放電特性が劣ったものとなった。
また、実施例1、2および比較例1の前記とは別の電池について、空気孔をシールした状態で45℃で30日間貯蔵した後、シールをはがして前記と同様に放電を行い、貯蔵後の放電容量を測定した。貯蔵前の放電容量に対する貯蔵後の放電容量の割合(容量維持率)を表2に示す。
亜鉛合金粒子中、粒径が15μm以下の粒子の割合を50質量%以下とした本発明のシート状空気電池は、粒径が15μm以下の粒子の割合の多い微粒の亜鉛合金を用いた比較例1の電池と比較して、貯蔵特性を高めることができた。